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2013年04月の日記

2013年04月19日(金)
新・暗獣42
2013年04月12日(金)
妖9
2013年04月08日(月)
両妬心
2013年04月06日(土)
獣5
2013年04月01日(月)
キューティクル探偵増田

新・暗獣42
「凄い風だな」
 ビョオと吹き付けた風がガタガタと大きく窓ガラスを鳴らすのを聞いて、ロイは読んでいた本から顔を上げる。窓枠にしがみついて外を見ていたハボックが眉を寄せてロイを振り向いた。
「ろーいー」
 悲しそうに口をへの字に結ぶハボックの向こう、窓の外では淡く色づく花びらが沢山舞っている。丁度見頃の八重桜の花が強い風で散らされているのだと気づいてロイは言った。
「仕方ないな、この風じゃあひとたまりもないよ」
「ろーい……」
 ロイの言葉にハボックがガッカリと肩を落とす。そう話す間にも風は強さを増して吹き荒れて、ビリビリと震える窓ガラスを見てロイは眉を顰めた。
「鎧戸を閉めておいた方がいいかもしれんな」
 この強風で飛んできた物が窓に当たりでもしたらガラスが割れて怪我をしかねない。ロイは本を置いて立ち上がると窓に近づき強風に震える窓を開けた。その時、一際強い風が吹き付けロイは咄嗟に腕を翳す。そのロイの隣でぴゃと短い悲鳴が聞こえて、ロイは慌てて横を見た。すると。
 吹き付けた強風でハボックの体がフワリと宙に浮く。慌てて伸ばしたロイの手はハボックに届かず、軽い体は吹き付ける風に乗って壁に叩きつけられそうになった。
「危ないッ!」
 壁に叩きつけられる寸前、ハボックがポンと黒い毛糸玉になる。柔らかい毛糸玉は壁にポンと弾むと、そのまま床に落ちた。
「ハボック!」
 ロイはハボックを肩越しに振り返りながらも鎧戸に手を伸ばして風の勢いに逆らって閉め、窓も閉ざす。そうしておいてから床に転がる毛糸玉に駆け寄れば、ポンと弾けた毛糸玉がハボックの姿に戻った。
「ろ〜い〜」
「大丈夫かっ?ハボック!」
 クラクラと目を回していたハボックは、ロイの声にふるふると首を振る。パチパチと瞬いてハボックはロイに腕を伸ばした。
「ろーい」
「怪我はないか?……よかった」
 ホッと息を吐くロイにハボックがにっこりと笑ってしがみつく。柔らかい金髪を撫でながらロイは言った。
「鎧戸を閉めようと思ったんだが、すまなかったな、ハボック」
「ろい」
 花が吹き散らされるのはともかく、まさか部屋の中でハボックが吹き飛ばされるとは思わなかった。
「確かにこんなに軽いものな」
 腕の中のハボックの体は羽のように軽い。ロイがそう思いながらハボックを見つめた時、吹き荒れる風にガタガタと大きな音を立てた鎧戸にハボックがビクリと震えた。
「ろーい〜」
「家中の鎧戸を閉めて、今日は大人しくしておいた方が良さそうだ。ハボック、お前はここで待って」
 いなさいと言う前にハボックにギュッとしがみつかれてロイは苦笑する。
「判った、判った。しっかり掴まっていろ」
「ろーいっ」
 言われてハボックがロイのシャツの中に潜り込むのを見届けてロイは家中の鎧戸を閉めて回った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになってます、嬉しいですv

うちの方は元々わりと風が強いので、風予報が黄色い矢印だったりするとかなり強風だったりします。赤矢印だった日にゃもう大変……(苦)並べてある自転車なんてひとたまりもなく、この間もどうせ起こしてもすぐ倒れるし、いいやこのままで。どうせ家族しか通らないし、と放置しておいたら宅急便のお兄ちゃんが自転車跨いで荷物持ってきてくれました。いやあ、盲点だったぜ、ごめん、お兄ちゃん(苦笑)それにしても今年はやたら風が強い日が多い気がするのは気のせいかしら。風強い中出掛けると、帰ってきて自分が埃臭いからヤダ(苦)

以下、拍手お返事です。

なおさま

昨日までは5月の陽気で今日は3月……。ホントいつまでたっても暖かくならないですね(苦笑)「妖」暖めてあげる発言はハボックとしては全然イヤラシイ意味はないのですよ。弱い人間を守りたいだけなのです。期待したであろうロイには可哀想ですが(笑)でも、守ってずっと側にいて欲しいと思っているからある意味ニヤついてもいいかなぁ(笑)あの人、エドパパ説!(爆)お父様だったら実はハボを作ったのが……とかネタになりそうですよね(笑)タイトル、もーいっつも浮かばないもんで、造語という力技に(苦笑)しっくりきていると思って頂けたのなら嬉しいです〜v「マース」とうるうる瞳潤ませるハボックに、ばひょーんと天を突いたナニがその勢いで剥けてしまうかもしれません(爆)うお、本にして欲しいタイトル、ありがとうございます!思いがけないところに一票貰った気分です。私としては好きな話なので大好きと言って頂けて嬉しい〜vこのまま採用になるかもです(笑)「セレスタ」マドラスにはガッツリやって貰わないとハボックが帰ってこない(苦笑)そうそう、havocってそういう意味なんですよね。サイトを始めたばっかりの頃、辞書で引いて「へぇ〜」と思ってネタにした記憶が(笑)そうか、受話器外しておけばよかったんだ!って、私も引き千切る派だったのか(爆)「久遠」あはは、もう中尉はどこ行っても最強ですよね!おおう、増田神社の狛犬〜〜〜vvいっそこのままハッピーエンドに持っていこうかしら(こら)ウルフがハボックの面倒見がいいのは、自分は絶対ロイに必要とされているという自信があるからかもしれないです。でも、本当にロイ<ハボになりそうですよねぇ、ヤバい(苦笑)
2013年04月19日(金)   No.310 (カプなし)

妖9
「ああ、寒かった!」
 バンと勢いよく扉を開けてリビングに入れば、ソファーに腰掛けて雑誌を読んでいた彼が驚いたように顔を上げる。空色の瞳が私の動きを追うのを感じながら、私は暖炉の前に腰を下ろした。
「なんでいつまでたっても寒いんだ。嫌がらせか?」
 ブツブツと文句を言って暖炉に手を翳せば、背後で彼がプッと吹き出すのが聞こえる。彼は雑誌を脇に置いて立ち上がると私に近づいてきた。
若葉寒(わかばざむ)っスね」
「なんだ、それは。花冷えの仲間か?」
「仲間って……、まぁ似たようなもんスけど」
 彼がそう言って窓の外へと視線を向けるのにつられて外を見ると、この間まで花をいっぱいにつけていた桜が散って緑の若葉が芽吹いているのが見えた。
「ああ、それで若葉寒か」
 どうやら新緑の頃に寒くなることをそう言うらしい。私よりそう言った言い回しに詳しい事に感心して、私は言った。
「他にもなにかあるのか?そういうの」
「そっスね……リラの花が咲く頃ならリラ冷えだし雨の頃なら梅雨寒?」
「よく知ってるな、本当に」
 素直にそう言うと彼が困ったように目を伏せる。
「あの人がそう言うの好きだったから」
 囁くように言う彼の瞳が追憶に煙るのを見れば沸き上がるのは醜い妬心。私は手を伸ばして火掻き棒を取ると乱暴に暖炉の灰を掻き回した。新しい空気が入って赤く火が燃え上がるのがまるで私の心の内を映し出しているようで、私は苛々と薪をつついた。
 パチパチと火の爆ぜる音がする。彼の方を見る事が出来ないまま悪戯に灰を掻き回し続けていた私の首に、スルリと彼の腕が巻き付いてきた。
「ッ?!」
 間近から見上げてくる空色に息を飲む。言葉を発する事も出来ず見つめた彼の瞳が揺れて金色の睫の陰に隠れた。
「寒いならオレがあっためてあげるっスから、だから――――」
 早口にそこまで言って彼は口を噤む。恐る恐る腕を回せば彼の伏せた睫が震えたと思うとその姿がパアッと輝いて金色の犬の姿になった。
「ッ?おいっ」
 金色の犬はスルリと私の腕から抜け出て走り去ろうとする。私は自分でも信じられないような反射神経で腕を伸ばすと彼の体を抱き締めた。
「……あったかいな」
 柔らかな金色の毛並みに頬を寄せればイガイガとした気持ちが凪いでいく。抱き締める腕に力を込めれば腕の中の体が微かに震えた。
「    」
「え?」
 彼が何か言ったが微かな声は人である私の耳では聞き取れない。尋ねるように腕に力を込めても彼はそれ以上口を開かず、私はパチパチと爆ぜる薪の音を聞きながらただ彼の体を抱き締め続けた。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、とっても励みになってます、嬉しいですv

三月は暖かい日が続いたのに四月になったら寒いです。明日までは寒いのが続くと言っていた気象予報士のお兄さんが、「若葉寒ですね」と言ってました。花冷えもそうだけど、こういう言い回しって好きだなぁ。寒いのもまあいいかという気持ちになります(笑)

そうそう、少し先の話ですが、毎年サイトの○周年記念でその頃日記連載してるのをコピー本もどきにして配布してますが、今年は本にするだけネタが溜まらない気が(苦)「妖」はやっと9だし「獣」に至ってはまだ4だし、四ページくらいにしかならなさそう……。それならどうせネットに一度掲載したものを本にするんだし今まで連載したものでもいいんじゃね?と思い始めましたー(笑)まあ、本と言っても印刷したのを自分で中閉じ用のデカいホッチキスでガショガショ留めてるだけだし、最近は貰ってくださる方も減ってるし無理に作らなくてもいいのかなとも思わないでもないですが、やっぱり一年毎の区切りだしこれくらいしか日頃の感謝を伝える方法が浮かばない…。そんな訳で、ネットで読めるけど紙媒体でも読みたいなぁ、なんて作品がありましたら拍手でコソッと囁いて頂けたらと思ってます。カプはロイハボとハボロイ。テキストページにあるいただきもの以外のもので完結している作品に限ります。よろしければ是非「これ!」と言ってやってください〜!

でもって明日の更新ですが、セレスタだけになりそう…間に合わない(苦)申し訳ないですorz

以下、拍手お返事です。

これからも頑張って下さい! の方

ありがとうございますっ!そう言って頂けると頑張ろうって気持ちが湧きますーv頑張りますよ!どうぞお付き合い下さいねv

なおさま

あー、あのタイトルは私の造語なので決まった読み方はありません(爆)「両想い」とかああいう感じで、互いに嫉妬してるって事でこんなタイトルにしてます。字面で決めてるっていう……適当なタイトルで申し訳ない(苦笑)メインでデザートで前菜だったりもすると思います(笑)うお、ハピバありがとうございますーv髭も喜んでくれてますかね?だったら嬉しいなぁvいや本当チョコレートケーキは厳しかったです……チョコは好きだけどあれはねぇ(苦笑)わあ、岩戸の中に引っ張り込まれたハボック、そう来たか!(爆)パンツ押さえた髭とパンツ一丁のハボがにらみ合ったままじりじりと間合いを測っている姿を想像して笑ってしまいましたよ(笑)ヒュも剥かれるくらいならハボを押し倒そうとするだろうしな、腐腐腐vそして56万打もありがとうございますvこちらこそどうぞよろしくお願いしますねvv「久遠」まあ、一応ウルフも助けたと言えば助けたんですけど、やっぱり助けられた本人のロイとの認識の差は大きいでしょうからねぇ。ああ、狛犬!いいなぁ、それvそしてやっぱり皆から愛されるハボは理想ですvv(笑)
2013年04月12日(金)   No.309 (カプなし)

両妬心
ロイハボ風味

「大佐?さっきの呼び鈴、誰か来たん……、どっか行くんスか?」
 二階でウトウトとしていれば聞こえた呼び鈴に慌てて玄関に降りてきたハボックは、洒落たスーツに身を包んで大きな花束を抱えたロイを見て目を丸くする。どうみてもデートにしか見えないその出で立ちに顔を曇らせるハボックにロイは答えた。
「以前世話になった人の奥方の誕生日なんだ。誕生会に呼ばれたんでな」
 花屋に届けるよう頼んでおいた花が来たから出かけると言うロイに、ハボックは零れそうになるため息を飲み込む。国家錬金術師でありアメストリス国軍の大佐でもあるロイは街の名士だ。機会があればお近づきになりたいと思っている人間は幾らでもいることはハボックにもよく判っていた。
「そうなんスか、それじゃ行かない訳にいかないっスね」
 そう言いながらも目を合わせようとしないハボックにロイは苦笑する。手を伸ばしてハボックの金髪を掻き混ぜて言った。
「ただのつきあいだ。ちょっと顔を出したらすぐ戻ってくる」
「別にゆっくりしてきていいっスよ?向こうだってそう思ってるだろうし、期待を裏切っちゃ可哀想っスよ。誕生日なんでしょ?」
 ハボックはそう言うと行ってらっしゃいと笑みを作る。つまらない妬心でロイの邪魔をするような事になるのだけは絶対に嫌だった。
「オレも出かけようかな。大佐のメシがいらないなら外で食べて来ちゃえば簡単だし。ブレダか小隊の連中でも誘って――」
「駄目だ」
「――え?」
 笑みを顔に貼り付けて言いかけた言葉を途中で遮られてハボックは目を丸くする。ロイはハボックの腕を掴むとリビングへと戻った。
「大佐?……うわッ」
 ドンッと突き飛ばされてソファーに倒れ込んだハボックは驚いてロイを見上げる。花束をテーブルに放り投げ上着を脱ぎ捨てたロイは、ネクタイの結び目を指で引っ張って弛めるとハボックを見下ろした。
「どうして私がいないとブレダ少尉や小隊の連中と出掛ける事になるんだ?」
「どうしてって……」
 そんな事、わざわざ説明する必要もないではないか。一人で家にいたらロイが出先で女性と楽しく過ごしているであろう姿をずっと想像しながら過ごさねばならない。ブレダ達といれば気持ちも紛れてロイの不在を少しでも短く感じられるかもしれないからなのは、口に出さなくとも聡いロイにならすぐ判る筈だった。だが。
「私が付き合いのバースデーパーティーに嫌々参加している間、お前はブレダ少尉達と楽しく過ごすなんておかしいだろう?」
「いや、でもそれは」
 そもそも自分がブレダ達と出掛ける原因を作ったのはロイなのに責められるなんて絶対におかしい。不機嫌に見下ろしてくる男にハボックが言い返そうとした時、ロイが肩を竦めて言った。
「ああ、もういい。パーティーはやめだ」
「えっ?でも世話になった人の奥さんなんでしょ?」
「構わん、花屋に花束を届けるよう連絡しておけばいい。だからハボック」
 ロイは言ってソファーに片膝をつく。
「私の為に何か作ってくれ、腹が減った。それともお前を食わせてくれるか?」
 ニヤリと笑って手を伸ばしてくるロイに目を丸くしたハボックは、次の瞬間プッと吹き出した。
「なんで笑う?大真面目に言ってるのに」
 ムッと眉を寄せてロイはハボックに圧し掛かってくる。ハボックはそんなロイを軽く押しやって言った。
「それはデザートっしょ?」
「メインだろう?普通」
「アンタの為にメシ作らせて下さいよ」
 ハボックがそう言って笑えば、ロイが軽く目を見張る。それからクスリと笑って言った。
「精の付くヤツをな」
「あれ?精を付けないとダメなんスか?」
「――――今すぐ食ってやろうか?」
 眉をしかめて言うロイにハボックがクスクスと笑う。つられて笑い出したロイにハボックは腕を伸ばして引き寄せると、笑みを零す唇に己のそれをそっと押し付けた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになります、嬉しいです〜vv

昨日でまた一つ年をとってしまいました。もうこの年になると大してめでたくもありませんが、ロイとハボックに祝って貰えるんなら毎日誕生日でもいいんだがなぁ(笑)
今年は誕生日の前に何回か外で食事をする機会があって、そのたびにバースデーデザートプレートが出てきたもので、なんかその分沢山年をとったような気がします(苦笑)父がバースデーケーキも買ってきてくれたしなぁ。でも、このバースデーケーキ買った時の事。買ってきたケーキを開けた父が「買ったのと違う」って。買ったのはフルーツが沢山のったタルトだったんですが、入っていたのはガッツリ重そうなチョコレートケーキ。生クリームのケーキだったら「まあいいか」で食べたかもしれないのですが、こんなチョコレートのケーキ、家中誰も食べないってば(苦)結局店に電話したら、横浜のデパートから車で届けに来ましたよ!(爆)しかも間違ったチョコレートケーキも「お詫びに」と置いていきやがりました。そりゃあ持って帰ったところでもう売れないだろうけど、客に廃品処理を押し付けるなよー。結局捨てるわけにもいかず、家族みんなで四日がかりで食べました(苦)フルーツタルトの方は一度でペロリだったんですがねぇ。まったくもう、ちゃんと確かめてから売れっての……。

そんでもって昨日で実家から戻って今日から通常営業の筈なんですが、なんかすっかりサボり癖がついてしまって作文が書けない気が(殴)実家にポメラ持ってったんですが、結局例の如く全然書けなかったしなぁ。……更新出来なかったらすみません(おい)

以下、拍手お返事です。

なおさま

えへへ、ゴールデンハボックを愛でて下さってありがとうございますvそうそう、運動不足だから!決して年などでは!(笑)岩戸をカリカリ!(爆)そりゃもうハボックが踊りながら脱ぐしかないでしょう!でもって、周りで部下たちがやんややんやの大騒ぎ。「隊長ッ、こっち向いて下さいッ」「色っぽいですッ、隊長ッ」「うおおッッ!!ついに後一枚……ッッ!!!」とか部下たちが騒ぐ声に耐えきれず天岩戸を開けたヒューズが岩戸の中にハボックを引っ張り込むんですよ(ええっ?(爆)いやぁ、楽しいですね!(笑)

阿修羅さま

おお、四匹!それは凄い楽しそうですねvきっともう楽しくて楽しくて堪らないんでしょうねぇ。うふふ、アホの子ほどカワイイvvハボックとロイも夢中になって追いかけっこしててヒューズが幾ら呼んでも帰ってこないかもしれません。でも、丁度通りかかった中尉に呼ばれたら一発で戻ってきそう(笑)
2013年04月08日(月)   No.308 (ロイハボ)

獣5
『うわあっ』
 ハボックに引っ張られるままドッグランに着けば、ハボックが空色の瞳を輝かせる。そのまま駆け出そうとするハボックに引きずられそうになったヒューズが、慌てて足を突っ張ってリードを引いた。
「ハボック、待て!ルールを忘れたか?」
『あっ、そうだった』
 ヒューズの声にハボックはピタリと脚を止めると今までのはしゃぎようが嘘のように行儀よくヒューズの前に座る。「よし」と頷いたヒューズの瞳が私に向けられたのを見て、私は一つ欠伸をするとハボックの隣に腰を下ろした。
「お前らを足して二で割ると丁度いいんだがな」
 やれやれと苦笑してヒューズが言うのを聞いて、私は思い切り顔をしかめる。コイツと足されるのなんて真っ平だと思いながらハボックを見れば、空色の瞳がにっこりとわらって私を見返した。
『大佐と足すんですって』
『お前が落ち着きがないからだろう?私は一人で完結してるんだ』
 嬉しそうに言うハボックに冗談じゃないと返せば、ハボックがしょんぼりと項垂れる。それでもドッグランへの期待にすぐ立ち直って、ハボックはヒューズを見上げた。
「よし、行くぞ」
 ハボックが落ち着いたのを見てヒューズが歩き出す。ゲートの係員が私達を連れたヒューズを見て笑みを浮かべた。
「こんにちは、ヒューズさん」
「よう、コイツら、遊ばせて貰うぜ」
 ヒューズは言って登録証を見せる。ゲートを抜けると私達は一番大きな広場へと向かった。
「ハボック、まだだからな」
 中に入ってもリードはすぐには外されない。飼い主の言うことを聞けない犬はリードを外して貰えないからハボックはワフンと答えてヒューズの側で止まった。それでもフサフサの尻尾が大きく揺れているのを見れば、ハボックが走り出したくてウズウズしているのが判る。そんなハボックの様子にヒューズはクスクスと笑った。
「少し歩くぞ」
 そう言って歩き出すヒューズについて私達はゆっくりと広場の中を歩いていく。もうリードを外されて自由に走っている他の犬を羨ましそうにチラチラと見ながらハボックが言った。
『ねぇ、大佐。最初になにやるっスか?シーソー?ハードル?』
『シーソーもハードルも嫌いだ。やりたければ一人でやれ』
『えーッ』
 素っ気なく答えればハボックが不満の声を上げる。それには知らん顔で広場を歩いていくと、ヒューズが足を止めた。
「ハボック、はしゃぎ過ぎるなよ」
 そう念押ししてヒューズはハボックのリードに手を伸ばす。ハボック、私と順番にリードを外してヒューズが笑った。
「よし、いいぞ」
『わあい!じゃあ行ってくるっスね、ヒューズさん!』
 ハボックはワンと一言吠えるとタタタと数歩歩く。どこへ行こうと迷うように辺りを見回すハボックを横目に、私は大きく息を吸い込んだ。
 春の暖かい空気の中に沢山の花の香りが混じっている。柔らかなその匂いを体の中に取り込んだ私はタンッと地面を蹴って走り出した。
『あっ、大佐っ?待って!』
 ハボックが驚きの声を上げたが構わずスピードを上げる。そうすれば周りの景色がぐんぐんと後ろへ流れていった。
 気持ちいい。花の香りを含んだ空気が私が走り抜けると微かに震えて渦になって後ろへと吹き抜ける。私は旋風のように辺りの空気を震わせて広場を駆け抜けた。
『ふう』
 広場の端までくると私はゆっくりと足を止める。改めて周りの景色に目をやると雪柳が白い花を重そうにいっぱいつけているのが見えた。
『大佐ぁ』
 その時、足音がしてハボックの声が聞こえる。振り向くとハボックがわふわふ言いながらこちらへと駆けてきた。
『酷いっスよ、待ってって言ったのに』
『お前はシーソーかハードルがしたいんだろう?やればいいじゃないか』
 むくれるハボックにそう返せば更にむくれる。
『一人で遊んでもつまんないっスもん』
 そう言って前足で地面を掘るハボックにフンと返して私は歩き出した。
『あ、大佐』
 そうすればハボックが慌ててついてくる。ハボックはまとわりつくように私の右につき左について言った。
『走るんスか?だったら駆けっこしましょうよ』
『嫌だ』
『えーっ、そんな事言わずに勝負、勝負!』
 そんな事を言うハボックを私は足を止めて見る。期待に満ちた瞳を向けるハボックに私は言った。
『勝負だと?懲りない奴だな。またコテンパンにやられたいか?』
 ハボックはドッグランに来る度勝負と称して駆けっこをしたがる。だが今まで一度たりと私に勝った事はなかった。
『グレイハウンドは最速のスプリンターだ。何度勝負しようと結果は見えている』
『でも、もしかしたら勝つかもしれないじゃないっスか』
『万に一つもないと思うがな』
 悪いが手を抜いてやるつもりもないからハボックが 私に勝てるとは思えない。それでもしつこく勝負勝負と繰り返すハボックに根負けして私はため息混じりに頷いた。
『一回だけだからな』
『わあい、ありがとう、大佐っ!』
 渋々ながらの返事にもハボックは嬉しそうに答える。空色の瞳を輝かせて、ハボックは私を見つめて言った。
『オレ、大佐と一緒に走るの大好き!すっげぇ気持ちいいんスもん』
『……一緒に走るんじゃなくて勝負だろう?』
 きらきらと空色の瞳を輝かせて言うのを見れば何だかどぎまぎして、私は目を逸らしてぶっきらぼうに言う。だがハボックは気にした風もなく私に並んで正面を見据えた。
『じゃあ行くっスよ』
 そう言うハボックのこれから始まる勝負への興奮に染まる瞳の美しさに一瞬目を奪われる。
『用意、ドン!』
 次の瞬間聞こえた声にハッとして、私は先に飛び出したハボックを追って走り出した。
『この……ッ』
 絶対負けるわけには行かないと前を走る金色の獣を追う。柔らかな毛並みを風に揺らして走るハボックに並んだ私はギリギリのところでハボックを追い抜いた。
『ああ!勝てると思ったのに!』
 半歩遅れてゴールしたハボックが悔しそうに言う。私はハッハッと息を弾ませて言った。
『フン、不意打ちすれば勝てるとでも思ったか』
『大佐、息あがってるっスよ』
 正直ちょっとヤバかった。だがそれは押し隠して、甘いなと余裕ぶってみせる私にハボックが言う。私はムッと鼻に皺を寄せてハボックを睨んだ。
『なんだと?負けて悔しいからっていい加減な事を言うな』
『別に悔しくないっスよ?言ったっしょ?オレ、大佐と一緒に走るのが大好きなんスもん。すっげぇ楽しい!』
 ハボックはそう言って楽しそうに笑った。
『ねぇ、大佐。もう一回走りましょう』
『……仕方ない、もう一回だけだぞ』
『やったぁ!』
 不承不承答えれば嬉しそうな声が返ってくる。
 その後私達はヒューズに呼ばれるまで、春の空気の中広場を思い切り駆け回った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新お休み中なのにありがとうございます、とっても嬉しいですv
そして56万打もありがとうございます〜vv原作も終わって久しいのに一緒にハボックを愛でてくださって嬉しいです!これからもご一緒にハボックラブを叫んでいけるよう頑張りたいと思いますので、どうぞお付き合い宜しくお願い致しますvv

でもって「獣」ですー。ドッグランって一匹しかリード外しちゃいけないとかあるみたいですが、2匹とも外さないとお話にならないので(苦笑)その他にもおかしなところがあるかもですが、その辺は気づかぬふりで宜しくお願いします(笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

「キューティクル探偵増田」楽しんで頂けましたか?うふふ、嬉しいですーv沽券に関わるとあんまりヒューズが抵抗するので、ついうっかり「もう見ちゃったし、今さらっスよ!」とハボックが口走ったのを聞いてショックMAXのヒューズが部屋にこもって天岩戸状態になったら楽しそう。アメノウズメはやっぱりハボックがやるしかないですよね!(笑)

祝560000おめでとうございます!! の方

ありがとうございますvこちらこそいつも読んでくださってありがとうございますvこれからもロイハボ楽しんで頂けるよう頑張りますので、どうぞ引き続きお付き合いくださいねv

阿修羅さま

遅くまでキリバンチャレンジしてくださってありがとうございます〜!こんなにチャレンジして頂いているのに難しいものですね(苦)体調、なかなか良くならないご様子、本当にお体大切になさってください!「セレスタ」ドキドキしてくださって嬉しい〜vハボの気持ちを感じ取って泣いて下さるなんて、本当に書き手冥利に尽きます!これからもドキドキして貰えるように頑張りますねv

560000打おめでとうございます♪ の方

うふふ、いつもありがとうございます!!次もお祝い頂けるように頑張りますよvvこれからも宜しくお願いしますvv
2013年04月06日(土)   No.307 (カプなし)

キューティクル探偵増田
 ハボックは手元のメモを見ながら通りを歩いていく。角を曲がって狭い路地に入ると、足を止めて目の前の建物を見た。
「ここか、新しい職場」
 目の前の扉には“増田探偵事務所”という小さな表札が出ている。その表札の下に出ている大きな張り紙にハボックは眉を顰めた。
「何だろう、これ……」
 そこには先の方だけ色の違った何やらうにょんとしたものが描かれている。それを囲むようにして円が描かれ斜めに線が引かれているのは禁止の意味だろうか。
「“地毛以外禁止”って……なにこれ。カツラ禁止って意味かな」
 探偵事務所だから身の安全を確保する意味合いで変装した人間は入れないのだろうか。
「なんか変なとこ来ちゃったかな……」
 懐の具合で割のいい仕事ということでここを選んでしまったが、間違いだったかもしれない。
「今更悩んでも仕方ない、入るぞ」
 ハボックは覚悟を決めるとギュッと手を握り締める。その手を持ち上げ扉の脇についているブザーを押した。
「はい」
 カチャリと鍵が開く音がして扉が少し開く。その隙間から鳶色の瞳が覗いているのが見えて、ハボックはにっこりと笑った。
「あの、オレ、今日からこちらでお世話になるジャン・ハボックといいます」
 そう名乗って返事を待ったが中の相手は用心深くこちらを見るばかりで扉を開けてくれようとしない。
(どうしよう、もう一回名乗った方がいいのかな……)
 どうしたものかと悩んだハボックがもう一度名乗ろうとした時、奥から声が聞こえた。
「どうした、リザ、お客さんか?」
「所長」
 コツコツと近づいてくる足音がして扉が開く。そうすればチャッと音がして、ハボックのこめかみに銃が突きつけられた。
「気をつけて下さい、所長。敵かもしれません」
「ちっ、違いますよッ!オレは今日からここで働く事になっている――――」
「まあ、待て。私が見てやる」
 銃を突きつけられ慌てて名乗ろうとするハボックを制して黒髪の男が言う。ハボックの腕を掴みグイと中に引っ張り込んだと思うと、ハボックの頭に顔を寄せ髪を口に含んだ。
「な……っ」
「じっとしていろ」
 突然の事にギョッとして振り払おうとするハボックに、男はそう囁いてハボックの髪を味わう。髪を唇でなぶられて、ハボックはビクビクと震えた。
「ふむ」
 暫くして漸くハボックを離すと男は考える仕草をする。ハボックは男の側から跳びすさると壁にへばりついた。
「なにするんスかッ!」
「名前はジャン・ハボック。性別男。血液型は」
「え?」
 男が履歴書にも書いていないことまでスラスラと喋り出すのを聞いて、ハボックは目を見開く。ポカンとするハボックに漸く銃を収めたリザが言った。
「所長は髪の毛からその持ち主の事が全て判るんです」
「ええッ?」
「私がキューティクル探偵と呼ばれる由縁だな」
 そう言って男――増田はニヤリと笑う。
「ほ、本当に?なんでっ?」
 たった今その実力を見たとは言え俄には信じがたくハボックは言う。そうすれば増田はスッと目を細めて言った。
「疑うのか?なんなら……もっとお前の事を暴いてやろうか?」
「遠慮しますッ」
「そう言うな。お前のような金髪は好みだ」
 増田はそう言ってハボックににじり寄ってくる。押し倒されそうになったハボックがギャーッと叫んで逃げようとすれば、リザが増田に銃を向けた。
「髪フェチもいい加減にしてください、所長」
「えーっ、コイツの髪、いい触り心地なのに」
 増田が唇を尖らせて言えばリザがチャッと銃を増田の額に当てる。慌てて増田が手を上げた時、扉が開いて髭面の男が顔を出した。
「ローイ、元気かッ?エリシアちゃんが来てやったぞ」
 小さな女の子を抱いて男はだらしなく顔を緩めて言う。その顔を見た途端、増田は思い切り顔をしかめた。
「出たな、親バカめ」
「そんな事言うなよ、エリシアちゃん可愛いだろうッ」
 男はそう言って腕の中の女の子の頬に音を立ててキスをする。ぎゃあぎゃあと言い合う男二人を見てハボックはリザにそっと尋ねた。
「誰っスか?あの人」
「警視庁のヒューズ警部よ。腕はいいけどどうしようもない親バカなの。ウザイから一発撃ってやろうかしら」
「いやいや、それは拙いっしょ」
 チャッと銃を構えるリザをハボックは慌てて止める。その時、言い合いをしていた増田が苛々として言った。
「オフのお前は気持ち悪い!一発焼きを入れてやるッ!ハボック!」
「えっ?あ、はいっ」
 突然呼ばれてハボックは反射的に返事をして増田の側に寄る。そうすれば伸びてきたロイの手がハボックの髪をプチッと抜いた。
「イテッ」
 いきなり髪を抜かれたハボックが文句を言うより早く、抜いた髪をくわえた増田にリザが駆け寄った。
「はッ!」
 駆け寄ったリザがかけ声と共に背後から増田のツボをバババッと押す。次の瞬間。
 増田の黒髪が腰まで伸びたと思うと頭に獣の耳が生える。長い猫の尻尾を生やした増田はニヤリと笑うとヒューズに向かって拳を突き出した。
「キューティクルボルトッ!!」
「ギャーッ!!」
 叫んだ増田の手からバリバリと雷撃が飛ぶ。その直撃を受けたヒューズが悲鳴を上げてひっくり返った。
「な、なん……」
 突然の出来事に目を剥くハボックにリザが言う。
「所長は食べた髪の毛によって色んな事が出来るんです」
「ちなみに金髪は電撃だ。お前の金髪はいい電撃が出る。気に入ったぞ」
 ニヤリと笑った増田が長い髪を払いのけて言う。ハボックは呆然として増田を見、電撃を受けてプスプスと煙を上げるヒューズを見た。
「もしかしてとんでもないとこに来ちゃったのか、オレ……」
 割がいいのはその分リスクがあるということなのかもしれない。ハボックはこの探偵事務所に来たことを激しく後悔したのだった。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、とっても嬉しいですv

ハボック激ラブをうたってきた当サイトですが、新たな犬を見つけてジャンル変更する事に致しました!その名も「キューティクル探偵因幡」!!明日からは真っ当に因幡を愛でていきたいと思います。愛する犬は変わりますが、引き続き犬繋がりでお付き合い頂けましたら嬉しいですv



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なーんて、流石に信じる方いらっしゃらないですよねぇ。しかもアップしたの夜だしっ!
いやぁ、エイプリルフールなので今年も何かとしようと思っていたのですが、週末忙しくてコロッと忘れてしまいました(苦笑)しかも今日もお葬式があったもので……。結局今、実家に行く電車の中でまで打ってるという体たらくorz やはり季節ネタは早めにやらないとダメですね(苦笑)
そんな訳でこれからもハボック激ラブサイトで引き続きよろしくお付き合いお願い致しますvv

以下、拍手お返事です。

なおさま

うふふ、花より暖子いいですね!私も暖子がいいなぁ(笑)ヒューズ、何度も手術しようとするんですが、そのたびハボックに出くわすんですよ。何故だと思っていたら実はハボックにバレていて、ある日「オレ以外の奴が中佐のに触るなんて赦せない。オレが剥いてあげるっスから!」とか言われたらいいと思います(爆)「セレスタ」お待たせしました!やっとマドラス始動しましたよ〜(苦笑)壊れた時計をカツカツ投げつけられるロイを想像してニヤニヤしてしまいました(笑)ホークアイ、流石と言ってくださって嬉しいですーvうふふv
2013年04月01日(月)   No.306 (カプなし)

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