ロイハボ風味
「えっと、このレモンのケーキとミルフィーユ。それとこっちのチョコレートムースも入れてくれる?」 「はい、全部で三つっスね」 「ああ、いや。全部二つずつ!合計六個ね」 注文のケーキをトレイに載せるハボックに客の男が言う。丁度店の中へ入ってきたロイは、客の言葉に顔をあげたハボックがにっこりと笑うのを見て眉をしかめた。 「二個ずつ合計六個っスか。いつも沢山買ってくれてありがとうございます」 「や、ハボックさんのケーキ旨いから当然ですよっ」 笑みを浮かべて礼を言われた客が顔を赤らめて答える。アハハとわざとらしい笑い声を上げて頭を掻く男を、ロイはギロリと睨んだ。 「ハボック」 「あ、マスタングさん!いらっしゃい」 ロイに気づいたハボックがパッと顔を輝かせてロイを見る。ゆっくりと近づいたロイはハボックが手にしたトレイの上のケーキを見て言った。 「シュークリームを買ってないとは、この店のケーキが本当に好きとは言えんな」 「えっ?」 「ちょっと、マスタングさん!」 もの凄い目つきで睨まれてタジタジとする客を見て、ハボックが眉を寄せる。 「好きなものを好きなだけ買って貰うのが一番嬉しいんスから。────今お詰めするっスからちょっと待ってくださいね」 「あ、う、うんっ」 ニコニコと笑うハボックに頷いた客はなるべくロイを見ないようにと顔を背ける。それでもロイの鋭い視線を頬に感じて、ヒクヒクと唇の端を震わせながらハボックが会計してくれるのを待った。 「お待たせしたっス、どうぞ」 「あ、ありがとう、ハボックさん!また来るねッ、ハボックさん!」 「はい、お待ちしてるっス」 ロイの方を極力見ないようにしながら金を払ってケーキの箱を受け取った客は、ハボックの名を連呼しながら逃げるようにして店を出ていってしまう。「またどうぞ」とその背に声をかけるとハボックは店の奥へ引っ込んだ。ハボックがいなくなると、ロイは店の中にいる他の男性客を睨みつける。そうすればそのあまりの眼光に怯えて男たちがなにも買えずに店を出ていき、そうやって全ての男性客を無言の圧力で追い出して、ロイはフンと鼻を鳴らした。 「マシュマロの追加、持ってきた────あれっ?」 店の奥からマシュマロのカップを手に戻ってきたハボックは、客がいなくなっていることに気づいて目を丸くする。出すの遅かったかなぁと呟きながらマシュマロを並べるハボックにロイが言った。 「おい、お前の店、やけに男の客が多くないか?」 「そうっスねぇ、結構男のお客さん、来てくれるっスね」 ハボックはマシュマロの口を縛っているリボンを整えながら言う。 「みなさん、ケーキが好きなんスねぇ、嬉しいっス」 「ケーキが好きぃ?」 嬉しそうに笑うハボックにロイは思い切り口元を歪めた。 「マスタングさんだってそうっしょ?ケーキが好きな男性が増えるのはケーキ屋としては嬉しい限りっスよ」 だが、ハボックはロイの表情には気づかずそう言う。丁度ドアベルを鳴らして入ってきた女性に「いらっしゃいませ」と声をかけるハボックを、ロイは眉をしかめて見つめた。 (好きなのはケーキじゃないだろうっ!ちょっと見れば下心ありありなのが丸見えだろうがッ!) どの客もケーキよりハボックを見ていた。それに気づきもせずのんびりと笑っているのは如何なものか。 (これはやはり毎日通って他の男どもを近づけないようにしなくてはッ!) ニコニコと嬉しそうに客の対応するハボックの横顔を見つめながら、ロイは堅く心に誓ったのだった。
いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、本当に元気貰ってます、嬉しいですーvv
ええと、バレンタイン、ホワイトデーとリク頂いて書いたケーキ屋さんハボックです。「ハボックの事だから自分目当てで来ているとは夢にも思わず“みなさん、お菓子が好きなんスねぇ”なんて呑気に思っていそう」とコメント頂いたので書いてみました。ハッ、コメントは男限定じゃない!(爆)そうだよねぇ、女性だってハボック目当てで来ますよね!でも、女性客も追い出しちゃうとハボック、商売あがったりだから(笑)それにしても、働けよ、ロイ!(笑)やっぱり休講ばっかりの大学教授かしら(笑)
以下、拍手お返事です。
なおさま
うふふ、ホワイトデーエロネタ、楽しんで頂けて嬉しいですvロイ、チョロイですよね!(笑)軍の大佐と中佐がこんなんでいいのかって感じですが。悪友二人でエロチョコレート開発!なんか物凄い大変なチョコができそうです。そして、チョコを見ただけで反応するハボック!流石ワンコ、パブロフの犬状態ですねッ(笑)いやあ、そんなになったらハボック大変だなぁ、と言いつつ書いてみたい(爆)
はたかぜさま
えへへへへv可愛いって言って頂けてとっても嬉しいですーvロイ×2、色んな面で騒がしそうです。先輩は「私はあんな大人にはならん」って思ってそうだし、マスタングさんは「私が学生の頃はもう少し可愛げがあった」とか思っていそう(笑)拙宅の話を読んでいると頭の中で映像化して頂けるなんて、本当にもう嬉しい限りです!自分の頭の中に浮かんだハボやロイの姿や周りの様子を少しでも伝えられたらと思いながら書いているので、そう言って頂けるのは本当に本当に嬉しいですvv勿論はたかぜさまの想像力の賜物でもあるんですけど(笑)エロチョコレート、いい響きですよね!なんかフツーにCМやっていそう(爆)こちらこそ、楽しいリクエストをありがとうございましたvこれからもどうぞ囁いてやってくださいませv
里奈さま
わぁい、ロイもハボも可愛くて大好きなんて、ありがとうございます!萌えて頂けてますか?うふふふふ、嬉しい〜v作品数だけはちょっぴり自慢です(笑)これからも是非ストーキング(笑)お願いしますねv
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