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2014年11月の日記

2014年11月29日(土)
橙色の秋に10のお題8
2014年11月26日(水)
橙色の秋に10のお題7
2014年11月19日(水)
新・暗獣55
2014年11月18日(火)
睡魔に負けたので
2014年11月16日(日)
橙色の秋に10のお題6
2014年11月13日(木)
橙色の秋に10のお題5
2014年11月10日(月)
橙色の秋に10のお題4
2014年11月07日(金)
橙色の秋に10のお題3
2014年11月06日(木)
橙色の秋に10のお題2
2014年11月01日(土)
新・暗獣54

橙色の秋に10のお題8
8.sentimental

「はあ……」
 と、ハボックは窓の外に張り出した枝を見てため息をつく。枝の先にはたった一枚取り残された赤い葉が、今にも散りそうになりながらも必死に枝にしがみついていた。
「あの葉っぱが散ったらオレの命も散っちゃうんだ……」
 そう呟いて、ベッドに横たわったままそっと目を閉じる。その途端ベッドサイドでプッと吹き出す声がした。
「そこは笑う所じゃねぇっしょ」
 ハボックはベッドの側に引き寄せた椅子に座るロイを睨む。そうすればロイはまるで悪びれた様子もなくクスクスと笑いながら答えた。
「いや、笑うだろう?普通。ただの風邪だぞ」
 大袈裟な、とロイは読んでいた本のページを捲る。答えは返すものの本から視線を上げようとしないロイの横顔を見ながらハボックは言った。
「だって熱があるし」
「たかが三十八度の熱だろう?」
「喉だって唾飲む度ズキズキするし」
「ちょっとばかり腫れてるだけだ」
「体の節々が痛いし」
「熱が下がりゃすぐ治る」
 一つ一つずつ辛いところを主張してみたが悉く切り捨てられてハボックはムゥと口を噤む。窓の外に視線を戻して言った。
「やっぱあの葉っぱが散ったらオレも死んじゃうんだ」
「だからどうしてそうなるんだ」
 呟く悲しげな声にロイが漸く本から顔を上げる。拗ねたように向けられた背中にロイが言った。
「そもそもそんなセンチメンタルな事を言う柄じゃないだろう?」
 そう言うロイを空色の瞳が肩越しに見る。恨めしげに見上げてくるそれにロイは手を伸ばして金髪をくしゃりと掻き混ぜた。
「錬金術で葉っぱを増やしてやろうか?」
「大事な一枚をうっかり焔で燃やされそうっスからやめて」
 そんな事を言われて眉をしかめるロイにハボックが言った。
「本ばっか読んでかまってくんないし」
「あのなぁ」
 デカイ図体で唇を尖らせて言うハボックにロイはため息をつく。ロイとしてはこうして側にいるだけで十分構っているつもりなのだが病人の基準ではそうはならないらしい。
「仕方ない奴だな、ちょっと待ってろ」
「大佐?」
 ロイは言って部屋を出て行ってしまう。一つため息をついてハボックが窓の外の葉っぱを眺めていれば、少ししてロイが戻ってきた。
「リンゴすりおろしてきたぞ」
「えっ、リンゴ?」
 パッと弾かれたように振り向くハボックに手を貸して体を起こしてやる。座りやすいよう背中にクッションを当てると、ロイは椅子に座ってすりおろしリンゴの器を手に取った。
「ほら、あーん」
「うわあ」
 子供のようにスプーンで掬ったリンゴを口元に差し出されてハボックが顔を赤らめる。
「食うのか?食わんのか?」
「――――いただきます」
 それでも黒曜石の瞳に軽く睨まれて、ハボックはおずおずと口を開けた。
「おいしい……もっと」
 口内に広がる爽やかな甘みと腫れた喉をひんやりと冷やす喉ごしにハボックは甘えるように口を開く。次々と差し出されるまま口にすれば器はあっと言う間に空になった。
「もっと食いたいっス」
「リンゴ一個分だぞ。余ったら食べようと思ったのに」
 余るどころかペロリと全部食べられて、ロイは残念そうに空になった器を見る。それでも満足そんな笑みを浮かべるハボックを見れば、まあいいかと肩を竦めた。その時。
「あっ!」
 窓の外に目をやったハボックが声を上げる。空色の視線を追えばさっきまでしがみついていた筈の葉がなくなってすっかり丸坊主になった枝が見えた。
「散ったな」
「――――っスね」
「で?お前も散りそうか?」
 意地悪くニヤリと笑ってそう聞いてくる黒曜石をハボックは睨む。ブランケットを引き上げ目だけ覗かせて言った。
「リンゴの肥料貰ったから」
 平気とモゴモゴ言うハボックの金髪をロイは掻き混ぜる。
「それならせっせと肥料をやることにしよう」
「次の肥料は煙草がいいなぁ」
「お前なぁ」
 そんな事を言うハボックにやれやれとため息をつくと。
「これで我慢しておけ」
 顔を寄せてそっと口づけるロイだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになってます。そして、62万打ありがとうございます〜!鋼も最近はサイトさまがすっかり減った中で変わらず続けて行けますのもこうして皆さまが遊びに来て下さるからと、本当に感謝しております。もっとハボックを書きたいなぁと思っておりますので、どうぞこれからもお付き合いのほどよろしくお願い致します!!

秋お題八つめ「Sentimental」です。風邪でちょっぴり気弱なハボックでセンチメンタルしようと思ったのですが、ただのラブラブになりました(苦笑)すりおろしリンゴ食べたい(笑)しかし、明日で11月も終わり、とてもあと2個書けると思えない……12月入ってからでもいいかなぁ(爆)

ところで、今ダンナがちょっとばかり入院しておりましてね。手術も済んで多分来週には退院。そんなわけでちょっと今週来週とばたついてますー。日記は病院への往復の電車でチマチマ書いてたんですが、更新はどうなるかなぁ。とりあえず今セレスタは書いてるんですが、FBまで手が回らなそう(苦)11月、全然更新してませんね……申し訳ないです。

以下、拍手お返事です。

620000打おめでとうございます♪ の方

いつも本当にありがとうございます!!いやもう、62万だって!自分でもよくここまで来られてるなぁと感動しています。これからも是非是非お付き合い下さいねvv
2014年11月29日(土)   No.430 (カプなし)

橙色の秋に10のお題7
7.寒い?

「まったく、なんだってこんな時に限って」
 ロイは口の中でブツブツと文句を呟きながら足早に歩いていく。灰色に垂れ込めた空からはしとしとと冷たい雨が降り続いて、空気は初冬の様相を見せていた。
『明日は昼前に雨がやんだらその後は秋晴れですって。大佐の用事が済んだらちょっと出かけましょうよ』
 夕べ、ラジオから流れる天気予報を聞いたハボックがロイを誘った。ここのところ働きづめで二人でゆっくりする時間もとれなかったから、それもいいかとロイの用事が済む時間にあわせて待ち合わせをしたのだが。
 昼にはあがるはずだった雨はやむ気配を全く見せないまま降り続いている。その上ロイの用事は思いの外時間がかかって、余裕を持って決めたはずの約束の時間を一時間も過ぎてしまっていた。待ち合わせた公園の花時計は屋外で連絡の取りようもない。
 ロイは駅前で買った傘を差して歩いていく。どれほど冷たい雨が降っていようとハボックが約束の場所から動かずに待っている確信がロイにはあった。そして。
「やっぱり」
 公園の入口をくぐり花時計が見えるところまで来たロイは足を止めて呟く。花時計の前では背の高い男が両手をポケットに突っ込んで寒そうに首を窄めて立っている姿があった。
 ロイは足早に近づくとハボックの前に立つ。ロイが近づいてくるのに気づいたハボックが、その場から動かずに顔を歪めた。
「大佐ァ」
 どうやら笑みを浮かべようとして寒さに強張った顔の筋肉が上手く動かなかったらしい。ロイはそんなハボックを睨みつけて口を開いた。
「この馬鹿犬ッ!!」
「うわあ、フツー待たせた相手を罵ります?」
 ひでぇとハボックが情けなく眉を下げる。ロイはハボックの濡れそぼって額に貼り付いた金髪を掻き上げて言った。
「傘を買いに行くなりどこか雨宿りが出来る場所で待てばいいだろうッ?」
「でも大佐、オレがここにいなかったら帰ったっしょ?」
「うっ」
 確かにここに来てハボックがいなかったら大人しく待つなんてことはしないだろう。そんな己の身勝手さの自覚がロイにはあった。
「どうせ雨なんだ。待ち合わせたところで出かけずに家に帰るしかないだろう?」
「いいんスよ、雨でも。大佐と一緒に過ごすことが目的なんスから」
 そんな風に返されてロイは目を見開く。ハボックはにっこりと笑って言った。
「でも、来てくれてよかったっス。流石にそろそろきつくなってきたから」
 そう言うハボックの体が小刻みに震えていることにロイは気づく。傘を持っていない方の腕を伸ばしてハボックの体を引き寄せた。
「寒いか?」
「さっきまでは。でも今は寒くないっス」
 大佐が来てくれたからと笑うハボックにロイは目眩がする。抱き締めたハボックの唇に己のそれを重ねてロイは言った。
「行くぞ」
「帰るんスか?」
「待たせた詫びに服を一式買ってやる。着替えて茶店で熱いココアでも飲んで、あったまりながらどこへ行くか考えよう」
「わあ、大佐、太っ腹!」
 言って笑う空色に笑みを返してロイはハボックを促して歩き出す。ハボックの上に傘を半分差し出せば、ハボックがロイを見て言った。
「いいっスよ、どうせもう濡れてるんだし」
「煩い、いいから入っておけ」
「大佐、くっついたら寒くね?」
「お前の側は暑いくらいだ」
 フンと正面を見つめたまま答えるロイにハボックが嬉しそうに笑う。
「大佐、大好きっスよ」
「くっつくな、馬鹿犬!濡れる!」
 ハボックがギュッと腕を絡めればロイがギャアと悲鳴を上げて。
 冷たい雨の中、そこだけは暖かい空気に包まれながらロイとハボックは一つ傘に身を寄せあって歩いていった。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、とっても励みになります、嬉しいですv

お題七つめ「寒い?」です。こういうセリフ系のお題って書きにくい……。東京は昨日今日と冷たい雨なもんでこんな話になりました(苦笑)ハボは約束の時間過ぎても待っていそうだけど、ロイは待ってくれないだろうなぁって(笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

暗獣、やっぱりはぼっくは小さくないとはぼっくじゃないですよね(笑)風、ロイのいいところは顔オンリー?き、きっと他にもいいところがあるんですよ――多分(爆)セレスタ、やーっとここまで来ましたよ!長かった……。あー、暇暇じいさん、どうしますかね(苦笑)やはりロイに特製ダッチワイフでも錬成してもらうしか(爆)
2014年11月26日(水)   No.429 (カプなし)

新・暗獣55
「おい、ハボック?」
 ロイは大きな声でハボックを呼びながら寝室の扉を開け部屋の中を見回す。今朝起きた時にはいた筈の小さな姿が見えず、ロイはベッドに近づくとその下を覗き込んだ。
「いない……下にいるのか?」
 リビングにはいないと思ったから上がってきたのだが、どうやら勘違いだったらしい。ロイは階段を降りてリビングに戻った。
「ハボック、いるのか?」
 ロイは言いながらリビングを見回す。カーテンの陰を覗きローテーブルの下も見たがやはりハボックの姿はなかった。キッチンにもダイニングにも洗面所にもトイレにも見あたらず、ロイは最後に残った庭に出る。吹き抜ける冷たい風に身を縮こまらせながら、ロイはハボックの姿を探した。
「ハボック、どこだ?」
 まさか外には出ていないだろうと思うものの、俄かに不安になりながらロイはハボックの姿を探す。こんなに探しても見つからないのはもしかして誰かに連れ去られてしまったのかもと、慌てて門に向かおうとしたロイは、植木の根元の落ち葉に混じってちょこんと鎮座する黒い毛糸玉を見つけた。
「ハボック!こんな所にいたのか」
 ホッと息を漏らしてロイは言う。漸く見つけたハボックにロイは言った。
「珍しいな、そんな格好でいるなんて」
 偶には元々の毛糸玉の姿になることはあるが、ロイの前では小さな子供の姿でいるのが殆どのハボックだ。珍しく毛糸玉になったハボックをロイが手を伸ばして拾い上げた時、カサリと音がして植え込みの間から毛糸玉が姿を現した。
「えっ?」
 てっきりこれがハボックだと思ったがただの毛糸玉だったのかとロイは手の上の毛糸玉と現れた毛糸玉を見比べる。毛糸玉を持ったまま出てきた毛糸玉に手を伸ばした時、カサリと落ち葉を揺らしてもう一匹毛糸玉が現れた。
「ええッ?」
 ギョッとして手を引っ込めたロイの視線の先、更にもう一匹毛糸玉が現れる。それに続いてもう一匹、更に一匹と出てきて毛糸玉は全部で十匹になった。
「仲間がいたのか?……って、どれがハボックなんだっ?」
 正直どれがハボックなのかさっぱり判らない。ムム……と唸ったロイは浮かんだ考えにパチンと指を鳴らした。
「そうか、呼べばいいんだ」
 そっくりではあるが“ハボック”は一匹の筈だ。我ながらいい考えだとロイはにっこりと笑った。
「ハボック!」
 これで返事をしたのがハボックだと答えが返るのを待っていれば。
 ポーンと毛糸玉達が一斉に跳ねる。パァッと輝きを放ったと思うと、くるんと回って子供の姿になった。
「「「ろーいっ」」」
「うわあッ!」
 十人のハボックが一斉に返事をする。寸分違わぬ空色の瞳に、ロイは目を見開いた。
「な……っ?全部ハボックだとッ?」
 多少の事では動じない自信があるロイもこの事態には流石に狼狽えてしまう。どれが自分の知っているハボックかと一人一人顔を見比べるロイにハボック達が飛びついてきた。
「ろーいっ」
「ろいッ」
「ろぉい!」
「ろーい〜ッ」
「待て待てッ!そんな一遍に来られてもッ」
 体は一つしかないのだ。幾らハボックが軽いと言っても十人ものハボックに一斉に飛びかかられてはたまったもんじゃない。ロイはわらわらと群がってくるハボックから後ずさりながら大声で叫んだ。
「ハボックは一人でいい!一体誰が本物なんだッ?」
「「「ろい」」」
 叫ぶロイにハボック達が声を合わせて答える。互いに顔を見合わせたハボック達が突然手を繋いで輪になったと思うと、繋いだ手を高く上げた。
「「「ろーいッ!!」」」
 声を合わせて叫んだハボック達の体が眩い光に包まれる。あまりの目映さに腕で顔を隠したロイは、ゆっくりと薄れていく光に掲げた腕を下ろした。
「ハボッ……ク?」
 いつもハボックと向かい合う時は下を向いているロイの視線が自身の頭よりもずっと高い所を向いている。十人いたはずのハボックは今一人になって、ロイの遥か頭上から見下ろしていた。
「嘘だろう……?」
 確かにハボックは一人でいいと言いはしたがまさか合体するなんて。それもどう見ても身長が三メートルはありそうだ。いつもはフワフワと可愛い尻尾もこの巨体に見合うものともなれば、一振りするたび巻き上がる風がロイの髪を大きく掻き乱した。
「ろぉい」
 大きなハボックに呼ばれてロイはギクリと身を震わせる。巨体に見合うだけの大声が空気をビリビリと震わせて、ロイは顔をひきつらせた。
「おいおい、冗談にしても(たち)が悪すぎだろう」
 ハボックの事は大切で可愛いが、こんな巨大なハボックをどうしろと言うのだ。このままでは家にすら入れないではないか。何とか元のサイズに戻せないかとロイが腕組みして考えていると。
「え?」
 ふと射した影にロイは思考を遮られる。ハッとして顔を上げればハボックがすぐそこに立っていた。
「ろぉい」
「えっ?ちょ……ちょっと待て、ハボック!」
 ニコォとハボックが笑みを浮かべる。両手を伸ばしたハボックが抱きついてこようとしている事に気づいて、ロイは慌てて手を横に振った。
「ダメだッ、ハボック!その巨体で抱きつかれたら……ッ!」
 幾らロイでもこの巨大ハボックを受け止められるとは思えない。ロイは必死に腕を振ってハボックを押し留めようとした。だが。
「ろぉい〜〜ッ」
「待てッ、待つんだ、ハボック!今抱っこは無理……ッ、うわわ……わぁぁぁッ!!」
 抱きついてきた巨大ハボックに圧し掛かられて、ロイはハボック諸共ズゥンッと地面に倒れ込んだ。

「くっ、苦しいッ!!」
 ロイは顔に覆い被さる小さな体をベリッと引き剥がして身を起こす。ハアハアと息を弾ませて見回せば、そこは薄闇に沈んだ寝室のベッドの上だった。
「ゆ、夢かぁ……」
 ハアアと大きく息を吐き出して、ロイはバタリとベッドに倒れ込む。やれやれとため息をつけば、ゴソゴソと動く気配がしてハボックがロイの顔を覗き込んだ。
「ろーい?」
「ハボック……」
 ロイはベッドに横たわったままハボックを引き寄せる。いつも通り小さな姿にホッと息を吐いた。
「ははは……よかった……」
「ろい?」
 力なく笑って脱力するロイをハボックが不思議そうに見る。小首を傾げるハボックの金髪を撫でてロイは言った。
「やっぱりお前は小さい方がいいな」
「ろぉい?」
「――――なあ……、まさかお前が何匹もいるって事はないよな?」
「ろい?」
 不意に浮かんだ考えにロイはガバッと身を起こしてハボックに顔を寄せる。唐突な質問にハボックは訳が判らないとロイを見た。
「まさか本当に何匹もいて合体するなんて事はッ」
「ろいッ?」
「この辺りにもう一匹隠れたりしてないだろうなッ」
「ろい〜〜ッ」
 金色の尻尾を持ち上げたり金髪から覗く犬耳を調べたりしだすロイから、這々の体で逃げ出すハボックだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになります、嬉しいですv

「暗獣」です。本当はお題を進めたいところだったんですが、電車に乗って携帯開いたら浮かんだ話がコレだったっていう(笑)毛糸玉わらわら一杯いたら楽しいだろうなぁ。って、それだと某アニメに出てくるヤツになっちゃいますね(笑)小さいはぼっく沢山いたら……幸せすぎて死にそう(笑)

それにしても最近眠くて堪りません。昼も夜もやたらと眠いよ(苦)一体どうしたらこの眠気のループから抜け出せるんだろう……というそばから眠たいっていうね(苦笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

マロン、甘栗は止まらないですよねぇ。幾らでも食べてしまう(苦笑)おお、栗きんとん!美味しそう〜〜vv栗ってホントあの皮さえなければ料理もらくですのにねぇ。でも、皮剥いて売ってる栗は美味しくない……やはり美味しいものを食べる為にはしょうがないってことなんでしょうか。ロイの焔で焼き栗するのを書きながら、浮かんだのは「さるかに合戦」でしたよ(笑)
2014年11月19日(水)   No.428 (カプなし)

睡魔に負けたので
「――――ハボック?おい!」
 二人してシャワーを浴びてベッドになだれ込み、熱いキスを交わしているとハボックの反応が緩慢になってくる。なんだ?とその顔を覗き込めばスゥスゥと気持ちよさそうな寝息を立てているのを見て、ロイは思い切り顔を顰めた。
「ハボック!寝るなッ!」
 耳元で怒鳴って肩を乱暴にゆすっても、眠りの淵から真っ逆さまに落ちていった男は全く帰ってくる気配がない。暫くの間頬を叩いたり脇の下を擽ったりしてみたが、どうにも反応のないハボックにロイは結局諦めざるを得なかった。
「一ヶ月ぶりの恋人を放っておくとは」
 激務に次ぐ激務で全く恋人らしい接触を持てず、漸く一ヶ月ぶりの逢瀬だというのに、ハボックはその激務のせいで早々に眠りの彼方だ。がっかりと溜息をついたロイだったが、その気持ちよさそうな寝息を聞いていればだんだんと眠たくなってくる。
「まあいい……明日になったら……この分返して貰うか、ら……」
 そう宣言する言葉も途切れ途切れになって。
 いつしか寄りそうようにして幸せな眠りを貪るロイとハボックだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございますー。拍手もとっても嬉しいですー。

そんな訳で睡魔に負けましたー。明日ロイハボ更新します……日記は多分暗獣で拍手のお返事もその時に……ぐー。
2014年11月18日(火)   No.425 (カプなし)

橙色の秋に10のお題6
6.マロン・マロン・モンブラン

「栗が食べたいっス!」
「────は?」
 突然ソファーから立ち上がったと思うとハボックが拳を握り締めて叫ぶ。向かいに座って本を読んでいたロイは、一瞬遅れてハボックの顔を気味悪そうに見上げた。
「いきなりなんだ?栗?」
 季節は秋。確かに栗のシーズンではあるが大声で叫ぶほどのものでもないだろうと、眉をしかめて言うロイをハボックは見る。テーブルを回ってロイに近づくとその腕をむんずと掴んだ。
「そう、栗っス。今から栗拾い行きましょうッ!」
「えっ?お、おいっ、ハボックッ?!」
 掴まれた腕を引っ張られ、ロイは前のめりになりながらもソファーから立ち上がる。グイグイと引っ張られるままにリビングから連れ出され玄関へと連れて行かれて、ロイは慌ててハボックの腕を掴んだ。
「栗が食べたいのは判ったがどうしていきなり栗拾いなんだッ?栗が食べたいなら店で栗の入ったおかずなり菓子なり買えばいいだろうッ?」
 栗が食べたいというならそれがもっとも妥当な判断だ。だが、ハボックはそれには答えず玄関から出ると、ロイを車の助手席に押し込んで車を発進させた。
「おい、こらッ、ハボック!」
「車で小一時間ほど行ったところに栗林持ってる人がいるんスよ。前に近所の幼稚園の子たち連れていったの、覚えてません?」
「ああ、バスの運転手が骨折して代わりに運転してやった時か」
 栗拾いの当日、園児たちを乗せるバスの運転手が骨折してしまい困った幼稚園の職員が知り合いだったハボックに誰か運転出来る人を知らないかと尋ねてきたことがあった。結局非番だったハボックがバスを運転して栗拾いに行き、お土産に栗を沢山貰ってきたのだ。
「約束もなくいきなり行って拾えるもんなのか?」
「平気っしょ。すっげぇ広いとこだったし」
「だがな、幾ら栗が食べたいからって栗拾いから始めなくても────」
「いいの!心おきなく栗が食いたいのッ!」
「どわッ!」
 大声で叫ぶと同時に加速する車に、ロイは体をシートに押しつけられる。もの凄い勢いで車を走らせるハボックに、ロイは下手に話しかけて事故でも起こされてはかなわないと口を噤んだ。
 猛スピードで走った甲斐あって五十分程で目的地に着く。栗林のオーナーに許可を貰ってハボックとロイは林の中に入っていった。
「栗ーッ!」
 ハボックはあちこちに落ちた毬栗を見て両手を突き上げて叫ぶ。ドカドカと歩いて中に進むと口の開いた毬の端を踏みつけ、長いトングで中の栗を拾い上げた。
「大佐も早く!沢山栗拾ったら家に帰って料理するんスから!」
 トングとバケツを手に突っ立っているロイをハボックが急かす。思い切り眉をしかめてロイが言った。
「この靴、結構いい値段するんだが」
 そう言うロイの足元を見れば、綺麗に磨き上げた革靴を履いている。
「なんでそんな靴履いてくるんスかっ?」
「いきなり連れてこられたんだっ、仕方ないだろうッ!」
「栗拾いに行くって言ったじゃないっスか!」
「行くと言った覚えはないぞッ」
 有無を言わさず車に押し込まれたのだ。そう言われてムッと唇を突き出したハボックは、持っていたトングとバケツを置くと栗林の外に向かって走っていった。
「おじさーんッ!長靴貸してーッ!」
「おいッ?」
 ギョッとしたロイが止める間もあらばこそハボックは走っていってしまう。少しして戻ってきたハボックに長靴を差し出されて、ロイは思い切り顔をしかめた。
「どうして私がッ」
「いいから履いて!さっさと栗拾わないと今日の晩飯抜きっスよ」
「なんでそうなるッ?」
 だが、苦情は一切受け入れられず、ロイは仕方なしに長靴に履き替えて栗を拾う。ブツブツと文句を言いながらもバケツいっぱい栗を拾うと料金を払って栗林を後にした。
「さあ、料理するっスよッ!」
 行きと同じく車を飛ばして家に戻るとハボックが叫ぶ。ロイはバケツいっぱいの栗を見て、恐る恐る言った。
「おい、まさかこの山盛りの栗の皮を剥けとか言わんだろうな……?」
「大佐は鬼皮ごと栗食うんスか?」
「いや、そんな食い方はしないが」
「じゃあ剥くに決まってるっしょ」
「マジか?」
 なんでもないように返されてロイは呻く。栗剥き用の鋏を渡されて一つずつ剥き始めたものの、十個も剥かないうちにロイは鋏を投げ出した。
「イヤだ、どうして私がこんな事をしなくてはならんのだ」
「栗を食べる為っしょ」
「栗を食べたいのはお前だろうッ!」
 決して自分が食べたいと言ったわけではないとロイは乱暴な仕草で立ち上がる。だが、空色の瞳でじっと見つめられて、ロイは「うう」と低く呻いた。
「くそッ!こんなもの一つずつ剥いてなんていられるかッ!」
「あっ、ちょっとッ、大佐ッ!」
 ロイは言うなり発火布を取り出す。シュッと手に填めるとパチンと指をすり合わせた。
「うわッ?」
 指先から迸った焔が栗を包む。パチパチと弾ける音がしたと思うと次のパチンと指を鳴らす音と同時に焔が消えた。
「────すっげぇ!焼き栗になってる!」
 弾けた鬼皮の間から覗く実がホカホカと湯気を上げているのを見てハボックが目を丸くする。フンと鼻を鳴らしたロイに、ハボックは目を輝かせて言った。
「大佐、凄いっス!」
「私にかかれば栗なんて一発だ」
「じゃあ、残りもお願いしますね!」
「えっ?!」
 自慢げに言えばズズッとバケツごと栗を差し出されてロイはギョッとする。
「待て!火加減が難しいんだぞッ!弾けて飛んだり消し炭になったりしないよう加減をだな────」
「大佐にかかれば一発なんでしょ!便利だなぁ、茹で栗作る手間省けて。じゃあ、残りもちゃっちゃとお願いしますね。オレは料理始めるんで」
「ちょっと待て!ハボック!」
 慌てるロイの前に山ほどの栗を残して、ハボックは焼けた栗をボウルに入れてキッチンへ行ってしまう。袖捲りをして「よし」と腰に手を当てた。
「まずは栗ペーストかな」
 そう呟いて焼けた栗を牛乳とグラニュー糖と一緒に鍋に放り込む。木べらで混ぜながら煮込んであら熱をとるとミキサーに移し、途中温めた牛乳を足しながらペースト状にした。
「一丁上がり!」
 出来上がった栗ペーストをボウルに移して脇によけ、オーブンを余熱する。温まるのを待つ間にモンブランケーキ用のスポンジ生地を作って型に流し入れ、温まったオーブンに突っ込んだ。サラダ用のキャベツと人参を千切りし塩を振っておき、ドレッシング用のマヨネーズや酢と牛乳を混ぜあわせ、炒めてガーリックパウダーを振ったベーコンと焼き栗にしんなりしたキャベツと人参の水気を絞って加えてドレッシングを和えてサラダを作り冷蔵庫に突っ込んだ。
「大佐ぁ、栗、まだっスか?」
「お前なぁッ!」
 ダイニングに向かって声を張り上げればロイがバケツの栗を抱えてキッチンに入ってくる。ドカッと置かれた山盛りの焼き栗にハボックはにっこりと笑って礼を言った。
「じゃあ、米洗ってください。栗ご飯作んなきゃ。中に入れる栗、焼き栗でもいいかなぁ」
「お前が全部焼けと言ったんだろうっ?生はないッ!」
「ああ、はいはい。急がないとご飯炊けないっスよ。時間ないからお湯使って手早く洗って、塩と酒と栗入れてセットして!」
「人をなんだと思ってるんだ、お前は」
 人使いが荒いと文句を言うロイを適当に宥めて、ハボックは焼き上がったスポンジをオーブンから出す。カスタードクリームとシロップを作りくり貫いたスポンジに挟むと、生クリームを泡立てさっき作った栗のペーストとあわせて絞り袋に入れてスポンジの上に絞り出した。
「はい、大佐!ご飯セット終わったら休んでないでピーマン切ってください」
「ピーマンは嫌いだ」
「子供みたいなこと言わねぇの」
 ピーマンを前に眉を寄せて言うロイにそう返して、ハボックは鶏肉を一口大に切る。鶏肉と栗とロイに切らせた野菜で炒め物を作った。
「ハボック。揚げ栗のメイプルバターが食べたい」
「えっ?でも全部焼き栗にしちゃったっしょ?」
「いいじゃないか、さっと揚げれば」
 手伝ってるんだから食わせろと騒ぐロイに負けて、ハボックは揚げ油を用意するとその中に栗を入れる。揚げた栗にバターと塩を絡めて最後にメイプルシロップを和えた。
「栗ご飯も出来たぞ」
 出来たものを次々とテーブルに運んでいれば、ロイがキッチンで言う。炊飯器ごとテーブルに運んで、冷蔵庫からサラダを出してハボックはロイをテーブルに促した。
「待て待て。ご馳走には酒がなければ駄目だろう?」
 ロイはニヤリと笑ってワインとグラスを持ってくる。向かい合ってテーブルにつくとワインを注いだグラスを掲げた。
「ありがとうございます、大佐!おかげで栗三昧っス!」
「全く大変な一日だった……」
 ハアとため息をついたが、テーブルに並べられたご馳走を見れば疲れも吹き飛んでロイは笑みを浮かべる。
「デザートはモンブランっスから」
「それは楽しみだ」
 チンとグラスをあわせたのを皮切りに、二人は栗三昧の夕食を堪能したのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになります、嬉しいですーv

お題六つ目「マロン・マロン・モンブラン」です。色々ツッコミどころ満載ですが、その辺は目を瞑って頂いて(苦笑)いやだって、お題見て「一体なにを書けば……?」って(苦笑)レシピは色々調べましたが途中でめんどくさくなっていい加減になりました(コラ)まあ、こちらのお題サイトさまは規約が緩めなので10個全部書かなくてもいいんですが、やるなら上から順に書きたくなるというか(笑)あと四つ、書けるかな……。

んで、更新はどうしたと言われそうですよね、いい加減。サボりまくり……というか、実はロイハボの方、「セレスタ」は二話「風の行く先」は一話書いてるので私的にはあんまりサボった気にはなってないんですがね。ハボロイがさっぱりなのでアップどうしようかなーって思っているうちに過ぎていくっていう(苦笑)「ハイム」も「FB」もあと少しで終わりそうなんだがなぁ。つい日記のお題の方に気が行っちゃってたりします。玄関もハロウィンのままだしな(苦笑)
2014年11月16日(日)   No.424 (カプなし)

橙色の秋に10のお題5
5.秋の雨降り

 シトシトシト。
 窓の外に目をやれば灰色の空から雨が降ってくる。秋の長雨とはいえ、もう三日も降り続いている雨によく降るなぁと思っていると、ソファーにだらしなく寝そべって本を読む人がウンザリしたようなため息を零した。
「――――なんだ?」
 零れたため息に“ウンザリ”と書いてありそうな程気持ちのこもったそれに思わずクスリと笑えば、途端に黒曜石の瞳が睨んでくる。オレは咥えていた煙草を指で挟んで答えた。
「いやだって本当に嫌そうなため息だったから」
「本当に嫌なんだから当たり前だろう?もう何日降ってると思ってるんだ」
「今日で三日っスね」
「真面目に数えるんじゃない」
 聞かれたから答えたのにそんな事を言うなんて理不尽だ。そう思いながら見つめるオレに、彼は決まり悪そうに目を逸らした。
「バケツの底が抜けちまったみたいっスね」
 空のバケツの底が抜けたせいで雨がやまないのかもと冗談めかして言えば、彼が思い切り顔をしかめる。
「空のバケツは誰が修理するんだ、誰が」
「――――神さま?」
「一番信用ならん奴だな」
 少し考えて口にした答えに無神論者の彼がピシャリと言って空を睨んだ。
「そんな奴に任せるくらいなら私が修繕してやる」
「えっ?ちょっと?」
 言うなりソファーから立ち上がり彼は窓辺に歩み寄る。長雨でここのところ開けていなかった窓を開けると、懐から取り出した発火布をシュッと嵌めた。
 ――――ああ、こういうちょっとした仕草がカッコいいんだよ、この人。
 錬成陣が描かれた白い手袋を嵌めた手を胸元に寄せて空を睨む彼の姿に思わずオレはうっとりしてしまう。……って、いやいや、そんな場合じゃない。幾ら彼が名だたる錬金術師でも天候までは操れないだろうと止めようとするより一瞬早く、彼は腕を伸ばすとパチンと指を擦り合わせた。
 バチッと見慣れた錬成光が雨を煌めかせて空へと駆け上る。そんな事は起こり得ないと判っていてもつい空を見上げたが、やはり雨が止むことはなかった。それどころか。
「雨、強くなってないっスか?」
 さっきまではシトシトと降っていた雨が俄かに激しさを増して降ってくる。オレは雨が降り込んでこないように慌てて窓を閉めた。
「バケツの底直すどころかバケツそのものを壊したんじゃねぇの?」
「知るか」
 彼は不機嫌にそっぽを向くと手袋を外して懐に突っ込み、ソファーにドサリと腰を下ろす。
「フン」
 と、悔しそうに鼻を鳴らしてゴロリと寝そべり背もたれの方を向いてしまった。
「コーヒー淹れるっスね」
 不貞腐れた彼の様子に思わず零れそうになる笑いを噛み殺してオレはキッチンに向かう。コーヒーを落とし彼の為にはミルクと砂糖を多めに入れるとリビングに戻った。
「どうぞ」
 言ってカップをテーブルに置く。ほんの少し無視を決め込もうとして、それでもやはりコーヒーのいい香りには抗えないと言うように起きあがると、表情だけはムッとしたままカップに手を伸ばした。
「――――旨い」
「どうも」
 礼代わりの褒め言葉にオレは笑って答える。彼は窓の向こうを見やって言った。
「折角の休みが雨のせいで台無しだ。散歩にも行けやしない」
「晴れてたって散歩になんか行きやしないっしょ、アンタ」
「そんな事はない。雨だから仕方なしに本を読んでるんだ」
 絶対本心じゃないと思ったのが伝わったのか、彼がムッと鼻に皺を寄せて尚も言おうとした、その時。
 サーッと部屋の中に陽射しが射し込んでくる。驚いて窓に目をやれば、さっきまで降っていた雨がやんで陽が射していた。
「晴れてる……」
 呟いて俺は立ち上がると窓に寄る。窓を開ければ雲の切れ間から青空が覗いていた。
「バケツの底、直ったみたいっスね」
 オレは開けた窓から顔を出して空を見上げる。まったくバケツを直したとしか思えない程雨は見事にやんでいた。
「神さまとやらよりよっぽど頼りになるだろう?」
 ニヤリと笑って彼は自慢げに言う。雨上がりの空気は柔らかくてオレは陽射しが零れる空を見上げて言った。
「折角バケツを直して貰った事だし、散歩に行きましょうか」
「えッ?!」
 ギョッとしたような声に振り向けば本に手を伸ばしかけたまま固まる彼と目が合う。オレはニヤリと笑って言った。
「晴れてたら散歩に行くって言いましたよね?」
「ウ……ッ」
 流石に言い逃れ出来ずに口ごもる彼にクスリと笑って窓の外を見る。
「もう本はたっぷり読んだっしょ?外は気持ち良さそうだし――――あ」
 彼を散歩に誘い出そうと言葉を重ねようとしたオレは庭に敷き詰めたように降り積もった落ち葉に目を瞠った。
「すげぇ、真っ赤な絨毯みたいっスよ」
 オレは言って彼を手招く。面倒くさそうにしながらも窓辺にやってきた彼も窓から見える光景に目を見開いた。
「雨で散ったのか。見事だな」
「きっと公園はもっと凄いっスよ。ねぇ、散歩行きましょう、散歩」
 きっと公園は降り積もった落ち葉が綺麗な絨毯を描いているだろう。オレは窓辺に立つ人に散歩に行こうと強請る。
「仕方のない犬だな」
 そんなオレにため息を零しながらも嫌とは言わずに。
「コートを取ってこい」
「イェッサー!」
 笑う黒曜石に答えてオレは部屋を飛び出した。


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お題五つ目「秋の雨降り」です。秋の……って割にあまり季節感がない気がする(苦笑)お題を書いていていつも思うのですが、お題を考える方って何をイメージしてお題を考えてるのかなぁ……。きっと私が書いたのは全然イメージ違うだろうなって思います(苦笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

おお、蒸し焼き芋vvすっごい美味しそうです!ああ、食べたくなってきちゃった(笑)ザクロ、うわ、そんなドラマあるんですか?滅茶苦茶怖そうです……(苦)確かにロイとかハボとか筋肉凄くて噛みごたえありそう(爆)
2014年11月13日(木)   No.423 (カプなし)

橙色の秋に10のお題4
4.ザクロ

「ザクロというのは人肉の味がするそうだよ」
「はあ?なんスか、それ」
 私はテーブルに置かれたあまり口にしたことのない果物を見て言う。ご近所さんからその果物を貰ったのだと言う男は、顔をしかめて向かいの椅子に腰を下ろした。
「そんなの、聞いたことないっスよ。大体果物なのに肉の味がするわけねぇっしょ」
「つまらない男だな」
 至極全うな事を返されて私は眉間の皺を深める。裂けた黄紅色の果実から覗く種を包み込んだルビーのような実を指でつついて私は言った。
「ほら、この鮮やかな朱。人肉のような気がしないか?」
「気色悪い事言わんでください。食べづらくなるでしょうが」
「そんな繊細なタマじゃないだろう?」
 どちらかといえばワイヤー並みの図太い神経を持っている男だ。クスリと笑って言う私に彼はムッと鼻に皺を寄せて見せた。
「そもそもねぇ、アンタ人肉なんて食ったことねぇっしょ。ザクロ食ったってこれが人肉の味がするかなんてどうして判るんスか」
 ここまで、何一つ悪いことなどしていませんなどという清らかな人生は送っていないが、それでも流石に人肉を口にするような場面には出会っていない。確かにザクロを食べたところでこれが人肉の味なのか、判断などする事は出来ないだろう。ならば。
「だったら先に人肉を食ってみるか?」
 ザクロを食べて判断つかないなら先に人肉を食ってみればいい。そう提案する私を彼が空色の瞳を丸くして見つめる。空の色を映す瞳をじっと見つめて、私は言った。
「お前の肉はどんな味がするかな?よく鍛えられていて、歯を立てたらとてもジューシーだろうな」
 低く囁いて薄く開いた唇から舌を覗かせる。チロチロと唇を舌でなぞりながらも目を離さず見つめていれば彼の喉がゴクリと鳴った。
「────オレのこと、喰うんスか?」
「ああ、喰わせてくれるか?」
 軍人としての能力には定評のある彼だ。抵抗されれば私でもそう簡単には喰えないだろう。薄く笑みを浮かべて強請るように尋ねてみる。すると、大きく見開いて私を見つめていた空色が笑みに解けた。
「いいっスよ。アンタになら喰われてあげても」
 と、彼は私を甘やかすように言う。笑みを浮かべる空色の瞳をスッと細めて、彼は言った。
「その代わりって言っちゃなんスけど、アンタに喰われたらオレ、喰らい返しますよ?アンタの中から内蔵を喰いちぎって血肉を啜って────オレもアンタを喰らいます」
 それでもいいなら、と彼は私を真っ直ぐに見つめて言う。その提案に私はゾクゾクと背筋を震わせた。私に喰われた彼に躯の中から喰われ返す。なんと(おぞま)しくも甘い誘惑だろう。
「いいな、そうすれば私もお前も人肉の味を味わえるわけだ。それも極上の」
「悪趣味っスね」
 楽しげにクスクスと笑えば彼が呆れたように言う。
「好きだろう、そういうの?人肉の味を確かめたくなったら、その時はつき合え」
「仕方ない人だなぁ」
 それでも嫌とは言わずに。
「まあ、とりあえずはこれで我慢してください」
 そう言って彼が差し出すザクロの実を、私は受け取りルビー色に輝くそれに齧りついた。


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お題四つ目「ザクロ」です。随分昔にマンガか何かで「ザクロは人肉の味がする」っていうのを読んだことがありましてね。「人肉の味がするって、人肉食べた事がなければそれが同じ味かなんて判らないんじゃないのかなぁ」って思ったもので(苦笑)その後ザクロを食べた時は「別にフツウ?」って(笑)やっぱりあの赤い実が妖しげな想像を掻き立てるんでしょうかね?
2014年11月10日(月)   No.422 (カプなし)

橙色の秋に10のお題3
3.落ち葉

「――――?」
 書類を書いていたロイは呼ばれたような気がして顔を上げる。執務室を見渡したが部屋の中には己以外誰もおらず扉も閉まったままだった。
「気のせいか……?」
 確かめるように呟いてみても答える者はいない。やはり気のせいだったのだろうと再び書類に目を落としたロイの耳に、今度はもう少しはっきりと声が聞こえた。
「大佐ァ!」
「ハボック?」
 ロイは腰を上げてキョロキョロと部屋の中を見回す。扉越し、司令室の大部屋から呼んでいるのかと思ったが、その時風で窓がガタガタと揺れてロイは呼び声が外から聞こえているのだと気づいた。
「ハボック?」
 ガラリと窓を開けてロイは身を乗り出す。そうすれば窓の下、中庭で箒を持ったハボックが手を振っていた。
「大佐ァ」
 ヒラヒラと手を振って笑みを浮かべるハボックにロイは眉を顰める。
「何をしてるんだ、お前は」
 と問えば。
「落ち葉掃きィ」
 と間の抜けた声が返ってきて、ロイは益々眉をしかめた。よく見れば中庭のあちこちに箒を手にした男達がウロウロしている。それがハボック小隊の部下達だと気づいてロイは言った。
「訓練はどうした?」
「早く終わったんで奉仕活動っス」
 ハボックはそう言ったがあまり真面目に掃除をしている様子は見られない。おそらくは気分転換の息抜きなのだろう、ロイは「散らかすなよ」と一言言って窓を閉めた。ロイは机に戻ると書類を手に取る。窓越し微かに聞こえる声を聞きながら書類を片付けていると、少ししてまた呼ぶ声が聞こえた。
「今度はなんだっ?!」
 しつこく呼ばれて無視も出来ずにロイは窓を開けて怒鳴る。見下ろせばいつの間にか大きな落ち葉の山が出来ていてハボックがその横で両手を振っていた。
「大佐ァ、火、頂戴!火!」
「焚き火する気か?ライターがあるだろう、ライターが」
 ヘビースモーカーのハボックならライターの一つや二つポケットに入っているだろう。そう言えばハボックが両手でバッテンを作って言った。
「上手くつかないんスよ。発火布でボンッてやって!」
「上官をライター代わりに使うな」
 小さなライターでは上手く落ち葉に火が移らないのだろう。顔をしかめるロイに部下達も口々に声を上げた。
「マスタング大佐、お願いします!」
「頼みます、マスタング大佐!」
「大佐ァ!」
 最後に甘えるようにハボックに呼ばれてロイは小さく舌打ちする。渋々懐から発火布を取り出し手に嵌めた。窓から腕を伸ばしてパチンと指を鳴らせば、山と積まれた落ち葉に向かって焔が走り出た。
「おお〜ッ!」
 ボンッと音を立てて落ち葉の山に火がついたのを見て男達が感嘆の声を上げる。
「ありがと、大佐ァ!」
「フン」
 ハボックが満面の笑みを浮かべて礼を言うのにロイは鼻を鳴らして窓を閉める。これでやっと邪魔されずにすむと、ロイはやれやれと椅子に腰を下ろした。
 カリカリとロイがペンを走らせる音だけが執務室を支配する。そうしてどれ位時間が経っただろう、俄かに扉の向こうが騒がしくなったと思うとゴンゴンと扉を叩く音がした。
「大佐、開けて〜」
 音の位置から察するにどうやら扉を蹴っているらしい。ロイはウンザリとしたため息をつくとガタンと椅子を蹴立てて立ち上がり乱暴に扉を開けた。
「ハボック!お前なぁッ!」
 何度邪魔をすればすむのだと目を吊り上げるロイの前にハボックが手にしたものを差し出した。
「大佐、焼き芋どうぞ」
「――――芋?」
 目を丸くしたロイは反射的に差し出された芋を受け取る。「アツッ」と手の上で芋を弾ませるロイの横を通ってハボックは執務室の中に入ると応接セットのテーブルの上に抱えた焼き芋を下ろした。
「さっきの落ち葉で焼いたんスよ」
「焼き芋なんてやってたのか」
 火をつけろと言われたが単に燃やす為だけと思った。そう言うロイにハボックが焼き芋を一本取り上げて答えた。
「春に畑起こし手伝った幼稚園から豊作だったってサツマイモ山ほど貰ったんスよ」
 ボランティアでハボック小隊の何人かでそんな事をしていた事をロイは思い出す。そうであればこれはハボック達が貰うべき報酬だろうと言うロイにハボックが言った。
「大佐が火ィつけてくれたから」
 お礼っスとハボックが笑う。手にした芋を半分に折って言った。
「小隊の連中でも食べきれない位沢山あるんスよ。どうぞ食べて」
「そうか?それなら遠慮なく」
 ロイは言って漸く持てる位になってきた焼き芋を折った。ホカホカと湯気を上げる金色の実にロイは目を細める。
「旨そうだ」
 フウフウと息を吹きかけてカプリと噛みつき、フーフーと熱い湯気を吐き出す口の中に広がる自然の甘みにロイは笑みを浮かべた。
「甘いな。しっとりしてホクホクだ、旨い」
「でしょ?落ち葉の焚き火で焼くとじんわり焼けて旨いんスよ」
「いいな、これ。落ち葉がなくなるまで毎日やってくれ」
「訓練は?」
「秋の間はしなくていい。私が許可する」
「マジっスか?」
 とんでもない事を言い出す上官にハボックがクスクスと笑う。
 窓の向こう落ち葉が風に舞い踊るのを眺めながら、ロイとハボックは秋の味覚を堪能したのだった。


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お題の三つめ「落ち葉」です。決して「焼き芋」とか「焚火」とかじゃありません!(爆)いやあ、最初ハボックが落ち葉掃きする話を書いていたのですが、なんだがグダグダになってしまったので芋を焼かせてみたら、どうにも「焼き芋」がお題じゃないかって話になってしまいました(苦笑)まあネタから逸れるのはいつもの事だし!(コラ)今日は風が強かったので落ち葉が青空に舞ってなかなか綺麗でしたよ。……って話を書けばお題に沿ったのか!でも、近所のスーパーで秋になると売り出す焼き芋がいい匂いだなぁと思いながら側を通った時点で、もう頭が焼き芋に侵蝕されててダメですね(苦笑)
2014年11月07日(金)   No.421 (カプなし)

橙色の秋に10のお題2
2.長い影

「ロイお兄ちゃーん!」
 家に向かって通りを歩いていたロイは、背後から聞こえた声に足を止める。振り向けば金色の頭をした小さな姿が駆けてくるのが見えた。
「ハボック」
「やっと追いついたぁ」
 ロイの腰にぱふんと抱きついてハボックが言う。
「お兄ちゃん、足速い〜」
 ハアハアと息を弾ませてそう言うハボックに、ロイは目を細めた。
「今帰りか?」
「うん。お兄ちゃんはまた図書館?」
 バンドで括った本を小脇に抱えているのを見てハボックが問いかける。ああ、と頷くロイにハボックが言った。
「そんな難しい本ばっかり読んでたら頭がグルグルしちゃうよ?」
 そう言って眉間に皺を寄せる幼い顔にロイはクスリと笑う。
「ハボックはどんな本が好きなんだ?」
「オレはねぇ、おっきなドラゴンがでてくるやつ!」
 そう言って空色の瞳をキラキラと輝かせるハボックにロイは小さい頃自分も読んでいたファンタジーを思い出した。
「その本なら私も読んでたよ」
「ホントっ?お兄ちゃんも読んだ事あるのっ?」
 大好きなロイが自分の大好きな本と同じ本を読んでいたと知ってハボックが嬉しそうに顔を輝かせる。ロイはそんなハボックの手を取り帰ろうと促した。
「わーっしょい!わっしょい!わっしょい!ゆうやけわっしょいしょい!」
 二人並んで歩けばハボックが楽しそうに歌い出す。繋いだ手を大きく振って歩いていたハボックがピタリと足を止めたと思うと、ロイの手を離して走り出した。
「ハボック?」
「動いちゃダメ!」
 突然の事に追いかけようと足を踏み出したロイにハボックが言う。何事かと見ていると、ハボックが少し走ったところで足を止めた。
「オレの方が高い〜!」
 夕陽に照らされて地面に伸びる長い影を見下ろしてハボックが言うのにロイはクスリと笑う。ゆっくりと歩き出せばハボックが足を踏み鳴らした。
「あーッ、お兄ちゃん、動いちゃダメっ!」
 頬を膨らませて走り出すハボックにロイはすぐ追いついて小さな手を取る。ムゥと不満げに見上げてくる空色を見つめてロイは言った。
「すぐお前の方が高くなるさ」
「――――ホントに?」
「ああ。だから今は一緒に帰ろう」
 大きくなったら手を繋いで歩く事も出来なくなるだろう。だから、と思うロイの気持ちなど気づかずハボックがニッコリと笑った。
「うんっ」
 繋いだ手を引っ張るようにハボックが歩き出す。
「「わーっしょい!わっしょい!わっしょい!ゆうやけわっしょいしょい!」」
 ハボックと一緒に歌いながらロイは切ない気持ちで長い影を見つめた。そして幾つもの季節が過ぎ――――。

「大佐ァ!」
 夕焼けに染まる通りを歩いていれば背後から聞こえた声にロイは足を止める。手を振って走ってきた長身がロイの側まで来るとフウと一息漏らして言った。
「相変わらず足速いっスね」
「そうか?」
 言われてロイは首を傾げる。ロイが手にした本の袋を取り上げてハボックが言った。
「図書館の用事は終わったんスか?」
「ああ」
「じゃあ一緒に帰りましょ」
 ハボックはそう言うと袋を持った手と反対の手でロイの手を取る。手を繋いで歩き出したロイは足元に長く伸びる影を見下ろして笑みを浮かべた。
「なんスか?」
「いや……いつの間にかお前の影の方が高くなったなと思って」
「そういやそうっスね」
 気がつかなかったとハボックは言って思い出したように笑った。
「オレ、ガキの頃こうしてアンタと手を繋いで帰るの大好きだったんスよね。だからいっつもアンタが帰る頃狙ってあの道に行ってたんスよ」
「そうなのか?」
 言われてみれば図書館からの帰り道、必ずといっていいほどハボックと手を繋いで帰っていたような気がする。
「今も好きっスけどね。これからもずっと手ぇ繋いで帰りましょうね」
 そんな風に言うハボックの横顔をロイは驚いたように見上げた。
「――――そうだな」
 ゆっくりと視線を正面に戻せば長く伸びた影が見えてロイは答える。いつの間にか追い越された背の高い影を見つめて歩きながら、ロイは幸せそうに笑った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、頑張る素です、嬉しいですv

お題二つ目「長い影」です。もう11月も6日だと言うのにまだ二つ目ですよー。そして明日は立冬だってさ!(爆)まあ11月は秋って事で、せめて半分くらいは書きたいなぁ(苦笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

暗獣、うふふ、はぼっく来たら山ほどあげちゃいそうですよねvここでの髭はいいパパってことで!(笑)風、そうなんですよね、諦めろとか言っておきながら本当にハボが自分の事好きでなくなったら嫌っていう、とんでもない男です(笑)書けば書くほど嫌なヤツになるなぁ……ハボに嫌われたらどうしよう(爆)

暗獣ハボが来てくれるなら  の方

うふふ、暗獣ハボの為なら頑張っちゃいますよね!とーってもキュートと言って下さって嬉しいですvありがとうございます!
2014年11月06日(木)   No.420 (カプなし)

新・暗獣54
(一日遅れですがハロウィン話(苦笑)


「出来たぞーっ、どうだッ!」
 ハボックと二人こもっていた部屋から出てきたヒューズが得意げに声を張り上げる。タタタと走ってきたハボックがポスンとロイに抱きついて空色の瞳で見上げた。
「ろーいっ」
 ハボックは嬉しそうに自分の格好をロイに見せる。だが、ロイは眉を顰めて言った。
「なんだ、これは」
「なんだって見りゃ判るだろう?狼男だよ。似合ってるだろッ」
 満面の笑みを浮かべて片膝をついたヒューズがハボックの肩を抱いて言う。金色の髪の中からひょこっと生えた耳とフサフサの尻尾を見てロイは言った。
「これのどこが仮装だ?まんまじゃないか」
 手には肉球のついたフェイクファーの手袋、足にも同じようなファーのブーツを履いているとはいえ、耳と尻尾は自前だ。正直仮装と言うにはあまりに普段のハボックと変わらず、ロイは思い切り顔をしかめた。
「この格好で外を歩かせる気か?バレたらどうするんだ」
 ハボックをキメラと思い込んだ軍の連中が家に押しかけた事が切欠でロイとハボックが辛い別れをしなければならなくなったことは、忘れたくとも忘れられない悲しい記憶だ。あれ以来ロイはハボックの事が誰かにバレたりしないよう細心の注意を払い、ハボックにも耳や尻尾はしまっておくよう口を酸っぱくして言ってきたのだ。そんな日々の努力を蔑ろにするつもりかと目を吊り上げるロイにヒューズは言った。
「逆だよ、ロイ。こんなにあからさまに耳や尻尾を出してたら誰も本物だとは思わないだろう?興奮して飛び出たりなんて事になったらそれこそ目も当てられないし、ハボックちゃんにピッタリのいい仮装だと思うぜ?」
「それはまあ、確かに……」
 ヒューズが言うことはもっともだ。確かに外でうっかり尻尾や耳が飛び出る事を考えたら、最初から出しておくというのはいいかもしれない。何よりハボックが自慢の尻尾を抱えてキラキラした目で見つめてくるのをみれば、とても駄目とは言えなかった。
「判った、確かに何でも仮装で通るハロウィンだしな」
「だろ?」
 漸く同意の言葉を口にするロイにヒューズがニヤリと笑う。ロイはハボックの前にしゃがむと尻尾を抱き締めるハボックの手に己のそれを重ねて言った。
「いいか、ハボック。今日は特別だからな。今日が過ぎたら絶対外で尻尾や耳を出したら駄目だ。私と離れ離れにはなりたくないだろう?」
「ろいっ」
 そんなのは絶対嫌だとハボックが泣きそうな顔で首を振る。そんなハボックをそっと抱き締めてロイは言った。
「判ってるならそれでいい。それじゃあ可愛い狼男を街のみんなに見せに行こう」
「ろーいっ」
 そう言われてハボックがにっこりと笑う。立ち上がってハボックと手を繋ぐロイにヒューズが紙袋を差し出した。
「街は混んでるだろうからな。迷子にならないようにこれを使えよ」
 そう言うヒューズから受け取った紙袋から出てきたのはカボチャにコウモリの羽が生えたリュックだった。
「この紐の先をお前のズボンのベルトにつけておくんだ。そうしたらハボックちゃんが一人でどっかに行っちゃったりしないだろ?」
 リュックについた紐を指してヒューズが言う。なるほどと頷いたロイはハボックにカボチャのリュックを背負わせて、紐の先をベルトに取り付けた。
「ありがとう、ヒューズ。お前もたまには気の利いた事をするな」
「一言多いんだよ、お前は」
 素直に礼だけを言わないロイにヒューズが眉を寄せる。それでもハボックを見て言った。
「それじゃあハボックちゃん、楽しんでおいで。一杯お菓子を貰ってくるんだよ」
「ろいっ」
 ニッコリ笑って頷いたハボックは、ヒューズに向かって手を伸ばす。ありがとうと言うようにキュッと抱きつかれて、ヒューズは髭面を緩めた。
「うーん、ハボックちゃんっ、どうせならキスもしてくれると嬉しいなぁ」
「何を言ってるんだ、お前はっ!調子に乗るなッ、離れろッ!」
 髭面を指差して「ここ、ここ」と主張するヒューズをロイが目を吊り上げて引き剥がす。ハボックに「キスする必要なんてないからな」と言い聞かせるロイに苦笑して、ヒューズが言った。
「ま、とにかく楽しんでこいよ」
「ああ――――ありがとう、ヒューズ」
 今度は素直に礼を言われてヒューズが擽ったそうに笑う。これから急いでセントラルに戻るというヒューズを見送ると、ロイはハボックを連れて家を出た。
 ハロウィン一色の街はあちこちにカボチャやコウモリやオバケの飾り付けがされて賑やかだ。キラキラと目を輝かせたハボックが早速ロイの手を離して走り出した。
「なるほど、これは便利だ」
 普段より人通りの多い中、小さなハボックを見失う心配がない。ロイは足を早めると、ジャック・オ・ランタンの前に座り込んでいるハボックに歩み寄った。
「ろーいっ」
「ふふ、変わったランタンだな」
 カボチャをくり抜いた顔にはヒゲと牙があって、頭に乗せられた帽子からは耳が覗いている。猫好きな誰かが作ったらしいカボチャと暫くの間見つめ合って、漸く満足したらしいハボックが立ち上がってロイの手を取った。手を繋いで歩き出してすぐ、ハボックは再び走り出すとお菓子を配っているドラキュラの近くで足を止める。じっと見つめるハボックに気づいたドラキュラが、ニッコリと笑って言った。
「可愛い狼男だね!凄い尻尾だ」
「ろーいっ」
 自慢の尻尾を褒められて、ハボックは嬉しそうに尻尾を振る。
「凄い!動くんだ!」
 フサフサと揺れる尻尾に目を瞠ったドラキュラがハボックの尻尾に手を伸ばすのを見て、ロイはギクリとして一歩踏み出した。
「ろい〜」
「凄いな、どんな仕組みなんだい?」
 そんなロイの気持ちなど気づきもせず、ドラキュラに尻尾を触らせたハボックはお菓子を貰ってロイの所に戻ってくる。嬉しそうにお菓子を見せられれば怒る訳にもいかず、ロイはそっとため息をついた。
「よかったな」
「ろいっ」
 ハボックはニコッと笑って頷く。カボチャのリュックにお菓子をしまうと、ロイとは手を繋がず走り出した。
「こらこら」
 紐で繋がった可愛い狼男を追いかけて、ロイも小走りに走る。ハボックは自分よりずっと大きい狼男に駆け寄ると尻尾を探して狼男の周りを回った。
「おっ?仲間じゃん!」
 ハボックを見て男が楽しそうに言う。ハボックは金色の尻尾を抱えるようにして男に見せた。
「ろーいっ」
「ん?ああ、尻尾か。実は他の狼男とケンカしたら千切られちゃったんだよ」
「ろいッ!」
 そう聞いてハボックは飛び上がる。泣きそうになって尻尾を抱き締めるのを見て、男は「しまった」と言う顔をした。
「あー、大丈夫、大丈夫。ソイツとは仲直りして尻尾も返してもらったから!明日には元通りくっつく予定!」
「ろぉい……?」
「うん、ビックリさせてゴメンな。お詫びにこれ」
 男は言ってハボックにカボチャの形をした棒がついたキャンデーを差し出す。ハボックの金髪をクシャリとかき混ぜ、ロイにすまなそうに頭を下げて行ってしまった。
「ろーいー」
「大丈夫、明日にはくっつくってさ」
 心配そうに見上げてくるハボックにロイは笑って言う。貰ったカボチャのロリポップを指差して言った。
「よかったな、可愛いキャンディ貰えて」
「ろいっ」
 言えば漸くハボックが笑みを浮かべる。そのキャンディもリュックにしまって、二人は再び歩き出した。
 店のディスプレイを覗きお菓子を貰って、二人はハロウィンの街を楽しむ。小さな狼男はどこに行っても人気者で、気がつけばリュックにはお菓子が一杯入っていた。
「よかったな、ハボック」
「ろぉい!」
 ニコニコと頷くハボックの手を引いてロイは家に帰る。やれやれとリビングのソファーに腰を下ろしたロイに、リュックの中から取り出したものを手にハボックが駆け寄ってきた。
「ろいっ」
「――――くれるのか?」
「ろい!」
 ニコニコと笑いながらハボックが差し出したのは黒猫のロリポップだ。頷くハボックの手からロリポップを受け取ってロイはハボックを抱き締めた。
「ろーい」
「楽しかったか、そうか」
「ろぉいっ」
「うん、来年もまた行こうな」
 来年もそのまた来年もずっとずっと。
 その夜二人はジャック・オ・ランタンに火を灯して、トリック・オア・トリートに訪れた子供達にお菓子を渡して過ごしたのだった。


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「暗獣」です。ハロウィンに間に合いませんでした(爆)でも折角書いたので(苦笑)カボチャにコウモリの羽根のリュックはМさんのアイディアです(笑)迷子防止のひも付きリュックなんて、ロイには全く思いつかないだろうなぁ。髭、伊達にパパしてない(笑)
2014年11月01日(土)   No.419 (カプなし)

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