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2017年06月の日記

2017年06月29日(木)
六月八日 その5
2017年06月19日(月)
六月八日 その4
2017年06月15日(木)
六月八日 その3
2017年06月11日(日)
六月八日 その2
2017年06月08日(木)
六月八日 その1

六月八日 その5
CP:ロイハボ(R18)(ロイ相手じゃないですが(苦笑)

「ここ?」
「ああ、ほら、入れよ、ジャン」
 雑多な店が立ち並ぶ、あまり品のよくない界隈の一角に立つ店を見上げてハボックが言う。眉を寄せるハボックの肩を抱き半ば強引に押しこむようにしてニコラスは店の中へと入った。
「ヨアヒム!」
「おう、ニコル。来たのか」
 ニコラスが呼ぶ声に他の客と話をしていた男が振り向く。ニコラスに肩を抱かれたハボックを舐めるようにジロジロと見てニヤリと笑った。
「奥の部屋使わせてもらうぜ」
「ああ、すぐ酒持ってくから」
 ヨアヒムの言葉に頷いてニコルはハボックを奥の部屋へと連れていく。大振りなソファーが二つとテーブルが置かれた部屋に通されて、ハボックはニコラスを見た。
「別に個室じゃなくてもいいんじゃね?」
 ちょっと飲んだらすぐ帰るつもりなのだ。正直席を立ちづらいこんな個室より入口近くのテーブルに案内された方がよかった。
「こっちの部屋だけに出す特別な酒があるんだよ。珍しい酒だから限られた客にしか出さないんだ。あっちのホールで出して他の客に出せって言われたら困るだろ」
「珍しい酒?旨いの?」
「ああ、体が蕩けちまうと思うくらいにな」
 珍しい酒と聞いて、ハボックはほんの少し興味が沸いて尋ねる。ニコラスに促されるまま並んでソファーに腰を下ろした。
「まぁとりあえずはこれで乾杯と行こうぜ」
 ニコラスはそう言って店員が運んできたビールの瓶を取り栓を抜く。その内の一本を手渡され、ハボックは泡が溢れるビールの瓶をニコラスのそれと軽く合わせた。
「乾杯!」
「……乾杯」
 グビグビとビールを半分ほど飲んで、ニコラスがハボックに言った。
「今日は楽しかったぜ。次はいつ会う?面白いところに連れていってやるからさ?」
「う……ん、そうだね」
 そんな事を言って顔を覗き込んでくる男にハボックは曖昧に答える。手にしたビールをチビチビと飲んでいると扉が開いてヨアヒムが他にもう一人男を連れて入ってきた。
「ニコル、例の酒、持ってきたぜ」
「おお、待ってたました!なんだ、お前も来たのか。後でレニも来るってよ」
 ニコラスはヨアヒムと一緒に入ってきた男の顔を見てニヤリと笑う。それに笑い返してソファーに腰を下ろす男達を見て、ハボックが言った。
「知り合い?」
「ああ、みんなこの店の常連。いいだろ?一緒に飲んでも」
「それは構わないけど」
 ハボックは答えて隣に腰を下ろしてきた男をチラリと見る。ニコラスと男に挟まれるようにソファーに座る形になって、ハボックは眉を寄せた。
(参ったな、益々立ちづらくなった)
 個室に通されただけでも困ったと思ったのに、こんな風に挟まれて座ったのでは益々席を立ちづらくなってしまう。どのタイミングで帰ろうかと考えるハボックの前に隣に座った男がグラスを置いてボトルの酒をコポコポと注いだ。
「悪いな、折角ニコルと二人で楽しんでるところ邪魔して」
「え?あ、いや、別に構わないよ」
「オレはキース。旨いぜ、この酒。一度飲んだら病みつき」
「ありがとう……えっと──ジャンだよ」
 身を寄せてくる男から出来るだけ体を遠ざけて、ハボックは差し出されたグラスを受け取る。促すように見つめられて、ハボックは手にしたグラスに口をつけた。
「────旨い」
「だろ?ほら、どんどん行けよ」
 正直そこまで期待していなかった酒は存外に喉越しがよく、鼻を抜ける香りがとてもよい。目を丸くするハボックにキースはボトルを手に「飲め飲め」と勧めた。
「おい、キース、俺たちにも回せよ」
「判ってるって、まあ待てよ、ニコル」
 ハボックの向こう側から顔を出して言うニコラスにキースはニヤリと笑って答える。ハボックが飲み干したグラスに酒を注いで「ほら」と促した。
「ありがと、でも、みんなも飲みたいんだろ?アンタたちも────」
「いいからいいから、遠慮するなって。俺たちは飲んだことがあるからな」
 ニコラスたちにも回してくれと言うハボックの言葉を遮ってキースはハボックに酒を勧める。喉こしの良さに思わずクイクイと飲んでしまって、ハボックはグラスを置いた。
「旨い酒をありがとう。悪いけど、オレ、そろそろ帰るよ」
 そう言って立ち上がろうとするハボックの肩に手を置いて、キースはグラスに酒を満たした。
「なに言ってんだよ、まだ飲み始めたばっかりじゃないか。旨いだろ、この酒」
「それはまぁ……でも、家で待ってる人がいるから」
「そぉかぁ?じゃあこの一杯だけ」
 な?と促されてハボックは仕方なしにグラスを手にする。早く帰ろうと一気にグラスを呷って立とうとしたハボックは、脚に力が入らない事に気づいて目を見開いた。
「あ、あれ……?」
「どうしたよ、もう酔っぱらったのか?」
「そう言う訳じゃないけど……」
 ニヤニヤと笑うキースに答えて、ハボックは何とか立ち上がる。キースとテーブルの間をすり抜けて歩こうとした途端、ガクリと膝が頽れた。
「あ……ッ」
「おっと」
 倒れ込むハボックの躯をキースが支える。「ごめん」と呟いたもののキースに身を預けたままのハボックを見てニコラスが言った。
「大丈夫か?ジャン」
「う、うん……どうしたんだろ……」
 確かにたて続けにグラスを空にしたものの、元々アルコールには強い方だ。眉を寄せるハボックをニコラスがグイと引き起こした。
「酔ったんなら少し休んでけよ」
「そうそう。ほら、ここに横になって」
「でも、オレ帰らないと……」
 ソファーの上に横たえられてハボックが呟く。そんなハボックを見下ろしてニコラスとキースはニヤニヤと笑った。
「ソファーの背もたれを倒してやれよ。それ、ベッドになるだろ」
 向かいのソファーに座っていたヨアヒムが言って立ち上がり、テーブルを引っ張る。それに頷いて、キースとニコラスも立ち上がるとソファーの背もたれを倒した。
「あ……」
 バタンと背もたれが倒れて面積が広がったソファーに力なく横たわってハボックは男たちを見上げる。下卑た笑みを浮かべて、ニコラスがハボックのジーンズに手を伸ばした。
「腹を締め付けてると苦しいだろ?弛めてやるよ」
 言いながらニコラスはジーンズのボタンを外しジッパーを下ろす。その手がジーンズのウェストにかかったと思うと、下着ごとグイとジーンズを引き下げた。
「────え?な……ッ?!」
 膝の辺りまで下着を下ろされて、ギョッとしたハボックが慌てて手を伸ばす。下着を引き上げようとするハボックの手を掴んだキースが、ハボックの両腕を頭上に押さえ込んだ。
「なにするんだッ?!離せッッ!!」
 力の入らない躯を捩って声を張り上げるハボックにキースがクスクスと笑った。
「そう喚くなよ、いいカラダしてんな。こんなシャツ着て、誘ってんだろ?」
「違……ッ、これはニコルが────アッ」
 ピチピチのシャツ越し、乳首をキュッと摘まれてハボックは喉を仰け反らせた。
「なに言ってんだよ、喜んで着てただろ。イヤラシい目で見られて、嬉しそうにしてたじゃねぇか」
「そんな事してな──やっ、やだァッ!」
 揶揄するように言いながらニコラスはハボックの脚からジーンズと下着を抜き取ってしまう。慌てて縮めようとしたハボックの足首を掴んで、ニコラスは長い脚をソファーに押さえ込んだ。
「へぇ、あんまり使ってないのか?」
 両腕両脚をベッドに押さえ込まれたハボックの剥き出しにされた下肢を覗き込んでヨアヒムが言う。色の薄い楔に手を伸ばしてキュッと握った。
「アッ!」
「まずはイイ気持ちにさせてやるぜ」
 ビクッと震えるハボックに囁いてヨアヒムがハボックの楔を扱き出す。直接的な刺激に頭を擡げる楔の先端から先走りの蜜が零れてグチュグチュとイヤラシい水音をたてた。
「やめ……ッ、やめろッッ」
 力が入らず押さえ込まれた手足を振り解けないまま、ハボックは楔を嬲る男の手から逃れようとしてもがく。だが、逃れようともがく姿がまるで腰を振っているようで、男たちがゲラゲラと笑った。
「イイのか?腰が揺れてるぜ?」
「ち、違うッ!」
「ヨアヒム、まずは一度イかせてやれよ」
「ああ、そうだな」
 ニコラスの言葉にヨアヒムは頷いて扱く手の動きを速める。忽ち込み上がる射精感にハボックは激しく首を振った。
「やだッ、やめろッ!やめ……ッ、────あ、あ、あ」
 足の指をキュウと丸めてこらえようとするハボックを嘲笑うようにヨアヒムは楔をキツく扱く。蜜が滲む先端を引っかかれて、ゾクゾクッと背筋を駆け抜ける快感にハボックは目を見開いた。
「ア、アア────ッッ!!」
 高い嬌声を上げて背を仰け反らせたハボックがヨアヒムの手の中に熱を吐き出す。ビクビクと震えて大きく仰け反った躯をがっくりとソファーに沈めて、ハボックは荒い息を零した。
「クク……たまんねぇな、色っぽい顔しやがって」
 クツクツと笑ってヨアヒムが掌に吐き出された白濁をハボックの頬に塗り付ける。熱に汚れた指を荒い息を零すハボックの唇にねじ込んだ。
「ンッ、ンンッッ!」
「ほら、しっかり舐めろよ。お前が汚したんだぜ」
 言いながらヨアヒムはねじ込んだ指でハボックの口内を掻き回す。口に広がる青臭い臭いに顔を歪めるハボックに、ニコラスが言った。
「虐めるなよ、可哀想だろ?」
「はぁ?これからもっと可哀想な事するつもりのヤツがなに言ってやがる」
「可哀想な事じゃねぇよ、コイツだって本当はそうされたくて堪んねぇんだからさ」
 呆れたように言うヨアヒムにキースが言ってハボックの乳首をグリグリと潰しては引っ張る。布越しに与えられる乱暴な刺激に、ハボックが嫌々と首を振った。
「堪んねぇな、この表情(かお)……早くぶち込みてぇッ」
「慌てんなよ、ヨアヒム。まずはたっぷり可愛がってやろうぜ」
 ニコラスは楽しそうに言うと掴んでいたハボックの足首をグイと押し上げる。長い脚をM字に開いて、熱に濡れたハボックの楔に口を寄せた。
「可愛いぜ、ジャン」
「ヒャッ?!」
 言うなりジュブと楔を咥え込まれてハボックの躯がビクンと跳ねる。
「ヤッ、やだッ!!アアッ」
 ジュブジュブと唇でこすられてハボックが身悶える。それを見て、ヨアヒムがハボックの乳首にシャツの上から吸いついた。
「やめ……ッ、んんッ!」
 拒絶の言葉を吐き出すハボックの唇をキースが己のそれで塞ぐ。楔を乳首を口内を男たちに嬲られて、ハボックはビクビクと躯を震わせて身悶えた。


遊びにきてくださっているみなさま、ありがとうございますーvポチポチ拍手も嬉しいですvv

ちょっと間があいてしまいましたが、ロイハボの日話続きでございます。CPロイハボと言いつつ相手はロイじゃないっていう……え?お約束?(笑)すみません、こういうの大好きで、テヘv(コラ)「私も大好きですッ」って思って下さる方がいると期待しつつまだまだ続きます、ウフフv

以下、拍手お返事です。

オー!! の方

わーいッ!楽しんでくださって嬉しいですーっvvえへへ、同志〜vハボック、まだまだタイヘンですが、引き続き楽しんでくださると嬉しいですv
2017年06月29日(木)   No.500 (ロイハボ)

六月八日 その4
ロイハボ風味

「ジャン、なあ、待てよ、おい」
 上映が終わると同時に飛び出すように劇場を後にするハボックを追って、ニコラスが呼びかける。ドカドカと靴音も荒く歩くハボックに数歩走って追いつくと、ニコラスはハボックの腕を掴んだ。
「ジャン」
「あんな映画だなんて聞いてなかったッ、あんな恥ずかしい……ッ」
「なんだよ、意外とお子さまだな」
「ッ!」
 揶揄するように言われてハボックはキッとニコラスを睨む。空色の目元を染めて睨んでくるハボックにニコラスはニヤニヤと笑って言った。
「セックスシーンのある映画なんて珍しくないだろ?それとも普段ガキの映画ばっかり観てんのかよ」
「そ、そういう訳じゃないけどッ」
 確かに恋愛物の映画ではセックスシーンは珍しくない。だが、男同士の濃厚なラブシーンはやたらと刺激が強く、思い出すには恥ずかしい自身の夜の生活を思い出させてとてもじゃないが居たたまれなかった。
 だが、流石にそうとは言えずハボックは唇を噛んで俯く。紅く染まったハボックの顔を見つめながらニコラスが言った。
「気ぃ悪くしたなら謝るよ。お詫びに奢るからさ、飲みに行こうぜ。いい店知ってるんだよ。な?ジャン」
 そう言うニコラスをハボックはチラリと見る。正直なところもうこの男につき合う気にはなれず、それにこの時間になれば流石に仕事も済んでいるであろうロイを想うと早く家に帰りたかった。折角の休暇を潰されて、その上出掛けのロイのバカにするような言葉に腹を立てて家を飛び出してきたものの、本気で浮気をするつもりなどないのだから。
「誘ってくれてありがとう。でもオレ、もう帰るよ」
 そう言ってハボックはニコラスをおいて歩きだそうとする。だが、その前にニコラスの手が伸びてハボックの肩を掴んだ。
「そんなこと言うなよ。このままバイバイじゃ後味悪いだろ?折角一緒に遊ぶチャンスに巡り会ったんだ。楽しい気持ちで締めくくりたいじゃないか」
 グイとハボックの肩を引き寄せてニコラスはハボックの顔を覗き込むようにして言う。「頼むよ、ジャン」と強請るように言われて、ハボックは小さくため息をついた。
「判ったよ、ニコル。あとちょっとだけなら」
「そう来なくっちゃ!」
 了承の答えを返すハボックにニコラスが嬉しそうに声を張り上げる。
「いい店なんだ、絶対に後悔させねぇから」
「へぇ、そうなの?」
(いい店なら後で大佐と行けるかな)
 言ってグイと肩を引き寄せる男に連れられるままハボックは暮れ始めた通りを歩いていった。

 長々と続いた会議を終えて執務室に戻ってきたロイは乱暴な仕草で椅子に腰を下ろす。後から執務室に入ってきたホークアイをジロリと見上げて言った。
「冗談じゃないぞ、中尉。もう夕方じゃないか」
「申し訳ありません、大佐」
 休暇の予定をおしてわざわざホークアイが呼び出したのだ、すぐには終わらないだろうと思ってはいた。だが、窓の外がオレンジに染まっているのを見れば、流石に怒らずにはいられなかった。
「休暇の予定、明日まででしたが明後日までに変更しておきますから」
「当然だ」
 ムスッとして答えてロイは立ち上がる。
「帰るぞ、止めても無駄だからな。これ以上はなにがあっても御免だ」
 六月八日はあと数時間しか残っていなかったがせめてその時間をハボックと一緒に過ごしたかった。
「車を回しておきました。少尉に私が謝っていたと伝えてください」
「────ああ」
 こうなったのはホークアイの責任ではない。悪いのは仕事をためた上要領悪いことこの上ない無能どもだ。それでもホークアイの謝意は有り難く受け取って、ロイは執務室を足早に後にした。


遊びに来て下さったみなさま、ありがとうございますvポチポチ拍手も嬉しいですーvv今日も暑いですね……まだ夏前なんだからさー、やめてよ、この暑さ(苦)

と、文句を言いつつロイハボの日の続きです。フフフ、いよいよかな〜ッv……って一人ウキウキしてますが(笑)久々真面目に更新してますよ(日記だけど)楽しんでくれてますかーッ?────オーッ!って返ってくると嬉しいなぁと思いつつ、続きにかかりまーすv
2017年06月19日(月)   No.499 (ロイハボ)

六月八日 その3
ロイハボ風味

「ジャン、チケット買ってきたぜ」
 ちょっと待ってろと言われて映画館の入口で待っていたハボックは聞こえた声に振り向く。そうすればニコラスがチケットを手に歩み寄ってきた。
「映画って、どれ見るの?」
 映画館につれてこられたものの、幾つも上映されている映画の中のどれを見に来たのか教えてくれないニコラスにハボックは尋ねる。促すようにチケットに手を伸ばしたが、ニコラスはハボックにチケットを渡さず係員の男に二人分のチケットを渡してしまった。
「結構評判なんだぜ、この映画」
「だからなんて映画────」
「やべ、始まる!ジャン、こっちこっち」
 結局映画のタイトルが判らないまま、ハボックはニコラスに腕を引かれるままにシートに腰を下ろす。それとほぼ同時に場内が暗くなって始まった映画を観る内、その内容に気づいてハボックは目を丸くした。
(これ……も、もしかして……ッ?)
 スクリーンの中、ベッドに腰掛けた黒髪の男が目の前に立つ金髪の男の腕を引く。抵抗することなく倒れ込んできた男を腕の中に抱き込んだと思うと男の唇に己のそれを重ねた。スクリーンいっぱいに男同士の熱烈なキスシーンが映し出され、二人はもつれ合うようにしてベッドに倒れ込む。互いに毟り合うようにして服をはぎ取った男二人が繰り広げる濃厚なベッドシーンを見ていられず、ハボックは顔を紅く染めて俯いた。
(なんだよ、この映画……ッ、みんな恥ずかしくないのかよッ)
 そう思いながらチラリと辺りを伺えば、さっきは気づかなかった男ばかりの場内は一種異様な雰囲気に包まれていた。
(ここ、そんな映画館だった……?)
 連れられるままあまり考えずに入ってしまったが、正直とても見ていられない。幾ら自分の恋人が男とは言え、男同士のセックスを見て興奮するような趣味は持ち合わせていなかった。
「ニコル、悪いけど、オレ────ヒャッ?!」
 外に出ると隣に座るニコラスに声をかけようとしたハボックは、反対側から伸びてきた手にジーンズの隙間から覗く肌をそっと撫でられて飛び上がる。ギョッとして隣を見れば、薄闇の中熱っぽい視線で見つめてくる男と目があってハボックは大きく目を見開いた。
「あの俳優、アンタに似てるな」
「な……ッ?!」
「アンタもあんな風に色っぽい顔すんの?」
 囁きながら男はハボックの脚を撫でる。そのイヤラシい手の動きにハボックはカアアッと顔を赤らめて、男の手を払いのけた。
「触んなッ、バカッ!!」
 思わず大声を張り上げて立ち上がる。劇場のただ中、怒りと羞恥に震えて立ち竦むハボックの手をニコラスが引いた。
「ジャン、迷惑だろ、座ってろ」
「こんな映画見てらんない、出るからッ」
「ジャン!」
 隣の男を押し退けて出ていこうとするハボックの腕をニコラスが強く引く。ドサリとシートに引き戻されて、ハボックは腕を掴むニコラスを睨んだ。
「こんな映画だなんて聞いてないッ!こんな恥ずかしい映画────ンンッ」
 怒りに任せて声を張り上げようとした口元を手で覆われて、ハボックは首を振る。ニコラスはハボックにのし掛かるようにしてその耳元に囁いた。
「声デカいって。みんな楽しんでるんだからちったぁ考えろよ」
「でもッ」
「見たくなきゃ目ぇ瞑ってればいいだろ。いいオトナなんだからさ」
「────」
 そんな風に言われてハボックは言葉を飲み込んで唇を噛む。きちんと映画の中身を確認しないまま入ってしまったのは確かに自分のミスであって、ハボックはスクリーンを見ないように俯いて自分の脚を睨みつけた。だが。
 そうやってスクリーンから目を逸らしても音は耳から入ってくる。熱を帯びた声と息遣い、湿った水音に続いてパンパンと肉を打つ音が聞こえて、ハボックは顔を真っ赤にして手を握り締めた。
(も、ヤダ……早く出たい……ッ)
 恥ずかしくて恥ずかしくて堪らない。その上決して知らないものではないその音を聞けば、躯の芯が熱くなるようでハボックは爪が刺さるほど手を握り締める。
(色っぽい顔してんじゃねぇか)
 微かに震えながら唇を噛み締めるハボックの薄紅に染まった横顔を、ニコラスがニヤニヤと笑いながら見つめていることに、ハボックは気づいていなかった。


遊びに来て下さってるみなさま、ありがとうございます〜vとっても嬉しいですv
さてさて、ロイハボの日話続きでございます。ハボック、相変わらずぬけてます。大佐、仕事してる場合じゃないっスよ(笑)いやぁ、楽しいなぁ。楽しくて例によってズルズルっと話が伸びて行きそうですがお付き合い頂ければ嬉しいですーv

以下、拍手お返事です。

本当に本当に本当に大好きです…!  の方

嬉しいお言葉ありがとうございます!こちらこそ今でも遊びに来て下さってとっても嬉しいですッ!好きで書いているとはいえ、やはり読んで頂けるのがなにより嬉しいですから。これからものんびりまったり続けて行きたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたしますvv
2017年06月15日(木)   No.498 (ロイハボ)

六月八日 その2
ロイハボ風味

「大佐」
 執務室の扉を開いて入っていけば、書類のチェックをしていたホークアイが振り向く。ロイは一つため息をつくと執務机の大振りな椅子に腰を下ろした。
「ひどいじゃないか、中尉。今日は絶対に休みを取るともう何ヶ月も前から調整してたのに」
 常日頃から多忙な身のロイだ。事件などの火急な案件がなくとも思ったようには休みが取れないのが現状で、そうであれば今日この日と明日の二日、確実に休みを取るため綿密に調整していたのは副官であるホークアイが一番よく知っているはずだった。
「申し訳ありません、大佐。どうしても明後日までおいておく訳にはいかない書類だったものですから」
「どこのどいつだ、書類を留めていた不届き者は」
 日頃の自分のことは棚に上げて、ロイはホークアイが差し出した書類をひったくるようにして取ると目を通す。ガリガリと乱暴にサインしてホークアイに返したロイは促すようにホークアイを見上げた。
「で?まだあるんだろう?」
「申し訳ありません」
 うんざりした様子で尋ねてくる上司を宥めるように笑みを浮かべて、ホークアイは手にしたファイルを開く。ホークアイの声に耳を傾けながら窓から空を見上げれば、ロイの脳裏に怒りの色をたたえる空色の瞳が思い浮かんだ。
(浮気してやるとか言っていたが……まさかな。アイツにそんな大それた事が出来る訳がない)
 ハボックがモテるのはよく知っている。だが、それ以上にハボックが自分に惚れているという自信がロイにはあった。
(折角の休み、私だって楽しみにしていたんだ。とっとと終わらせて帰るぞ)
 ロイは内心そう思うと視線をホークアイへと戻した。

「これなんてどうだ?お前に似合うと思うぜ、ジャン」
 そう言ってニコラスが差し出すシャツをハボックは眉を顰めて見つめる。けばけばしいそのシャツはハボックの好みとは全く違っていて、幾ら買ってくれると言われても欲しいとは思えなかった。
「う、ん……でもオレ、普段そういうの着ねぇし」
「普段着ないならこの機会に是非着てみろよ。絶対似合うから」
 明らかに気に入らない様子のハボックに構わずニコラスはシャツを薦める。ニコラスはラックからクラッシュデニムのジーンズを取って言った。
「このシャツならこのジーンズだな。今買ってくるからちょっと待ってろ」
「えっ?でもオレそう言うのはっ!」
 慌てて引き留めようとするハボックに構わずニコラスはレジに行ってしまう。ため息をついたハボックが店から出ていく訳にも行かず待っていれば、支払いを済ませたニコラスが戻ってきた。
「タグとって貰ったから。そこの試着室借りて着替えて来いよ」
 そう言いながら買ったばかりの服を押しつけられて、ハボックは眉を寄せる。それでもニヤリと笑ったロイの顔が思い浮かべば、ハボックは眉間の皺を深めてニコラスの手から服を引っ手繰ると手近の試着室へと入った。シャッとカーテンを引き、濡れて脱ぎ辛い服を脱ぎ捨てる。一瞬躊躇ったもののシャツを掴むと腕を通し頭から被った。
「って……これ、サイズ小さくね?」
 キツいなと思いつつ頭を通したシャツはピッタリというよりピチピチだ。鏡に映る己の姿を見れば酷く恥ずかしくて、ハボックは鏡を見ないようにしながらジーンズをはき代えた。
「こっちも……なんかこれ、穴開きすぎだろ」
 多少のダメージはお洒落だろうが、幾ら何でもこれは肌が見えすぎではないだろうか。
「し、下着見えてね……?」
 心配で背後を映してみる。流石に下着は見えないもののとてもじゃないが着ていられなくて、やはり元のジーンズにはき代えようとボタンに手をかけた時、外からシャッとカーテンが開いた。
「うわッ?!」
「どうよ、その服────お、似合うじゃん!やっぱ俺の見立てに狂いはなかったな」
 声も掛けずにいきなり試着室のカーテンを開けた男をハボックが睨んだが、ニコラスはそんな視線も気に留めず自分が選んだ服を着たハボックを上から下まで舐めるように見て満足げに頷く。ハボックが脱いだ服を拾って店の袋に放り込みハボックの手を引いた。
「ほら、行こうぜ、ジャン」
「あ、ちょっと……オレ、やっぱりこの服はッ」
「映画始まっちまうぜ!おう、レニ、また後でな」
 店の従業員の大柄な男に片手を上げて、ニコラスはグイグイとハボックの手を引く。結局自分の服に着代える事も出来ないまま、ハボックは店の外へと出た。
「ふふ、ホント似合うぜ、ジャン」
 ニコラスはジロジロとハボックを見つめて言う。その舐めるような視線にハボックは顔を赤らめて言った。
「折角買ってくれたけど、このシャツ絶対サイズ小さいよ。店に言って代えて貰った方が────」
「なに言ってんだよ!お前はスタイルいいんだからそのサイズでなきゃダメだって!」
 言いかけるハボックの言葉を遮ってニコラスが言う。グイとハボックの肩を抱き寄せ、耳元に囁いた。
「ほら、あそこの男、お前の事見てるぜ。あっちのヤツも。ヤらしい目で見やがって」
「えッ?!」
 クックッと笑いながら言うニコラスにハボックはギョッとして言われた方を見る。そうすれば何人もの男が慌てたように目を逸らした。
「な、なあ、やっぱ服着替えるからッ」
「馬鹿言うなよ、見せつけてやれって。な?ジャン。それともそうできない理由でもあるのか?」
 顔を覗き込むようにして尋ねられてハボックは目を瞠る。脳裏に浮かぶロイの顔にハボックはキュッと唇を引き結んだ。
「別にそんな理由なんてないしッ!いいさ、見たいなら見れば」
「そうそう、折角のいいカラダ、見せつけてやれって」
 顔を赤らめながらもツンと顎を突き出すハボックに、ニコラスがニヤニヤと笑って並んで歩くハボックの腰を引き寄せた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございますvロイハボの日アップしたらポチポチ拍手も頂いて、読んでくださってる方がいるんだと嬉しくなりましたーvありがとうございますーvv

そんなわけでロイハボの日話の続きです。いやぁ、いかにもな展開できっと「これはアレよね!」という感じに思っていらっしゃる方、ええ、きっとその通りアレですんでッ(笑)最近書くと姫ハボかはぼっくばかりだったので、久しぶりにこういうの書くと楽しいですね。フフフ、続きも頑張りますので読んで頂けましたら嬉しいですーv
2017年06月11日(日)   No.497 (ロイハボ)

六月八日 その1
ロイハボ風味

「えーッ、今日は二人でゆっくり過ごすって約束だったじゃないっスかッ!」
 そろそろ出かけようと用意をしていた時、不意に鳴り響いた電話に出るロイを心配そうに見つめていたハボックは、電話を切ったロイの唇から出た言葉に不満の声を張り上げる。非難の色を滲ませる空色に睨まれて、ロイは肩を竦めて答えた。
「仕方ないだろう、急ぎの書類が出てきたというんだから」
「アンタ、書類全部片づけたって言ってなかったっスか?」
「片づけたとも!今回書類を留めていたのは私じゃないぞ」
 私のせいじゃないと主張するロイをハボックはじとーッと見つめる。そんなハボックにロイはため息をついて立ち上がった。
「とにかく中尉が来いと言ってるんだ。行かない訳にはいかないだろう?」
「そりゃそうっスけど」
「他にも急ぎの案件があるらしいしな」
「え?──ええーッ?!じゃあ書類にサインしたらすぐ帰ってくるんじゃねぇのッ?」
 ぼそりと付け加えられた言葉にハボックは椅子から飛び上がる。リビングから出ていくロイを追いかけてハボックは言った。
「オレ、ずっと楽しみにしてたんスよッ?今日は絶対大佐と過ごすんだって、演習だって書類だって残さないように頑張ったのにッ!」
「仕方ないだろう、仕事だ」
「……オレと仕事とどっち取るんスか?」
 思い切り頬を膨らませて言うハボックにロイは足を止めて振り向く。見つめてくる空色を見返してロイは言った。
「お前に責められるより中尉に怒られる方が怖い」
 司令部最強の女性と天秤にかけられてハボックが目を見開く。むぅぅッとへの字に引き結んだ口を開いてハボックが叫んだ。
「もういいッ、浮気してやるッ!」
 その声に玄関を出ていこうとしていたロイが振り向く。ハボックを見てニヤリと笑った。
「浮気?お前が?出来もしないことを言うな」
「な……ッ?」
「グダグダ言わずにイイ子にして待っていろ」
 ロイはそう言うと丁度迎えに来た車に乗って行ってしまう。
「大佐の……大佐の馬鹿ァッッ!!」
 あっと言う間に小さくなる車に向かって空しく怒鳴り声を張り上げたハボックは暫くその場に立ち竦んでいたが、やがて肩を落として家に戻る。ボスンとソファに腰を下ろして、ハボックはクッションを抱き締めた。
「大佐の馬鹿……今日はずっと二人でいられると思ったのに」
 六月八日、二人にとって特別な日であるこの日を毎年色んな形で祝ってきた。今年は何ヶ月も前から二人一緒に休みを取ろうと決めて、絶対に仕事を残したりしなよう頑張ってきたのだ。
「大佐……」
 クッションをギュッと抱き締めてハボックはロイを呼ぶ。そうすれば出かけ際ニヤリと笑ったロイの顔が浮かんで、ハボックは眉間に皺を寄せた。
「いいもん、大佐が仕事だって言うならオレ一人で遊んでやるッ!オレだって女の子の一人や二人ひっかけられるんだからなッ!」
 一人置いてきぼりにされた上、自分に浮気は出来ないと決めつけられた事にムカムカしてハボックはそう言って立ち上がる。抱き締めていたクッションを投げ捨て、ハボックは足音も荒く家を飛び出した。

「オレだって大佐とつきあう前は結構モテたんだからなッ」
 ハボックはフンと鼻を鳴らして通りを歩いていく。ちょっと考えて若い女の子に人気のショップが立ち並ぶモールへと足を向けた。
 雨の季節を前に貴重な晴れを楽しもうとショップに挟まれた通りには結構な人が出ている。ハボックはクレープショップに並ぶ女の子たちに近づいていった。
「やあ」
 にっこりと笑いかければ友達同士おしゃべりしていた女の子たちがハボックを見る。驚いたように目を見開いた女の子がサッと顔を赤らめた。
「ここのクレープ美味しいんだって?オススメ、教えてくれる?」
 おごるからさ、と笑いかければ女の子たちが顔を見合わせる。一人の子が店のメニューを指さして答えた。
「一番の人気はこれですけど……私たち、クレープよりアイスかなぁって話してて」
「えっ?あ、ちょっと!」
 じゃあ、とそそくさと言ってしまう女の子たちの背を見送ってハボックはため息をつく。その後も何人も声をかけてみたものの、反応は似たり寄ったり。浮気どころか一緒にお茶も飲む事も出来なかった。
「なんで……?」
 声をかけた時の反応は決して悪くない。嫌そうな素振りもなければ、むしろ顔を赤らめたりしてハボックに気があるようにさえ思える。だが、どの女の子もハボックの誘いに乗るどころか逃げるように行ってしまうばかりだった。
「クソーッ、これじゃ大佐に馬鹿にされる」
 出掛けに笑っていたロイの顔が思い出されてハボックは悔しそうに爪を噛む。その時、ポツリと頭に当たる感触に空を見上げればいつの間にか曇っていた空からバラバラと雨が落ちてきた。
「うっそ!なんだよ、ゲリラ豪雨ッ?!」
 突然の雨にハボックは慌てて店の軒下に逃げ込む。僅かの間にびっしょりと濡れてしまったシャツを見下ろしてため息をついた。
「もー、サイアク」
 ナンパはちっとも上手くいかない上に突然の雨でびしょ濡れだ。がっかりと肩を落としたハボックは、雨宿りした店が喫茶店だと気づいて扉を押した。
 カランとドアベルを鳴らして中へと入れば店の女の子がハボックを見る。見開く瞳が濡れ鼠の自分を非難しているように感じて、ハボックは肩を窄めて言った。
「ちょっと濡れちゃってるんだけど、いいかな?」
「えっ、あ、はいっ!勿論です、どうぞッ!」
 ハボックの言葉に女の子は弾かれたように答える。案内されたテーブルにつくとホットコーヒーを注文した。
「あーあ……やんなっちゃう」
 折角の日にロイは仕事に出かけ、一人置いてきぼりを食らった自分は一緒にコーヒーを飲んでくれる相手もみつけられないまま濡れ鼠だ。運ばれてきたコーヒーを前にテーブルに頬杖をついてぼんやりと窓から外を眺めていたハボックは、不意にさした影に顔を上げた。
「やあ」
「────誰?」
 親しげに話しかけてきた男をハボックは胡散臭げに見上げる。にっこりと笑って男はハボックに尋ねた。
「一人?」
「そうだけど」
 ハボックの答えに男はテーブルを挟んだ向かいの席に腰を下ろす。他に幾らでも開いている席があるにも関わらず相席してくる男を睨むハボックに構わず、男はニコニコと話しかけてきた。
「一人なら俺と一緒にどっか行かない?」
「は?」
「ちょっとその辺うろうろして……そうだ、その濡れた服の代わりの、プレゼントするよ。映画見てもいいし、その後は一緒に飲みに行かないか?いい店があるんだ。な?そうしようぜ」
「なんでオレがアンタと一緒に……」
 勝手に話を進める男にハボックは眉間に皺を寄せる。だが、目の前の男がさらさらとした黒髪と切れ長の瞳であることに気づいて僅かに目を見開いた。
(ちょっと大佐に似てる……?)
 そう思ってじっと見つめれば男がニッと笑う。テーブルに置かれたハボックの手に己のそれを重ねて言った。
「行こうぜ。雨もあがったみたいだ」
 言って手を引かれるままにハボックは立ち上がる。ハボックの分も一緒に金を払う男についてハボックは店を出た。
「じゃあまず服を買いに行こう。知り合った記念にプレゼントするよ、────えっと……」
「ジャン」
 名を呼ぼうとして口ごもる男にハボックは短く答える。それを聞いて男も笑って言った。
「俺はニコラス、ニコルでいいぜ、ジャン」
「ああ、ニコル」
 頷くハボックの肩を抱いてニコラスはゆっくりと歩き出す。
(オレだって浮気くらいできるんだからなッ)
 ハボックは脳裏に浮かんだロイに向かってそう言うとニコラスについて歩きだした。


いつも遊びに来て下さってありがとうございますv
さて、ロイハボの日ですね!先日のロイの日は尾瀬に行っていてすっかり忘れ去っていたのですが、一応思い出しましたよ!と言いつつ書きあがらなかったんですけど(苦笑)いやあ、思ったより長くなりそうで、端折って書き上げちゃおうかとも思ったのですが、折角だしちゃんと書こうかなぁと。そんなわけで続くですー。なるべく間をおかずに続き書こうと思いますので、よろしければお楽しみ下さいv
2017年06月08日(木)   No.496 (ロイハボ)

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