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2011年09月の日記

2011年09月30日(金)
恋猫20
2011年09月29日(木)
一目瞭然
2011年09月24日(土)
吸血鬼10
2011年09月18日(日)
暗獣23
2011年09月15日(木)
闇獣(あんじゅう)
2011年09月12日(月)
暗獣22
2011年09月11日(日)
吸血鬼9
2011年09月09日(金)
重陽
2011年09月07日(水)
恋猫19
2011年09月05日(月)
暗獣21

恋猫20
ハボロイ風味

「ええと、ロイ。今日オレ達土建屋なんス」
 ハボックは一緒に小隊の詰め所までくっついてきたロイに向かって言う。ハボックのオーバースカートの裾をギュッと握って、ずっと上にある顔を見上げてロイは尋ねた。
「土建屋?」
 小首を傾げるロイを見下ろしてハボックが答える。
「ええ。ほら、このあいだすっげぇ大雨降ったっしょ?あれで川の堤防が決壊しちまったところがあって、急いで直さないと次雨が降ったらヤバイから。だからオレ達今日は一日ツルハシとスコップ持って作業しなきゃなんで、ロイは司令部で留守番しててくれますか?」
 きちんと説明してハボックはロイに司令部待機を提案する。だが、ロイは握ったオーバースカートを離さずに言った。
「嫌だ。私も一緒に行く」
「ロイ」
 きっぱりと言うロイにハボックは困ったように頭を掻く。ロイの目線にしゃがみ込んでハボックは言った。
「あのね、そんなとこついてきたって面白くないし、第一危ないっしょ?」
「面白いか面白くないかを決めるのは私だし、ちゃんと危なくないところで見ている」
「でも」
「絶対一緒に行く」
 潔いほどにきっぱりと言い切るロイにハボックは床に手をついてため息をつく。ハアアと肩を落とすハボックの金髪をロイがぽふぽふと叩けばハボックが顔を上げてロイを見た。
「ここにいれば中尉やフュリーが美味しいお菓子くれるっスよ?」
「私はお前と一緒がいい」
 なにを言っても首を縦に振らないロイにハボックが途方に暮れていると部下の一人が言った。
「いいじゃないですか、隊長。そこまで言うなら一緒につれていってあげれば」
「マイク」
「そうですよ。俺達みんなで気をつけてやっていればそんなに危なかないですよ」
「キム」
「そうそう。それにロイがいれば俺達もやる気が起きるし」
「サンダース」
 そうだそうだと言い出す部下達をハボックは呆れたように見回す。その時、すぐ背後から声が聞こえた。
「諦めて連れていってあげたらどうです?コイツらがこういうんですから」
「……曹長まで」
 どうやら小隊の中で反対なのは自分一人らしい。ハボックはひとつ大きなため息をつくと立ち上がってロイに言った。
「判りました。じゃあ一緒に連れて行きますけど、くれぐれもオレの言うことは聞くように。変なとこ上ったり、崩れそうなとこに近寄ったり、そう言う事は絶対に───」
「ああもう、隊長、煩いですよ」
「そうそう、さ、行こうか、ロイ」
「行こう、行こう」
 部下達はハボックの言葉を煩そうに遮ってロイを囲む。中の一人がヒョイとロイを肩に担ぎ上げて歩き出せば、わらわらと男達が後に従った。
「まったくもう」
 その様にハボックがボヤけばロイが振り向く。その心配そうな黒曜石を見てハボックはやれやれと笑って手を挙げた。
「ロイ。ソイツらの監督頼んます」
「ッ、判った、任せておけ!」
 ハボックの言葉にパッと顔を輝かせニッコリと笑うロイに、ハボックは何故だかドキリとしたのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。パチパチ拍手も嬉しいですv

今週の更新ですが、って書くとまたお休みみたいだな(苦笑)そうではなく、以前ちょっとウダウダ言っていた同時進行を始めてみようかな、と。とりあえず全部は無理だと言う事に気づいたので、まずは各カプ二本ずつを適当に織り交ぜて書いていこうと思います。そんなわけで新連載はリク貰った順番でハボロイがリク80「見毛相犬2」ロイハボがリク75「ロイでないとイけないハボ」になります。ロイハボはお題がお題だけに多分*ばかりになると思われ……早速第一章からついてるしな(苦笑)エロ苦手な方にはゴメンナサイだけど自分的にはバッチコイだ、エロ(笑)ハボロイの方は「霧屋」といい「見毛相犬」といい、以前書いたものの続編リクされるのは嬉しいです、頑張るvともあれ、引き続きおつきあいよろしくお願いいたします。

そんなところで「恋猫」です。やっと二日目〜(笑)もう少しこんな調子で続きます。
2011年09月30日(金)   No.109 (ハボロイ)

一目瞭然
「おい、ハボック」
 小隊の詰め所の扉を開けながらロイは求める相手の名前を呼ぶ。中に入ればそこには潜入服を身に纏い、ピッチリしたフードで髪と顔の半分を隠し、ご丁寧に色付きのゴーグルをつけた体格のいい男たちが十名ほど、演習の予定表を前に机を囲っていた。
 詰め所の中に入ったロイはグルリと男たちを見回し、中の一人にスタスタと近づく。全く迷いもせずに側まで来ると、ロイは近づいた相手に言った。
「すまんが演習が終わったらすぐに車を出してくれ。それとな、お前、さっき出した書類、肝心なところが抜けてたぞ」
 そう言うロイを話しかけられた男はじっと見下ろす。つけていたゴーグルを上に押し上げ、顔の半分を覆っていたフードを下げて顔を出したハボックは感心したように言った。
「よくこの中からオレが判ったっスね。みんな同じ格好してて、区別つかねぇっしょ?」
 ハボックが言うとおり男たちは皆寸分違わぬ格好をしている。髪も出ておらずゴーグルは色付きで外からでは瞳の色も全く判らない中で、よく判ったものだとハボックが言えばロイが肩を竦めた。
「お前の体なら一目見れば判るからな。それじゃあ、車頼んだぞ。書類は机に置いておくから後で出し直せ」
 何でもないように言って、ロイは「じゃあ」と片手を上げて詰め所を出ていく。そのすらりと伸びた背を無言のまま見送ったハボックに、部下の一人がポツリと言った。
「なんか今、スゴイ事聞いた気がするんですけど、隊長」
「隊長の体なら一目見れば判るって……」
「それ、すっげぇ意味深じゃないですか?」
「えっ?!」
 部下たちに口々に言われてハボックは顔を赤らめる。
「一目見て判るほど隊長の体、知ってるって……」
「隊長って」
「スケベ」
 そう言いながらジロジロと見られてハボックは赤らめ顔を益々赤くした。
「なっ、なんでそこでオレがスケベになるんだよッ!!」
「だって……なぁ?」
「だよなぁ」
「まったくだ」
「お前らなぁッ!!」
「どの辺りが俺たちと違うんですかね」
「やっぱこの辺じゃねぇ?」
「うひゃあッッ!!」
 スルリと尻を撫でられてハボックは飛び上がる。
「お前らッ!!馬鹿な事言ってねぇで演習だっ、演習ッ!!」
 一人真っ赤な顔で怒鳴るハボックに部下たちがニヤニヤと笑った。
「隊長、膨らんでますよ、前」
「えっ?!」
 言われてギョッとして股間に目をやるハボックに部下たちがドッと笑う。
「やだなぁ、隊長。可愛いんだから」
「さ、演習いきましょ、演習」
 ゲラゲラと笑いながら部下たちが出ていくと後にはハボックと副官の軍曹が残った。
「まあ、マスタング大佐には詰め所の出入りを禁止しておくんですな」
 肩を竦めて副官は言って出ていってしまう。
「……チキショー、大佐の馬鹿……っ」
 一人取り残されて、そうぼやくしかないハボックだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、嬉しいですv

ハガレンの九月のカレンダーを見るたび、座っているロイの後ろに立っているのは、顔見えないけど絶対中尉とハボックだよねッ、とそう思っているというだけの話。

以下、拍手お返事です。

摩依夢さま

ご了承ありがとうございますvでは、今度宝部屋の方へ納めさせて頂きますね。でも、私の話はホントしょうもない話なので……あんまり期待なさらないで下さいましー(汗)
2011年09月29日(木)   No.108 (カプなし)

吸血鬼10
alucard 10

 薔薇の海の中に溺れるように倒れ込んだハボックの長身をロイは支える。意識を失った彼の頬をうっすらと笑みを浮かべて撫でるロイの背後から声がかかった。
「ロイ様」
「バルボアか」
 振り向いた主人の顔に浮かぶ狂喜の表情をバルボアは無表情に見つめる。ロイの腕の中のハボックを見てバルボアは言った。
「もう二度とここから出ることがないとは、全く思いもしなかったでしょうに」
 その言葉の裏にどこか責める響きを感じてロイは僅かに眉を寄せる。
「責めているのか?私を」
「まさか」
 バルボアは主人の言葉に眉を跳ね上げて答えた。
「ロイ様が漸く長い時を共にされる方を見つけた事を心からよかったと思っているのです」
 今度は明らかな皮肉を感じ取ってロイが言う。
「今の立場を選んだのはお前だろう?私は強要した覚えはないぞ」
「ええ。貴方に仕える事を選んだのは私自身です」
 気が狂いそうなほど長い長い時を生きる孤独を埋める為のパートナーとしての地位を、ロイはバルボアに赦しはしなかった。ロイは冷たくバルボアを見て言った。
「それなら文句を言われる筋合いはないな。バルボア、ハボックの為の部屋の準備は出来ているか?」
 己に対するのとは全く違う熱のこもった視線でハボックを見つめるロイにバルボアが言う。
「私が彼に危害を与えるとは思わないのですか?」
 バルボアが己の魂を縛っておきながら一番欲しかったものを決して与えてはくれなかった男を恨めしげに見つめて言えば、ロイは笑みを浮かべて答えた。
「そんなことをするはずがない。お前は利口だからな」
 言われてバルボアは一瞬顔を歪めたが、すぐに表情を消してハボックに手を伸ばす。
「お部屋にお連れしましょう」
 バルボアはそう言うと主人の手からハボックを受け取り抱き上げた。ロイの後をついて薔薇の庭を歩きながら尋ねる。
「でも、どうして彼なのです?必要のない食事を食べるフリまでして。ろくな才能もない彼をどうして?」
「優秀なコックとしての才能があるだろう?」
「貴方には一番必要のないものではありませんか」
「美味かったぞ、お前も食べてみればよかったんだ」
 楽しげに言うロイをバルボアは呆れたように見る。その視線を背後に感じてロイは低く笑った。
「いいさ、時間はたっぷりあるんだ。なんならお前がチェスを教えてくれたらいい。意外とお前以上にいい腕前かもしれないぞ」
 かつて世界に名だたるチェスの名プレイヤーだった男にロイは言う。
「それなら貴方が教えたらよろしいでしょう?チェスの相手をさせる為だけに私を引き入れた貴方なのですから」
 ロイが己を必要としたのはただそれだけと判っていながらその昏い黒曜石の輝きから離れる事が出来なかった。そんな恨み言を口にするバルボアをロイはチラリと振り向いた。
「そうだったかな。あまりに昔のことで忘れた」
 秀麗な顔に酷薄な笑みを浮かべて言い捨てるともう振り向きもせず屋敷へ向かう主人の背を、昏い瞳で見つめるバルボアのハボックを抱く腕にほんの少し力が入った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新してないのにありがとうございます〜!元気貰ってますv

風邪っぴきです。熱こそありませんが、咳が出始めると止まらない……。いい加減喉が不味い、というか鉄さび臭いよ、咳し過ぎだ。そんなわけで、今日の更新も無理かもしれませんorz いつになったら拍手リク複数アップ出来るようになるんだろう。書きたい気持ちだけはあるんだがなぁ(苦)

そんなところで「吸血鬼」です。相変わらずオリキャラなサイトですみません(苦笑)でも、やめられない〜(殴)このシリーズもまだ暫くかかりそうなので、dump renewページにバラバラにアップされてたのを「吸血鬼」で纏めました。第一話が2009年なので少し下の方になりますが。二年かかってまだ10話目ってのもな……。もう少しスピードアップしなきゃー(汗)

以下、拍手お返事です。

摩依夢さま

台風凄かったですね!ポスト見に外へ出て倒れた自転車に蹴躓いて思い切りコケたのは自分の運動神経のなさですが、庭木が根っこから倒れて車にもたれているのを見た時は結構ショックでした……。幸い車が傷つくほど木が重くなく、木の方も車にもたれたおかげでずっぽり抜けずに済んだので、翌日ダンナと二人でゴミ袋6袋分も枝葉を落として木を元に戻しましたが、こんな事は初めてですよ。それほど凄い台風だったんだなぁと。わさわさ木の枝集めながらハボ空を見上げてやれやれでした。でも、これくらいで済んでよかったと言わなければですよね。お月見話、ええとー、ちっともオトナ味ではありませんがそれでもよければ〜(苦笑)でも、思い切り摩依夢さまの続きなので摩依夢さまのお話もアップしていいですか?うふふふふ(←実はそれが狙いだったり(笑)
2011年09月24日(土)   No.107 (カプなし)

暗獣23
「ろーい」
 窓辺の定位置に座って本を読むロイの袖をハボックが引く。本のページをめくったロイはハボックの金色の頭をぽんぽんと叩いた。
「すまんが、ハボック。後にしてくれ。今大事なところを読んでいるんだ」
 ロイは本から目を上げずにそう言う。だが、ハボックはロイの膝に手をおき体重をかけるようにして彼の膝を揺すった。
「ろーいー」
 小さな軽い体でハボックは精一杯ロイの膝を揺する。そうすればロイがため息をついてハボックを見た。
「ハボック」
 ロイが本から目を離して自分を見てくれた事で、ハボックはパッと顔を輝かせる。だが、ロイの反応はハボックが期待していたものとは全く違っていた。
「ハボック、私は今本を読んでいるんだ。相手なら後でしてやるから邪魔をするんじゃない」
 ロイはそう言うとハボックの手を外させ再び本を読み始める。てっきり構ってくれると思いきや、冷たいロイの態度にハボックは思い切り頬を膨らませた。空色の瞳でロイを恨めしげに睨んだハボックは、プイと顔を背けると部屋から出ていってしまった。
 時折吹き抜ける風に黒髪を揺らして、ロイは本を読み続ける。三十分も過ぎた頃だろうか、ロイは一つ息を吐いて本から顔を上げた。テーブルの上に置いておいた手帳を手に取り幾つか気づいたポイントを記しておく。よし、とパタンを手帳を閉じて、ロイは部屋の中を見回した。
「待たせたな、ハボック。で、なんの用……ハボック?」
 近くにいるとばかり思っていたハボックの姿がないことに今頃気づいて、ロイは辺りをきょろきょろと見回す。どうやら部屋の中にはいないらしいと判って、ロイは手帳を置いて立ち上がった。
「ハボック」
 ロイは呼びながら階段を下り小さな姿を探す。家の中には見つけられず、ロイは庭へと出た。木の陰や草の茂みを覗いて歩いてもハボックの姿はなかった。
「……ったく、ハボックの奴、どこに───うわっ?!」
 別に構ってやらないと言ったわけでもないのにとロイが眉を顰めた時、上からなにやらバラバラと降ってくる。頭に当たればチクリと痛いそれが毬栗(いがぐり)と気づいて、ロイは頭を庇いながら上を見上げた。
「ハボック!」
 見上げた木の枝にぶら下がるハボックを見つけて、ロイは「やめなさい」と声を上げる。その声にハボックは毬栗を揺すり落とすのはやめたが、木の枝に腰掛けてつーんと顔を背けた。
「ハボック、降りてきなさい」
 ロイは言って手を伸ばす。だが、ハボックは降りるどころかポンと小さな毛糸玉に姿を変えてしまう。毬栗の間に黒い毛糸玉があるのは、まるで色違いの実がなっているようでロイは思わずクスリと笑った。
「毬栗みたいだぞ、ハボック」
 そう言えばハボックが枝の上でポーンと跳ねる。だが、小さな毛糸玉の姿では毬栗を落とすほどの揺れは起こせず、ハボックは毬栗の代わりに自分でぶつかってきた。
「おっと」
 だが、柔らかい毛糸玉ではイガイガの栗とは違って痛くもなんともない。ロイはハボックを簡単に受け止めると両手で包み込むようにハボックを持った。
「残念、痛くないぞ」
 そう言われてハボックがパッと金髪の子供の姿に戻る。ムゥと頬を膨らませて睨むハボックに、ロイは苦笑して言った。
「怒るな、ハボック。キリが悪かったんだよ」
 言って腕の中の子供の背をロイは優しく叩く。そうすればハボックは膨らませていた頬を戻してロイを見た。
「ろーい」
「うん?」
「ろーい」
「なんだ?ハボック」
 呼べば優しく笑う黒曜石にハボックは嬉しそうに笑うと、キュッとロイの首にしがみついたのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気のもとですv嬉しいですvv

【ロイハボでGO!更新のご案内】
「遠い夏」に「デッドエンド5」水瀬さん分更新されてます。腐腐腐腐、久しぶり〜vもうハボック可愛すぎて死にそうですv


「暗獣」です。今日は別の日記にしようと思ってたのですが、昨日頂いた拍手にクラッときてしまいまして……。たった一言「ろーい」って……ッ!いやぁ、今まで散々ハボに言わせてきましたが、ここまで破壊力があるとは……身をもって知りました(笑)そんなわけで今回も引き続き「ろーい」と呼ぶハボックってことでv

葉月さま

そうか!あれだとヤンの部分しかないですものね。うん、やっぱり自分で焼き菓子買ってきますよねッ、きっと(笑)でもって二人でお茶しながらデレるんだ……って、自重しないでドンドン言ってやって下さいまし〜(笑)

ろーい の方

もーーーっ、このコメ残して下さったあなた様!ほんとサイコーです!!一人パソを前にして「うわーっ、死にそう……ッ」と身悶えてしまいました(笑)素敵なコメント、ありがとうございますvv
2011年09月18日(日)   No.106 (カプなし)

闇獣(あんじゅう)
「大佐」
 ノックもなしにガチャリと扉を開いて執務室に入ってきた部下をロイは眉を顰めて見上げる。口を開く前にズイと突き出された書類に言葉を発するタイミングを失って、ロイは書類をひったくると中身に目を通した。
「アンタ、さっき総務の事務職員の女の子と二人でいたっスね。何を話してたんスか?」
 頭上から降ってくる険しい声にロイはサインを書こうとしていた手を止めて顔を上げる。そうすれば不機嫌に見下ろしてくる空色と目があって、ロイは眉を寄せた。
「なにって、別に大した話じゃない」
「オレには言えない事?」
「そう言う訳じゃ───」
 一瞬ムッとして言い返そうとしたロイは、思い直して言葉を飲み込む。うんざりとしたため息をついて、ロイはハボックに言った。
「ロージーストリートに新しい洋菓子店が出来たというので教えて貰ってたんだ」
「新しい洋菓子店?そんなの、わざわざ教えて貰ってたんスか?」
「昨日の開店セールに行ったって、先着五十名様限定の焼き菓子を分けてくれたんだよ」
 味の参考になるだろう?とロイは言いながら視線を書類に落としペンを動かす。サインを認めた書類をハボックに返そうと顔を上げたロイは、もの凄い形相で自分を睨んでいるハボックに気づいて目を見開いた。
「女の子にお菓子貰うなんて」
「……別に特別意味のあるものじゃないだろう?」
「例えなんだろうとオレ以外の相手から貰わんでくださいッ!!」
 ハボックは声を荒げて言うとロイに向かって手を差し出す。
「菓子、寄越してください」
「え?でも……」
「寄越せって言ってんだよッッ!!」
 バンッと差し出した手で机を殴るハボックにロイは目を見開く。ハボックを見つめたまま手探りで机の抽斗から貰った焼き菓子を出すとハボックに渡した。
「……いいっスか?今後オレ以外の奴から何か貰ったりしたら承知しないっスよ?」
 ハボックは低く囁くと手にした菓子を床に叩きつける。厚い軍靴の底で何度も踏みつけたハボックは、ジロリとロイを見てそれ以上は何も言わずに執務室を出ていった。
「……」
 バンッと乱暴に閉まった扉を見つめていたロイはため息をついて椅子に沈み込む。
「なんだってああも嫉妬するんだ……」
 ひと月ほど前、ハボックに告白されたのをきっかけにロイはハボックと付き合うようになっていた。人懐こく明るい性格だとばかり思っていたハボックが、実はもの凄く嫉妬深く独占欲が強いのだと気づいたのは何時だったか。
「まいった……」
 ロイは踏みにじられた菓子を見つめて深いため息をついたのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みになります、嬉しいですーv

「闇獣」と書いてこれも「あんじゅう」で。いや、普段書いている「暗獣」、最初にタイトルを見た時に「ヤンデレハボを想像した」って言うコメント頂いたので、ヤンデレなハボを書いてみました(笑)ヤンデレってこういうのじゃないのかな?ヤンキーなデレじゃないとは判ってるんですが(苦笑)しかし、独占欲の強いロイと言うのは書いた事があっても独占欲の強いハボって書いた事がなかったような気がします。まあ、ちょっとしたお遊びということで(笑)

以下、拍手お返事です。

摩依夢さま

お久しぶりです〜v中秋の名月も過ぎたと言うのに相変わらず暑いですね、お元気でお過ごしでしたか?「お月見どろぼう」初めて聞きました!そんな日本版ハロウィーンみたいの、あったんですね!そして……こんなピンポンダッシュならいつでも大歓迎です(笑)ロイ、可愛い〜v中尉素敵ーvvそしてそんな二人を上官に持つハボ……。ニヤニヤしながら読んじゃいましたvでもって、ついうっかりこの続きを考えてしまいましたよー、勝手に続きを載せるわけにいかないので載せませんが(苦笑)ともあれ楽しいお話をありがとうございますvv是非またピンポンダッシュしてやってくださいvvv

葉月さま

「暗獣」楽しんで頂けて嬉しいですーvあはは、ヤンデレハボ!確かにタイトルだけ見たらそう取れない事は(笑)思わず葉月さまの想像に刺激されて書いてみました。でも、暗い獣な衝動じゃないか……。むーん、ヤンデレ、難しいですー(苦)

しゃべらないハボちゃんは の方

いつも読んで下さってありがとうございますvうお、ハボック、可愛いですか?喋らないので自分が思い描いたハボックをどの程度伝えられているのか毎度心配なのですが、可愛いと言って頂けて嬉しいですーvvこれからも頑張りますの励みになりますv
2011年09月15日(木)   No.105 (カプなし)

暗獣22
「そうか、今日は満月だったな」
 ロイは窓から見える月を見上げて呟く。ビロード張りのトランクの中に座り込んでコレクションを並べているハボックを見下ろして、ロイは言った。
「ハボック、庭に出ないか?」
 そう言われてキョトンとするハボックにロイは続ける。
「今日は満月なんだ。今時分の月は綺麗だぞ、せっかくだから外で見よう」
 そう言って部屋を出ていくロイの後をハボックは慌てて追う。急いで階下に下りればキッチンに寄り道したロイがグラスを出しているのを見て、ハボックは不思議そうに首を傾げた。
「月見酒だよ、ハボック」
 ロイはウィンクして言うとトレイにグラスを二つと以前ヒューズが持ってきた酒と井戸の水を詰めたボトル、つまみになりそうなチーズやハムを載せる。それを手に庭に出ると、小さなベンチに腰掛けた。
「おいで、ハボック」
 ロイは言いながら自分の隣を指さす。隣に並んで腰掛けたハボックにお気に入りのグラスを渡し、ロイは水のボトルを手に取った。
「お前にはこっち」
 ハボックの手の中のグラスにロイはコポコポと水を注ぐ。
「私はこっちだ」
 と、ロイはハボックのグラスに注いだ水と同じように透明な酒を自分のグラスに注いだ。
「ほら、ハボック」
 そう言いながらロイはハボックのグラスに己のそれをチンと当てる。
「乾杯」
 にっこり笑ってグラスを口に運べば、ハボックがパッと顔を輝かせた。
「ろーい」
 ハボックはそう言いながら両手で握り締めたグラスを差し出してくる。ロイはもう一度グラスを合わせてやりながら言った。
「“乾杯”だ。ハボック」
「ろーい」
 一応ロイが言ってみるもののハボックは相変わらずの調子でそう言うとグラスの水を飲む。それにクスリと笑ってロイは梢の先にかかる月を見上げた。
「いい月だなぁ、ハボック」
 日中はまだ暑いものの陽が落ちればだいぶ涼しくなってきた。そよそよと吹き抜ける風を感じながらロイは月を見上げて言った。
「こんなにまん丸で明るいと月の模様がよく見えるな。ほら、ハボック。月の上にウサギがいるぞ」
 そう言えばハボックが首を傾げる。ロイはグラスを持っていない方の手で月を指さした。
「あそこだ、判らんか?こう、横向きに耳の長いのがいるだろう?」
 言いながら少し顔を横に倒すロイの真似をしてハボックも顔を横に倒す。するとハボックの金髪から覗く犬耳がにゅっと細く伸びたのを見て、ロイは目を瞠った。
「お前、そんな事が出来るのか?」
 柔らかい毛を纏ったまま長く伸びた耳にロイはそっと手を伸ばす。その柔らかい手触りを楽しみながらロイはクスクスと笑った。
「ははは、犬じゃなくてウサギだな」
 楽しそうなロイの様子にハボックも笑って耳を揺らす。ロイはボトルを取るとハボックのグラスに水を注ぎ足した。
「ほら、飲め。ハボック」
 そう言って己のグラスを掲げれば、ハボックがなみなみと注がれたグラスをチンと合わせる。
「ろーい」
 そうやって二人はグラスを交わしながら、夜空に輝く満月を楽しんだのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございますv拍手、やる気貰ってますv

「暗獣」です。今夜は中秋の名月だそうで。東京はよく晴れているのでまん丸のお月さまが見られそうです。そんなわけでお月見な二人。前にも一回月見ネタは書きましたが、せっかくの時節ネタ、逃す事はないなと(笑)この間「暗獣」をdump renew に纏めた時に読み返して、ハボックがロイの名前だけは呼ぶのを思い出しました。いやすっかり忘れてましたよ(爆)そういうわけで「乾杯」しながら「ろい」を連呼するハボックということで。
2011年09月12日(月)   No.104 (カプなし)

吸血鬼9
alucard 9

「どうぞ」
 ハボックはそう言ってロイの前に皿を置く。湯気を上げる熱々のパスタからは仄かにサフランのよい香りがした。
「シーフードのサフランソースパスタっス。お口に合うといいんスけど」
 遠慮がちに言うハボックに頷いてロイはフォークを手に取りパスタを口に運ぶ。サフランを加えたホワイトソースがパスタやエビやホタテに絡んで実によい味を引き出していた。
「うん、いい味だ。サフランの加減が絶妙だな。とても旨い」
「ホントっスか?……よかったぁ」
 食べるロイの口元を凝視していたハボックは、ロイの言葉を聞いてへなへなとしゃがみ込む。その様子にロイはクスリと笑った。
「サフランをね、少量の水を加えてすり鉢で擂ってから使ってるんス。それをパスタが茹であがる直前にホワイトソースに加えてるっス」
「そうか、だからこんなにいい香りがするんだな」
 ロイは言いながらパスタを食べる。サラダと共にあっと言う間に完食して、満足そうに息を吐き出した。
「最初に出てきたコンソメスープも旨かったし、実にいい腕だな、ハボック」
 パスタより先に出てきた黄金色に澄んだコンソメスープを思い出してロイが言う。期待していた以上の賛辞にハボックは照れくさそうに顔を赤らめた。
「ありがとうございます。そう言って貰えて嬉しいっス」
 ハボックはそう言ってから「あ」と思い出したように声を上げる。
「そうそう、デザートがあるんスよ。オレンジのシャーベット。口がさっぱりするっスよ」
 ハボックは厨房に引っ込むと少ししてガラスの器に盛ったシャーベットを持ってくる。見た目も爽やかなそれは口にすれば爽やかな香りと共に溶けて、ロイは満足げに目を細めた。
「美味しかったよ、ごちそうさま」
 ロイは最後にナプキンで口元を拭いてハボックに頷く。嬉しそうに笑ったハボックが食後のコーヒーを置いて近くの椅子に腰を下ろすのを見て、ロイはカップを手に取りながら言った。
「わざわざすまなかったな。私の我儘につき合わせて」
「とんでもないっス!あんな立派な厨房で料理が出来て、すっげぇ楽しかったっス。……ちょっと緊張もしたけど」
 小さな声でそう付け足すハボックにロイはクスクスと笑う。ハボックがハアと息を吐き出して、ひと仕事やり終えた達成感を味わっていればロイが言った。
「お礼に庭を案内しよう。おいで、ハボック」
「え?あ、はい!」
 立ち上がって部屋から出ていくロイの後をハボックは慌てて追いかける。屋敷の奥にある扉を開いて外に出るロイの後に続いたハボックは、目の前に広がる風景に目を瞠った。
「すげぇ……」
 広い庭を埋め尽くす一面の薔薇。色も形も様々な薔薇が咲き乱れる様にハボックは息を飲んで立ち尽くした。
「ハボック……ハボック」
「あ……はいっ」
 繰り返し呼ぶ声に気づいてハボックは辺りを見回す。庭の中に立つロイのところへ駆け寄るとハボックは庭を見た感動をそのまま口にした。
「凄い庭っスね。こんなにたくさんの薔薇、見たことねぇっス」
 ハボックはそう言って改めて庭を見回す。うっすらと笑みを浮かべて立っているロイに視線を戻して言った。
「これだけの薔薇を育てるの、大変っしょ?」
「他にすることもないからな、時間なら幾らでもあるし」
「他にって……そう言えばマスタングさん、仕事はなにをされてるんっスか?」
 ふと思いついた疑問をハボックは口にする。だが、ロイは答える代わりに白い薔薇を一本、ポキリと折ってハボックに差し出した。
「……ありがとうございます」
ハボックは差し出された薔薇を受け取る。その途端強い甘い香りがハボックの鼻孔を擽った。
「甘い……」
そのあまりに強い香りに目を瞠ったハボックの手に無意識に力が入る。チクリと棘が指を刺して、ハボックは顔を歪めた。
「いたッ」
「大丈夫か?」
 ロイは言ってハボックに手を伸ばす。薔薇を取り落としたハボックの手を掴み、傷ついた指を己の口元に引き寄せた。
「え……?マスタングさん?」
 なにをするのかと見つめるハボックの視線の先で、ロイはハボックの指を舐める。赤い舌が傷口に触れればゾクリと背筋を何かが走り抜けて、ハボックは慌てて手を引いた。
「だっ、大丈夫っスから」
 ハボックは傷ついた指をもう一方の手で握り締めて言う。ロイは薔薇を拾い上げ、長い指で棘を折り取ってハボックに差し出した。
「すまなかったな、棘を取ってから渡すべきだった」
「いえ!オレがうっかりしただけっスから」
 ロイの言葉にハボックは慌てて首を振る。ロイの手から薔薇を受け取り改めてその香りを嗅いだ。
「凄い濃厚な香りっスね。くらくらするくらい……」
 そう言った言葉の通り、強い甘い香りに酔ったように頭がくらくらする。
「あ、れ……?」
 不意に視界が狭まり、ハボックは崩れるようにその場に倒れ込んだ。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新励みになります、嬉しいですv

昨日のハボロイ更新はやっぱり「重陽その後」になってしまいました〜(苦)昨日は田中と斉藤の投げ合い見た後、ダンナと息子はサッカー観戦に出かけたんですけど、二人を出した後「やれやれ」とソファーに座ったら思いっきり爆睡しちゃいましてorz ハッと気付いた時には結構いい時間で「ええっ?お風呂入ってないしご飯も食べてないよッ!つか、ハボロイ書いてねェェッッ!!」慌てて飛び起き急いでお風呂入って残り物のカレーでご飯食べて、エロでなきゃ間に合わんと思っていたら帰ってきてしまいました(苦笑)息子と並んでソファーに腰掛けて「Angel Beats!」見ながらエロ打ってましたよ(爆)慌てて書いたので入れようと思ってたシーンも入れ忘れたし、ロイに××させようと思ってたのになぁ。仕方ないからハボにさせ……(殴)次回こそ「霧屋」更新したいと思います(汗)

そんなわけで「吸血鬼」です。せっかく再開したので忘れないうちに進めようと努力中。他の吸血鬼話も書きたいなぁ。「蒼牙」は読み返さなきゃいけないのが多いから「蒼焔」から書くかな。あと滞ってるのはなんでしたっけ。ありすぎて忘れる(苦)

そうそう、dump renew ページに日記のシリーズものとかを漸く移しました。「暗獣」もこっちに纏めてありますので、読み返したい方なぞいらっしゃいましたらどうぞー。

以下、拍手お返事です。

日記ss楽しく読ませてもらいました! の方

うふふ、楽しんでいただけましたか、嬉しいです。9月9日がそんな日だなんて知らなかったですよねぇ。えー、オカマ=ゲイの事なんですか?私もオカマ=オネェだと思ってました!4月4日はそういや言われてみればきいた事がある気が……。確かに真ん中の日ですものね(笑)それにしても彼氏とそんな話が出来るなんて羨ましい!!是非私も混ぜて欲しいですよ(笑)
2011年09月11日(日)   No.103 (カプなし)

重陽
(……なんだろう、視線を感じる)
 ハボックは食料品店でレタスを選びながら考える。瑞々しい緑のボールを籠に放り込むと、ハボックはレジに並んだ。
「レタスにほうれん草、マッシュルームと人参、葡萄……全部で1350センズね」
「1350センズ……」
 ハボックは尻のポケットから皺の寄った紙幣を取り出し、1000センズ札を選ぶとカウンターに置く。それから小銭入れから残りを払おうと100センズコインを二枚取り出した。
「あれ?小銭ないじゃん」
 もう少し細かい金があったと思ったが思い違いだったらしい。ハボックがコインをしまってもう一枚1000センズ札を取り出そうとすれば、レジの男が言った。
「いいよ、1000センズにマケてあげる」
「え?でも……」
「いいのいいの、今日は特別な日だから」
 ね?とウィンクしてくる男にハボックはよく意味が判らないままに頷く。すると男は手を伸ばしてきてハボックの手を取った。
「その代わり仕事が終わったら一緒に飲みにいかない?」
 男はそう言いながらハボックの腕を撫で上げる。上目遣いに見つめてくる男の視線にゾゾゾと背筋を悪寒に震わせて、ハボックは男の手を振り払った。
「金は払うからッ!」
 ハボックは大声で言うと1000センズ札をカウンターに叩きつけ籠を引っ掴んで店を飛び出す。ハアアとため息をついて男が撫でた腕をゴシゴシとこすった。
「なんなんだよ、一体」
 一応恋人と呼べる相手は男だが、だからといって男全部に興味があるわけではない。ロイ限定だと思いながら通りを歩いていけば可愛らしくも野太い声が後ろから聞こえた。
「ああら、ハボックちゃん!元気だったァ?」
「アンタ……」
 恐る恐る振り向けばそこには以前ある事件で顔見知りになったオカマバーのママが科を作って立っていた。
「うふ、久しぶりねぇ。遊びに来てって言ったのにちっとも来てくれないのね」
 イ・ケ・ズと言葉に合わせてゴツいオカマはハボックの頬を指でツンツンとつつく。ハボックが顔をヒキつらせて答えに詰まっていれば、オカマはハボックの腕に己のそれを絡めて言った。
「でも今日は特別な日だから。ハボックちゃんも来てくれるわよね?」
「や、オレ、忙しいっスから!!じゃあッッ!!」
 ハボックはオカマの腕を振り解きピッと敬礼して一目散に逃げ出す。この後も信号待ちの間に尻を触られたり知らない男から告白されたりと、やたら怖い思いをしながらやっとのことで家に帰りついて、ハボックは駆け込んだリビングでヘナヘナと座り込んだ。そんなハボックにソファーでのんびりと本を読んでいたロイが言った。
「おかえり、やけに疲れてるな。何かあったか?」
「何かって……何かなんてもんじゃねぇっスよ!」
 すっげぇ怖かったんだから、とハボックは外での出来事を話して聞かせる。そうすればロイは顔色一つ変えずに「やっぱりな」と頷いた。
「やっぱり、って、アンタ何か知ってるんスかっ?」
 ハボックは知らん顔で本を広げるロイにズイと顔を寄せる。そうすればロイは鬱陶しそうにハボックの顔を押しやった。
「今日は男色の日だからな」
「男色の日っ?なんスか、それ!」
 聞いたことねぇよ、と喚くハボックにロイが答える。
「今日、九月九日は重陽の節句と言ってな、陽の数が重なるめでたい日なんだ。で、陽の数が重なってるから男色の日、と」
「なにそれ。訳判んねぇんスけど」
 ロイの説明に納得できないと言う顔でハボックが言う。ロイはそんなハボックに肩を竦めて答えた。
「私もよく知らん。だが、まあその手の趣味の男たちにはお祭りみたいな日らしいな」
 そう言うロイをハボックはじっと見つめる。
「アンタ、それ知っててオレが一緒に買い物行かないかって言った時、断ったっスね?」
「だって男二人で歩いてたらいかにもそうですって言ってるみたいだろう?その手の奴らが寄ってきたら嫌じゃないか」
「でも二人でいればむしろ寄ってこないんじゃないっスか?あの二人、デキてるって思えば」
「そうかもしれんし、そうでないかもしれない。何れにせよリスクは犯すべきじゃないからな」
 そう言うロイをハボックは目を細めて見つめた。
「アンタ、オレを見捨てたっスね……?」
「そう言う日だと知らなければ害はないと思ったんだよ」
「オレ、色々怖い思いしたんスけど」
「何事もなかったんだからよかったじゃないか」
 シレッとしてロイが言えばハボックの細めた目が剣呑な光を帯びる。
「オレがどんだけ怖い思いしたか、アンタにも知ってもらおうじゃないっスか……」
「え……?ハ、ハボック……?」
 ゴゴゴと怒りのオーラを燃え上がらせて近づいてくるハボックに、ロイがしまったと思った時はもう既に遅かった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手もやる気貰ってます、嬉しいですーv

今日九月九日は重陽の節句で「男色の日」だって教えて頂いたものでvえええ、そんな日あるんだー!いやびっくり!二丁目とかでパーティなんてやっていそうですよねぇ(苦笑)「濃いの書いて下さい」って言われたんですけど、そこに行く前に終わってしまった(苦笑)いやだって、明日の更新分「凌霄花」は二章分書いたんですが、ハボロイの方書けてないんですもん(苦)いっそのこと「重陽その後」をハボロイで書いて明日の更新はそれで、ってしたら駄目かなぁ。エロの方が絶対的に書くの早いから。エロなら幾らでも書けるんだがな(苦笑)時間間に合わなくて本当にそうなったらごめんなさいです(汗)

以下、拍手お返事です。

のらりさま

以前のらりさまに「恋猫が一番のお気に入り」と伺ってから早くお届けしなくちゃーッ!と思っておりました。お楽しみ頂けてよかったですーv折角再開したので出来るだけ間を開けずに書こうと思います。「暗獣」も楽しんで頂けて嬉しいです。わんこハボもにゃんこロイもイイですよねvvうふふv

480000打おめでとうございます♪ の方

いつも遊びに来て下さってありがとうございます!相変わらずの内容ですが、これからも是非是非よろしくお付き合い下さいねv

水瀬さん

ふふふふふふ、「凌霄花」楽しんで頂けてますか?もー、やっとここまで来ましたよ!まさか仏蘭西編があそこまで長くなろうとは……orz 毎度見通しの甘さには自分でもガックリきます(苦笑)でも、ここまでくればあともう一息。でも、水瀬さんの思っているようなラストではないかも〜(笑)まぁ、完結したら感想聞かせて下さいv

はたかぜさま

おおお、ご意見ありがとうございます!ご意見なのに読みながらニヤニヤしちゃうのは何故かしら(笑)はたかぜさまのコメント、いつも本当に楽しいんですもの!嬉しいですvそうですね、折角考えた事だし、ちょっとお試しで二つくらい同時進行でもいいかな。「なんでもバッチコーイ!」の優しいお言葉に励まされて頑張ってみようと思います!「鳥頭」は私もしょっちゅう息子に言われますよ(苦)冗談抜きで三歩歩くと忘れるorz なので書いてて途中で「あれ?」と思って読み返すのはしょっちゅうです(苦笑)辻褄が合わないところがあっても見逃して下さい(殴)48万打お祝いもありがとうございますvいいでしょう、あのリク!萌えますよねvv取りかかった暁には素敵なお話になるよう頑張りますよv頭良くもなければ尊敬されるような人間でもありませんが、これからもご一緒にハボを愛でて頂けたら嬉しいですv
2011年09月09日(金)   No.102 (カプなし)

恋猫19
ハボロイ風味

「来なかった……」
 ハボックはオムレツが載った皿を手に呟く。毎日のように遊びに来るオムレツが大好きな美人の黒猫をロイに紹介しようと、一晩中オムレツを置いた窓を開けておいたのだが、結局黒猫は姿を現さなかった。
「いつもならオムレツ焼いてるとすっ飛んでくるんスよ」
 ハボックは夜中すかしてあった窓を閉めて皿を手に戻ってくる。朝食のフレンチトーストを前にきちんとテーブルに座って、ハボックを見上げてくるロイに向かって言った。
「この間喧嘩して足怪我して手当してやったことがあったんスけど……もしかしてそん時の怪我が酷くなったとか」
 ハボックは大きなため息をつきながら椅子に腰を下ろす。どうしちゃったんだろう、と心配するハボックにロイが言った。
「そんなに心配しなくても、どこかに出かけているだけかもしれないぞ」
「どこに?」
「えっ?」
 心配し過ぎないようにと、そう思って言えば即座に返されてロイは言葉に詰まる。困ったように視線をさまよわせて口ごもるロイにハボックは重ねて言った。
「どこに?猫ってそんなに行動範囲広いんスか?」
「それは……猫によるんじゃないか?」
「そうなんスか?」
 しどろもどろに答えるロイにハボックはため息をつく。それからロイが食事に手をつけていない事に気づいて慌てて笑みを浮かべた。
「すんません、メシ、冷めちまいますね。どうぞ、食ってください」
「うん……」
 言われてロイはいただきますとフレンチトーストを口に運ぶ。向かいの席で同じように食べ始めるハボックを見て、ロイは尋ねた。
「そんなに心配なのか?」
 ロイの声にハボックは落としていた視線を上げる。真っ直ぐに見つめてくる黒曜石を見返して答えた。
「まあ、飼ってるわけじゃねぇし、姿が見えないからって大騒ぎする事じゃないんスけど……結構癒されるっていうか、一緒にね、メシ食ったり月見上げたり……だからいないとやっぱ気になるっていうか」
 ハボックはそう言って照れくさそうにボリボリと頭を掻く。そんなハボックをどこか眩しそうにロイが見上げれば、ハボックが言った。
「ま、ロイの言うとおりどっか出かけてるのかもしれないっスね。帰ってきたらまた顔出してくれるっしょ。そしたらロイに紹介しますから」
「……うん」
「朝飯食いながらでなんですけど、今日の晩飯はなんにしましょうかね。あ、カレーなんてどうっス?ちゃんと甘口にしますから」
 ニコニコと笑いながら話すハボックの声を聞くロイの尻尾が、テーブルの陰で元気なく揺れていた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手励みになってます、嬉しいですv

昨日の更新日はロイハボオンリーでハボロイ派の方には失礼いたしました。いや、ちょっと続けて書きたかったので書いてたら「霧屋」まで手が回りませんでした。せめて日記をハボロイにしようと思ったけど睡魔に負けましたーっorz ルビふるので精いっぱいだったよ(苦)ビルダーの14を使ってるんですが、あれって纏めてルビふれないですよねぇ。なんかこの先のバージョンだといっぺんに、しかも何種類もルビふれるみたいなんだけどなぁ。まあ「凌霄花」も後少しだけどさ。とにかく東京の最高気温が30度あるうちに終わらせようと尻に火がついてます(苦笑)

というところで「恋猫」です。前回書いたのがいつだったか、めちゃくちゃ探しちゃいました(苦笑)見事一年前の9月7日でしたよ(爆)そんなわけでお久しぶりの更新です。どんな展開だったか忘れてたので(当たり前だ、一年放置だもんorz)読み返して気付いたのですが、もう19話目だというのにたった一日しかたってないんでやんの(爆)まったりにもほどがあるよなぁ(苦笑)さて、この後はどうしましょうかね。チャッチャと展開すればすぐ終わりにもなるし、まったり話を続けてもいいんだけどどうするかなぁ。まあ、様子見ながらボチボチとまいります。
2011年09月07日(水)   No.101 (ハボロイ)

暗獣21
「暑いぞ……もう九月じゃないのか?」
 ロイは読んでいた本を乱暴に閉じて唸る。九月に入ってもう一週間ほどが過ぎたが、イーストシティでは相変わらず暑い日が続いていた。
「台風が暑さを持っていってくれると思ったのに……」
 先日、大きな台風が行き過ぎた。台風一過でカラリと晴れて爽やかな秋風が吹くかと期待していたのに、晴れは晴れでも湿度の高い蒸し暑い晴れは、暑さに弱いロイにこの夏最後の強烈な一発をかました感じだった。
「ああ、暑い……また水撒きでもするか?」
 ロイはそう呟いて部屋の中を見回す。だが、ロイに答えてくれる筈の小さな姿は部屋の中になかった。
「どこに行ったんだ?いないならお前の場所を借りるからな」
 ロイはちょっぴり拗ねたように言うと、ハボックがいつも寝そべっている場所に体を伸ばす。板張りの床はひんやりと冷たく風がそよそよと通り抜けて、ハボックがお気に入りの場所だけの事はあった。だが、十分も寝そべっていると床に体温が移って生ぬるくなってくる。暫くはゴロゴロと寝返りをうってうだうだしていたロイだったが、ため息をつくと立ち上がった。
「暑いじゃないか」
 ムゥと眉を寄せてロイは言って部屋を出る。ハボックの姿を探してキッチンを覗き、書斎を覗いてロイは中庭に出た。
「外も中も変わらんな」
 熱風をかき回すだけの扇風機しかない家では、正直家の中も外も気温は変わらない。風があるだけ外の方がましかもと思いながら、ロイは庭を見回しながら歩いた。
「ハボック?」
 ロイはまだ夏の緑が茂る庭を歩いていく。見上げれば晴れた空が高く抜けて、そこだけが秋の気配を漂わせていた。
「空だけ秋でもなぁ」
 地上に夏と取り残されてロイは肩を落としてため息をつく。その時、木の幹の向こうにハボックの金色の尻尾が見えて、ロイは歩く速度を速めた。
「ハボック、こんなところにいたのか」
 ロイは木の幹を回ってハボックに近づく。ロイの声に振り向いたハボックになにをしているのか尋ねようとしたロイは、小さな体の向こうに花が咲いていることに気づいた。
「秋桜か」
 すらりと伸びた茎の先に薄桃色の花が揺れている。ハボックは咲いたばかりのその花の前にしゃがみ込んで、微かな風に揺れる姿を楽しんでいるのだった。
「秋桜が咲くような季節になっていたのか」
 いつまでも夏が続くと思っていたが、どうやら季節は少しずつとはいえ確実に秋へと移り変わっていっているらしい。
「綺麗だな」
 目を細めてロイが言えば見上げてくる空色がにっこりと笑う。秋桜を映す空色に秋の気配を感じながら、ロイは風に揺れる花を見つめていた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気貰ってます、嬉しいですv

ええと、九月入ってうだうだしてしまいました。どうも体力なくって……。腰痛いし。そんなわけでサボってましたが、ぼちぼち復活していこうと思いますー。

そんな事を言っている間にカウンターが48万打を回りました。更新サボってたのにありがとうございます!いつもいつも遊びに来て下さる皆様に本当に感謝の気持ちでいっぱいですvこれを励みにこれからもハボをぐりぐり愛でていきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお付き合いのほどお願いいたします<(_ _)>でもって、48万打のリクも頂いてしまいました〜vロイハボです、腐腐腐vvもう、頂いた妄想が楽しくってニヤニヤしまくってしまいました。ありがとうございますv頑張りますよ!!

ところで、今回リク頂いてちょっと考えたんですが、何をかと言えばリクの消化方法について。これまでは一つのリクを書きあげてから次のリクを書くと言う感じで一つずつ消化していってたんですが、少しずつかわりばんこに書いたらどうなのかなぁと思いまして。最近どうも話が長期化する傾向にあるもので、せっかくリクを頂いても取りかかるまでにやたら時間がかかっちゃう。だからと言って短くするのも出来ないというか、だって、事件が起きたり少しずつ好きになっていったりを書くのに五話とかじゃ終わらせられないんだもん(苦)週に三回更新とか一度の更新で三話とか書ければいいんですが、それはちょっと体力的にも時間的にも無理なんでorz そんなわけで同時進行はどうだろうと。ただ、今頂いているリクが現在連載中のを除いてもハボロイの拍手リクが5つ、ロイハボが拍手で3つ(内一つはpearlにあるもの)とキリリクが2つ。これを同時進行となると、週二回真面目に更新しても一つのお話が月に1〜2度の更新になっちゃうんですけどね。今現在これだけ書き散らかしている中で「お前これ以上書きかけを増やす気か?」と言われそうな気もするし、月一、二度の更新より続けての方がいい気もするし、実際のところどうなんだろう。メリットとしては「すぐお題に取り掛かれる」デメリットとしては「月一、二度の更新でエンディングを迎えるまでに時間がかかる」というところでしょうか。私の力量に不安はありますが、色んな話が読めるってのもメリットになるかな〜。ちょっと悩むところなので、「こっちがいい」とか「こんな方法もある」とかありましたらご意見頂けると嬉しいなぁと。そんなの自分で考えて決めたらいいよって言われそうでもあるがなー(苦笑)もしよろしければ拍手ででもご意見お聞かせ頂けたら嬉しいですー。

と、長々書いたところで「暗獣」でございます。もう少し行くとハロウィーンネタとか秋ネタが色々ありそうなんですが、まだ東京暑いんだもん。つか、「凌霄花の宿」書き終えてないから暑いままでないと困るんだけどさっ(汗)とはいえ、一時期の猛暑は収まってきたし、やはり段々と季節が移ってきてるんでしょうね。
2011年09月05日(月)   No.100 (カプなし)

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  Photo by 空色地図

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