10.秋が終われば
「そろそろ秋も終わりっスかねぇ」 並んで歩くハボックが空を見上げながらぽつりと呟く。その唇に咥えた煙草の煙がハボックの瞳と同じ色の空に吸い込まれていくのを目で追って、ロイが言った。 「秋が終わるだと?と言うことは冬が来ると言う事じゃないか」 うんざりしたような口調で言ってロイはコートの襟を立てる。 「今だって十分寒いのに冬が来たら更に寒くなるんだぞ。まだ秋の方がましだ、終わらんでいい、冬なんて来るなッ」 最後は空に向かって吐き捨てるように言うロイにハボックがクスリと笑えば途端に黒曜石の瞳に睨まれて、ハボックは慌てて公園の紅葉へと目を向けた。 「あ、ほらッ。まだ紅葉が綺麗っスよ。冬が来る前に最後の秋を楽しみましょう」 ほらほら、とへらりと笑って紅く色づいた木々を指さすハボックにロイはフンと鼻を鳴らす。立てた襟を両手でギュッと引き寄せて言った。 「今でも十分寒いと言ったのを聞いていなかったのか?楽しむ余裕なんてない」 「まあまあ、そう言わずに」 寒い、帰るぞと公園の出口へと足を向けようとするロイの腕を掴んでハボックが引き留める。眉間に皺を寄せるロイの腕を引いてハボックは売店へと歩いていった。 「あ、焼き芋売ってる」 近づいていけば見えてきた「焼き芋」と言う文字にハボックが嬉しそうな声を上げる。ロイの腕を引いたまま近づくと店員の女性に声をかけた。 「焼き芋くれる?一番でっかいの」 にっこりと笑って言うハボックに女性も笑みを浮かべる。ハボックの注文通り一番大きい芋を選んで紙に包んでくれた。 「ありがとう」 代金を支払ってハボックは芋を受け取る。「はい」と差し出せばロイが眉を顰めて芋を見つめた。 「食うとは言ってないぞ」 「旨いっスよ、絶対」 ニカッと笑ってハボックは近くのベンチにロイを促す。並んで腰掛けると包みから焼き芋を取り出し二つに折った。 「おお〜、うっまそう!はい、大佐っ」 差し出された焼き芋の黄金色の断面から旨そうに湯気が上がるのを見れば思わず手が伸びる。「アツッ」と呟きつつも手にした焼き芋を齧れば腹の中から暖まるようで、思わずホウとため息が零れた。 「旨いっスね」 「そうだな」 「秋も終わりかぁ」 「別に冬になっても芋は売ってるだろう?」 「紅葉を見ながら食うのがいいんスよ」 「そんなもんか?」 澄んだ空をバックにだいぶ少なくなった紅葉の枝を広げる木々を見上げて二人は焼き芋を頬張る。あっという間に平らげてしまうと、ハボックは残った皮を包み紙ごと丸めて近くのゴミ箱に向かって放り投げた。 「あっ、外したッ」 「ヘタクソ」 ゴミ箱の縁に当たって地面に転がった包みにハボックが声を上げロイが肩を竦める。ハボックは「くそーッ」と呟きながら小走りに駆けて拾った包みをゴミ箱に入れると、パンパンと手をはたいてロイに言った。 「帰りますか?」 「もういいのか?秋は」 「芋食ったし」 そう言って笑うとハボックは空を見上げる。ベンチから立ち上がりハボックの側へと行くと、ロイもハボックの視線を追うように空を見上げた。 「晩飯はおでんが食いたい」 「それって冬メニューじゃねぇんスか?」 「芋食って秋は終わったんだろう?」 「んー、せめてパンプキングラタンにしません?」 「諦めが悪いな」 「晩秋ってことで」 へへっと笑って言うハボックに仕方ないなとロイが肩を竦める。どちらともなく歩き出すと、落ち葉を踏みしめながら公園を後にした。
いつも遊びに来て下さってありがとうございます。ポチポチ拍手も本当に嬉しいですーvvなんか書こうって気になります、ふふv
さて、なんでいきなり十番目?と思われるかもしれませんが、古い携帯の未送信メールを眺めていたらなにやら秋の小話が幾つかありましてね。今はスマホなので電車の中とか待ち時間とかゲームしたりネット見たりしてますが、以前携帯だった頃はメールでポチポチ日記ネタを書いてたんですよ。んで、こんな話書いたっけ?って読み返してみたらどうやらお題に挑戦してたらしい(書いた本人も覚えてない(笑)んで、検索かけたら九番目までしか書いてなかったんですよー。一応十番目のタイトルでも検索書けてみたけど出てこなかったから多分書いてない、はず。まぁ、今更書かなくてもいいんですけど、何となく後一話ってのが(笑)例によってなんて事のない話ですが、ロイとハボックの秋の終わりのまったりな一日をお楽しみ頂ければv んで、四年くらい前に書いた1から9は「橙色の秋に10のお題」←これを日記ページの一番下にある検索ワードにコピペして検索かけていただければズラッと出てきます(笑)
以下、拍手お返事です。
先日もエドハボの件で の方
えへへ、私も久々にエドハボ書いて楽しかったので、喜んで頂けて嬉しいですv スパダリ!!わぁ、確かに!エド、大人になったら絶対男前攻めですよね!うふふふ、想像すると顔がニヤケてしまいます(笑)ロイハボは勿論ですがエドハボもやっぱり好きなので、また書いていきたいと思っております。ロイハボともどもおつきあい頂けたら嬉しいですv
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