「ハボック？」
カチャリと寝室の扉を開けてロイは中を覗き込む。さっきから探している小さな姿がないことを確かめ、ロイはため息をついた。
「どこにいったんだ？」
ロイはそう呟きながら窓辺に近づく。庭を見下ろせば植木の間に金色の尻尾が揺れているのが見えた。
「ハボック！」
ロイは窓から乗り出すようにしてハボックを呼ぶ。すると身を起こしたハボックがキョロキョロと辺りを見回し、最後に二階の窓を振り仰いだ。
「ろーい！」
窓から見下ろすロイを見て、ハボックがにっこりと笑う。だが、ロイの予想に反してハボックは再び植木の中に潜り込んでしまった。
「何をしているんだ？」
ロイは眉を顰めて身を乗り出す。だが、二階からではハボックが何をしているのか判らず、ロイは階下におりると中庭への扉を抜けて外に出た。
「ハボック」
ロイは二階から見えた辺りまで来るとハボックの姿を探す。だがさっきまでハボックがいた筈の植木の陰では葉が風に揺れるばかりで小さな姿は何処にもなかった。
「……仕方ないか。きっと覚えていないだろうしな」
ほんの少し不満を感じながらもロイはそう呟く。ハボックが近くにいないのを確認して家の中に入ると二階に上がりクローゼットの中から何やら包みを取り出した。それを大事に抱えるようにして降りリビングに入る。そうすればいつの間に戻ったのか、ハボックの尻尾がカーテンの陰からひょっこりと覗いていた。
「ハボック」
ロイはそれを見て笑みを浮かべると抱えていた包みをテーブルに置く。そうしてハボックを見ていった。
「おいで、お前にいいものをやろう」
そう言ってハボックを手招きするがハボックは出てこない。ロイは仕方なし包みに手を伸ばした。
「お前は覚えていないだろうが、今日はお前と初めて会った日なんだ」
ロイはそう言いながら包みを解いていく。
「私があの屋敷に越して、小さな毛糸玉のお前が現れた。洗濯機に落ちて泡だらけで泣いてたお前を洗って乾かして、そうしたらお前が子供の姿になって……色々あったなぁ」
楽しいことも哀しいことも沢山あった。どれもこれもハボックがいたからこその出来事で、その全てが世界に背を向けていたロイに再びその素晴らしさを教えてくれたのであり、ロイはハボックとの出逢いに感謝せずにはいられない。包みを解くとロイは蓋をそっと開け、ビロード張りのケースに大切にしまわれたそれをそっと持ち上げた。
「ほら、ハボック。お前にプレゼントだ」
そう言ったロイの手にあるのは天使がくるくると踊りながら時を告げる時計。正時に合わせてコトリとテーブルに置けば、時計が軽やかなメロディーと共に天使の踊りで時を告げた。その途端カーテンの陰から覗いていたハボックの尻尾がピンと立つ。ゴソゴソとカーテンの影に潜った尻尾の代わりにハボックが顔を出したのを見て、ロイはにっこりと笑った。
「ほら、お前のだよ。ハボック」
その声にハボックの空色の瞳が嬉しそうに輝く。漸くカーテンの陰から出てきたハボックは後ろに両手を隠したままロイに近づくとロイの顔を見上げた。
「ろーいっ」
そう言ったハボックが隠していた手を前に出せば握られていたのは色とりどりの小さな花だった。
「ハボック」
「ろい」
驚きに目を見張ったロイはニコッと笑ったハボックの笑顔に苦笑する。
「お前も覚えていてくれたのか」
「ろーいっ」
当然だと言うように頷くハボックの手から小さな花束を受け取ると、ロイはハボックの体を抱き締めた。
「ありがとう、ハボック。私のところへ来てくれて」
「ろーい」
こちらこそ、と答えるようにハボックはロイにキュッとしがみつく。
その日からロイとハボック二人の家には、正時になるたびどこか懐かしいハボックの少し調子っぱずれの鼻歌が天使のメロディに合わせて聞こえるようになるのだった。
いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、励みになります、嬉しいですv
最近すっかりヘタレサイトと化しております拙宅ですが、本日で無事七周年を迎えました。Ta-da！早いような遅いような……でも、こうやってまた一年の節目を迎えられたのもみなさまのおかげです。本当にありがとうございます！ハボックやロイに出会えた幸せと、皆さまと一緒にハボ達を愛でられる幸せを大事にして、これからも頑張っていきたいと思っております。どうぞこれからもよろしくお願い致します！
といったところで、日頃の感謝を込めまして今年も無料配布本を企画いたしました……のですが、ま、間に合いませんでしたーッ(殴)出足が遅かったのに加えなかなか書き進まなかったところにポメラがぶっ壊れ……頑張ったんだけど(苦)そんなわけで今回は受注生産にしようかと思いますー(苦笑)詳細下記になりますので、お読み頂いた上、ご興味ありましたらサイトのトップページにリンク貼ってあります申し込みフォームよりお申し込み下さい。一応目安としては６月１５日までに書き上げて発送準備にかかりたいと思っております。最終申し込み締め切りは６月末を予定しています。……って、申し込みなかったらどうしよう(苦笑)発送は先ですが、申し込んで頂けるとそれを励みに頑張りますんでッ(おい)
�〆２鵑量鞠柬椶蓮嵬顕亜廖嵬顕娃押廖嵌�雷神」「八雷神２」「俺様な皇帝と恥ずかしがり屋の騎士の話」の五種類になります。「霧屋」「霧屋２」「八雷神」「髭騎士」はＷＥＢ再録で修正以外の加筆はありません。「八雷神２」は書き下ろしとなります(因みに書けてないのはこれです(苦)
�◆嵌�雷神」「八雷神２」「髭騎士」はＲ指定本になりますので、年齢に達していない方にはお申し込み頂けません。申し込みフォームのAge check欄に必ずチェックを入れて下さい。年齢制限のある本、ない本がある為、Age check欄が必須になっておりません。チェックを入れなくても申し込みフォームが送信出来てしまいますが、年齢制限のある本をお申し込みの場合Age checkは必須です。
�Ｈ�送はメール便を予定しており無料です。発送者名はサイト名で発送します。メール便以外、個人名での発送を希望される場合、メッセージ欄にお書き添え下さい。出来る範囲でお答えしたいと考えております。
�い泙拭∈Ｇ�の無配本受付期間に限り、昨年までに配布いたしました無配本を再配布いたします。申し込みフォームの選択欄からお選び下さい。こちらの本もＲ指定本をご希望の場合はAge check欄にチェックが必須です。尚、今年の無配本をお申し込み頂かなくても過去の無配本のみの申し込みも可能ですので、「今年のはいらないけど昔のが欲しいわ」と言う場合もお気軽にどうぞv再配布する無配本は下記の通りです。
１）2012年六周年記念配本(2012年5月発行)
「暗獣上・下」
日記掲載したものの再録、修正以外の加筆なし。「新・暗獣」は含みません
「暗獣 毛糸玉の記」(書き下ろし)
ハボがロイと出会う前後とロイが去る前後がメイン
日記に掲載した数話も加えハボック視点で書いた話
「暗獣番外編」(書き下ろし、ロイハボ・R18)
ロイハボぺら本。子ハボではありません。
２）2011年五周年記念配本(2011年5月発行)
「金剛石総集編」
日記掲載したものの再録、修正以外の加筆なし
「続・金剛石(ハボロイバージョン・R20)」
「続・金剛石(ロイハボバージョン・R20)」(2013年改訂)
ＷＥＢからの続きの書き下ろし。
カプリングの違い以外内容的には同じ
子ハボ時代のその手の話あり。苦手な方はご注意。
ロイハボ版のみ日記掲載の「記念日編」を再録。
３）2010年四周年記念配本(2010年5月発行)
「鈍感な騎士と待ちきれない姫君の話」(ハボロイ・R20)
ＷＥＢ掲載再録＋書き下ろしエピローグ
「ワガママな王様と純情な騎士の話」（ロイハボ・R20)
ＷＥＢ掲載再録＋書き下ろしエピローグ
「小さな暴君とお人好しの騎士の話」(エドハボ)ＷＥＢ再録
「小さな暴君とお人好しの騎士の話」(エドハボ・R20)(2013年改訂)
ＷＥＢ掲載再録＋書き下ろし
「王騎士」同時収録の「豆騎士」の続き
今回も改訂版になります。内容は
2013年3月迄の日記掲載分と「初空月編４」(書き下ろし・R20)
４）2009年三周年記念配本(2009年5月発行、2011年10月改訂の際、数話収録増)
「babble babble emerald」(カプなし・R18)
「babble babble diamond」(ハボロイ・R18)
「babble babble pearl」(ロイハボ・R18)
2006〜2009年に日記掲載されたssの再録で加筆なし。
尚、申込みの冊数によりメール便が二つに分かれるもしくはＡ４サイズになる可能性がありますので、ご了承下さい。
……こんなところでしょうか。無配本の書き下ろしに関しましてはＷＥＢに再掲の予定はありませんので、ご興味ありましたら是非お手にとって頂けると嬉しいです〜。でないと誰にも読んで頂けない可哀想な話になってしまうので(苦笑)
尚、素人が手作業で作っておりますので多少の不格好は多めにみて下さいますように(苦笑)本なんて立派なもんじゃなくコピー本もどきです、でも愛はたっぷり込めてます(笑)お申し込み心よりお待ちしております。
以下、拍手お返事です。
なおさま
まったくもって痛い出費でしたよ〜(苦)でも、新しいものは何でも嬉しいです(笑)あはは、すごい後遺症ですね！でも、記憶があったらその後生活出来ないだろうしなぁ(笑)「セレスタ」本当に嫉妬は恐ろしい。ハボックへの愛情の裏返しと言えない事もないですが……。まだまだ展開しますので、お楽しみ頂けたら嬉しいですｖ
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