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2012年03月の日記

2012年03月27日(火)
蒼焔10
2012年03月20日(火)
姿勢
2012年03月19日(月)
暗獣47
2012年03月13日(火)
恋猫26
2012年03月08日(木)
蒼焔9
2012年03月06日(火)
蒼焔8
2012年03月01日(木)
働く軍人さん

蒼焔10
ロイハボ風味

 暫く走れば漸く森が途切れて、街へと下る道に出る。雪塗れのハボックは、道の先に広がる街をじっと見つめた。
 以前一度、ロイを家に送り届けた事があった。あの時人通りの殆どない時分闇夜に紛れて走り抜けた道は、今は雪が降り続いているとはいえそこに息づく人々がが行き交っていることだろう。そんな場所で凍り付いた血を持つ己はどんなにか異質に映るに違いない。だが、腕の中の少年を助ける術を自分は持っておらず、そうであればハボックには躊躇っている隙(ひま)はなかった。
 ハボックはキュッと唇を噛むと街に向かって坂を下る。やがて街の中心を走る通りへと出れば恐怖とも緊張ともつかぬもので、動かぬ心臓がギュッと縮こまった。
 ロイを腕に抱く黒づくめのハボックを行き交う人が不審そうに見る。ハボックは目を合わさないよう顔を俯けて、不自然でない程度の早足で通りを歩いていった。大きな家ばかり並ぶ界隈に入るとハボックは一際大きな屋敷へと向かう。大きな門に手を伸ばすとロイを抱いたまま軽々と門を乗り越えた。雪かきされた後、雪が薄く積もったスロープに足跡を残して玄関の前に立ったハボックは厚い扉を見上げる。どうしようかと迷ったものの、結局ハボックは扉のすぐ側にロイの躯をそっと下ろした。
「ロイ」
 白いロイの顔をハボックはじっと見つめる。額にかかる黒髪を指でそっとかき分けると額に恭しく口づけた。
 このままロイを浚っていけたらどれほど幸せだろう。彼に己の血を分け与え、昏く呪われた眷族に引き入れる事が出来たら、そうしたら────。
 そう考えてハボックは激しく首を振る。もう一度ロイの頬にそっと触れてゆっくりと立ち上がった。そうして。
 ドンドンドン!!
 ハボックは厚い扉を拳で思い切り叩く。中で人の気配がするのを感じるとハボックは扉を叩く手を止めてロイを見下ろした。
「…………」
 何か言いかけて結局なにも言わず、ハボックはロイを置いて扉の前を離れる。門の陰から扉が開いて使用人の男が出てくるのを伺った。
「ロイ様っ?!奥様ッ、ロイ様がッ!!」
 扉のすぐ側に横たわるロイを見つけた使用人の男が中に向かって叫ぶ。中から出てきた使用人たちがロイを抱き上げ家の中へ運び込むのを見てハボックはホッと息を吐いた。もうこれで、ロイは大丈夫だ。己に出来ることはなにもなく、もう二度と会うこともないだろう。
 震える息を吐き出してロイの姿が消えた家の扉を食い入るように見つめていたハボックは、逃げるようにその場を後にした。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手も嬉しいです。

「蒼焔」です。旅先でポチポチ打ってました(笑)早く子ロイから脱したいと思いつつ。もう少しかなぁ。

旅行はじじばば連れて熱海の保養所行ってきました。月曜日だったこともあり、昨日の夜は母と温泉貸切状態でしたよー。気持ちよかったっス。今日は特に予定もたてていなかったので、ハーブ&ローズガーデンに行ったら菜の花が満開でした。お天気もよく、まったり散歩でリフレッシュ出来ましたよ。

以下、拍手お返事です。

嫌がる暗獣ハボを の方

わーい、癒されて頂けてよかったです〜vうふふ、いっぱいムギュムギュもしてやってくださいね。更新、そう言って頂いてありがとうございます。早速綺麗な花と温泉を楽しんで参りました。やっぱり春はいいですねv


2012年03月27日(火)   No.168 (ロイハボ)

姿勢
「大佐、そろそろ時間っス」
 例のごとくノックと同時に執務室の扉が開いて、ロイは眉を顰めて扉を開けた人物を見る。一言言ってやろうと開かれた唇は、だが言葉を発する事なくポカンとと開かれた。
 今日ロイはイーストシティの市庁舎落成式典に来賓として出席する予定だ。ロイは勿論、護衛として同席予定のハボックも祝いの席と言う事で礼服を着用しているのだが。
 普段青い軍服を着ているときは、折角の長身を勿体無いほど猫背に丸め上着のボタンを外してどこかだらしない印象のハボックが、今日は別人のように礼服をピシッと着て背筋をピンと伸ばしている。それだけで見た者に与える印象は180度変わって、物凄くカッコ良かった。
「なんだか随分印象が違うな」
「へ?そうっスか?」
 ロイが素直に感じた事を口にすれば、ハボックがキョトンとして自分を見下ろす。礼服の裾を引っ張り前を見て背中を見て、最後にロイを見て言った。
「どうせ馬子にも衣装とか言いたいんでしょ?」
 唇を尖らせて不貞腐れたようにハボックがロイを睨む。どうせオレなんかとブツブツ言うのを聞いて、ロイが苦笑した。
「そんな事言ってないだろう?」
「言ってなくても聞こえます」
 そういうのを聞いてどこまで被害妄想なんだとロイは吹き出す。クツクツと笑えば益々むくれるハボックにすまんと謝ってロイは笑いを引っ込めた。
「やけに姿勢がいいな。折角背が高いんだ、いつもそうして背筋を伸ばして立っていれば随分印象も違うのに」
 カッコいいぞと笑って言うロイにハボックが顔を赤らめる。ボリボリと頭を掻いて答えた。
「なんかこれ着ると自然と背筋が伸びるんスよね。流石にボタン外しては着らんないし」
「普段着とよそゆきみたいなもんか」
「まあ、そうっスね」
 首を傾げて答えたハボックは壁の時計を見て慌ててロイを急かす。仕方なしにのんびりと立ち上がりながら、ロイは普段より背が高く感じるハボックを見て言った。
「やはり勿体無いな。普段からそうやって立ちたまえよ。いっそ毎日礼服を着たらどうだ?」
「えー、肩凝るからヤダ」
 なんだかしょうもない理由を口にするハボックを連れてロイは廊下に出る。ほんの数歩歩いただけで、ロイは向けられる視線が三割増しで多いことに気づいて眉を顰めた。その視線が向かう先へと目を向ければ斜め後ろに立つハボックと目が合う。眉間に皺を寄せて見つめられて、ハボックは不思議そうに首を傾げた。
「なんスか?」
 黒曜石の瞳でジーッと見つめられてハボックが困ったように笑う。「あの」だの「大佐?」だの言ったハボックが、いい加減反応のないロイに叫び出しそうになった時。
「それを脱げ、ハボック」
「は?」
 やっと口を開いたと思えば訳の判らない命令にハボックはポカンとする。そんなハボックの襟元に手を伸ばすと、ロイは凄い勢いでボタンを外し始めた。
「なっ……?!なにするんスかッ!!」
 いきなり服を脱がされかかってハボックが飛び上がる。身を捩って逃れようとするハボックの襟を掴んでロイが言った。
「脱げと言ってるんだ」
「なんでッ?今から式典行くんスよッ?」
「お前がそれを脱いだら行く」
「はあっ?脱いだら行けねぇっしょ!」
「煩い、ぐちゃぐちゃ言わずに脱げ。みんながお前を見るだろうが」
「いや、みんなが見てるのは大佐が変な事するからッ」
 叫びながら周囲に目をやれば、廊下の真ん中で服を脱げだのなんだの言いながらもみ合う二人に行き交う軍人達が奇異なものを見る目を向けている事にハボックは気づく。妙な注目を浴びてしまって、ハボックは顔を赤らめてロイを振り払おうとした。
「大佐、止めてくださいってば!」
 気がつけばボタンは全部外され上着が肩から落ちそうだ。グイと服を引っ張られて思わずハボックが悲鳴を上げた時、背後から氷点下の声が聞こえた。
「何をなさってるんですか、あなた方は」
「中尉」
 振り向けば冷気を纏ったホークアイがもみ合う二人に氷点下の視線を向けている。普段なら怖いその冷たい表情も今のハボックには女神の微笑みのように見えた。
「中尉〜ッ!大佐がオレの礼服脱がそうとするんですッ!」
 助けてッ、と叫ぶハボックにホークアイがピクリと眉を跳ね上げる。ジロリとロイを見ると更に温度の下がった声で言った。
「大佐、あなたという人は……」
「誤解だっ、中尉!私はただ他の連中にカッコいいハボックを見せたくないだけで――――」
「恥を知りなさいッ、恥をッ!!」
 そう言うのと同時にホークアイの銃が火を噴く。悲鳴を上げて逃げ回るロイを見ながら、もう二度と礼服は着るまいと思うハボックだった。


いつも遊びにきて下さってありがとうございます。拍手も嬉しいです。

先日、久しぶりにストッキングにパンプスはく機会がありましてね。こういうのを履くと自然と背筋が伸びるなぁと思ったもので。自然と胸を張って腹を引っ込め、お尻をキュッと引き締めて立ちますもんね。ダイエットにもいいかもしれない(笑)

ところで今日の更新ですが、なんか定期の更新の方にスイッチが切り替わらずしょうもない日記ばかり書いていたら、もう3時を回ったというのに一文字も書いていない体たらくです。とても更新は無理そうかと(苦笑)ついでに今後の予定を少し。
火曜更新分(空色のカノン、初回衝撃)
本日:休み、27日:旅行中の為休み、3日:帰省中の為休み
土曜更新分(見毛相犬2、セレスタの涙)
24日:多分更新、31日:前日までに書けていればアップしてから帰省します、7日:帰省中に書けていればアップしますが微妙
こんな感じで通常営業になるのは遅ければ4月10日になります。日記はその時次第で……下手したら10日まで動きがないかもしれません(苦笑)まあ、あんまりサボるとサイトの存続自体がどうなるか怪しくなるので(サボり癖をつけると書かなくなる(爆)日記くらいは書きたいと思っています。そんな感じでよろしくお願いします。
2012年03月20日(火)   No.167 (カプなし)

暗獣47
 窓際の椅子で本を読むロイの足下で宝物を並べて楽しんでいたハボックが、何かに弾かれたように顔を上げる。
「ハボック?」
 金色の髪と同じ色をした犬耳をピクピクと動かして首を傾げるハボックをロイが訝しげに呼んだ時、ドンドンッと玄関を激しく叩く音がした。
「……誰だ、こんな時間に」
 チッと舌打ちしたロイが本をテーブルに置き天使の時計に目をやる。くるくると天使が回る時計の針は既に十時を回っており、人を訪ねるには不適当な時間と思えた。
「ぶん殴ってやる」
 物騒な事を呟きながら階段を下りるロイについてハボックも降りていく。ドンドンと扉を叩き続ける音にロイが眉間の皺を深めて扉を開ければ、玄関ポーチに立つ人物にロイは目を見開いた。
「ヒューズ」
 セントラルに住むヒューズが仕事の関係で一週間ほど前からイーストシティに来ているのは知っていた。だが、今回は仕事が立て込んでいると聞いていただけに、夜分の訪問に驚いてロイはヒューズを見た。
「どうした、こんな時間に?」
 そう尋ねたがヒューズはなにも答えない。視線をロイの脚にしがみついて覗いているハボックに向けたと思うと、ヒューズはドンッとロイを突き飛ばした。
「うわッ?」
「ハボックちゃんッ!!」
 ヒューズは大声で叫ぶとびっくりして硬直しているハボックをヒシと抱き締める。小さな体をギュウギュウと胸に抱き込んでその金髪に髭面を擦りつけた。
「ハボックちゃんっ、マース君はねっ、マース君はねっ」
 そう叫びながらヒューズはハボックを抱き締める腕に力を込める。そうすればヒューズの胸に顔面を押しつけられたハボックがジタバタともがいた。
「やめんかッ、ヒューズ!ハボックが窒息するッ!!」
「あ」
 突き飛ばされて尻餅をついたままロイが怒鳴る。そうすれば漸くヒューズは今の状態に気付いて抱き締める腕を弛めた。
「ろーいー」
 プハッとヒューズの胸から顔を上げたヒューズが助けを求めてロイを呼ぶ。腕を弛めたもののハボックに髭面をスリスリと擦りつけるヒューズの頭を、ロイは立ち上がるとゴンと殴った。
「いい加減にしろ、お前はッ!」
「いいだろッ、俺は疲れてんだよっ、癒して貰ってんだよっ、ハボックちゃんに!」
 ロイに向かってキーッと喚くと「ハボックちゃあん」とハボックをムギュムギュするヒューズに、ロイは眉を顰める。いつにない友人の疲れた顔にロイは一つため息をついて言った。
「とにかく力任せにハボックを抱き締めるのをやめろ。ハボックが苦しがってる」
「あー」
 言われてヒューズは腕の中のハボックを見る。苦しいのと滑らかな肌に髭面をこすりつけられて痛いのとで涙目になったハボックと目があって、ヒューズは申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめんね、ハボックちゃん」
「とにかくこっちに来い。こんなところじゃ話もできん」
 ロイはそう言うとリビングへと足を向ける。ヒューズはハボックを抱き上げ、ロイに続いてリビングに入った。
「どうした、一体」
 手早くハーブティーを淹れてロイが尋ねる。ソファーに腰を下ろしてハボックを膝に載せたヒューズはカップを受け取りながら答えた。
「今回仕事が激務でさぁ、まあそれはしょうがないんだけど俺、本当は今日でセントラルに帰る予定だったんだよ」
「帰れなかったのか」
 言われてヒューズは頷く。ズズッとハーブティーを啜ってヒューズは言った。
「帰ったら午後は休みを取れる筈だったんだ。エリシアちゃんを動物園に連れていってやる約束だったんだけどな」
「それは残念だったな」
 気の毒だとは思うが仕事なのだから仕方のないことだし、日を改めて連れていってやればいいだけの話ではないのだろうか。ロイがそう思った時、ヒューズが言った。
「電話してエリシアちゃんに仕事で帰れなくなったから動物園はまた今度って言ったらさあ、エリシアちゃんってば怒りもせずに『パパ、お仕事頑張ってね』だって!」
「父親と違ってよく出来た娘だな」
 サラリと酷いことをロイが言う。だが、反論する気力もないのかヒューズはため息をついて言った。
「それ聞いたらグチャグチャ勝手なことばっかり言って仕事の邪魔する奴らにスッゲー腹が立つわ、ムカつくわでなんかもー疲れちゃって」
 ヒューズはそう言ってゴクゴクとハーブティーを飲み干す。きっと昼間は何でもない顔で勝手な奴らを去なしながら仕事をこなしていたのであろう友人の苦労を思って、ロイは言った。
「大変だったな、ハーブティーもう一杯飲むか?」
「頼む」
 ロイは頷いて空のカップを受け取りハーブティーを注ぐ。カップを渡せば今度はゆっくりと飲みながらヒューズが言った。
「だからちょっとハボックちゃんに癒して貰いたくなってさ」
 そう言って苦笑するヒューズにロイはやれやれとため息をつく。ヒューズはカップをテーブルに置くとロイを見て言った。
「悪かったな。愚痴ったらすっきりしたわ」
 ヒューズはニヤリと笑って言うとフゥと一つ息を吐く。じゃあ帰ると立ち上がろうとして、ヒューズはキュッと腕を掴んできたハボックを不思議そうに見た。
「ハボックちゃん?」
 ハボックは空色の瞳でヒューズをジッと見ると小さな手を伸ばす。その手でヒューズの頭を宥めるようにポンポンと叩いた。
「ハボックちゃん……ッ、もしかして慰めてくれてるのっ?」
 そう言われてハボックはニコッと笑う。それからチュッとヒューズの頬にキスをした。
「ろーい」
「……そこはマース君って言って欲しかったなぁ」
 ニコニコと笑うハボックにヒューズが感動に目を潤ませて言う。ハボックの体をギュッと抱き締めてヒューズは囁いた。
「ありがとう、元気でた」
 そう言ってヒューズが笑うのを見たハボックは膝から降りてロイに駆け寄る。「ろーい」と言いながら手を伸ばしてくる小さな体を抱き上げて、ロイはヒューズを軽く睨んだ。
「まったく、破格の扱いだな」
「へへへ、羨ましいか」
「煩い、とっとと帰れ、馬鹿者」
 ヒューズはいつもの笑みを浮かべてソファーから立ち上がる。リビングを出て玄関に向かいながらヒューズは言った。
「邪魔したな」
「全くだ」
 期待などしていなかったが、やはり思った通りの返事が返ってきてヒューズは「あはは」と笑う。玄関を開けて外へと出ながらヒューズは振り向かずに言った。
「ありがとな」
 パタンと扉が閉まって靴音が遠ざかる。その音が完全に消え去ると、ロイは一つ息を吐いた。
「まったく、サービスし過ぎだぞ、ハボック」
 そう言って腕の中のハボックを睨めば。
「ろーい」
 にっこり笑ってハボックがロイの頬にチュッとキスをした。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、いっつも元気とやる気を貰ってます、嬉しいですv

「暗獣」です。暗獣ハボを抱いて癒されたいというコメント頂いたもので(笑)お疲れの全ての方に、ハボックのなでなでとチュウをv

ところで、昨日は春コミでしたね。参加された皆様にはお疲れ様でした。私もちょっくら遊びに行ってきました。ふふふ、例によってワガママ言ってセロリさんにラブいロイハボ描いて頂いちゃいましたッvもうシアワセ〜vvロイハボ本数冊とハボックのアンソロをゲットして参りましたよ。わーいv後は友達のお使いでタイバニ並んできました。いやあ、旬のジャンルは凄いですね!楽しそうだけどハマったら大変そうです(苦笑)ともあれ本買えて嬉しいーvこれからじっくり読みますv

以下拍手お返事です。

暗獣ハボを抱いて の方

ハボックは非売品ですが、なでなでとチュウをお届けします(笑)少しでも癒されて頂ければ嬉しいですv
2012年03月19日(月)   No.166 (カプなし)

恋猫26
ハボロイ風味

「くしょんッ!」
 司令室の一角、窓辺のソファーに腰掛けたロイが一つくしゃみをする。そうすればブレダと書類を見ながら話をしていたハボックが、パッとロイを振り向いた。
「寒いっスか?ロイ」
 そう言うと手にした書類をブレダに押しつけてロイの所にやってくる。心配するように覗き込んで、ハボックはロイの前髪を大きな手でかき上げた。
「熱は……ないっスね」
 コツンと額と額を合わせてそう呟くのを聞いて、ロイは顔を赤らめて慌てて言う。
「大袈裟だな、風邪なんてひいてないぞ」
 くしゃみ一つでやたらと心配する様子に、ロイが苦笑すれば書類を手にやってきたブレダが言った。
「でも、今流感が凄く流行ってるんだろう?」
「そうなんだよ、小隊の奴らの中にももう何人もかかってるのがいてさ。ロイ、結構あっちに行ってただろう?」
「それならお前だって条件は同じじゃないか」
 自分がかかるならハボックだってかかるんじゃないかと言うロイに、ハボックが胸を張る。
「オレは頑丈に出来てるっスから。ロイはちっこいし、流感なんてかかったら大変っスよ」
 大丈夫かなぁとハボックが心配していると、丁度戻ってきたホークアイが聞き咎めて言った。
「あら、ロイ君、風邪なの?」
「まだ判んないっスけど」
「気をつけた方がいいですよ、今悪いの流行ってるし」
「怪しいと思ったら大事にすべきです」
 フュリーやファルマンにまで心配されてロイは顔を赤らめる。
「ちょっと寒気がしただけだ。大したことは────」
「寒気!大したことっスよ、それは!」
「大変、薬を貰ってきた方がいいわ」
「僕、医務室行って貰ってきます!」
 ホークアイの言葉を受けてフュリーが司令室を飛び出して行こうとする。開けようとした扉が廊下側から開いてヒューズが入ってきた。
「うう、寒いッ!もう春だってのに……ハアックションッ!!」
 もの凄い勢いでくしゃみをする上官にフュリーは露骨に嫌な顔をする。
「もう、中佐。風邪ですか?うつさないで下さいねッ!」
「え?ああ……って、おい、どこに行くんだ?そんなに慌てて」
 心配するどころか冷たい言葉をぶつけてくる部下に肩を落として尋ねるヒューズにハボックが答えた。
「ロイが風邪引きそうなんスよ。フュリー、早く薬貰ってこい」
「はいっ!」
 ハボックに頷いてフュリーは今度こそ司令室を飛び出していく。その背を目を丸くして見送ったヒューズは、ロイを取り囲んで口々にああした方がいい、こうした方がいいと言い合う部下を振り向いた。
「なあ、俺も風邪引きそうなんだけど」
「だったら薬貰ってくればいいっしょ!」
「ロイ君、寒くない?これを羽織っておくといいわ」
「中尉、俺もちょっと寒いなぁ」
「それならコートでも羽織ってらして下さい!」
 一生懸命体の不調を訴えてみるものの、誰一人まともに取り合ってくれない。そうこうするうちにバタバタと戻ってきたフュリーが、ドンッとヒューズを突き飛ばしてロイに薬を差し出した。
「これっ、薬と水!」
「よし、ほら、飲んで!ロイ」
「なあ、俺にも薬────」
「「「煩いッッ!!」」」
 話しかけようとした途端、一斉に怒鳴りつけられる。ウッと仰け反って、部下達にあれやこれやと大事にされるロイの可愛らしい猫耳と揺れる尻尾を見て。
「俺も猫耳つけて尻尾生やそうかなぁ……」
 涙目になりながら半ば本気で呟くヒューズだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。前回更新後は拍手たくさんありがとうございますーっ!やはり直後に反応頂くと、とってもとっても嬉しいですッvv

「恋猫」です。みんなに愛されてる猫ロイってことで(笑)これもそろそろ話を進めないとだなぁと、算段しているところです(ふ)

以下、拍手お返事です。

見毛相犬2がたまらなく好きです  の方

うおー、マジっすか〜?やーん、嬉しいです!しかも二回も言って貰っちゃったv最近ちょっとテンション下がり気味だったのですが、おかげさまでビョーンと一気に上がりました(笑)これからも楽しんで頂けるよう頑張りますっvv
2012年03月13日(火)   No.165 (ハボロイ)

蒼焔9
ロイハボ風味

 窓ガラスの向こう、降りしきる白い雪の中に黒々と横たわる森をハボックはじっと見つめる。火の気のない部屋は外と大して変わらない寒さだったが、体温を持たない身にはなんの支障もなかった。
「寒い……」
 それでもハボックはそう呟く。寒いのは体ではなく、自ら望んでとはいえ愛する者を手放してしまった心の方だった。
「いつまでも女々しいな、オレは」
 忘れなくてはと思えば思うほど脳裏に浮かぶのはあの強い黒曜石の輝きだ。もう忘れてしまったほど遠い昔、この闇の一族の末に加えられた時から誰かを愛することはやめてしまった。ハボックにとって温かい血肉と限りある命を持った者こそ心惹かれる存在であったが、それは同時に決して同じ時を生きられない存在であったからだ。人は勿論鳥も花もハボックと共にあることは出来ない。だからこそこの昏く冷たい屋敷で息を潜めるように終わることのない時を積み重ねてきたというのに。
 あの日出会ったロイと優しい時を過ごすうち、ハボックは夢見てしまった。もしかしたらこのまま一緒に過ごしていけるかもしれないと。そんなことなど決してありはしないと判っているのに。
「忘れなきゃ。もうロイはとっくにオレのことなんて忘れてるに決まってるんだから」
 好奇心旺盛な子供なら毎日出会う新しい事柄の中で、己の事など瞬く間に忘れてしまうに違いない。
 そう考えたハボックが、緩く首を振って森を視界から閉め出そうとそっと目を閉じた時。
『ハボック……』
 どこからか呼ぶ声が聞こえてハボックはハッと目を開けて外を見る。相手を想うばかりに聞こえた幻聴と窓から目を背けようとすれば、今度はさっきよりもはっきりと聞こえた。
『ハボック……ッッ!!』
「ロイ……」
 そんな筈はないと思うもののハボックは雪の向こうに広がる森から目を離せない。暫くの間食い入るように窓の外を見つめていたハボックは、次の瞬間弾かれたように部屋を飛び出した。階段を駆け降りホールを駆け抜け、玄関を叩きつけるように開けるとそのまま外へと走り出る。屋敷をその白い(かいな)に閉ざす雪の中に踏み込むと、全速力で走った。
「ロイっ!返事をしてっ、ロイッ!!」
 ザクザクと雪を掻き分け森の中を進む。深く降り積もる雪も視界を閉ざすように雪を吹き付けてくる風も、ロイを探して突き進むハボックには何の妨げにもならなかった。
「ロイッ!!」
 湖の畔を抜け街に続く道へと足を進めたハボックは、幾らも行かないうちに雪の中に半ば埋もれるように倒れた人影を見つけた。
「ロイ……?ロイッ!!」
 慌てて駆け寄りロイの上に降り積もる雪を払いのけその体を抱き上げる。まさかと少年の口元に当てた手のひらで微かな呼吸を感じ取って、ハボックはホッと息を吐いた。とはいえ。
「このままじゃ死んじまう」
 呼吸は浅く鼓動は弱い。この間のようにただ体を暖めるだけでは駄目で、きちんと手当をする必要があるだろう。
「ロイ……」
 ハボックは森の外へと向かう道を見据えるとロイを抱えて立ち上がる。そうしてもう殆ど消えかけたロイの足跡を辿るように、街へと駆けていった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、嬉しいですー、頑張りますv

「蒼焔」です。先が楽しみと言って頂いたので、いい気になって書いてみました(笑)

以下、拍手お返事です。

差し出がましいかと思いましたが… の方

ありゃ、本当だ。未来日記ならぬ未来更新になってますね。つか、私、カレンダー確かめて「今日は10日だよね」と思いながら更新日書いてましたよ(爆)どうも物凄く土曜日な気分だったようです(苦笑)直しておきました、ありがとうございます。「蒼焔」頑張りますー、これからもよろしくお付き合いお願いしますv
2012年03月08日(木)   No.164 (ロイハボ)

蒼焔8
ロイハボ風味

 ザクザクと雪を踏み分けてロイは湖への道をたどる。暖かい季節は緑が生い茂っていた道は、雪が深く降り積もり進めば進むほど歩くのが困難になっていた。
「くそッ」
 今では腿の辺りまで雪に埋もれながら、それでもロイは進むのをやめなかった。冷静に考えればこれ以上進むのは到底無理で、今すぐ引き返さなければ早晩戻るのも難しくなるのは目に見えていた。それでも。
「絶対ハボックに会うんだ」
 ロイは白い息と共にそう言葉を吐き出す。手で空気を漕ぐようにして必死に前へ前へと歩いてきたロイは、ハアハアと息を弾ませて立ち止まった。
「あとどれくらいだ?」
 そう呟いてロイは辺りを見回す。だが、雪に埋もれた森は何処も彼処も同じに見えて、距離間が全く掴めなかった。
「湖まで行けばきっと何とかなるはずなんだ」
 肩で息をしながらロイは呟く。キッと正面を見据えて再び歩きだしたロイは、だが数メートルも行かないうちに雪に足を取られて倒れてしまった。
「あっ!」
 慌ててついた手は雪の中にズブズブと潜り込んで、ロイは雪に埋もれてしまう。もがくようにして何とか起きあがったものの、体は雪塗れでコートの中にまで雪が入り込んでしまっていた。
「ちくしょう……」
 ロイは顔や髪についた雪を手のひらで払う。中に入り込んだ雪が冷たくて、ロイはコートを脱ぎ捨ててしまった。
「歩いてれば暑くなる」
 実際雪の中を歩いて息があがった体は内側から発する熱で暑くなってきている。ロイは投げ捨てたコートをそのままに、雪をかき分けて足を進めた。だが。
「ハアッハアッ!!」
 踏み出した足を軸にしてロイはもう片方の足を前に進めようとする。だが、長いこと雪をかき分けて歩いてきた足はすっかりと冷えきって鉛のように重たく、持ち上げることが出来なかった。火照った顔だけが熱く激しい呼吸を繰り返す体は氷のように冷たい。遂にロイは立っていることすら出来なくなり、雪の中に膝をついた。
「ハアッ……ハッ……」
 梢の向こうにロイは湖を探す。そのすぐ畔に立つ姿に向かって、ロイは手を伸ばした。
「ハボック……ハボック……ッッ!!」
 降り出した雪の向こうに浮かぶ優しい幻影に腕を差し伸べたロイは、冷たい雪の中に倒れ込んで意識を失った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手も嬉しいです。正直者なのでやはり拍手やコメント頂くと「書くぞ」という気持ちになります(笑)

「蒼焔」です。他の日記連載を更新したかったのですが、「パワー!」も「蒼牙」もまだ読み返してないもので(苦)基本書いている季節に話の中の季節も左右されるのですが、この話はまだ真冬っス。まあ、話の展開上仕方ないというか、さっさと話を進めろって事ですね(苦笑)頑張るー。でもって今日は「菫2」も頑張りました。相変わらずですが。早く話を進めたいと思いつつ、もう少しが続くと思われ(苦笑)お付き合い頂ければ嬉しいです。
2012年03月06日(火)   No.163 (ロイハボ)

働く軍人さん
「もうすぐ春だって言うのに、なんなんですかね、この雪」
 ザクザクとスコップで雪の混じった土を掘りながらチェンがぼやく。同じようにスコップで掘った土を土砂運搬用の一輪車に放り込みながらハボックが言った。
「仕方ないさ、お天道様はオレ達にゃどうしようもないんだから」
「どうしようもないものなら他にも色々ありますけどねっ」
 彼女とか金とか、とワイワイと言いながら作業する部下たちの声を聞いて、ハボックは苦笑する。体を起こした拍子にふと路地の方へ目をやれば、女性が一人で道の雪かきをしているのが目に入った。
「隊長?どうかしたんですか?」
 作業の手を止めてしまったハボックにチェンが不思議そうに聞く。
「いや、ちょっと」
 と、ハボックははっきりと答えぬままスコップ片手に路地へと入っていった。雪かきをする女性の側に行くと積もった雪にザクッとスコップを差し込みながら尋ねる。
「この雪、こっち積んじゃっていいんスか?」
「えっ?」
 突然のことに驚いて女性は雪かきの姿勢のままハボックを見た。
「なに言ってるんですか、隊長。こんな狭いとこに雪積んじゃったら狭いし危ないでしょうが」
「チェン」
 女性が答える前に背後から声がしたと思うとチェンがスコップを手に立っている。そのすぐ後ろからサンダースが一輪車を押して路地に入ってきながら言った。
「そうそう、ほらこれで外に出しちまいましょう」
「そうだな」
 そう言う部下たちにニッと笑って、ハボックはスコップで雪を掬っては一輪車に積み上げる。三人がかりでスコップで積んだ雪を一輪車で表の道に運べば、路地裏の雪はあっと言う間に片づいてしまった。
「じゃあ、オレ達はこれで」
「滑らないように気をつけてくださいね」
 ハボックたちは口々にそう言って表の通りに出ていく。その背に女性が感謝の言葉を投げかけてくるのに、三人は片手を上げて答えると通りに戻った。
「さあて、こっちもさっさと片づけるぞ!」
「はぁーい」
「よっしゃ、あそこまでどっちが先に片すか競争な!」
「おーし、勝ったら一杯奢れよ!」
「って、お前ら!泥飛ばすなっ!」
 そうして今日もアメストリスの人々のため汗水たらして働く陽気な軍人さんたちの声が、春がすぐそこまでやってきているイーストシティの街に響くのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、パチパチ嬉しいですv

昨日は昼から雨と言う予報に反して三時過ぎまで雪が降り続いて雨にならずにやんでしまったので、思ったより積もってしまったんですよね。このままほっといたら翌朝は凍って悲惨な事になるのは目に見えていたので仕方なしに雪かきに。丁度出たら隣の奥さんも雪かきに出てきたので、二人してガコガコ雪かきしてたんですよ。うちの前は一応公道なのですが、うちがどん詰まりの所謂デッドエンドで、雪かき始めると結局他のうちの前も全部雪かきすることになるんですよね(苦笑)隣の奥さんと「ここんち車使うよねー、だったら雪かきしといた方がいいよねー」って、他のうちも玄関前だけでなく雪かきしてたらたまたまこの日、表の通りで水道工事してたオニイチャンがやってきて、雪かきを手伝ってくれたのでしたー。少し後にはオジサンが一輪車押してやってきて積んでた雪も運び出してくれて、いやあ、滅茶苦茶助かりましたよ!それにやっぱりプロというか、とにかく速い!あっという間に片しちゃうんだもん。凄いわー。サーッとやってきてサーッと片付けてサーッと去っていって、滅茶苦茶カッコいい土建屋さんたちでしたー(笑)
2012年03月01日(木)   No.162 (カプなし)

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