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2014年10月の日記

2014年10月29日(水)
橙色の秋に10のお題1
2014年10月24日(金)
ナンバープレート
2014年10月17日(金)
黒スグリ姫13
2014年10月02日(木)
黒スグリ姫12

橙色の秋に10のお題1
1.秋の夕日とキミのくちびる

「どこに行ったんだ?ハボックの奴……」
 ロイはハボックの姿を探して通りを歩いていく。さしかかった角で足を止めたロイは、目を閉じてさっき聞いたはずのハボックの声を思い起こそうとした。

「ねぇ、大佐。散歩行きましょうよ、散歩」
 窓辺の椅子に腰をかけて本を読んでいると部屋に入ってきたハボックが言う。文字を目で追いながら生返事を返せば、ハボックがロイの顔を覗き込むようにして言った。
「大佐ぁ、今日は絶好の散歩日和っスよ。行きましょうってば」
「う、ん……そうだな」
 間近から見つめる視線を感じながらもロイの意識は本に向かったままだ。そんなロイにハボックは最後の足掻きとでもいうようにもう一度だけ言った。
「土手んとこ、コスモス通りって今年はいっぱい咲いてるんですって。ねぇ、一緒に行きましょう」
「────」
 精一杯強請ったハボックの言葉は、だが文字の海に揺蕩うロイの意識には届かない。結局ハボックはがっかりと一つため息をついて部屋を出ていった。

「まったく、少し位待ってくれたっていいだろう?」
 何とか記憶の端に引っかかっていたハボックの言葉を思い出して土手への道を歩きながらロイは呟く。折角の二人そろっての休みを本に夢中でハボックに淋しい思いをさせてしまった罪悪感を心の底に必死に押し込めて、ロイはハボックの瞳と同じ色の空を見上げた。
 気がつけば季節は過ぎて高い空には魚に似た雲が浮かんでいる。確かにハボックの言うとおり散歩にはうってつけの陽気で、本にしがみついて一日の大半を過ごしてしまったことをロイは今更ながらに後悔した。
「あ」
 ひょいと角を曲がれば土手沿いにコスモスが長く長く連なっている。風に揺れる背の高い白やピンクの花の群は確かに見事で、ロイは傍らにハボックがいないという状況を作り出した自分に猛烈に腹がたった。
「くそ……、どこにいるんだ?うちの犬は」
 それでも素直には自分の非を認められないまま、ロイは土手沿いの道を歩いていく。ゆらゆらと揺れる花の間に目指す金色は見つからず、ロイは眉間の皺を深めた。
 秋の陽は急速に傾き、風が冷たくなっていく。上着を着てくればよかったとロイが後悔した時、土手の上に腰掛けて煙草を咥えるハボックの姿が見えた。
「おい」
 ロイは咲き誇るコスモスの向こう、土手に腰掛けるハボックに向かって声をかける。そうすれば空に上っていく煙草の煙を目で追っていたハボックが、その空色の視線をロイに向けた。
「大佐」
 自分を見たものの腰を上げようとしないハボックに、ロイはムッと眉をしかめる。小さく舌打ちしながらもロイはコスモスをかき分けるようにして土手を上ってハボックのところまで来た。
「どうして待てが出来ないんだ」
「待てって言われなかったっスもん」
 ジロリと睨んで言えば、膝を抱えてハボックが答える。オレンジ色の夕日を弾いていつもより濃い色に染まった金髪に手を伸ばしてくしゃりとかき混ぜると、コスモスを見下ろしていたハボックがロイを見上げた。
「飼い主の言いたいことくらい察しろ」
「うわあ、飼い主勝手!」
 見上げてくる空色を見返して言うロイにハボックが思い切り眉を下げる。情けなく唇の端に引っかかった煙草を取り上げると、ロイは一口吸ってコスモスを見渡した。
「────綺麗だな」
「でしょ?」
 ポツリと零した呟きにハボックがまるで自分の手柄のように言う。その唇が夕陽を受けて艶やかに輝くのを見たロイは、引き寄せられるように腰を屈めてハボックに顔を寄せた。
「悪かったな」
 小さく詫びた唇がチュッと軽く重なれば、オレンジ色の夕陽の中ハボックが嬉しそうに笑った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになります、嬉しですーv

最近どうも日記ネタが見つからないので、久しぶりにお題に挑戦してみました。「Heaven's」さまからお借りしました「橙色の秋に10のお題」です。秋とか言ってもう10月も末だったりするんですが、11月一杯は秋だよね?(苦笑)まあ、10個全部書けるかは微妙ですが、まったり頑張ってみようと思いますのでどうぞお付き合い下さいませv

以下、拍手お返事です。

なおさま

ナンバー、あはは、確かにロイから出る→の方が断然多そうですよね(笑)あ、そうか。「I」だから盗んで自分の車につけても全然オッケーですもんね!ハボック小隊の部下たちに狙われそうです(笑)セレスタ、デヴィット・ラムゼイさん……残念ながらみた事なかったのでネットでお顔を拝見……なるほどー。でももうちょっと若ければ!(コラ)ふふふ、どうしても一歩が踏み出せないハボック。今度こそロイ頑張りますよ、きっと!風、まったくもってふざけた心情ですよね!どうしてこんな男がモテるんだか(爆)

阿修羅さま

ナンバープレート、お楽しみ頂けて嬉しいですv風の行く先、そうですねぇ、襲っちゃうとそれこそ躯だけになっちゃいそうなので、ここはもう少しロイに辛抱して貰おうかなぁと(苦笑)オリジナル、すみません、私も小説はSFとかファンタジー、ミステリー辺りばかりで恋愛ものは読まないのでよく判らないです(汗)でも、敢えて言うならどういう年齢の方に読んで欲しいかと言う事と、どの程度のエロ描写が必要かって事じゃないのかなと思いますー。
2014年10月29日(水)   No.418 (カプなし)

ナンバープレート
ロイハボ風味……たぶん(笑)

「あれ?お前一人?大佐は?」
 おはようと司令室に入ってくるハボックに朝の挨拶を返したブレダは、てっきり一緒に入ってくると思っていた姿がないことを不思議に思って尋ねる。プカリと煙草の煙を吐き出して自席に腰を下ろしながらハボックが答えた。
「昨日の夕方新車が納車されててさ。仕事終わるまで待ちきれないから取ってくるって」
「へー、お前は行かなかったのか?」
「オレはバイクの走り納め」
「ああ、そう言えば新しいバイク買ったって言ってたっけ」
 そう言われてハボックの顔が弛む。嬉しそうな笑みを満面にたたえて言った。
「うん!やっと新しいの買ったんだよー。明日納車だから今日は今のバイクの走り納め。今のバイクも良かったけど、今度のは色々いいもんつけたからさぁ」
 うふふ、と垂れた目をもっと下げて言うハボックにブレダは「よかったな」と返す。その時、バンッと勢いよく扉が開いてロイが司令室に入ってきた。
「おはよう、諸君」
「あ、おはようございます、大佐」
「結構早かったっスね」
 いつもより早く家を出ていったとはいえ納車なのだ、もっとギリギリに駆け込んでくるかと思ったとハボックが言えば、ロイがニヤリと笑った。
「私の愛車を是非仕事前に諸君に見せたいと思ってな」
 ふふふ、と上機嫌な上司にそう言われれば見に行かないわけにはいかない。丁度司令室に入ってきたホークアイも一緒になって、ハボックたちはロイの後について駐車場へと向かった。
「さあ、諸君!見てくれたまえ!」
 高らかに言ってロイは自慢の新車を指し示す。最新型の車のピカピカのブラックボディは人目を引くに十分だったが、それよりなにより全員の目が引きつけられたのはそのナンバープレートだった。
「な、な、な、なんスかッッ!!これッッ!!」
 唖然としてプレートを見つめる部下たちの中で一番最初に我に返ったハボックが声を張り上げる。ブルブルと震えるハボックの指が指した先のプレートには。
「“I ♥ HAVOC”────こんなプレートいいんですか?」
 プレートにデカデカと書かれた文字を声に出して読んだブレダが言う。そうすればロイが答えるより前にファルマンが言った。
「最近道路交通法が変わったんですよ。八文字以内で他に誰も使っていなければ、五十万センズ払うとナンバープレートとして認められるんです」
「「「五十万センズ?!」」」
 決して高給取りとは言えない部下たちが一斉に声を張り上げる。だが、ロイはなんでもないと言うように肩を竦めて答えた。
「私のハボックへの愛を街中に示せるんだ。安いものだろう?」
「安いって……僕の一ヶ月のお給料より高いですよ」
 あんなプレート一枚に五十万と、ブレダとファルマンも唸る。値段もさることながら、その書かれた文字の恥ずかしさにハボックが顔を真っ赤に染めて言った。
「アンタまさかこのナンバープレートずっとつけて走るつもりじゃないでしょうねッ?!」
「ずっとつけておくに決まってるだろう?この車のナンバーとして登録してあるんだから」
「冗談っしょッッ!!」
 平然として言い放つロイにハボックが悲鳴を上げる。「やめてくれッ」と頭を抱えるハボックを後目にホークアイが言った。
「でもこれ、結構いいかもしれませんわね。私もやってみようかしら」
「えっ?中尉もやるんですか?」
 ホークアイの言葉にブレダが目を丸くする。指を唇に当て考えるようにホークアイが言った。
「“BURAHA”なんてどう?」
「あ、それいいですね」
 ホークアイの提案に犬好きのフュリーも目を輝かせる。少なくとも二人の部下には評判が良さそうなのを見てロイが言った。
「そうだろう?オリジナルのプレート、絶対にオススメだ。だからな、ハボック」
 車の前に座り込んでプレートを何とか出来ないかと思案しているハボックにロイが言う。なんだと恨めしそうな顔で見つめてくる空色にロイはにっこりと笑った。
「お前のバイクのプレート。変えておいてやったぞ」
「────え?」
「新しいバイク、明日納車だって?間に合ってよかったよ」
 そう言うロイの満面の笑顔をハボックはポカンとして見つめる。次の瞬間ガバッと立ち上がってロイに掴みかかった。
「オレのバイクになにしたんスかッッ?!ま、まさか……ッ?」
「ああ、“I ♥ ROY”にしておいた。嬉しいだろう?」
「う、うそ……」
 襟首を掴まれながらも笑みを崩さないロイの答えにハボックがよろよろと後ずさる。
「オ、オレの新しいバイク……」
 待ちに待った新車のバイクのナンバープレートをとんでもないものに変えられて、ハボックはガクッと膝をつく。呆然と宙を見つめるハボックにロイは嬉しそうに言った。
「そんなに喜んで貰えて嬉しいよ。一緒に並んで走ろうな」
「ぜっったいに嫌っスッッ!!」
「またまた、恥ずかしがり屋だな、私のハボックは」
「違うッッ!!戻せっ、オレのプレート!!」
 半泣きになって怒鳴るハボックと浮かれきったロイと。
「ハボックも可哀想になぁ」
「折角の新しいバイク、乗れませんね」
 そんな二人を見ながら気の毒そうに呟くブレダとファルマンだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気の素です、ありがとうございますvv

「♥」はちゃんと皆さんのパソでもハートマークで表示されているのだろうかと不安に思いつつ、ナンバープレート話です(笑)今朝のニュースでベルギーでは八文字以内で他に使っている人がいなければ千ユーロ(約十三万円)支払うと好きな文字で車のナンバープレートが作れるって言う話をやっていましてね。「十三万かぁ、何か一個オプション付けると思えば高くはないってことなのかなぁ。作るなら絶対“HAVOC”よね!!」と思ったものですから(笑)本当は“ROY♥HAVOC”にしたかったんですが、それだと9文字なんですよねぇ、おしい!つか、そもそもハートマークを使っていいのか怪しいですが(笑)しかし、好きな言葉でいいなんて、結構凄いのとかありそう(笑)テレビでは“I AM HAPPY”ってプレートにしたなんて人を紹介してましたが。

以下、拍手お返事です。

なおさま

風、あはは、トイレスリッパでスパーンと叩かれたり後頭部をチョップされたり、大佐、大変です(爆)まあ、そうされても仕方ない男なんですけど(苦笑)ハボックはもう色気だだ漏れで大変な事になってそうです(笑)黒スグリ、うふふ、小悪魔的ですか?タマランですね(笑)本人無意識なのが余計にヤバいです。セレスタ、ロイにはここから頑張って貰いたいです(笑)おお、どの俳優さんだろう。黒人俳優っていうとパッと浮かぶのはデンゼル・ワシントンくらい(苦笑)でもちょっと違うかなぁ……。オリキャラの名前は大体その時見ているMLBかNFLの選手の名前なもんで(爆)ちなみにリンチ君はNFLの選手でロン毛です(爆)でも、軍人だからロン毛は無理(笑)

阿修羅さま

そちらの方はもう随分寒くなってきたようですね。おかげさまで私は今のところ風邪も引かずに元気でやってますv寒くなると体調も崩しやすいでしょうし、阿修羅さまもお母様もお体大切になさってください。オリジナル書かれるのですか?頑張って下さいね!
2014年10月24日(金)   No.417 (ロイハボ)

黒スグリ姫13
ロイハボ風味

「うん……、うん……。えっ?お昼?食べたよ、ちゃんと。……うん、大丈夫だってば。平気!もう切るよ!」
 ハボックは受話器の向こうで細々としたことを言い出す母に辟易して電話を切る。ハァとため息をついてソファーにぽすんと腰を下ろした。
 ロイを誘ってプールに出かけたハボックは一日たっぷり遊んでとても楽しい時間を過ごした。あんまり楽しくて日焼け止めを塗るのもおざなりに一日過ごした結果がもたらしたものは、日に焼けて真っ赤になった背中だった。小さい頃から肌が弱くて、それでも成長するにつれ大分強くはなったもののプールの時の日焼け止めは必須だった。本当なら水から上がるたびこまめに塗り直さなければいけなかったのだが、ロイと過ごす時間があまりに楽しくて日焼け止めの事などすっかり失念してしまっていた。プールから上がって帰り支度をする時には既にまずいと思ってはいたのだが、家に帰る頃にはもう猛烈に痛くてシャツが触れるだけでも泣きそうだった。母にこっぴどく叱られながら薬を塗ってもらったものの翌朝には熱も出て、結局日焼けなどという情けない理由で学校を休む事になったのだった。
「もうやんなっちゃう……母さんはうるさいし」
 フルタイムで働いている母はなかなか急には休みがとれない。それに今回は熱を出したとは言え原因が日焼けだったから、心配しつつも仕事に出かけていった。それでも熱を出した息子を一人家に残しているのは気がかりらしく、昼休みに電話をかけてきて事細かに様子を聞いてきたところだった。
「ヒマだぁ」
 ハボックはシャツ代わりの薄いシフォンのストールを肩の上まで引き上げながらぼやく。熱を出したとは言え病気ではないから暇を持て余して、ハボックはソファーに俯せに倒れ込むとクッションを抱え込んだ。
「この時間大したものやってないんだもん……」
 テレビを見ようにも日中のこの時間、中学生のハボックが面白いと思うような番組はやっていない。流石にゲームをする気にはなれなくて、ハァとため息をついて目を閉じた時、来客を知らせるベルが鳴った。
「誰だろう……」
 荷物でも届いたのかと思ったが出るのが面倒くさい。そのまま無視を決め込もうかとも思ったが、二度三度と鳴るベルに首を伸ばしてインターホンの画面を見た。
「えっ?先輩っ?」
 画面に映るロイの姿にハボックは目を見開く。諦めて帰ろうとするのを見て、ハボックは慌てて立ち上がると通話ボタンを押した。画面のロイに向かって「先輩っ!」と呼び掛ければロイがハッとしたように振り向いた。
「ハボック?」
「すみません、今開けます」
「ありがとう」
 ハボックは急いで玄関に行くと、サンダルを引っ掛けドアに飛びつく。フワリと靡いたシフォンを押さえながらドアを開けた。
「ハボック」
 そうすればロイが門を開けて入って近づいてくる。まだ授業中の筈のロイをハボックは不思議そうに見上げた。
「どうしたんスか?こんな時間に……?あ、あの……中にどうぞ」
 尋ねる言葉にも答えず睨むように見つめてくる黒曜石に、困り切ったハボックはとりあえずロイを中に招き入れる。何も言わずついてきたロイに背後から腕を掴まれ「わっ?!」と声を上げればロイが言った。
「酷い日焼けで熱を出したって聞いた。どうして電話した時何も言わなかったんだっ?」
「あ……えっと、その……大した事なかったし」
「学校を休まなければならないほどなのは大したことないとは言わん!」
 キツい口調にハボックが息を飲む。薄いシフォンを胸元でギュッと握り締めてハボックは俯いた。
「ごっ、ごめんなさいっ……でも先輩に心配かけたくなくてっ」
「後から人伝に聞いた方が心配する。しかも情報源はヒューズだぞ」
 どこか悔しそうに言うロイにクスリと笑えば途端にロイに睨まれて、ハボックは慌てて下を向く。そうすればため息をついたロイの手が伸びて、ハボックの前髪をかき上げた。
「熱いな」
 コツンと額を合わせてロイが言う。間近から見つめられて顔を赤らめてハボックは言った。
「先輩、体温が低いんスよ。大した熱じゃないっス」
「食欲は?」
「さっきサンドイッチ食べたっス。家でダラダラしてんのに腹は減るんだもん」
 なんでー?と眉を寄せるハボックにロイが漸く笑みを浮かべた。
「紅茶入れるっスね。座ってて下さい」
 ハボックは言ってキッチンに行く。茶葉やカップを出していると足音がして座っていてくれと告げた筈のロイがキッチンに来たのを見てハボックは目を丸くした。
「先輩」
「熱があるんだから休んでろ」
「平気っスよ、別に病気じゃない――――んんッ」
 言いかけた唇をキスで塞がれてハボックは目を見開く。反射的に押し返そうとする体を抱き込まれて、更に深く口づけられた。
「せ、せんぱぁい……」
 漸く唇が離れた頃にはキツい口づけにとろんと蕩けた表情でハボックはロイを見る。そうすれば仕掛けたロイの方が困ったように目を逸らして言った。
「シャツが着られなくて仕方ないんだろうが目の毒だな」
「え……?」
 ロイが言っている意味が判らずハボックがキョトンとしてロイの横顔を見つめればロイが苦笑して言った。
「ほら、これ以上悪さされたくなかったら向こうに行ってろ」
「は、はい」
 よく判らないままにコクンと頷いてハボックはリビングに行く。ソファーに腰を下ろしまだロイの唇の感触が残る己の唇をハボックはそっと触れて目を閉じた。
「先輩……」
 口づけに熱が上がったような気がして、ハボックはドキドキする胸を押さえる。聞こえた足音にハッとして目を開ければ紅茶のカップを乗せたトレイを手にロイがリビングに入ってくるところだった。
「ハボック、ジャムはあるかな」
「あ、はい!」
 言われてハボックは慌てて立ち上がるとキッチンへ行き、冷蔵庫から黒スグリのジャムの瓶を持って戻ってきた。
「すんません、やらせてしまって」
「構わないさ」
 ロイは答えてカップをテーブルに置く。
「先輩、ジャム」
 と、瓶を差し出せばロイか嬉しそうに笑った。
「ああ、ありがとう」
 ジャムで紅茶を飲む間、互いに何も言わずにいたが、少ししてカップを置いてロイが口を開いた。
「すまなかったな」
「えっ?」
 唐突に謝られてハボックは目を見開く。なにが?と言う顔をするハボックにロイが言った。
「日焼け止めを塗ってくれと頼まれたのに、私がちゃんと塗らなかったから辛い思いをさせてしまった」
「そんなっ」
 すまないと頭を下げられてハボックは慌てて首を振る。
「塗り直すの忘れてたのはオレっスから!本当は水から上がるたびに塗らなきゃいけなかったのに、すっごく楽しくて日焼け止めの事なんてすっかり忘れちゃって」
「ハボック」
「ごめんなさい、心配かけて」
 ぺこりと頭を下げてハボックが言えば、ロイが一つため息をついた。
「例えそうでも私の方が年上なんだし、もっと気をつけてやるべきだった」
「先輩」
 そんな風に言うロイをハボックが見つめれば伸びてきたロイの手がハボックの頬を撫でた。
「さっきより上がってないか?」
「こっ、これはっ、先輩がキスするからっ」
 カアッと顔を赤らめてハボックが言えばロイが目を丸くする。クスリと笑ったロイが目を細めて言った。
「なんだ、早く熱が下がるようおまじないしてやろうと思ったのに」
「え?」
「かえって熱が上がるならする訳にはいかないな」
 そう言って悪戯な笑みを浮かべるロイをハボックは目を見開いて見る。ムゥと唇を突き出し上目遣いにロイを睨んだ。
「先輩のイジワル」
 言えばクスクスと笑うロイの唇を引き寄せられるように見つめて、ハボックは言った。
「おまじない、して……?早く熱が下がってまた先輩とデートできるように……」
 囁くように強請るハボックにロイが目を見開く。ほんの一瞬困ったような表情を浮かべて、ロイはハボックに手を伸ばした。
「全くもう……これで良くならなかったら承知しないからな」
「先輩のおまじないっスもん。バッチリ効くっしょ?」
 そう答えた唇をロイが噛みつくように塞ぐ。甘く残るジャムの香りを分け合って、ハボックはうっとりと目を閉じた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになります、ありがとうございますvv

「黒スグリ姫」です。もすっかり秋だと言うのに未だに夏の話を引きずっているっていうね(苦)10日もかけてチマチマ書いてるからいかんのだ……。この間の月蝕は暗獣ネタで書きたかったのに書けなかったしなぁ。日記ももう少し気合入れて書かないと!……と言いつつ、溜まりに溜まったアニメやらドラマやらも見なきゃだし、アメフトはポメラ打ちながら見てるけど見入っちゃうと手が止まるしな(苦笑)秋アニメ、意外と面白かったのが「SHIROBAKO」。「繰繰れ!コックリさん」が面白かったかもしれないと一話の放送を見逃してから思ったり。「MOZU」も「相棒」も新シリーズ始まったのにまだ前のを見てるっていうね(爆)他にも色々……。明日の更新もまだ手つかずだよ!書かなきゃ!

以下、拍手お返事です。

なおさま

黒スグリ、もう全然塗ってないのと同じですね(笑)おお、きゅうりのすりおろし!先人の知恵ですね!気持ちよさそうvセレスタ、一家に一人リンチ(笑)ちなみにリンチ君は黒人設定です、ふふふ。スライディング土下座するブラッドレイ、想像つかないなぁ(笑)土下座しててもふんぞり返ってそう…って、それ土下座じゃない(爆)この時点でロイはまだ出張先……そろそろ帰ってくるはずです、のの字書きながら(笑)風、あはは、このロイ、ムカつくヤツですよね!(爆)まあその分、先で苦労して貰いましょうということでv

阿修羅さま

おお、お友達、お元気になられましたか?拙宅の本がお見舞いになったのか、ちょっぴり不安ですが暇潰しのお役に立てたなら幸いです(笑)風邪はよくなられましたか?いつの間にやら秋がやってきた感じで、朝晩大分涼しくなりました。阿修羅さまもお体お気をつけてお過ごしくださいね。「風の行く先」えへへ、ありがとうございますvこの先の展開も楽しみにお待ち頂けたら嬉しいですーv「弟子」その後!考えてなかったなぁ。確かに続きもありですよね。ってまたシリーズ化?いいのか(苦笑)「黒スグリ姫」おお、阿修羅さまも経験者でしたか!いずれハボを頂くつもりですが……高校卒業の時?ロイと私の理性がそれまで持つか疑問です(笑)
2014年10月17日(金)   No.416 (ロイハボ)

黒スグリ姫12
ロイハボ風味

「ロイ」
 聞き慣れた声にも振り返らずロイは大学棟の廊下を歩いていく。そうすれば背後からついてくる足音が早まってヒューズがロイの隣に並んだ。
「もう、ロイ君ってば!なんで無視するのよっ」
「お前の悪趣味に付き合ってる暇はない」
 科を作って言うヒューズを横目にジロリと見てロイが言う。相変わらずな友人の態度に苦笑してヒューズが言った。
「なんだ、折角お姫さま情報教えてやろうと思ったのに」
「ハボックの?なんだ?!」
 それまでヒューズを振り切ろうとするように足早に歩いていたロイがピタリと足を止めて言う。大事な恋人の事だと聞いた途端態度を変えるロイにやれやれと肩を竦めたヒューズは、ロイに顔を寄せた。
「髭面を近づけるな」
 鬱陶しいと顔をしかめて仰け反るロイに構わず、ヒューズは言った。
「ハボックの奴、学校休んでるぜ?」
「なんだとっ?どうしてだっ?」
「――――さあな」
 チラリと横目でロイを見たヒューズのどこか勿体ぶった態度にロイはムッと唇を歪めた。
「教えろ。素直に白状しないと燃やすぞ」
「いや〜ん、ロイ君ってばぁ――コ・ワ・イ」
 隠しに手を入れようとする手首を掴んだヒューズがからかうように言うのをロイはギロリと睨む。普通の人間なら怯んでしまうようなその眼光も全く気にした風もなくヒューズは言った。
「教えてやったんだから理由くらいは自分で調べろよな。可愛い恋人だろ?」
「ッ!――――クソ髭ッ」
 そう言われれば返す言葉がなくロイは精一杯の悪態をつく。手首を掴むヒューズの手を乱暴に振り払って、ロイは中等部の校舎に向かって足早に歩き出した。
「夕べ電話した時には変わった様子はなかったのに」
 日曜日、一緒にプールに出かけた後、会う時間が取れず電話で連絡を取っていた。本音を言えばプールでハボックの可愛らしい所を散々に見せつけられて、少し時間をおかなければ自分を抑えておけるか自信がなかったからと言うのもある。
「どうしたんだ、一体……」
 考えても判らないまま歩いていけば中等部の敷地に入る。昼休みがそろそろ終わる時間、ザワザワとざわめく教室の扉から半身中に入ってロイは近くの少年に声をかけた。
「おい、ちょっと教えて欲しいんだが」
「はっ、はいっ!」
 声をかけられた少年は飛び上がってロイを見る。ふと気がつけば教室中の視線がロイ達に集まっていた。
「な、なんですかっ?」
 教室のあちこちで「うそっ」だの「どうしてここに?!」だのとヒソヒソ囁かれる中、ロイはビックリ顔で己を見つめる少年に尋ねた。
「ハボックに用があるんだがどこにいるかな?」
「ハボックなら今日は休みです」
「どうして?」
 休みという答えが返ってくるのは判っていたからロイは即座に理由を尋ねる。そうすれば尋ねた少年ではなく側にいた少しぽっちゃりとした少年が答えた。
「日焼けが酷くてシャツが着らんない上に熱出したって」
「えっ?日焼け?」
 思いもしなかった理由にロイは目を見開く。見つめてくる黒曜石の強さに少年は困ったようにしながらも目を逸らさずに答えた。
「アイツ、子供の時から肌が弱くて、日焼け止めは必須だってのにプールでそのまま焼いちゃったみたいなんですよ」
『これこれ。塗らないと大変な事になっちゃう』
 少年の言葉にハボックの声がロイの脳裏に蘇る。
『オレ、日焼けすると真っ赤になって大変な事になっちゃうんス』
 そう言ってハボックはロイに日焼け止めを背中に塗って欲しいと言った。日焼け止めのボトルを受け取って、果たして自分は何をしただろう。
「マスタング先輩?」
「――――あ。……そうか、ありがとう。助かったよ」
 不思議そうに呼ばれて、ハッとしたロイは笑みを浮かべて答える。それじゃと手を上げて言ってロイは教室を出た。足早に廊下を歩く足取りが徐々に早くなり、いつしかロイは物凄い勢いで廊下を駆け抜けると学校を飛び出した。


いつも遊びに来て下さってありがとうございますv拍手、やる気の素です、嬉しいです〜v

「黒スグリ姫」です。ぐずぐずしてたら10月になっちゃいましたよ(苦)でもまだ終わってないのでプールネタの続き(苦笑)

そういや12日はスパークですね。今年も「大佐とハボックの冒険」があるそうで。行こうかなぁと思っていたのですが、参加リストを見て「ああ、またロイハボサークル減ってるなぁ……」と。去年でも4つだったのに今年は二つ……。いつもスケブをお願いしているサークルさまも不参加っぽいし、ハボロイはなぁ……エロが苦手なんだよー(爆)18禁じゃなければいいんだけどね、やっぱりR指定が多いからなぁ(苦笑)どうしようかなぁ、悩む……。

以下、拍手お返事です。

なおさま

弟子、あはは、確かにダガーの腕の方が上達早そうです(笑)ダンサーハボック!そりゃもう毎日通ってかぶりつきで見ちゃいますよッ!セレスタ、うふふ、ハラハラして下さって嬉しいですーvブラッドレイ一人楽しそうですよね(苦笑)風、エロオヤジーズ!そんなユニット嫌だ〜〜ッ!啼かすの得意はハボ限定ですかね(笑)ふふふ、そんなロイのギャフンを楽しみにお待ち下さい(笑)セレスタ、困った時のリンチ頼み(爆)ロイより周りの人の方が頼りになるのは、多分ロイはハボに近すぎるんだと思います。距離がないロイに対しリンチとかホークアイは適度に離れたところから見てるからちゃんと見るものが見えてるのかなぁと。
2014年10月02日(木)   No.415 (ロイハボ)

No. PASS
 OR AND
スペースで区切って複数指定可能
  Photo by 空色地図

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