ハボックは小さな手を伸ばして中庭に続く扉を開ける。カッと照りつける夏の陽射しに目を細めて、ハボックは外へと出た。 イーストシティは今日もいい天気だ。陽射しが燦々と降り注ぐ庭は暑いの一言に尽きたが、それでも今日は北から吹く風がほんの少し暑さを和らげていた。ハボックはちょっぴりくたびれたように葉っぱを垂らす庭の草や木陰を作ってくれる木々の枝を見上げたりしながら楽しげに歩いていく。庭の片隅に来るとにっこりと笑みを浮かべた。 そこには向日葵が夏の陽射しの中大きな花を咲かせている。春先、ロイと一緒に種まきしたそれは、今ではロイの背丈よりも高く伸びて、それは見事な大輪の花を咲かせていた。ハボックは首をうんと反らして黄色い花を見上げる。背の高い向日葵はそれに相応しい大きな葉っぱを茂らせていて、ハボックからは折角の花がよく見えなかった。 「ろーい……」 雲一つない空に咲く黄色い花をよく見たくて、ハボックは小首を傾げる。次の瞬間ポンという小さな音と共に黒い小さな毛糸玉になると、ハボックは大きな葉っぱの上をポンポンと跳ねて、花に向かって向日葵を上っていった。一番上の葉っぱまで来れば眩しいほどの陽射しが降り注いでくる。ハボックは形のない目を細めたものの、もう一つポンと跳ねて花の上に飛び乗った。 向日葵は少し種に色が付いてきたもののまだ黄色い花びらをいっぱいに開いて綺麗に咲いている。その黄色にハボックは嬉しそうにポンと跳ねて、花の中央に腰を落ち着けた。 遮るものがなくて陽射しはジリジリと暑かったが、時折吹き抜ける風が毛糸玉の黒い毛をさやさやと撫でて暑さを和らげる。なにより大好きな向日葵の黄色にぐるりと囲まれて、ハボックは楽しそうにふるふると震えた。 本当はロイと一緒に向日葵を見たいとも思ったが、家を出てくるとき窓辺の指定席で本を読んでいたロイの姿を思い出せば、彼がここへ来ることはないだろう。ちょっぴり淋しく感じたものの、ハボックは時折吹く風に黒い毛を黄色い花びらと一緒に靡かせながら夏の陽射しを浴びていた。 少しすれば眠気がこみ上げてきてハボックは欠伸をするように体を震わせる。花の真ん中にちょこんと座ったままうつらうつらし始めれば、不意に足音と共に大好きな声が聞こえた。 「やっぱりここか、ハボック」 呆れたような面白がるようなロイの声にハボックは形のない目を開いて下を見る。そうすれば、ロイが笑みを浮かべて向日葵を見上げていた。 「そんなところにいると干からびるぞ」 燦々と陽射しが降り注ぐ花の上にいるハボックを見てロイが言う。それでもハボックが降りずにいれば、クスリと笑ったロイは向日葵の側を離れて行ってしまった。こんなに暑い中、やっぱり一緒に花を楽しむのは無理なのかしらんと残念そうに黒い毛を震わせたハボックは、不意に降り注いできた雫にびっくりして向日葵の上で飛び跳ねた。花の上にストンと落ちながら下を見たハボックは、長いホースを引っ張ってきたロイが潰したホースの先を上に向けて高く水を噴き上げているのを見る。高く噴き上げられた水が太陽の光にキラキラと輝いて降り注いでくるのを見て、ハボックは嬉しくてポーンと高く飛び跳ねた。 「気持ちいいか、ハボック」 笑ってそう尋ねるロイにハボックは答えるように歌う。向日葵の黄色い花の上、キラキラと降り注ぐ水を浴びながら歌うハボックの歌声が夏の庭に流れていった。
遊びに来てくださった方にはどうもありがとうございますvぽちぽち拍手もとっても嬉しいですv ハボックの日にアップしようと思っていたのですが、睡魔に負けたのと特に記念日話でもないな〜と思ったらついつい延びて十日も遅れてしまいました(苦笑)やっぱり期限を決めないとずるずる行くなぁ。更新もねぇ、ちゃんと日にち決めてやらないとダメっスね(苦笑)とりあえず読み返さないと書けないので今ぼちぼち読み返してます。あー、こんな話だったんだーって書いてる本人が思ってどうするって感じですが(笑)やっぱちゃんとプロットとか書かないといかんのかなと思いつつ、そんな先のストーリーなんて思い浮かばないし!これまで通り行き当たりばったりで頑張りまーす(笑)
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