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2011年11月の日記

2011年11月30日(水)
暗獣32
2011年11月27日(日)

2011年11月25日(金)
豆騎士続・片恋編
2011年11月23日(水)
豆騎士片恋編
2011年11月22日(火)
1122
2011年11月20日(日)
恋猫23
2011年11月18日(金)
暗獣31
2011年11月17日(木)
豆騎士続続・身長編
2011年11月14日(月)
豆騎士続・身長編
2011年11月11日(金)
豆騎士身長編
2011年11月07日(月)
暗獣30

暗獣32
「ろーいー」
 パタパタと軽い足音が聞こえたと思うと涙混じりの声がする。窓辺の定位置で本を読んでいたロイが顔を上げると、ハボックが開けっ放しの扉から入ってきた。
「どうした、ハボック」
 タタタと駆け寄ってきたと思うと椅子に座るロイの膝にぱふんとぶつかるようにしがみつくハボックに、ロイは尋ねる。涙目で見上げてくるハボックの背後を覗き込んだロイは、ふさふさとした金色の尻尾に大きな毬栗(いがぐり)が絡まっていることに気づいた。
「なんでまたそんなところに」
 ロイが目を丸くして言えば、ロイの膝から手を離したハボックが毬栗を取ろうとする。だが、自分の尻尾の毬栗を取ろうと後ろを向けば、尻尾もその動きにあわせて逃げてしまい、結果ハボックはくるくるとその場で回る羽目になった。
「おっ、お前……っ」
 尻尾の毬栗を掴もうとしてくるくる回る姿に思わずロイが吹き出せば、ハボックが恨めしげにロイを睨む。ロイは「ごめん、ごめん」と謝りながら立ち上がって本を置くと、ハボックの側にしゃがみ込んだ。
「まあた見事に絡まってるな。どうやったらこんなことになるんだ?」
 ロイは苦笑混じりに言いながら毬栗に絡んだハボックの尻尾の毛を少しずつ外してやる。漸く毬を外すと、ロイはくしゃくしゃになった尻尾の毛を丁寧に手で梳いて綺麗に整えてやった。
「よし、これでいいぞ」
 ロイがそう言うとハボックが尻尾を確認するように、背後を見ながらくるんと回る。そうして礼を言うようにキュッとしがみついてくるハボックの金色の頭を、ロイはポンポンと叩いた。
「じゃあ、これは捨てるからな」
 ロイは外した毬栗を手に窓辺に寄るとそこから庭に投げ捨てようとする。すると慌てて寄ってきたハボックがロイの腕にぶら下がった。
「ろーい!」
「なんだ?捨てちゃいかんのか?」
 もう毬栗なぞ見たくもないだろうと思いきや、庭に投げ捨てるのを止められてロイは不思議そうにハボックを見下ろす。伸ばしてくる小さな手に毬栗をそっと載せてやれば、ハボックはそれを手に部屋の片隅に歩いていった。
 部屋の隅にはハボックのベッド代わりのビロード張りの小さなトランクが置かれており、最近そこにもう一つ小さな箱が置かれるようになっていた。綺麗なもの、可愛いものが大好きなハボックはトランクの隅に集めたものをコレクションしているのだが、段々と数が増えてトランクがベッドなのかコレクションボックスなのか判らなくなってきたのを見かねたロイが、集めたコレクションを入れるための場所として新たに箱をおいてやったのだ。
 ハボックは毬栗を床に置くと、コレクションの箱を開ける。背後から覗くロイの前に、ハボックは箱の中から彼の大事な宝物を出して並べた。
「ああ、そうか。秋なんだ」
 ロイは並べられた宝物を見て言う。真っ赤に色づいた楓の葉、ロイが作ったどんぐりの独楽、ハボックの尻尾によく似た薄の穂、コスモスの押し花……。幾つもの“秋”の隣にハボックは茶色い栗が覗く毬を置いた。
「ろーい」
 自慢するようにハボックがロイを見上げる。ロイは見上げてくる空色に微笑むと、ハボックと一緒に床に座り込み色とりどりの秋を楽しんだのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手も嬉しいですv正直なものでなんぞアップした後に拍手頂くと頑張ろうって気になります、ありがとうございますv

「暗獣」です。今回で秋ネタも終わりです。明日からはもう12月ですね、一年早いなぁ……。今日の東京は最高気温が19度だったんですが、明日は7度だってよ。一日で二ヶ月くらい季節が進むらしい。気温の乱高下が激しいのに体がついていかずしっかり風邪っぴきになってしまいました。かんでも啜っても鼻が垂れる、ポメラ打ちにくいったら(苦)皆さまもお気をつけてお過ごし下さいね。そんなわけで、次回からは冬ネタでーすv
2011年11月30日(水)   No.132 (カプなし)

「おはよ、ブレダ。今日は寒いなぁ」
 司令室の扉を開けたハボックは長身の背中を丸めてそう言う。先に来ていたちょっとばかり横幅の広い友人の背に向けて声をかければ、ブレダは手にした書類の束をトントンと机に当てて揃えると立ち上がった。
「おはよ、ハボ。朝早くから来ると部屋が暖まってないからしんどいわ」
 ブレダがそう言いながら振り向く。同意の言葉を返そうとしたハボックは、振り向いた友人の顔を見て固まってしまった。
「ん?どうした、ハボック?」
 突然固まってしまったハボックにブレダが不思議そうに首を傾げる。ハボックはブルブル震えながらブレダの顔を指さした。
「な、な、な……なんでっ?!なんでブレダの顔が大佐にッ?!」
 横に広い体は確かにブレダのそれだ。だが振り向いたブレダの顔だけが何故だかロイの顔になっていた。
「はあ?なに言ってんだよ、ハボ」
 驚愕に空色の目を見開いているハボックにブレダが怪訝そうに言う。ハボックはちょっとぽっちゃりしたロイの顔がブレダの声で話すのを聞いて喚いた。
「なにって、お前の顔が大佐になってんだよッ!!一体全体どういうことだよ、それッッ!!」
「なにを騒いでるの、あなた達」
 ハボックが指を突きつけて騒いでいると背後から涼やかな声が聞こえる。その冷静な声にほんの少しホッとしてハボックは振り向いた。
「中尉っ!大変なんス、ブレダの顔が───」
「ブレダ少尉の顔がどうかしたの?」
 不思議そうに言うホークアイの顔を見て、ハボックが言葉をなくす。金髪をキュッと留めてほんの少し眉を寄せたその顔はロイのものだった。
「なん……なんで……っ、中尉の顔も大佐……っ?!」
 信じられないとばかりに目を見開くハボックにホークアイがムッとしたように顔を顰める。
「ハボック少尉、女性の顔を見てそんな顔をするなんて失礼というものよ」
「や……だって……」
 この状況でびっくりするなという方が無理だろう。ハボックが頭の片隅でそう思ったとき、ホークアイの後ろから聞き慣れた声がしてファルマンとフュリーが入ってきた。
「おはようございます」
「おはようございます、どうかなさったんですか?こんなところに突っ立って」
 朝の挨拶を口にしながら不思議そうに首を傾げる二人の顔をまさかまさかと恐れながら見たハボックは、当たって欲しくなかった予想が当たった事に思わずふらりとよろめいた。
「うそ……ファルマンとフュリーまで……」
「どうかしましたか?ハボック少尉」
 そう言うロイの顔は見慣れたそれより目が細い。もう一人、眼鏡の奥の目を不思議そうに瞬かせる小柄なロイを見れば、ハボックはドサリと近くの椅子に倒れ込むように座った。
「なんで……なんでみんなの顔が大佐に……」
 そう呟くハボックにブレダがおかしそうに言った。
「なに言ってんだよ、お前だってそうだろう?」
「え?」
「そうよ、驚くなんておかしいわ、ハボック少尉」
 そう言いながらホークアイがポーチから取り出したコンパクトを開いてハボックに見せる。その鏡の中に映る煙草を咥えたロイの顔を見た瞬間、ハボックの唇から悲鳴が上がった。

「ギャ───ッッ!!」
 大きな叫び声を上げてハボックはガバッと跳ね起きる。ソファーの上に身を起こして、目を大きく見開いたハボックはハアハアと肩で息をした。
「ゆ……夢?」
 恐る恐る辺りを見回せばそこにはロイの顔をしたブレダ達はどこにもおらず、見慣れた家のリビングの光景があるだけだ。たった今見たものが悪い夢だったのだと気づいて、ハボックはハアアアと肺の中の空気を全部吐き出した。
「よ……よかったぁ」
 あまりにも心臓に悪い夢に、ハボックが脱力してソファーの背もたれに懐いて目を閉じた時。
「なんだ、今の声は」
 そう声が聞こえてハボックはハッとして目を開ける。声の方に視線を向ければ目に入ってきたロイの顔にハボックはギクリと身を強張らせた。
「えっ?や、ちょっと夢を見て……」
「夢?」
 アハハと乾いた笑いを浮かべるハボックの様子がどこか変な事に気づいて、ロイは目を細める。ズイとその顔をハボックのそれに近づけてロイは言った。
「あんな声を上げるなんて、どんな夢だったんだ?」
「いや別に大した夢じゃ……ちょっと顔近づけないでっ、もうたくさん───」
「はあ?それはどういう意味だ、貴様ッ」
「別になんでも……ッ、わぁっ、大佐の顔、怖いッッ!!」
「な……ッ?ハボック!!」
 夢にうなされ現実のロイの顔から逃げ出そうとしたハボックは、飛んできたロイの焔にお尻を焼かれる羽目になったのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の原動力ですー、嬉しいですv

ええと、なんでこんな妙な話かと言いますと……。先日からヤフーメールの隅っこに出てくる文字広告にこんなのがありましてね。
「洗うだけでぷる肌!女性たちがトリコの秘密」
これを見て「ああ」と思われた方と「なに?」と思われた方がいるだろうなぁ(苦笑)「トリコ」って言うマンガがあるんですよ。美食屋のトリコっていう筋肉モリモリのカッコいいお兄ちゃんが主人公の話。この広告「虜」って漢字で書いてあればなんてことないんですが「トリコ」だとどうしてもそっちのお兄ちゃんの顔が浮かんじゃって……女性たちみんなトリコになってるの?って(苦笑)そんなわけで軍部総ロイ化。ちょっと怖いかもしれない(苦笑)相変わらず阿呆な脳みそでスミマセン(汗)

以下、拍手お返事です。

風汰さま

あはは、もうすっかりハボックが可哀想な話になってますね(苦笑)うちのロイハボ、良いですか?ううう、そう言って頂けて嬉しいですーッ!これからも可愛いハボック目指して頑張りますねvおお、風汰さまもエドハボお好きですか?うふふ、嬉しいです〜vあのエンディング!私も見るたび「あれってエドだよねぇ」って言ってます。あれ、絶対エドに見えますよね!(笑)是非また色々語って下さいませ、お待ちしてますvv
2011年11月27日(日)   No.131 (カプなし)

豆騎士続・片恋編
エドハボ未満

「ただいまっ、少尉!」
 司令室に向かう廊下の途中、せっかくの長身を少しばかり猫背に丸めて歩く姿を見つけて、エドワードは大声で叫ぶ。そうすれば振り向いた空色が自分の姿を認めて優しく細められるのを見て、エドワードは満面の笑みを浮かべた。
「おう、大将、おかえり」
 そう答えるハボックのところで止まりきれず、エドワードは少し行き過ぎたところで足を止める。そうすれば、すぐに追いついてきたハボックの手が伸びて、エドワードの頭をポンポンと叩いた。
「元気そうだな、大将」
「当たり前だろ。少尉は相変わらずデカいな」
 エドワードは身長差を強調するようなハボックの仕草にわざと軽口を叩くように言う。少しは伸びているにもかかわらずちっとも縮まらない差を嘆けば、クスリと笑う青年にエドワードはまた彼のところに帰ってこられたのだと実感した。
 ロイの片腕であるハボックは気さくで人懐こい事もあって、エドワードにとっては彼を取り巻く大人たちの中で出会った当初から割と親しい存在だった。そんなハボックがエドワードの中でその存在の大きさを増したのは、ある小さな事がきっかけだった。
 捜し求めている石の情報が数回続けて空振りに終わり流石にへこんでいたものの、持ち前の意地っ張りと強がりがそれを外に出すことを良しとしなかった。普段通り、明るく元気に振る舞うエドワードを見ていたハボックがぽつりと言ったのだ。『辛いときは泣いていいんだぜ』と。それに反論しようとするエドワードの頭をガシッと腕に抱え込んだハボックが『今日の風は涙が出そうなほど冷たいなぁ』と言った時、強がりの少年の目から溢れた涙がハボックの軍服の袖を濡らした。少しして顔を上げたエドワードが『今日の風は冷たすぎる』と騒げば色の変わった軍服に気づかぬフリで笑ってくれたハボックが、エドワードの中で大きな存在になったとして何の不思議があったろう。
(まあ、少尉にとっちゃ特別なことでもないんだろうけどさ)
 彼のあの優しさは特別自分だけに向けられるものではないのだろう。それでもエドワードはハボックの優しさが嬉しかったし、もし出来ることならあの優しさを独り占めしたいと思う。
「あ、そうだ、少尉。俺、今回はちょっと長くここにいるんだけどさ、この間のシチュー、また食わせてくんない?」
「いいよ、ここんとこそんなに忙しくないし。そうだな、明後日の夜はどう?」
「オッケ、オッケ!やりぃ、少尉の料理、楽しみにしてたんだよ」
 司令部に来る前から考えていた言葉をさも今思いついたとでもいうように言えば、望んでいた答えが返ってきてエドワードは内心小躍りした。
「よし、少尉のシチュー、食えることになったし!大佐にガツンと一発言ってくるぜ!」
「あはは、程々にな、大将」
 優しく笑う空色にいつか自分だけを映させてやるのだと、エドワードはそう思いながらハボックが誰よりも敬愛してやまない錬金術師の部屋の扉に手を伸ばした。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手もとっても嬉しいですv

「豆騎士」です。ハボックサイドを書いたらやっぱりエドサイドも書きたくなったので、つい(苦笑)しかし、左の最近の更新10個のうち5個がエドハボって……。うーん、ブームって怖いなーッ(汗)

以下、23日拍手お返事です。

日記の開封実況中継 の方

わー、あんな妙な実況中継、ドキドキ楽しんで下さってありがとうございますー!最後になんとかハボを引けてハボックラバーの面目躍如といったところでしょうか(笑)こちらこそいつも読んで下さってありがとうございますvこうやって読んで下さって声をかけて頂ける幸せは鋼の神さまがくれてるのかなとも思っています(笑)あなた様にも鋼の神さまが微笑んでくれますようにv
2011年11月25日(金)   No.130 (カプ色あり)

豆騎士片恋編
エドハボ未満

「ただいまっ、少尉!」
 バタバタと大きな足音と共に聞こえた元気な声に、司令室に向かって廊下を歩いていたハボックが振り向く。鎧姿の大きな弟とは対照的に小柄な体で飛ぶようにかけてくる少年を見て、ハボックは空色の目を細めた。
「おう、大将、おかえり」
 エドワードはスピードを緩めきれずにハボックを少し行き過ぎたところで足を止める。ハボックは数歩歩いてエドワードに並ぶと金色の髪をポンポンと叩いた。
「元気そうだな、大将」
「当たり前だろ。少尉は相変わらずデカいな」
 少しは伸びたんだけどなぁ、となかなか縮まらない身長差を嘆くエドワードにハボックはクスリと笑った。
 いつの頃からだったろう。この十も年下の少年に恋心を抱くようになったのは。姉ばかり四人もいる末っ子で、小さな頃から弟が欲しいと思っていたせいで、自然と時折イーストシティに立ち寄るこの少年に目が向くようになっていたのかもしれない。たった十五でとてつもない運命に敢然として立ち向かっていくその力強い眼差しに、気がついた時にはどうしようもなく惹かれていた。ごく偶のほんの少しの邂逅に、交わされる短い言葉の端々に、エドワードの強さと優しさを垣間見る度ハボックは彼に惹かれ、この少年をその過酷な運命から守ってあげたいと思うようになっていた。
(まあ、大将にとっちゃ、そんなの余計なお世話ってとこだろうけど)
 元気よく旅の話を聞かせるエドワードを見つめながらハボックは思う。エドワードに惹かれている事は確かだったが、ハボックにはそれを彼に打ち明けるつもりはなかった。ハボックの想いは彼には必要のないものであり、ハボック自身、こうして時折エドワードとの間に小さな喜びを積み重ねる事だけで十分と思っているからだ。
「あ、そうだ、少尉。俺、今回はちょっと長くここにいるんだけどさ、この間のシチュー、また食わせてくんない?」
「いいよ、ここんとこそんなに忙しくないし。そうだな、明後日の夜はどう?」
「オッケ、オッケ!やりぃ、少尉の料理、楽しみにしてたんだよ」
 以前、たまたま食事に招いた時、出したシチューをまた食べられると嬉しそうに笑う少年に、ハボックもつられて笑みを浮かべる。
「よし、少尉のシチュー、食えることになったし!大佐にガツンと一発言ってくるぜ!」
「あはは、程々にな、大将」
 司令室の扉を開けて元気よく飛び込んでいく少年の背を見つめて、ハボックはまた一つ手にした小さな喜びをそっと胸に抱き締めた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みになりますv

「豆騎士」です。まだ両想いになる前の話。あんまり書くとハボロイ、ロイハボサイトの看板に偽りありって言われそうなんですが(苦)でも、実は結構このカプも好きなんですよね。なんかちょっと今、密かにマイブーム(苦笑)お好きじゃない方にはゴメンナサイと言う事でっ(汗)
2011年11月23日(水)   No.129 (カプ色あり)

1122
「大佐、これ。ボタンとれかかってたの、付け直しといたっスよ」
「ああ、すまんな。ありがとう」
 上着を示してそう言うハボックにロイが答えれば、空色の瞳がニコリと笑う。ハボックはロイの上着を玄関のクローゼットにしまうと、ロイがリビングに散らかした本やら書類やらを片づけ始めた。それが済むとキッチンでロイの好きなハーブティーを淹れ、ソファーで本を読むロイの前に置いた。
「ちょっと買い物行ってきます。何か用事あるっスか?」
 そう尋ねられてロイはちょっと考える。それから「ああ」と思いついて言った。
「万年筆の先が痛んでるんだ」
「書斎のペン立てに立ってる奴っスね。修理に出しておきます」
 最後まで言わないうちにハボックが引き継いで言う。それにロイが頷くとハボックはジャンパーに腕を通しながら言った。
「晩メシはこの間から食べたいって言ってたポトフにしますね。ああ、そうそう」
 出ていこうとしたハボックは戻ってくると椅子にかけてあった膝掛けを取る。ソファーに寝ころんで本を広げているロイの足下に膝掛けをフワリとかけた。
「今日はこの秋一番の冷え込みなんですって。アンタ、すぐ風邪引くんだから気をつけてくださいね」
 ハボックはそれだけ言って「じゃあ」と出かけていってしまう。その背を見送って、ロイはもぞもぞとソファーの上に身を起こした。
「マメだなぁ……」
 今日は久しぶりに二人揃って休みだ。寝坊した上のんびりブランチを済ませた後はダラダラと本を読んでいたロイとは対照的に、ハボックは朝早くから起きて細々(こまごま)としたことをやっていた。今日に限らずハボックはよく働く。階級が下であるからロイのような対外的な業務はないものの、ロイの護衛やそれ以外の業務を考えれば忙しさとしては二人にそれほど差があるとは思えない中、ハボックは家に戻ってくるとくるくると手際よく動いては、ロイが快適に過ごせるよう家の中を整えてくれていた。
「アイツ、自分の事はどうしてるんだ?」
 必要なことは勿論だが、ロイが本を読んだりするようにハボックは自分のやりたいことをやっているのだろうか。うーん、と日々のハボックの様子を思い浮かべてロイは、眉間に深い皺を寄せた。
「……やってないんじゃないか?いつだって私の世話ばっかりで」
 あまりの居心地の良さについつい甘えてしまっていたが、よく考えれば自分とハボックは対等の立場でここにいるのだ。このままハボックにばかり負担をかける訳にはいかない。
「よし」
 暫く考えていたロイは、思いついた考えに頷いた。

「え?今日、メシいらないんスか?」
「ああ。お前の手料理もいいが、偶には外で食べたいからな」
 ロイは買い込んだ食材の紙袋を手にしたハボックに言う。コートに手を通すロイにハボックはちょっと困ったように言った。
「ええと、安売りになってたの、今日中に食った方がいいからオレは家で食おうと思うっスけど」
「そうか?まあ、私はいないから適当にしてくれ」
 ロイはそう言ってそそくさと出ていこうとする。玄関までついてきたハボックに思い出したようにロイは言った。
「これからは出来るだけ外で食べるつもりだ。ああ、それから。私のシャツ、クリーニングに出してくれ。家で洗わなくていいから」
「え?でも」
「じゃあな、行ってくる」
 言いかけたハボックの言葉を遮って言うと、ロイは飛び出すように家を出る。バタンと扉を閉じて、ロイは満足そうに笑った。
「よし。これでハボックも少しは楽できるだろう」
 そう呟いたロイの顔にピュウと冷たい風が吹き付ける。一瞬家に戻ってハボックの温かい手料理を食べたい気持ちになったが、ロイは首を振ってその気持ちを追いやると冷たい空気の中首を竦めて出かけていった。

「もう少し旨い店だと思っていたが」
 ロイは久しぶりに行ったレストランからの帰り道、がっかりとした様子で呟く。ハボックと一緒に暮らすようになってからすっかりご無沙汰していたレストランの料理は、以前食べたときの半分も美味しいとは思えず、ロイはろくに手をつけないまま店を出てしまった。
「ハボックの料理が旨すぎるんだ」
 元々上手ではあるのだろうが、ロイ好みにレシピをアレンジしたハボックの料理は本当に旨い。そのせいですっかり家で食べる習慣がついてしまって、今もやっぱり家で食べればよかったと思い始めた自分を、ロイは慌てて叱りとばした。
「せっかくハボックに自由な時間を作ってやろうとしてるんだ。我慢我慢」
 そうロイが呟いたとき、目の前にサッとチラシが差し出される。思わず受け取ってしまったそれを見るロイにチラシ配りの男が言った。
「スパ、本日開店だよ!寒いからあったまっていきなよ」
 男はそう言うと通行人にせっせとチラシを配って歩く。宣伝する男を見送ったロイは手元に視線を戻すと、広告をしげしげと見つめた。

「ただいま」
「お帰んなさい。結構遅かったっスね」
 玄関の扉を開けて中に入ればハボックが顔を出して言う。ロイのコートを受け取ってハンガーに掛けながら、ハボックが言った。
「風呂、沸いてますよ。寒かったっしょ?アンタの好きなラベンダーの入浴剤入れてある───」
「風呂なら入ってきた」
 ハボックの言葉を遮って言うロイにハボックが目を丸くする。
「入ってきたってどこで?」
「本日開店のスパの広告を貰ったんだ。試しに行ってみた。広くて綺麗で気持ちよかったぞ」
 ロイはそう言いながらリビングに入った。
「風呂、沸かしたんなら入ってこい。ゆっくり入ってきていいぞ、お前、いっつも烏の行水だからな」
 そう言ってロイはソファーに腰を下ろす。膝掛けを引っ張って足下にかけた時、ハボックがボソリと言った。
「オレのしてる事、大佐には迷惑っスか?」
「え?」
 突然の言葉にロイは驚いて顔を上げる。そうすれば俯いて立っていたハボックが続けた。
「メシも家じゃ食わないっていうし、クリーニングもしなくていいって。オレのメシじゃ大佐の口に合わない?オレが洗濯したんじゃ袖、通せない?」
「そう言う訳じゃ───」
「風呂も、オレ、大佐が気持ちよく入れるようにって毎日一生懸命磨いてたつもりだったんスけど、気に入りませんでした?あ、もしかしてオレが同じ風呂使うの、気持ち悪かった?」
「そう言う訳じゃないッ!!」
 ロイは思わず大声で叫んで立ち上がる。そうすればハボックが俯いたまま言った。
「じゃあ、なんで?」
「それは」
 なんと説明したらいいのだろう。ロイが言葉を探していると、ハボックがため息をついた。
「迷惑なら迷惑って言ってくれたらオレ……」
「だからそうじゃない!私はただお前に負担をかけたくないと思っただけだ!いつだって私の面倒ばかり見てて、お前、自分のやりたいこと一つも出来てないだろう?私は好き勝手にやってるのに、お前ときたらいつだって……ッ」
 本当はもっとスマートにハボックに自由な時間を作ってやりたいと思っていたのに、こんな風に説明する羽目になって、ロイは内心舌打ちする。それでもせめてハボックにもっと好きなように過ごして欲しいと言おうとすれば、ハボックが顔を上げて言った。
「オレは大佐にいろいろしてあげたいんス。大佐のためにメシ作ってあげたいし、気持ちよく仕事に出られるようにシャツにアイロンかけてあげたい。一日働いて疲れて帰ってきたら、のんびり風呂に入って欲しい。オレ、やりたいことやってるっス」
「ハボック」
「オレは大佐の世話焼くのが好きなんス」
 そう言って見つめてくるハボックにロイはぽすんとソファーに腰を落とす。ハアとため息をついて言った。
「私はてっきりお前の負担になっているとばっかり」
「そんなことねぇっス。大体負担になってんだったらこんな事やってないっスよ」
 ハボックはそう言ってロイの前に跪く。ロイの手を取って言った。
「だから、これからも大佐の世話焼いてもいい?」
「…………だったらメシ、食わせてくれ。あそこのレストラン、味が落ちててろくに食べられなかったんだ」
「はいっ」
 そう言われてハボックが元気よく立ち上がる。
「結局二人分、作ったんスよ。すぐ用意しますから。あ、風呂、入ってきてもいいっスよ?」
「ラベンダー風呂だったな。じゃあ入ってくる」
「のんびり浸かってきていいっスよ」
「出たら、この間買った杏酒飲みたい」
 用意しておけよ、と言ってリビングから出ていくロイを見つめて、ハボックが嬉しそうに笑った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、もー、いっつも励まされてますッ!嬉しいですvv

今日は「いい夫婦」の日ですね。そんなわけでこんな話ー。きっとハボはロイの世話を焼くのが好きなんだろうなぁと。ああ、私も世話焼いて欲しいぜ、ハボになら!!

全然話違いますが、先日息子にくっついてメイトに行ってきましたら鋼のラバーストラップ売ってるの見つけましてね。おお、これは例の久しぶりにハボックが入ってるってやつジャン!!ってわけで、早速3個購入→店の階段の隅っこで開けてみる。一個目、リザ、二個目、アル、三個目、オリビエ。…………更に2個購入→再び階段の隅っこで開ける。一個目、ヒューズ、二個目、オリビエ。…………さて、ここまで2,500円つぎ込んでハボどころかロイもゲットできてません。売り場に残っているストラップは残り3個。ここで買わずに帰ったら絶対後悔しそう、でも買ってみてウィンリー、ウィンリー、オリビエとかだったら泣く、どうしよう、どうするか、こうやって悩んでる間にも誰か買っちゃうかも!どうする、自分!?どうするよ??…………チーン。残り3個購入。この後は店で見ても家で見ても追加購入は出来ないのでとりあえず帰宅。リビングのカーペットに正座していざ開封〜。一個目、アームストロング少佐……いらねーし!二個目、エド……エドかぁ。いつもならいいけど、今は出てきて欲しくなかったよ……。三個目……。これでウィンリーだったらどうしよう。開けた途端ドラ○エの呪われた防具をつけた時のように「デロデロデロデロデーン」って曲が頭に流れたら……ッ!!頼む、ファンファーレ鳴ってくれ!!頼むーッッ!!―――開封。…………ハボックキターーーーッッ!!やったーッ!!バンザーイ!!バンザーイ!!うーれーしーいいいvv鋼の神様、ありがとうぅっ!!ロイが出なかったのは残念ですが、ハボックが来たからもうそれだけでッッvv……って、妙な実況中継でスミマセン(汗)ハボックゲットで嬉しかったもんでー(苦笑)でも、8個買ってダブりが1個って、実は結構いい成績かもしれない(笑)

以下、拍手お返事です。

やっぱり みつき様のハボックが の方

うわ〜ん、ありがとうございます!!時に「うちのハボって相当妄想入ってるよね」と思う事もあるので、そんな風に言って頂けると泣きそうなほど嬉しいですvvこれからも愛おしんで頂けるよう、愛を込めて書きたいと思いますv

490000万打おめでとうございます♪ の方

いつもいつもありがとうございます!!そう言って頂けるたび、続けてきてよかったーvと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたしますねv
2011年11月22日(火)   No.128 (カプなし)

恋猫23
ハボロイ風味

 何日かハボックにつれられて司令部に通ううち、段々と内部の作りを覚えてくる。ハボックの姿を探して廊下を歩いていたロイは、聞こえた笑い声に足を止めた。
「やあだ、もう。ジャンってば」
「んなこと言ったってさ」
 コロコロと鈴のような笑い声をたてる女性と楽しげに話すハボックの姿に、ロイはキュッと唇を噛み締めた。
 ハボックはよくモテる。本人はあまり自覚はないようだったが、人懐こく明るくて裏表のない性格は男女を問わず人気があった。
 ロイは喋る二人の姿を暫く見つめていたが、なにも言わずに今きた道を司令室に戻っていった。
「あ、ロイ君、ハボック少尉、いましたか?」
 ハボックを探しに行くと言って出ていったと思ったらすぐ戻ってきたロイにフュリーが尋ねる。だが、ロイは首を振ると窓辺の椅子に腰掛けた。ガラス越しに晴れた空に枝を伸ばす木が見える。赤く色づいた葉をつけるその姿になんだか不意に泣き出しそうになった時、ロイの黒髪を大きな手がポンポンと叩いた。
「ハボック」
 振り向けばハボックが咥え煙草で立っている。じっと見上げてくるロイを見てハボックが言った。
「ロイ、さっきいたっしょ。なんで声かけてくれなかったんです?」
 彼女、ロイを紹介して欲しいっていってたんスよ、と言うハボックを見ていられずにロイは目を逸らした。
「あの女性は彼女なのか?」
「へ?」
 そう聞かれてハボックはキョトンとする。次の瞬間プッと吹き出してハボックは言った。
「違いますよ、そんな事言ったら殺されます」
「でも、すごく親しそうだった」
 ジャン、と呼んでいた事を思い出してロイが呟くように言う。ハボックは煙草の煙をロイにかからないよう吐き出して答えた。
「エリカは士官学校時代の同期なんスよ。それに彼女、来月結婚するっスから」
「そ、そうなのか?」
 そう聞いてロイは内心ホッとする。自覚のないまま唇に笑みを浮かべるロイを見下ろしていたハボックは、ロイの体をヒョイと抱き上げた。
「わ」
 突然のことにロイは慌てて金色の頭にしがみつく。目をまん丸にして見つめてくるロイにハボックは言った。
「ね、帰りに焼き芋買って帰りましょうか。角の八百屋で作ってる焼き芋、旨いんスよ」
 ね?と笑う空色に。
「大きいの!大きい奴を買って半分こしよう!」
「いいっスね、それ」
 ロイは元気よく言って大好きな金色にギュッと抱きついたのだった。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、更新励みになってます、嬉しいですぅv

「恋猫」です。実はすっかり更新するのを忘れてました(殴)つい目の前に書きたいものがあるとそれまで書いていたものを忘れるっていう……。だから日記連載、放置が多いんですよね(苦)危ういところで放置に転がらなかったので、もう少し真面目に更新したいと思います〜。

そうそう、49万打リク頂きました。ロイハボで里帰りなお話です。ここのところ47万、48万、49万と続けてリク頂けて嬉しいです〜vしかし、キリリク一覧見てたらロイハボの方が俄然多いですね。やっぱうちってロイハボの方が需要あるのかしら(笑)

以下、拍手お返事です。

阿修羅さま

こちらこそありがとうございますvもういっこくらい秋ネタで書けるといいなと思ってるんですが、どうなるかなぁ(苦笑)日に3回更新って、スゴイですね!私も自転車操業で日に3本とか書いたりしますけど、毎日はとてもできませんよー(苦笑)わー、なんか押しつける形になってしまったようで恐縮ですー(汗)一応書き上げたので、読み返したらお届けにあがりますねv

風汰さま

キリリクありがとうございますv趣味丸だし、大歓迎ですよvうふふ、ハボの実家〜vじゃあクリス姉さんとか出しちゃおうかな。確かロイハボのハボは末っ子長男で姉が四人いる設定なんですよね。そんなところにロイと二人で里帰り(笑)お届けするのはちょっと先になると思いますが、楽しく書かせて頂きますので暫しお待ち下さいね。
2011年11月20日(日)   No.127 (ハボロイ)

暗獣31
「よう、ロイ」
 チャイムの音に扉を開ければ見たくもない髭面が満面の笑みを浮かべて立っていて、ロイは無言のまま扉を閉めようとする。それをいつものように足で阻んで、ヒューズは隙間から差し込んだ手でガシッと扉を掴んだ。
「いい加減素直に迎え入れたらどうよ」
「お前なんぞ迎え入れる扉はない」
 ロイは冷たく言い捨てて扉を閉めようとする。だが、腰にしがみついてきた手にクイクイと引っ張られて、ロイは下に向けた視線を困ったように細めた。
「ろーい」
 甘えるように小首を傾げるハボックをロイはじっと見つめる。真っ直ぐに見返してくる空色にロイは大きなため息をついた。それと同時に手を離した扉から嬉々として入ってくるヒューズを横目で見ながら、ロイは思い切り舌打ちして言った。
「お前、最近ヒューズに甘いぞ」
「ヤキモチか?ロイ」
 眉を顰めて言えばニヤニヤと笑ったヒューズに途端に返されて、ロイはヒューズを睨みつける。「いやーん、こわーい」と気持ち悪い猫なで声でハボックにしがみつくヒューズの頭を拳固で殴って、ロイはフンと鼻を鳴らした。
「で?」
 喋るのも勿体無いと言うように短くロイが尋ねる。そうすればヒューズが抱えていた紙袋に殴られた頭をわざとらしくさすっていた手を突っ込んで、ガサガサと音を立てて中から何やら取り出した。
「これよ、これ。グレイシアの実家からいっぱい送ってきたから持ってきた」
 そう言ってヒューズが取り出したのは大きなサツマイモだった。
「ほら、ハボックちゃん、立派なサツマイモだろっ?」
「折角だがハボックはものを食わんぞ」
 ロイがそう言えばヒューズが泣きそうな情けない顔でロイを見る。
「そんな顔をされたってそうなんだから仕方ないだろう?」
 まるで苛めているような気になってロイが言い訳がましく言うと、ヒューズがズイとロイに迫った。
「ならお前でいい。ロイ、庭で焼き芋作って食おう」
「はあ?なんで私が?」
「焚き火で焼き芋作って見せたらハボックちゃんが喜ぶ。喜ぶところ、見たいだろ?」
 痛いところを突かれてロイはウッと言葉に詰まる。ヒューズはロイの背中をグイグイと押しながらハボックを見た。
「ハボックちゃん、庭で焼き芋しよう!焚き火でサツマイモ焼くんだ、楽しいよ」
 誘われてハボックがパッと顔を輝かせる。そんな顔をされてはロイとしてももう「やらない」とは言えず、背中を押すヒューズを振り返って言った。
「先に庭に出て落ち葉を集めておいてくれ。準備してくるから」
「判った」
 漸くやる気になったロイに頷くと、ヒューズはハボックの手を引いて庭に出て行く。二人を見送ってロイはキッチンに行くとアルミホイルやら新聞紙やら必要なものを取り出した。それを手に庭に出るとヒューズ達が焚き火をするための落ち葉を集めている。小さな腕に落ち葉を抱えてせっせと運ぶハボックを見れば、ロイの顔に笑みが浮かんだ。
「ハボック、芋を包むからおいで」
「えーッ、ハボックちゃんは落ち葉運ぶのを手伝ってくれてんのよ」
「やかましい、お前一人でやれ」
 ロイはヒドイだのズルイだの喚くヒューズを放ってハボックを手招く。呼ばれて近寄ってきたハボックと一緒に地面に座り込むとサツマイモに手を伸ばした。
「ほら、こうやって濡らした新聞紙に芋をくるんでその上から更にアルミホイルで包むんだ」
 ロイはそう言いながらくるくるとサツマイモを包む。それを見たハボックは小さな手で大きなサツマイモを掴むと、地面に広げた新聞紙にくるんだ。更にそれをホイルで包んでギュッギュッと押さえる。出来上がった包みを見てパアッと顔を輝かせ、ロイに見せた。
「ろーい」
「ああ、上手に出来たな」
 ロイは笑って頷くと隙間からちょっとだけ顔を出したサツマイモをホイルを伸ばして隠してやった。そうやって二人でサツマイモを包んでいると、落ち葉を集め終えたヒューズがやってくる。残りのサツマイモを包むのを二人に任せて、ロイは立ち上がると集めた落ち葉に火をつけた。
「ろーいー」
「煙いぞ、ロイ」
 火をつけたばかりの時は煙ばかり吐き出す焚き火にハボックとヒューズがゲホゲホと咳き込んで苦情を言う。
「喧しい、芋を焼きたきゃ我慢しろ」
 だが、ロイが一番効果的な言葉で二人を黙らせるとやがて焚き火は落ち葉の奥に熱い熾きを蓄え始めた。
「そろそろいいぞ」
「よし、入れるぞ、ハボックちゃん」
 ロイの声に二人が芋を手にいそいそと寄ってくる。赤く燃える焚き火の奥に包んだ芋を押し込んだ。
「さあて、後は焼けるのを待つばかり」
 ヒューズはハボックを見てニカッと笑う。枯れ枝で時折芋を返して、正面ばかり当たっていると腹が熱くなるので自分達も焚き火に当たる面を返しながら、三人は焼き芋が出来るのを今か今かと待った。
「ハボック、尻尾を焦がさんようにな」
 お尻を焚き火で炙っているハボックにロイが言う。言われて慌てて尻尾を見るハボックにヒューズが笑って言った。
「そろそろいいんじゃねえ?」
「そうだな」
 ロイは頷いて枯れ枝でサツマイモの包みを引っ張り出す。ブスリと先に包みごと刺すとヒューズに差し出した。
「ほら」
「剥いてくれねぇの?」
「甘ったれんな」
 一応聞いてみるものの冷たく返されて、ヒューズは仕方なしに芋を枝から抜き取る。「アチィッ!!」と手の上でポンポンと芋を跳ね上げればハボックが一緒になって跳ねた。
「遊んでる訳じゃねえのよ、ハボックちゃん」
 眉尻を下げてヒューズが言えばハボックがキョトンとする。ヒューズはアチアチと騒ぎながらも包みを剥がし、出てきたサツマイモを真ん中から二つに折った。
「おおお」
 折れた箇所から黄金色の断面を覗かせるサツマイモにヒューズは目を輝かせる。アツアツの湯気を上げるそれにかぶりつけば、しっとりホクホクした芋の自然な甘みが口いっぱいに広がった。
「旨いっ」
「本当か?半分寄越せ」
 旨そうなヒューズの様子にロイはヒューズが持つ芋に手を伸ばす。だが、ヒューズはその手をペシッとはたき落として言った。
「自分で剥けよ、ロイ。熱いの苦労して剥いたんだから」
「ケチ」
「ケチでいいもーん、ああ、旨い」
 そう言って旨そうに食べるヒューズを恨めしげに睨んだものの、旨そうな湯気を上げるサツマイモを見ればロイも我慢してはいられなくなる。焚き火の中から芋を取り出すと熱さをこらえて包みを開いた。
「……旨い」
 黄金色のそれにかぶりつけば広がる甘みにロイは目を見張る。混じり気のない賛美にヒューズが満足そうに頷いた。
「そうだろう?感謝して食えよ、ロイ」
「別に芋が旨いのはお前の手柄じゃないだろう?」
 ロイはそう言ってもう一口芋をかじる。すると不思議そうに見上げてくる空色に気づいて、ロイはハボックの鼻先にサツマイモを差し出した。
「甘くていい香りがするだろう?時間をかけてゆっくり焼くとこうなるんだ」
 ロイに言われてハボックは黄金色のサツマイモからのぼる香りをクンクンと嗅ぐ。そうしてにっこりと笑うハボックの金色の頭をロイはポンポンと叩いた。
「ハボックちゃんも食べられたらなぁ」
「仕方ないさ。それにこれだけでハボックは十分満足してるみたいだ」
 サツマイモを頬張りながら残念そうに言うヒューズにロイは言う。ハボックは焚き火の奥を枯れ枝でつついたり、尻尾を焚き火で温めたりと、彼なりの方法で楽しんでいるようだった。
「そうかな……そうだったら嬉しいけど」
 ロイの言葉にヒューズがホッとしたように言う。その後暫く、黙々とサツマイモを食べる事に専念していた二人の間に。
 プ〜。
 何やら音が響いて、ロイとヒューズは顔を見合わせた。
「イヤだなぁ、ロイ君ってば。いくら気の置けない友人の前だからって」
 ププッと吹き出してヒューズが言えばロイが途端に目を吊り上げた。
「私じゃないぞッ、人のせいにするなッ!」
「えっ?俺だってしてないぞッ」
 言われてヒューズも言い返す。そんなヒューズに、ロイはフフンと小馬鹿にしたような笑みを浮かべて言った。
「お前は昔っからそうやって誤魔化すのが上手かったな」
「よく言うぜ!そりゃお前の事だろっ」
 やったのはお前だと言い合ううち、側に丸めて置いてあった新聞紙やらホイルやらを二人は投げつけ始める。子供のようにムキになって投げ合っていると、一際大きく“プ〜ッ!”と音が響いてハボックがロイの袖を引いた。
「ハボック?……え?」
 引っ張られて見下ろせば、ハボックが葉っぱを口に当てている。葉っぱに向かって息を吹き出せば唇に押し当てた葉っぱが震えてプ〜と音をたてた。
「草笛……」
 そう呟いてロイはヒューズと顔を見合わせる。やれやれと座り込んで二人は苦笑した。
「久しぶりに童心に返った気がする」
「そうだな」
 そう言って笑いあうと、ヒューズが言った。
「今白状すれば勘弁してやるぜ?」
「まだ言うか」
 ニヤニヤと笑う髭面をロイが思い切り引っ張ればヒューズが大袈裟な悲鳴を上げる。学生の頃に帰ったようにじゃれ合う二人の上を、ハボックの草笛の音が鳴り渡った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになります!嬉しいですvv

「暗獣」です。「秋ネタ!」って叫んだら阿修羅さまがネタを下さいましてv「焼き芋とおなら」です。ハボック、もの食べないしなぁと考えてまたまたヒューズに登場頂きました。おなら、本当にしてないのか実はこっそりしてたのか。その辺はご想像にお任せしますということで(笑)阿修羅さま、ネタ、ありがとうございますv

以下、17日拍手のお返事です。

阿修羅さま

ネタ、使わせて頂きましたvこんなんなりましたが如何なもんでしょう(笑)キリ番、490002!惜しいッ!いつもならニアピン賞でどうぞと言うところなのですが、今回49万打申請ありました〜、ごめんなさい。10万打超え、うわ、早いですね!凄い、おめでとうございます!!でも、やる気停滞中ですか?阿修羅さまの更新速度は並みじゃないので、やる気停滞中でも他のサイトさんよりよほど更新してそうな気がしますが(笑)んー、やる気復活する方法……なんだろう。私なら人さまから貰う萌えですが……。んー、10万打お祝いで何かご希望のもの(出来れば女体以外で←エチ書けないから(苦笑)を書いて進呈させて頂く……なんてのじゃ復活しませんかね(苦笑)

風汰さま

おおお、49万打、キリ番踏みましたか!わーい、ありがとうございます!!でも、色々総動員って、何を?(笑)うちのサイト、ページ移動じゃカウンター回らないでしょう?まあ、それはさておき是非49万打キリリクしてやって下さいね。まだ先に頂いたのが消化出来てないのですぐには書けませんが、お待ちしておりますのでvv
2011年11月18日(金)   No.126 (カプなし)

豆騎士続続・身長編
エドハボ風味

「まったくもう……ッ、あんな事聞くみんなもみんなだけど、大将だってあんなあけすけに言わなくても……ッ」
 ハボックは司令部の廊下をドカドカと靴音も荒く歩きながら呟く。羞恥と困惑と少しの怒りとで涙目になった目尻を赤く染めたハボックは、勢いよく曲がった角の向こうから来た人物と思い切りぶつかってしまった。
「うわっ?!」
「ッと」
 ぶつかった勢いのままハボックは後ろによろめく。長身のハボックとぶつかったにもかかわらず軽い驚きの声を上げただけの相手は、よろめくハボックの腕をグイと引いて支えてくれた。
「なにをやってるんだ、お前は」
「大佐っ?」
 半ば呆れたような声に視線を向ければロイが僅かに眉を寄せて立っている。ハボックの顔を見て一瞬目を見張ったロイは、ニヤリと笑った。
「なんだ、また鋼のに苛められたか?」
「ッ?!別にそんなんじゃねぇしッ!」
 からかうような言葉にハボックはムッとしてロイの手を振り払おうとする。だが、ロイは掴んだ腕を引き寄せるようにしてハボックに顔を近づけて言った。
「泣いてるじゃないか。どうせあのやんちゃ坊主に好き勝手なことされたんだろう?」
 可哀想になぁ、とロイは軽く首を振る。
「いっそ私に乗りかえないか?」
 ロイがそう優しく囁いた時。
「なに人の恋人にちょっかい出してんだよッ、このエロ大佐ッッ!!」
「大将っ?」
 ハボックを追いかけてきたエドワードが金色の目を吊り上げて二人に近寄ってきた。ハボックに身を寄せるロイから大事な恋人を引き剥がすように取り返すと、背後に庇いながらロイを睨む。
「アンタみたいのがいるからああやって虫よけをしなくちゃいけなく───」
「あんなもん大した役にたたん。むしろいらん興味を煽るだけだ」
 エドワードの言葉を遮ってロイはフンと鼻を鳴らした。
「お前はハボックをほったらかしにしている。コイツが他の誰かに心変わりしたところで責める権利はない、違うか?」
「な……ッ、俺は少尉をほったらかしになんて……ッ」
 ロイの冷たい言葉に反論しようとしてエドワードは言葉に詰まる。グッと拳を握り締めるとエドワードは(きびす)を返して走り去ってしまった。
「大将っ!……大佐!」
「事実だろう?現に鋼のだって言い返せなかった」
「だからって言い過ぎっス!」
 ハボックはそう言うとエドワードを追って走り去る。
「ちょっとした意地悪だよ、お前が鋼のに甘すぎるからな」
 その背を見送ってロイはそう呟いた。

「大将ッ、待って、大将!!」
 ハボックは扉を抜けて中庭に出たところで漸くエドワードに追いつく。腕を掴めばその手を振り払ったものの、エドワードはそれ以上は逃げずに立ち止まった。
「大佐のいう事なんて気にする必要ないから」
「でも本当の事だ」
 ハボックが言えばエドワードが背を向けたまま答える。暫しの沈黙のあと、ハボックが口を開いて言った。
「それでもオレは大将の事が好きだけど」
 その言葉にエドワードが弾かれたように振り向く。見上げてくる金色の瞳を見つめてハボックが言った。
「大将が旅に出てる間、オレの事なんてろくに思い出さないの、判ってる。でもオレは大将が好きだよ」
 そう言って笑う空色にエドワードは顔を歪める。何度も口を開きかけて、そうして俯くと吐き出すように言った。
「俺は卑怯だ。少尉の事ほったらかしにしてるのに、それでいて縛り付けておきたいと思ってる」
「うん、知ってる」
「俺はズルイ」
「でも好きだよ」
 その言葉にエドワードは顔を上げてハボックを見る。いつもと変わらない飄々とした顔で見下ろしてくるハボックをじっと見つめて、エドワードは言った。
「なあ、軍やめて俺と来ない?」
「それは無理、判ってるだろ?」
「大佐がいるから?」
 そう聞けばハボックが笑みを浮かべる。それを見てエドワードが吐き捨てるように言った。
「くそッ、あのエロ大佐っ!いっそぶち殺してやりたい」
「そんな事したらオレは大将を殺すよ」
 なんの気負いもなく吐き出された言葉にエドワードは目を見張る。それから目を逸らすとガリガリと頭を掻いて言った。
「なんで大佐より先に俺が少尉に出会わなかったんだろう」
「それを言うなら大将だってオレより先に大佐に出会ってるじゃん」
 おかしそうにそう返されてエドワードは鼻に皺を寄せる。
「諸悪の根源は全部大佐だ」
「でも優しい人だよ、こうやってオレ達に話す機会くれてる」
 そう言って笑うハボックにエドワードは不満そうに顔をしかめた。
「少尉がそんなだから心配になんだよ」
「なんで?こんなに大将一筋なのに」
「判ってるけどっ」
 笑っている年上の恋人にエドワードは視線を逸らして怒鳴るように言う。暫くの間空を睨み上げていたが、ハボックに視線を戻して言った。
「なあ、俺、そのうちデカくなるから」
「うん」
「大佐よりも少尉よりもデカくなって誰にも負けないイイ男になるから」
「うん」
「だからずっと俺といよう」
「うん」
 笑って頷く空色にエドワードはホッとしたように腕を伸ばす。
「まあ、デカくなったらもっと少尉の事啼かせちゃうと思うけどな」
「それは余計」
 もう、とため息を零す唇を引き寄せて、エドワードはそっと口づけたのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気の素です、嬉しいですvv

しつこいですが「豆騎士」です(苦笑)今回はちょっぴりシリアス?に。お互い好きあってるんですが、譲れないものもあるってとこでしょうかね。

そうそう、コメント頂いて気づきました。49万打回りました〜。いつもながらにありがとうございます!!本当に来て下さる皆様が続けていける原動力だと思います。これからもご一緒に「ハボック好きだーーーッッ!!」って叫んで下さったら嬉しいです。是非是非これからもよろしくお願い申し上げます

以下、16日拍手お返事です。

さらっちさま

こんにちは、はじめましてvいつも遊びに来て下さってありがとうございますvうおお、「豆騎士」萌えて下さってますか!わーん、嬉しいですーvv好きで書いているとはいえ時には「いいのか、こんなの垂れ流して」と思う事もあるのでそう言って下さると本当に嬉しいですv「豆騎士」は小さくて元気なエドに振り回されるのんびりハボックという感じで書いてます。これからも「豆騎士」含め頑張りますので、お付き合いよろしくお願いいたしますねv
2011年11月17日(木)   No.125 (カプ色あり)

豆騎士続・身長編
エドハボ風味

「じゃあ、俺ちょっと図書館行って調べものしてくるから」
 と、大声で年上の恋人の可愛さを力説していた少年が部屋を出ていくと、司令室を気まずい沈黙が支配する。まるで煙で煙幕を張ろうととでもしているようにスパスパと煙草を吸うハボックに、最初に沈黙を破って話しかけたのはブレダだった。
「お前さ、もう少しちゃんと躾ろよ。甘やかし過ぎだろう、アレ」
 酒が入っている時ならともかく、素面で友人の恋愛事情―――それも男同士の、を聞かされるのは正直勘弁して欲しい。人前で話させるなとブレダがげんなりして言えば、ハボックが視線をさまよわせながら答えた。
「言ってるよ、オレだって。恥ずかしいからみんなの前でそう言う話するのやめてくれって。でも、大将ってば“虫よけだ”って言ってやめてくれないんだもん」
 弟のアルと旅を続けるエドワードはなかなかイーストシティには帰ってこられない。その間大事な恋人を一人残しておくのがエドワードは心配で仕方ないのだ。
「虫よけねぇ……」
 確かにハボックはモテる。ハボックに限って心変わりなどするはずないと判っていても心配する気持ちも判らないではなかった。
 ブレダは空色の目元を薄紅に染めるハボックをじっと見つめる。そうすればエドワードの話を聞かされ続ける間に浮かんだ疑問を黙っていることが出来なくなった。
「なあ、ホントにお前の方が抱かれてるわけ?」
「ッッ!!」
 突然の言葉にハボックは煙草を吸い損ねて激しく咳込む。体を二つに折って激しく咳込んだハボックは真っ赤な顔でブレダを睨んだ。
「聞くか?普通っ、そんなことッ!!」
「だって気になるじゃん。お前とアイツと、身長差どれだけあるんだよ」
 長身のハボックが受け入れるとしたら、とあまりしたくはないがつい考えてしまう。好奇心丸だしで見つめてくる友人に言い返そうとしたハボックが視線を感じて見れば、ファルマンとフュリーまでが自分を見つめていることに気づいて、ハボックは赤らめていた顔を更に真っ赤に染めた。
「信じらんねぇッ!!ファルマンとフュリーまでッ!!」
「ですが……ねぇ?」
「ええ、あそこまで聞かされると気になるっていうか」
「気にしなくていいってばッ!!」
 ハボックがあまりの恥ずかしさに顔を上げていられず机に突っ伏した時。
「そんなに気になるならもっと詳しく話してやろうか?」
「ッ?!大将ッ?!」
 聞こえた声にハボックがガバッと顔を上げる。声が聞こえた方を見やれば出かけたはずのエドワードが扉に寄りかかるようにして立っていた。
「図書館行ったんじゃなかったのか?」
「いや、ちょっと忘れ物してさ、戻ってきたんだけど」
 エドワードはそう言って満面の笑みを浮かべて部屋の中を見回す。
「みんなすっげぇ気にしてるみたいだから詳しく話してやるよ」
「ワーッッ!!頼むからやめてッ、大将ッッ!!」
「でも、ここでちゃんと話さないと実は俺の方がヤられてるって誤解されたら嫌だし」
「誤解しないッ!!みんな誤解なんてしないってばッ!!な?ブレダっ、ファルマンっ、フュリーっ!!」
 これ以上話されてはかなわないとハボックは必死に言い募る。だが、エドワードはそんなハボックの気持ちなどお構いなしに話し始めた。
「まあ、さっきから言ってるように俺と少尉じゃちょっとだけ身長差があるからさ、突っ込みながらキスするのは少しばかり大変な訳よ。でもやっぱりキスしたいし、少尉のカワイイ顔間近に見ながらヤりたいじゃん。ブレダ少尉達だってそうだろ?」
「……まあな」
 同意を求められてブレダは仕方なしに頷く。そうすればエドワードは「だろ?」と言って続けた。
「だから、まず少尉の長い脚をこう、太股の辺り持ってグーッと上に押し上げてー」
 と、エドワードはゼスチャー付きで説明する。ハボックが必死にその腕を引いてやめさせようとするのに構わず、エドワードは言った。
「胸に着くくらいまで押し上げると、少尉ちょっと苦しそうな顔すんだよ。でも、俺に挿れて欲しいからって我慢するその顔がまたそそるっていうか!」
「大将ッ!!」
「押し上げた脚を左右に開くと少尉のアソコが挿れてって強請るみたいにヒクつくのが見えて、そこに少尉のビンビンに勃ったナニからアレが垂れてきたりすると、もーすっげぇイヤラシイ眺めでさ!」
「もうやめてってばッ!!」
「そこにこう、俺のを押し当てると、少尉、一瞬すっごい不安そうな顔すんだよね。だから“挿れるのやめる?”って聞くと“平気だから挿れて……大将の挿れて欲しい”ってさーーッッ!!」
「ワーーーーッッッ!!」
 その後。羞恥に耐えきれなくなったハボックが半泣きで飛び出して行ったのをエドワードが追いかけて出ていくまでの十分間。こってりたっぷりベッドの上での秘め事を聞かされたブレダ達は、つまらない好奇心を抱いてしまったことを心の底から思い切り後悔したのだった。


いつも遊びにきてくださってありがとうございます。拍手も嬉しいです〜v

でもって、前回の続きです。いや、なんかついその後の司令室が浮かんでしまって(苦笑)R指定入れておいた方がよかったですかね?オンリー派の方にはごめんなさい(汗)相変わらず節操のないサイトですー(苦笑)
2011年11月14日(月)   No.124 (カプ色あり)

豆騎士身長編
エドハボ風味

「なあ、少尉。少尉ってガキの頃からそんなにデカかったの?」
 エドワードは前後逆に腰掛けた椅子の背を抱え込んでハボックに尋ねる。ハボックは書類を書く手を止め、久しぶりにイーストシティに立ち寄った少年の顔を見て答えた。
「オレもその年頃の時は大将とそんなに変わらなかったぜ」
「うそっ、マジ?!」
 長身のハボックの言葉にエドワードはガバッと身を起こす。キラキラと期待に目を輝かせて、エドワードはハボックを見つめて尋ねた。
「じゃあ、どうやってそんなにデカくなったんだよ。やっぱぶら下がり健康法?!」
「……それって体より腕が伸びそうじゃねぇ?」
 身を乗り出して聞いてくるエドワードにハボックは眉を顰めて答える。プカリと煙草の煙を吐き出して、ハボックは言った。
「そうだなぁ、運動はしてたけど。バスケとかバレーとか。後は牛乳飲んでたな、一日に一リットルのボトル一本とか」
「ぎゅううにゅうう〜〜??」
 ハボックの言葉にエドワードは思い切り嫌そうな声を上げる。そのあまりのしかめっ面にハボックはプッと吹き出した。
「そんなに嫌がることないのに」
「だって牛の乳だぜっ?なんでそんなもん飲んで人間がデカくなれるんだよ」
 おかしいだろッ、と喚くエドワードをハボックはクスクスと笑いながら見つめる。手を伸ばしてその金髪を優しく撫でて言った。
「別に急いでデカくならなくてもいいだろ?大将は今のままでも十分カッコイイんだからさ」
 な?と笑う空色をエドワードはじっと見つめる。それからニヤリと笑って言った。
「そうだよな、別に背が小さくたって少尉のこと可愛がってあげるのには支障ないし」
「な……ッ?!」
 エドワードの言葉にハボックはボフッと煙草の煙を吐き出す。ゴホゴホと妙なところに入り込んでしまった煙に噎せながら、ハボックは真っ赤な顔でエドワードを睨んだ。
「なに言い出すんだよッ、大将!」
「昨日だって少尉、すっげぇ善がりまくってたし」
「大将ッ!!」
 バンッと机を叩いて立ち上がるハボックの真っ赤に染まった顔をエドワードは楽しそうに見上げる。その長身を見上げてニヤニヤと笑いながら言った。
「実はさ、デカい自分が背の小さい俺にヤられるってのに興奮してるとかない?“苦しい”とか言いながら、すっげぇ感じまくってるよね、少尉」
「たっ、たい……ッ」
「少尉のあんな顔見られるなら別に俺、デカくならなくてもいいや。体は小さくてもナニは少尉をアンアン啼かせるだけのデカさはあるわけだしっ。むしろ今よりデカくなったら、少尉シンドイだろ?今日もちょっと辛そうだもんな」
「ッッッ!!!」
 真っ赤になって悶死しそうになっているハボックを楽しそうに見上げていたエドワードは、視線を横に移動させる。
「なぁ、やっぱ体がデカくなったらナニもデカくなるんだろ?ブレダ少尉」
「……だろうな」
「そっかぁ。じゃあやっぱり少尉のためにもデカくなるのはもう少し先にしておいてやるよ」
 俺ってば少尉思いっ、と楽しそうに言うエドワードの声を聞きながら、自分たちのことも少しは思って欲しいと思うブレダ達だった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新励みになりますー、嬉しいですvv

お久しぶりの「豆騎士」です。いや、ネット見てたら替え唄で「豆粒ラバーズ」っていうのがあって、あれ?と思って歌詞を見てみたらやっぱりエドネタだったんで、つい(笑)大部屋でデカイ声で話すエド、多分ものっ凄いオープンだと思うのできっと周りは迷惑だろなぁと(苦笑)関係ないですが、今我が家では「池袋ラバーズ」がブームで、某動画サイトでカバーがアップされてるのがエンドレスでかかってたりします(苦笑)好きだ、これ。歌うと酸欠になるけど(笑)

以下、拍手お返事です。

阿修羅さま

「霧屋2」お楽しみ頂けて良かったです。もっと活躍させられればよかったんですが今一つ力不足で(苦)「グラプスヴィズ」も阿修羅さまからなんですよね(笑)丁度アップ順の関係で続けてになりましたが引き続きお楽しみ頂けたら嬉しいです。今度はばっちりエロ行きますから!(笑)「暗獣」ネタ色々ありがとうございます〜v暖炉ネタは冬ネタでやろうと思ってました(笑)今頂いたネタでちょっと書き途中なので書けたらアップしますねーvいつもありがとうございますv
2011年11月11日(金)   No.123 (カプ色あり)

暗獣30
「今日は凄い風だな」
 ロイは吹き付ける風に目を細めて呟く。見上げる空は強い風に全ての雲が吹き払われてしまったかのように、真っ青に晴れ渡っていた。
「早く帰ろう、寒くてかなわん」
 晴れて陽射しもあるのだが如何せん風が強すぎる。探していた本が入荷したと古書店から連絡のあった帰り道、受け取った本を窓越しの陽射しの中で読みたいと、ロイは足を早めた。
 漸く辿り着いた家の門扉を開ければ、風に煽られた庭の木々が大きく枝を振ってロイを迎える。その枝から風に毟り取られるように葉を降らせる様を、横目で見ながらロイは玄関のノブに手を伸ばした。
「うわッ」
 その瞬間吹いた突風に煽られ、ロイは慌てて伸ばした手でノブを掴む。そのまま鍵を開け中に入った。
「ただいま」
 ロイはそう言いながらキッチンに向かう。手を洗いうがいまでして熱いコーヒーを淹れるとカップと本を手に二階に上がった。
「ただいま、ハボック」
 部屋の中、窓枠にしがみつくようにして爪先立ちで外を眺めているハボックにロイはそう声をかける。答える代わりに金色の尻尾を振るハボックの側に寄ると、ロイは小さなテーブルの上にカップと本を置いた。
「凄い風だ。折角の紅葉も終いかな」
 この窓から見下ろす庭は紅や黄色の紅葉に緑の木々が混じってとても綺麗だった。見納めかと残念そうに呟いてロイはハボックの金髪をポンポンと叩くと、定位置の椅子に腰掛け本を広げる。待ちかねていた本に瞬く間に没頭すれば周囲の事など目に入らなくなった。
 窓越しの陽射しの中、ロイは本を読み続ける。不意に強い風に閉めた窓がガタガタと大きな音を立てたが、ロイは僅かに眉をしかめただけで本から目を離さなかった。だが。
「――――」
 誰かに呼ばれたような気がしてロイは顔を上げる。キョロキョロと辺りを見回したが、唯一呼んでくれそうな姿は部屋の中になかった。
「気のせいか?」
 ロイはそう呟いて首を傾げる。少し待って本に視線を戻そうとして、ロイは聞こえた声に弾かれたように立ち上がった。
「ろーいー」
 微かに聞こえた声に、ロイはバンッと窓ガラスに飛びつく。ガラス越し、びゅうびょうと風が吹き荒れる庭に小さな姿があった。
「ハボックっ?!」
 必死に庭木にしがみついているものの、小さな体は今にも風に飛ばされてしまいそうだ。ロイは部屋から飛び出すと階段を駆け下り庭に出た。
「ハボック!!」
 ロイは急いで庭を走り上から見た辺りを目指す。風になびくハボックの尻尾をロイが見つけた時。
 ビュウウウッッ!!
 一際強い風が吹き抜けハボックの足がフワリと宙に浮く。しがみついていた木の幹から離れかけた小さな手をロイががっしりと掴んだ。
「ろーいーー!」
「ハボック!!」
 ロイはその手を手繰り寄せるようにハボックの体を引き寄せる。その腕の中に小さな体を閉じ込めホッと息を吐いた。ロイはハボックを抱き締めて足早に家の中に入る。バタンと扉を閉め強い風を遮ってからハボックを下に下ろした。
「どうしてあんな風の中、外に出たりした?!危ないだろうっ?」
 こうして子供の姿をしているものの、元々のハボックは小さな毛糸玉だ。その体はとても軽くて強風の前ではひとたまりもなかった。
「ハボック」
 厳しい声で名を呼べば、ハボックがロイをじっと見る。そっと握った手を差し出してくるのを見てロイが手を出せば、ハボックはロイの手の上に大事に持っていた物を置いた。
「落ち葉?」
 ロイは手のひらに置かれたものを目を見開いて見つめる。それは真っ赤に色づいた一枚の落ち葉だった。ハボックは落ち葉をロイに渡すとパタパタと駆けて二階に上がっていってしまう。落ち葉をじっと見つめていたロイは、視線を二階へと移し、階段をゆっくりと上がった。部屋に入ればハボックは、ロイが帰ってきた時と同じように窓枠にしがみついて外を見ている。ロイは落ち葉を大切に本の間に挟んだ。そうして背伸びしているハボックを抱き上げる。
「今日、全部散ってしまってもお前のおかげでずっと紅葉が楽しめるな」
 ありがとう、と囁けばハボックが嬉しそうにロイの頬に金色の頭を擦り付ける。
 その日、真っ青に晴れ渡った空に紅や黄色の葉が舞い踊る様を、名残惜しむように二人は窓から眺めて過ごした。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みですー、嬉しいですv

ちょっと間があきましたが「暗獣」です。今日のテーマは「木枯らし一号」かなー(苦笑)もういい加減秋ネタが尽きそうですよ〜。最近はすっかりハボックがロイと過ごす四季がテーマになってる暗獣ですが、流石に秋はもう出てこないかなぁ。そうなると次の暗獣は12月か?(苦笑)とにかく家から一歩も出られないのが大変です。でも、書きたいから必死に脳みそ絞ってます、もうカスカス。ネタ、ありませんか?(苦笑)

以下、拍手お返事です。

おうかさま

ご連絡遅くなりましたが、頂いてすぐ変更しておきました。お知らせ有難うございました。

はたかぜさま

本、楽しんで頂けて嬉しいです〜v宝石箱だなんてそんないいもんじゃないですが(苦笑)あの頃は本当に手当たり次第書いてましたから。日記だとssの後に説明書きがあるのでなんでそんな話か判るんですがねぇ。ちなみにヒューズを偲ぶ話を書いた日は父の誕生日で義姉の命日でした。だからこんな話(笑)「赤壁」や「エラゴン」はそのまんま映画観に行った後だったし。そんな感じで書き散らかしたんで、宝石箱というより junk box の方があってるかもです(苦笑)

風汰さま

「商品目録」え?いいんですか?くどーいエロオンリー(笑)ちょっと時間かかりそうですが、気長にお待ち下さいね。エロエロ読んだらスランプ脱出します?そう聞いたら頑張るんだけどなぁ(笑)「オブシディアン」うふふふ、だって風汰さまのリクですよー。風汰さまが小まめに感想を下さるので、つい調子に乗ってガツガツ書いてます(笑)確かに電話したらハボック、すぐイっちゃいそうです(爆)次章そろそろロイが帰ってくるかなと思ってます。続きも濃く頑張りますのでついてきて下さいね!(笑)
2011年11月07日(月)   No.122 (カプなし)

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