babble babble


2014年12月の日記

2014年12月14日(日)
橙色の秋に10のお題9

橙色の秋に10のお題9
9.読書の秋には図書館で

「ヒマだ……」
 ハボックは机に頬杖をついて呟く。四人掛けの机の斜め向かいの席では、ロイが厚い本を何冊も積み上げて調べものに没頭していた。

「図書館?折角の休みなのに?」
「休みだから行くんだろう」
 二人揃って休みの朝食の席、食事が済んだら図書館に行くと言うロイにハボックは思い切り不満そうに口を尖らせる。子供っぽい表情にロイはクスリと笑って言った。
「読書の秋なんだ。お前も一緒にどうだ?」
「えー」
 誘われたもののあまり興味が湧かない。だがどうせ出掛ければロイは一日帰ってこないだろうし、家で一人待っているのも淋しくてハボックはロイについて図書館に来たのだった。

(やっぱ家で待ってた方がよかったかなぁ……)
 ラックから何冊か選んで持ってきた雑誌もあっという間に読んでしまって、ハボックは暇を持て余してため息をつく。ロイに話しかける訳にもいかず、いっそのこと寝てしまおうかと考えて、ハボックはだらしなく机に頬を乗せた。そうすればシンと静まり返った図書館の中、ロイが時折ページを捲る音とペンを走らせる音が聞こえてくる。その音を聞くともなしに聞きながらハボックは考えた。
(オレも小さい頃はお袋に連れられて図書館に来てたよなぁ)
 幼い頃、母親に手を引かれて図書館に通っていた。田舎の図書館はこんな街中の図書館に比べれば随分と小さかったが、それでも子供のハボックから見れば沢山の本に溢れていて図書館に行くのが楽しみで仕方なかったのだ。
(本を借りちゃお袋に読んでってせがんでたっけ)
 ベッドの中、母親が読んでくれる物語をワクワクしながら聞いていた。挿し絵を見ながら眠ってしまえば、小さなハボックは夢の中、その物語の世界を駆け回ったものだった。
(そういやあの本、ここにあるかな)
 ふと絵本に出てくる二匹のネズミの姿が脳裏に浮かんで、ハボックは立ち上がる。子供の本が並んでいる書架に向かうと、ハボックは高さの低い書架の間をゆっくりと歩いた。
(タイトル……なんだったっけな)
 ネズミの姿は思い出したが肝心のタイトルが判らない。片っ端から本を出してみる訳にもいかず、ハボックは腕組みしてウーンと考えた。
「えーっと……内容は覚えてるんだよ。確か森に住んでる仲良しのネズミがでっかい卵を見つけて」
 と、ハボックは小さい頃の記憶を辿って呟く。
「そうだ、でっかいボウルにでっかい卵を割り入れてかき回すんだよ」
 子供心に小さなネズミがボウルの中に落ちてしまわないかハラハラしたものだ。上手に掻き混ぜた卵をフライパンに流し入れた時にはジュッと焼ける音が聞こえたようで、美味しく焼ける匂いまでしたように思ったのだ。
「でっかいフライパンででっかい卵焼き焼くんだよなぁ。あれは旨そうだった」
 ハボックが黄色い卵焼きを思い描いてゴクリと喉を鳴らす。だがそこまで思い出しても肝心のタイトルだけは思い出せずハボックはウンウンと唸った。
「森のみんなで出来上がったでっかい卵焼きを分けて食べるんだ。オレもあんなでっかいの食べてみたいってせがんでお袋を困らせたっけ」
 大きな卵焼きは本当に美味しそうで母親に作ってくれとせがんだ。母親はハボックの為にその時冷蔵庫に入っていた卵全部使って卵焼きを作ってくれたのだが、ハボックはこんな小さいのは嫌だと泣いて、結局折角作ってくれた卵焼きを食べなかった。
「あれは勿体ない事をした」
 今考えればあの卵焼きはいつも作ってくれる卵焼きの五倍はあった。きっと作るのも大変だったろう。
「卵焼きを作った後の卵の殻で作った車も羨ましかったよなぁ……。ああくそッ、なんてタイトルだっけ、あの本!」
 どうしてもタイトルが思い出せず、ハボックが頭を掻き毟った時。
「はい!」
「えっ?」
 いきなり声がしてハボックは驚いて辺りを見回す。声の主を探してキョロキョロすれば、クイクイと袖を引かれてハボックは視線を落とした。
「あ」
 落とした視線が見上げてくる空色の視線と交差する。金の髪をした男の子はその空色の瞳でハボックをじっと見つめて言った。
「お兄ちゃんが探してるの、この本でしょ?」
「あっ!これ!そうだよ、この本!」
 男の子が差し出した絵本の表紙を見てハボックが大声を上げる。表紙に描かれた手を繋いだ二匹のネズミは幼い頃の記憶のままで、ハボックは差し出された絵本を受け取ってニッコリと笑った。
「そうだよ、この本だ。うわぁ、懐かしいなぁ」
 懐かしそうに呟いてハボックは絵本を捲る。記憶のままに広がる世界にハボックは嬉しそうに目を細めた。
「ありがとう、タイトルが思い出せなくて困ってたんだ――――って、あれッ?」
 礼を言おうと絵本から視線を上げたハボックは男の子の姿がなくなっている事に気づいて目を丸くする。背の低い書架の間の通路には誰の姿も見つからず、ハボックが首を傾げた時背後からロイの声がした。
「何を一人で大きな声を出してるんだ?」
「大佐」
 眉を寄せて尋ねてくるロイにハボックは手にした本を差し出す。
「大佐、これ。オレがガキの頃好きだったヤツ」
「ああ、これか」
 ロイは差し出された絵本の表紙を見て笑みを浮かべた。
「私も小さい頃好きだったよ」
「大佐も?ホントっスか?」
 ロイも自分と同じ本が好きだったと聞いてハボックは嬉しくなって顔を輝かせる。
「この大きな卵焼きが食べたくてなぁ」
「あ、やっぱり?食べたくなりますよね!これ」
「強請って作ってもらったけど全然小さくて」
「そうそう!」
 同じ絵本に同じ思い出を重ねてロイとハボックは顔を見合わせてにっこりと笑った。
「今夜のメシは卵焼きだな」
「特大の?」
「特大の」
「じゃあ卵買って帰らなきゃ」
 ハボックが言えばロイが絵本をハボックに返して言う。
「借りといてくれ。後で一緒に読もう。急いで調べもの済ませるから」
「アイ、サー!」
 その後ロイが急いで調べものを片付けると、二人は沢山卵を買って帰り大きな卵焼きを食べながら一緒に絵本を読んだのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、本当にやる気の素です、ありがとうございますvv

先週はダンナがリハビリ休暇でガッツリ家にいたもので、流石に更新がままなりませんでした(苦笑)しかし、更新が出来ないって事はアメフトの録画も溜まってるって事(更新書きながらアメフト見てるので)気がつけば二週分も溜まってるよ!急いで見ないとシーズン終わっちゃうじゃん!プレイオフ進出チームが決まってから見るのは嫌だぞ。と言う訳で、今週は更新頑張りながらアメフト見たいと思います(笑)
と言うところで。
12月も半ばになって秋お題でもないんですが、途中まで書いていたので書き上げてみましたー。ネタの絵本はきっと皆さまもご存知のアレですが、流石にちょっと記憶が怪しい(苦笑)後で調べてみたら卵焼きじゃなくてカステラだったし……。「えー、違うじゃん」と思われましてもその辺は大目に見て頂ければと(笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

62万打ありがとうございますvなおさまのコメントには本当にいつもやる気を頂いてますvサイトさま減りまくりでなかなか萌えの補給が出来なくて辛い時もありますが、コメントに元気を頂いて頑張ってますvあの木が折れたら(爆)半シャーベットのすりおろしリンゴ、食べた〜い!おかげさまでダンナは明日から出勤です。やっと昼間静かになります(コラ)風、性格矯正セミナー(苦笑)おかしいなぁ、ハボックが惚れるんだからイイ男な筈なんですが(爆)ちょっとはイイところを見せてあげようと思います(笑)そしていつでもホークアイは最強ですvセレスタ、うふふ、予感的中となるでしょうか(笑)これまで大変だったのでそろそろラブラブさせてあげたいところですが。ハボックからも一杯ラブコールするはず……多分(笑)え?ハボックのお尻の絵を描いた穴開き板なら私も欲し……(爆)でもそれ、使用したら相当痛そうです(爆)

阿修羅さま

お疲れのところキリバン狙って下さってありがとうございます。ご家族もご自身も体調悪かったりと大変なご様子、寒さも厳しい折、本当にお体大切にお過ごし下さいね。
2014年12月14日(日)   No.431 (カプなし)

No. PASS
 OR AND
スペースで区切って複数指定可能
  Photo by 空色地図

[Admin] [TOP]
shiromuku(fs4)DIARY version 3.50