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2018年07月の日記

2018年07月09日(月)
新・暗獣 七夕2018 はぼっくの願い事
2018年07月07日(土)
暗獣 七夕2018

新・暗獣 七夕2018 はぼっくの願い事
「ハボック、本が届いたと連絡があったからちょっと出かけるが、お前も来るか?」
 受話器を置きながらロイは七夕の飾りを眺めているハボックに尋ねる。ハボックはちょっとの間小首を傾げて考えたが、ふるふると首を振った。
「そうか、だったらちょっと出かけてくるからいい子にして待ってるんだぞ」
「ろーい」
 そう言うロイにハボックが答えれば、ロイはポンポンと金色の頭を叩いて出て行く。パタンと扉が閉まる音がしてロイが出かけると、ハボックは窓辺に飾られた笹に目を戻した。
 今年もロイと一緒に色とりどりの折り紙で飾りを作って笹を飾った。さやさやと風に緑の葉と七夕の飾りを揺らす笹を嬉しそうに見上げていたハボックは、願い事を書いた短冊が裏返っていることに気づいた。
「ろーいー」
 裏返っていたのでは星に願いを聞いてもらえないではないかと、ハボックは眉を寄せる。手を伸ばして短冊を表向きにしようとしたが、なるべく高いところにとつけた短冊は子供の手には届かなかった。
 ムゥと眉間の皺を深めて、ハボックは部屋の中を見回す。ロイがいつも本を読むときに使っている椅子があるのを見て、ハボックはタタタと椅子に駆け寄ると、椅子の足を両手で掴んで引っ張った。
「ろーいっ」
 椅子はちょっと抵抗したものの、ずるずると引っ張られて窓辺に寄っていく。重い椅子をなんとか笹の近くまで運ぶと、ハボックはホッと息を吐いた。一息ついてハボックは椅子によじ登る。短冊を表に返そうとして、折角だから星からよく見えるようもっと高いところにつけようと、短冊を笹から外した。その時。
 突然ピューッと強い風が吹いてハボックの手から短冊を巻き上げる。あっと思ったときには願い事を書いた短冊はハボックの手から離れて窓の外へと舞い上がった。
「ろーいッ!」
 慌てて伸ばした小さな手をかいくぐって短冊が空に舞い上がる。咄嗟にポンと黒い毛糸玉に姿を変えると、ハボックは舞い上がる短冊に飛び乗った。
「────!」
 風に乗って空高くへと上っていく短冊に乗っかった毛糸玉は、落ちないように短冊の紐をしっかりとその黒い毛の中に抱き込んだ。家の窓を下に見下ろしたと思うと、あっという間に景色が変わり短冊はまるで羽が生えているかのように飛んでいく。その上でどうすることも出来ず毛糸玉が体を震わせていると、やがて気まぐれな風に身を任せていた短冊はゆっくりと地面に向かって高度を下げていった。木々の枝の高さを過ぎ、家々の屋根を過ぎて短冊はふわりと地面に舞い落ちる。漸く足が地面に着いて、毛糸玉はホッと息を吐いた。ポンと弾けて子供の姿になると、ハボックは足下に落ちた短冊を拾い上げて辺りを見回した。
「ろーい……」
 家と家の間の路地らしきそこにハボックは見覚えがない。そろそろと路地から顔を出せば、大勢の人が行き交うのが見えて、ハボックは慌てて路地に引っ込んだ。
 外に出る時はいつもロイと一緒だし、そもそもロイやヒューズの一部の人間を除けばハボックの言葉の意味を理解するのは難しい。そうであれば今自分が陥っている状況を説明するのも家に帰りたいと伝えるのもとても小さなハボックには出来はしなかった。
「ろーい……ッ」
 路地の隅っこにぺたんと座り込んだハボックは、願い事を書いた短冊を握り締めてポロポロと涙を零す。短冊を外したからきっと願い事が叶わなくなってしまったのだとヒックヒックと泣きじゃくっていたハボックは、ふと射した影に顔を上げた。すると。
 目の前に立っているのは毛並みも美しい真っ黒な犬。ヌッと顔を寄せてきたと思うとのし掛かるようにして顔を舐められて、ハボックはぴっと悲鳴を上げた。
 ハボックの頬に残る涙の痕を黒い犬がペロペロと舐める。その仕草が自分を慰めているように感じて、ハボックは犬を見上げた。
「……ろーい」
 そうすれば尋ねるように見つめてくる犬にハボックは手にした短冊を見せる。差し出された短冊に鼻を押しつけた黒い犬は、次の瞬間ハボックの襟首を咥えたと思うとポンと己の背中にハボックを放り投げた。
「ろいッ!?」
 びっくりしたハボックが飛び降りる間もなく、犬はハボックを背に乗せたまま走り出す。ハボックは振り落とされないよう犬の背にしがみついた。
「ろーいッ!」
 黒い犬は路地から飛び出し通りを駆けていく。背中に子供を乗せた黒い犬が走っていくのを通りを行く人々が驚いて見送った。
「ろーい〜ッ!」
 どこに行くのか判らず、と言って飛び降りることも出来ず、ハボックは短冊を握り締めて犬の背にしがみつく。どれくらい走ったのだろう、ハボックの髪を靡かせていた風が弱くなり犬はやがてゆっくりと止まった。
「ろーい……?」
 必死に犬の背にしがみついていたハボックはホッと息を吐くと犬の背から滑り落ちるようにして降りる。トンと足を地面につけて辺りを見回したハボックの頭上から驚いたような声が降ってきた。
「ハボック?!どうしてここに?!」
「ろいッ?!」
 その声に弾かれたように振り向けば、古書店の前にロイが目を見開いて立っている。その姿を見た途端、ハボックの空色の瞳に涙が盛り上がった。
「ろーい〜〜〜ッッ!!」
「ハボック!」
 ピョンと飛び込んでくるハボックをロイが跪いて腕に受け止める。わんわんと泣きじゃくるハボックを抱き締めていたロイは、黒い犬が自分たちを見ていることに気づいた。
「ガッシュ」
 ロイは古書店の店主の愛犬の名を呼ぶ。そうすれば、黒い犬が寄ってきてハボックの手の中の短冊に鼻を押しつけた。
「もしかしてお前がハボックを連れてきてくれたのか?」
 どういう経緯でハボックが外に出てガッシュと会ったのかは判らないが、少なくとも彼のおかげでハボックは無事ロイのところへ戻ってくることができたらしい。
「ありがとう、ガッシュ。今年は星より先にお前がハボックの願い事を叶えてくれたようだな」
 そう言って犬の頭を撫でれば、黒い犬が目を細めて笑った。


遊びに来て下さった方には本当にありがとうございます。そしてポチポチ拍手もとっても嬉しいです……!
結局二日も遅れてしまいました、七夕ネタ。その上なんてことない話っていうね(苦)はぼっくの願い事はいつでも一つなので(笑)きっと短冊に残ってたロイの匂いでガッシュくんははぼっくをロイのところに連れてきてくれたんだろうと思います。うん、きっとねッ(汗)
そうそう、今回おニューのポメラで打ってみました。前のポメラよりデカくて画面も大きいのかなぁ。キーが変に軽くて慣れるまでちょっと打ちづらそうです。まだロイとハボックとマスタングくらいしか単語登録していないので早く登録しないとだわ〜(笑)あ、前のポメラよりちょっぴり賢くなりました。「跪く」とか「咥える」とか文字パレットで入力しなくても出るよ!便利!変換は相変わらず「オイ」って感じではありますが(苦笑)あとね、パソと繋ぐケーブルがついてないんですよ!お手持ちのmicro USBケーブルで繋いで、ってうちにあるの10センチくらいの長さのしかないからめっちゃ繋ぎにくいんですがッ(爆)ともあれ折角ポメラを新しくしたので、少しずつでも何か書いていきたいなーと思います。時々覗いてやって頂けると嬉しいですv

以下拍手お返事です。

無配本を申し込んでくださった方

お返事遅くなりました(汗)無事お手元に届いてよかったです!いやもう読んで頂けるのがとっても嬉しいので、どうぞ安心してお受け取りくださいvあ、もし乱丁ありましたら、どうぞご遠慮なくお知らせくださいね。ロイハボの日の続きも頑張ります!早く助けてあげなくちゃ!そしてそのあとのラブラブもv拙宅の作品が大好きと言って頂けて本当に嬉しいです。これからもどうぞよろしくお願いいたしますv
2018年07月09日(月)   No.505 (カプなし)

暗獣 七夕2018
小さいはぼっくでお話を書いてましたが、睡魔に勝てませんでしたーorz
という訳で、一日遅れで明日(汗)
2018年07月07日(土)   No.504 (カプなし)

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