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2011年03月の日記

2011年03月27日(日)
金剛石13
2011年03月20日(日)
不調
2011年03月18日(金)
比較
2011年03月14日(月)
小胆マシュマロ
2011年03月12日(土)
地震2
2011年03月11日(金)
地震!
2011年03月09日(水)
純愛
2011年03月08日(火)
恋闇27
2011年03月06日(日)
金剛石12
2011年03月03日(木)
恋闇26
2011年03月02日(水)
携帯
2011年03月01日(火)
金剛石11

金剛石13
「本日はご足労いただきありがとうございました、マスタング大佐」
「いや、なかなか有意義な時間でした」
 ロイは差し出された手を握り返してにこやかに微笑む。イーストシティ大学の名誉教授との懇談を終えて、ロイは背後に立つハボックに声をかけた。
「車を回してくれ、ハボック」
「アイ・サー!」
 ハボックはピシリと敬礼すると教授と雑談をしているロイをおいて先に部屋を出る。正面につけた車の脇に立ってロイを待てば暫くしてすらりと背筋の伸びた姿が現れた。ハボックが開けた扉からロイは車の中に躯を滑り込ませる。ロイが乗り込んだのを確認して扉を閉めるとハボックは運転席に回りハンドルを握った。
 ロイがハボックを手放す気がないと告げた日、飛び出したきり帰ってこなかったハボックは、結局その後は変わらずにロイの護衛を務め日々の業務に取り組んでいた。無表情の仮面の下に全ての感情を押し隠して業務をこなすハボックにロイは困惑する。これまでは様々な表情を映し出していた蒼い瞳がガラスのようにロイの姿を映すだけになってしまった事が、ロイには寂しくてたまらなかった。
「三十分の遅刻っス。11時半までの予定だったっしょ?」
「いいじゃないか、下らん会議や会食より余程有意義だ」
 錬金術に深い造詣のある老教授との懇談は、ロイにとって時間を忘れるほど興味深く楽しいものだった。満足げな笑みを浮かべているロイの顔をミラー越しにチラリと見てハボックは言った。
「中尉にどやされると思うっスけどね」
「……嫌な事を言うな」
 淡々と言うハボックの言葉で脳裏に浮かんだ副官の顔に、内心必死に言い訳しながらロイは言う。ハボックは司令部ではなく直接会食場所へ向けて車を運転しながら言った。
「一応中尉に連絡入れたらこのまま向こうに行ってくれと言われたんで」
「そうか」
 とりあえずお小言を貰うのが少し先に延びたらしい事にロイはホッと息をつく。言葉通りそのまま会食予定のレストランの前に車がつくと、ロイは自分で扉を開けて降りようとした。
「降りんでくださいッ!」
「ッ?」
 激しい口調にロイは扉を開けようとしてかけていた手を止める。ハボックは運転席から外へ出ると周囲の安全を確認してから後部座席の扉を開けた。
「失礼しました、サー。どうぞ」
 さっきの激しい口調が嘘のようになんの感情もこもらない声でそう促すハボックを、ロイは目を見開いて見つめる。
「ハボック、お前……」
 ハボックの蒼い瞳をじっと見つめればハボックの視線がほんの僅か反らされた。
「ありがとう、ハボック」
「……いえ」
 ロイは車から降りるとハボックを見て言う。レストランの入口までロイの後についてくるハボックの気配を背後に感じながらロイは思った。
 ハボックの瞳から感情が消えてしまったなどと思った自分はなんと愚かだったのだろう。あの蒼い瞳は以前と変わらず彼が口にしない多くの想いを、その奥深くに湛えているというのに。
「お待ちしておりました、マスタング大佐」
 出迎えに出てきた店の者に頷いて中へと足を進めながら、ロイはうっすらと笑みを浮かべた。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。パチパチ拍手も励みになりますv

体調も戻って参りまして「さあ、書くぞ」と言うところで春休みなんですよねぇ。息子がいるとそれだけで制約があるというのに、それに輪をかけて今は親戚から借りてきた「龍が如く見参!」をやれと煩い……。いや、確かに面白いんですよー、これ。でも、ストーリー進めてると意外とセーブポイントまでが間遠いんで始めちゃうと時間かかるのが難点で(苦)「デュラ読め」とか煩いし、静かにポメラやらせてくれ……。来週は実家に戻る事もあり、火曜日に更新出来たらとは思っておりますがどうだろう。それを逃すと次の更新は4月9日かなー(汗)それから火曜日更新しても「パナケイア」はちょっとお休みしようかと思っております。というのもいつもは一話書き上げてはアップする自転車操業なんですが、ちょっと纏めて書きたいので。でないとアップしてから大幅修正とかになりかねない(苦)実家で書ければいいんだがなー……。日記は出来るだけ書きたいと思っております。4月あたまにかけてそんな感じでお願い致します。

というところで久々の「金剛石」です。いかん、すっかり間が空いてしまった(苦)もう少しペース上げて書いていきたいと思いますー(汗)

以下、拍手お返事です。

柚木さま

「Stay My Blue」読んでくださってありがとうございますーv頂いたご感想へはまた別途お返事させていただきますね。しかし、柚木さまがロイハボもオッケになっていたとは……!嬉しいびっくりです(笑)

蒼さま

ホントなにもかも中止というのはどうなんでしょう。そりゃあ確かに大変な状況なのは判ってますが、これ以上どんどん経済やらなにやらを小さくしてしまっては逆によくないんじゃないかなぁと。煌々と灯りを灯して野球をやるのはどうかと思いますが、要はやり方次第なんじゃ?計画停電はこの先どうなるんでしょうね。ホテルの話は考えると思わずニヤニヤしちゃいますよ(爆)でも、実際停電の影響で店を畳んだという方もいるそうですよ。夏場の停電は冗談抜きで冷蔵庫の中身が怖いなぁと。去年みたいな暑さだったらそれこそ人死にが出そうで怖い(汗)そうか、“同人活動が困難”でイベントキャンセルもあり得るのか。いわれてみれば確かに(苦)更新案内、titleページにも載せてますよ?テロップはやめたけど最新の更新履歴だけメニューアイコンの上のとこに。「バラード」はあと1回か2回かなぁ、50章には届かなさそうです(苦笑)「パナケイア」いつもの発作?もうどうしても長編化から足が洗えません(苦)今回は長く書く必要のないエチなので(笑)「バラード」はほら、締めのエチだから!「鋼」前売り第二弾でたんだ!特典にはハボいるのかなぁ……。スケブ、頑張らなきゃだめかしら(苦笑)例の品、どうぞよろしくお願いしますvvって書くと怪しげ(爆)

naoさま

本当、いつまでも余震が続いていやですね。しかも余震のくせに大きかったりするし!更新、癒されるとのお言葉とっても嬉しいですーvそういって頂けると書く励みになります、ありがとうございます。「パナケイア」も終盤に向けてしっかり書いていこうと思っております。いよいよカウントダウンですね!お体お気をつけてお過ごしください。可愛いベビー誕生のお知らせを頂くのを楽しみにしてますv
2011年03月27日(日)   No.35 (カプなし)

不調
「つ……ッ」
「大丈夫か?」
 膝の上に載った金髪が苦しげに震えるのを感じてロイはハボックの背をそっと撫でる。そうすればホッと息を吐き出すのと同時にハボックの躯から力が抜けた。
 珍しい事にハボックが病欠だと聞いて、心配してアパートにやってきたロイが見たのはソファーの上でブランケットを巻き付けて横たわるハボックの姿だった。てっきりベッドに入っているとばかり思っていたハボックにそんなところで寝ている理由を聞けば「トイレに近いから」というのがその答えだった。ロイが来てからもハボックは何度もトイレに駆け込んでは下痢と嘔吐を繰り返した。医者に行く気力もないと言うので、ロイが自分の主治医を呼んで薬を処方して帰ったのが一時間ほど前の事。
「寒くないか?」
 ロイはハボックの金髪を指で梳いて尋ねる。そうすれば金髪が僅かに打ち振られた。
「平気っス……くっついてるとあったかいし」
 そう言って頬を擦り寄せるハボックにロイは目を細める。そっとハボックの腹に手を当てるとハボックが大きく息を吐いた。
「大佐の手が当たってると痛みが和らぐ気がするっス……」
「手当と言うだろう?あれはこうして手を当てたり翳したりする事で病を治した事から来てるんだ」
 ロイがそう答えるとハボックが微かに笑う気配がする。尋ねるように額にかかる金髪をかき上げればハボックが答えた。
「大佐なら錬金術使って一発で治しちまいそう」
「ばぁか」
 もしそんな事が出来るならさっさと治してハボックを楽にしてやるのに。大きな犬が耳をぺしょんと伏せて尻尾をだらりと垂らしているようなハボックの姿に、ロイは眉を顰めて言った。
「役に立たない錬金術師ですまないな」
そう言えば空色の瞳がロイを見上げる。その目が嬉しそうに笑って言った。
「医者呼んでくれて、こうして側にいてくれてるじゃないっスか……それで十分っス」
「そうか」
 ロイは答えてハボックの躯をそっと撫でる。
「お前は元気すぎるくらいな方がいい。早く元気になれ」
「アイ・サー……」
 優しく囁く声に答えて、ハボックは眠りに落ちていった。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手も嬉しいですvv

絶賛絶不調中です。昨日はゲロも加わって能天気な私も流石にしんどくてちょっと死んでました(苦笑)今日は吐き気は治まったけど相変わらずピーだし、五日も続くとやっぱしんどいかもー(苦)でも、いい加減治ってくれないと明日は地震で延びた食事会だし、明後日は両親の携帯買うのに横浜まで行かなきゃならない。治らないとそれこそ途中下車の旅になってしまう(汗)便秘よりは下痢の方がマシとずっと思っておりましたが、考えを改めなきゃだろうか……。ともあれ早く治るよう、鋭意努力中です(苦笑)
2011年03月20日(日)   No.34 (カプなし)

比較
ロイハボ風味

「ん……」
 ベッドの上で身じろいだ拍子にずくんと痛んだ下肢に、ハボックは眉を顰める。少しでも躯が楽なようにと引き寄せた枕を抱き締めて、ハボックはホッと息を吐いた。
 夕べは久しぶりにロイと肌を合わせた。ここのところずっと忙しく、その上出張が重なった事もあって一緒に過ごす時間を全く作れなかった。キスどころか顔を合わせるのもままならない状況ですっかり煮詰まってしまっていたのも相まって漸く仕事がひと段落つけば、時を忘れて激しく求めあってしまった。結果ろくに身動きも出来ずにベッドに横たわる羽目になって、ハボックはため息をつく。
(まだ入ってるみてぇ……)
 散々に突き入れられ注ぎ込まれた蕾は、熱く熱を持って未だにロイを含んでいる気がする。一晩中受け入れて掻き回されて、腹の奥が鈍く痛むような気がした。
(でけぇんだもん、大佐の……)
 ハボックは枕を抱き締めたままそんな事を考える。ロイ以外の男とセックスをした経験はないが、いつになっても慣れる事のない挿れる瞬間の辛さを考えればやはり標準より大きいのではないかと思えた。
(マイクよりデカいんじゃね?)
 と、ハボックは小隊の中でもかなり大柄な部下を思い浮かべる。訓練の後とも言えば前も隠さず平気な顔でシャワーを浴びる部下たちの姿を思い起こしていれば、不意に頭上から声が降ってきた。
「なにを考えている?」
「えっ?!」
 ギクリとして視線をあげればバスローブを着たロイと目が合う。反射的にひきつった笑みを浮かべて身を引くハボックに、ロイの目がスッと細められた。
「ハボック……?」
「べっ、別に変なことなんて考えてないっス!!」
「……考えてたんだな?」
「違……ッ!」
 慌てて言い訳しようとしてかえって墓穴を掘ってしまった事に気づいてハボックは必死に首を振る。ロイはベッドに片膝をつくとズイとハボックに身を寄せて言った。
「変なことじゃなければなにを考えてたんだ?言ってみろ」
「そ、それは……」
 流石にロイと部下たちのイチモツを比べていたとは言えず、ハボックは口ごもる。だが、グッと肩を掴まれて、ハボックは悲鳴混じりの声で答えた。
「大佐とマイクたちと、誰のが一番デカいかなって!」
 そう叫べばロイが目を丸くする。ハボックは顔を赤らめて続けた。
「大佐の、フツウと比べてデカいんじゃないかと思ったから……」
「……お前、まさか私以外のヤツと」
「なわけねぇっしょッ!!」
 眉を顰めて言うロイの言葉をハボックは思い切り否定する。流石にそんな誤解はたまらないと、ハボックはロイに言った。
「訓練のあと、ロッカールームじゃみんなスッポンポンだから」
 それと比べてみたのだと言えばロイがハボックをじっと見つめる。黒曜石の瞳に真正面から覗き込まれて、困ったように視線をさまよわせるハボックにロイは言った。
「思い出して見比べられる程、私以外のモノをみているわけだ、お前は」
「な……ッ、別に見たくて見てるわけじゃ……」
 正直そんなことなど考えたこともない。だが、ロイは一層剣呑な光を目に浮かべて言った。
「逆に言えば部下たちもお前の体をじっくりと見ているわけだな」
「ッ、あのねぇッ!」
 とんでもない事を言い出すロイにハボックは飛び上がる。
「誰も変な目で見ちゃいねぇっスよ!」
 ハボックはそう言うものの、ロイがいるから手を出さないだけで、ハボックに不埒な想いを抱いている部下は大勢いるであろう事をロイは確信していた。
「そう思っているのはお前だけだ」
 そう言えば不服そうにハボックが見つめてくる。本気で部下たちからそんな目で見られているとは思っていないらしいハボックにため息をついてロイは言った。
「まあいい、少なくともお前は私のイチモツとそいつらのとを比べられるくらいじっくり見ているらしいからな」
「別に見たくて見てるわけじゃねぇしっ!」
「思い出して比べなくても判るくらいよぉくその体に教え込んでやろうじゃないか」
 そう言ってギシリと音を立ててベッドに乗り上げてくるロイをハボックはひきつった顔で見上げた。
「無理……絶対無理ッ!」
 攻められ過ぎて、流石にもう無理だと泣いて頼んでやっと赦して貰ったのだ。熱く疼く蕾も鈍く痛む腹の奥もこれ以上の行為は無理だと主張している。
「無理と言いつつ結局欲しいと強請るのはお前だろう?」
「んなこと言ってな……わっ」
 巻き付けていたブランケットを跳ね退けられてハボックは抱き締めていた枕でロイをぶっ叩いた。
「ぶっ!……ハボック、この…ッ!」
「無理ッ!絶対無理だもんッ!」
 そう叫んで枕を抱き締めるハボックを見れば、開いた脚の奥に薄紅く腫れ上がった蕾が見える。それはあまりにも男の欲を刺激する光景で。
「無理かどうかはヤってみれば判るだろう」
「そんな…ッ、わーッ!やだやだッ、たい───」
 ロイはにんまりと笑うと無駄な抵抗を試みるハボックを押し倒し、ゆっくりと躯を繋げていったのだった。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手も嬉しいです、やる気沸いてきますvv

一昨日くらいからお腹の調子が悪いです。今日は時々痛いくらいに治まってきたのですが初日はピー状態で、お腹は痛いわ、お尻は痛いわ、ガツガツヤられすぎた挙げ句中出しされっぱなしのハボの気ぶn(殴)そんなわけでこんな話……って、元気じゃんって言われますね(苦笑)最初にこのネタで日記書こうと思って書いてたらやけにエロが長くなってしまってもう一度書き直したという……。ネタとしてはロイ受けでも良かったんですが、見比べるならハボだろうと言うことでハボ受け。ロイハボ多くてすみません(汗)昨日は漸くたどり着いたハボロイのエッチも書いてたし、「お腹痛い〜」と言いつつエロばかり書いてました、元気だな(爆)……なんてアホな事書いてたらまたお腹下ってきた。むーん、なんでーorz

停電の話。
昨日は大規模停電になるかもということで、夕方は交通機関がかなり大変だったようですね。遊びに出ていたうちの息子も行きは一時間の道のり、帰りは二時間かかって帰ってきました。乗り換え駅までは座れたので買ったばかりのガンガン広げてたら、隣に座ったおじさんに「そう言う本は何日位かかって読むものなの?」といきなり聞かれてびっくりしたと言ってましたが(苦笑)
関東地方では毎日どこかで実施されている停電ですが、うちはまだ一度も停電してません。東電のリストには町名が載ってるんですが、市役所のリストには載ってなくて「リストにない地域は停電しません」って。実際停電の前後には外で「○時から○時まで停電が実施されます」って放送が流れるもののその時間になっても電気はついたまま……。実家は東電のリストにも載ってなくてやっぱり停電になったことがないと言ってました。どういう配電になってるんだろう。まあ、ないのはないで助かるんですが、本当に落ちないの??と思いつつ待っているのはどうにも落ち着かないものです(苦笑)

以下、14〜17日拍手のお返事です。

蒼さま

ふふふ、ホワイトデー、今回はちゃんと覚えてましたさー!手作りチョコだと一ヶ月前のは危険ですか?市販のならオッケーですが(苦笑)鋼の胃のはずなんですが、今回ちょっと長引いてます、何故だろう(苦)黒シャツ外人の細マッチョに目の保養を感じてしまうのは腐の宿命みたいなものですから!(笑)「バラード」50章??あと五章もエチやるんですか?ロイ、大変そうだ(笑)停電のWチャンスは遠慮したいです(苦笑)トイレとお風呂の時だけは停電やら地震やらは勘弁して欲しいですよ!

ホワイトデーのお話読みました♪ の方

わーい、バレンタインに引き続きのコメントありがとうございますv楽しんで頂けて嬉しいですvv計画停電、確かに被災地のことを考えたら協力出来るのはこれくらいしかないし、でも、いつ停電するのかと思うと無駄にドキドキしちゃいますよね(苦笑)本当に早く明るいニュースが聞けるようになって欲しいです。まだ大きな余震もあるようなので、どうぞお気をつけくださいね。

naoさま

わーん、naoさま〜!ニュースで妊婦さんの話とか聞く度どうされてるかなぁと思っておりました。関東だとはいえ全く被害がないわけじゃなし、コメント頂けて嬉しいです。みなさまご無事でなによりでした。本当に早く落ち着いて出産、子育て出来る環境に戻って欲しいです。まだ寒い日もあるようですのでくれぐれもお体大切にお過ごしください。
2011年03月18日(金)   No.33 (ロイハボ)

小胆マシュマロ
「やだなぁ、大佐。もしかして本気にしたんスか?ちゃんと義理だって言ったじゃないっスか」
 呆れたような哀れむようなそんな表情を浮かべてハボックが言う。
「これは受け取れないっス」
 手渡した菓子の包みを突き返されて、ロイは立ち去るハボックの背を呆然と見つめていた。

「〜〜ッッ!!」
 ガバッとブランケットを跳ね上げてロイはベッドの上で飛び起きる。そこが東方司令部の執務室などではなく、自宅の寝室だと気づいてハァと息を吐いた。
「またこの夢か……」
 ロイは手のひらに顔を埋めて呟く。ここ数日、ロイはハボックにホワイトデーのマシュマロの包みを渡しては突き返されるという夢に悩まされ続けていた。
 事の発端は今年のバレンタインデーのチョコだ。毎年ハボックはバレンタインデーに「日頃の感謝の気持ち」と称して大量の義理チョコをばらまいている。ロイも毎年ハボックから「これは義理チョコだから」という注釈つきでチョコレートを貰っていた。ハート型をした手作りチョコの詰め合わせのその真ん中に「本命」と書かれたものを。密かにハボックに想いを寄せていたロイとしては、悪趣味な「義理チョコ」を毎年苦い思いと共に受け取っていたのだ。
 そんな事が数年続いた今年、ふとした偶然でハボックが配っているチョコはロイのもの以外「義理」と書かれていると知った。ハボックを昔からよく知るブレダが言った言葉も相まってハボックもまた自分と同じ気持ちを抱いていると確信したロイは、貰ったチョコの箱を握り締めてハボックに気持ちを伝えに行ったのだが。

「はああ……」
 ロイはため息をついてベッドから降りる。のろのろと洗面所に向かい顔を洗ったロイは、キッチンに降りコーヒーメーカーのスイッチを入れた。程なくしていい香りを漂わせ始めたポットからコーヒーを注ぐと、ロイはフウフウと息を吹きかけ熱いそれをちびちびと啜る。
「くそう……どうしたものかな……」
 結局あの日、ロイはハボックの真意を確かめる事が出来なかった。そのまま日が過ぎれば益々確かめ辛くなり、結局今日まで来ている。
「まいった……」
 ヘタリとテーブルに懐いて呟いたロイは、ポケットから取り出した銀時計を見て別の種類のため息をついた。
「いかん、中尉に怒られる」
 ロイはそう呟いて、司令部へ向かうべくよろよろと立ち上がった。

「てっきりあのままデキちまうのかと思ってましたよ」
 執務室でロイに書類を差し出しながらブレダが言う。ロイは眉間に皺を寄せて書類をめくりながら答えた。
「仕方ないだろう、タイミングが悪かったんだから」
 ロイがハボックに真意を問うべくその姿を見つけた時、ハボックは丁度取り込み中だった。司令部でも人気の高い、総務部の事務職員の女性からチョコを渡されている真っ最中だったのだ。

『ずっと好きだったんです』
 女性は頬を染めて言うと手にした包みを差し出す。想いを込めて差し出されたそれをどうするのだろうと、ロイが身動きできずに物陰から見つめていればハボックはすまなそうに笑って言った。
『ありがとう、気持ちは嬉しいんだけどそれは受け取れない』
 ハボックは真っ直ぐに女性を見つめて続ける。
『好きな人がいるんだ』
 ハボックの言葉に女性は大きく目を見開く。女性は差し出した包みを引っ込めずに尋ねた。
『その人からチョコ、貰ったんですか?』
『……いや、貰えないと思う』
『ッ、だったら……ッ』
 望みがないと判っている相手なら自分とつきあって欲しい、女性は言ってハボックに包みを押しつけようとする。その手を振り払う事も出来ず困りきっているハボックを見て、ロイは思わず二人の前に姿を現した。
『ハボック少尉、すまんが……っと、取り込み中だったかな?』
 今気づいたというようにわざとらしく言ってロイがにっこりと笑えば、女性は慌てて手にした包みを隠す。あからさまにホッとした表情を浮かべてハボックはロイの方へ歩み寄ってきた。
『大佐』
 そうすれば女性は逃げるように立ち去ってしまう。その背を見つめてロイは言った。
『いいのか?追わなくて』
『いいんです、どうしようかと思ってたんで助かりました』
 そう言って笑うハボックを、ロイはそれ以上なにも言えずに見つめたのだった。

「お前が好きなのは私か?って聞いちまえばよかったじゃないですか」
「聞けるか。もし違うって言われたらどうするんだ」
 目の前で美人が一人撃沈するのを見たばかりなのだ。流石にその直後、たとえ九割方そうだろうと確信があったとしてもハボックの心を占める相手を聞き出す勇気はロイにはなかった。
「意外と小心者ですね」
「なんだと?」
 肩を竦めて言う部下をロイはじろりと睨みつける。その鋭い眼光をものともせずにブレダは言った。
「それで?どうするつもりなんです?ホワイトデーは今日ですよ」
「判っている。でも夢がな……」
「夢?」
 ハアと肩を落として言うロイにブレダは首を傾げる。ここ数日見続けている夢の話をすれば、ブレダは今度こそ本当に呆れたように言った。
「ほんっと焔の錬金術師が聞いて呆れますね」
「なにッ?!」
「ハボも可哀想に。こんな意気地のない男に惚れちまって」
 ムッとして睨んでくるロイの手元からサイン済みの書類を取り上げてブレダは続けた。
「今ここで伝えなくてどうするんです?また来年に持ち越しですか?そんな事してたら総務の女の子じゃなくても他の奴に取られちまいますよ。アイツ、大佐が思ってる以上にモテるんだから」
 そう言われてロイは目を見開いて絶句する。ブレダは一つため息をついて言った。
「どうするかは大佐次第ですけど、まあ、俺としては鬱陶しいバカップルが生まれないですむなら精神衛生上助かりますけどね」
 それだけ言ってブレダは「じゃあ」と執務室を出ていってしまう。ロイは忌々しげに閉じた扉を睨みつけた。
「言ってくれるじゃないか」
 ハボックがモテることなどとっくに知っている。これまで一体どれほどやきもきしてきたと思っているのだ。うち明ける勇気もないくせに、ハボックが誰か一人のものになるのが許せず彼に近づく男も女も片っ端から陰で追い払ってきたのはロイ自身なのだから。とはいえ、ブレダの言うとおり今打ち明けなければ遅かれ早かれハボックが他の誰かのものになってしまうだろう事は、ロイにもよく判っていた。
「判ってるさ……」
 ロイは呟いて机の抽斗を開ける。そこには綺麗にラッピングされたマシュマロの包みがハボックから貰ったチョコの箱と並んで入っていた。ロイはチョコの箱をそっと開けると中に一つだけ残された“本命”と書かれたチョコをじっと見つめた。
「判ってるとも」
 ロイは残っていたチョコを口に放り込むとマシュマロの包みを手に立ち上がった。

 執務室から出てきたロイは、自席で書類に取り組んでいるハボックをじっと見つめる。悩みながら書いてはペンを止め、また書くを繰り返していたハボックは、視線を感じて顔を上げた。
「大佐」
 ニコッと笑って言うその顔に、ロイの胸がズキンと痛む。なにも言わずに見つめれば、ハボックが首を傾げて言った。
「なんスか?あ、もしかしてコーヒー?」
 普段はロイに言われる前に時間を見計らってコーヒーを差し入れていたが、書類と格闘しているうち時間を逸してしまったか。慌てて立ち上がるハボックにロイは言った。
「ハボック、ちょっといいか?」
「え?……って、コーヒーじゃねぇの?」
 言うだけ言って司令室を出るロイをハボックが慌てて追いかけてくる。ハボックがついてくるのを背中で感じ取りながら、ロイはズンズンと歩くと階段を下った先の扉から出た。
「なんだよ、一体……」
 いつもとどこか様子の違うロイに不安になったらしいハボックの呟きが聞こえる。それでも引き返すことはなく、ハボックはロイに続いて扉から外へと出てきた。
 陽射しはだいぶ暖かくなったものの、風はまだ冷たい中庭の木の下でロイは立ちどまった。均整のとれた躯に端正な横顔、さらさらとした黒髪を風になびかせる姿に、ほんの一瞬辛そうに顔を歪めたかに見えたハボックは、満面の笑顔を浮かべてロイに歩み寄ってきた。
「わざわざこんなところまできて、何の用っスか?」
 妙に明るい口調で言う声にロイはハボックを見る。真っ直ぐにじっとみつめれば、ハボックが困ったように視線を逸らした。
「えと……大佐?」
 一度逸らしてしまった視線を戻せなくなったのかハボックはうろうろと視線をさまよわせる。そんなハボックをロイはじっと見つめて言った。
「お前に渡したいものがある」
「オレに?」
 言われてハボックはキョトンとしてロイを見る。そんなハボックの表情を見てロイの頭に何度も繰り返し見た夢が浮かんだが、ロイは首を振って夢の残像を頭から追い出すと言った。
「これだ」
 ロイは言って手にした包みを差し出す。綺麗にラッピングされたそれを反射的に受け取ったハボックが尋ねた。
「これ、なんスか?」
 聞かれてロイは一瞬押し黙る。再び出てこようとする夢の残骸を頭の中で思い切り殴りつけて言った。
「もし私の思い違いでなければ受け取ってくれ。そうでなければ捨ててくれていい」
「え?」
 ロイの言葉にハボックは目を丸くする。手にした包みをじっと見つめていたが、やがてそっとリボンを引っ張って包みを解いた。そうして中から出てきたものに目を丸くする。ハボックの手の中にあるのはハート型のクリアケースに入った幾つもの淡い色したマシュマロだった。
「これ……」
 ハボックは丸くした目を大きく見開いて呟く。尋ねるように見つめてくる空色に、ロイは困ったように眉を顰めた。
「今日は14日だからな。……あのチョコに書いてあったのは義理でも冗談でもないんだろう?」
 そうは言ったもののもし「冗談に決まってるだろう」と言われたらとロイの背を冷汗が流れる。長い沈黙にロイの方が「やっぱり今のは冗談だ」と叫びそうになった時。
「……ッ?ハボック?!」
 マシュマロを見つめるハボックの瞳からポロポロと涙が零れる。ギョッとしたロイがオロオロと手を伸ばすべきか否か迷っていればハボックが乱暴に手の甲で涙を拭って言った。
「これっ、貰っていいんスか?」
「ハボック?」
「だって!いっつも大佐、ホワイトデーには司令室の連中全員誘って飲み会で、オレの分はチョコのお礼だって奢ってくれるだけでこんな風にお返しくれた事なんてなかったじゃないっスかッ!」
 ほんの少し詰るような響きのこもった言葉に、ロイは僅かに眉間に皺を寄せる。
「お前のチョコだって相当判り辛かったぞ。本命と書いておきながら義理チョコだなんて」
「アンタ相手に真っ向勝負なんて出来ないっスよ」
『大佐みたいにモテる男に告白するにゃ、冗談に紛れさせるしかなかったんでしょう』
 その言葉にブレダが言った言葉が被る。ハボックの事をよく理解している男にほんの少し嫉妬しながらロイは言った。
「それで?受け取ってくれるのか?」
「今更返せって言われても返しません」
 ハボックは言ってハート型の蓋を開ける。薄い紫色のマシュマロを摘んでポンと口に放り込んだ。
「あ、カシス味?……こっちはライチだ!」
 旨い、これ、とたった今まで感激して泣いていたのが嘘のように次々とマシュマロを頬張るハボックをロイは呆れた顔で見る。
「おい、ムードのない奴だな」
「だってこれ、旨いんスもん」
 言ってニコニコと笑うハボックにロイは言った。
「私にも味見させろ」
「大佐、食ったことねぇの?」
「あるけど随分昔だから忘れた」
 そう言うロイにハボックがマシュマロを差し出せばロイが言う。
「こっちだろう?」
「え?」
「こっち」
 ロイは言って腕を伸ばすとハボックの頭を引き寄せる。そうしてそっと唇を合わせれば、微かに甘いマシュマロの味がした。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます!拍手も元気貰ってますーっ、うれしいですっv

ホワイトデー話です。こんな時にこんなもんアップするのもどうかなと思いはしましたが、以前に書いてあったので(苦笑)一応バレンタイン話からの続きになってます。ちょっとハボに乙女が入ってロイハボちっくかも?(汗)相変わらずブレダがキューピットだ。後ですんごい後悔してそうな気がします(笑)ロイがハボにあげたマシュマロは我が家の近くのケーキ屋さんで売っているヤツで、ハート型のケースには入ってませんがプラのカップに白と濃い紫、薄い紫の三種が詰め合わせになっていて見た目も可愛く、味も個人的には好きなもんでちょっと人にあげるのに重宝してます。何かの機会にお渡しすることがあったら「ああ、これが例のマシュマロね!」と思って頂けるかと(笑)そんなところでホワイトデー話でした!少しでもお楽しみ頂ければ嬉しいですv

地震の話。今日から関東地方は輪番停電の予定でした。夕べ遅くに実施の発表があったものの、「各グループ分けと停電時間の詳細はHPをご覧ください」って。……それはないでしょう。全部の人がネット環境にある訳じゃないし、大体そんな事したらアクセスが殺到して見られるわけないじゃない。案の定東京電力のHPにはアクセス出来ず、情報は他のサイトが纏めてたのをみたのが最初で、その後市役所が放送でがなり立ててたのを何とか聞いてと言う感じでした。うちの地域は第二グループで9時半〜13時、18時半〜22時の二回だと思ってたら朝HP見たら第三グループにも入っててそれが12時〜16時。ちょっと待って、それじゃあ一日中停電じゃん!と思っていたらお昼が過ぎた今になってもまだ停電は実施されてません。なんかもう、大変なのは重々承知してるけどホント混乱し過ぎ。なにが正確な情報なのかさっぱり判んないよ。とりあえず夜の停電はあるものとして食事やお風呂をすませるつもりですが、こんな調子で明日から大丈夫なのかと不安になります。電車も運休の嵐で最寄駅はすごかったし、もしこれが来月も継続するなら学校とかどうするんだろう。もっとも被災地の事を考えたらなにも言えませんが、ホントに日本はどうなるんだろうと心配になりますよ。

以下、12日拍手のお返事です。

蒼さま

そうか、こっちは震度5弱だったんですね(苦笑)ハボックの傷はいかがですか?実際どうなるかは判りませんが、今日の状況見てると開催は危ういかと思われます。蒼さんたちも無理しない方がいいかも?……と書いていたらご連絡頂きました(苦笑)当日のメールは本当に混乱してましたね。全然入らないかと思えば一気に入ってくるし……。先が見えないだけに不安要素がいっぱいです(苦)

摩依夢さま

おかげさまで皆無事でおります。摩依夢さまのところもお子さん含めみなさんお元気でよかったです〜。しかし、6キロ歩いてご帰宅とは大変でしたね!お疲れさまでした!それにしても、本当にテレビを見る度被害の大きさに言葉をなくすしかありません。摩依夢さまもお気をつけてお過ごしくださいね。

皆様ご無事で良かったです の方

ありがとうございますー。ホント今回ので両親には携帯持たせなきゃ!って思いましたよ。浅草橋から歩いてのご帰宅!聞いただけでも気が遠くなりそうです。お疲れさまでした。これからどうなるのか先が見えませんが、くれぐれもお気をつけてお過ごしくださいね。
2011年03月14日(月)   No.32 (カプなし)

地震2
こんばんは、時間が経つにつれ被害の大きさが判ってきて本当に恐ろしく、心が痛みます。原発も大変なことになってるし、一体どうなるんだろうと思うと本当に怖い。一刻も早く地震が収まってくれることを祈るしかないです。
こんな状況なので流石に更新はお休み……。昨日作文書いてる真っ最中に地震が来たので、その後は雪崩った本やらなにやらを片付けるのが大変で、流石に作文どころじゃ(苦笑)とにかくダンナが本買い魔なのでしまいきれない本が棚の上やらクローゼットの上の棚に積んであるもんだから、それが全部降ってきた感じです。夜だったら頭直撃だよ(汗)昨日は午前中登校日で息子は昼には帰ってきてたのですが、部活動やら何やらで残ってる子もいて、電車が止まってしまったので結局中高合わせて260人余が学校で一夜を過ごしたようです。教職員も70人くらい泊まったらしい。下手に動くより安全とはいえやっぱり大変だったろうなぁ。学校のHPに氏名が掲載されてて、息子が見ながら「○○がいる!」と騒いでました。
それでもこの辺は電車が止まったくらいでガスも電気も通ってるからいいけど、寒い地方で停電なんて大変どころじゃないですよね。ニュースを聞けば聞くだけ悲しくなります。本当に一刻も早く収まって欲しいです。

以下、10日拍手のお返事です。

風汰さま

こんにちは、お久しぶりです!本当、懐かしいお話ですよ(笑)「剃刀」そう言えば続き書きたいと言いつつ書いてなかったですねー。読み返したらムクムクと書きたい気持ちが湧いてきました(笑)とりあえず休みまくりの更新をすませましたら取りかかりたいと思います。そうそう、正月じゃなくても随時受け付けておりますので!(爆)お気が向かれましたら是非〜v
2011年03月12日(土)   No.31 (その他)

地震!
大きな地震がありましたが皆様がお住まいの地域は大丈夫でしょうか。
最初はいつもの地震かと思っておりましたが物凄い揺れたので本当にびっくりです。机の下に潜ったのなんて初めてじゃないだろうか。とりあえず私が住んでいる東京はガスも電気も大丈夫だし、本やら何やらが落ちはしたけど壊れたものはなかったし、大したことはなかったのですが、被害の大きなところもあるようですし本当に心配だし怖いです。
家人の方はダンナが22キロを三時間ほどかけて歩いて帰ってきました(汗)息子は家にいたし、母は新橋で足止めくらっているようだけど叔母と一緒だから一応安心だし。ただ、釣りに出かけた父から連絡がないんですよね……。時間的に普段なら海から上がってる時間なのでどこかで足止め食ってるんだとは思うんですが、携帯も持っていないのでこちらからは連絡のとりようがないし。まあ何事もないとは思ってるんですが……。
ともあれ皆様のところもどうか被害がありませんよう、心からお祈りしています。本当に本当に何事もありませんように!!

追記:
父は横須賀で避難所の小学校にいると連絡がありました。とりあえず元気そうで一安心です。むしろ新橋にいる母の方が大変そうだ(苦笑)
2011年03月11日(金)   No.30 (その他)

純愛
ロイハボ前提

「それでは来週の御着任、お待ち申し上げております!」
「うむ」
 ピッと敬礼を寄越す事務官にメッケルは鷹揚に頷く。これで用は済んだと立ち上がると来週から己の居室となる執務室を出た。
 今日、メッケルは来週から着任する予定の南方司令部へとやってきていた。用事は書類の提出と後は電話でも事足りるものであったからわざわざ出向くまでのこともなかったのだが、新しい赴任地を確かめるのも悪くないと来てみたのだった。
 メッケルは長い脚でゆっくりと廊下を歩いていく。廊下に面した窓からは春めいた陽射しが射し込み、メッケルの銀髪を煌めかせていた。角を曲がったメッケルは、暖かい陽射しを切るように吹き抜ける風に足を止める。風の出所へ目を向ければ外へと続く扉が僅かにすいている事に気づいてそちらへと足を向けた。
「准将、どちらへ?」
 後からついてきていた事務官が尋ねるのにも答えずメッケルは扉を開けて外へ出る。先へと続く通路を歩きながら振り向きもせずに尋ねた。
「この先は?」
「演習場になります。ご覧になりますので?」
 予定にはない行動をとるメッケルに事務官が戸惑ったように言う。それには答えずメッケルは先へと進んだ。
 通路を進んだ先にある入口を抜けてメッケルは演習場に足を踏み入れる。そこでは数十人の兵士達が棒状のものを手に訓練に励んでいるところだった。
「棒術か、珍しいな」
 あまり訓練には取り上げられない武術を組み入れているのを見て、メッケルは呟く。なんの気なしに見ていたメッケルの視線が吸い寄せられるように一人の兵に向かった。
 それはまだ二十歳になるかならずの若い士官だった。黒いTシャツ姿の彼は二メートルほどの長さの棒を巧みに操りプロテクターをつけた相手の急所に的確に叩きつける。彼の隙を狙って背後から近づいた相手は、棒を支えに蹴り上げた彼の長い脚の一撃で後方へと吹き飛んだ。まるで舞うような動きで彼は棒を振り上げ振り下ろし突き入れる。その動きに合わせて躍動する若い躯は生命力に溢れ、とても美しかった。
 メッケルの視線の先、若い士官は最後の相手を吹っ飛ばすとフゥッと息を吐き出す。彼は棒を地面について躯の力を抜くと、汗に濡れた金髪をかき上げた。
「やめッ!」
 彼の号令で兵達が動きを止める。彼は息を弾ませる部下達の顔を一渡り見回して言った。
「今日はここまでにしよう」
 そう言った彼の顔が笑みに解ける。それはまるで大輪の向日葵が太陽の光を浴びて花開く瞬間に似て、メッケルの目と心を一瞬にして奪った。
「……あの士官の名は?」
 メッケルは掠れた声で背後の事務官へ尋ねる。事務官は少し考えてから答えた。
「ハボック准尉です。ジャン・ハボック准尉」
「ジャン……ハボック」
「お話になりますか?」
 部下達に囲まれて楽しそうに笑うハボックをじっと見つめるメッケルに事務官は尋ねる。ハボックを見つめたまま答えないメッケルを事務官が訝しげに呼べば、メッケルは視線を無理矢理引き剥がすようにして振り向いた。
「いや、必要ない」
 メッケルはそう言うと演習場を後に歩き出す。慌ててついてきた事務官に向かって言った。
「人事部に案内しろ。護衛官を変更する」
「えっ?今からですかっ?」
 今更変更というわけにはと追い縋る事務官にメッケルはピシャリと言う。
「黙れ。自分の背中を誰に預けるかは私が決める」
 そう言ったメッケルの瞳が切なげに細められたのを、見た者は誰もいなかった。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手もコメントもとっても力になってます。嬉しいです〜vv

ええと「純愛」です。ロイハボ続いちゃったな、すみません。いや、久しぶりに昔の作品にコメントを頂いたら無性に書きたくなってしまって(苦笑)一目惚れなメッケル(笑)これ最初に書いたの2006年9月ですよ、文章堅くって読み返して死にそうになりましたが(苦)この頃は私も可愛かったなぁ、ちょっとハボ啼かせた位で「ギャーッ」と思ったりしてましたもん。今じゃねぇ……、慣れとは恐ろしい(苦笑)ともあれ久しぶりに書けて楽しかったので、少しでもお楽しみ頂けましたら嬉しいです。

以下、拍手お返事です。

ハボック受け凄く素敵でした! の方

ありがとうございますーッ!!初期の作品の感想を頂いたのは久しぶりだったのでとっても嬉しかったです。嬉しさのあまり調子に乗って日記ネタにしてしまいましたが(苦笑)優しい気持ちの時間が二人にあったとしたら……それはそれでまたその先ハボが酷く傷ついて楽しいだろうとv(こら)ロイハボの再録本は残念ながら完売でお届け出来ないのが残念です。お引っ越し作業中とのことですが、サイトをお持ちなのでしょうか、気になります。これからも頑張りますのでおつきあい頂けましたら嬉しいですv

摩依夢さま

更新お休みですみません。なかなか最後のエチにたどり着けない(苦笑)延ばしに延ばして期待外れだったらどうしようとちょっとドキドキしてみたり。回文なカウンター、思わず一人で楽しんだりしちゃいますよね、うふふv
2011年03月09日(水)   No.29 (ロイハボ)

恋闇27
 ロイは玄関の前まで来ると足を止めて佇む。知らず疲れきったため息が唇から零れて、ロイは緩く頭を振ると鍵を開けて家の中へと入った。
 あの日、ハボックが忽然とロイの前から姿を消してからと言うもの、ロイはハボックを探し続けていた。思いつくところは片っ端から当たり、ハボックらしい姿を見たと聞けば例え夜中であろうと飛んでいった。最悪の事も考えて遺体安置所にまで足を運んだが、ハボックの行方は杳として知れなかった。
 今夜も何の情報も得られぬままロイは家へと戻ってきていた。ハボックへの想いは狂おしいほどにロイの中で渦巻き、『愛している』と言いながら自分の前から消えてしまったハボックを恨めしくさえ思うようになっていた。向かう先を見失った愛情はロイの中で轟々と燃え盛り、ロイを内側から苦しめていた。夜もろくに眠れず、精神的にも体力的にも憔悴しきって、ロイは自分の精神がバランスを失うのも時間の問題かと思っていた。
 家の中に入れば暗く沈んだ空気を震わせて電話のベルが鳴り響いていることに気づく。ロイはのろのろと廊下を歩いてリビングへ行くと、耳障りな音を立てる受話器をそっと持ち上げた。
「……もしもし」
 疲れきったため息と共に何とかその言葉だけ絞り出す。相手の返事を待っていたロイは、聞こえてきた声に目を見開いた。
『ロイ以外にキスされるのは嫌か?少尉』
 低く嘲るような男の声。それに続いて聞こえた声がずっと探し続けてきた相手のものだと気づいて、ロイは受話器を握り締めた。
『今更キスぐらいどうってことねぇだろ?こんな風に俺に犯されて、体の奥底に散々俺のもんぶちまけられてんのに』
『や、だ……ぁッ』
『ロイに……こうされたかったか?』
 そう尋ねられて一瞬息をのむ気配がする。それから聞こえた嗚咽混じりの声に、ロイの体が震えた。
『た…さ……ぁッ』
「……ッッ!!」
 切なく、縋りつくように己を呼ぶ声。まるで心臓を鷲掴みにされたようでロイがギリと唇を噛み締めた時、低い笑い声と共に嘲るような声が言った。
『凄いな、絡みついてくるぜ、少尉』
『言うな……ッ』
『これがロイのだと思ったら興奮したか?ん?』
『違……ッ』
『クク……ッ、また締まった』
 グチュグチュとイヤラシイ水音とベッドが軋む音に被さるように流れる喘ぎ声。揶揄する声と必死に抗う涙声を聞けば、否応なしにロイの脳裏にベッドの上でまぐわう二人の姿が浮かんだ。怒りと嫉妬でロイが血が滲むほどギリと唇を噛み締めた時。
『どうだ、ロイ!お前の想い人は俺に犯されながらお前に抱かれるのを想像して興奮しまくってるぜ。尻をグチョグチョ掻き回されてイきっぱなしだ!』
 受話器から聞こえたヒューズの声にロイの怒りが一気に沸点を超える。
「ヒューズ……貴様……ッ」
 ギリと噛み締めた唇の隙間から言葉を絞り出せば、受話器の向こうから今までとは種類の違う短い悲鳴が聞こえた。
『さっきからずっと繋がってるぜ。お前、ロイのこと呼び続けてたからな、聞かせてやりたいと思ってよ』
 聞こえたヒューズの言葉がハボックを貶め侮辱する意志を滲ませているのを感じて、ロイの顔が憎悪に歪む。
『や、だ……ッ、やだァッッ!!』
 受話器からハボックの悲鳴が聞こえたのと同時にロイは電話を叩き切ると、たった今し方入ってきた玄関から飛び出し全速力で駅へと向かっていった。
「ハボック……ッ!!ヒューズ、よくも……よくも……ッッ!!」
 どうしてハボックがヒューズと一緒にいるのか、そんな疑問も吹き飛ぶほどの怒りに支配されてロイは夜の街を走り抜ける。これまで心のどこかに抱いていた親友に対する希望も困惑も、さっきの電話で全て吹き飛んでしまった。列車の発車を告げるベルの音が響くイーストシティの駅にたどり着くと、ロイは改札を飛び越えホームを走った。ゆっくりと走り出す列車を追いかけ最後尾のデッキに飛び乗る。ロイはスピードを上げる列車のデッキに立ち吹き抜ける風に黒髪をなぶらせて、愛する相手とその相手を卑しめる男が待つ彼方を睨みつけていた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます!拍手、元気貰ってます、嬉しいですvv

本日の更新ですが……間に合いそうにありませんorz 書き終わんないよぅ。週末も忙しいので平日の間になんとか書きあげて、土曜日の更新にあてようかと思います。そんなわけで、ごめんなさいです。

「恋闇」です。26のロイサイドってとこでしょうか。しかしこれ、このままいくとハッピーエンドにならないんですが(爆)そもそもハボがヒュについていった時点ではこの先無体はしないつもりだったんですよねぇ(苦笑)むーん、さてどうしよう。やっぱり啼かせっぱなしはアレだよなぁ。ない知恵絞らなくちゃ(苦笑)

以下、6、7日拍手お返事です。

蒼さま

日記から入る方、多いんだろうなぁ(笑)一応ブクマは玄関へ(笑)「恋闇」「合成獣」「凌霄花」ついでに「菫」も啼きハボですよ。どんだけ啼かせたいんだか(苦笑)確かに自分が泣きを見そうな状況になってます、どうしよう(爆)春コミまでに啼き止むのは無理かと(苦)ハボしめじ、増える時は一分に一匹以上増えてたりしますが、増えない時は一時間たっても二匹くらいしかいなかったりしますよね。今もわらわらと走り回ってます、可愛いvv(←腐れ)例の件は別途お返事致しますね。
2011年03月08日(火)   No.28 (ロイハボ)

金剛石12
 ハンドルを握って車を操りながらブレダはミラーをチラリと見やる。ミラーに映るロイの横顔に向かって言った。
「どうするつもりなんです?大佐」
 執務室を飛び出して行った後、ハボックは司令室に戻ってこなかった。結果、図らずもロイの送迎をする事になったブレダがそう尋ねれば、ロイは窓の外へ向けていた視線を正面に向ける。鏡越しにブレダと視線を合わせて答えた。
「どうするつもり?」
 ブレダの質問の意味などよく判っているだろうにそんな事を言うロイにブレダは内心舌打ちする。それでもロイの本心を知りたいと思えば、何度でも問い直すしかなかった。
「ハボックの事ですよ。特務に戻すんですか?」
「聞いてどうするんだ?少尉」
 尋ねる言葉に逆に問い返されてブレダは一瞬押し黙る。相変わらず素直には答えない上司だと思いつつブレダは言った。
「いや、大佐も今までの奴らと変わらないのかなと思ったもんで」
 わざとそんな言い方をすればロイがクスクスと笑う。ブレダが忌々しげに見つめたミラーの中でロイが楽しそうに言った。
「ハボックを特務に戻す気はないよ。たとえハボックがそれを望んでいたとしても」
「大佐」
 ミラー越しに見つめてくるブレダを見返してロイは続ける。
「私はハボックの瞳が好きなんだ。とても綺麗だろう?」
「……そんな風に言うのを聞いたの、大佐が初めてですよ」
「それは良かった。余計な争いをしなくて済む」
 うっとりと夢見るような笑みを浮かべているロイを見てブレダは続ける言葉を見失った。自分自身ハボックを取り巻く噂や戯れ言を信じる気は毛頭ないが、それでもこんなロイを見ればどこからともなく不安が沸き上がってくるのを止めることが出来ない。ロイがハボックの瞳に魅入られる事で二人の上になにかしらの運命を引き寄せてしまう気がしてならない。
(なにも……なにも起こらないでくれよ)
 たとえ案じてみたところでブレダには何一つしてやれる事はない。せめてもと祈ることしか出来ず、ブレダは笑みを浮かべて流れる景色を見つめるロイの横顔を鏡越しにじっと見つめていた。

 屋上の手すりに凭れてハボックは吐き出した煙が立ち上る空を見つめる。頭上に広がる澄んだ空の色を見れば、遠い昔に傍にいた一番近しい人の言葉が思い出された。
『ジャン、貴方が昏い運命の淵に引きずり込まれた時、そこから貴方を救ってくれるのは』
 もうずっと忘れていた言葉を思い出してハボックは苦く笑う。それを教えてくれたその人も結局は昏い淵に飲み込まれてしまったではないか。
(この瞳から逃れる事なんて、誰にも出来やしないんだ)
 空を見上げる己の瞳にハボックはそっと手を這わせて考える。そうすればこの瞳を綺麗だと言った男の姿が浮かんでハボックは唇を歪めた。
「馬鹿な奴……痛い目にあって、後悔すればいいんだ」
 もう十分に忠告してやった。それでもなお踏み込んでこようとするなら、どんな目に遭おうとこちらの知ったことではない。
「どうなろうと……オレには関係ない」
 ハボックは込み上がる胸の痛みから目を背けて、吐き捨てるように呟いた。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます!拍手もポチリと嬉しいですv

「金剛石」です。さあてどうしようかなぁ(苦笑)ここんとこ続けて「恋闇」を書いていたら「金剛石」の展開が頭から抜け落ちそうで(殴)だって脳味噌のキャパ少ないんだもん(爆)「恋闇」29まで書いたから抜け落ちる前にまた「金剛石」に戻ろうっと。

以下、拍手お返事です。

わーい恋闇ありがとうございますぅぅ!! の方

なんかもうどんどんヒューズが阿漕になっていく気がしないでもありませんが(苦笑)とりあえずまだ暫く続きますのでよろしくおつきあいくださいませv

阿修羅さま

リンク切れご報告ありがとうございますー。おかしいなぁ、ちゃんとリンク繋いだまま移動した筈なんですが(汗)取り急ぎ目次の方だけリンク貼り直しておきました。ページ間のリンクは後日…(苦)またなんぞ妙なところがありましたら教えて頂けると嬉しいですぅ(こら)
2011年03月06日(日)   No.27 (カプなし)

恋闇26
ロイハボ前提、CP:ヒュハボ(R20)

 ヒューズは電話のフックボタンに続いて電話番号を記憶させておいたボタンを押す。そうすれば小さな呼び出し音がハボックの喘ぎ声に被さるようにして寝室の中に響いた。
「……探し回ってて家にはいないか?」
 呼び出し音の数が十を過ぎても先方の受話器が上がる気配がないことに、ヒューズは眉を顰めて呟く。思惑が外れた事を残念に思いながらも無意識にハボックを突き上げれば、キュンと締まる後孔にヒューズは顔を歪めて笑った。
「そんなにコイツが好きか?少尉」
「ンッ、アアッ!やあ……ッ!」
 引き締まった双丘に手を添え小刻みに揺すればハボックの唇から甘い悲鳴が上がる。
「も、や……ッ、ふ、ぅ……んッ」
 ポロポロと苦悶の涙を零しながらも快楽に震えるハボックの顔をじっと見つめていたヒューズは、次の瞬間噛みつくように切ない声を漏らす唇を塞いだ。
「んっ、んんッ!」
 ハボックは涙に濡れた空色の瞳を一瞬大きく見開いて、イヤイヤと首を振る。逃げようとする唇を追いかけて執拗に口づけるヒューズは、そのままになっていた電話のスピーカーからカチリとフックが上がる音が響いたのに気づいた。小さなため息と共に疲れきった声が答えるのを聞いたヒューズの瞳に昏い歓びの火が灯る。ガツンと突き上げれば甘い悲鳴を上げる唇に己のそれを寄せて、ヒューズは言った。
「ロイ以外にキスされるのは嫌か?少尉」
「んっ、や、アッ!」
 強引に唇を重ねようとすればハボックが激しく首を振ってヒューズを押し返す。その仕草にヒューズは低く笑って言った。
「今更キスぐらいどうってことねぇだろ?こんな風に俺に犯されて、体の奥底に散々俺のもんぶちまけられてんのに」
「や、だ……ぁッ」
「ロイに……こうされたかったか?」
 ぐちゅぐちゅと注ぎ込んだものをかき混ぜるようにハボックを突き上げながら囁けばハボックの顔が歪む。新たな涙を零しながらハボックが言った。
「た…さ……たいさ…ぁッ」
 切なく呼ぶ声に合わせてきゅうきゅうと締め付けてくる蕾にヒューズはクククと笑う。
「お前のココがどれだけ熱くてイヤラシイか、ロイが知ったらなんて言うかな」
 そう言うと同時にガツンと突き上げればハボックが背を仰け反らせて悲鳴を上げる。ビュッと二人の腹の間で揺れていた楔から熱を迸らせるハボックを見て、楽しそうに言った。
「凄いな、絡みついてくるぜ、少尉」
「言うな……ッ」
「これがロイのだと思ったら興奮したか?ん?」
「違……ッ」
「クク……ッ、また締まった」
 言葉をぶつける度反応する体を攻め立てながらヒューズは電話を見る。それがまだ繋がったままなのを確認して、声を張り上げて言った。
「どうだ、ロイ!お前の想い人は俺に犯されながらお前に抱かれるのを想像して興奮しまくってるぜ。尻をグチョグチョ掻き回されてイきっぱなしだ!」
『ヒューズ……貴様……ッ』
 電話のスピーカーからまるで絞り出すような低く怒りに震えた声が流れる。決して大きくはないその声は、だが雷よりも大きくベッドの上でまぐわう二人の耳に響いた。ハボックの体がビクッと大きく震え涙に濡れた目が大きく見開かれる。その目が信じられないと言うように電話に向けられるのを見て、ヒューズが言った。
「さっきからずっと繋がってるぜ。お前、ロイのこと呼び続けてたからな、聞かせてやりたいと思ってよ」
「う……そ……」
 信じられないとばかりに見開く空色をヒューズはうっとりと見つめる。涙に濡れた頬を両手で包み込んでヒューズは囁いた。
「可愛いぜ、少尉……もっともっと善くしてやる」
「や、だ……ッ、やだァッッ!!」
 ハボックの悲鳴と同時に電話がブツリと切れる。ヒューズは恍惚とした表情を浮かべながら、呆然と宙を見つめるハボックの体を犯し続けた。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます!久々新しくなりました拍手も読んで頂けて嬉しいですvv

おかげさまで無事移転完了いたしました。拍手もあんまり久しぶりでちょっと心配だったんですが、ちゃんとアップできていたようでよかった(笑)これでとりあえず一安心なので次は作文頑張りますv

といったところで「恋闇」です。ひーさーしーぶーりー!(殴)ええと、去年の六月以来?書いてる本人ですら内容覚えてないくらいだからなぁ(苦)せっかく再開したので、間が空かないうちに続きも書きたいと思います。

以下、拍手お返事です。

J.A.さま

お久しぶりですー!いや、実はブログの一言で開花宣言が出されているのを見たのでコメント入れようかとおじゃましたんですが、どこに入れようかと迷った末帰ってきてしまったという(苦笑)ともあれ本当にお疲れさまでした。親は本人以上にやきもきするしかないから大変ですよね。これから楽しい新生活、ハボとロイみたいな出会いがあるとよいですが(笑)復活、お待ちしてまーすv

拍手面白いです!! の方

ありがとうございます〜!!じゃあ、次の拍手入れ替えで続き書いちゃおうかなっv(←のせられやすいタイプ)これからも頑張りますのでよろしくお願いしますv

摩依夢さま

ありがとうございます、無事引っ越し出来ましたvコブシより木蓮、紅より白がいいですよね!玄関は毎度写真を探してくるのが楽しみなので、ご一緒に楽しんで頂けたら嬉しいですーv

ちょうど二年前のことです の方

どう言葉にしていいのか判りませんがお辛い経験をされたんですね。今は穏やかにお暮らしと読んでホッと致しました。私の書いたもので少しでも楽しい気持ちと結びつけて頂けたのでしたら、これほど書き手冥利に尽きることはありません。私の方こそとっても嬉しかったです。これからも気分転換のお役に立てたら嬉しいです。コメント、本当にありがとうございました!

蒼さま

ホント、一体いつ以来?の拍手入れ替えでした。前は月に一度は変えてたのになぁ(苦笑)うわ、またはぼきゅにブクマ直後でしたか?すみません〜(汗)でも、今回はアドレス短いから!これで当分引っ越しはありませんので〜。おお、パパ付き女子会!それはのびのび出来そうですね(笑)我儘を言えば春休み後に実現すると一番嬉しいんですが(我儘過ぎ)紳士的で大人の余裕でハボをエスコートする大佐……私の方が耐えられそうにありません(爆)やっぱり俗モノでないと〜(笑)
2011年03月03日(木)   No.26 (ロイハボ)

携帯
 胸ポケットの中でブーブーと言う振動音を立てて携帯が震えているのを感じてハボックは眉を顰める。ため息と共に書類を書いていた手を止めると、軍服の合わせから手を突っ込み内ポケットの携帯を取り出した。
「……」
 待ち受け画面に表示されたメールの着信を知らせるアイコンを見つめたハボックは、嫌そうにしかめた眉の皺を深めながらアイコンをクリックする。開いたメール画面いっぱいに表示された幼女の写真を見てげんなりとため息をついた。
「……ったく」
 無視したいのは山々だが無視しようものなら数分後にあの執務室の扉から鬱陶しい髭面の親馬鹿オヤジが飛び出てくるのは判りきっている。それだけは避けなければと、ハボックは返信画面を開くと素早く文字を打ち込んだ。
「エリシアちゃん、可愛いっスね……っと」
 口に出して短い文章を打ち込み送信ボタンを押す。送信が完了した事を確認して携帯をポケットに戻した。
「はあ……」
 ハボックは一つため息をついて今見たメールを頭の中から追い出すと書類に向き直る。だがものの数分もしない内に再び震えた携帯に、チッと舌を鳴らして携帯を取り出すとろくに画像を見ずに同じ文章を打ち込んで返した。しかし、その後も二分とおかずに次々と画像が送られてくる。メールが七通目を数えた時、流石にハボックが手にしたペンを投げ出して携帯を乱暴に開けば、今度の送信元はヒューズではなかった。
「あれ?大佐?」
 思わず執務室の扉を見やりながらメールを開けば今度は画像ではなく文字が浮かび上がる。その文字を読んで、ハボックはガックリと机に突っ伏した。
『なぜわたしにめいるをよこさないのだ ばかひゅうずのあいてをしてたらのどがかわいたコーヒをもってこい』
「…………」
 子供の言葉を文章にしたようなメールにハボックは深いため息をつくと乱暴な仕草で立ち上がる。靴音も荒く司令室を出ると給湯室でコーヒーを淹れて戻ってきた。
「大佐ッ、中佐もッ!!」
 ノックもなしにハボックは乱暴に執務室の扉を開ける。扉が開く音に携帯から顔を上げた上官二人を睨みつけて言った。
「いい加減にして下さいッ!仕事にならないっしょッ!!」
 ガチャンとコーヒーが載ったトレイをロイの机に置き二人の顔を見渡す。そうすればヒューズがシナを作って言った。
「なに言ってるんだ、少尉。殺伐とした空気の中エリシアちゃんは最高の清涼剤だろう?俺は少尉が気持ちよく仕事が出来るよう上官として気遣ってだなぁッ」
「ただ単にエリシアちゃんの着信ボイスが聞きたいだけのクセに」
「ウッ!」
 ボソリと返された言葉にヒューズは一瞬言葉に詰まる。そのすきにハボックはロイの方を見て言った。
「大佐も!くだんないメール送ってこないで下さい。コーヒーが欲しけりゃ直接言えばいいっしょッ!!」
「何を言うっ、お前がヒューズにばかりメールを送って私にはちっとも送ってこないからだろうッ?せっかく携帯買ったのにッ!!」
 真新しいブルーの携帯を握り締めて言うロイにハボックはウンザリとため息をつく。送信履歴を開いてロイに見せると言った。
「アンタがそう言うから昨日散々メールしてあげたっしょ?アンタそれに何回返事寄越しました?」
「う…っ、し、仕方ないじゃないかッ、打つのに時間かかるんだからッ!」
 顔を赤らめてロイが言い訳の言葉を口にすれば、ヒューズが自慢げに言った。
「俺は少尉のメールにはすぐに返信してるぜッ!」
「中佐はエリシアちゃんの画像しか送ってこないじゃないっスか」
「そっ、それはだなぁッ、さっきも言ったように少尉の為を思って―――」
「とにかく!」
 ヒューズの言葉を遮ってハボックが言う。
「仕事中の私事のメールは禁止。さっさと仕事して下さい、いいっスね?」
 ピシリと言うハボックにロイとヒューズは一瞬押し黙る。だが、次の瞬間二人同時に口を開いた。
「ハボック!お前、私とメールのやり取りをするのが嫌なのかッ?恋人なんだから一日50通も100通もメールをするのが普通だろうッ?それを嫌がるような事を言うなんてッ!」
「エリシアちゃんの画像を送るのの何が問題だって言うんだッ、究極の癒やしだろうッ!あ、少尉、お前、エリシアちゃんの画像を削除したりしたら許さんからなッ!ちゃんと保存しておけよッ!」
 ギャイギャイと喚きたてる二人にハボックのこめかみがピクピクと震える。息を吸い込んだハボックが二人を怒鳴りつけるより一瞬早く、三人の携帯が着信を告げた。
「え?誰から?」
 くだらないメールを寄越して仕事の邪魔をする上官二人は目の前にいて携帯を弄っていない。誰だろうとメール画面を開いたハボックは目に飛び込んできた言葉に凍りついた。
『いい加減にしないと射撃の的にしますよ?』
 ゆっくりと顔を上げて上官を見れば二人の所にも同じメールが来たと知れる。ハボックはトレイの上のカップを二人の前に置いて言った。
「とっ、とにかく、コーヒー飲んだら仕事して下さいッ」
「そ、そうだなッ、ありがとう、ハボックっ」
「コーヒー飲んだらちょっとその辺回ってくるわ、俺ッ」
 言うなりカップに手を伸ばしてコーヒーを一気飲みする上官を残してハボックは執務室を出る。カリカリとペンを走らせているホークアイをチラリと見て言った。
「二人ともコーヒー飲んで一息入れたら仕事するようっスよ?」
「そう、それはよかったわ」
 トン、と最後の点を書いてホークアイが顔を上げる。にっこりと笑みを浮かべてハボックを見ると言った。
「そろそろ演習の時間なのではなくて?少尉」
「はいッ、すぐ行きますッ!」
 そこだけはちっとも笑っていない鳶色の瞳にビシッと敬礼を返して、ハボックは一目散に司令室を飛び出していったのだった。


いつも遊びにきて下さってありがとうございます。拍手、やる気頂いてます、嬉しいですv

火曜の更新時は一時dump renewページが表示出来なくなっていて、その時間に覗きにきて下さった方には申し訳ありませんでした。更新しようとしたら何故だかいきなりdump renewだけアップ出来なくなってしまいまして…。アクセス権限やらなにやら見てみたけどさっぱり判らず、仕方ないのでページを新しく作り直して元のページを削除し新規で保存しようとすると保存出来ないんですよー。悩んだ挙げ句dump renew2で保存かけたら出来たのでなんとかアップ出来たんですがやたら時間かかっちゃったorz 結局理由は判らず終いなんですが、なんでなんだろう……。またなったら嫌だなぁ(苦)

両親が携帯を買いました。以前から「春休みになったら買おうね」と言っていたのですが今回の震災でやはり携帯を持っていた方がいいと痛感したらしく(父は釣りで、母は観劇で互いに連絡の取りようがなかったから)結局春休み前に携帯買うのに付き合い、その日は時間がなかったので取りあえず電話のかけ方だけ教えたら二人でテーブル挟んで電話かけたりしてたらしく(苦笑)春休みでこっちに来てメルアド設定してあげたんですが、流石に父の方は日頃パソメールを弄ってる分飲み込みも早く最初に打ったメールもまともだったんですが、母が息子に打った初メールは「はつめいるだぜいいえい」って(苦笑)しかも文頭に息子の名前がひらがなでついてるから益々判りにくく、受け取った息子が暫く悩んでました(笑)伯母のアドレスを教えて貰ったので「打った?」と聞いても「メールまだ打てないから」って。私らが帰るまでに多少は打てるように仕込んでいかないと携帯買った意味がない。暫くは携帯で会話した方がいいかも?(笑)

以下、拍手お返事です。

摩依夢さま

お陰さまで体調回復致しました。ご心配頂いてありがとうございます。「バラード」漸く終わりましたー!何だかもうちっとも切ない感じにならなくて……orz 少しでもお楽しみ頂けていたら嬉しいのですが。また機会がありましたらこれに懲りずリクしてやってください。摩依夢さまもお体お気を付けてお過ごし下さいませ。

naoさま

うふふ、「剃刀2」楽しんで頂けましたか?やっぱりハボが泣いたり恥ずかしがったりするとワクワクしますよねッ(笑)ベビーの方は如何でしょう。小学校の時、同じ年の4月1日生まれの女の子が同じ学年でした。本来上の学年だと思うのですがあの頃は規定が緩やかだったのかなぁ。ちなみに姪っこは3月30日生まれで学年で一番年下、私は4月7日なので大抵学年で一番年上でした(笑)ベビー誕生のお知らせを楽しみにしてますねv
2011年03月02日(水)   No.36 (カプなし)

金剛石11
「以上だ、何か質問は?」
 相変わらず忙しい司令室の中、普段の業務と突発的に起こる事件をそれぞれにスムーズに対処出来るよう、個々への割り振りを整理したロイが締めくくるように言う。手を上げたブレダ以外のメンバーが執務室から出て行こうとすれば、ロイが背の高い後ろ姿に声をかけた。
「ハボック」
 かかった声に足を止めたもののハボックは振り向かない。ブレダが気を遣って出て行こうとするのを止めて、ロイは続けた。
「今日の昼の会食だが、時間が三十分遅くなったそうだ。だから車を───」
「そういうの、全部ブレダに回して下さいって言ったっスよね?」
 ロイの言葉を遮って、ハボックが振り向きざまに言う。ハボックはロイの顔を睨みつけて言った。
「それとオレを特務に戻してくださいとも」
 苛烈なまでの光をたたえる蒼い瞳をロイは真正面から受け止める。そうして「何故?」と問えば狼狽えたように蒼い視線の方が逸らされた。
「なんでって……」
 散々に悪い噂を聞かされている上にこの間の事故だ。いい加減懲りてもよさそうなものなのに平気な顔でそんな事を言うロイにハボックは思い切り舌打ちした。
「アンタ馬鹿じゃないの?それとも死にたいんスか?」
「少なくとも私に自殺願望はないな」
「だったら……ッ!ブレダもなんか言ってやれよッ」
 ハボックは黙ったまま事の成り行きを見ているブレダにその矛先を向ける。ブレダは困ったように肩を竦めて言った。
「俺は上官に意見する立場にないからな。今は意見する事もないし」
「お前がこれまで見てきた事を言えばいいだろうッ!」
 ブレダの言葉にハボックがカッとなって言う。ブレダは一つため息をついて言った。
「わざわざ大佐に進言しなくちゃいけないような事は見てないぜ」
「お前ッ」
「それに大佐はちゃんと色んな事見えてる」
 そう言えば見開く蒼にそっと息を吐いてブレダはロイを見る。
「俺の話はまた後で改めて伺います」
「すまんな」
 ロイが頷くとブレダは執務室を出て行く。パタンと扉が閉まって、執務室には二人きりになった。
「ハボック、私はお前の扱いを変えるつもりはないし、特務に戻す気もない。これから先もずっとな」
 二人きりの微妙な空気を切り裂くようにロイが言う。それにハボックが何か言う前にロイが続けた。
「私はお前のその瞳が綺麗だと思う」
「ッ?!」
「とても綺麗で……とても好きだ」
 そう言ってロイはハボックを真っ直ぐに見つめる。唇に薄く笑みを刷いて見つめてくるロイにハボックは何度も言い掛けては言葉を飲み込んだ。
「なに馬鹿な事言って……」
 なんとか絞り出すように言えばロイの笑みが深まる。
「馬鹿な事?私は本当の事を言っているだけだ」
「本当な訳ないっしょッ?!いい加減な事言うなッ!!」
 全身の毛を逆立てるようにして怒鳴るハボックをロイはじっと見つめた。怒りに燃えているくせにどこか不安げな光をたたえる蒼い瞳が愛しくて堪らなかった。
「ハボック、私は」
「もう何も聞きたくないっス!!」
 ハボックは耳を押さえてそう叫ぶと執務室を飛び出していってしまう。
「ハボック、私は……」
 遠ざかる足音を聞きながらロイは伝えられなかった言葉をそっと抱き締めた。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます!更新してないのに拍手ありがとうございますーっ。おかげさまで頑張れますっvv

どうもご無沙汰してすみません。実は三月に入るのを機にサイトを移転しようと思っておりまして、ゴチョゴチョと色々やってたら作文書きあがりませんでしたー。ここで移転しておかないとまたズルズル行きそうだし、今借りてるサーバーが六月の頭までなので引っ越しのご案内も十分できるかな、と。そんなわけで今日もちょっと更新お休みしてサイトの移転を終わらせようと思います。夜までには移転して旧アドレスの玄関とtitleページには新アドレスのご案内を載せますのでお手数ですがブクマの変更お願い致します。
せっかく移転するのでぐちゃぐちゃのサイトの中身を整理中です。始めた当初はろくにパソコンの弄り方も知らない状況だったので、いやもう正直凄いことになってる(苦笑)フォルダに纏めるなんて頭もなかったからトップフォルダにズラーッと横並びに……。それでもMさんにリンクしたままのフォルダの移動の仕方教えて貰ったんで随分楽に整理出来ましたが(←以前は移動しては一個ずつリンクを貼り直してた奴(苦笑)整理してたら前に日記再録に載せたもののdump renewには載せてなかった「襲い受け」だの「誘い受け」だの出てきたので改めてdump renewに載っけておきました。それ以外にも幾つか。2007年くらいの奴なので恥ずかしい気もしないでもないですが、まあ、一生懸命書いたやつだし(笑)宜しければご覧くださいませ。そういや今年の五周年はなにしようかなぁ。やっぱり日記のを纏めるのが一番ボリューム的にも丁度いいんだけど……。いっそ「金剛石」をガーッと書いて最後ハボロイ、ロイハボに分かれるところを書き下ろしで載せようかしら……って、今はそれより先に移転作業だーっ!出来れば全然変えてない拍手も変えたいが、書く時間があるだろうか。ともあれ、本日中にお引っ越し済ませますので、よろしくお願い致します。

というところで、あっためといた「金剛石」です(笑)サクサク進めたいと思いつつなんかこうもったり感が(苦笑)スピードアップしようよ、自分!続きもなるべく早く頑張りまーす!

以下、拍手お返事です。

いつも遊びに来ております の方

いつも遊びに来てくださってありがとうございます!うわ、「恋闇」!すみません、調べてみたら去年の6月以来でしたー(汗)作業の合間に読み返したので近日中に続きをアップしたいと思います。うちのハボが好きと言って下さって思わず顔を弛めて喜んでますvこれからもどうぞよろしくお願いしますvv

蒼さま

とりあえずココにおりますー(苦笑)「バラード」……う、やっぱり三月持ち越しになっちゃいました(苦)でも後数回の筈なので、頑張るっ!流石三連休は民族大移動の時期なんですね……。ロイが大人しく治療に専念するわけないですよ(爆)ハボック観察日記……どう考えても変態佐のエロ日記になりそうなんですが、そんなのでもいい?(爆)
2011年03月01日(火)   No.25 (カプなし)

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  Photo by 空色地図

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