ロイハボ風味
「────灯りがついてない……」 司令部から乗り付けた車が停車するのを待つのももどかしく、車の扉を自分で開けたロイは家の灯りがついていないことに気づく。車から降り、運転していた警備兵を手を振って帰らせると門扉を開けて玄関に続く短いステップを上がった。鍵を開け中に入りリビングを覗く。薄暗いリビングにはハボックの姿はなく、ロイは不貞腐れて寝ているのかもと二階への階段を上がった。 「ハボック?」 寝室の扉を開けながら声をかける。だが、薄闇に沈んだ寝室のベッドの上にもハボックはいなかった。 「ハボック!」 ロイはハボックの名を呼びながら家の中を探して回る。だが、何処にもその姿がないと判ると階段を駆け降り玄関から飛び出した。 「何処に行ったんだ?ハボックのヤツッ!」 辺りを見回しながらそう呟く。そうすれば出掛けにハボックと交わした会話が頭に浮かんだ。 『浮気してやるッ!』 何ヶ月も前から一緒に過ごすと決めていた記念の日。望んでそうした訳ではないが結果的に約束を破る形になってしまった。腹立ち紛れにハボックが言った言葉に自分はなんと返したか。 『浮気?お前が?出来もしないことを言うな』 鼻で笑ってそう言った。ハボックが自分に惚れていると言う自信があったとはいえ、本来ならすぐに帰る、待っていてくれ、自分も本当は行きたくないのだと、優しくハボックを宥めてやるべきだったのだ。 「どこに行った、ハボック」 異性以上に同性に対してセックスアピールがあることを、ハボックは全く自覚していない。軽い気持ちでついていったハボックが厄介事に巻き込まれているかもしれないと思えば、ロイの足は自然と速まっていく。 「馬鹿な事をするんじゃないぞ、ハボック……ッ」 誰よりも大切なハボックの姿を探して、ロイは夜の街を駆けていった。
「おう、レニ、もう上がりか?」 「ああ、約束があるんでな。じゃ、お先」 店の同僚にニヤリと笑って手を振って、レニは店の裏口から表へ出る。ポケットに手を突っ込んで歩き出したレニの厳つい顔には下卑た笑みが浮かんでいた。 「ニコルのヤツ、今日はまた旨そうなのを連れてたな。何処で見つけて来やがったんだ?」 そう呟けば脳裏にニコラスが連れていた金髪の男の姿が浮かぶ。ニコラスが選んだ体にぴったりと張り付くシャツと、かなり派手にダメージ加工されたジーンズから白い肌を覗かせた姿を思い浮かべれば、今夜の楽しみに無意識に笑いが零れた。ククッと顔を歪めて笑うレニに丁度通りかかった店の前で呼び込みをしていた男が声をかけた。 「なんだよ、レニ。今夜はまた随分と楽しそうじゃねぇか」 「ん?ああ、ハリーかよ」 かけられた声にレニが足を止める。クツクツと喉奥で笑いながら言った。 「ニコルのヤツが旨そうなの連れてきてよ。今からソイツ囲んでパーティって訳だ」 「またヨアヒムの店かよ。そこまで言うなんてよっぽどの美人か?」 ハリーの言葉に「ああ」と頷くレニの顔がイヤラシく歪む。 「金髪に空色の瞳でよ、いい躯してやがんだ、コレが。ニコルにぴっちぴちのシャツとデカい穴の開いたジーンズ着せられて……あれを今からひんむいて突っ込んでやると思うとうずうずするぜ」 「相変わらずだな、お前ら。あんまりヤりすぎんなよ」 「それは判んねぇなぁ、スキモノそうな躯だったからよ。ジャンとか言ってたな、たっぷり可愛がってやらんと」 ニコラスが呼んでいた名前を思い出して、レニが下卑た笑いと共に言った時、背後から低い声が聞こえた。
「くそッ、一体何処に……ッ?」 二人で行った事のある店を片っ端から覗いてみたものの、目指す姿を見つけられずロイは苛々と辺りを見回す。時間が経つにつれ不安と苛立ちが募って、知らず足早になるロイの耳に男の声が飛び込んできた。 「金髪に空色の瞳でよ、いい躯してやがんだ、コレが。ニコルにぴっちぴちのシャツとデカい穴の開いたジーンズ着せられて……あれを今からひんむいて突っ込んでやると思うとうずうずするぜ」 「相変わらずだな、お前ら。あんまりヤりすぎんなよ」 「それは判んねぇなぁ、スキモノそうな躯だったからよ。ジャンとか言ってたな、たっぷり可愛がってやらんと」 聞こえた名に黒曜石の瞳を見開いたロイはゆっくりと声のした方を振り向く。厳つい顔に下卑た笑みを浮かべる男に近づきながら口を開いた。 「おい、貴様、一体誰の話をしている?」 そう言えば男が振り向く。胡散臭げにロイを見て、目を眇めた。 「ああ?なんだ、お前。関係ないヤツが話に割り込んでくるんじゃねぇよ」 フンと鼻を鳴らして男は言うと、ロイを押し退けて行こうとする。だが、ロイに腕を掴まれて、男は顔を歪めてロイを睨んだ。 「離せよ、この野郎、ぶん殴られたいのか?」 頭一つ低いロイを見下ろして凄んで見せる男を、冷たく見返してロイが口を開いた。 「ソイツを何処に連れていった?答えろ」 「ハア?!何言ってやがる」 「答えろと言っている」 低く尋ねるロイの整った顔を見返してレニが嘲笑う。押し退けて行こうとすれば掴まれた腕をグイと引かれて、ギッと睨んだレニの顎にロイの拳がヒットした。 「グハッ!」 思いがけない強烈なパンチにもんどりうって倒れたレニは、ゴリと股間を踏みつけられてギョッとしてロイを見上げた。 「どこへ連れていった?答えなければ二度と使いものにならなくしてやる」 そう言い終わらぬうちにググッと股間に体重をかけられてレニが悲鳴を上げる。 「判った!教えるッ!教えるからやめてくれッ!」 両手を振って大声を上げるレニを、ロイは怒りの焔をその黒曜石に燃え上がらせて睨みつけた。
いつも遊びに来て下さってありがとうございますv さてさて、一年越しのロイハボの日話、続きでございます〜(笑)ポメラの不調でちょっと間に合わないかと思いましたが、なんとか続き。でもまだジャン君ヤバいまんまです(笑)早く助けてあげて、大佐!(笑)ってなわけで、なるべく間開けずに続きを書きたいと思っておりますので、引き続きお付き合い頂けたら嬉しいですv ポメラ、早く来い(笑)
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