「ハボック?」 ずっと探していた本をクリスマスイブの今日漸く手に入れて、自分へのクリスマスプレゼントだとばかりに一日中読み耽っていたロイは、足下を掠めた冷たい空気に本ばかりへ向けていた目を上げる。日中は本を読むロイの足下で大事な宝物を並べてみたり、黒い毛糸玉になってキラキラの飾りをいっぱいつけたクリスマスツリーの枝に乗ったりしていたハボックは、夜になってからはツリーの下で赤い靴下を抱えてゴロゴロとしていたが今はその小さな姿が見えなくなっていた。 「どこだ?ハボック?」 ロイは本をテーブルに置いて立ち上がりリビングの中を見回す。続きになっているダイニングへ行き、もしかしてもう寝てしまったのかと二階の寝室のクッションの山の中も覗いてみたが、どこにもハボックの姿は見当たらなかった。 「もしかして外へ行ったのか?」 外は夕べから降り出した雪が積もって一面の銀世界だ。見るからに寒そうな景色を窓越しに見遣ったロイは、一瞬躊躇ったものの意を決して中庭に続く扉から外へ出た。 「寒いッ!」 ビュウと吹き抜けた風にロイはぶるりと震えて声を上げる。強い風に雪を降らせた雲は散り散りに吹き飛ばされて、空には星が輝いていた。 「ハボック!」 ロイは両手で己の肩を抱き締めて足を踏み出す。積もった雪をザクザクと踏み締めて、ロイは月あかりに照らされた庭を見回した。 「いないのか?ハボック!」 どこに行ってしまったのかと不意に不安になりながらハボックを呼ぶロイの耳に不意に調子っぱずれの鼻歌が聞こえて、ロイは慌てて声のする方へとザクザクと雪を鳴らしながら走った。 庭の一番高い木のてっぺん、金色の尻尾が揺れているのが見える。木の下からロイが声を張り上げて呼べば、聞こえていた歌がやんでザザッと木が揺れた。 「ろーいっ」 冬になっても緑の葉をたたえた枝の間から小さな体が降ってくる。ロイは腕を伸ばしてハボックの体を受け止めた。 「なにをやってるんだ、この寒い中。風邪をひくぞ」 「ろーい〜」 ジロリと睨んでそう言うロイをハボックが責めるように見上げる。ずっと構ってくれなかったくせにと不満げに見上げてくる空色に、コホンと決まり悪そうに咳払いしてロイは尋ねた。 「で?何をしてたんだ?」 「ろーいっ」 尋ねるロイの鼻先にハボックが赤い靴下を差し出す。まあるい月が輝く夜空に向けて靴下を掲げた。 「ろぉいッ」 「サンタクロースが来るのを待っていたのか?」 「ろいっ」 空色の瞳をキラキラと輝かせたハボックがコクコクと頷く。そんなハボックにロイはクスリと笑って言った。 「言わなかったか?サンタクロースは夜更かししてる子のところへは来てくれないよ」 「ろい〜〜っ」 言えばハボックが口をへの字に曲げる。シュンとして靴下を抱き締めるハボックの金髪を掻き混ぜてロイは言った。 「サンタクロースに会いたいのは判るけど、いい子にして寝ような。そうしたら明日の朝には靴下の中にプレゼントが入ってるよ」 「ろーい……」 ちょっぴり不満そうに、渋々と頷くハボックの頬にロイは笑ってキスを落とす。そうすれば擽ったそうに首を竦めて、ハボックはもう一度空を見上げた。 「ろーいっ」 「ああ、きっともう少ししたらあの星空の中をサンタクロースがソリに乗ってやってくるよ」 ロイは空を見上げるハボックの空色の視線を追って星空を見遣る。満月の光に負けないほどの星の輝きを暫く二人で見上げていたが、二人でほぼ同時にくしゃみをして顔を見合わせた。 「冷えてきたな、戻ろうか」 「ろいっ」 ブルッと震えてすり寄ってくるハボックの体を抱き締めて、ロイはもう一度星空を見上げると家の中へと戻っていった。
いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、本当にありがたいです。どうもありがとうございますvv
「暗獣」です。本当は書きかけの姫ハボがあるんですが、とりあえずクリスマスなのでこっちで(笑)今夜は満月だそうですよ。クリスマスの夜に満月なのは38年ぶりだとか。そんなわけで二人に夜空を見上げてもらいました。
以下、拍手お返事です。
なおさま
ハロウィンネタ、楽しんで頂けてよかったですーvそうそう、仮装するなら小道具まできっちりとしないとダメですよね(笑)おお、海賊衣装でハロウィンでしたか!クリスマスはいかがでしたか?今回もなおさまのコメントに刺激されてのクリスマスネタでした。いつもありがとうございますv暖冬ではありますが、やはり朝晩は冷える今日この頃、なおさまもお体お気をつけてお過ごしくださいねv
最近ハボロイにハマった通りすがりの者さま
はじめましてvようこそお越しくださいましたvvうふふ、最近ハボロイにハマられたのですか、嬉しいですーvハイムダールは自分としてもかなり気に入った作品なので好きと言って頂けて幸せです。よろしければハボ受けなどもちょろっと覗いて頂けたら嬉しいです。更新……が、がんばりますッ!これからもどうぞよろしくお願いいたしますv
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