ハボロイ風味
「たーいさっ」 「ハボ────?うわッ!」 本を読んでいたロイは聞こえた声に顔を上げようとして、突然ズボッと頭に何かを被せられて反射的に目を瞑る。ゆっくりと閉じた目を開けて、ロイはそっと頭に手を伸ばした。 「────なんだ?」 指先に当たるのは柔らかい毛のようなものだ。髪の毛とは違う、だが触り心地のよいそれを撫でながらロイは首を傾げた。 「なんだ、これ?」 ロイは頭にある正体不明の物体を撫でながらそれを被せた男を見上げる。そうすればハボックがにっこりと笑った。 「猫耳〜〜ッ!やっぱ思った通り似合うっスねッ!」 「────」 満面の笑みを浮かべて言うハボックの言葉が理解出来ず、ロイはポカンとしてハボックを見つめる。 「かーわいい〜〜!やっぱりアンタには猫耳っスねッ」 うふふ、ふわふわ〜とハボックの指に頭の上の物体を擽られた次の瞬間、ロイはソファーから飛び上がるように立ち上がるとハボックを突き飛ばして洗面所に駆け込んだ。 「な、な、な……なんだ、これはッッ!!!」 ロイは鏡に映る自分の姿に目を剥く。さっきハボックが被せたのは猫耳がついたカチューシャで、カチューシャの輪の部分が黒髪に隠れているせいでまるで頭から猫耳が生えているように見えた。 「ふざけるなッ!こんなもの……ッ!────あ、あれ……?」 目を吊り上げたロイはカチューシャを外そうとして引っ張る。だが、どんなに引っ張ってもカチューシャは外れないどころか、カチューシャと一緒に頭の皮まで引っ張られてロイは痛みに耐えかねて引っ張るのをやめた。 「〜〜〜〜ッッ!!」 ロイは洗面所を飛び出すと足音も荒くリビングに戻る。ソファーでのんびりと煙草をふかしているハボックをもの凄い形相で睨みつけた。 「貴様ッ!これは一体なんなんだッッ!!」 「なにって……猫耳っスよ。オレが錬金術で作ったんス」 「────は?」 ごく限られた者にしか知らされていないが、ハボックは錬金術師だ。煙草から立ち上る霧を使う錬金術は国家錬金術師並のレベルであるが、ハボックは己の錬金術はロイの為のものだと言い切って、その力は公にはされていなかった。 「錬金術って……お前、物質錬成なんて出来たのかっ?」 「そりゃオレだって錬金術師の端くれっスからね。普段やらないだけで物質錬成くらい出来るっスよ」 自らを霧屋と名乗るハボックの錬金術は専ら大気中に生み出した霧を使って攻撃や防御を行う類のものだ。 「普段物質錬成なんてしてないだろうッ?」 「だって、普段は必要ないし」 目を剥いて声を張り上げるロイにハボックは肩を竦める。ロイの猫耳を見上げてにっこりと笑った。 「よく出来てるっしょ?結構苦労したんスよ。いやあ、似合ってる、よかったよかった」 「よくないッッ!!」 嬉しそうに言うハボックにロイがキーッと牙を剥く。 「とれないぞッ!一体どうなってるんだッ!」 「ああ、だって今それ、根っこが生えてるみたいなもんスから」 「は?根っこ?」 「要するに今はアンタの頭と一体になってるって事っス」 「一体……?」 言われてロイは頭上の耳に意識を向ける。そうすれば猫耳がロイの不安に答えるようにピクピクと動いた。 「ね?かわいいっしょ?」 それを見たハボックがニコニコと笑みを浮かべながら言う。その顔をじっと見ていたロイは懐から発火布を取り出しスッと手にはめた。 「今すぐ外せ。でなければ燃やす」 「えーッ!折角かわいいのにッ!」 「ハボック」 抗議の声を上げるハボックにロイは発火布をはめた手を突き出す。指をすり合わせようとするのを見て、ハボックが慌てて両手を振った。 「待って待って!それ、外すには方法があるんですってば!」 「方法だと?今すぐ言え!」 「でも今はまだ真っ昼間だし」 「はあッ?昼間だと何だと言うんだッ!」 訳の判らん事をッ!とロイが突き出した指を鳴らそうとするのに、ハボックは慌ててその手を掴んだ。 「えっとね、それを外すには……」 「なんだ、さっさと言えッ」 「────イきまくると外れるっス」 「────は?」 「だからね、ものすごーく感じると外れるんスよ、それ」 エヘへと笑って言うハボックの顔をロイは凝視する。食い入るように見つめてくるロイにハボックはポケットの中から黒い尻尾を取り出して見せた。 「今ならこんなものもご用意してるっスよ。これ使えば一発で外れるかも。使います?」 そう言うハボックが手にした黒い猫の尻尾の先端にはどう見ても大人の玩具としか見えないものがついている。 「まあ、真っ昼間だけどどうせいるのはオレとアンタだけだからいいっスね」 じゃあ早速、と手を伸ばしてくるハボックに。 「────貴……様ァッッ!!」 ドーンッ!!と特大の火の玉が命中した。
いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、元気貰ってます、本当にありがとうございますvv
猫の日ですね。実は全然気づいてなかったのですが、ねこあつめの今日の合言葉が「にゃにゃん」だったので(笑)最初は暗獣はぼっくかなーと思っていたのですが、たまにはハボロイってことで。しょうもない話でスミマセン(苦笑)きっとこの後どうしても猫耳外せなくて結局事に及んだと思われますが続きはありません。霧屋と犬毛相見はエッチのない話なので、ふふふ。
以下拍手お返事です。
なおさま
おお、退院おめでとうございます!どうなさったかと心配しておりましたがよかったですー!バレンタインネタ、ニヨニヨしながら読んで下さってありがとうございます(笑)えっ、ホワイトデーネタでそれを書いてもいいんですか??って、勝手にネタにしますよ、いやホントに(笑)拍手、不具合ですみません(汗)でもコメントは一回しか届いてなかったので大丈夫ですv
はたかぜさま
……ですよね?お名前なかったけど(笑)えへへ、お菓子屋さんハボック、可愛いと言って下さってありがとうございますvvあー、その呑気なハボック、今度書くーvv(すぐ飛びつくヤツ(苦笑)お菓子、美味しそうですか?よかったーv写真載せたいと思いつつ書いたので(笑)マシュマロ、明治屋のマシュマロが美味しいですよー。季節限定で今は桜のマシュマロなんかが出てます。冬季限定のあまおう苺&ミルクのマシュマロは絶品でしたvvそしてホワイトデーリクありがとうございます!めちゃくちゃ楽しそう!是非とも書かせて頂きますよvいつも本当にありがとうございますv
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