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2017年08月の日記

2017年08月06日(日)
八月六日

八月六日
ハボロイ風味

「ふぅ……」
 手にしたビールの缶を呷ったハボックは一つ大きく息を吐き出す。自宅のアパート、ダイニングの椅子にだらしなく腰掛けて、テーブルの上のフライドチキンを摘むと口に放り込んだ。
 今日は八月六日。カレンダー上何の意味もない日ではあるが、ハボックにとってはとても大事な日だった。と言うのもこの日は初めてロイと想いを通じ合わせた日だからだ。恋人同士となった今も一年の中で八月六日はハボックとロイにとって特別な日で、どんなに忙しかろうとも毎年必ず二人で過ごすのが暗黙の了解事となっていた。だが。
『すまん、帰れそうにない』
 一週間ほど前からホークアイと共にセントラルに出張に行っていたロイから電話があったのは夕べのことだ。大雨が続いていた山間部で土砂崩れが発生して、セントラルからイーストシティへと繋がる列車の路線が寸断されてしまったらしい。天候は回復したものの土砂の撤去作業に時間がかかり、予定していた帰りの列車の運行は見込めないという事だった。
「仕方ねぇよなぁ……自然にゃ勝てないもん」
 そう自分に言い聞かせてはみるものの、やはりなにも今日この日でなくてもいいのにと思わずにはいられない。ハボックはため息をついて缶に残ったビールを飲み干すと立ち上がった。
「もう寝ちまおう」
 起きていたところでロイと過ごせる訳ではないのだ。むしろ起きていればいるだけロイに会いたい気持ちが増すばかりで、ハボックは食い散らかしたテーブルもそのままにシャワーを浴びると早々にベッドに潜り込んでしまった。

 ドンドンと遠くで何かを叩く音に、ハボックは眠りの淵から引き戻される。引き上げたブランケットに潜り込んで、ハボックは眉を顰めた。
「なんなんだよ、一体……」
 まだ半分眠ったままの脳味噌では聞こえる音がなんなのか判らない。煩い、静かにしろ、この野郎と寝ぼけた頭の中唱えていたハボックは、次の瞬間ガバリと起きあがった。
「え?玄関?」
 どうやらドンドンと叩く音はハボックのアパートの扉から響いているようだ。枕元の時計を見れば針は後少しで日付を跨ごうとしているところで、ハボックは時間をわきまえない訪問者など無視してしまおうと再びブランケットに潜り込んだ。だが。
「いい加減あきらめろよ……オレはもう寝てんだよ」
 不機嫌なハボックの呟きなど聞こえる筈もなく、扉を叩く音は響き続ける。放っておいたら諦めるのではないかというハボックの期待も空しく夜のアパートに響き続ける騒音に、流石にこれ以上無視を決め込む訳に行かず、ハボックは渋々ベッドから起きあがった。
「何処のどいつだ、この野郎。苦情がきちまうだろうが」
 絶対一発ブン殴ってやると思いつつハボックは玄関まで来ると騒音を響かせ続ける扉を乱暴に開けた。
「煩いッ!今何時だと思って────」
 怒りに任せて大声を張り上げたハボックは目の前に立つすらりとした姿に言いかけた言葉を飲み込む。開いた扉の向こう、今日を一緒に過ごしたかった人をみつけて、ハボックは目を見開いた。
「大佐……?え?幻?」
 あんまり会いたくて幻が見えているのだろうか。ゴシゴシと目をこするハボックの耳に自分を呼ぶ声が聞こえた。
「ハボック」
 その声にハボックは目をこすっていた手を伸ばす。おそるおそるその頬に触れて、滑らかなその感触に目をパチパチと瞬いた。
「本物だ……でもどうして?」
 囁くように尋ねるハボックを押しやるようにしてロイはアパートの中に入る。リビング兼ダイニングまで来るとついてきたハボックを振り返った。
「車で不通になってた区間の先の駅まで行って、そこから列車に乗ってきた」
「でも、道路だって通れなかったんじゃないんスか?」
「邪魔なものは焔でぶっ飛ばした」
「ぶっ飛ば……ッ──て、アンタ」
 綺麗な顔でとんでもない事を口にするロイをハボックは呆れたように見る。だが、ロイはそんな空色を睨むように見返して言った。
「だって、八月六日だぞ。一緒に過ごしたかったんだ。焔で邪魔なものをぶっ飛ばして折り返し運転になってた列車に飛び乗った。イーストシティの駅からは全速力で走ってきた────まだ六日だろう?」
 ほんの少し不安そうに震える声にハボックは時計を見る。その二本の針がまだ僅かに重なっていないのを見てロイに視線を戻した。
「ギリギリセーフっス」
 そう言ってハボックはロイに手を伸ばす。細い体を腕の中に抱き締めて艶やかな黒髪に顔を埋めた。
「すっげぇ嬉しいっス……会いたい、一緒に過ごしたいって思ってたから」
「そんなの……私だって同じだ」
 言えば答えるロイの顔を覗き込めば睨むように見つめ返してくる黒曜石の目元が薄紅に染まっている。そんなロイを見れば俄に熱い想いが沸き上がって、ハボックはロイを抱く腕に力を込めた。
「好き……大好きっス。今日までもこれからもずっと……」
「────私もだ」
 小さく返る答えに、ハボックは幸せそうに笑ってロイの唇に己のそれを重ねていった。


遊びに来て下さっている皆さまには本当にありがとうございますv拍手もポチポチ押して下さってとっても嬉しいですv

ハボロイの日ですねvロイハボの日ネタも終わってないし、いいネタも浮かばなかったのでどうしようかと思ったのですが、やっぱりハボロイの日だしッということで短いのをひとつ(苦笑)どうも私的にはロイハボはエロエロしいのが好きなのですが、ハボロイはどっちかというとエロのないさらっとした話が好きみたいです、えへへ。ともあれビバ、ハボロイ!いつまでたってもやっぱり好きだよ〜とラブを新たにする一日。皆さまにとっても素敵な一日でありますようにv
でもって、間空いちゃいましたが、ロイハボの日ネタも続き頑張ります(笑)

以下、拍手お返事です。

苺さま

こんにちは、はじめまして!拙宅にようこそおいで下さいましたvvうわぁ、うちのハボロイ、すごく好きだなんて嬉しいですー、ありがとうございますvv「霧屋」と「見毛相犬」は私もとても気に入っている話なので大好きといって頂けてとっても幸せです。ハボックに煙草は切っても切れないものなので、錬金術でも使いたくて霧屋ハボックとなりました。見毛相犬、どうやって村人たちと脱出したのか……今度ハボック大佐に聞いてみたいと思いますが、きっと笑って誤魔化されてしまう気が(笑)いつか機会があれば続きを書ければいいなと思っています。うちのハボックに惚れてしまいそうですか?惚れてくれたら嬉しいなぁ〜vこれからも是非遊びにいらしてくださいねv
2017年08月06日(日)   No.501 (ハボロイ)

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  Photo by 空色地図

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