（お好きなカプでどうぞｖ）
ロイは読んでいた本から顔を上げると視線を窓の外へと向ける。カーテンが揺れる窓の向こう、空は綺麗に晴れ渡って、ロイは澄んだ空色に目を細めて手にした本を閉じた。
「折角のいい天気だし、偶には外で読むか」
ロイはそう呟くと本を手にたち上がる。リビングを出て玄関から外へと足を踏み出せば、吹き抜けた風がロイの黒髪を揺らした。
今日は久しぶりの休日だ。来る日も来る日も読みたくもない書類の山に埋もれて、漸く訪れた休日。買ったものの積み上げるばかりだった本を部屋にこもって一日中読んで過ごすつもりだったが、綺麗な空につられて出てきた街はいつの間にか初夏の陽気となっていて、仕事に追われて季節の移り変わりすら気づいていなかった己の生活に、ロイはやれやれとため息を零した。
「いい風だ」
それでも気持ちのよい風にロイは笑みを浮かべて通りを歩いていく。自宅からさほど遠くない公園に入ると目に入ったベンチに腰を下ろした。
「さて、と……」
読みやすいように脚を組み本を広げる。そうすればロイの意識は瞬く間に本の世界へと引き込まれ、周りの物音は耳に入らなくなった。
「よし、マロン。今日は何処へ行こうか」
ハボックは手にしたリードで繋がる大きなレトリバーに向かってそう声をかける。ハボックの声にワンと答えてトコトコと歩き出す犬に引かれるように、ハボックは足を踏み出した。
マロンは隣の老婦人が大切にしている犬だ。年を取ってなかなか愛犬を十分な散歩に連れ出せない老婦人に代わって、ハボックは時折こうして運動不足になりがちな大きな犬を散歩に連れていってやっているのだった。
「やっぱ公園か？」
犬の足が近所の公園に向かっている事に気づいてハボックは笑みを浮かべる。犬の歩みに合わせて公園へ続く道を歩いていたハボックは、ふと吹き抜けた風がひんやりとしている事に気づいて視線を空へと向けた。
「雲が出てきたかな？」
さっきまでは綺麗に晴れ渡っていた空に雲が出てきた事に気づいてハボックは眉を寄せる。今朝の天気予報はなんていっていたかなと思いつつ、犬と一緒に公園の入口を潜った。
「ま、大丈夫だろう」
多少濡れたところで風邪をひくような季節でもない。ハボックは嬉しげに歩いていく犬に続いて公園の中をゆっくりと歩いていった。
「いい季節だな」
花壇に植えられた花に目をやり、緑の葉を茂らせる梢を見上げてハボックは目を細める。周りの景色を見上げるように歩いていたハボックは、足下で何か絡んだように感じて視線をおろした。
「……っと」
解けたスニーカーの紐を踏んでしまったのだと気づいて、ハボックは足を止めしゃがみ込む。だが、一緒に止まってくれると思った犬は、何かを見つけたのか突然駆け出してしまった。
「うわっ！マロンっ？！」
リードがハボックの手をすり抜けて、犬はハボックの側を離れて走っていってしまう。ハボックは急いで靴紐を結び直すと慌てて犬の後を追った。
「待てッ！マロン！」
大声をあげて犬を呼んだが、犬は一直線に走っていってしまう。犬が向かう先のベンチに人が座っている事に気づいて、ハボックは目を見開いて走る速度を速めた。
「ウォン！」
「えっ？！うわっ！」
突然すぐ側で犬の声が聞こえたと同時に本を持っていた腕を引かれて、ロイはびっくりして本を取り落としそうになる。慌てて本を掴んだものの、飛びつくようにじゃれついてきた大きな犬に黒曜石の瞳を大きく見開いた。
「えっ？犬っ？！一体何処から……っ？！」
たった今までどっぷりと浸かっていた本の世界から突然引き戻されて、ロイは咄嗟に反応出来ず目を白黒させる。その時バタバタと走り寄る足音がして、ロイにじゃれつく犬を伸びてきた手がグイと引いた。
「こらっ、マロン！！────大丈夫っスかっ？！」
圧し掛かる犬の重みが引いて、ロイはホッと息を吐く。声の主を振り仰いだロイは、見下ろしてくる空色に吸い込まれたように目を見開いた。
「ヤバ……ッ！」
駆けていく犬がベンチに座る人影に飛びつくのを見てハボックは慌てて駆け寄る。
「こらっ、マロン！！────大丈夫っスかっ？！」
嬉しそうにじゃれつく犬を叱りながら引き離して、ハボックはベンチに座る相手に声をかける。その声に弾かれたように見上げてくる黒曜石に、ハボックは思わず息を飲んだ。
そうして声もなく見つめ合ったのは時間にしてみればほんの数秒だったろう。だが二人には永遠のように感じられた凍り付いたように見つめ合った時間は、ワンワンと元気に吠える犬の声で弾かれたように動き出した。
「あ……え、と……すんません、大丈夫だったっスか？」
「……ああ、大丈夫、ちょっとびっくりしただけだ」
すまなそうに見つめてくる空色にロイはなんとか笑みを浮かべて答える。ロイの答えにホッとしたように笑みを返して、ハボックはブンブンと尻尾を振る犬の頭を押さえつけるようにして言った。
「靴紐を結ぼうとしてしゃがんだらいきなり走り出しちまって……。びっくりさせてすんませんでした」
おさえつけた犬の頭と一緒に自分も頭を下げる青年にロイは笑って答えた。
「大丈夫、気にするな」
ロイは言って立ち上がる。自分より頭一つ大きい青年を見上げて更に言葉を続けようとした時、ポツリと大粒の雨が落ちてきた。
「────雨？」
弾かれたように見上げた空から雨がポツポツと落ちてくる。いつの間にか一面の雲に覆われた空から落ちる雨粒が瞬く間に数を増すのに、ハボックは慌ててリードを持つ手と反対の手でロイの腕を掴んだ。
「早く、こっち！」
「あ、ああ」
腕を引かれるままロイは青年と一緒に数メートルの距離を走って、公園の大きな木の下へ走り込む。音を立てて降ってくる雨を梢越し見上げれば、伸びてきた手がロイのそれから本を取り上げた。
「あっ」
慌てて視線で追った本を、本を取り上げた当人は小さなバッグから取り出したタオルでくるんでしまう。くるんだ本をロイに向かって差し出して、ハボックがにっこりと微笑んだ。
「これで少しは濡れないっしょ」
「……ありがとう」
言って微笑む空色をじっと見つめれば、照れたように視線が逸らされた。
「……ここじゃあんまり雨宿りの役に立たなかったっスね」
「そうだな、雨が強くなってきた」
今ではザアザアと音を立てて降る雨は茂る葉をすり抜けて二人の上に降ってくる。少しの間言葉もなく降る雨を見つめていたが、どちらともなく視線を互いへと戻した。
「あの……オレ、ジャン・ハボックって言います。その……よかったらまた会えないっスか？」
ほんの少し躊躇うように断られるのを怯えるように、濡れた金髪から覗く空色が揺れる。その瞳をじっと見つめたロイの唇に笑みが浮かび、そして。
「私はロイ・マスタングだ」
告げたロイの声に応えるように雨音が強くなった。
ご無沙汰しております〜！えっ、まだやってたんだと言われてしまいそうですが、まだやってます。生きてます(笑)でもって、今日は拙宅のお誕生日だったりします。イエイッ！なんだかんだで１２回目らしいです。そんなわけで久々日記ですが更新してみました。放置してるロイハボのジャン君を何とかしてあげなくてはいけないとは思ったのですが、お誕生日にその続きというのもなんなので、初心に帰って出会い編など書いてみました。イメージはMEZZO"の「雨」。ちなみにMEZZO"というのは最近アニメにもなりましたスマホのゲーム「アイドリッシュ７」に出てくるユニットです。わりと元気な歌が多いアイナナに比べてMEZZO"はラブソングが多いのですが、あまりラブソング好きでない私がMEZZO"の曲は結構好きでして〜ｖこの「雨」もいい曲なのですよ。どうせなら一曲丸ごとで話を書きたいのですが、そうすると長〜くなっちゃうので、とりあえず触りだけ(笑)いやいや、久しぶりに初々しい二人を書きましたよ、フフフｖ
久しぶりと言えばポメラを開くのも久しぶりだったんですが、使おうと思ったら壊れてやんの(苦)一応使えないことはないのですが、「Ｂ」「Ｃ」「Ｘ」のキーが打っても反応しない……。あれですね、「ＢとＣとＸの音が〜出ない」って言う、アレ。え？ちょっと違う？(笑)普段「ち」は「chi」で打ってるんですが、これは「ti」で打てるし「Ｘ」もまぁなんとか他の打ち方で小さい字は出せる。でもね「Ｂ」が打てないと打てないんですよ、「ハボック」が！！(爆)いやぁ、まさかの罠(笑)仕方ないので文字パレットで「ボ」を出して「ハボック」をコピペして書いてましたが、他の字も含めいらん時間がかかった感じでした(苦笑)ともあれ、ポメラ壊れてると益々更新から縁遠くなっちゃいそうなので、「買うかー、あー、でももう新しいのはだしてないんだろうな〜」と調べてみたら！６月８日に最新版のＤＭ３０が出るって！マジ？！やったーッ！ナイスタイミング！って訳で、早速Amazonで予約しましたーｖ新しいの来たら折角だし、更新頑張りたいなー、頑張れるといいなーと思っています。ということで、これからも時々でも覗きに来て下さる方がいたらいいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたしますｖ
さて、そんなところで恒例の無配本です。今年も新刊ありません〜。黒スグリ姫とか書きたいなーと二年くらい思ってるんですが、結局そのまんまだよ(苦笑)というわけで、変わり映えいたしませんが、もし過去本でも欲しいという方がいらっしゃいましたら是非どうぞｖ
今回の配布につきましては以下の通りです。
�〆２鵑量鞠柬楷覯茵⊃郡�はありません。すべて昨年までに出したものの再配布になります。
�■匯慊衙椶惑�齢に達していない方にはお申し込み頂けません。申し込みフォームのAge check欄に必ず年齢確認のチェックを入れて下さい。年齢制限のある本、ない本がある為、Age check欄が必須になっておりません。チェックを入れなくても申し込みフォームが送信出来てしまいますが、年齢制限のある本をお申し込みの場合Age checkは必須です。
�Ｌ砧素柯柬椶箸覆蠅泙垢里破楝紂∩�料とも無料です。発送はクリックポストを利用し、個人名で発送します。
�ず毒柯柬椶麓，猟未蠅任后�
１）2016年十周年記念配本(2016年5月発行)
「そしてここは二人だけの」(カプなし、書き下ろし)
「続・ここは二人だけの」(ロイハボ・R20、書き下ろし)
「続・ここは二人だけの」(ハボロイ・R20、書き下ろし)
２）2015年九周年記念配本(2015年5月発行)
「蒼焔」(ロイハボ・R20、ＷＥＢ再録＋書き下ろし)
「蒼牙」(ハボロイ・R20、ＷＥＢ再録＋書き下ろし)
３）2014年八周年記念配本(2014年5月発行)
「妖」(カプなし、ＷＥＢ再録、加筆なし)
「妖 青の巻」(ハボロイ・R18、書き下ろし)
「妖 朱の巻」(ロイハボ・R18、書き下ろし)
「妖 青の巻」「妖 朱の巻」には「妖」から続きの書き下ろしエチ(カプ別で内容的にはほぼ同じ)一話とss二話を収録
ss二話のうち一話は青、朱同じ、もう一話は同じテーマでカプ仕様の話
４）2013年七周年記念配本(2013年5月発行)
「霧屋」「霧屋２」(ハボロイ、ＷＥＢ再録、加筆なし)
「八雷神」(ロイハボ・R20、ＷＥＢ再録、加筆なし)
「八雷神２」(ロイハボ・R20、書き下ろし)
「俺様な皇帝と恥ずかしがり屋の騎士の話」
(ヒュハボ・R20、ＷＥＢ再録、加筆なし)
５）2012年六周年記念配本(2012年5月発行)
「暗獣上・下」
日記掲載したものの再録、修正以外の加筆なし
「新・暗獣」は入っておりません
「暗獣 毛糸玉の記」(書き下ろし)
ハボがロイと出会う前後とロイが去る前後がメイン
日記に掲載した中から数話をハボック視点で書いた話
「暗獣番外編」(書き下ろし、ロイハボ・R18)
ロイハボぺら本。子ハボではありません。
６）2011年五周年記念配本(2011年5月発行)
「金剛石総集編」
日記掲載したものの再録、修正以外の加筆なし
「続・金剛石(ハボロイバージョン・R20)」
「続・金剛石(ロイハボバージョン・R20)」(2013年改訂)
ＷＥＢからの続きの書き下ろし。
カプリングの違い以外内容的には同じ
子ハボ時代のその手の話あり。苦手な方はご注意。
ロイハボ版のみ日記掲載の「記念日編」を再録。
７）2010年四周年記念配本(2010年5月発行)
「鈍感な騎士と待ちきれない姫君の話」(ハボロイ・R20)
ＷＥＢ掲載再録＋書き下ろしエピローグ
「ワガママな王様と純情な騎士の話」（ロイハボ・R20)
ＷＥＢ掲載再録＋書き下ろしエピローグ
「小さな暴君とお人好しの騎士の話」(エドハボ)ＷＥＢ再録
「小さな暴君とお人好しの騎士の話」(エドハボ・R20)
ＷＥＢ掲載再録＋書き下ろし
「王騎士」同時収録の「豆騎士」の続き
内容は2013年4月迄の日記掲載分と「初空月編４」(書き下ろしR20)
８）2009年三周年記念配本(2009年5月発行、2011年10月改訂の際、数話収録増)
「babble babble emerald」(カプなし・R18)
「babble babble diamond」(ハボロイ・R18)
「babble babble pearl」(ロイハボ・R18)
2006〜2009年に日記掲載されたssの再録で加筆なし。
尚、無配本の書き下ろしに関しましてはＷＥＢに再掲の予定はありませんので、ご興味ありましたら是非お手にとって頂けると嬉しいです！
また、素人が手作業で作っておりますので多少の不格好は多めにみて下さいますように(苦笑)本なんて立派なもんじゃなくコピー本もどきです、でも愛はたっぷり込めて作ってます(笑)お申し込みお待ちしております。
サイトお誕生日記念無配本申込みはこちらからどうぞ→☆
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