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2012年01月の日記

2012年01月31日(火)
暗獣44
2012年01月28日(土)
内職
2012年01月24日(火)
暗獣43
2012年01月22日(日)
暗獣42
2012年01月18日(水)

2012年01月14日(土)
題名
2012年01月12日(木)
恋猫25
2012年01月10日(火)
暗獣41
2012年01月05日(木)
千年樹〜新年編
2012年01月03日(火)
初日(はつひ)

暗獣44
 コトリと音を小さな音を立ててロイはカップを取り上げる。口を付けたカップの中が空になっているのを、飲もうとカップを傾けてから漸く気づいて、ロイは眉を寄せた。
「もう一杯……」
 淹れるかと呟いたロイはふと壁の時計を見る。針が既に翌日へと時を進めていることに気づいて、ロイはやれやれとため息をついた。
「ここまでにしておくか」
 ここでまたカップを満たしてしまったら、夜が更けるまで本を読み続けるのは目に見えている。丁度本も新章に入るところでキリもよく、ロイは広げていた本を閉じてテーブルに置いた。
「ハボック」
 傍らに座るハボックに声をかければ、返事の代わりに欠伸が返ってくる。ソファーに深く腰掛け座面に脚を投げ出して、口を目一杯開けて大欠伸するハボックの姿に、ロイはクスリと笑った。
「すまん、遅くまでつき合わせてしまったな」
「ろーいー」
 眠そうに目をこするハボックの体をロイは抱き上げソファーから立ち上がる。リビングから出ようと扉を開けて踏み出した廊下の冷たい空気に、ロイは思わずリビングに戻った。
「そう言えば二階のストーブに火を入れてなかった」
 夕飯が済んだら火を入れようと思っていたのだが、ダイニングからリビングに移りそのまま本を読み始めてしまったのですっかり忘れ去っていた。昼間の陽射しで暖まった空気などもうとっくに失せて、寝室は冷えきっていることだろう。
「……ベッドに潜り込めば何とかなるか」
 このままソファーで眠ることも考えたが、やはり手足を伸ばして眠りたい。そう思ったものの寒い廊下になかなか出られずにいれば、ハボックが腕の中でもぞもぞと動いた。
「ろーいー」
 立ち上がったにもかかわらず二階に上がろうとしないロイを、ハボックが焦れたように呼ぶ。それでもロイが動かないのを見て、ハボックはもぞもぞっともがいてロイの腕から抜け出た。
「ハボック」
 そのままリビングから出ていってしまうハボックを追いかけて、ロイも廊下に出る。途端に体がキュンと引き締まる空気の冷たさに、寒ッと呟きながらロイはハボックに続いて二階へと階段を上がった。
「……本当に寒いッ」
 判ってはいたが、シンシンと身に染みる空気の冷たさに、ロイは眉を寄せる。そんなロイを後目にビロード張りのトランクに潜り込み、まあるく丸まって目を閉じるハボックの体にブランケット代わりの膝掛けをかけてやると、ロイもベッドに潜り込んだ。
「う……冷たい」
 冷えた部屋の空気がブランケットの中まで入り込んでいるようで、ロイは冷たい寝具の感触に手足を縮めて丸くなる。体温が移って寝具が暖まり眠気を誘うかと思いきや、逆に冷たい寝具に熱を奪われてロイは寒さにガタガタと震えた。
「寒いッ!!」
 暫く待ってみたが、寒さは募るばかりだ。
「このまま寝たら凍死しそうだ」
 ストーブをつけて眠ることも考えたが、それだと結局部屋が暖まるまで眠れそうにない。うーん、と考えたロイはガバリとブランケットを跳ね上げるとベッドから降りた。
「ハボック!」
 そう声をかけながら壁際のトランクに歩み寄る。ロイをおいて早々に眠りの国の住人と化したハボックを見下ろすと、ロイは乱暴に膝掛けを剥ぎ取った。
「ハボック」
「……ろーい」
 迷惑そうに見上げて小さく身を丸めるハボックに悪いと思いながらも、ロイはハボックの脇に手を差し込み小さな体を持ち上げる。
「ろーいー」
 せっかく眠ったところを無理矢理起こされて、ハボックは恨めしそうにロイを見た。
「すまん、だが寒くてな。眠れないんだ」
 ロイは苦笑混じりにそう言うとハボックをベッドに下ろす。自分もベッドに上がってハボックごとブランケットにくるまると、小さな体を胸に抱き締めた。
「はあ、寒かった……」
「ろーい」
 金髪に頬をすり寄せてため息をつくと、ロイは目を閉じる。腕の中の体はほんのりと暖かく、ロイは満足そうに笑みを浮かべた。笑みを浮かべた唇から、瞬く間に規則正しい寝息が零れる。ロイに抱き締められたままじっとしていたハボックは、不思議そうに首を傾げた。
「ろーい?」
 そう呼んで小さな手でロイの頬をペチペチと叩いてみたがロイが起きる気配はない。じっとうっすらと笑みを浮かべたロイの寝顔を見つめていたハボックは、ロイの胸にグリグリと頭をこすりつけた。
「ろーい」
 呼べば返事のようにトクトクと優しい心音が返ってくる。ハボックは嬉しそうに笑うとロイの寝息を聞きながらそっと目を閉じた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます!拍手、更新の励みです〜、嬉しいですvv

「暗獣」です。なんかもういい加減まったり過ぎて飽きられている気がしなくもないですが(苦笑)とりあえず、ハボックで暖をとるロイってことで。ふさふさ尻尾があったかそうだなぁと。

以下、拍手お返事です。

だんだん鋼が減っていく中 の方

うわぁ、嬉しいお言葉、ありがとうございます!!そんな風に言って頂けると書く意欲が湧いてきますvまだまだ楽しんで書いていくつもりでおりますので、どうぞこれからもお付き合い下さいねvv
2012年01月31日(火)   No.155 (カプなし)

内職
「1530センズ……」
 休憩所のソファーに腰を下ろしたハボックは、ボトムのポケットを探って引っ張りだした金を見つめてそう呟く。一度ポケットに突っ込んだそれをもう一度引っ張りだしてみたが、やはり手の中にあるのはしわくちゃの千センズ札一枚と五百センズ硬貨が一枚、それと十センズ硬貨が三枚だけだった。
「給料日まであと一週間もあるってのに、これでどうやって乗り切るんだよ……」
 給料日前に財政が逼迫して苦しくなるのは毎度のことだったが、これは近年希にみる財政難だ。ハボックは別のポケットから出した煙草のパッケージの中に残る煙草の本数を数えた。
「1、2……5本。あと開けてないのが一箱あるから全部で25本。一日5本……じゃ五日でなくなるじゃん、つか、一日5本じゃ我慢できないって」
 自他共に認めるヘビースモーカーの自分だ。例え飯を食わずとも煙を吸うのをやめるわけにはいかない。
「煙草二箱買ったら残り650センズ。って事は一日あたり90センズそこそこで乗り切れってか?アンパン一個だな……、いや、賞味期限切れそうなのをあそこの店で半額で投げ売りするから」
 そんな事を考えてハボックはハアとため息をつく。
「悲しい……悲しすぎる」
 賞味期限ギリギリのアンパン二個で朝昼晩の食事を賄う軍人がどこにいるというのだろう。
「とはいえ、大佐に縋るのも嫌だしなぁ」
 給料日前で金がないから奢って下さいなんて言おうものならどれほど嫌みを言われることか。その上何を要求されるか判ったものではない。
「一週間だし、いざとなったら水がぶ飲みして腹を膨らませれば」
 情けない事を呟いてハボックはテーブルの上に置きっ放しになっていた雑誌を何気なく手に取る。パラパラとめくったページの中の文字が目に飛び込んで、ハボックは手を止めた。
「アルバイト募集、時給……えっ?!ウソっ、マジ?!」
 食い入るようにバイトの募集広告を見つめていたハボックは、そのページを破りとると休憩所を飛び出していった。

「今日は給料日か。まあ、バイトのおかげでさほど待ち遠しくもなかったな」
 両手をポケットに突っ込んで軽く背を丸めたハボックは、咥え煙草で鼻歌を歌いながら司令部の廊下を歩いていく。あの時偶然見つけたバイトはその内容に見合わぬほど高額で、おかげでハボックは痛みかけのアンパンで飢えを凌ぐ生活をせずに済んでいた。
「すっげラクチンだし、また金がなくなったらやろう」
 ルンルンとスキップしそうな調子で司令室の扉を開けたハボックは、吹き出してきたオーラにギクリとして足を止める。このまま中に入っては絶対に拙いとそのまま回れ右して出ていこうとするハボックの耳に、ロイの低い声が聞こえてきた。
「ハボック、これは何だ」
「……え?」
 明らかに不機嫌なロイの声にハボックは足を止めて恐る恐る振り向く。その途端、不機嫌全開のロイと目があって、ハボックは身動きが出来なくなった。
「これはなんだと聞いているんだ」
「こ、これって……?」
 本当に判らずそう尋ねれば、ロイが手にしていた雑誌を机の上に投げる。気が進まぬまでもロイに近づき雑誌を手にしたハボックは内心ギクリとした。
「えっと……これがなにか?」
 それでも持ち前の面の皮の厚さで動揺を押し隠して尋ねるハボックの手から、ロイは雑誌を取り上げ一つの写真を指でトントンと叩いた。
「これはお前だろう?」
 ロイが指した写真は下着の広告写真で男性の腹から腿の辺りまでを写したものだ。売り出しているのはサーモスタット繊維で作られた下着で、写真は時間の経過に従って下着をつけた皮膚がどれだけ暖かくなるかの温度変化をその場所の温度によって赤や黄色の色分け表示で写し出しているものだった。
「なっ、なんでこんなのがオレだって判るんスか?ただの赤やら黄色やら緑やらの色分け写真じゃん」
 腰から腿にかけての写真とはいえ、これでは下着の形や色どころか肌の色すら判らない。個人を判別出来るものなどないだろうと言うハボックをロイはジロリと睨んだ。
「私を誤魔化せると思うな、ハボック。これはお前だ、そうだろう?」
 そう言って黒曜石の瞳でじーっと見つめられればハボックの背中を嫌な汗が流れる。瞬きすらせずに見つめられる事一分間、ハボックはがっくりと雑誌の上に手をついた。
「すんません、オレっス……」
「やはりな」
 フンと鼻を鳴らしてロイは腕を組む。
「お前、こんな姿を写真に撮らせてあまつさえそれを雑誌に載せるとは」
「でもっ、大佐じゃなきゃオレだって判んねぇじゃないっスか!」
「判る判らないの問題じゃない、よくも私以外にこんな格好」
 低い声で言ってユラリと立ち上がるロイにハボックは思わず飛びすさった。
「だって!給料日前で金なかったんスもんっ!このバイト、一時間やってバイト代2万センズっスよ!」
「ハボック」
 地を這うような声で名を呼ばれてハボックはジリジリと後ずさる。そんなハボックを睨みながらロイは隠しから発火布を取り出し手にはめた。
「───赦さんッ!!」
「わーッ、ごめんなさーいッッ!!」
 ボンボンッッと続けざまに飛んでくる火球から逃げて、ハボックは一目散に司令室から飛び出したのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みです、嬉しいですv

昨日50万を回りました〜。嬉しいですー、本当にありがとうございます!!こんな辺境まで遊びに来て下さる皆様には、感謝の気持ちでいっぱいです!!またこれからも色んなハボックを書いて行けたらいいなぁと、その中の一つでも二つでもお気に召して楽しんで頂けたら幸いですvこれからもどうぞどうぞ末永くお付き合い、よろしくお願いいたしますvvv

改めまして。先日テレビで変わった高額バイトの番組やってたのを見てたんですよ。プラモデルを代わりに作るバイトとか一時間電話で愚痴を聞くだけのバイトとか、不思議なバイトが色々あるもんだなぁと思ったのですが、その中にサーモスタット機能の下着をつけて五分おきにサーモカメラで写真を撮るってバイトがありましてね。一時間やって2万ですって。凄ッ!!サーモカメラで撮った写真とはいえ恥ずかしい部分の写真を載せるってことで、その分を上乗せした金額設定だそうですが、それでも凄いわ〜。これからは雑誌でそんな写真見かけたら「おお、2万円!」って思いそうです(笑)

以下、拍手お返事です。

風汰さま

こちらこそ今年もよろしくお願い致します!ロイハボ、ふふふ、楽しんで下さって嬉しいですvvMっぷりに磨きかかってますか?ありがとうございますvやっぱり苛められて啼いてるハボックはいいですよねvvあれ?ところどこど見られないというのはリンク切れって事でしょうか??わーッ、どこでしょう??判りましたら是非教えてやって下さい(汗)そちらの方は雪、降らなかったんですね。関東は全域で降ったんだと思ってました。そういや、実家の方も殆ど積もらなかったって言ってたっけ……。それから499995、ありがとうございます!リクエストお待ちしてますねv

香深さま

お久しぶりです!お元気ですか?頂いたピアスは今も大事に飾ってありますよ、萌えの素ですv500008、ありがとうございます!うわ、菫2!!すみません、すっかり放置になってしまって(汗)なるべく早く再開させますので今少しお待ち下さいませ〜。

りんさま

ありがとうございますvわーい、「見毛相犬」楽しんで頂けて嬉しいですvうふふ、そうそう、「考えているのか考えてないのか」なハボ!正しくそういうハボを書きたいと思っているので、そんなハボに振り回されるロイを可愛いと言って下さって凄く嬉しいですvv「初回衝撃」やさぐれハボックをロイがどう手懐けていくのか、どうぞ楽しみにお付き合い下さいませv

500000打おめでとうございます♪ の方

いつもありがとうございます!!こうやって声をかけて頂けるのが本当に励みになってますvこれからもどうぞよろしくお願い致しますvv
2012年01月28日(土)   No.154 (カプなし)

暗獣43
「もう朝か……」
 けたたましく鳴る目覚ましをブランケットの中に閉じこめてロイはそう呟く。いつになくシンと静まり返っている中、ロイは再び眠り込みそうになる意識を引き戻してベッドに体を起こすと、一つ大きな欠伸をしてベッドから降りた。寒さを堪えて手早く着替えると壁際に置いてあるビロード張りのトランクに近寄る。小さく丸まったハボックがふさふさの尻尾を枕代わりに眠っているのを見て、ロイは笑みを浮かべて柔らかいほっぺたをつついた。
「ハボック、起きろ。窓開けるぞ」
 ツンツンとつつきながら言えばハボックがむずかるように眉を寄せる。うーんと小さなトランクの中で体を突っ張って伸びをすると、ハボックは横になったままロイを見上げた。
「朝だぞ、ハボック」
 そう言われてビロードの感触から離れるのを惜しむようにぐりぐりと柔らかい頬をこすりつけたハボックは、四つん這いに身を起こす。そのままの体勢でトランクから出るとベッドの下にもそもそと入っていった。その様にクスリと笑って立ち上がったロイは窓に手をかける。窓を開き鎧戸を開けたロイは、目の前に広がったいつもとは全く違う景色に目を瞠った。
「凄い、ハボック、真っ白だぞ!」
 一面に広がる銀世界にロイは声を弾ませる。昨日の大雪がやんで真っ青に晴れ渡った空の下、世界は一面の雪景色となっていた。
「ハボック、ほら、見てみろ!」
 子供のようにはしゃいだロイがそう言ったが、ハボックはベッドの下に潜り込んで出てこない。焦れたロイは床に身を寄せベッドの下を覗き込んだ。
「ハボック、見てみろって。凄いぞ」
 そう声をかけるロイをハボックは迷惑そうに見つめる。だが、そんな視線もなんのその、ロイはベッドの下に手を突っ込むとハボックの体を引きずり出した。
「ろーいー」
 抗議の声にも構わずロイはハボックの体を腕に抱いて窓に近づく。開けっ放しの窓から入り込む冷気に、ロイの腕の中に逃げ込もうとするハボックの背を叩いてロイは言った。
「ほら、ハボック。凄いだろう?」
 そう言えばハボックが嫌々ながら顔を上げる。窓の外に広がる銀世界に、ハボックの空色の瞳が大きく見開いた。
「どうだ?凄いだろう?」
「ろーい!」
 まるで自分の手柄のように自慢げに言うロイをハボックが目を輝かせて見上げる。ロイの腕から身を乗り出すようにして窓の外の雪景色を見るハボックに、ロイは言った。
「庭に出よう」
 ロイはうきうきとした声でそう言うとハボックの返事を待たずに寝室を出る。階段を駆け降りたロイは厚手のジャケットを羽織り、ハボックにはもう一枚セーターを重ね着させて中庭の扉を開けた。
「う……さむっ」
 キンと冷えきった空気にロイもハボックも顔を顰めて首を竦ませる。それでも真っ白な景色に誘われるまま、二人は庭に足を踏み出した。
「凄いな、久しぶりだ、こんなの」
 毎年イーストシティでは雪が降るが、こんなに積もったのは久しぶりだ。ハボックがロイの腕から飛び降りて先に立って歩く小さな足跡を追いながら、ロイはゆっくりと歩いた。
「綺麗だなぁ」
 昨日、大雪の中帰ってくる時は遭難するかと周りを見る余裕も何もなかったが、雪がやんで晴れ渡った空の下、真っ白な世界は本当に美しい。冬になってすっかりと葉が散った枝に雪が積もってキラキラと輝く様は、季節外れの白い花が咲いたようでとても綺麗だった。
「凄いな、ハボック」
 そう声をかけて見れば、ハボックがポスポスと飛び跳ねながら雪に痕をつけて遊んでいる。その姿に思わず悪戯心が沸き上がって、ロイは小さな雪玉を作るとハボックの背中に投げつけた。
「ッッ!!」
 パシンッと当たって弾けた雪玉に、ハボックがびっくりして飛び上がる。振り向いたハボックめがけ、ロイはニヤリと笑ってもう一つ雪玉を投げた。
「ッッッ!!!」
「ははは、命中!」
 見事におでこに当たった雪玉が弾けてハボックが雪塗れになる。ゲラゲラと笑うロイを、ハボックは思い切り鼻に皺を寄せて睨んだ。
「ろーいーーーッ」
「雪合戦だ、ハボック!」
 ロイは開戦の合図とばかりにそう叫んで手早く握った雪玉を投げつける。庭の雪にポスポスと小さな足跡をいっぱい付けながら逃げ回ったハボックが、ちょっぴり息切れして手を休めたロイめがけて、積もった雪に手を突っ込んで大量の雪を跳ね飛ばした。
「ろーいーっ」
「うわわ」
 降ってくる雪から腕で顔を庇いながらロイも負けじと雪を跳ね飛ばす。庭の中駆け回って雪を飛ばし合っていた二人だったが、ハボックが木の下に入り込んだのを見たロイが枝を揺らして雪を落としてやろうと急いで回り込もうとした瞬間、ずるりと足を滑らせた。
「うわ……ッ!」
 手をばたつかせて倒れそうになる体を支えようとしたが、努力も空しくロイは雪の中に背中から倒れ込む。冷たい感触にうわぁと顔を顰めたロイは、射してきた陰に目を開けて見上げた。
「ろーい」
 真っ青な空をバックに空色の瞳が覗き込むようにロイを見下ろしている。吸い込まれるような二つの青に一瞬目を瞠ったロイは、ニヤリと笑って小さな体に手を伸ばした。グイと引っ張り逃げられないようにしたところで雪を掬って投げつける。真正面から雪を被って目をパチクリとさせたハボックは、次の瞬間顔を真っ赤にしてロイの上に飛び乗った。
「ろーいーーーッッ!!」
「あははは、これでお揃いだ。こら、飛び跳ねるな、ハボック」
 ポスポスとロイを雪に埋めようとするように飛び跳ねるハボックにロイがゲラゲラと笑う。雪塗れになって転げ回る二人の笑い声が冬の澄んだ青空に吸い込まれていった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みになってます、嬉しいですv

「暗獣」です。前回の翌朝ってことで。東京も昨日の夜から降り出した雪が久しぶりに積もりました。駅前の桜は雪が積もって花が咲いているみたいだし、裏の公園も真っ白ですよ。雪が多い地方の方には申し訳ないけど、やっぱり雪景色っていいなぁ(笑)


 
2012年01月24日(火)   No.153 (カプなし)

暗獣42
「寒い……」
 家に向かう道を歩きながらマフラーに半ば顔を埋めてロイは呟く。言葉と共に零れた息が冷たい空気に触れて瞬く間に真っ白な霧になった。
 イーストシティは今朝方から雪になっていた。寒いのが大嫌いなロイであるから今日は一日家に籠もって過ごすつもりだったが、古書店から待ちわびていた本が見つかったと聞けばじっとしていられない。幸い雪ははらはらと舞う程度だし、サッと行ってサッと帰ってくればいいだろうと家を出たのだったが。
 古書店を出た頃から強くなりだした雪で辺りは真っ白だ。傘など邪魔なだけだろうと持たずに家を出たロイの黒髪は、雪が積もって銀色に輝いていた。
「家に着く前に凍り付きそうだ……」
 厚手のコートに襟元はマフラーを巻き付け手袋もつけてはいるが、それでも足下から這い上がってくる冷気で震えるほど寒い。通り沿いに並ぶカフェの窓ガラスの向こう、カップを両手で包み込んで友人とおしゃべりしている可愛らしい女性の姿を見れば、自分も暖かいカフェオレで暖をとろうかとロイは思った。
「いや、そんな事をしたら家に帰れなくなりそうだ」
 一度暖かいところに入ったら二度と出られなくなりそうだ。ロイは暖かそうな空気を宿すカフェから無理矢理視線を剥がすと、歩みを早めた。
 商店街を抜け住宅が並ぶ通りに入ると益々寒くなった気がする。時折冷たい風が吹き付けて、睫まで凍ってしまった。
「家はまだか……」
 普段ならさほど遠くない筈の距離がとてつもなく長く感じられ、見慣れない真っ白な景色も相まって街中で遭難したような錯覚に陥る。感覚のなくなった足で雪を踏みしめ歩いていたロイは、降りしきる雪の向こうぼんやりと見えてきた我が家にホッと息を吐いた。
「やっとついた」
 吐き出した息が瞬く間に凍り付くのを感じながらロイは最後の数メートルを何とか歩き切る。家の敷地に入るところで滑りそうになって門扉にしがみつきながらも、ロイは漸く玄関の前まで辿り着いた。
「鍵……」
 ポケットの中に手を突っ込み、取り出した鍵を鍵穴に刺そうとしたロイは、穴が吹き付けた雪で塞がっている事に気づく。クソったれと手袋をつけた指で雪をガリガリと払い落として何とか鍵を突っ込むと、ガチャリと開けた扉から中に飛び込んだ。
「…………はあああ」
 冷たい風と氷のような雪から逃れて、ロイはガックリと扉に寄りかかる。
「よかった、帰れないかと思った……」
 こんな街の真っ直中で遭難なんて笑えない。ロイは心底ホッとすると中へと入っていった。
「ただいま……」
 暖かい空気に幸せを感じながらリビングの扉を開けたロイは、扉が開く音に振り向いたハボックに寒さで強張った笑みを浮かべる。ハボックの空色の瞳がまん丸になるのを見て、ロイは己の酷い格好に改めて気づいた。
「ろーい」
「はは……凄い雪だったよ、ハボック」
 と言ったつもりが口が強張って上手く喋れない。トコトコと歩み寄ってきたハボックはロイのコートに積もる雪に手を伸ばした。
「欲しいか?いくらでもあるぞ」
 ロイはそう言ってハボックの前にしゃがみ込む。ハボックはロイの肩やら頭やらに積もった雪を、嬉しそうに小さな手で集めた。
「ろーい」
 それをキュッキュッと握って雪玉にすると目を輝かせてロイに見せる。ロイは頭に積もった雪を集めてハボックが作ったのより少し大きめの雪玉を作った。
「この上にのっけてごらん」
 ロイに言われてハボックは自分が作った雪玉をロイが作ったそれの上に載せる。二つの雪玉がくっついて小さな雪だるまになった。
「ほら、雪だるまの出来上がりだ」
 ロイは手袋を外し、雪だるまの顔に指先でクリクリと目をつける。パアッと顔を輝かせるハボックにロイが言った。
「部屋は暖かいからすぐ溶けてしまうだろうけど」
 雪だるまをハボックに手渡し、ロイは濡れた服を着替えるために二階に上がる。冷たくなった服を替えれば漸く人心地ついて、今度は温かい飲み物でもと階段を下りてきたロイは、ハボックが寒い廊下の片隅に座り込んでいるのを見て目を瞠った。
「なにしてるんだ、こんな寒いところで」
 驚いてそう声をかければハボックが振り向く。座り込んだハボックのすぐ側に、ロイが渡した小さな雪だるまが置いてあった。
「ろーい」
 寒そうに身を縮めながら、ハボックはにっこりと笑う。両手を頬に当て小さな雪だるまを嬉しそうに見つめるハボックを見れば、ロイの顔にも笑みが浮かんだ。
「まったく、寒いだろうに」
 ロイはそう言いながらハボックを背後から抱き締める。肩越しに振り向いたハボックが嬉しそうに金色の犬耳をひくつかせるのに目を細めて、ロイは小さな雪だるまを見つめたのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みです!!

「暗獣」です。東京も金曜日には初雪が降りました。積もりこそしませんでしたが、結構一日中降ってて寒かった……。昨日の雨も時々みぞれぽかったし、明日の夜も雪の予報。うう、寒い。暑いよりは寒い方が好きとはいえ、身に染みる〜。出来る事なら常秋の国に住みたい。食べ物も美味しい季節だしv

ところで、ふと気がつけばカウンターがあとちょっとで50万です。シンジラレナーイ!始めた頃はどこまで続くかと思っていたものですが、良かった、節目を迎えられそうで(涙)これもひとえに遊びに来て下さる皆様のおかげと感謝の気持ちを込めまして、キリリク受付のカウンター設定を増やそうかなーと思います。いつもは1万単位ですが、今回限り499990〜500010の間で踏み抜かれた方、キリリクお受けいたします。まあ、キリリクはカウンター気にしてないと気付かないし、リクないまま過ぎる可能性も大ですが感謝の気持ちだけでもお届け出来れば(笑)カプはロイハボ、ハボロイどちらでも。女体、死にネタ以外なら基本オッケーです。一番重要なのは気長にお待ち頂けるって事だけで(苦笑)そんな感じで、踏み抜かれた方で気が向かれましたらリクしてやって下さい。

以下、拍手お返事です。

クズランキング1位(笑)流石ロイ・マスタングって の方

ふふふ、いいでしょう、ランキング1位(笑)中尉は絶対神様ですよね!零式、やっぱりハンカチ必要ですか!昔10をやった時最後三十分はボロボロ泣いた記憶があるんですが、そうかハンカチ必須ですか。誰も家にいない時にやらないとだわ(笑)

阿修羅さま

おーかーえーりーなさいーーーーッッ!!思ったより早くお声を聞けてとっても嬉しいです!!この寒い時期にシャワーだけは辛そうです、風邪ひきませんよう。体調全快にはもう少しかかるご様子ですが、どうぞご無理なさらないでくださいね。気分転換にうちのハボとロイがお役に立てたら嬉しいですv
2012年01月22日(日)   No.152 (カプなし)

 大嫌いな会議を終えてやれやれと司令室に戻ってきたロイは、扉を開けた途端飛び出してきた笑い声に眉を顰める。自分が我慢に我慢を重ねて会議での数時間を過ごしてきたというのに、仕事もせずに楽しげに言葉を交わしている部下たちを見れば、ムッとしてドカドカと部下たちの輪に歩み寄った。
「あ、大佐。お帰んなさい、会議お疲れさまでした」
 声をかける前にロイが司令室に入ってきたことに気づいたハボックが振り向く。パアッと爽やかな笑顔を浮かべたハボックにそう言われれば、ムカついた気持ちも八割方収まってロイは部下たちの輪に顔を突っ込んだ。
「なにを騒いでるんだ、仕事もしないで」
「仕事しないでって、今昼休みっスよ」
 そう言われて壁の時計を見れば12時を三十分ほども過ぎている。昼休みまで会議をやっていたのかと、ぐずぐずしていた進行役の事務官を内心罵るロイにフュリーが言った。
「アメストリス国民クズランキングですよ」
「クズランキング?」
「名前を入れて診断するとランキングが出るんです。まあ、一種のお遊びですよ」
「ちなみに300位以内はクズです」
 クズと聞いて眉を寄せるロイにブレダとファルマンが答える。
「で?みんな何位だったんだ?」
 どうせもうみんなやったんだろうとロイが尋ねればハボックたちが顔を見合わせる。にっこりと笑ってハボックが言った。
「オレは対象外だったっス。んで“超さわやか”ですって」
「超さわやか」
 ニコニコと笑みを浮かべるハボックは確かに超さわやかという言葉に相応しい。意外とあってるかもと思っているとブレダが言った。
「俺も対象外でしたよ。“とっても親切”って出ましたけどね」
「ブレダ、すっげぇ親切だもんなっ」
「お前に言われるとフクザツ」
 あははと笑いながらハボックが言えば、いつも振り回されてばかりのブレダが肩を落とす。それでも決してハズレではない結果に感心するロイにフュリーが言った。
「大佐もやってみますか?」
「そうだな、面白そうだ」
 ロイが頷くのを見てフュリーがキーボードを叩く。ロイ・マスタングと入力してエンターキーを押せば、数秒後に結果がパッと出た。
「“アメストリス国民クズランキング、ロイ・マスタング【第一位】”……えっ?第一位っ?」
 診断結果を口に出して読んでいたフュリーは思いがけない結果に素っ頓狂な声を上げる。一瞬シンと静まり返った司令室に次の瞬間ハボックたちの笑い声とロイの叫び声とが響き渡った。
「ぶわははははッッ!!大佐、一位だってっ!!」
「一位っ!!こんなの出るんですねッ!!」
「どうして私がクズランキング一位なんだッ!!」
 ゲラゲラと笑う部下たちの中、ロイが目を吊り上げる。
「絶対に信じないからなっ」
「まあ、お遊びっスからね」
 フンッと鼻息荒く言いきるロイにハボックがニヤニヤしながら言う。ロイに臑を蹴飛ばされたハボックが悲鳴を上げて逃げ回っていると、司令室の扉が開いてホークアイが入ってきた。
「ずいぶん賑やかね」
「あっ、中尉!中尉もどうっスか?アメストリス国民クズランキング!」
 ロイの蹴りから逃げてホークアイの背後に駆け込みながらハボックが言う。首を傾げるホークアイでロイの蹴りをガードしてハボックはフュリーに言った。
「フュリー!」
「はいっ、リザ・ホークアイ、と」
 頷いてフュリーは素早くホークアイの名前を入力する。エンターキーを押す音に、皆が覗き込んだ画面には。
 リザ・ホークアイ【対象外】神様
 シンと静まり返る司令室の中、ホークアイがファイルを手に首を傾げた。
「神様ですって。こんな結果もあるのね」
 ホークアイはそう言うとグルリと皆を見回す。
「さあ、お昼休みはおしまいよ。大佐、今日はなにが何でも書類を片づけて頂きますから」
 ファイル片手に言ったホークアイがロイの首根っこを掴んで執務室に消えるのを見送って。
「すっげぇ当たってるかも……」
 お遊びとは思えない結果に言葉を失うしかない一同だった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みです、嬉しいですvv

「全国人間のクズランキングを発表しったー」ってのをやってみましてね。結果は日替わりだそうですが、今日の結果、ハボックは圏外(参考順位 88384124位)、ロイは対象外(超さわやか)そして、本日の神様はマース・ヒューズさんでした〜(笑)ちなみにみつきでやってみたところ、堂々の第一位でしたよ!(爆)いやあ、色んなものをつくるものですね(笑)

あ、そうそう。拍手御礼ssの場所が判らないというコメントを頂きましたのでご説明をば。
日記の[拍手]もしくはタイトルページかテキストトップページの拍手アイコンをクリックして頂けると御礼のssが読めますが、今回追加いたしました御礼ssは二回目の拍手で読めるようになっております。新しい方を先に読めるようにした方がいいかなとも思ったのですが、一応続きものになっているので(苦笑)一回目で「羯磨」二回目で「羯磨2」がお読み頂けます。ご興味ありましたら二回叩いてやって下さい。そのうち拍手を入れ替えましたらdiamondもしくはpearlにあります「拍手御礼ss部屋」に格納されますので、お待ち頂いてそちらでお読み頂くのもありかと思います。不親切なアップの仕方でごめんなさいです〜(汗)

以下、拍手お返事です。

零式って の方

本当、零式って切ないゲームですよねぇ。と言いつつ、未だに第七章のところで止まったままなので、最後どうなるのか判ってないのですが(苦笑)早くストーリーが知りたいと思いつつなかなか進める時間がないまま、勝手な妄想ばかり膨らんでます(笑)拍手御礼判りづらくてごめんなさい。はい、そちらの事でございます(笑)うお、なんか凄い文字化けですね!なんで〜(笑)

はたかぜさま

わーん、優しいお言葉をありがとうございます!いつも欲しい時に欲しい言葉を下さるはたかぜさまは私の心が読めるんじゃないかと思いますよ。リレーは申し訳ないことになってしまいましたが、その分拙宅のハボロイ&ロイハボを頑張りますので、これからもどうぞよろしくお願いしますv「見毛相犬」楽しんで下さって嬉しいですーvこれ、私も相当楽しみながら書いているのでご一緒に楽しんで頂けて嬉しいですvv「初回衝撃」やさぐれ!(笑)なんというかこう、統一性なく色んな話を書き散らかすサイトですが、お楽しみ頂けているのであれば私もハッピーですvv
2012年01月18日(水)   No.151 (カプなし)

題名
「うーん」
 執務室に入ればロイが唸る声が耳に飛び込んできてハボックは首を傾げる。書類を手に近づきながらハボックは尋ねた。
「何を難しい顔して唸ってるんです?」
 そう聞かれて頬杖をついていたロイは体を起こす。椅子の背に体を預けてハボックを見上げた。
「タイトルが浮かばないんだ」
「タイトル?なんの?」
 ハボックは手にした書類にサインをくれるよう差し出す。パラパラと捲って内容をザッと確認したロイは、キャップをしたままの万年筆でサインの欄をトントンとつつきながら答えた。
「雑誌に寄稿する事になってな、本文は書けたんだがタイトルが浮かばん」
「本文書けたんならその内容をタイトルにすればいいじゃないっスか」
「それじゃあつまらないじゃないか」
「アンタね」
 ロイの言葉にハボックがげんなりとため息をつく。
「どうせ一部の連中しか読まないようなその手の堅苦しい雑誌に載せるような奴っしょ?つまらないとか面白いとか関係ないでしょうが」
 なんだっていいじゃんと、肩を竦めてハボックは書類をつついた。
「そんな事よりサインくださいよ。急ぎの書類なんスから」
 あからさまにどうでもいいという態度のハボックにロイは眉を顰める。手にしていた万年筆を机に転がし、ふんぞり返るように椅子に身を預けた。
「タイトルを考えるのを手伝え。決まらない限りサインしないからな」
「はあっ?なんでそうなるんスかっ?オレは関係ないっしょ!」
「煩い、サインが欲しけりゃ考えろ」
 フンと鼻を鳴らすロイの前にハボックはバンッと手をつく。
「オレにそんなセンスあると思います?聞く相手間違ってるっしょ!」
「煩いッ!時間がないんだ、さっさと考えろッ」
「いや、だって中身も判んないのに!」
 無茶言うなと喚くハボックにロイは書類を手に取った。
「考えないと破くぞ」
 そう言って破こうとするロイにハボックが飛び上がる。
「ギャーッ!やめてっ、それ提出しないとマジヤバイんスからッ!」
「だったら考えろっ、あと一時間で担当者が取りにくるんだ」
「なんでそういっつも泥縄なんスか、アンタ」
 うんざりしたように言うハボックをロイは睨みつけた。
「四の五の言うな!正確にはあと57分だっ」
「無理っ、全然浮かばないっス!」
 ギャアギャアと騒ぎながら必死に考えたタイトルが全て却下されるとは、この時の二人には知る由もなかった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手もパチパチ嬉しいですv

前にも書きましたが、タイトルを考えるのが本当に苦手です。今日から連載開始のロイハボもさっぱり浮かばなくて……orz 以前、作品にタイトル付けずに番号振っているっていうサイトさまがあると聞いたことがあるんですが、うちもそう言う風にしようかしら。「ロイハボ1」「ハボロイ1」って、おお、簡単でいいなぁ!(笑)でもって、タイトルだけでなくオリキャラの名前を考えるのも苦手です。こんだけオリキャラの多いサイトだって言うのに(苦笑)前はよくウィキの「ドイツ人の一覧」とか人名リスト見ながらゴロがいいのを選んでたのですが、最近はそれも面倒で(だって意外に時間がかかる(苦笑)ここのとこ野球の外国人選手の名前を拝借するという暴挙に出てます(苦笑)流石にダルビッシュとか野球見ない方でも知っているような名前は使えませんけども。そんなわけで、今回もろくでもないタイトルです。ああ、タイトルつけるセンスが欲しい(苦)

それから一つ残念なお知らせです。
「ハボロイリレー小説部屋」が諸般の事情により閉鎖の運びとなりました。読んで下さっている方には大変申し訳ありません。今後の予定と致しましては、三月末日にてリレー部屋を閉鎖致します。続きに関しましては、おうかさんの方でリニューアル作品か代替作品をゴールデンウィークを目途に発表して下さる予定です。当サイトとして、続きを書く予定は今のところありません。残念な結果になってしまい、読んで下さっていた方々、そしてご一緒させて頂いたおうかさんには本当に申し訳なく思います。ただ、決してハボロイへの熱が冷めての閉鎖ではありませんので、当サイトとしてのハボロイはまだまだモリモリ続けていく所存です。改めまして今後ともロイハボと合わせ拙宅のハボロイをよろしくお願いいたします。
2012年01月14日(土)   No.150 (カプなし)

恋猫25
ハボロイ風味

「あー、さむッ!」
 冷たい風が通りを歩く二人の間をヒュウと吹き抜けて、ハボックが首を竦める。寒そうに尻尾を揺らしながら隣を歩くロイを見下ろしてハボックは言った。
「寒くないっスか?ロイ」
「……平気だ」
 一応そう答えるもののロイの鼻は真っ赤になってとっても寒そうだ。ハボックは繋いだロイの手を握り直して少し足を早めた。
「急いで買い物すませて帰りましょう。風邪ひいちまう」
「そうだな」
 寒気が南下して今日、アメストリスはこの冬一番の寒さだ。強い北風も相まって、体感気温はいっそう寒く感じられた。
「知ってるか?ハボック。1メートルの風が吹くと体感気温が1度下がるんだ」
「へぇ、そうなんスか?───おばちゃん、ジャガイモちょうだい。あ、そのちっこいタマネギも」
 店の女性に指さして注文しながらハボックが答える。
「今日、最高気温五度って言ってたっスよ。今は夕方でもっと低いだろうし、五メートルの風が吹いてるとしたら……げ、氷点下じゃないっスか」
 そう口にすれば余計吹く風が冷たく感じられて、ハボックは大袈裟に身を震わせた。その隣でいかにも寒そうに肩を窄ませて立っているロイを見て、野菜を袋に詰めていた店の女性が言う。
「ホント今日は寒いわねぇ。晩ご飯はなにを作るの?」
「ポトフをリクエストした」
 寒さに歯の根が合わずにガチガチと震えながらロイが答えれば、女性はロイの握り拳ほどの小さなタマネギを更に袋に放り込んだ。
「早く帰っていっぱい作って貰いなさい。タマネギ、サービスしておいたから。じっくり煮込むと甘くて体が芯から暖まるわ」
「ありがとう」
「サンキュ、おばちゃん」
 言われてロイがにっこりと笑う。支払いを済ませてハボックは店を出て歩きだした。
「おばちゃんの言うとおり、早く帰って作りましょ」
「そうだな。タマネギの皮は私が剥くぞ」
「頼んます」
 ロイの言葉にハボックが笑って頷く。ロイの手を引いて足早に通りを歩いていたハボックは、店先に揺れるものに気づいて足を止めた。
「ハボック?」
「すんません、ロイ。ちょっとこれ持ってて」
 不思議そうに見上げてくるロイにハボックは手にした袋の一つをロイに預けて店に入っていく。仕方なしに道の隅に寄ってロイはハボックが出てくるのを待った。
「……さむ」
 ヒュウヒュウと冷たい風が吹き付けて、ロイは抱えた袋を抱き締める。そうやって一人で立っていると何故だが風の冷たさも勢いも増した気がして、ロイは泣きそうに目を細めた。不意に一人きり街の片隅で震えて過ごした夜が思い浮かんでロイは唇を噛み締める。震える己の前に差し出された大きな手と優しい空色が浮かんで、ロイは噛み締めた唇を薄く開いて小さく呟いた。
「ハボック……」
「すんません、待たせちゃって」
 その途端、降ってきた声にロイはハッとして顔を上げる。そうすれば、ハボックが笑みを浮かべてロイを見下ろしていた。
「これ、買ってきたんスよ」
 ハボックはそう言いながらたった今店で買ってきたらしい袋からガサガサと何かを引っ張り出す。淡いクリーム色をしたそれを、ハボックは跪いてロイの首に巻いた。
「マフラー。あったかいっしょ?」
「ハボック」
 驚いてロイが見つめる視線の先で、ハボックはもう一つ同じ色のマフラーを取り出した。
「お揃い。いいっしょ?」
 もう一つを自分の首に巻いて、ハボックがニッと笑う。ロイはそんなハボックを目をまん丸にして見上げ、それから自分の首元を覆うマフラーを見た。
「色、嫌いっスか?」
「ううん!とってもいい色だ、ありがとう!」
 なんの反応も見せないロイにハボックが心配そうに言うのを聞いて、ロイは慌てて首を振る。それを見て、ハボックは安心したようにホッと息を吐いた。
「よかった。じゃあ、帰りましょうか」
 ハボックはそう言ってロイに預けていた袋を取り上げて、ロイの手を取る。一緒に歩き出せばまた風がヒュウと吹き付けたが、今度は全然寒くなかった。
「あったかいな、ハボック」
「そうっスね」
 お揃いのマフラーがくれる温もりに、ロイは嬉しそうに笑った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございますv追加した拍手も読んで下さって嬉しいですーvv

「恋猫」です。なんかこれもだんだん暗獣化してきたなぁ(苦笑)でも、少し二人で過ごす時間もないとなぁと思ったもので。とはいえ、そろそろ話を進めた方がいいかしら。
今日、東京はこの冬一番の冷え込みだとかで、朝は0度近くまで冷え込み日中も最高気温6度の予想です。雪が降る地域の方からみれば「寒くないよ」って言われそうですが、東京じゃあ寒いんですよぅ。朝は風も強かったし、天気予報士の蘭ちゃんもすっごい寒そうだった(笑)それでも息子なんて、学ランの上、何も着ないで出かけていくもんなぁ。煩く言ってやっとベストを下に着込むくらい。「手袋してるから寒くない」って、学ランの襟元ってめちゃくちゃ寒そうなんだけど!せめてマフラーしてけって言ってもしてかないし、風邪ひいて熱出しても学校行かせちゃる!そんなわけで、ロイにはマフラー巻いてあげました(笑)
2012年01月12日(木)   No.149 (ハボロイ)

暗獣41
「ハボック、開けるからな」
 いつものようにハボックに声をかけてロイは窓に手をかける。眠そうなハボックがよたよたとベッドの下に潜り込むのを待って勢いよく窓を開けた。
「うー、寒いっ」
 途端に入り込んできた冷たい空気にロイは首を竦ませる。それでも晴れ渡った冬の空はとても綺麗で、ロイは窓枠に手をついて空を見上げた。
「今日もいい天気だぞ、ハボック」
 ロイはキンと張りつめた冷たい空気の中に白い息を吐き出しながら言う。
「ろーいー」
 そうすれば酷く不満げなハボックの声が聞こえて、ロイは振り向いてベッドの下のハボックを見た。
「寒いか?でも目が覚めるだろう?」
 ニヤニヤと笑いながら言うロイをハボックが恨めしげに見上げる。ヒュウと吹き付けた冷たい風がハボックの金髪を揺らすのを見て流石に窓を閉めようとしたロイは、同じ風がテーブルの上のメモ書きを吹き飛ばそうとするのを見て、慌てて手を伸ばした。
「……とっ」
 パッと押さえたメモの内、一枚だけがロイの手をすり抜けてフワリと浮かび上がる。その時さっきよりも強い風が吹き抜けて、クルリと一回転したメモが窓から飛び出していってしまった。
「ちょ……ッ、待てっ」
 逃げるメモに伸ばしたロイの手をするりとかわしてメモは下へと落ちていく。窓から身を乗り出したロイは、庭木の上にメモが落ちるのを確認してからそれ以上被害が出ないよう、窓を閉めた。
「くそっ、大事なメモなのに!」
 ロイはチッと舌打ちしながら足早に階下に下りる。中庭への扉から外に出ると、二階から見当をつけておいた木を下から見上げた。
「あった」
 冬でも緑の葉の間に白い紙が見える。手を伸ばしても届かないと見て、ロイは何か下からつつくものを探して辺りを見回した。手頃な枝を見つけて下からメモが乗っている辺りの枝をつつく。だが、どう引っかかっているのか、メモは落ちてくる気配がなかった。
「チッ」
 忌々しげに枝を見上げてロイは行儀悪く舌打ちする。どうしようかと考えて、ロイは家の中に戻ると階段を上がりながらハボックを呼んだ。
「ハボック!ちょっと手伝ってくれ、ハボッーク!」
 寝室に入ればロイの声にベッドの下から顔を出したハボックと目が合う。ハボックが出てくるのを待たず、ロイは半ば強引にハボックをベッドの下から引きずり出した。
「ろーいー」
「ちょっと手伝ってくれ」
 苦情の声に構わずロイはハボックを抱いて階段を駆け下りる。庭に出ればハボックが冷たい空気から逃げるようにロイの首にしがみついてきた。
「ハボック、メモが木の上に乗ってしまって取れないんだ。お前、取ってくれないか?」
 そう言われてハボックが顔を上げる。あそことロイが指さす先を見て、ハボックは目を見開いた。
「頼むよ」
 ロイは言ってハボックの体を両手で持ち上げる。ハボックが小さな手を懸命に伸ばしたが、後少しというところでメモには届かなかった。
「んー、これならどうだ?」
 そう言いながらロイはハボックを肩車する。グラリと揺れて慌ててしがみついてくる小さな手に目隠しされて、ロイはハボックの脚を押さえて言った。
「しっかり押さえてるから大丈夫だ。メモ、取ってくれ!早くしないとまた風で飛んでしまう」
 その声にハボックがしがみついていた手を離して体を起こす。さっきより良くなった見晴らしにメモを取るより先に嬉しそうにあちこち見回している様子のハボックをロイが急かした。
「ハボック!メモ!」
 さっきから風が時折吹いてくる。いつメモが取ばされるかとヒヤヒヤしながら急かすロイに、ハボックはロイの頭に片手をついて腰を浮かした。
「届くか?」
 頭を押さえられてロイは上を向くことが出来ずハボックに尋ねる。何度か頭につく手の位置を変えて、ハボックは葉の上のメモの端を掴んだ。
「ろーい!」
「取れたか」
 目の前にヒラヒラとメモを翳されてロイはホッと息をつく。
「ありがとう、助かったよ」
 ロイは頭上のハボックに言うと、肩車したまま歩きだした。
「すっかり冷えてしまった。早く戻ろう」
 メモを取ろうと必死になっていた時は感じなかった寒さが急に身に染みて、ロイは急いで家の中に戻ろうとする。扉を開けて一歩足を踏み入れた途端、ゴンッと大きな音が頭上から降ってきた。
「〜〜〜ッッッ!!」
「───あっ?すまんッ!!」
 声にならない悲鳴を上げてロイの頭に突っ伏してくるハボックに、なにが起きたのか判らずにいたロイだったが、次の瞬間ハボックが思い切り頭をぶつけたのだと気づく。肩車したハボックの分高くなっている事を失念して扉をくぐろうとした結果、ハボックが入口で頭をぶつけてしまったのだった。
「大丈夫かッ?ハボック!!」
「ろーい〜〜〜」
 ロイは慌ててハボックを肩から下ろす。頭を抱えて蹲るハボックの金髪をロイは跪いて一生懸命に撫でた。
「すまん、高くなっているのを忘れてた」
 ごめん、悪かったと繰り返すロイをハボックが涙の滲んだ目で見上げる。濡れた瞳でじっと見つめられれば罪悪感がいや増してロイはウッと言葉に詰まった。
「あー、そのっ、すまん……と、ハボック?」
 それでも謝る以外どうしようもないと言葉を続ければ、ハボックがロイに手にしたものを差し出す。それがさっき取り戻したメモだと気づいて、ロイは目を見開いた。
「ろーい」
 小首を傾げてメモを差し出すハボックをロイは見開いた目でじっと見つめていたが、やがてフッと笑ってメモを受け取る。それから空色の目元を濡らす涙を指先で拭った。
「ありがとう、それからごめん。痛かったろう?」
 ロイに言われてハボックが小さな手で己の頭を撫でる。撫でたその手を伸ばしてきたと思うと、肩によじ登ろうとするハボックにロイは目を丸くした。
「なんだ、まだ乗るのか?意外と懲りないな、お前」
 呆れると同時に安心もしてロイはハボックを肩車する。
「ろーい!」
「よし、今度はぶつけないから安心しろ」
 出発進行と言うように名を呼んで前を指さすハボックに答えて、ロイは立ち上がるとハボックを肩に乗せて家の中を歩いて回った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。絶賛冬休み中にもかかわらず拍手頂きとっても嬉しいですvv

ええと、今日の更新ですが、やっぱり間に合いそうもありません。実家から戻っての三連休じゃあ流石に書けませんでしたよ(苦)そんなわけで、今日の更新は松の内が明けたので玄関の模様替えと、あと拍手をひとつ追加しておきます。今「羯磨」が二回続けて出てくるようになっていると思うのですが、後の方を「羯磨2」に入れ替えておきますので、よろしければ読んでやって下さいませv土曜日には更新出来るよう、頑張ります!

というところで今年最初の「暗獣」です。先日実家帰った時に出かけた先で電車に乗ってましたら、いきなりゴンッッ!!って凄い音が聞こえましてね。びっくりして音のした方を見たら子供を肩車したお父さんがうっかり屈むのを忘れて子供の頭を思い切り入口にぶつけてました。お父さんってば「うっわぁ、こりゃ申し訳ない」って、物凄い音だったんですけど!でも、思わず笑ってしまいましたよ。ちょっと泣いてたけど毛糸の帽子被ってたせいで怪我もなかったみたいだし、なんか可愛くて可笑しかったです(笑)
2012年01月10日(火)   No.148 (カプなし)

千年樹〜新年編
ヒュハボ風味

「ああ、こっちは気にしなくていいっスよ。いい年を迎えて下さい」
 ハボックはそう言うと相手の返事を待たずに受話器を置く。ガチャンと耳障りな音に僅かに眉を顰めたが、これくらいの無礼は赦されるだろうとハボックは叩きつけるように切った電話から離れた。窓辺に近寄ろうとして足元に落ちた煙草に気づく。咥えていたそれを落とした事に気づかぬ程慌てて電話に出たのかと思うと、自分自身に腹が立ってハボックは落ちた煙草を靴で踏みにじった。
 粉々になった煙草をそのままに、ハボックは窓辺に歩み寄り新しい煙草を取り出す。窓に寄りかかるようにして煙草に火をつけるともうすぐ夜を迎えようとする街を見下ろした。
 新年を一緒に迎えようと言っていたヒューズから行けそうもないと連絡があった。すまなそうに告げる相手に、そんなのちょっと考えりゃ判る事だと笑って返した。そもそも女房子供持ちの男を好きになった時点で、季節のイベントを一緒に過ごしたいなどと思ってはいけないのだ。
 ハボックは急速に暮れていく街をガラス越しに見つめる。昼と夜が自分の存在を主張してせめぎ合う黄昏時、家々の灯りが次々と灯っていくのを見れば、ベッドの中で囁くヒューズの声が蘇った。
『愛してるぜ、少尉』
「グレイシアさんの次に、だろ」
『ホントに可愛いな、お前』
「エリシアちゃんが一番可愛いくせに」
 常盤色の瞳を細めて言う男の幻影にハボックは言い返す。本当はそんな事を言う権利など己にはこれっぽっちもないことが判りきっていて、ハボックはコツンとガラスに額を押し当てた。
「もう……やめよう」
 新しい年を迎えるのだ。醜いこの想いに区切りをつけるにはいい機会ではないか。
 ハボックはそう考えてガラスに映る己の顔を見つめる。ヒューズへの想いを宿して見返してくる空色の瞳に煙草を押しつけると、ハボックは足早に浴室に入った。そうして身の内に燻るヒューズへの想いを洗い流そうとするように頭から冷たい水を被ると、早々にベッドに潜り込んだ。

「う……ん」
 躯を這い回る熱い手のひらの感触にハボックの意識がゆっくりと浮上する。ぼんやりと目を開けたハボックは夜明け前の薄闇に沈む部屋の中、己に圧し掛かる男に気づいてギクリと身を強張らせた。
「……中佐?!」
「やっと目が覚めたか」
 ここにいるはずがない男の姿を認めて、ハボックは驚きの声を上げる。ヒューズは見開く空色を見下ろしてニヤリと笑った。
「なかなか起きないからこのまま犯しちまおうかと思った」
 揶揄するように言う男をハボックはまじまじと見つめる。何の反応も返してこないハボックに眉を顰めるヒューズにハボックが言った。
「なんでここに……?」
「ん?この間鍵貰ったろう?それで開けて入った」
「あれはアンタが勝手に持っていった―――そうじゃなくてっ」
 前回ヒューズがアパートに来たあと、引き出しにしまってあったスペアキーがなくなっていた。電話で『貰ったから』と悪びれる様子もなくヒューズが言った事を思い出して言いかけた言葉を飲み込んで、ハボックは怒鳴った。
「どうしてここにいるんだって聞いてるんスよ!アンタ、こっちには来られないって言ったじゃないっスか!!」
 エリシアが淋しがるから行けない、子煩悩な男がすまなそうに言う声が押し当てた受話器から耳を通して脳味噌を腐らせるのを感じてからまだ一日も経っていないはずだった。無意識に責める響きを滲ませる声を聞いていたヒューズがハボックをじっと見つめる。その常盤色の光の強さに耐えかねてハボックが目を閉じた時、ヒューズが言った。
「あんな泣き出しそうな声聞いたら放っておけねぇだろ?」
 その言葉にハボックがハッと目を開ける。見下ろしてくるヒューズを睨みつけてハボックは言った。
「オレがいつ泣きそうな声を出したっつうんだよッ!」
「泣きそうだったろ?俺が行けないって言った時。―――いや、泣いてたのか」
「オレは泣いてなんて―――」
「少尉」
 喚くハボックの言葉をヒューズの低い声が遮る。見下ろしてくる常盤色がフッと優しく笑ったと思うとヒューズが言った。
「愛してるぜ、少尉」
「……ッ?!」
「可愛くてたまんねぇ」
 そう言うと同時にヒューズが噛みつくように口づけてくる。シャツの裾から入り込んでくる手にビクンと大きく体を震わせてハボックはヒューズを押し返した。
「ヤダ、やめろッ!オレはアンタなんて―――」
「好きで堪んないんだろ?」
 しれっとして言う男にハボックは目を見開く。まん丸に見開いて見上げてくるどこか幼い空色にヒューズは笑った。
「そんなだからほっとけないんだよ、お前は」
 そう言って降りてくる唇に己のそれを塞がれて、ハボックは顔を歪める。何度も繰り返されるキスに零れる吐息の熱を上げながらハボックはギュッと目を閉じた。
「ズルい、アンタ……」
 こんな風に優しくされるから諦められないのだ。赦されないと判っていながら手を伸ばしてしまう。
「ずりぃ……」
 閉じた瞳から一筋涙を流して。
 ハボックは新しい年の始まりをヒューズが与える熱に溺れて迎えた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、今年も更新の励みですv

新年早々なんでヒュハボなんだって言われそうですが。年末掃除してて発掘した同人誌の中に結構ヒュハボがあったもので(苦笑)「千年樹」って相当前に書いた奴ですね、自分でも昔過ぎて忘れてました(笑)基本ヒューズは子持ちならフツーにロイの親友、ハボックと絡むなら独身設定が好きなんですが、時々こんなのも書きたくなります。
2012年01月05日(木)   No.147 (カプ色あり)

初日(はつひ)
「おい、ハボック。そろそろ起きなくていいのか?初日の出を見に行くんだろう?」
 ロイは傍らで眠る男に声をかける。軽く揺すってみたがハボックは「うーん」と唸ったきりまた眠ってしまった。
「日が昇ってしまっても知らんぞ?」
 そう言ってみたがハボックが起きる気配はない。普段ロイよりもずっと早起きで働き者のハボックには珍しい事だ。夕べ風邪をひきそうだと鼻をグズグズしていたから、もしかして体調が優れないのかもしれない。
 ロイはハボックを起こさないよう、そっとベッドを抜け出す。踏み出した足が触れた床がひんやりと冷たかったが構わず裸足のまま階下に降りた。
 普段なら寒がりのロイの為ハボックが暖めておいてくれる部屋は、まだ鎧戸も開いておらずひんやりと暗く沈んだままだ。キッチンの冷蔵庫を開ければ青い光が漏れてロイの顔を照らした。ミネラルウォーターのボトルを取り出しそのまま口をつける。乾いた喉を潤す水にかえって渇きが増したように感じてロイは眉を顰めた。
 ロイは飲んだボトルをそのままキッチンのカウンターに置くとリビングに行く。ぼすんとソファーに腰を下ろし脚を引き上げ膝を抱えた。ベッドから出て五分も経っていないのに体はもうすっかりと冷え切っている。体温があるはずなのに既に中心まで冷たくなっている己の体をロイはギュッと抱き締めた。
「まったく、寒いじゃないか」
 そう呟いてロイはふと考える。ハボックがいなかった時、自分はどうやって温もりを得ていたのだろう。この冷え切った世界の中で、どうやって冷たく凍てついた己を暖め、固く強張った心の力を抜いていたのだろう。
「寒いな」
 吐き出した言葉が白い煙になって宙にたゆたう。このまま冷たい煙に包まれて凍りついてしまうかもしれないとロイが思った時。
 バタバタと階段を駆け降りる音と喚く声がする。ロイが俯けていた顔を上げると同時にバンッと音がしてリビングの扉が開いた。
「寝坊したッッ!!」
 声と同時に飛び込んできた姿に暗く沈んだ部屋がパアッと明るくなる。それはまるで水平線の向こうから朝陽が昇るのに似て、ロイの心を照らし出した。
「もうっ、先に起きたんなら声かけてくださいよッ」
 ハボックはそう言いながらリビングの灯りをつける。ソファーに座り込むロイを横目で見ながら足早にキッチンへと向かった。
「あ、またボトル出しっ放しにして!飲んだらしまえって言ったっしょ!」
 蓋も閉まってないとブツブツ言ってハボックはミネラルウォーターのボトルを冷蔵庫にしまう。その時ヒヤリと空気の動く気配がしたと思うとひんやり冷えた体に背後から抱きつかれて、ハボックは飛び上がった。
「うひゃあッ」
 素っ頓狂な声を上げて竦み上がる長身を抱き締めロイはホッと息を漏らす。温かい背中に頬を擦り付ければハボックがもがいた。
「アンタ冷え切ってるじゃないっスか。もう、先に起きたんなら部屋あっためるとかして下さいよ!」
 もう、と文句を言いながらもがく体を抱き締める腕に力を込める。そうすればハボックが首を捻って肩越しに言った。
「そんな事してないで、急いで支度して下さい。マジ日の出見逃しちまう」
「日の出ならもう見たからいい」
「えっ?もう明けましたっ?」
 ロイの言葉にハボックが驚いてキッチンの窓から外を見る。だが、窓の外は明るみを帯び始めているもののまだ夜は明けていないようだった。
「まだ暗いじゃないっスか。大佐、急げばまだ間に合う―――大佐?」
 ロイを振り解こうともがいていたハボックは反応のないロイに首を傾げる。不思議そうに呼び掛けてくる声を聞きながらロイは笑みを浮かべた。
 以前己がどうやって温もりを得ていたか思い出す必要などないのだ。何故なら温もりを得る一番の方法を手にしたから。温もりを得たかったらただこうして抱き締めればいい。
「大佐ぁ?」
 何度も呼んでくる声を聞きながらロイは幸せそうにそっと目を閉じた。


新年あけましておめでとうございます!今年も暴走気味にハボックラブを叫ぶサイトになると思いますが、どうぞ昨年に引き続き宜しくお付き合いのほど、お願い致します<(_ _)>

1日から実家に来ております。ポメラを開くどころか携帯で日記打つ暇もありゃしない。いや、暇がないわけじゃありませんが、昨日まではじじ、ダンナ、息子、私の4人で、今日からはダンナ→ばばの4人でじゃらじゃら家族麻雀してます(苦笑)この日記も結局夜中に布団の中で打ってましたよ(笑)
んで、今日は恒例の川崎大師参りに行って参りました。で、これまた恒例のおみくじを引いたんですが……だったよ!(爆)流石に結んできたので内容はうろ覚えですが、病は重いし、待ち人は来ないし、争いごとは勝てないし、凶に相応しい散々な内容でした(苦笑)まあ、以前おみくじ引いて「十中八九死す」って出ていまだにピンピンしている友人もいることなので神様のご加護を信じましょう(笑)ちなみに息子が引いたおみくじ、病のところに「自分の生命力を信じましょう」って書いてありました(笑)

以下、拍手お返事です。

阿修羅さま

うわぁ、物凄い一大事じゃあないですか!!わーん、1日も早くカムバックされるのを本当にお待ちしてます!!ハボックと一緒にずっと応援してますから。またお声を聞かせて頂けるのを首を長くして待ってます!!

摩依夢さま

こちらこそ遊びに来て下さったり素敵なお話読ませて頂いたりと、本当にお世話になりました。今年もどうぞよろしくお願い致しますvカッコいいハボお届けできるよう頑張ります!
2012年01月03日(火)   No.146 (カプなし)

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