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2017年02月の日記

2017年02月28日(火)
25日の日記が
2017年02月25日(土)
向日葵
2017年02月14日(火)
新・暗獣 バレンタインデー2017

25日の日記が
文字化け?していたらしいので、取り急ぎ再アップしてみました。読めるようになりましたでしょうか……?何か不具合ありましたらどうぞお知らせください。

昨夜は寝ようとして横になるとお腹がぐるぐる痛くて、一時間くらい布団とトイレを行ったり来たりしてました。寒い時期の夜間トイレはツライ。冷え切っちゃいましたよ(苦)おかげで蕾ちゃんも痛いし(←コラ)あ、でもロイに無体されたハボックの気分かも〜v(爆)

今はぼちぼち放置中の話を読み返しているところです。いやだって、どこまで書いたか全然覚えてないし!(爆)プロット書かずにやっているので、放置した後が大変ってね(苦笑)あと、姫ハボをまとめて pearl にアップするため整理中です。日記ネタだから読み返さなくても書けると言えば書けるけど、どんなネタ書いたかな〜って(笑)放置すると後が色々大変です。放置しちゃいかんわー(汗)そんなわけで更新の方は今少しお待ちくださいませ。
2017年02月28日(火)   No.492 (その他)

向日葵
ロイハボ風味

「ローイ!待って、ロイ!」
 前を行くすらりとした姿を追いかけてまだ小さな子供は必死に手を伸ばす。そうすれば振り向いた黒曜石が優しく細められた。
「ジャン」
「ロイっ」
 子供は立ち止まった年嵩の少年の胸にぱふんと飛び込む。少年は飛びついてきた子供の金色の頭を撫でてその空色の瞳を覗き込んだ。
「どうした、そんなに走ったら転ぶぞ」
「だって、ロイ、どんどん行っちゃうんだもんっ」
 ムゥとまだ丸みを帯びた頬を膨らませる子供に少年はクスリと笑う。そうすれば益々頬を膨らませる子供に少年は「ごめんごめん」と笑って、指にはめていたリングを外した。
「笑ったお詫びにこれをあげるよ」
「いいの?これ、ロイの大事な指輪じゃないの?」
「大事な指輪だからお前にあげるんだよ」
 そう言って見つめてくる黒曜石に子供は見開いた目を嬉しそうに細めた。
「ロイ、大好きっ!ずっと側にいてね」
「私もお前が好きだよ、ジャン。ずっと側にいる。この指輪はその印だ」
「ほんと?もうおいていったりしない?」
「しない。約束する」
 言いながらまだ細い指に指輪をはめて抱き締めてくれる少年に、金髪の子供はギュッと抱きついて柔らかい頬をすり付けた。


「────」
 木の幹に寄りかかっていたオレはどこからか聞こえた鳥の声に目を開ける。そうすれば青く晴れ渡った空が目に飛び込んできて、たった今まで見ていた光景が夢だったのだとしれた。
「……ッ」
 オレはそんな夢を見てしまったことに苛ついて、懐から煙草のパッケージを取り出す。気持ちを落ち着けようと煙草を吸おうとしたオレは、中が空なのに気づいてクシャリとパッケージを握り潰した。
「くそッ」
 ニコチンで宥められなかった気持ちは余計にささくれだって、オレは乱暴な仕草で立ち上がるともたれ掛かっていた木から離れて歩きだした。
 オレの名はジャン・ハボック。このアメストリス学院の大学に通う一年だ。休講になってぽっかりと空いた時間を潰そうと学院の中庭に出たオレは秋めいてきた風に誘われるまま気持ちのよい木陰に座り込み、そのまま転た寝してくだらない夢を見てしまったらしかった。
「……ッ」
 オレは苛々と頭を振ってくだらない夢の欠片を頭の中から追い出す。思い出したくない面影を何とか追い出したと思ったその瞬間。
「ハボック」
 あの頃より少しトーンの下がった、だが変わらず聞く者を引きつける甘いテノールが背後から聞こえる。オレは瞬間止めた足を無理矢理動かしてその場から立ち去ろうとした。
「ハボック」
 だが、そんなオレの背中に再び声がかかる。そうなればそのまま立ち去ることも出来なくて、オレは唇を噛み締めて振り返った。
「──なんか用っスか?」
「冷たいな、用がなければ声をかけちゃいかんのか?」
 振り返ったオレに綺麗な女性を連れたロイが笑いかけてくる。ゆっくりと近づいてくるロイに半身背を向けるオレに、ロイは数歩離れたところで足を止めて言った。
「最近家に帰ってないんだって?おばさんが寂しがってたぞ」
「別に帰る用事もないっスから」
「食事ついでに顔を見せればいいじゃないか」
「アンタに関係ないっしょ」
 諭すように言う黒曜石を睨んでオレが言えば、ロイの腕に細い腕を絡めていた女性がロイとオレを見比べて首を傾げた。
「マスタング君の知り合い?」
「幼馴染みなんだ、赤ん坊の頃から知ってる」
「あ、キミがそうなんだ!ねぇ、キミ。マスタング君の子供の頃ってどんなだった?」
 オレとロイが幼馴染みだと知った途端、興味津々の体で身を乗り出してくる女性にオレはプイと顔を背けて歩き出す。そのオレの背に「今度食事に行こう」と誘うロイの声が飛んできて、オレは唇を噛み締めて振り返った。
「食事なら彼女と行けばいいっしょ!」
「ミリアは単なる研究室の同僚だよ」
「やーん、マスタング君、冷たいっ」
 ロイの言葉に女性が可愛らしく唇を突き出して抗議する。それに答えるロイの声を背に、オレは逃げ出すように足早にその場を離れた。


 いつからだろう。ロイに対して素直になれなくなったのは。
 小さい頃のオレはいつもいつもロイの後をついて回っていた。ロイが話しかけてくれるのが嬉しくて、色んな事を一緒にするのが楽しくて、それはもうロイのことが好きで好きで大好きで。いつだってロイの手を握り締めて例え一時でもロイの側を離れるのが嫌だったのだ。
 そんなオレだったのにいつからか段々とロイに対して素直に接しられなくなっていた。ロイの事ばかり見つめていた視線をロイに向けられなくなり、ロイの手を握り締めていた手はロイに伸ばせなくなった。高校、大学とロイが進んでいくうち、ロイの周りには色んな人たちが集まってくるようになった。男も女もロイの周りにいる人たちは何かしら秀でていて、ちっぽけな子供はロイの側にいられなくなった。それでも変わらずロイはオレに話しかけてきたけど、ロイの側には大抵綺麗な女の子が一緒にいたから、オレはそんなロイの姿を見ていたくなくていつだってロイに乱暴な言葉を投げつけて逃げるようにロイから離れるのが常だった。小さな頃大好きでいつも追いかけていたロイは、今のオレにとってはあまりに眩しすぎてとてもじゃないけど側にいるどころか見つめていることすら出来なかった。


 内心の苛立ちを押し隠してドスドスと足音も荒く歩いていたオレは、いつの間にかたどり着いていた校舎を見上げてため息をつく。このアメストリス学院に入ったのもロイを追いかけての事だったけれど、今となってはその事を激しく後悔していた。
 キュッと唇を噛んだオレはいつも首から下げているチェーンの先につけているペンダントトップ代わりの物を服越しに握り締めると、校舎の中へと足を踏み入れる。時計を見れば丁度メシ時で、オレは学生達が行き交う廊下を学食に向かって歩いていった。
「おう、ハボ!」
「ブレダ」
 学食には入ろうとすると丁度向こうから歩いてきたブレダが声をかけてくる。連れだって中に入り定食を買う列に並んだ。
「今日の定食はメンチカツか。ご飯大盛りでも足りねぇな……うどんでも足すか」
「食いすぎだろ、それ」
「脳味噌使うには栄養が必要なんだよ」
「脳味噌じゃなくて全部腹にたまってんじゃね?」
 ブレダの逞しい腹をつつけばブレダが「なんだと」と腹を膨らませる。それならばと軽く叩けばいい音がするのがおかしくて笑ったオレは、頬に視線を感じて振り向いた。
「お、学院のプリンス、マスタングさんじゃん」
 そう言うブレダの声を聞きながらオレはこっちを見つめてくるロイに向けていた視線をプイと逸らして背を向ける。そうすれば見つめてくる強い視線が消えて、オレは知らず詰めていた息を吐き出した。
「なんだよ、学院のプリンスって」
 オレはさっきブレダが言った言葉を思い出して尋ねる。順番が来て定食の皿をトレイに乗せながらブレダが答えた。
「知らねぇのか?マスタングさんと言えば眉目秀麗、頭脳明晰、学院中の女の子どころか男までもが憧れる学院のプリンスだろ?」
「んなの、聞いたことねぇよ。学院のプリンスなんて……馬鹿じゃねぇの?」
「そうかぁ?結構あってると思うけど」
 ブレダはそう言いながらトレイの上にコロッケやらマカロニサラダやらの小鉢を次々と乗せていく。学食で食べるには結構なお値段をレジで支払ったブレダと一緒に、オレは手近のテーブルに腰を下ろした。
「じゃあお前はどんな呼び方がいいと思うんだよ。幼馴染みなんだろ?マスタングさんと」
「えっ?」
 唐突にそんなことを言われてオレはオムライスを食べようとした手を止める。目を丸くするオレにブレダが言った。
「みんな知ってるぜ?マスタングさんとお前が幼馴染みだって」
「────なんでっ?」
 オレは学院に入ってからロイと幼馴染みだなんて誰にも言ってない。それなのにみんなが知ってるってどういう事だと問い詰めるオレにブレダが小首を傾げた。
「さあ、誰かが言ったんじゃないか?」
「誰かって誰がッ?!」
 オレが言ってないのに一体誰が言うんだと喚くオレに、ブレダはメンチカツを齧りながら答えた。
「お前じゃないならマスタングさんじゃねぇの?」
「────え?」
 ロイが?なんでロイがオレと幼馴染みだなんて事、みんなに言って回る必要があるんだ?
「そんなの俺が知るかよ。直接マスタングさんに聞けばいいだろ」
 なんでと呟くオレにブレダは何でもないことのように言う。
「聞けるわけないだろ」
「なんでだよ、幼馴染みなんだろ?」
「何でだっていいだろ!それよりオレがアイツと幼馴染みだって事言うな!」
「言うなって……今更じゃねぇ?まあ、お前が言うなって言うなら言わねぇけど」
 ブレダは不思議そうな顔をしながらもそう言ってコロッケを頬張った。そんなブレダにオレは小さくため息をついてオムライスを口に運ぶ。
(ロイがオレと幼馴染みだって言って回るなんて……そんなことありえねぇ)
そんな事をロイがわざわざみんなに知らせる理由などありはしないのだ。ロイにとってオレはもう取るに足らない大勢の中の一人でしかないんだから。そう考えれば不意に沸き上がる胸の痛みに、オレはシャツの中のペンダントトップをギュッと握った。


 午後の講義の終わりを告げるベルが鳴り響くと講義室の中にざわざわとした空気が広がり始める。教科書をバッグに放り込み講義室を出れば、すれ違う友人達が遊びに出かけないかと声をかけてきた。
「悪い、今日はパス」
 普段なら一も二もなく乗る誘いに、今日はなんだか乗る気になれず、オレは手を振って誘いを断る。その理由を探れば思い出したくない面影が浮かびそうで、オレは軽く頭を振るとアパートに帰る為に学院の校舎を出た。門に向う間にも何度かかけられた遊びに誘う友人の言葉に断りの返事を返して、歩きながら煙草を吸おうとして懐を探ったオレは、いつも入っている筈のライターがないことに気づいた。
「あれ?どっか他のところに入れたっけ?」
 バッグの中から新しい煙草を懐に移した時、中にライターは入ってなかっただろうか。怪しい記憶を辿りながら服についているポケット全部に手を突っ込んでみたが、やっぱりライターは見つからなかった。
「落とした?どこに────あ」
 広い大学の中、落とした場所など判りっこないと思った次の瞬間中庭で煙草を吸おうとしたことを思い出す。きっとあそこだと、オレは外へ向かおうとした足を中庭へと向けた。
「確かこの辺で……、あった!」
 転た寝していた木の側の地面を探せば、程なく芝生の間に銀色のライターが落ちているのを見つけてオレはホッと息を吐く。バイトで貯めた金で買ったライターはそれなりの値段がするもので、オレは掌で銀色のライターの表面をこすって綺麗にするとポケットに入れて歩きだそうとした。その時。
「ハボック」
 不意に聞こえた声にオレは一瞬踏み出そうとした足を止める。だが、無視して再び歩きだそうとすれば伸びてきた手がオレの腕を掴んだ。
「ッ、離せよッ!」
 オレは声を張り上げロイの手を振り払おうとする。だが、思いの外強い力にそうすることが出来ず、オレは見つめてくる黒曜石をキッと睨みつけた。
「なんなんだよ、離せって言ってるだろッ!」
 じっと見つめてくる瞳の強さにオレは堪らず大声を上げる。そうすればロイが口を開いて言った。
「ブレダと仲がいいんだな」
「は?」
「講義が終わればいつだって誘いに来る連中がいるし」
「なに言って────」
「私と幼馴染みだと知ればちょっかいをかけてくる輩も減るかと思ったのに」
 そう言うロイの声に滲む不機嫌さにオレは驚いて目を瞠る。見つめてくる黒曜石に浮かぶのが何なのか、理解出来ずにいればロイが一つため息をついて言った。
「小さい頃はいつだって私の事を見つめて私の事を追いかけてきたのにな。置いていかないで、ずっと一緒にいてって、そう言って」
「な……ッ」
 懐かしいあの頃の夢を見ていた事を見透かされたように言われて、オレはカッと顔を赤らめる。そんなオレの頬に手を寄せてロイは言った。
「いい加減素直に私を見たらどうだ?私もそろそろお前に周りに群がってくる奴らを追い払うのに飽きてきたぞ」
「なに訳の判んないこと言ってんのさッ!」
 ロイの言うことはまるで意味が判らない。こうして間近でロイの存在を感じているのがどうにも辛くて手をふりほどこうとすれば、逆にグイと引き寄せられてオレは目を見開いてロイを見た。
「私を好きだと言っただろう?ずっと一緒にいると約束したじゃないか」
「ッ、子供の時の話っしょ!そんなの今更────」
「じゃあ、これは?」
 ロイはそう言うなりオレが首から下げているチェーンを引き出す。あっと思った時には目の前にチェーンに通した指輪がぶら下がっていた。
「約束の指輪だ」
「ッッ!」
 ニッと笑う黒曜石にオレは返す言葉もなく目を逸らす。そんなオレの顎を掴んで間近からオレの顔を覗き込んでロイは言った。
「ずっと好きだ、ずっと一緒にいる。そう約束したな」
「ッ、そんなの、子供の時のつまんない約束っしょッ」
「でもずっとこうして指輪を持ってた」
 そう言われてオレは唇を噛み締める。指輪にそっと口づけてロイは言った。
「私は子供の時の話だなんて思ってないよ。ずっとずっとお前が好きだ。子供の頃も今も変わらず」
 静かに、でもきっぱりと告げるロイをオレは驚いて見る。そうすれば昔と変わらない優しい光をたたえた黒曜石がオレを見つめていた。
「好きだよ────愛してる、ジャン」
「嘘言うなッ!オレの事なんてもうなんとも思ってないくせにッ!」
 ロイの側にはいつだって綺麗な女の子や優秀な友人たちが沢山いた。そんな連中に囲まれて楽しげに話すロイはとても遠くて、オレなんてもうロイにとっては子供のころから知っているただの知り合い、そんなものでしかないに違いないのに。
「────私としてはせっせと誘いをかけているつもりだったんだがな。つれなくしてたのはお前の方だろう?いくら食事に誘っても遊びに誘ってもちっとも首を縦に振ってくれなかったじゃないか。他の連中の誘いにはホイホイついて行く癖に」
「ッ、ホイホイってなんだよッ!」
「それを私がどういう気持ちで見ていたと思ってるんだ?」
 そう言う黒曜石の瞳に浮かぶのが嫉妬だと気づいてオレは目を瞠る。呆然と見つめるオレの頬にロイが手を伸ばしてきた。
「好きだよ、ハボック。向日葵みたいに明るいお前が私はずっと好きだった。だから昔のようにずっと私を見てくれ、私だけを」
「ロイ……」
 真摯な瞳で真っ直ぐに見つめてロイが言う。端正な顔が近づいてきたと思うとその唇にオレのそれを塞がれて、ビクリと震えてロイを突き放そうとしたオレを、だが力強い腕がそれを赦さなかった。
「ん……ッ、ンンッ!」
 重なった唇から忍び入ってきたロイの舌にきつく舌を絡め取られてオレはロイの胸に縋りつく。震える手でロイのシャツを握り締めるオレにロイは何度も何度も口づけた。
「好きだ、ハボック……好きだよ」
 口内に吹き込まれる優しい声がオレの涙を誘う。
「────ロイ……っ、オレもっ……ずっと好き、ロイのことがずっと好きだったっス……!」
 そんなロイにこれ以上強がる事も出来なくて、オレがポロポロと涙を零しながらずっと心の奥底に閉じ込めていた想いを口にすれば、折れんばかりに抱き締めてきたロイにオレは自分から口づけていった。


どうも!みつきですー。もっとマメに日記書こうと思ってたのに気がつけばもう十日も経ってますよ、早いなー、一週間(苦笑)
ええと、どうしてまたこんな季節外れな話かといいますと、夏ごろ頂いたコメントに萌え萌えして書いてたからなんですねー。途中まで書いてそのままになってまして、どうしようかと思ったのですが折角なので続きを書いてみました。間空いちゃったらなんかぎこちない話になっちゃった(汗)もっとダラダラ長く書きたかったかもー(笑)
んで、以前頂いたコメントへのお返事なのですが、すみません、次回に(汗)とりあえず復帰してから頂いたコメントだけお返事書かせて頂きますね。申し訳ないです。

2/19 久しぶりの更新、楽しみにしていました の方

ありがとうございます!そしてご心配おかけしました。とりあえず元気にしております〜(苦笑)黒スグリ姫、かわいいと言って頂けて嬉しいですvいいですよね、年の差v年下ハボに振り回されるロイが書いていてとても楽しいです。また続きを書きますのでお待ちくださいませv

なおさま

ただいま!ご無沙汰しておりましたv今更ですが、以前頂いた向日葵コメントをネタに書かせて頂きましたー!大きくなって素直にロイを見られないハボック……ふふふ、いいですね、向日葵vはぼっくチョコレート、これまで貰ったどんなチョコより嬉しいと思います(笑)ヒューズ、本当にいいパパですよね!はぼっくもその辺しっかり判っていて上手く甘えていると思います(笑)
2017年02月25日(土)   No.491 (ロイハボ)

新・暗獣 バレンタインデー2017
「よお、ロイ」
 チャイムの音に玄関へ行けば開いた扉の向こうに満面の笑みを浮かべる髭面を目にして、ロイは無言のまま扉を閉じようとする。だが、閉まる寸前慣れた様子で足を挟んだヒューズは扉に手をかけグイと押し入ってきた。
「呼びもしないのに来るな、髭」
「お前には呼ばれてないけどな、ハボックちゃんに呼ばれたんだもん」
「えっ?」
 思いがけない返事に扉を押さえていた手から力が抜ける。それを見逃さず家の中にヒューズが入れば、リビングの扉が開いてハボックが飛び出してきた。
「ろーいっ」
「ハボックちゃんっ」
 パタパタと駆け寄ってくるハボックを腰を落として両手を広げたヒューズが迎える。キュッとハボックを抱き締めるヒューズに、ロイが目を吊り上げた。
「おい」
「んじゃ、ロイ。お前は一時間ばかり出かけてこい。本屋に行けばそれくらいすぐだろう?」
「えっ?おい、ちょ……ッ」
 突然のことに驚きに目を見開く間にロイは扉の向こうに押し出されてしまう。扉の隙間からポイとコートが放り出されたと思うと、ガチャリという音とともに玄関が閉まってしまった。
「な……ッ、おい、こらッ!どう言うことだッ、ヒューズ!ハボックッ!!」
 訳も判らず家から追い出されて、ロイはガチャガチャとノブを回す。だが、重い扉はビクともせず、ドンドンと扉を叩けば中からすまなそうなハボックの声が聞こえた。
「ろーいー」
「ハボック!ここを開けなさいッ!」
「ロイ、この扉は一時間しないと開かない。大人しく時間を潰してこないと一生中へ入れないからな」
「なんだとッ?ここは私の家だぞッ!ヒューズ!ハボック!」
 そう言ったきり幾ら扉を叩こうと大声をあげようとうんともすんとも返事の返ってこない扉をロイは睨みつける。暫くの間そうして扉を睨んでいたが、一つため息をつくと放り出されたコートを拾い上げた。
「どうして私が追い出されなくてはならんのだ。ヒューズの奴、後で燃やしてやるッ」
 ブツブツと呟いてロイはコートを羽織ると足音も荒く出かけていった。


「さて、ハボックちゃん。邪魔者いなくなったし、早速作ろうか」
「ろいっ」
 ドアの外で騒いでいた声が聞こえなくなると、ヒューズは傍らに立つハボックを見下ろして言う。コクンと真剣な顔で頷くハボックを促して、ヒューズはキッチンへと向かった。
 一ヶ月ほど前のこと、例によってロイの家に押し掛けていたヒューズは、偶々目にしたバレンタインの広告を不思議そうに見ていたハボックにバレンタインとは何なのか説明してやった。
『バレンタインデーというのはね、大好きな相手にチョコをあげて気持ちを伝える日なんだよ。大好きとかいつもありがとうとかね』
 そう聞いて広告を手にしたハボックがヒューズをじっと見つめる。その空色を見ていれば言いたいことを察して、ヒューズはハボックの願いを叶えてやることにしたのだった。


「それじゃあまずイチゴを洗うよ」
 ヒューズは持参した紙袋の中からイチゴのパックを取り出して言う。キッチンの流しの前に椅子を置きハボックを立たせると、水を張ったボウルにイチゴを入れた。
「潰れないように優しくね」
「ろーいっ」
 ヒューズの言葉に頷いて、ハボックは小さな手でイチゴを丁寧に洗う。洗ったイチゴの水分をペーパーで拭き取ると、ヒューズはピックを取り出した。
「食べやすいようにピックを刺すよ。こっちのヘタの方から。手を刺さないように気をつけて、こんな感じ」
「ろいッ」
 言いながらやって見せれば頷いたハボックが慎重にピックをイチゴに刺す。ハボックがピックを刺している間にヒューズはチョコレートを包丁で細かく刻んだ。
「よし、それじゃあ次はチョコレートを溶かす。刻んだチョコをボウルに入れて……そうそう。そしてこのお湯を張った鍋につけて掻き回して……ほら、溶けてきた」
「ろーいっ」
 湯煎すれば瞬く間に溶け出すチョコを見てハボックが目を瞠る。綺麗に溶かしてしまうと、ヒューズはハボックがピックを刺したイチゴを引き寄せた。
「さあ、いよいよチョコをつけるよ、ハボックちゃん」
 そう言ってヒューズはスプーンを手に取る。溶けたチョコを掬ってイチゴにかけて見せてから、スプーンをハボックに差し出した。
「ろーい……」
「大丈夫、頑張って」
 にっこりと笑って言うヒューズからスプーンを受け取り、ハボックはチョコを掬う。並んだイチゴの上にスプーンを翳し、とろりとチョコをかけた。
「……ろーい」
「上手いよ、ハボックちゃん。その調子で残りもかけちゃって」
「ろいっ」
 頷くハボックに残りのイチゴを任せて、ヒューズはホワイトチョコを湯煎にかける。シートで作ったコルネに溶かしたホワイトチョコを入れるとそれを手にハボックを見た。
「飾りをつけるよ。こうして細い線をつけるんだ────はい、ハボックちゃん」
 ハボックがコーティングしたイチゴにホワイトチョコで何本か線を入れて、ヒューズはコルネをハボックに差し出す。それを受け取ったハボックが心配そうにヒューズを見た。
「ろーい〜」
「平気平気、決まった形なんてないんだから。ハボックちゃんが描きたいようにやってごらん、ね?」
 そう言ってウィンクすれば、キュッと唇を引き結んだハボックがイチゴの上にコルネを翳す。慎重に絞り出せばにゅるにゅると出てきたチョコでイチゴの上に線を描いた。
「ろーいッ」
「おお、いい感じ!上手いよ、ハボックちゃん!」
 ニッと笑うヒューズに嬉しそうに笑ったハボックが次々とイチゴに模様をつけていく。少し待ってチョコが固まったのを確認して、ヒューズはイチゴのピックを取り上げた。
「出来た!ほら!」
 そう言うヒューズが差し出したイチゴをハボックが目を見開いて見つめる。ミルクチョコのコーティングにホワイトチョコで模様をつけた紅いイチゴはとっても可愛くて、ハボックはパアッと顔を輝かせた。
「ろーいッ!ろーいッ!」
「やったね、ハボックちゃん!」
 パチンと手をハイタッチして、二人はイチゴチョコの完成を喜び合う。ヒューズが持ってきた箱に綺麗に並べて、ハボックは嬉しそうに肩を竦めた。
「後はロイが帰ってくるのを待つだけだね」
「ろいっ」
 ヒューズの言葉にハボックが頷いた時、ドンドンと扉を叩く音が響く。
「お、帰ってきた。ぴったり一時間だ、ロイの奴」
 壁の時計を見たヒューズの呆れたような声を聞きながら、ハボックは椅子から飛び降り玄関へと走っていった。


 家から追い出されたロイは言われるまま本屋へ行ったもののどうにも落ち着かず書棚の間を無駄にうろうろと歩き回る。何度も何度も懐中時計で時間を確かめ、結局一冊の本も手に取らないままロイはかっきり一時間で家に戻った。
「事と次第によっては本当に燃やしてやる」
 ぶつぶつと物騒な事を呟きながらドンドンと扉を叩けば、さっきは冷たく閉ざされたままだった扉が開く。その途端飛びついてきたハボックに、ロイは眉を下げて小さな体を抱き上げた。
「ひどいじゃないか、ハボック」
「ろーい」
 コツンと額を押し当てて言うロイにハボックがすまなそうに答える。ニヤニヤと笑って立っているヒューズをロイはジロリと睨んだ。
「早かったな、時間ぴったりだ。そんなにハボックちゃんに閉め出されたのがショックだったか?」
「やかましい。どういうことかきちんと説明して貰おうか」
 揶揄するようなヒューズの言葉にロイが低い声で答えれば、ハボックがロイの腕からピョンと飛び降りる。クイクイと手を引かれて、ロイは訝しげに眉を寄せた。
「ハボック?」
 手を引かれるままロイはリビングへと入る。ハボックはロイをソファーに座らせるとタタタと走ってキッチンへと行ってしまった。すぐさま戻ってきたハボックは手に箱を持っている。リボンのかかった箱を、ハボックはソファーに座ったロイに向かって差し出した。
「ろぉいっ」
「これを私に?くれるのか?」
「ろいっ」
 コクコクと頷くハボックの手からロイは箱を受け取る。膝に置いて空色のリボンを解くとそっと箱を開けた。
「これは」
 箱の中に並んだチョコレートで飾られたイチゴを見て目を瞠るロイの耳にヒューズの声が聞こえた。
「ハボックちゃんからお前にバレンタインのチョコだってさ」
 その声にロイは弾かれたように顔を上げる。キラキラと目を輝かせて見つめてくる空色を見つめ返したロイは、見開いた瞳をフッと細めて箱の中のイチゴに目を戻した。ピックに刺さったイチゴを摘むとパクリと食べる。噛めば口の中に広がるイチゴの酸味とチョコの甘さにロイの顔に笑みが浮かんだ。
「旨い────お前が作ってくれたのか?ハボック」
「ろーいッ」
 頷いてハボックがロイの膝に頬を寄せる。グリグリと頬をすりつけるハボックの髪をロイは優しく撫でた。
「ありがとう、ハボック。こんなに嬉しいバレンタインは初めてだ」
「ろいッ」
 そう言うロイにハボックがソファーによじ登ってキュッと抱きつく。小さな体を抱き返しながらロイは側に立つヒューズを見上げた。
「世話をかけたな、ヒューズ」
「俺はハボックちゃんのお願いを聞いてあげただけだよ」
 肩を竦めて答えるヒューズにロイは笑みを浮かべる。嬉しそうにロイに抱きつくハボックを見て、ヒューズは一つ伸びをして言った。
「それじゃあ俺は帰るわ。またね、ハボックちゃん」
 ひらひらと手を振ってヒューズが出ていこうとすれば、ハボックがソファーから飛び降りる。キッチンに行ったと思うとパタパタと駆け戻ってきたハボックが小さな手を差し出した。
「ろいっ」
 ピックに刺したイチゴを差し出すハボックにヒューズが眼鏡の奥の目を見開く。真剣な面もちで見上げてくるハボックに、ヒューズはフニャアと顔を笑みに崩した。
「俺にもくれるの?ハボックちゃんっ」
「ろーいっ!ろいっ」
 ありがとうと言うように差し出されたイチゴを、ヒューズは身を屈めてパクリと食べる。「ンーッ」と満足そうに目を閉じて味わうと、ヒューズは嬉しそうにハボックの頭をくしゃくしゃと掻き混ぜた。
「すっごく美味しいよ、ハボックちゃん!ありがとね」
「ろぉいっ」
 ヒューズの言葉に嬉しそうに笑うハボックの頭を一頻り撫でて、ヒューズは身を起こした。
「じゃあな」
「ああ」
「ろーい!」
 軽く手を振って帰っていくヒューズを見送って、ロイとハボックは可愛いイチゴのチョコレートを間に楽しいバレンタインの一日を過ごしたのだった。


みなさま、お久しぶりでございます。まだ覚えていてくださっているでしょうか、みつきです(苦笑)すっかり放置サイトになってしまっていてすみません。いや、さぼり癖がつくとダメですね、ホント(汗)そろそろいい加減腰を上げないとこのままになってしまいそうでしたので、バレンタインを機に浮上してみましたー。今年も本当はみなさまから楽しいネタを頂きたいなーと思う気持ちもあったのですが、流石に無理だろうと暗獣はぼっくに頑張って貰いました。大好きなロイにバレンタインチョコをあげるはぼっくのお話。髭にも手伝って貰いましたよ。なんだか無駄に長くなってしまいましたがとりあえず再出発はこんな感じで(笑)ぼちぼちまったり頑張ろうと思いますので、よろしければまたおつきあいのほどお願いいたします。
潜っている間にもメッセージや拍手ありがとうございました!お返事……い、今更??今更ですかね……?くださったご本人も何を書いたか覚えていらっしゃならないんじゃないだろうか……(汗)えっと、と、とりあえず悩んで次回の日記でお返事……たぶん(滝汗)
2017年02月14日(火)   No.489 (カプなし)

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  Photo by 空色地図

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