babble babble


2013年08月の日記

2013年08月31日(土)
恋猫28
2013年08月23日(金)
鷹の目諸説3
2013年08月17日(土)
セレスタの涙、オニキスの誓い71
2013年08月16日(金)
言葉攻め2
2013年08月15日(木)
言葉攻め
2013年08月10日(土)
獣6
2013年08月08日(木)
髭騎士記念日編
2013年08月06日(火)
熱帯夜
2013年08月03日(土)
髭騎士17

恋猫28
ハボロイ風味

「暑い……」
 ふにゃあとソファーに寝そべったロイは、うんざりとした声で呟く。寝そべった時には冷たかったソファーの表面もすっかりと温くなって、ロイは滑り落ちるようにソファーから床へと降りた。
「暑い……」
 テーブルとソファーの間は風も通らず余計に暑い。狭い空間が暑苦しさを倍増したが、ロイはもう動く気にもなれず、力なく尻尾をゆらゆらと揺らした。
「ここ、暑い……でも動きたくない」
 床に頬をこすりつけてロイは呟く。その時、足音に続いて呆れたような声が聞こえた。
「ロイ、なんてとこにいるんスか」
 ソファーとテーブルの隙間から黒い尻尾の先っぽが何とか涼を得ようとするように揺れている。ハボックは大きな手を伸ばすとロイの体をヒョイと持ち上げた。
「ハボック」
 小さな体をソファーに戻せば、ロイの黒い瞳がハボックを見上げる。ハボックは汗ばんだロイの額に張り付いた髪をかき上げて、小さな顔を覗き込むようにして言った。
「猫ってのは家の中で一番気持ちのいい場所を探す名人って言いません?」
「探す以前にその労力が惜しい」
 動きたくない、と言うロイにハボックは苦笑する。
「まったく、子供のくせに」
「子供じゃない。これは仮の姿だ」
「はいはい」
 ムゥと頬を膨らませるロイにいい加減に答えると、ハボックはキッチンに入っていった。その後についていきたいと思いつつ動く気力もないままに見えなくなった背中を目で追って、ロイはキッチンの入口を見つめ続ける。すると少ししてハボックがガラスの器と小さな機械のようなものを手に戻ってきた。
「かき氷食いません?ロイ」
「────食う!」
 煮溶けた脳味噌がかき氷という単語に遅ればせながら反応してロイはガバリと身を起こす。ハボックはキッチンからボウルに氷のキューブを入れて持ってくると、かき氷器の中にガラガラと放り込んだ。
「やる?」
「やる!」
 コクコクと頷くロイに笑って、ハボックはかき氷器をロイの方へ押し出す。ロイは取っ手に手を掛けるとグルグルと回した。
「うわあ」
 シャリシャリと氷が削れる音がしてガラスの器に氷の山が出来ていく。涼しげなその様に目を輝かせて、ロイは夢中で取っ手を回し続けた。
「ロイ、零れちゃうっスよ」
 クスクスと笑って言われて、ロイは慌てて手を止める。ハボックはロイの前に緑とピンクの液体が入った瓶を並べて尋ねた。
「メロン?イチゴ?」
「う……」
 メロンもイチゴもどっちも好きだ。決められずに唸るロイを見てハボックが言った。
「じゃあ、ミックスで」
「えっ?」
 そう言うなりハボックは両手に瓶を持ち、できあがった氷の山に掛ける。そうすれば半分は緑、半分はピンクに頭を染めた氷の山ができあがった。
「はい、どうぞ」
 ハボックは言ってロイの前にスプーンと器を置く。スプーンを手にチラリと視線をやれば頷くハボックを見て、ロイは氷の山のてっぺんをスプーンで掬った。
「つめたぁい!甘いっ!」
 口の中であっと言う間に溶けた氷が熱くなった体を冷やしていく。気持ちよくてパクパクと口へ運べば、頭の芯がキーンとなった。
「くぅぅ……ッ」
「急いで食べ過ぎっスよ」
 小さな頭を抱えるロイにハボックが笑う。その声にハッとして、ロイは言った。
「お前の分!」
 あんまり嬉しくてさっさと一人で食べてしまった。そうすればハボックは立ち上がって冷蔵庫からビールを持ってきた。
「オレはこっちにします」
 そう言うとプルトップを引き上げ一気に半分ほども飲み干す。満足げな吐息を吐いたハボックだったが、小首を傾げて言った。
「シロップの代わりにビールかけたら旨さ倍増とかならないっスかね」
「えええ、ビールゥ?かき氷はやっぱりメロンかイチゴだろうッ?」
「試し試し」
「わーッ、バカッ、やめろッ!」
 言うと同時に氷の山の裾野にビールを垂らすハボックにロイが目を剥く。ロイの手からスプーンを取り上げて金色に染まった氷を掬って食べたハボックは「うーん」と眉を寄せた。
「メロンとイチゴの味もするっス」
 どうやら下の方で混じってしまったらしい。ビミョーと顔を顰めるハボックにロイは言った。
「器をもっと持ってこい。ビール味がよければ削ってやる」
「んー、やっぱりオレもイチゴにしときます」
 そんな風に言えばそれ見たことかと言った目つきでロイに見られて、ハボックは頭を掻いた。
「イチゴかき氷一つ、お願いします」
「いいだろう」
 ぺこりと頭を下げて言うハボックに仰々しく頷いて、ロイはシャリシャリと涼しげな音を立てて氷を削る。
「じゃあ、改めて」
「いただきます!」
 うだるような暑い午後、それぞれに削った氷を口に運んで涼を取るハボックとロイだった。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、コメント、本当に励みになってます、嬉しいですーvv

「恋猫」ですー。実は今日も更新が「セレスタ」しか書けてないのでせめて日記だけでもと(苦笑)それでも一年ぶりだよ!前回書いたの探したら一年前の七夕だった(汗)
今週更新が間に合わない敗因は、週末マラソン旅行に行くはずだったダンナが急遽取りやめてガッツリ家にいる事になったからですが、それなら金曜に書くかと思っていたらですねー、なんと玄関の天井から水漏れが!!朝、ゴミ出ししようと玄関で袋をごそごそ出してたら、ポタリと腕に水が。「えっ?」と思って上を見ると天井の電気のところから水が垂れてくるんですよ!「ええっ?!」と今度は下をみれば三和土に水たまりがッ!玄関の上は洗面と風呂と洗濯機!じゃあどっか配管切れてんの??と、慌てて不動産屋に連絡して午後一時過ぎに来て貰いましてね。「天井、切ってもいいですか?」って言うのでどうせクロスやら何やら貼り替えなきゃだし、開けなきゃどうなってんのか判らないしでオッケーを出して天井に切り目いれた途端、水がジャーッっと……ッ!!もうビックリだよ!!結局水漏れは給湯管からと判明、水道屋さんを呼んで傷んだ部分を繋ぎ直して貰いました。一応その後使っても水漏れは発生しなかったので大丈夫そうなのですが、天井裏乾かしてから天井と壁の石膏ボードや壁紙の補修と言う事になるので、天井は穴開いたままです。おかげでなんか屋根裏の匂いがする……(苦)今のうちの玄関の天井、こんな感じです(苦笑)





ピンクのところが補修個所。痛んだ部分を切り取ってジョイントで繋いでる。ちなみに黒い管は排水管、青系が給水管で赤系(今回はピンク)が給湯官と判るように色分けしてるそうな。
そんなわけでとてもポメラ弄る余裕ありませんでしたー。ハアア……。でも、うちの場合二階の配管からの水漏れだったのですぐ発覚したけれど、これが一階だと気付かないまま水が溜まって、最悪の場合基礎が腐ったりするそうですよ!!怖ッ!!

以下、拍手お返事です。

なおさま

鷹の目リメイク美味しく頂いて貰えてよかったですーvロイの寝間着は拘束着!!(爆)鷹の目印の南京錠が付いてるんですね!いいなぁ、それ(笑)「セレスタ」ふふふ、そうですよ、ただの色惚けのエロ親父じゃないんです、大総統っスから!(笑)ハボックの中にお邪魔って、思わず吹き出しちゃいましたよ(笑)「久遠」ははは、第三の男(笑)多分誰も覚えてないだろうけど、実は第三章でチラリと出てきてました。でも、私ですら名前を覚えておらず「なんて名前にしたかなぁ」と読み返してたから(殴)わふんわふん!!話が関係なければ絶対書きたいネタなんですけどねぇ……流石にそれを書くと話変わっちゃうから、残念(苦笑)

阿修羅さま

「鷹の目」続き楽しんで頂けて嬉しいですvそうそう、犯すんじゃなくて犯される方(笑)遅くに病院、大変でしたね!普通にしてても脱水症状になりやすいのに水分制限があるなんて、難しい……。とりあえず一安心出来てよかったです。暑さももう少しのようですので、どうぞお体お気をつけて夏を乗り切って下さいね。

はたかぜさま

本当、朝晩はだいぶ涼しくなりましたよね。この間野球のナイトゲームで神宮に行ったのですが、二週間前に行った時は蒸し暑くて死にそうだったのが、日が落ちたら凄く過ごしやすくて季節の変化を感じました。「久遠」えへへへ、先、読めないですか?きりきり舞いして貰えて嬉しいなぁvvガッカリさせないように頑張りますよ!「玄関」ホークアイ姐さん、容赦なく「О」を真っ二つにしてくれそうです!!(爆)「ギャーッ」と喚くロイと遠くから見守る部下三人の姿が目に浮かんで思わずニヤニヤしちゃいますよ。はたかぜさまのコメント読みながら私も楽しんでますv「セレスタ」ツラ気持ちいい!なんて嬉しいお言葉vありがとうございますv最後はいっぱいの幸せを上げなきゃですよね!うん、多分そのつもり……なる予定(苦笑)色々書きかけのがモリモリで心苦しいですー。でも楽しみにして下さっていると聞くと頑張れます!ありがとうございますvv
2013年08月31日(土)   No.339 (ハボロイ)

鷹の目諸説3
ロイハボ前提

 最近つきあい始めたばかりのハボックに一緒に夕飯を食べないかと誘われてロイが二つ返事で答えたのは昨日のこと。翌日は二人そろって休みだし、雰囲気のいい店に連れていってそのまま家にお持ち帰りだなどとあれこれ算段していたロイが、ハボックに「今日は連れていきたい場所がある」と言われ、まあそれでもお持ち帰りは出来るだろうと司令部を出たのは二十分ほども前のことだ。ハボックに付いて歩いていたロイは、辺りにそれらしいものが全く見えてこないのに気づいて尋ねた。
「連れていきたい場所があるって……どこなんだ?」
「もうすぐっスから」
 店が建ち並んだ賑わう界隈を過ぎてからもう大分経つ。何度尋ねても「もうすぐ」としか答えないハボックに、ロイは苛立ちを覚えて言った。
「おい、ハボック」
「ここっス、大佐」
 不意に足を止めたハボックがそう言ってアパートを指さす。ハボックが指さす先には、だがごく普通の小さなアパートがあるきりで、とても食事をするような場所があるようには見えなかった。
「ここ?だが────おい」
 眉を顰めるロイに構わずさっさと階段に向かってしまうハボックを、ロイは慌てて追いかける。狭い階段を上がりながら、ロイは前を行くハボックに言った。
「隠れ家的な店なのか?それにしちゃ下に看板も出ていなかったな」
 幾ら隠れた名店と言えど、看板の一つもなかったら客が来ないのではないのだろうか。それとも口コミ会員制の類の店なのだろうかと思いながら階段を上っていたロイの耳にハボックの声が聞こえた。
「ここっス」
「────ここ?」
 連れてこられたのはどう見ても普通のアパートの一室に過ぎない。こんなところにあるレストランなど怪しすぎると、ここはやめた方がいいのではとロイが考えている間にハボックは扉をノックしてしまった。
「なあ、ハボック」
 それでも中に入る前なら帰っても構わないだろうとロイはハボックの肩に手を伸ばす。その時、鍵を回す音がしてガチャリと扉が開いた。
「こんにちは」
「いらっしゃい」
 にっこりと笑って言うハボックに答えた相手を見て、ロイは伸ばした手をそのままに固まってしまう。ポカンとして見つめてくる黒曜石に、ホークアイはうっすらと笑みを浮かべた。
「どうぞ」
 ホークアイは言って二人を中へと招き入れる。ありがとうと中へ入ろうとして、ハボックはロイが固まっているのを見て眉を寄せた。
「なにしてるんスか、大佐。さっさと入って」
「えっ?いや、だが、しかし」
 入ってと言われたロイはキョロキョロと辺りを見回しそれから扉の中を見る。どう見ても個人の住宅としか見えないそれに、ロイはハボックに尋ねた。
「おい、ここってもしかして中尉の」
「アパートっスよ。ほら、扉締めて」
 何でもないことのように言われロイは仕方なしに扉を閉める。重たい音を響かせて閉まった扉が地獄の門のように感じながら、ロイは恐る恐る中へと足を踏み入れた。
「お邪魔しまぁす」
 その時いつになく明るい声が聞こえてロイはハボックを見る。ひどく嬉しそうなその顔に、ロイは俄かに不安になった。
(まさか……本命は中尉とか言うんじゃないだろうな。連れていきたい場所があるって、食事などではなく本当は)
 自分とのことは単なる遊びで本当はホークアイの事が好きなのではないだろうか。もしくは上官である自分の申し出を断り辛く身を許してしまったが、やはり自分の気持ちに嘘はつけないと二人の関係を許して欲しいと直談判するつもりなのかもしれない。
(い、いや、だがこの間の夜だってハボックは)
 と、ロイの脳裏に数日前ハボックと過ごした夜の事が浮かび上がる。羞恥に震えながらも誘うように脚を開いてしがみついてきたハボックの姿を思い出せば、ついうっかり伸びてしまった鼻の下をロイは慌てて引き締めた。
「手ぇ洗わせて貰うっスね」
 その時、ハボックの声が聞こえてロイが視線を向けると、ハボックは勝手知ったる様子で奥へと入っていく。チラリとホークアイの様子を伺いながら後を追ったロイは、洗面所で手を洗うハボックに言った。
「おい、一体どういうことだ?これは」
「大佐も手、洗って。ちゃんとしないと怒られるっスよ」
「いや、だが」
「あ、呼んでる。はーい、今いくっス!」
 説明して欲しいと言う間もなく、ハボックはそそくさと行ってしまう。仕方なしに手を洗って元の部屋に戻れば、ハボックが料理の手伝いをしたり食器を並べたりしていた。
(や、やはり二人はつきあっているのか……ッ)
 仲睦まじい二人の様子にロイは目を見開く。自分といる時とは全く違う笑みを浮かべるハボックに、ロイはヨロヨロと後ずさった。
(あんなに可愛らしく強請ったのも、好きと囁いて私を離さなかったのも全部嘘だったというのか……ッ!いや、もしかしたら最初から出世の為に私に身を任せて……ッ!恥ずかしいとか言いながらあーんなこともこーんなことも好きにさせたのは……ッ!!)
 常日頃明晰だと謳われる頭脳の中で、あられもないハボックの姿を思い浮かべながらロイは悶々と考える。
(あんな可愛いハボックと別れなくてはならないなんて、そんなッッ!!それならいっそ三人でつき合うって事に────)
 ハボックを挟んで3Pならそれはそれで萌える、などと一瞬腐ったことを考えてしまってから、いやいやそんなことを言っている場合ではないとロイがぐるぐると考えていればハボックの声が聞こえた。
「大佐、用意出来たっスよ」
 そう言われてハッとして見れば、食卓の上には旨そうな料理が並んでいる。どれも手作りらしい料理の数々を見つめながら、ロイはドサリと椅子に腰を下ろした。
「このチキンのオーブン焼きが旨いんスよ〜」
 ニコニコと笑いながらハボックが言う。それを聞いてロイは恐る恐る尋ねた。
「もしかしてこれまでにも食べさせて貰ったことがあるのか?その……中尉の手料理を」
「勿論っスよ。今日はリクエストしたんです」
「────そうか」
 ハボックの言葉にロイは心臓を射抜かれたように感じる。二人がつき合っているのは決定的だ。やはり今日は二人の仲を認めて貰う為に呼ばれたのだとロイはテーブルの下で手を握り締めた。
(お持ち帰りどころの話じゃないな……)
 食事が終われば一人アパートを追い出されるに違いない。その後ハボックはホークアイと楽しい時を過ごすのだろう。
(滑稽だ……まったく)
 今まで色んな女性とつき合ってきたが、その誰よりも惹かれたのがハボックだった。男であることも気にならないほどハボックが好きで、本気で欲しいと思った。だが、手に入れたと思ったのは単なるこちらの思い込みで、ハボックの方には全くその気がなかったらしい。
(くそ……っ、それならそれで早く引導を渡してくれ)
 ロイが胸の内で呟いた時、ハボックが言った。
「今日大佐をここに連れてきたのは話したい事があったからっス」
 そう言うハボックの言葉にロイはギクリと身を強張らせる。引導を渡して欲しいと思った筈だったが、反面聞きたくないとも思ってロイは堅く目を閉じた。
「改めて紹介しますね。────オレの姉さんっス」
「────は?」
 その時聞こえた思いもしなかった単語に、ロイは閉じていた目を開けてポカンとする。アパートに着いたときよりもガッチリ固まってしまったロイに、ハボックが心配そうに言った。
「えっと、聞いてます?大佐」
「……今なんて?」
「オレの姉さんです、って」
 そう言って照れくさそうに笑うハボックをまじまじとロイは見つめる。
「ねえさん?」
「はい」
「ねえさんって、血の繋がった身内のアレ?」
「そうっス。って言っても半分ですけど」
 言われてロイはハボックを見、ホークアイを見る。見慣れている筈の副官を食い入るように見つめるロイにハボックが言った。
「オレたち、異父姉弟なんス」
「イフキョウダイ」
 まるで聞いたことがない言葉のようにロイは片言に繰り返す。頭の中でぐるぐると回った単語が漸く意味を成した瞬間。
「ヒエエエエエエッッ?!」
 ロイの口から奇声が飛び出した。
「異父姉弟ッ?姉だってッ?聞いてないぞ、そんなこと!!」
「別にわざわざ発表する事でもないっスから」
 ねぇ、とハボックがホークアイに言えば、ホークアイが頷いた。
「私たちが姉弟であることは大佐の部下として働く事には関係ありませんから」
「そっ、それはそうだが」
 ロイは思ってもいなかった現実に心臓をバクバクさせながら二人を見比べる。
「あまり似てないな」
 同じ金髪ではあるが色合いも髪質も違う。男女であることを差し引いても姉弟と言うほどには似ていなかった。
「私は父親似ですから」
「オレは母さんに似てるって言われるっス」
 ねっ、と笑いかけるハボックの髪を撫でてホークアイは言った。
「そうね。ジャンは母さんによく似てるわ」
 そう言ってハボックを見つめる瞳には慈しみが溢れている。だが、次の瞬間ロイを見た鳶色はそんなものは欠片も宿っていなかった。
「そう言うわけで、大佐。改めてよろしくお願い致します」
 言って、ホークアイは軽く頭を下げる。それにつられて頭を下げたロイにホークアイはにっこりと笑った。
「ジャンのことを泣かせたら承知しませんから」
「ハイッッ!!大事にさせて頂きますッッ!!」
 にっこりと笑った顔の中で瞳だけは笑っていない。ピンと背筋を伸ばして大声で答えたロイはピクピクと頬をひきつらせて笑みを浮かべた。
「ジャン、今日は泊まっていらっしゃい。明日は休みでしょう?」
「えっ?あー、そうっスけど」
 ハボックは言いながらロイをチラリと見る。ひきつった笑みを浮かべたままハボックと視線を交わすロイに、ホークアイが言った。
「ここからお持ち帰りなんてゼッタイに赦しませんから」
「お持ち帰りなんてそんな滅相もないッ!」
 まるで心を見透かすように見つめてくる冷たい鳶色に、だらだらと冷や汗を流すロイだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、本当に励みになってます、嬉しいですーvv

先日書いた「鷹の目諸説2」の続きを読みたいとコメント頂いたので、書いてみました。実はネタ元の方には続きをチラリとお見せしたのですが、今回は改めて(笑)しかし、ロイ、大変だろうなぁ(苦笑)でもなんだかんだ言ってハボックがロイの事好きだから、結局最終的にはホークアイが折れそうな気もします。

あー、そうだ。明日の更新ですがまた「セレスタ」だけになりそうです、すみません(汗)どうにも間に合わない…orz 最近どうも受けロイが可愛くも美人にも書けず、書くのに時間がかかって仕方ありません(苦)それからそろそろいい加減に「菫2」を書かねばと寝る前に布団の中でチマチマと読み進め、じゃあ書こうかなと思ってポメラを見たらアップしてないのが一章ありました(苦笑)これ、明日にでもアップしますかね…?ロイハボばっかりだと言われそうな気もしますが(苦笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

ダース・ベイダー!(笑)ブラッドレイのテーマソング、そんなのだったんですね(笑)ふふふ、興味をなくすなんて、ロイ、甘いよ!って感じですかね(苦笑)「久遠」ははは、流石に狛犬同士を始めると大変な事になるので。でも、妄想覗いてみたいなぁv鷹の目姉弟説、リメイクしてみました。前回書いたのは読まずに書いたのですがどんなもんでしょう(苦笑)
2013年08月23日(金)   No.338 (ロイハボ)

セレスタの涙、オニキスの誓い71
ロイハボ風味

 長い会議を終えてロイが司令室に戻ってくる。「お疲れさまです」とかかる声にも無言のまま執務室に入っていくロイの横顔を見上げたホークアイは、僅かに目を見開くとロイを追って執務室に入った。
「大佐、何か問題でも?」
 後ろ手に扉を閉めてホークアイは尋ねる。窓辺に歩み寄り外を見つめていたロイが、気持ちを落ち着けるように一つ息を吐いて答えた。
「ブラッドレイが来ている」
「えっ?」
 思いがけない言葉にホークアイは目を瞠る。
「何のために?」
「さあな、いきなり会議室に現れた。嫌みったらしく聞かれたよ、元気で活躍してるのかとな」
 ロイがそう言うのを聞いて、ホークアイが眉を寄せた。
「ハボック少尉が入院中なのを知っているんでしょうか」
「まさか。あの男は一度捨てたものに興味を抱くような奴じゃない。私に尋ねたのは偶々顔を合わせたからだろう」
 そう口にしてはみたものの、ロイは俄に不安になる。壁の時計をチラリと見遣るとホークアイに言った。
「中尉、すまんが────」
「どうぞ。構いませんわ」
 言いかけたところでそう返されてロイは驚いたようにホークアイを見る。見つめてくる黒曜石に微笑んでホークアイは言った。
「少尉のところへ行かれるのでしょう?どうぞ、後のことはやっておきますから」
「……すまん」
 言わずとも察してくれるホークアイにロイはすまなそうな笑みを浮かべる。それでもそうと聞けばロイはすぐさま病院に行くために執務室を出て行った。

「あら、マスタング大佐」
 開いたままの病室の扉をノックすれば、汚れたタオルやリネンを取りまとめていた看護士が顔を上げて笑みを浮かべた。
「丁度今、体を拭いてシーツを取り替えたところです」
「いつもありがとう」
 にっこりと笑って病室を出ていく看護士にロイはそう声をかける。パタンと扉が閉まると、ロイはベッドに歩み寄った。
「さっぱりしたか?ハボック」
 ロイは言ってハボックの頬を撫でる。相変わらずハボックは何も答えなかったが、しっとりと滑らかな肌の感触にロイは目を細めた。
「そうか、さっぱりしたか。よかったな」
 そう言うとロイは窓辺に寄る。病室の窓からは少しでも患者の慰めになるようにと植えられた木々が緑の葉を繁らせているのが見えた。
「今日も一日暑かったよ。ブレダ少尉はこんな日に河川の復旧作業だ、気の毒に」
 先日降った大雨の影響で堤防の一部が決壊した。その復旧作業の為、ブレダを始めとした小隊の部下たちは暑い中一日中土木仕事だ。直射日光の中の作業は屈強な軍人と言えどかなりハードで、ブレダは会議ばかりで籠もりきりのロイに『代わってくれ』と言いながら出かけていったのだった。
「私ならくだらん会議に出るくらいなら土木作業の方がいいがね。お前もそう思うだろう?」
 ロイはそうハボックに話しかける。以前ハボックが士官学校の学生だった頃、座学より実技の方が好きだと言っていたことを思い出してロイは言った。
「お前ならどんなに暑くても元気いっぱい作業するだろうな」
 そう言うロイの言葉にもハボックは反応を見せない。もし、ここにブラッドレイが来たとしても今のハボックを見たら何かする気にはならないと思えた。
「アイツは私やお前の反応を面白がっているところがあった」
 たとえ何かしようとしたところで全く無反応なハボックでは忽ち興味を失うに違いない。
「心配し過ぎ、だな」
 ブラッドレイの顔を見てあの声を聞いて、神経質になってしまっただけなのだ。ハボックが入院していることを知っても、あの男なら鼻の先で笑うだけに違いないとロイは思った。
「今のお前を見ても、アイツは嘲笑うだけで何とも思わんだろうな」
 それはそれで悔しいが、ハボックの為には良いことなのかもしれない。
「いいさ、そのうち嫌でも私達のことを忘れられなくしてやる」
 必ずハボックとブラッドレイをあの場所から引きずり下ろしてやるのだ。
「ハボック、その為にも早く戻ってこい」
 ロイはそう囁いてハボックにそっと口づけた。

 晴れ渡った空の下、ガラスのように澄み切った湖が広がる。その中央に彼はただじっと佇んでいた。遙か空の上空で空気が一瞬そよと震えたが、彼のいる世界は変わらずただ静かに漠として広がるばかりで、なんの変化も起きなかった。彼の空色の瞳はガラスのように空を映し湖を映し、それ以外なにも映しはしない。感情のないガラスの瞳は傷ついた魂をその奥底に封じ込めて、せめて砕け散ってしまうことだけはないように大切に護っているようだった。
 彼はただガラスの瞳で宙を見据えて湖の中に佇み続ける。空は何者をも拒むように果てなくどこまでも広がり、湖とその境界を混ぜあって彼をその懐に包み込んでいた。

 ロイが離れ難く思いながらも病院を出た後、微かに医療器具の動作音がするだけの静まり返った病院の廊下にカッカッと靴音が響く。軍病院のスタッフたちがその訪問を驚きながらも理由を尋ねることも出来ないまま見守る中、ブラッドレイはハボックの病室の前に立った。
「ここか。マスタングの大事な大事な部下がいるのは」
 ブラッドレイは笑み混じりにそう呟くとガチャリと扉を開く。中に足を踏み入れ後ろ手に扉を閉めると窓に歩み寄りカーテンを開いた。その途端、中空にかかった大きな満月から銀色の光が病室に降り注ぐ。振り向いたブラッドレイの隻眼に静かにベッドに横たわるハボックの姿が映った。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、コメント、いつも励みになってます、嬉しいですv

「セレスタ」です。明日まで実家にいてサイトを弄れないので、暫定的にこちらにアップしました。来週からは通常営業……の予定ですー(こら)

以下、拍手お返事です。

なおさま

うふふ、ロイ、楽しそうですか?書いてる私も楽しかったです(爆)思わず鼻の穴が膨らみそうになりながら、必死に冷静を装うロイって感じですかね(笑)

阿修羅さま

天気予報を見ると毎日がっくりします、早く涼しくなって欲しいですよね……!(切実)暑い中の介護は一際大変ですよね、阿修羅さまが体調壊されませんよう、本当にお気をつけくださいませ。年をとると子供に帰るというけれど、ある意味その通りなのかもしれません……。「鷹の目」考えてみますので、ちょっとお待ちくださいねv
2013年08月17日(土)   No.337 (ロイハボ)

言葉攻め2
CP:ロイハボ(R18)

「くく……ッ、すごい、本当に口をパクパクさせてる」
「言わないで……っ」
 クククと喉奥で笑うロイの声が聞こえて、ハボックは羞恥に首を振る。自分でも鈴口がヒクついているのが感じられて恥ずかしくて堪らなかった。
「涎の量が増えたな。ああほら、裏筋に沿って流れていく。そういやお前は裏筋を舐められるのが好きだったな。涎が流れても感じるのか?」
「……ッッ」
 確かにロイの言うとおり溢れる蜜が鈴口から裏筋を伝って流れていくのを感じる。その濡れた感触がロイの舌先の動きのようだと思った時、ロイの声がした。
「またデカくなったな。私に舐められているようだとでも思ったのか?」
「な……ッ」
 まるで見透かされたように言われてハボックはギクリと身を震わせる。そんなハボックにロイが言った。
「私が舐めたらそんな生易しい動きじゃないだろう?ねっとりと舌を押し当てるように舐めるんだ。カリの部分を擽って、時々鈴口も吸ってやる。そういや鈴口を吸いながら指先で裏筋を引っかくと面白いくらいにペニスがビクビク震えるんだった」
「は……ッ、ア……ッ!」
 ロイの言葉をなぞるように淫靡な感触が竿の薄い皮膚を通して感じられる。ハアハアと息を弾ませてハボックはしどけなく脚を開いた。
「たいさ……ァ」
「ああ、また涎が零れた」
「ん……ッ」
 ロイの言うとおり、鈴口で玉になっていた蜜がとろんと零れて竿を伝って流れる。零れた蜜が繁みを濡らし更にその奥の蕾をも濡らした。
「あんまり涎を垂らすから下の口まで濡れてるぞ?イヤラシい眺めだ」
「やあ……っ」
 クスクスと笑って告げる声に羞恥を煽られる。それと同時に濡れた蕾が物欲しげに蠢くのを感じた時、ロイの声が聞こえた。
「それだけ濡れてたら指がすんなり入りそうだ」
「えっ?!」
 ハッとして顔を上げれば面白そうにこちらを見つめてくるロイと目が合う。目を見開いて見つめてくるハボックにロイは楽しげに言った。
「指……挿れてやろうか?」
「ッッ!!」
 低く囁く声にハボックはビクンと震える。ハボックを見つめたままロイは唇を舐めて見せた。
「お前の……濡れた口に指を当てるんだ……。指を動かすとぬめぬめとした口が私の指を飲み込もうとヒクついて……ちょっと力を入れるぞ、ほらその途端──」
「アッ!!」
 ぬぷんと指先が蕾に押し込まれたように感じてハボックは喉を仰け反らせる。目を閉じてハッハッと喘ぐハボックにロイは囁いた。
「根元まで一気に入ったぞ……掻き回してやろうな、くくっ……ぐちょぐちょ音がする、イヤラシいな」
「んあ……ッ、はあ、んっ」
「二本目を挿れるぞ……ああ、ほら……飲み込んでいく」
「くふ……ゥッ」
 実際には指など入っていないにも関わらず、躯の奥底で蠢くロイの指の感触がする。ぐちぐちと躯の中を掻き回されてハボックは喘いだ。
「ああ……ンッ、たいさ……っ」
「前も弄ってやろうな……竿を扱いて……先っぽを引っかいてやろう……。ああ、また涎が零れたぞ」
「ハア……ッ!」
 トロトロと蜜を零す先端を見えないロイの指先が擽る。入ってもいないロイの指を締め付けるようにハボックは蕾にキュッと力を込めた。
「いい締め付けだ」
「ッ」
 その途端ロイの声が返ってハボックはビクビクと震える。答えるように更に蕾を締め付ければ、中でロイの指が蠢くように感じられた。
「……たいさァ」
「なんだ……?」
 強請るように呼ぶ声にロイが優しく聞き返す。ハボックはトロンと蕩けた瞳でロイを見て言った。
「挿れて……」
「挿れてやってるだろう?……指、二本も入ってる」
 クスリと笑って言うロイにハボックはむずかるように首を振る。
「指じゃなくて……ッ」
「指じゃなくて?……なんだ?」
 囁く声で聞き返されてハボックは喘ぐように答えた。
「大佐の……オチンチン、挿れて……ッ」
「しょうがない子だ」
 クツクツと笑う声にもハボックは焦れたようにロイを呼んだ。
「判った、じゃあもっと脚を開いてみろ」
「……は、恥ずかし……っ」
 そう言いながらもハボックは脚を大きく開く。楔を腹に着くほどそそり立たせ、零れる蜜で蕾をしとどに濡らすハボックを見つめてロイは言った。
「指で開くんだ……私のはデカいだろう……?挿れやすいように指で開いてごらん」
「あ……、んふ……ぅ」
 ロイの言葉に操られるようにハボックは双丘に手を添え蕾を左右から指で開く。紅く熟れた肉壁を自ら覗かせる姿に、ロイは楽しげに言った。
「イヤラシい眺めだ……そんなに挿れて欲しいのか?」
「欲しいっス!大佐……ッ、早くぅ……ッ!」
 焦れて尻を揺らめかすハボックの姿にロイはクスクスと笑う。立ち上がりハボックに近づくと期待を込めて見上げてくる濡れた空色を見下ろして言った。
「目を閉じるんだ……ほら、私のが近づいていくのが判るだろう?」
 言われるままに目を閉じるハボックの側に片膝をついて、ロイはハボックの耳元に唇を近づける。耳朶を甘く噛み、そっと囁いた。
「私の先っぽが入口を突っついてる……くちゅくちゅ、イヤラシい音がするな……聞こえるだろう?」
「はあ、ん……」
 囁く声にハボックは目を閉じたまま喘ぐ。ハアハアと荒い息を零す唇を舐めて、ロイは言った。
「挿れるぞ……押し当てて……ああ、入っていく……」
「んあ……ッ!んんんああッ!」
 実際には何も入ってはいないはずなのに、ハボックの後孔は異物を迎え入れるようにヒクヒクとその唇を震わせる。見えない太い牡に貫かれて、ハボックは尻を突き出すようにして身を仰け反らせた。
「クアアアッッ!!」
「お前の大好きな奥を突いてやる……ほらッ!」
「ヒィィッッ!!」
 耳元で囁かれる熱い声とロイの体温、仄かに香るコロンの香りに包まれて、ハボックはロイの熱を躯の奥底に感じる。腰をくねらせ尻を何度も突き出してハボックは身悶えた。
「くハァ……ッ!!た、いさ……ッッ!!」
 背筋を走り抜け脳天を貫く快感にハボックは背を仰け反らせる。涙に濡れた目を開き大きく首を反らせたハボックは、想像のロイの楔を締め付けながら尻を突き出した。
「アッ────アアアアアッッ!!」
 それと同時にそそり立つ楔からビュクビュクと白濁が迸る。革張りの表面を青臭い液体で汚して、ハボックはぐったりとソファーに沈み込んだ。
「は……ああ……」
 ハアハアと息を弾ませて目を閉じるハボックをロイは楽しげに見下ろす。紅く染まった頬を撫でて、ロイは囁いた。
「まったくイヤラシい子だ、お前は……そんな子にはお仕置きが必要だな……」
「た……さ……?」
 囁く声にトロンとした目を向ける空色に微笑んで、ロイはゆっくりとハボックにのし掛かっていった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、コメント、やる気の素です、嬉しいですvv

昨日の続きです。お仕置きとか言いつつ結局我慢できずに挿れに行ってるんじゃないかという気がしますが(笑)しかし、実家だとポメラを打つ以上にパソでアップする時に背後が怖い(苦笑)タイトルをいつもは一番最初に入れるんですが、流石に背後が気になって後で入れるつもりが忘れたまま書き込みしようとしたらエラーになって書いたコメント全部消えたし(爆)明日は「セレスタ」ロイハボ続きですが、覗きに来て下さると嬉しいですv

以下、拍手お返事です。

なおさま

あはは、なんて素敵なテロップ(笑)確かに実は本が逆さまとかありそうですよね。結局我慢できずに押し倒しに行ってます(苦笑)続きもお楽しみ頂けたら嬉しいですv

おぎわらはぎりさま

ハボ、いい感じですか?喜んで頂けて嬉しいですv続きも是非お楽しみくださいませv

阿修羅さま

本当に毎日暑いですね……殆ど引きこもりのような生活してます(苦笑)介護は大変ですが、ご本人にとってはトイレに行けるというのはいいことなのでしょうね。でも、暑い時期は大変です……回数も(汗)腰を悪くされませんよう、気をつけてくださいね!鷹の目、気に入ってくださってますか?嬉しいですv続き……姉弟編でしょうか、それとも他のでいいのかな。うーん、考えてみますv
2013年08月16日(金)   No.336 (ロイハボ)

言葉攻め
CP:ロイハボ(R18)

「あ……っ、たいさっ」
 リビングに入った途端ソファーに押し倒されてハボックは小さな悲鳴を上げる。いつものように口づけが降ってくるのだろうと目を閉じたハボックは、いつまでたっても触れてくる唇がないことにゆっくりと目を開けた。
「大佐……?」
 見上げればロイがうっすらと笑みを浮かべる。なにも答えず身を離して立ち上がるロイを、ハボックは訝しげに呼んだ。
「大佐?」
 この一ヶ月、忙しくて二人きりで過ごす時間をとれなかった。忙しく動いているときは誤魔化されていた欲望が夜の帳が降りると同時に若い躯を支配して、正直ハボックはロイが欲しくて堪らなかった。
 だが、ロイはハボックに触れるどころかテーブルを挟んで向かいのソファーに腰を下ろしてしまう。ハボックはソファーに肘を突き半身を起こしてロイを見た。
「たいさ……っ」
 欲望に濡れた空色にロイは笑みを深める。テーブルの上に置きっぱなしになっていた本を手に取り「なんだ?」と答えた。
「なんだ、って……ッ!」
 そんな事聞かずとも判りきっているだろうに。責める色を滲ませる瞳にロイはソファーにゆったりと体を預け脚を組んだ。
「言いたいことがあるならはっきり言え、でないと判らん」
 ロイはそう言いながら本を開きページをめくる。自分には目もくれず本を読み始める男にハボックは目を見開いた。暫くの間、何も言わずロイを見つめていたものの、見つめれば見つめるほどロイが欲しくて堪らなくなる。ハボックは震える息を吐き出して何度も息を整えて言った。
「……シたいっス」
「────なにを?」
 本から目を上げずにそう答えるロイにハボックは息を飲む。キュッと唇を噛み締めたハボックは顔を赤らめて消え入りそうな声で答えた。
「セックス」
 だが、漸く絞り出した声にロイは答えない。じりじりとしながらロイの答えを待っていたハボックだったが、耐えきれず声を張り上げた。
「大佐っ!」
「ん?……ああ、なにか言ったのか?よく聞こえなかった」
 しれっとしてそう答えるのを聞いて、ハボックは顔を歪める。それでももうこれ以上我慢するのも限界で、ハボックは声を震わせながらもはっきりと言った。
「セックスしたいっス!オレ……ッ」
 もう一ヶ月もロイに触れていないのだ。触れたくて堪らず、それはロイとて同じ事ではないのだろうか。
「ね……たいさ?」
 ハボックとしては精一杯強請るようにロイを呼ぶ。その声にロイはページをめくりながら答えた。
「そんなにシたいのか?だったらまず服を脱いでごらん」
「えっ?こっ、ここで?」
「シたいんだろう?」
 シたいのは確かだがここはリビングのソファーの上だ。灯りを落としていないどころか、当の相手のロイはソファーに腰掛け本を開いているのだ。そんな状況で自分だけ服を脱ぐのは、幾らシたいと思っているとはいえ抵抗がない筈なかった。
「別に無理に脱げとは言わんよ」
 ロイは本から顔を上げずに言う。まるで自分はシたくないとでも言うような態度をとるロイをハボックは目を見開いて見つめていたが、やがておずおずとシャツに手をかけた。羞恥に目尻を染めながらも服を脱ぎ捨てていく。最後残った下着に手をかけた時は一瞬躊躇ったもののエイとばかりに引き下ろして脚から抜くと、ソファーの上に脚を抱え込むようにして座った。
「ぬっ、脱いだっス!」
 革のソファーの冷たい感触が余計に羞恥を煽る。ギュッと膝を抱えた手に力を込めるハボックに、本からあげた視線を向けてロイは言った。
「脚を開け」
「えッ?」
「シたいんだろう?どれだけシたいと思っているのか見せてみろ」
「そんな……」
 セックスをシたい気持ちと羞恥心との狭間で躊躇うハボックが唇を噛んで俯けば、ロイの声が聞こえる。
「なんだ、大してシたい訳じゃないのか」
 その声にハッとして顔を上げたハボックは、再びロイが本を読み始めたのを見て慌てて口を開いた。
「見せますッ!見せるから……ッ」
「見て欲しいのか?」
 声を張り上げるハボックにロイが顔を上げずに言う。見せろと言ったのはロイの筈なのにまるでハボックの方が見せたがっているような物言いに、ハボックは一瞬言葉に詰まったものの結局欲望に負けて答えた。
「見て欲しいっス……」
「本当に?」
 見て欲しいと言いながらまだしっかりと脚を抱え込んでいるハボックにロイが言う。その言葉にハボックは大きく目を見開き、浅い呼吸を繰り返した。それでも震える手を膝にかけ、ゆっくりと脚を開いていく。そうすればひやりとした空気がおずおずと開いた股間を撫でて、ハボックに自分がしていることを嫌でも強く感じさせた。
「見て……くださ……」
 羞恥に震える声でロイに言う。正面を見られず視線を落とせば蜜を垂れ流してそそり立つ自身が目に入って、ハボックはカアッと顔を赤くした。
「ああ、勃っているな」
 クスリと笑ってロイが言う。ロイはソファーにゆったりと座り脚を組み直して言った。
「そう言えばお前のを見るのは久しぶりだ。ふふ、随分と元気じゃないか」
「だって……っ」
 元気だと揶揄されてハボックは更に顔を赤らめる。
「シたいんだから当たり前っしょ!」
「それにしたってもうトロトロじゃないか」
 言い訳のように言えば途端に返されてハボックはグッと言葉に詰まった。
「いつからそんなにしてたんだ?もしかして演習の間中勃たせてたんじゃないのか?」
「そっ、そんな訳ないっス!」
「本当に?それじゃあここへくる車を運転してる間、私を後ろに乗せて私に犯される事を想像してたのか。────相当危険な運転に身を任せていたんだな、私は」
「ッッ!!」
 呆れたようなため息と共に言われた言葉にハボックは唇を噛む。確かにここへくる間これから一緒に過ごす時間への期待がなかったといったらそれは嘘で、返す言葉を見つけられずに膝頭を握り締めるハボックにロイが言った。
「すごいな、さっきから涎を垂らしっ放しだ。見てみろ、鈴口がパクパクしてる」
「ッ!」
 そう言われて股間を見れば、たらたらと蜜を零す自身が目に入る。ヒクヒクとヒクつくそれを見ていられず、ハボックはギュッと目を閉じた。
「面白いな、まるで餌をくれと強請る雛のようだぞ。指を近づけたら食われそうだ────やってみようか?」
 囁くように付け加えられた言葉にハボックはピクリと震える。実際には触れられていないにもかかわらず、ロイの指先が物欲しげにヒクつく先端にグリグリと押しつけられたように感じて、ハボックは喉を仰け反らせて喘いだ。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになってます、ありがとうございますvv

ええと、「ハボックは言葉攻めの羞恥プレイでどこまでいけるのか」ってコメントで聞かれたので書いてみました(笑)実家だと書き辛いわーと思いつつ、こそこそと書いていたら気がつけばやけに長くなっていたっていう(爆)仕方ないので二回に分けました。続きは明日アップします。んで、土曜日は日記に「セレスタ」の更新分載せますので〜。よろしければ覗いてやってくださいv

以下、拍手お返事です。

おぎはらはぎりさま

変態佐で羞恥プレイ、チャレンジしてみました!羞恥な語彙……あんまり多くないんですけど(苦笑)お楽しみ頂ければ嬉しいです。おお、庭に柿があるんですか!いいなぁv子供のころ家に柿の木がありましたが渋柿で食べられませんでした(苦笑)犬って柿食べるんですね!知りませんでした〜。ハボわんこ、口の周りベタベタにして食べていそうです(笑)

なおさま

「セレスタ」きっと「退屈」という病に冒されてるんだと思います(苦笑)衰えたブラッドレイ、想像付きません(笑)ロイ、ちゃんと見せつけられればいいんですがねぇ…。「獣」あははは、絶対ロイ、やっていそうです!(爆)敗れた風船蔓の実を見たヒューズが「みんな一度は必ずやるんだなぁ。ロイ、お前も昔――――」って言いかけたのを聞いて慌ててヒューズにバウバウ吠えたてるロイの姿が目に浮かびます(笑)ホントに毎日暑いですね…。あんまり頑張らずまったりと夏を乗り切りましょう〜(笑)
2013年08月15日(木)   No.334 (ロイハボ)

獣6
『大佐っ、外の見ました?』
 わふわふとハボックが金色の毛を揺すってリビングに飛び込んでくる。夏になって毛足の短い清涼感のあるものに変えられたラグの上に寝そべっている私の側に寄ってきて、ハボックは興奮気味に言った。
『風船葛、実がいっぱい生ってきたっスよ!』
『それがどうしたと言うんだ』
 花が咲いたら実が生るのが当然だ。くだらないとばかりに欠伸をすると、私は足の上に顔を乗せて目を閉じた。
 今年の夏、ヒューズは暑さ対策だといってリビングの窓の前に風船葛を植えた。ヒューズが毎朝水を撒くのにハボックは必ずついていって、風船葛がすくすくと育っていくのを見守っていた。小さな花が沢山ついた時にはそれは大喜びして庭を駆け回ったり、花弁に鼻を寄せて匂いを嗅いだり、またそれをいちいち私に報告に来たりと喧しかったのだ。
『えーっ、でも花はあんなに小さかったのに、実はどんどん大きくなってるんスよ!凄くないっスか?!』
『そりゃあ風船葛だからな』
 私は以前風船葛の実を見たことがある。最終的にどんな実が生るのかよく知っていたが、ハボックは花も実も見るのは初めてのようだった。
『どんな実になるのかなぁ、あの調子だともっと大きくなりそうっスよね』
 ハボックはワクワクと期待に空色の目を輝かせて言う。
『育ったら食ってみよう。食べ出がありそうっスよね』
『おい、風船葛は』
「ハボック!風船葛に水やるぞー」
『あ!はいっ、今行きますっ』
 言いかけた私の言葉を遮るように扉から顔を覗かせたヒューズが言う。ワンと元気よく答えたハボックはいそいそとヒューズの後を追って出て行ってしまい、結局私は言いかけた言葉を伝えそびれてしまった。
『まあ、いいか』
 風船葛は食べられないと教えたかったが、きっとそのうち気づくだろう。私はそう結論づけると、涼しい部屋の中のんびりと昼寝を楽しむことにした。

『大佐ぁ、風船葛、また昨日より大きくなったっスよ』
 それからと言うもの、いつにも増してハボックは風船葛の様子を報告に来る。最近はだんだんと色づいてきた実もあるようで、ハボックの期待は風船葛よりも大きく膨らんできていた。
『どれくらいしたら食べ頃っスかね。きっと噛んだらジュワッとして旨いんだろうなぁ』
 わふわふとハボックは楽しそうに言う。薄目を開けて見ていれば、ハボックは今日もまた水やりするヒューズにくっついて風船葛を眺めに出ていった。そうして。

『大佐ッ!もうそろそろ食べてもいいっスよね!ねぇ、大佐も一緒に食いましょうよ』
 リビングに飛び込んできたハボックが言う。ラグの上に横たわる私の体に前足をかけるとユサユサと揺さぶった。
『ねぇ、大佐ってば』
『……もしかしてお前、まだ気づいてないのか?』
 私はハボックの足を払いのけてそう尋ねる。茶色く色づいてきた風船葛、もういい加減食べられない事に気がついているだろうと思ってばかりいたが、どうやらそうではなさそうだった。
『風船葛は食えんぞ』
『またまたー、そんなこと言って!あんなに膨らんで美味しそうなのに食えない訳ないじゃないっスか』
 ハボックはどうやら自分があんまり食べるのを楽しみにしているのを見て、私がからかっていると思ったらしい。じゃあ、先に行ってますから大佐も来てくださいね、と言うとハボックは庭に出て行ってしまった。
『────おい』
 私は眉を顰めてムクリと立ち上がる。後を追って庭に出た私は、風船葛のカーテンの前、肩を落として座り込むハボックの姿を見つけた。
『おい、まさか食べたのか?』
 そう声をかけてからハボックの足下に二つに破けた風船葛の実が落ちていることに気づく。破けた実の中身はスカスカの空っぽで、中には小さな黒い種が三つ入っているだけだった。
『ハボック』
『空っぽだなんて』
 呼びかければしょんぼりとしてハボックが言う。
『こんなに大きな実なのに、噛んだらプシューって』
『だから食えんと言ったろう?』
『だってこんなに大きいのにッ』
 大声で言って振り向いたハボックの空色の目には涙がいっぱい浮かんでいる。それ程までに楽しみにしていたとは思ってもみず、それだったらちゃんとどんな実がなるのか教えてやればよかったと、私の胸にどっと後悔が押し寄せた。
『毎日水やりしたのに』
 水やりしていたのはヒューズだと思いはしたものの、ここは言わずにおく。
『どんなに旨いか、すっげぇ楽しみにしてたのに!』
 ハアアアと大きなため息をついてハボックは地面にヘたり込む。思った以上に落ち込んでいるハボックを私はじっと見ていたが、ふと思いついて緑のカーテンに近づいた。沢山実った実の中でも大きいのを選ぶと、破かないように気をつけて実を噛み採った。その実を鼻先でつついてポンと上に跳ね上げるとハボックに向かって投げ上げる。高く上がった実は放物線を描いてハボックの頭の上にポンと落ちた。
『っ?』
 頭の上で跳ねる感触に驚いたハボックが顔を上げて辺りを見回す。ころころと転がる実を見つめるハボックに、私はもう一つ実を放り投げた。
『っ!』
 ポンと頭の上に実が落ちて、首を竦めたハボックが私を見る。空色の瞳が見つめてくるのを感じながら、今度はハボックには投げずに自分の鼻の上でポンポンと実を跳ね上げた。
『大佐』
 それを見たハボックが嬉しそうにワフンと鼻を鳴らす。
『キャッチボールしましょう』
『お前、受け止められなかったじゃないか』
『見てなかったからっスよ!ねぇ、大佐、パスして、パス!』
『……落としたら押し潰しの刑な』
 元気になってキラキラと輝く空色に、私は風船葛の実をポーンと大きく跳ね上げた。

いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、コメント、励みになりますーッ!嬉しいですvv

暑いですね〜!さっき高知の四万十で40度を越えたってテロップが流れてました。暑いよ、もう煮えるよ、脳みそが!

そんな暑い日にお久しぶり、暑苦しいワンコ達です(苦笑)ハボック、暑いだろうなぁ(笑)そういや親戚のところのトイプーは飼い主がトリマーさんなこともあって、夏場になると物凄いショートヘアになってます。頭だけモヒカンで可愛いの(笑)普段も毛が短めなので、よそのうちのトイプー見るとやたら毛がもさもさな気がします(苦笑)それはさておき、またコメントからネタを頂いてしまいました。だって、「風船蔓食べてみてがっかりするハボわんこ」って、メチャクチャ可愛いですよねっ!うちの日記は皆さまからの楽しいコメントで成り立ってます(こら)

んで、今日は「セレスタ」だけ更新ですー。昨日もハボックの日だったので何か書きたかったのですが、一日出かけて夜も飲みに行ったら流石に無理でした(苦)明日からは帰省します。日記は適宜書くつもりですが、火曜はお休み。土曜日は日記で「セレスタ」更新しようかなぁ……。気づいたら読んでやって下さい(笑)

以下、拍手お返事です。

おぎわらはぎりさま

あはは、絶叫して下さってありがとうございますvうお、ロイハボバージョンですか?それはそれで変態くさくなりそうですが(苦笑)羞恥プレイ、いいっスね!そうだなぁ、変態佐と豆とどっちがいいですか?(爆)

なおさま

大爆笑ありがとうございます!嬉しいですーvスケジュール表、きっと凄いと思います。「初めて“好き”って言ってくれた日」なんて可愛いのから「自分から“挿れて”ってアソコを指で開いて見せた日」なんてエロ親父くさいのまで毎日のように記念日が書いてあるんじゃないかと(爆)ハボが見つけたら真っ赤になってビリビリにスケジュール表破って怒りまくりそうです。でもきっと予備がある(笑)スポンジの角、でも丸いケーキだと角がない(爆)
2013年08月10日(土)   No.333 (カプなし)

髭騎士記念日編
ヒュハボ風味

「……あれ?」
 目を覚ましたハボックは隣に寝ていた筈の男の姿がないことに気づく。触れてみたシーツがひんやりと冷たいのを感じれば、ヒューズが起き出してからもう随分長い時間が経っていると察せられた。
「どうしたんだろ……急に呼び出しでもあったのかな」
 もしかしたら何か事件でも起こって急にセントラルに帰らなくてはならなくなったのかもしれない。今回はゆっくり出来そうだと聞いてはいたが、こんな稼業につけば休みなど紙切れよりも軽いのは百も承知で、ハボックはガッカリとため息をつくとベッドから降りた。
『今回は時間があるからお楽しみは明日な』
 久しぶりの逢瀬、てっきり濃密な夜を過ごすのだとばかり思っていたハボックにヒューズは悪戯っぽくそう言った。別に期待していた訳ではないが肩透かしを食ったような気になったのも確かで、ハボックは二重の意味でため息をつくととりあえず何か飲もうと寝室を出た。その途端何やら甘い香りが鼻孔を擽る。あれ?と驚いたハボックは急いでキッチンに向かった。
「――――朝っぱらから一体なにやってるんスか?」
 てっきり帰ったとばかり思っていたヒューズがキッチンにいるのを見て、ハボックは目を丸くする。ヒューズは焼き上がったスポンジをスライスしながら「おはよう」と笑顔を向けてきた。
「何って見て判るだろ?ケーキ作ってんの、今日は記念日だからな」
「――――記念日?」
 至極ご機嫌でそう言うヒューズの言葉にハボックは目をパチクリとさせる。反応の鈍いハボックに、ヒューズが眉を寄せて言った。
「なんだ、まさか覚えてないとか言うんじゃないだろうな?」
「えっ?や、まさかそんな訳ないっしょ!ああ、記念日ね、勿論覚えてるっスよ!あ、オレ、まだ顔洗ってなかった」
 洗ってくるからとハボックは言うとそそくさとキッチンを出る。洗面所に飛び込み扉をバタンと閉めると扉に寄りかかり腕を組んだ。
「記念日って……なんかあったっけ?」
 覚えてると答えたものの正直言って全く覚えがない。だが、あんなに機嫌よく準備しているのを見たらとても覚えていないなどとは言えなかった。
「記念日……オレと中佐のって事だよな……」
 ヒューズ個人の事を何か祝うとは思えない。ハボックの事なら祝ってくれるかもしれないが、あの様子はどう考えても二人共通の出来事に違いなかった。
「ヤバイ、全然記憶にねぇ……」
 必死に記憶を辿ってみるがなにも浮かんでこない。顔を洗えばすっきりして何か思い出すかもと冷たい水で顔を洗い更には頭にもかけてみたが、やはり何も思い出せなかった。
「マズイ……どうしよう」
 一体何の記念日かなどと尋ねたらガッカリするだろうか。ガッカリするならまだしも覚えていないのかと怒りを買ったりしたら、ヒューズの事だ、何をされるか判ったものではなかった。
「なんだろう……中佐とオレの記念日……」
 初めて会ったのは春先だった筈だ。告白も初めてのキスも今日ではない筈で、ハボックはうーんうーんと唸りながら必死に考えた。
「ダメだ、思い出せない……」
 幾ら考えても浮かんでこない。
「……しょうがない、素直に聞いてみよう」
 下手に誤魔化して事態をややこしくするより素直に思い出せないと尋ねた方が最終的には被害が少なくて済みそうな気がする。ハボックは濡れた髪をガシガシと掻くと腹を決めて洗面所を出た。
「あの……中佐」
「お、顔洗ったか?だったらちょっと手伝ってくれ」
「へ?……は、はい」
 ボウルにクリームを泡立てているヒューズに言われハボックは手を洗う。言われるままメロンやシロップ漬けの桃を切りながら、ハボックはおずおずと尋ねた。
「中佐……その……き、記念日ってなんの記念日でしたっけ……?」
「えっ?まさか覚えてないのか?」
 尋ねた途端そう返されてハボックはビクリと震える。だがここまできたら誤魔化す訳にもいかず、ハボックは頭を下げた。
「ごめんなさい!すっげぇ考えたんスけどどうしても思い出せなくて……ッ」
 頭を下げたままハボックは声を張り上げる。そのまま暫く待ってみたがヒューズからの答えはなく、ハボックは顔を少し上げてヒューズを見た。
「中佐……?」
「……本当に覚えてないのか?」
「ご、ごめんなさいッ!」
 ガッカリとため息混じりに言われ、ハボックは身を縮こまらせる。凄く申し訳ない事をしている気持ちになって、どうして思い出せないのだろうと自分が情けなく、また腹立たしくて心の中で己責めるハボックの耳にヒューズの声が聞こえた。
「今日は初めてお前が俺のもんをくわえてくれた日じゃん」
「――――は?」
「あん時のお前可愛かったよなぁッ!恥ずかしがって真っ赤になりながら俺のを必死に頬張ってさぁ、ヘタクソだったけど目に涙いっぱいためて、もーっ、思い出しただけで興奮しちゃうッ!」
 ヒューズはだらしなく顔を笑みに崩しながら体をくねらせて言う。ヒューズの言っている内容がすぐには理解出来ずポカンとするハボックに泡立てたクリームをへらで掬って見せながらヒューズは言った。
「今夜はこのケーキの生クリームたっぷり塗った俺のナニをしゃぶらせてやるからなッ」
 ヒューズはニコニコと楽しそうに笑いながら生クリームをスライスしたスポンジに塗る。
「あっ、ちなみに明日はお前が初めて自分で俺のを挿れた記念日だからッ」
 明日はまた改めてお祝いしようなと言っていそいそとクリームを塗るヒューズの姿にハボックの中でブチッと何かが切れる音がした。
「なにが記念日だ……ッ」
 あの時の羞恥を思い出してハボックはブルブルと震える。ヒューズの手から生クリームがたっぷり入ったボウルを奪い取ると顔めがけて思い切り投げつけた。
「舐めたきゃ自分で舐めろッ!中佐のバカッ!!」
 思い出せなくて真剣に悩んだ自分が馬鹿らしい。
「アンタなんてスポンジの角に頭ぶつけて死んじまえッ!」
 ハボックはそう怒鳴るとクリーム塗れのヒューズに向かってスポンジを投げつけたのだった。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、やる気貰ってます、嬉しいですv

8月8日はヒュハボの日だったりしないんだろうかと考えながら電車の中でポチポチ打ってました(笑)ギリギリ何とか間に合ってよかった。って、相変わらずしょうもないエロ髭ですがお楽しみ頂けたら嬉しいです(笑)
2013年08月08日(木)   No.332 (カプ色あり)

熱帯夜
ハボロイ風味

「暑い……」
 肌にまとわりつくような熱気にロイはそう呟いて目をあける。己を抱き込む逞しい腕を鬱陶しそうに払いのけた。
「暑い」
 今度はもっとはっきりと言う。そうすればロイを抱き締めていた腕の持ち主が言った。
「アンタがエアコンつけたまま寝るの嫌がるからっしょ?」
「寝てると手足が冷えるから嫌なんだ。それより離れろ、くっついていたら余計暑くなるだろう」
「アンタ、オレより体温低いから抱き締めてると気持ちいいんスもん」
「その理屈なら私は暑いということじゃないか」
 ロイはそう言ってハボックを蹴り付ける。ゲシゲシと容赦なく蹴ってくるつれない恋人に、ハボックは苦笑して身を起こした。
「まったくもう、文句ばっかりなんだから」
 ハボックはそう言いながらベッドから降り、薄いカーテンを開けて庭に続く窓を開ける。窓際のテーブルに置いた煙草とライターを手に取って外へ出ると、庭のベンチに腰を下ろした。
 南国のリゾート地は夜になってもまだ昼間の熱気を引きずっている。その熱気の中、ハボックは煙草に火をつけるとベンチに背を預けて空を見上げた。
「すげぇ星。ねぇ、こっち来ませんか?部屋の中よりは涼しいっスよ」
「お前が離れた分、涼しくなったからこっちでいい」
 ハボックの誘いにロイはすげなく答える。そうすればハボックは「可愛くないなぁ」と呟いてクククと笑った。
「アンタの目を見てると星空みたいだって思うことあるっスけど、こりゃまた見事な星空っスよ?」
 そう言いながら星空を見上げるハボックの姿を、ロイは薄いカーテン越しに見つめる。飽きることなく星を見上げているのを見れば不意にムカムカと苛立ちが募って、ロイはゴロリと体を返して窓に背を向けた。
 体を返した拍子に頬を寄せた誰の肌も触れていなかったシーツの表面は、さらりとしていると同時に南国の熱をはらんでいる。人肌とは違う熱は奇妙に疎ましく、ロイは不快げに眉を顰めた。
 庭に出ていった男はいつまでたっても帰ってこない。チラリと肩越しに振り向いた視界の端に夜空に向かって煙を吐き出すハボックの姿が映って、ロイはムッとして声を張り上げた。
「ハボック!」
 さほど離れてはいない庭先、聞こえないはずはないのに答えがない。ロイは眉を寄せ、窓に背を向けたままもう一度ハボックを呼んだ。
「ハボック!!」
「なんスかぁ?」
 そうすれば漸く間延びした声が返ってくる。その声にホッとしながらも答えただけで中に戻ってこない事を不満に感じてロイは言った。
「いつまでそんなところにいるつもりだッ?」
「んー、だって星が綺麗なんスもん。イーストシティじゃこんな星空見られないっスから」
 だからここにいるのだと聞いて、ロイは星空に嫉妬している自分に気づく。そんなものにすら嫉妬する己が情けないと思いながら、それでもこの肌がしっとりと濡れるような暑さの中感じるうそ寒さを消せるのは、ハボックだけだと言うのもよく判っていた。
「お前の星空はそれじゃないだろう?」
 言って窓の外へ目を向けると、星空の下のベンチでハボックが身を捩るようにしてこちらを振り向く。誘うように寝返りを打って滑らかな背中をハボックに晒せば、立ち上がったハボックが部屋の中に戻ってきた。ベッドに片膝をたてるハボックにロイは手を伸ばして腕を首に絡めると首元に引き寄せた。
「くっついちゃいけないんじゃなかったんスか?暑いんでしょ?」
「暑いさ」
 引き寄せられるまま白い肌に口づけてハボックが聞くのにロイは答える。
「暑いさ、だから忘れさせろよ」
「文句言わないでくださいよ?」
「言わせないようにしてみろ」
 ああ言えばこう言うロイにハボックはクスクスと笑って。
「ホント……可愛いっスね────ロイ」
 むせかえるような暑さの中、ギュッと抱き締めてくる逞しい腕にロイはうっそりと笑った。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手やコメント、テンション上がります!嬉しいですvv

今日はハボロイの日ですね。久しぶりに色っぽい話を書こうと思ったのですが、これが限界でしたー(苦笑)とりあえず暑さの中にもハボロイを楽しんで頂けたら嬉しいです(笑)

んで、今日は旅行中なので更新はお休みですー。申し訳ない(汗)とりあえずリフレッシュしてきます!

以下、拍手お返事です。

なおさま

「髭騎士」そうそう、あれくらいでめげませんよ、髭ですから!しかし、バ○ブ、も〜なおさまってば!私の心読まないで下さいよ(爆)それとも思考回路が同じ?って嫌がられそう(苦笑)「セレスタ」うふふ、気に入って下さって嬉しいです。いやあ、どうしようかと迷ったんですが変態エロ親父が「何故私を出さん」と出張ってきちゃいました(苦笑)どうなりますか、お楽しみ頂ければv

毎回楽しく通わせて萌えさせて貰ってます の方

ありがとうございます!はぼっくの金魚、絶対可愛いと思うのです(笑)うお、描いてらっしゃるんですか?うわ〜〜〜〜〜〜ッッ!見たいですっ!!是非見せて下さいましッ!!金魚はぼっく、見たい〜〜vv

香深さま

こちらこそいつもありがとうございますv可愛いといって頂けて嬉しいーv和装とか浴衣とか、着せたくなっちゃいますよね!そう言えば最近「妖」を書いてないなぁ……って、あれ、和物じゃないはずなんですが(苦笑)わー、風船蔓!!す、すみません、またネタにしてしまってもいいですか……?もう、香深さまのコメント、ツボ過ぎて!(苦笑)うちのハボックとロイが少しでも息抜きのお役に立てれば嬉しいですvゆっくり更新、ありがとうございますvまったりのんびり楽しく更新していこうと思いますので、よろしくお願いしますv

おぎわらはぎりさま

髭、やっちゃってますよ!(笑)緊縛プレイかぁ(←言ってるし)でかくて腕力のあるハボックを縛るにはかなりのテクニックが要りそうですよね。うちのロイならガッツリいけると思います(爆)髭なら最低限の緊縛しそうだなぁ、腐腐腐v
2013年08月06日(火)   No.331 (ハボロイ)

髭騎士17
ヒュハボ風味

「ぐは……ッ!」
 ヒューズは腹にめり込んだ重い拳の衝撃に身を二つに折る。口の中に胃液が逆流して独特の苦味が広がるのを感じるヒューズの耳にハボックの声が聞こえた。
「っとに信じらんねぇ、どこまで腐ってるんスか」
 その言葉にヒューズは体を二つに折り曲げたまま視線を上げる。そうすれば怒りと呆れの色が混ざり合った瞳がヒューズを見つめていた。
「くだんねぇ事やってる暇あったらセントラル戻って仕事しろよ」
 こっちは夜も遅くまで残業していたと言うのに、その間この男がしていたことを思えば腹が立って仕方ない。
「くそムカツク……ッ」
 見上げてくる瞳を睨みつけて呟いたハボックは、まだジャガイモを手にしていた事に気づいて流しの中に放り込む。もう食事を作る気になどなれず、ハボックはヒューズを押しやるようにしてキッチンから出た。
「ジャン」
「家から叩き出すのは勘弁してあげます。ソファー貸してあげるっスからそこで休んで朝一の列車でセントラルに帰ってください」
 ハボックはそう言うとシャワーを浴びようと浴室に向かう。ふと視線を感じて振り向けば見つめてくる常盤色と目が合ったが、ハボックはプイと顔を背けるようにヒューズとの間の扉を閉めた。
「っとにもう……」
 ヒューズが自分とロイとの事で妙なヤキモチを妬く事はこれまでもあったが今回のは冗談にしてもサイアクだ。
「何が俺のわんこなら首輪をつけさせろだよ」
 独占欲の現れと言えば喜ぶべきなのかもしれないが、いくらなんでも悪趣味過ぎる。ハボックは服を脱ぎ捨て奥に入るとシャワーを出し頭から浴びた。
「ふぅ……」
 何だか疲れが倍になったような気がする。シャワーを浴びたらさっさと寝てしまおうと、ハボックが手早く髪と体を洗っているとカチャッと言う音と共に冷たい空気が入ってきた。
「――――中佐?」
 振り向けば扉の所にヒューズが立っている。狭い浴室からシャワーの飛沫が外に跳ねて出ないように、ハボックはシャワーを止めて言った。
「すぐ出ますから待っててくれます?」
 シャワーを浴びたくて待ちきれずに催促にきたのかとハボックは急いで済ませようとシャワーに手を伸ばす。だが、伸ばした手はシャワーを掴む前にヒューズの手に阻まれた。
「濡れるっスよ?」
 ハボックは訝しげにヒューズを見つめて言う。だが何も答えないヒューズに、ハボックは眉を顰めた。
「すぐ出るって言ってるっしょ?ちょっとくらい待ってくれたって――――うわッ?!」
言いかけた所でいきなり腕を引っ張られ、ハボックは驚いて声を上げる。引きずるようにして立たされて、ムッとしたハボックは何か言う間もなく浴室の外に引っ張り出された。
「ちょ……っ、中佐ッ?!わ……っ、床がッ」
 濡れた髪や体からポタポタと滴が滴り落ちて床を濡らす。慌てる間にもヒューズは廊下を横切ると寝室の扉に手をかけた。
「中―――――、ウワッ!」
 開いた扉の中に突き飛ばされて、ハボックはベッドの上に俯せ倒れ込む。慌てて身を起こそうとするより早く、ヒューズが背後から圧し掛かってきた。
「中佐ッ!」
 身を捩って逃げようとするが、ガッチリと押さえ込まれてどうしようもない。それでも諦めずにもがくハボックの首にスルリと何かが巻きついた。
「えっ?」
 ギョッとして動きを止めた隙に巻きついたものがキュッと締められ首にピッタリと留められる。驚いたハボックは指先で確かめ、それが何かに気づいて目を見開いた。
「こ、れ……っ」
「やっぱり思った通りよく似合うぜ、ジャン」
 その声にパッと背後を振り向いたハボックの喉元で小さな鈴がチリンと音を立てる。
「アンタねぇ……ッ」
 丸一日かけて選んだ首輪をハボックの首につけて、ヒューズが満足げにニヤリと笑った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになります、あがとうございますvv

「髭騎士」です。すっかり間が開いてしまいましたが首輪編(笑)わんこ、躾ます(爆)

ところで来週、再来週と旅行やら帰省やらで更新が滞りそうです〜。なので本来今日の更新はガッツリやらねばならない所なのですが……「FLARE BLUE」が間に合いません…ッ!いやあ……つい「セレスタ」が続けて書きたい感じだったので今日の分も含めて三つも書いてしまいましたー。「FLARE BLUE」書けよ…(苦)そんなわけで「セレスタ」だけは来週も更新出来そうです(苦笑)17日の分もあるんだが……実家なんだよなぁ。折角書いたし、また日記にでも載せよかしら。でも、日記だと案外気づかれない(苦笑)まあ、その時次第ということで適宜アップしますので、ご覧頂けたら嬉しいですーv

以下、拍手お返事です。

なおさま

「暗獣」うふふ、そうそういいコンビですよ(笑)うん、浴衣はぼっく、ぎゅーっとしたいです!一緒にお祭り行って綿あめやらリンゴ飴やら一杯買ってあげたいですv「姉弟説」あはは、もう水戸黄門の印籠なみの必殺な一言ですよね。ハボックの事に関しては仕事より冷たく厳しい目が注がれそうです(笑)「久遠」猫入れる缶なら幾らでもありそうです、ロイ(笑)さて、そろそろ展開してきそうかと。先も楽しみに読んでやってくださいねv
2013年08月03日(土)   No.330 (カプ色あり)

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