湖の向こうにオレンジ色の夕陽が沈むのを見送った後、ロイとハボックはコテージに帰ってくる。さっきは荷物を置いただけですぐ出かけてしまった為、二人は改めてゆっくりとコテージの中を見て回った。 広々としたリビングには暖炉が備え付けられている。カウンター式のキッチンは対面になっていて、ロイが料理をしていてもリビングにいるハボックの様子がよく見えそうだった。一階には浴室もあるが、更にその奥の扉を開けると小さな露天風呂がある。木に囲まれた風呂を見て、ハボックが顔を輝かせた。 「ろーいっ」 「まあ、待て。まだ全部見終わってないだろう」 そう言ってロイが中に戻ってしまうとハボックが残念そうな顔で風呂の入口でうろうろする。ロイはリビングの隅にある急な階段を上がり二階に上がった。 「ハボック!」 ロイが呼ぶ声にハボックはリビングに戻ってキョロキョロと見回す。 「こっちだ、ハボック」 もう一度聞こえた声を探してハボックが視線を上げれば、吹き抜けになったリビングを囲むようにぐるりと張り巡らされた廊下に立ったロイが手を振っていた。 「ろーいっ」 家では見られない光景にハボックが喜んでピョンピョンと飛び跳ねる。ジャンプに合わせてポンッ、ポンッと尻尾と犬耳が出るのを見て、ロイはやれやれと肩を落とした。どうやら感情が高ぶると隠しておけなくなるようだ。 「家の中だし、まあいいか」 あまり甘やかしてはいけないが、とりあえず今はいいだろう。ロイは笑みを浮かべて階下のハボックに言った。 「上がっておいで。そこに階段があるだろう?」 ロイは言ってリビングの隅を指差す。ハボックは階段を上がってロイの側にやってきた。 「ろーい」 廊下に巡らされた落下防止の柵の隙間からハボックは面白そうに階下を見下ろす。ふさふさと尻尾を振るハボックを見ながらロイは言った。 「おいで、こっちも面白いぞ」 そう言って歩き出すロイをハボックが追ってロイのシャツの裾を掴む。ロイが開けた部屋の中に入るのに続いたハボックが目を瞠った。 二階のその部屋は屋根の形そのままに天井が斜めになっている。斜めの天井にはシェードのついた窓がついていて、ロイが紐を引くとシェードが縮んで、淡く太陽のオレンジの光を残した空が現れた。部屋の半分以上を占領するベッドは所謂普通のベッドではなく巨大な箱に布団やクッションが敷き詰められているようなものだ。以前ビロード張りのトランクを寝床にしていたハボックの為に、綺麗な箱にフカフカのクッションを敷き詰めて寝床を作ってやったロイが、そのベッドを見てクスクスと笑った。 「お前の寝床そっくりだな。今夜はここで一緒に寝るんだぞ」 「ろーいっ」 そう聞いてハボックが嬉しそうに尻尾を振る。ベッドの縁に掴まって中のクッションの様子を確かめるハボックにロイが言った。 「それじゃあ、まず風呂に入ろう」 「ろーい!ろーい!」 「うん、私も露天は初めてだよ、楽しみだな」 脚に纏わりついてピョンピョンと飛び跳ねるハボックにロイが言う。二人は下に降りて風呂の準備を整えると浴室に向かった。まずは内湯で体の汚れを落とす。それから二人は奥の扉を開けて外に出た。 「ろーい……」 「大丈夫、暗いから足元に気をつけろ」 建物の中から零れる光だけが頼りの薄暗い場所で、ハボックが不安そうにロイを呼ぶ。ロイはハボックの小さな手をしっかりと握り締めて大小様々な石で作られた風呂に足を入れた。 「熱めだな」 肌を包む湯温の感想を呟けばハボックがロイにくっつくようにして湯に身を沈める。脇の下辺りまで湯に入って二人はほぼ同時に「ふぅぅ」と息を吐いた。互いに顔を見合わせクスリと笑う。チャパチャパと伸ばした脚で湯を蹴って遊びだすハボックを見つめていた視線を頭上に向けたロイは、僅かに目を見開いた。 「ハボック、星だ」 その言葉に視線を上げたハボックが目をまん丸にして息を飲む。二人の頭上では梢の向こうに満天の星空が広がっていた。暫く黙ったまま空を見上げていたが、やがてハボックがホゥと息を吐き出した。 「ろーいー」 「うん、綺麗だな。星がこんなにたくさんあるなんて、知らなかったよ」 そう言うロイの横でチャプンと湯が跳ねる音がする。クイクイと腕を引っ張られて視線を下に向ければ、ハボックが仰向けに浮かんで空を見ていた。 「狡いぞ」 とても気持ち良さそうなその格好は、小さなハボックには出来ても大人のロイには出来るだけの広さがない。ロイは残念そうにため息をつくと縁の岩に頭を載せた。 「これでもいいか」 そう呟いてロイは目を細めて星を見上げた。
星空の下での風呂をゆったりと満喫して、二人はホコホコになって中に戻る。ロイが手早くパスタを茹でる間、リビングで集めた小石や貝殻を並べていたハボックがクシャンとくしゃみをした。 「ハボック、ここの夜は冷える。これを着てなさい」 ロイは荷物の中からナイルブルーの薄地のパーカーを取り出しハボックを手招く。着せてやればハボックがにっこりと笑って、パタパタと尻尾を振った。 簡単な夕食を済ませてのんびりとコーヒーを飲みながら寛いでいると何だか眠たくなってくる。家にいる時はかなり夜更かしなのにと傍らのハボックを見れば、ふああと大きな欠伸をしているのを見てロイはクスリと笑った。 「少し早いが今日はもう寝ようか」 「ろーい〜」 そう言えば手を伸ばしてくるハボックを抱き上げ、ロイは寝支度を整えて階段を上がった。さっき見て回った二階の部屋の扉を開ければハボックがロイの腕からピョンと飛び降りる。枕を抱き締めてロイを見上げるハボックの金髪をロイはくしゃりと掻き混ぜた。
二人してぽすんと巣のようなベッドに倒れ込む。クスクスと笑ってロイが言った。 「お前になったみたいだ。いつもこんな感じで寝てるんだな」 クッションとブランケットに埋もれて笑うロイにハボックが枕を抱えたまま擦りよった。 「ろーい」 「ん、明日もいっぱい遊ぼうな」 「ろーいっ」 「ボートか?リベンジもいいが釣りなんかも楽しいぞ」 ロイは言いながら天窓を見上げる。 「星が綺麗だな」 「ろーい」 すりすりと擦り寄ってくるハボックの小さな体を抱き締めて、ロイは眠りに落ちていった。
いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになります、嬉しですv
「暗獣」です。そして、腐腐腐腐腐腐……「刹那の夢」の水瀬さんから子ハボ強奪して参りましたーッ!!でへへへへ、うーれーしーい〜〜vオネダリしてみるもんだなぁ、こんな可愛い子ハボを貰えるなんてッ!水瀬さんの絵、絵柄は勿論大好きなのですが色合いがまたすっごく好きなんですよぅvうふふ、とっても嬉しかったので宝部屋に飾る前に日記でお披露目してしまいました。水瀬さん、本当にありがとうッvv
というところで、改めましてバカンスな二人です。コテージの中がよく判んなかったので思わず検索してしまいました(笑)露天風呂なんてアメストリスにあるとは思えないけど、まあその辺は気分で(苦笑)まだまだのんびり続きますv
あ、そうだ。明日更新のハボロイですが、ちょっと順番前後しますがリク85をお届けする予定です。というのもリクの内容が思いっきり夏なので、今書かないと冬に順番回ってきたりしたら書けないんで←季節に物凄く左右されるヤツ(苦笑)それに内容的に読み切りか前後編くらいの長さでいけそうなのでこちらを先にさせて頂こうと思います。お楽しみ頂けたら嬉しいです〜。
以下、拍手お返事です。
いつも楽しく通わせて貰ってます。 の方
ありがとうございます!うふふ、「ハボックちゃ〜ぁんw」言って頂いてますか?嬉しいですーvまだまだまったり続きますが、引き続き言って頂けると嬉しいですv
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