ハボロイ風味
「暑い……」 ふにゃあとソファーに寝そべったロイは、うんざりとした声で呟く。寝そべった時には冷たかったソファーの表面もすっかりと温くなって、ロイは滑り落ちるようにソファーから床へと降りた。 「暑い……」 テーブルとソファーの間は風も通らず余計に暑い。狭い空間が暑苦しさを倍増したが、ロイはもう動く気にもなれず、力なく尻尾をゆらゆらと揺らした。 「ここ、暑い……でも動きたくない」 床に頬をこすりつけてロイは呟く。その時、足音に続いて呆れたような声が聞こえた。 「ロイ、なんてとこにいるんスか」 ソファーとテーブルの隙間から黒い尻尾の先っぽが何とか涼を得ようとするように揺れている。ハボックは大きな手を伸ばすとロイの体をヒョイと持ち上げた。 「ハボック」 小さな体をソファーに戻せば、ロイの黒い瞳がハボックを見上げる。ハボックは汗ばんだロイの額に張り付いた髪をかき上げて、小さな顔を覗き込むようにして言った。 「猫ってのは家の中で一番気持ちのいい場所を探す名人って言いません?」 「探す以前にその労力が惜しい」 動きたくない、と言うロイにハボックは苦笑する。 「まったく、子供のくせに」 「子供じゃない。これは仮の姿だ」 「はいはい」 ムゥと頬を膨らませるロイにいい加減に答えると、ハボックはキッチンに入っていった。その後についていきたいと思いつつ動く気力もないままに見えなくなった背中を目で追って、ロイはキッチンの入口を見つめ続ける。すると少ししてハボックがガラスの器と小さな機械のようなものを手に戻ってきた。 「かき氷食いません?ロイ」 「────食う!」 煮溶けた脳味噌がかき氷という単語に遅ればせながら反応してロイはガバリと身を起こす。ハボックはキッチンからボウルに氷のキューブを入れて持ってくると、かき氷器の中にガラガラと放り込んだ。 「やる?」 「やる!」 コクコクと頷くロイに笑って、ハボックはかき氷器をロイの方へ押し出す。ロイは取っ手に手を掛けるとグルグルと回した。 「うわあ」 シャリシャリと氷が削れる音がしてガラスの器に氷の山が出来ていく。涼しげなその様に目を輝かせて、ロイは夢中で取っ手を回し続けた。 「ロイ、零れちゃうっスよ」 クスクスと笑って言われて、ロイは慌てて手を止める。ハボックはロイの前に緑とピンクの液体が入った瓶を並べて尋ねた。 「メロン?イチゴ?」 「う……」 メロンもイチゴもどっちも好きだ。決められずに唸るロイを見てハボックが言った。 「じゃあ、ミックスで」 「えっ?」 そう言うなりハボックは両手に瓶を持ち、できあがった氷の山に掛ける。そうすれば半分は緑、半分はピンクに頭を染めた氷の山ができあがった。 「はい、どうぞ」 ハボックは言ってロイの前にスプーンと器を置く。スプーンを手にチラリと視線をやれば頷くハボックを見て、ロイは氷の山のてっぺんをスプーンで掬った。 「つめたぁい!甘いっ!」 口の中であっと言う間に溶けた氷が熱くなった体を冷やしていく。気持ちよくてパクパクと口へ運べば、頭の芯がキーンとなった。 「くぅぅ……ッ」 「急いで食べ過ぎっスよ」 小さな頭を抱えるロイにハボックが笑う。その声にハッとして、ロイは言った。 「お前の分!」 あんまり嬉しくてさっさと一人で食べてしまった。そうすればハボックは立ち上がって冷蔵庫からビールを持ってきた。 「オレはこっちにします」 そう言うとプルトップを引き上げ一気に半分ほども飲み干す。満足げな吐息を吐いたハボックだったが、小首を傾げて言った。 「シロップの代わりにビールかけたら旨さ倍増とかならないっスかね」 「えええ、ビールゥ?かき氷はやっぱりメロンかイチゴだろうッ?」 「試し試し」 「わーッ、バカッ、やめろッ!」 言うと同時に氷の山の裾野にビールを垂らすハボックにロイが目を剥く。ロイの手からスプーンを取り上げて金色に染まった氷を掬って食べたハボックは「うーん」と眉を寄せた。 「メロンとイチゴの味もするっス」 どうやら下の方で混じってしまったらしい。ビミョーと顔を顰めるハボックにロイは言った。 「器をもっと持ってこい。ビール味がよければ削ってやる」 「んー、やっぱりオレもイチゴにしときます」 そんな風に言えばそれ見たことかと言った目つきでロイに見られて、ハボックは頭を掻いた。 「イチゴかき氷一つ、お願いします」 「いいだろう」 ぺこりと頭を下げて言うハボックに仰々しく頷いて、ロイはシャリシャリと涼しげな音を立てて氷を削る。 「じゃあ、改めて」 「いただきます!」 うだるような暑い午後、それぞれに削った氷を口に運んで涼を取るハボックとロイだった。
いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、コメント、本当に励みになってます、嬉しいですーvv
「恋猫」ですー。実は今日も更新が「セレスタ」しか書けてないのでせめて日記だけでもと(苦笑)それでも一年ぶりだよ!前回書いたの探したら一年前の七夕だった(汗) 今週更新が間に合わない敗因は、週末マラソン旅行に行くはずだったダンナが急遽取りやめてガッツリ家にいる事になったからですが、それなら金曜に書くかと思っていたらですねー、なんと玄関の天井から水漏れが!!朝、ゴミ出ししようと玄関で袋をごそごそ出してたら、ポタリと腕に水が。「えっ?」と思って上を見ると天井の電気のところから水が垂れてくるんですよ!「ええっ?!」と今度は下をみれば三和土に水たまりがッ!玄関の上は洗面と風呂と洗濯機!じゃあどっか配管切れてんの??と、慌てて不動産屋に連絡して午後一時過ぎに来て貰いましてね。「天井、切ってもいいですか?」って言うのでどうせクロスやら何やら貼り替えなきゃだし、開けなきゃどうなってんのか判らないしでオッケーを出して天井に切り目いれた途端、水がジャーッっと……ッ!!もうビックリだよ!!結局水漏れは給湯管からと判明、水道屋さんを呼んで傷んだ部分を繋ぎ直して貰いました。一応その後使っても水漏れは発生しなかったので大丈夫そうなのですが、天井裏乾かしてから天井と壁の石膏ボードや壁紙の補修と言う事になるので、天井は穴開いたままです。おかげでなんか屋根裏の匂いがする……(苦)今のうちの玄関の天井、こんな感じです(苦笑)
ピンクのところが補修個所。痛んだ部分を切り取ってジョイントで繋いでる。ちなみに黒い管は排水管、青系が給水管で赤系(今回はピンク)が給湯官と判るように色分けしてるそうな。 そんなわけでとてもポメラ弄る余裕ありませんでしたー。ハアア……。でも、うちの場合二階の配管からの水漏れだったのですぐ発覚したけれど、これが一階だと気付かないまま水が溜まって、最悪の場合基礎が腐ったりするそうですよ!!怖ッ!!
以下、拍手お返事です。
なおさま
鷹の目リメイク美味しく頂いて貰えてよかったですーvロイの寝間着は拘束着!!(爆)鷹の目印の南京錠が付いてるんですね!いいなぁ、それ(笑)「セレスタ」ふふふ、そうですよ、ただの色惚けのエロ親父じゃないんです、大総統っスから!(笑)ハボックの中にお邪魔って、思わず吹き出しちゃいましたよ(笑)「久遠」ははは、第三の男(笑)多分誰も覚えてないだろうけど、実は第三章でチラリと出てきてました。でも、私ですら名前を覚えておらず「なんて名前にしたかなぁ」と読み返してたから(殴)わふんわふん!!話が関係なければ絶対書きたいネタなんですけどねぇ……流石にそれを書くと話変わっちゃうから、残念(苦笑)
阿修羅さま
「鷹の目」続き楽しんで頂けて嬉しいですvそうそう、犯すんじゃなくて犯される方(笑)遅くに病院、大変でしたね!普通にしてても脱水症状になりやすいのに水分制限があるなんて、難しい……。とりあえず一安心出来てよかったです。暑さももう少しのようですので、どうぞお体お気をつけて夏を乗り切って下さいね。
はたかぜさま
本当、朝晩はだいぶ涼しくなりましたよね。この間野球のナイトゲームで神宮に行ったのですが、二週間前に行った時は蒸し暑くて死にそうだったのが、日が落ちたら凄く過ごしやすくて季節の変化を感じました。「久遠」えへへへ、先、読めないですか?きりきり舞いして貰えて嬉しいなぁvvガッカリさせないように頑張りますよ!「玄関」ホークアイ姐さん、容赦なく「О」を真っ二つにしてくれそうです!!(爆)「ギャーッ」と喚くロイと遠くから見守る部下三人の姿が目に浮かんで思わずニヤニヤしちゃいますよ。はたかぜさまのコメント読みながら私も楽しんでますv「セレスタ」ツラ気持ちいい!なんて嬉しいお言葉vありがとうございますv最後はいっぱいの幸せを上げなきゃですよね!うん、多分そのつもり……なる予定(苦笑)色々書きかけのがモリモリで心苦しいですー。でも楽しみにして下さっていると聞くと頑張れます!ありがとうございますvv
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