「いい天気だ。いかにもハロウィン日和だな」 開いた窓から体を乗り出したロイは空を振り仰いで言う。見上げた空は雲一つなく、風も穏やかで気持ちがよかった。今日は十月の最終日、ハロウィンだ。今夜はハボックに仮装をさせて近所の家を回る予定をしていた。 「ふふ、すごく喜んでいたな」 ハボックにトリックオアトリートをしようと衣装を見せて誘った時の事を思い出して、ロイは目を細める。流石に一人で回らせる訳にはいかないが、自分が一緒ならハボックも十分楽しめるだろう。今朝も珍しく早くから起き出して、手作りのジャック・オ・ランタンやハロウィンの飾りを楽しそうに眺めていた。 「ハボック」 ロイは窓を閉めると階下に下り、ハボックを呼ぶ。だが、小さな姿は見当たらず、ロイは眉を顰めた。 「どこに行ったんだ?────ハボック!」 ロイは名を呼びながらハボックを探して回る。家の中にはいないようだと外に出たロイは、今朝方ハボックを見かけた庭の方へと足を向けた。 「確か朝、この辺に……ハボ──、ッ?!」 ハボック、と言いかけたロイは庭の一角を見た瞬間息を飲む。ハボックと一緒に作ったカボチャの飾りの一つからふさふさの尻尾が出ているのを食い入るように見つめたロイは、目をパチパチと瞬かせた。 「……ハボック?」 どうやら金色のふさふさとしたその尻尾がハボックのものらしいと気づいたロイは、ゆっくりとカボチャに近づく。近くにしゃがみ込んでそろそろと覗いたが、一体どういう状態になっているのかすぐには判らなかった。 「どうやって入ったんだ?」 カボチャには中身をくり貫く為に開けた穴があいている。だが、幾らハボックが小さいとは言えその穴から中に潜り込むのは無理と思えた。 ロイは尻尾が生えたカボチャをしげしげと覗き込む。作りもののように全く動く気配のないそれに、俄に心配になった。 「まさか窒息してるんじゃないだろうな……。おい、ハボック!」 ロイはハボックの名を呼びながら何とか中を覗こうとする。だが、みっちりと身の詰まったカボチャは、目玉や口を象って開けた穴からハボックが着ている服の柄が見えるだけだった。 「ハボック!」 呼んでも全く返事がない。心配になったロイが唯一出ている尻尾を掴んで引っ張った瞬間。 「ぴゃッ!」 悲鳴と共にカボチャが十センチほども飛び上がる。ギョッとして身を引いたロイの目の前で尻尾が出ている穴から二本の足が生えて、カボチャのランタンは顔を逆さにした状態で逃げ出した。 「ろーい〜〜〜っ」 「えっ?あ……ハボックっ?おい、走ったら危ないぞッ!」 続いて聞こえた声にロイは慌てて逃げるカボチャに声をかける。前が見えずによたよたと庭を走ったカボチャは、庭の木にゴンッと当たってひっくり返った。 「ハボック!」 ロイは急いでカボチャに駆け寄り抱え起こす。だが、抱え起こしたはいいものの、それからどうしたらいいか判らず、ロイは「ええと」と呟きながら腕の中のカボチャを撫でた。 「だ、大丈夫か?っていうか、お前、どうやってここに入ったんだ?」 一体どうやって引っ張り出せばいいのか、途方に暮れてロイが言う。そうすると、もぞもぞとカボチャの中で動く気配がしたと思うとポンと言う音と共にハボックが黒い毛糸玉に姿を変えた。 「あ」 毛糸玉はカボチャの穴からポンポンと跳ねて出てくる。ロイの側で一際高くポーンと跳ねると空中でパッとハボックの姿になりクルンと一回転して地面に立った。 「ろーいっ」 「────なるほど。そういう事か」 焦るあまりハボックの本来の姿が毛糸玉だった事を失念していた。ロイは抱きついてくるハボックの金髪をくしゃくしゃとかき混ぜて、苦笑混じりのため息をついた。 「まったく、心臓に悪いぞ、ハボック」 「ろーい?」 軽く睨めばハボックが不思議そうに首を傾げる。ロイの手からカボチャを取り上げると、ハボックはそれを金色の頭の上に載せた。 「それは衣装じゃないよ、ハボック」 「ろーい〜〜」 ハボックはカボチャのランタンを抱えてロイをじっと見つめる。ロイは笑みを浮かべてカボチャごとハボックを抱き上げると家の中に入った。二階に上がるとクローゼットからハロウィンの衣装を取り出す。そうすればハボックがロイの手から衣装を取り上げポンと飛び降りた。 「ろーいっ」 「もう着たいのか?仕方ないな」 ロイは強請るハボックに笑って、服を脱がせて着替えさせてやる。バルーン型のカボチャのワンピースを着せて貰って、ハボックは嬉しそうにクルンと回った。 「ろーい!」 「うん、夜になったらお菓子を貰いに行こうな」 「ろいっ」 「ふふ、きっとかわいいカボチャのオバケだって、いっぱい貰えるぞ」 「ろぉいっ」 ロイの言葉にハボックは満面の笑みを浮かべてギュッと抱きついてくる。楽しいハロウィンの夜を思い描いて、二人は夜が来るのを今か今かと待っていたのだった。
いつも遊びに来て下さってありがとうございますv拍手、とっても励みになります、嬉しいです〜vv
ポメラがおバカなのはよく判ってたけど「めずらしく」と打って「馬頭らしく」と出てきたのにはビックリした……。普通使わんだろう、馬頭って……。
と言う話はさておき。 今日はハロウィンですね!そんなわけでカボチャのはぼっくです。魔女や黒猫も可愛いけど、オレンジ色のカボチャのワンピースも可愛いと思うの(笑)自分じゃ「トリックorトリート」は言えないのでロイと一緒にご近所さんを回る予定です。もし来たら山ほどお菓子あげちゃうよ!!(笑)
以下、拍手お返事です。
なおさま
カモン、ふふふ、最強チームで悪魔大佐を攻略出来るか?(笑)いやいや、それ、ありきたりじゃないですよ!アイディア拝借しちゃおうかなッ(笑)久遠、あはは、「そちも悪よのう」状態、やっぱりそう思いましたか?(笑)お代官様と越後屋にはこれからも悪さして貰おうと思います!人間ジャンはどうなるのか、お楽しみに〜v
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