ロイハボ風味
「なんスか?これ」 ハボックはリビングのテーブルに置かれた大きな包みを見て言う。視線で促されて包みの端を留める短い紐の結び目を解くと、そっと開いて現れた上質な生地を手に取って、ハボックは首を傾げた。 「これは?」 「浴衣だ」 「ああ、ファルマンに写真見せて貰った事あるっス」 以前、東の国で夏に着るものだと写真を見せて貰った事を思い出して、ハボックは答える。「へぇ、これが」と眺めるハボックにロイが言った。 「着てみないか?」 「え?」 「着てみろ、ハボック。お前の為に誂えたんだ」 そう言って笑うロイにハボックは手にした浴衣を見る。それからもう一度ロイを見て、浴衣から手を離した。 「遠慮しときます」 「ッ?!なんでだッ?!」 了承の答えが返ってくるとばかり思っていたのに、思いもかけない言葉を聞いてロイは目を剥く。そんなロイをハボックは胡散臭そうに見て言った。 「アンタがこういう変わったもん持ってくる時は絶対何かあるんだから」 警戒心丸出しでハボックは言うと浴衣を元に戻す。視線を感じて目を上げれば、ロイが昏い表情でハボックを見ていた。 「大佐?」 「折角お前に喜んで貰おうと誂えたのに、私の気持ちは受け取って貰えんのだな」 「えっ?いや、そう言う訳じゃ」 「私がやる事はいつだってお前には迷惑なばかりなんだな」 ハアとため息をついてロイは浴衣を取り上げるとそれを手にリビングを出て行こうとする。しょんぼりと肩を落とす姿にハボックは慌てて言った。 「待って、大佐っ!迷惑だなんて、そんな……。えと、きっ、着てみたいなぁッ、浴衣!」 そう叫べばロイがピタリと足を止める。肩越しに昏い顔で振り向くロイにハボックが言った。 「着てみたいっス!あー、でもオレ、着方判んないっスけど」 どうしよう、と苦笑したハボックが頭を掻けば、ロイが物凄い勢いで戻ってきた。 「そうか、着てくれるかっ!大丈夫だ、安心しろ。着付けなら私がやってやる!」 脱げ脱げと急かすロイに失敗したかもと思いつつ、ハボックはシャツに手をかける。潔く服を脱ぎ捨てると下着一枚になってロイに向き合った。 「浴衣の着付けまで出来るなんて、アンタってホント無駄な知識豊富っスよね」 「褒め言葉と思っておこう」 「ぐえッ!大佐っ、キツすぎッ!」 着せられるまま浴衣を身にまといながら呆れたように言えばロイに思い切り腰紐をグッと絞められて、ハボックが悲鳴を上げる。フンと鼻を鳴らしてロイが紐を弛めればホッと息を吐いたハボックは、ロイが次に手を伸ばしたものを見て眉を寄せた。 「なんスか、それ」 「なにって、帯に決まってるだろう」 ロイはそう言って紅い帯を手にする。そのふわふわした生地を見てハボックは言った。 「嘘、前にファルマンが見せてくれた写真はそんなふわふわの帯じゃなかったっスよ」 「そうだろうな、これは子供用の帯だから」 「はあっ?」 ロイが言うのに素っ頓狂な声を上げるハボックにロイはにっこりと笑った。 「お前に似合うと思ってな。このふわふわした感じ。結ぶと金魚みたいでカワイイぞ」 ほら、と手にした帯を巻こうとするロイの腕をハボックが掴む。 「嫌っスよ」 「なんでだ?」 「そんな帯、大の男に似合うわけないっしょ!」 子供が巻けば可愛らしい金魚の尻尾の帯も、大の男、しかもこんなにデカくてゴツい男が巻いて似合うとは到底思えない。気持ち悪いだけだとハボックが言えば、ロイが答えた。 「そんな事ないぞ、絶対似合うから」 「嫌っス」 「折角お前の為に用意したんだぞ」 「例えそうでも嫌って言ったら嫌っス!そんな金魚の帯、巻きたくありません」 頑として嫌と言い張るハボックにロイはムゥと唇を突き出す。そのまま暫し見つめ合っていた二人だったが、やがてロイがボソリと言った。 「どうしてもこの帯を巻くのは嫌か?」 「嫌っス」 「どうしても?」 「嫌って言ったら嫌っス」 ここで甘い顔をすればあの紅い帯を巻かなくてはならなくなる。そんな恥ずかしい事は絶対に避けなければと思いながらハボックが言えば、ロイは大きなため息をついた。 「判った」 「大佐」 ロイの言葉にハボックはホッと息を吐く。別に浴衣を着ること自体が嫌な訳ではなかったからちゃんとした大人用の帯を用意してくれとハボックが言おうとするより一瞬早く、ロイが口を開いた。 「お前の気持ちはよく判った。だが、折角お前の為に用意した帯、このままにするのは勿体無い」 そう言ったロイの唇の端がスッと持ち上がるのを見た瞬間、ハボックはパッと身を翻して逃げようとする。だが、一歩も踏み出さないうちにシュルンと手首に巻きついた帯に引き戻された。 「うわッ!」 グイと引っ張られハボックは背後に倒れ込む。気がついた時には両手首を紅い帯で後ろ手に縛られて、ソファーに俯せに押さえ込まれていた。 「大佐っ?」 「腰に巻くのは嫌なんだろう?それならお前が喜びそうな巻き方をしてやろう」 ロイは言って帯の端をグイと引く。浴衣の裾を捲って脚に触れてくる手に、ハボックはロイがしようとしていることを察して必死にもがいた。 「大佐っ!帯、やっぱりそれ巻きますッ!金魚の尻尾みたいにふわふわに巻いて欲しいなッ!」 「安心しろ。ちゃんと可愛らしい金魚にしてやる」 ここでな、と尻に触れてロイが囁く。結局その後ハボックは、普通に帯を金魚に結ぶよりももっと恥ずかしい巻き方をされる羽目になったのだった。
いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、やる気の元です、嬉しいです〜v
ええと、可愛らしい続きかと思われた方にはすみません。いやあ、「大人ハボが金魚帯してても可愛いかも」っていうコメント頂いたものでつい(苦笑)帯の使い方が違うと言われそうですが(笑)折角「巻く」ので青い帯ではなく紅いのにしてみました。やはり紅い方が肌に映えて綺麗かな、と(殴)相変わらず腐っててすみません(汗)いい加減迷子の仔犬を探しに行けと言われそうですね(苦笑)
以下、拍手お返事です。
なおさま
あはは、マドラスに応援ありがとうございます(笑)ふふふ、衰え知らず!物は言い様ですね(笑)まだ暫くはハラハラドキドキしていただきたいなと思っていますので、よろしくお願いしますv金魚帯のチビたちに癒されて頂けましたか?嬉しいですーvそして、大人ハボにも金魚帯してみました、可愛いですか?(殴)って、しょうもない話に使ってしまってすみません。笑って見逃してくださると助かります(苦笑)次回こそ迷子の仔犬を探しに行くつもりですので〜。
JOEさま
おお、金魚な二人に癒されて頂けましたか?よかったです〜vふふふ、もう絶対可愛いですよね、おチビ金魚vいっぱい想像して下さったのなら嬉しいですv
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