babble babble


2014年08月の日記

2014年08月30日(土)
獣16
2014年08月20日(水)
黒スグリ姫9
2014年08月16日(土)
お盆
2014年08月09日(土)
八月九日 in 平行世界
2014年08月06日(水)
記念日
2014年08月04日(月)
新・暗獣53

獣16
『わっ』
 リビングの扉を開けて入ろうとすれば、床にべしゃあと寝そべったハボックを踏みつけそうになる。私はハボックを踏みかけた足の先で床に横たわる金色の体をちょんちょんとつついた。
『そんなところで何をしてるんだ。踏むぞっ』
 そう言ってつついた足を持ち上げて踏みつける真似をする。だが、いつもならそこで慌てて逃げ出すハボックが、顔も上げずに視線だけ私に寄越した。
『だって暑いんスもん……床の上なら少しは冷たいかなぁって……』
 普段のハボックには考えられないほど疲れきった声で言う。ハアとため息をついたハボックはゴロンと転がってだらしなく腹を晒した。
『暑い……暑すぎ……』
『お前な』
 仮にも獣たる身、そう簡単に腹を晒していいのかと顔をしかめてハボックを見下ろす。だが、ハボックは少しでも涼しさを得ようとするように金色の体を床にこすりつけた。
 今年の夏はいつにも増して猛暑が続いている。短毛種である私でもこの暑さはきついものがあるが、ふかふかの毛を生やしたハボックにしてみたら相当暑いに違いなかった。
『大佐ァ、どうしたら涼しくなるっスかねぇ……』
 普段は鬱陶しいほどに元気なハボックがぐったりした声で言う。私は夏用の清涼感のあるラグに身を横たえて答えた。
『毛を剃ったらいいんじゃないか?そうだ、ヒューズにバリカンで剃って貰え。そうしたら私がそれを貰って冬用のコートにしてやる』
 ふさふさの毛が暑いなら剃ればいい。実に簡単明瞭な答えを言えば空色の瞳が睨んでくる。恨めしげに私を見て、ハボックが言った。
『大佐ってば他人事だと思って全然まじめに考えてねぇっしょ。自分が毛が短いからって』
『なんだと?折角人が真剣に答えてやったのに』
 正直至極まじめに答えたつもりだ。毛を剃ってそれでコートを作ればハボックは涼しく、私は冬に暖かい。実に合理的でいい考えなのにハボックは大きなため息をついてゴロンと転がり腹ばいになった。
『暑い……もう煮えちゃう……』
 ハボックは私の意見に賛同する気はないらしい。それならそれで勝手にしろと私はラグの上で目を閉じた。そうすれば。
『暑い……』
『暑いよう……』
 十数秒おきにハボックが呟く声が聞こえてくる。寝ようにもその声が気になって、私はムッと口を歪めてガバリと立ち上がった。
『おい!』
 ムッとした私の声にもハボックは反応しない。目を瞑ったまま時折寝言のように「暑い」と繰り返すハボックを私はじっと見下ろした。
『おい』
 言って足先でちょんちょんとつついてもハボックは顔も上げようとしない。ぐったりとしたハボックの様子を私は暫く見つめていたが、ふと思いついてハボックをそのままにリビングを出た。中庭に続く扉をくぐって庭に出る。夏の陽射しが照りつける庭は目眩がするほど暑かったが、私は庭の隅にある散水用の水道に歩いていくと、つないであるホースの先を咥えて庭の真ん中まで引っ張っていった。それからもう一度水道まで戻り、蛇口に歯をひっかけて回す。水が出たのを確認すると、長いホースを通って水が出るより早くホースの先まで戻るとその先端を足先で押し潰した。
『ハボック!』
 そうしおいてから私は大声でハボックを呼ぶ。
『ハボック!!今すぐ出てこい!!来ないと二度と遊んでやらんぞッ!!』
 何度も名前を呼び脅し文句を怒鳴れば、少ししてハボックが扉から出てきた。
『なんスか……?オレ、マジヤバいんスけど……』
 暑くて死にそう、と呟きながら近づいてきたハボックがすぐ側まで来た時、私は押さえていたホースの先端から少しだけ足をあげる。そうすれば。
 シャアアアッッ!!
 水が飛沫をあげて近づいてきたハボックの顔に命中した。
『うきゃあッッ?!』
 顔を水で直撃されてハボックが飛び上がる。ハボックは慌てて水の攻撃から身をかわして私を見た。
『なん……ッ、なにッ?!』
『冷たくて気持ちいいだろう?』
 ブルブルと頭を振って叫ぶハボックに私は言う。そうすればパッと顔を上げたハボックが次の瞬間パアッと顔を輝かせた。
『気持ちいいっス!水!すっげぇ気持ちいい!!』
 ハボックはそう言うと今度は自分からホースから飛び散る水の下に入る。全身に水を浴びて、金色の毛をきらきらと輝かせてハボックが言った。
『気持ちいい〜〜ッ!水浴び最高ッ!!』
『あっ、こら!そんなに暴れるなっ!』
 冷たい水に喜んでハボックが跳ね回るせいで水が私の方へもビシャビシャと飛んでくる。
『だって気持ちいいんスもん!』
 水を浴びて瞬く間にいつもの元気を取り戻したハボックが言って大きく跳ねた。
『ありがとう、大佐!大好きっ!!』
『……フン』
 空色の瞳を輝かせてハボックが言う。夏の陽射しを金色の毛にキラキラと弾かせて、ハボックは長いこと水を浴びて遊んだ。そうして。
『ちゃんと乾いてから入って来いよ』
『えーッ!そんなぁっ!折角涼しくなったんスからこのままラグで昼寝したいっス!』
『貴様』
 長い毛の根元までずっくりと濡れた体で私の大事なラグに寝そべりたいなどととんでもない事を言うハボックを私は睨む。
『そのなりで私のラグに寝そべったら噛み殺すからな』
『大佐ァ……んー、じゃあラグには寝そべんないから家に入るのはいいっしょ?』
『────勝手にしろ』
『わぁい、ありがとうございます』
 家の中をびしょびしょに濡らしてヒューズに怒られたとしても私の知った事じゃない。
『やっぱり夏は水浴びに限るっスね!大佐、またやってくださいねっ』
 嬉しそうに言いながらハボックはラグのすぐ側に身を横たえる。
 それから少しして帰ってきたヒューズにハボックがこっぴどく叱られるのを遠くに聞きながら、私は夏の午睡を貪った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになります、嬉しいですv

お久しぶりの「獣」です。この一週間はやたら涼しくて一ヶ月先の気温だったりしたんですが、まだもう少しは暑い日もあるようで。ゴールデンレトリバーハボックはさぞ暑いだろうなぁと。でも毛を刈ったら相当スリムになっちゃいますよねー(笑)親戚のとこにいるトイプーは夏場は毛を刈りこんじゃうので本当にスリムです。あの子がスリムになると夏が来たな〜って(笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

黒スグリ、絶対年上女性に可愛がられるタイプですよね!ほぼ裸(笑)ロイだけでなく他の客にも目に毒な気がします。うわ、ヒューズいそうで怖い(爆)セレスタ、in何秒前って(爆)挿れる展開と挿れない展開どっちにしようか考え中です。どっちがより楽しいかなぁ(ニヤリ)でも、いい加減にしとかないとハボック、幸せになれなくなりそう(殴)風、ははは、もうホントサイテー男ですよねぇ。ハボック、とっても可愛いのに男を見る目のない女の子な感じかも。どうしてこんな男がいいんだ(爆)まあ、サイテー男にはこの先色々苦労して貰おうと思います(笑)

阿修羅さま

うわわわっ、見える話はなしでッ!(滝汗)苦手なんですよぅ(苦)お母様、具合よくなられましたか?色々大変かと思いますが、ご無理なさいませんよう。

FLARE BLUEのハボがかっこよすぎて  の方

わわ、本当ですか?いや〜ん、嬉しいです!そう言って頂けるとモリっとやる気が湧いてきます!これからもカッコいいと言って頂けるよう頑張りますねv
2014年08月30日(土)   No.411 (カプなし)

黒スグリ姫9
ロイハボ風味

「なんかちっこいのが来てるぜ?」
「えっ?」
 講義が終わってテキストを重ねて席を立ったロイは、ポンと肩を叩いて言った友人の声に視線を教室の外に向ける。そうすれば、女子大生に囲まれてオロオロするハボックの姿が見えて、ロイは慌てて教室から出た。
「中等部なんだー、何年生?」
「さ、三年っス」
「いや〜ん、お肌スベスベ〜っ」
「うそうそ、私にも触らせてっ!……やーん、ホントだ〜!」
「ちょ……っ、あ、あのッ」
「ねぇキミ、お姉さんとデートしない?」
「エッ?!いや、そのっ、オレっ」
「カワイイ〜ッ!照れてるッ!」
 女子大生三人に囲まれて、困っていると言うより怯えているハボックの様子にロイはやれやれとため息をつく。早足で近づくとキャアキャアと盛り上がる女子大生の肩を叩いた。
「その辺にしてやってくれないか?」
「マスタングくんっ?」
「その子、マスタングくんの知ってる子?」
「おいで、ハボック」
 ロイは質問に笑みだけ返してハボックの手首を掴んで歩き出す。キャアキャアと騒ぐ女子大生を置き去りに廊下を歩くと扉から外へと出た。
「大丈夫だったか?」
「び、びっくりしたぁ……」
 足を止めてハボックを振り向けば、ハボックが大きなため息と共に言う。
「クラスの女子も結構ウルサイけど、迫力が違うって言うか……なんか甘ったるい匂いするし……。先輩来なかったらもう少しで逃げちゃうとこだったっス」
 心底ホッとしたような様子で言うハボックにロイはクスリと笑って金髪をくしゃりと掻き混ぜた。
「それで?わざわざこっちまで来たのは何か用があったんだろう?」
「あっ、はい!」
 金髪を掻き混ぜられて擽ったそうに首を竦めたハボックは、ロイの言葉にポケットから封筒を取り出す。中からチケットを引っ張り出してロイに差し出した。
「先輩、一緒にプール行きませんか?チケット貰ったから」
「プール?いいぞ、いつだ?」
「え、えっと……明日までなんスけど……」
「明日?明日は――――」
 明日はゼミの教授が主宰を務める講演会がある。困ったなと思ったのが顔に出たのだろう。ハボックが慌てたように手を顔の前で振った。
「あ、いいです!そっスよね、予定あるっスよね。いいっス、全然気にしないで下さい!」
 じゃあ、とチケットを封筒に突っ込んでハボックは逃げるように立ち去ろうとする。ロイは咄嗟に手を伸ばしてハボックの腕を掴んだ。
「待て!行かないとは言ってないだろう!」
「でも予定あるんしょ?」
 言って上目遣いにみつめてくる空色にロイは答えた。
「お前とのデートに勝る予定なんてないよ」
「でも」
「一緒にプールに行こう。毎日暑くて堪らないからな、嬉しいよ」
 そう言ってにっこりと笑えば漸くハボックも笑みを浮かべる。
「ありがとう、先輩!すっげぇ嬉しい!」
 ギュッと抱きついてくるハボックをロイは抱き返す。見上げてくる空色を見つめ返して顔を寄せれば、キスしようとした唇から零れた言葉にロイは思い切り顔をしかめた。
「先輩に断られたらヒューズ先輩を誘おうと思ってたんスけど、よかった。ヒューズ先輩、今日は実験の後バイトで捕まるか判んなかったし」
「――――ちょっと待て!どうして私が行けなかったらヒューズを誘うんだっ?」
「え?だってチケット二枚しかないし、友達誘うと誰を誘うかで揉めそうだし」
 だからと言うハボックにロイは頭痛がする。不思議そうに見上げてくるハボックにロイはこめかみを押さえて言った。
「明日は何があっても絶対行くから!絶対にヒューズを誘ったりするんじゃないぞッ」
「はい!……つか、先輩、どうかしたんスか?」
 ロイの心配などまるで判っていないハボックにため息を零して。
「――――なんでもない。明日、約束だからな」
 言ってハボックの唇に己のそれをそっと重ねたロイだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、本当に励みになります、嬉しいですvv

ちょっと間が開きました、「黒スグリ姫」ですー。折角の夏なのに!書くの忘れてたよ!(爆)とりあえずプールに行こうかと……でも最近プールなんて行ってないからどんななってんのかよく判らなかったりするんですが(苦笑)

以下、拍手お返事です。

だんだん鋼のHPが減る中  の方

いつも遊びに来て下さってありがとうございますvvおお、ヒュハボも読んで頂けましたか!ハボック、カワイイですか?えへへ、嬉しいですvところで、全部読めないと言うのはどこかリンク切れとかしていると言う意味でしょうか?時々リンク切れになってしまう時があるので、もしそうでしたら場所を教えて頂ければ助かります!これからも頑張って書いていきますので、どうぞお付き合いお願いしますねv

なおさま

お盆、そうそう、絶対仕事中に悪さしそうですよね!(笑)ロイ、焔で除霊ですか?メチャクチャ傍迷惑ですね(爆)迎え火、送り火で花火!きっとご先祖さまも一緒に楽しんでいた事でしょう(笑)風、あはは、頭の遥か片隅にありましたか?うわあ、なおさまってば!先読みズバリすぎっスよ!(爆)でも、この展開だとそれしかないですよねーっ(コラ)

阿修羅さま

お盆もあちこちお墓参りに行くと慌ただしいですね。私は今年初盆の叔父にお線香を上げる為近所の親戚の家に行ったら、叔母から何やらインナーやらポーチやら貰ってきました。インナー、叔母とお揃い(爆)久しぶりに嫁の気持ちを味わってきました(苦笑)「お盆」読んで下さってありがとうございますvえええ、阿修羅さま、見える体質なんですかッ?私は物凄い小心者なのでその手の話は全くダメですんでッ!!(ビビりまくり)おおう、そろそろ再開されるのですか?お忙しいでしょうがお体お気をつけて頑張って下さいね!

おぎわらはぎりさま

どうもあまりリクに添えずすみません。男三人浴衣姿で夕涼みですか…それはどなたか絵師さまに描いて頂きたいですね〜(笑)

久遠の空すごく切なくなりました……!  の方

うわあ、ありがとうございます!!そう言って頂けてとっても嬉しいですvvこちらこそ読んで下さってありがとうございます。これからも楽しんで頂けるよう頑張りますねvv
2014年08月20日(水)   No.410 (ロイハボ)

お盆
CP:ヒュハボ(R18)

「ん……っ」
 ベッドの中、ハボックは肌を這う手の感触に僅かに眉を寄せる。眠りの淵から引き戻そうとする不埒な手の動きに、ハボックは不機嫌に緩く首を振ってうっすらと目を開けた。アパートの寝室、狭いベッドの上にはハボックしかいない。それどころか寝室の中にもハボック以外の誰の姿もありはしなかった。だが。
「あっ……、ふ……ぁっ」
 何者かの手がベッドに横たわるハボックの肌を明らかな意志をもって這い回る。その手がパジャマ代わりのスエットのボトムにかかるに至って、ハボックは顔をしかめて思い切り脚を蹴り上げた。
「いい加減にしろッッ!!」
 なにもない空中、だが蹴り上げた脚は何かに当たったように僅かにスピードを緩める。ハボックが脚にかかる抵抗に構わず思い切り蹴り上げた脚を振り抜けば、そこにいた何かが悲鳴を上げて霧散した。
「こ、の……いい加減にしろってんだ、ボケッッ!!」
 ベッドの上に身を起こし、ハボックは誰もいない空間に向かって怒鳴る。半ばずり下がったボトムを引き上げて、ハボックはハアと息を吐いた。
「まったくもう……なんで幽霊に悪戯されなきゃなんないんだよっ、ふざけるなっての!今度やったら祓ってやるからなッッ!!」
 ハボックは垂れた目を思い切り吊り上げて怒鳴る。そうすれば宥めるように誰かに肩を引き寄せられ、ハボックはギリと歯を食いしばってその何者かの手をはね退けた。
「もうやだ……こんな体質っ」
 ベッドから乱暴な仕草で降りたハボックはパチンと部屋の灯りをつける。ベッドの他には窓際の小さなテーブルと棚、それにクローゼットがあるだけの寝室の中を見回して、ハボックは大きなため息をついた。
 誰にも話したことはないが、実はハボックには霊感がある。普通なら見えないものが見えるだけでなく言葉を交わしたりする事も出来るのだ。普段そこここにいる幽霊にはさほど悪いものはいなかったからハボックも大して気にはしていなかったが、元来幽霊には寂しがり屋が多く、そんな幽霊たちが数少ない視える力を持つハボックにちょっかいを出してくるのだった。
「この時期多いんだよなぁ……嫌んなる」
 ハボックはキッチンに行き冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取り出し直接口をつける。ゴクゴクと飲んでハアと大きく息を吐き出した。それからキッとなにもない空間を見据える。
「言っとくけどオレには幽霊とエッチする気はねぇの!判ったかッ!」
 そう言えば不満げな声が幾つも返ってきたがハボックはその全てを無視して手にしたボトルを冷蔵庫に戻し乱暴に扉を閉めた。
「まったく……どうせ幽霊が視えるならあの人の幽霊が見えればいいのに」
 ハボックはふと脳裏に浮かんだ面影に僅かに顔を歪めて呟く。トンとキッチンの壁に背を預けて、ハボックは浮かんだ面影をじっと見つめた。
「中佐……」
 小さく呼んで唇を噛み締める。セントラルの中央司令部に勤務していたヒューズが死んだと知らせが入った時、ハボックが受けた衝撃は言葉には表せないほどのものだった。ハボックはヒューズの事がずっと好きだったが、家庭をもつ彼には自分の想いを打ち明けられずにいた。時折イーストシティにやってくるヒューズと他愛のないおしゃべりをし、ごくたまに一緒に飲みにいければそれだけでいいと自分に言い聞かせて過ごしてきたのだ。
「逝っちゃうんだったら言っとけばよかった……」
 伝えられなかった想いはハボックの中でいつまでも消えない焔となってハボックを苦しめる。行き場をなくした想いにじりじりと身の内を焼かれて、ハボックは深いため息をついた。
「そういやもうすぐお盆とか言う奴だっけ……」
 博識なファルマンが先日の酒の席で言っていた東の国の風習。年に一度死んだ者の霊を迎えてその冥福を祈るという。胡瓜で作った馬に乗って駆け戻り、茄子で作った牛に乗ってゆっくりと帰って貰うのだとそんなことをファルマンが言っていたことを思い出して、ハボックは冷蔵庫から胡瓜を一本取り出した。ナイフと割り箸を使って器用に胡瓜の馬を作る。
「中佐……一度でいいからオレんとこ来てよ」
 ハボックはそう囁いて作った馬を窓辺に置いた。

「ああ、疲れた……」
 重い足を引きずってアパートに帰りついたハボックは最後の難所の階段をなんとか上りきって自室の扉の前に立つ。ポケットを探って鍵を取り出し扉を開けると中に入った。短い廊下を歩く間に上着を脱ぎ捨て小さなソファーに放り投げる。洗面所にたどり着く前にボトムもシャツも脱ぎ捨てて、ハボックは洗面台に手をついて鏡を覗き込んだ。
「あー、マジ疲れた……」
 疲れきった顔で見返してくる己に「お疲れさん」と呟いて、ハボックは残った下着を脱ぐと浴室へと入る。ちいさな浴槽にドボドボと湯をためる間に体と頭を洗い、ハボックはたまった湯にタプンと浸かった。
「はあ……」
 暖かい湯に包まれればドッと眠気が襲ってくる。湯に浸かってウトウトしていたハボックは、ふと聞こえた声に閉じていた目を開けた。
「え……?」
 部屋の中には誰もいないはずだ。もしかしてまた霊の類かとハボックはうんざりとため息をついた。
「まったくもう……疲れてんだから勘弁しろよな」
 ハボックはげんなりと呟いてザバリと湯から上がる。タオルで体に残る水気を拭きボトムだけつけて洗面所から出たハボックは、リビング兼ダイニングの扉を乱暴に開けた。
「────」
 何かいないかと部屋をぐるりと見回す。部屋の中には何の影も見えず、気を張って気配を伺っていたハボックはホッと息を吐いた。
「なにもいない、よな……気にし過ぎってか」
 そう呟いたものの何かが気になってハボックはもう一度部屋の中を見回す。だが、近くに嫌な気配はせず、ハボックは緩く首を振ると寝室に入っていった。
「疲れてんだな、きっと……もうさっさと寝よう」
 疲れているから妙に気が立ってありもしない気配にまで神経が逆立つのだ。のろのろとベッドに潜り込んだハボックは、そっと目を閉じ眠りの淵へと落ちていった。

「ん……」
 ゆっくりと肌を這う手の感触にハボックは眉を寄せる。シャワーを浴びたままの素肌をさわさわと撫でられて、ハボックはむずかるように腕を振って這い回る手を振り払った。振り払った手で枕を抱き込んでハボックはベッドに俯せる。そうすれば微かに笑う気配がして、何かがのし掛かってきた。
「────え?」
 その時になって漸くハボックはハッとして目を開ける。起き上がろうとベッドに手をついたハボックの体と、ベッドとの間に出来た隙間に何かが背後から手を差し込んでキュッと胸の頂を摘んだ。
「ひゃッ?!」
 いきなり乳首を摘まれて、ハボックはギョッとして悲鳴をあげる。振り返ろうとしたものの摘まれた乳首をキューッと引っ張られて、ハボックは痛みに顔を歪めた。
「い……ッ!ふざけんなッ、馬鹿ッ!」
 ハボックは怒りと羞恥に顔を赤らめて背後からのし掛かってくる相手を振り払おうとする。だが、今度は四つに這った股間をスエットの上から掴まれて、ハボックはビクリと大きく身を震わせた。
「や……ッ、やだッ!」
 布越しムギュムギュと股間を揉まれて、ハボックはビクビクと震えてシーツを掴む。込み上がる快感をこらえようと顔をシーツにこすりつけて喘いだ。
「ふざけんな……ッ、この野郎ッ!」
 ギリと歯を食いしばってハボックは呻く。肌を弄る不埒な手を払いのけようとするものの、その都度弱い場所を攻められ、ハボックは怒りに顔を歪めてシーツを握り締めた。
「幽霊とエッチする気はないって言ったろッ!いい加減に、――――ッ!」
 怒りに駆られて大声を張り上げたハボックは、いきなり下着ごとボトムを引きずり下ろされてギョッとして身を強張らせる。肌を弄っていた指が双丘の形をなぞったと思うと、狭間で息づく慎ましやかな蕾をゆるゆると撫でた。
「ヒ……ッ」
 自分でさえそうそう触れる事のない場所を探られて、ハボックは恐怖に凍りつく。ゆるゆると撫でさすっていた指がクッと蕾をこじ開けて入り込もうとするのを感じて、ハボックは目を大きく見開いた。
「や……やだ……」
 誰にも、好きだった相手にも触れられた事のない箇所に遠慮の欠片もなく潜り込んでくる指に、ハボックの瞳に涙がこみ上げてくる。恐怖と羞恥に身を震わせて、ハボックは小さく首を振った。
「嫌だ……誰か助け……中佐……ッ」
 恐怖のあまり抵抗も出来ず、ハボックは無意識に忘れられない男の名を呼ぶ。そうすれば背後からのし掛かっていた何者かがハボックの耳元で囁いた。
「なんだ?少尉」
「――――え?」
 何度も忘れようとして忘れられなかった懐かしい声にハボックは目を見開く。信じられないと思いながら恐る恐る振り向いたハボックは、肩越しに自分を見つめる常盤色を呆然と見返した。
「な、んでここに……?」
 ヒューズがここにいることが信じられず、ハボックは掠れた声で尋ねる。そうすればヒューズがニヤリと笑って答えた。
「お前が呼んだんだろ?胡瓜の馬作って帰ってこいって。結構乗り心地よかったぜ、あの馬」
 ヒューズは言ってハボックの首筋にキスを落とす。「ありがとな」とキスした首筋に舌を這わせようとするヒューズを、ハッと我に返ったハボックが振り払った。
「なにしてんスかッ!」
「なにって……ナニ?」
 怒りに目を吊り上げて怒鳴れば茶化すような答えが返ってきてハボックはヒューズを睨む。生前と変わらず面白がるような光をたたえて見つめてくる常盤色を見れば、不意に胸の中に押さえ込んでいたヒューズへの想いが溢れて涙になってポロポロと頬を伝って落ちた。
「お、おい、少尉っ?なにも泣くことはねぇだろっ」
 いきなりポロポロと泣き出したハボックに、ヒューズが慌てて言う。ハボックは涙に濡れた瞳でヒューズを睨んで言った。
「なんでこんなことすんの?ひでぇ……オレの気持ちも知らないくせに」
 ヒューズにしてみたら軽い悪戯かもしれないが、自分は本気でヒューズの事が好きだったのだ。だからこそこんな悪戯はして欲しくなかった。
「中佐の馬鹿……ッ、オレは……オレは……ッ」
 涙は後から後から溢れてくる。ハボックは泣きじゃくりながらヒューズを押しやった。
「帰れよ、馬鹿ッ!」
 逝ってしまうなら伝えればよかったと後悔した想いも、いざヒューズを目の前にすると伝えられない。零れる涙を乱暴に手の甲で拭ってヒューズを罵っていたハボックは、不意に優しく抱き締められて涙に濡れた目を瞠った。
「知ってたよ、お前の気持ち。知ってたさ」
「……え?」
 耳元で囁く声にハボックは目を見開く。ヒューズはハボックを抱き締めたまま言った。
「お前が俺を好いていてくれるのは知ってた。俺も……お前が好きだったから」
「……うそ」
「嘘なわけねぇだろ。好きだったからこうしてやってきたんじゃねぇか」
 そう言って見つめてくるヒューズをハボックは目を見開いて見つめ返す。ヒューズはハボックの頬を撫でて言った。
「好きだったんだ。でも言えなかった。言えばお前を苦しめると判ってたから……いや、違うな。逃げたんだ、俺は。言って誰かを傷つけるのも自分が傷つくのも怖くて逃げた。死ぬ間際、何より後悔したのはお前に好きだって言わなかった事だったよ」
 後悔を滲ませる声でそう告げるヒューズをハボックは信じられない思いで見つめる。小さく首を振るハボックにヒューズは苦く笑って言った。
「卑怯だって言うなら言っていいぜ。死んで(しがらみ)がなくなってからこんな風に気持ち伝えんのは卑怯だよな」
 それでも、とヒューズは言葉を続ける。
「お前が俺を呼んでくれて嬉しかったんだ。どうしても好きだって言いたくて来ちまった……好きだ、少尉――――ごめんな」
 拒まれるのを恐れるようにヒューズは囁くように告げた。ごめんなとポツリと付け足す声を聞けば、ハボックはたまらずヒューズに抱きついた。
「謝んないで、中佐っ、いつもみたいに言ってよ!“俺様が好きになってやったんだぜ。お前だって俺を好きだろう”って!」
「なんだよ、そんなに俺様キャラかよ、俺は」
 随分な言いようにヒューズが苦笑する。それでも抱きついてくる体を抱き返してヒューズは言った。
「怒んないのか?少尉」
「怒るわけねぇっしょ……どうしてオレがアンタを呼んだと思ってんのさ」
 ハボックは言って体を離すとヒューズを見つめる。
「ずっと……ずっと好きだったんス。アンタには大事な人達がいたからこんな気持ちでいちゃダメだって思ったけど、やめらんなかった。アンタが逝っちまって……言えばよかったって胸が苦しくて……ッ」
「少尉」
 顔を歪めてそう告げるハボックの、熱い想いのこもった言葉にヒューズはたまらずハボックの体を掻き抱く。ギュッと抱き締めハボックの耳元に囁いた。
「好きだ……お前が好きだよ、ハボック」
「オレも……っ、オレも中佐が好きっス!」
 伝えられずにいた想いを漸く伝えあって二人は互いを見つめる。どちらともなくゆっくりと近づいた唇が躊躇うように触れたと思うと、次の瞬間深く合わさった。
「ん……んふ……」
 忍び入ってきた舌に口内を弄られて、ハボックは甘く鼻を鳴らす。トサリとベッドに押し倒されて、ハボックはヒューズを見上げた。
「中佐……」
「欲しい……いいだろう?」
「さっきはいきなり指突っ込もうとしたくせに」
 尋ねられ込み上がる恥ずかしさを誤魔化すように、ハボックは言ってヒューズを軽く睨む。そうすれば、ヒューズが決まり悪そうに答えた。
「あー、あれは寝ぼけたお前があんまり可愛かったから」
 つい、と言うヒューズにハボックはプッと吹き出す。クスクスと笑って、ハボックは腕を伸ばした。
「いいに決まってるっしょ――――オレをアンタのものにして、中佐」
「――――ああ。途中でやっぱりやめたは聞かねぇからな」
「アンタこそ、やっぱり要らないとか言わないで下さいね」
「言うかよ、そんな事」
 ヒューズはニヤリと笑ってハボックの頬を撫でる。撫でた手を下へと滑らせて、胸の頂をキュッと摘んだ。
「アッ」
 ビクリと震えてハボックが声を上げる。胸に顔を寄せたヒューズがもう一方の乳首を口に含んだ。
「やっ……やだっ」
 チュウと吸われ舌先でチロチロと舐められてハボックがビクビクと体を震わせる。込み上がるのが痛みなのか何なのか判らず、ハボックは小さく首を振ってヒューズの頭を押しやった。
「それ、や……ッ」
「よくねぇか?」
「よ、よく判んねぇっス」
 こんな風に胸を弄られた事などない。痛いのか感じているのか判らないと呟くハボックにヒューズはクスリと笑った。
「胸はこれから開発するってことだな……、――――んじゃこっちはどうよ」
「ヒャッ!」
 言うなり楔を握られてハボックが大きく体を震わせる。そんなハボックの様子を見て、ヒューズはハボックの脚を押し上げて股間に顔を埋めた。
「やっ、やだァッ!」
 いきなり楔を咥えられて、ハボックはビックリして悲鳴を上げる。逃れようともがけばより深く咥えられ喉奥で締め付けられて、ハボックは喉を仰け反らせて喘いだ。
「あッ……アアッ!やあ…ん…ッ」
 ビクビクと震えながらハボックは甘ったるい声を上げる。普段のハボックからは想像もつかない甘い声にヒューズがクスクスと笑った。
「可愛いぜ、ハボック」
「――――馬鹿ッ」
 からかうようなヒューズの言葉にハボックはカアアッと顔を赤らめて、乱暴にヒューズの髪を引っ張る。容赦なく引っ張られ、痛いと顔を歪めたヒューズがムッと唇を突き出して言った。
「そういうことする奴にはこうだ」
 言うなりヒューズはじゅぶりと深く楔をくわえ込む。ジュブジュブと激しく唇で擦られて、ハボックは高い嬌声を上げた。
「ヒャアアッ!ンアアッ!」
 瞬く間に追い上げられてハボックはビクビクと震える。
「や……ッ、出ちゃうッ!やめ……ッ」
「いいぜ、イけよ」
「ッッ!」
 低く囁く声にハボックは目を見開く。次の瞬間キツく吸い上げられて、ハボックは堪らず熱を吐き出した。
「アアアアアッッ!」
 大きく体を震わせてハボックは甘い悲鳴を上げる。熱を吐き出してがっくりとベッドに沈み込むハボックの脚をヒューズはグイと押し開き胸につくほど押し上げた。
「あ……?」
 射精の快感に霞む視線でハボックはぼんやりとヒューズを見る。ヒューズは双丘に顔を寄せると、奥まった蕾に舌を這わせるようにして口に吐き出された蜜を流し込んだ。
「ヒッ?」
 いきなり蕾をぬめぬめと舐められて、ハボックはギクリと身を強ばらせる。逃れようともがく体を強く押さえ込まれて、ハボックは羞恥に泣き声を上げた。
「やだッ、恥ずかし――――」
「ハボック」
 恥ずかしいと訴えようとすれば低く呼ぶ声にハボックはピクリと震える。
「欲しい――――寄越せよ」
 低く囁いて見つめてくる瞳にハボックは息を飲む。拒む事が出来ずに見つめ返せば、クッと潜り込んでくる指にハボックは震える唇を開いて小さく首を振った。
「こ、こわい……」
「怖かねぇよ、俺がお前を傷つけると思うのか?」
 そう言われてハボックは目を見開く。ヒューズをじっと見つめていたが、何度か浅い呼吸を繰り返して体の力を抜いた。
「イイコだ」
 ニッと笑ってヒューズは言うと、押し込んだ指をグチグチと動かす。蕾を掻き回す指の動きに、ハボックは目を見開いてシーツを握り締めた。ハッハッと浅い息遣いとクチクチと粘着質な水音が部屋に響く。ヒューズは掻き回す指を増やして蕾を解すと、埋めていた指を引き抜いた。
「挿れるぜ」
 低く囁く声にハボックは目を見開いてヒューズを見上げる。ヒューズは長い脚を抱え直すと取り出した己を狭間に押し当てた。
「あ」
 次の瞬間グッと押し入ってくる楔にハボックは空色の瞳を見開く。ズブズブと一気に貫かれて、ハボックは背を仰け反らせて悲鳴を上げた。
「ヒアアアアッ!」
 逃げようとずり上がる体を引き戻して、ヒューズはガツガツと突き入れる。狭い肉筒を押し開かれ最奥を抉られて、ハボックはガクガクと震えた。
「ヒィッ!ヒィィッ!」
「ハボックッ!ジャンッ!」
 容赦ない突き入れにハボックは弱々しくもがく。乱暴に押し開かれる痛みにヒューズを押し返そうとしたハボックは、次の瞬間脳天を突き抜けた感覚に大きく体を跳ね上げた。
「ひゃうッ?!」
 前立腺をガツンと突き上げられて、ハボックは目を大きく見開く。突き抜けた感覚が快感だと気づく間もなく激しく攻め立てられて、ハボックはガクガクと震えて切れ切れの嬌声を上げた。
「ここがイイのか?すげぇ絡みついてくるぜ」
「やっ……やあんッ!」
 信じられない程感じてしまう体に、ハボックは羞恥に震えながらふるふると首を振る。次の瞬間ガツンと突かれて、高々とそそり立っていたハボックの楔からびゅるりと熱が迸った。
「ヒャアアアンッ!」
 甘い嬌声を上げる唇をヒューズは噛みつくように塞ぐ。それと同時にガツガツと突き入れると、キュウと締め付けてくる最奥に熱を放った。
「――――ッ?ッッ!!」
 体の奥底を焼く熱にハボックは目を見開く。ギュッと抱き締めてくるヒューズをしがみつくように抱き返せば、ヒューズが低く囁いた。
「好きだ、ジャン……お前ん中に俺を刻み込ませてくれ」
「……好き……忘れないように俺ん中にいっぱい頂戴」
 囁き返せば噛みつくように口づけられる。注ぎ込んだ熱を掻き回し染み込ませるようにガツガツと突き上げてくるヒューズを、ハボックは少しでも奥へ迎え入れようと自ら腰を突き出した。
「好きっ、中佐、好きッ!」
「好きだ、ジャンッ!俺を忘れないでくれッ!」
 今この時だけときつく抱き締めあって、二人は何度も何度も求め合った。

そうして。
「……なんで?もうお盆は過ぎたっしょ?」
 夜が明けて、独りきりになったとため息を零したハボックは隣に寝ているヒューズを見て目を丸くする。そうすればヒューズがボリボリと頭を掻いて言った。
「あー、帰ろうと思ったんだけどよ……お前、牛作ってなかったろ」
「――――あ」
 言われてみれば確かに胡瓜の馬は作ったが、茄子の牛は作らなかった。
「で、でもっ、別に牛に乗らないと帰れない訳じゃねぇっしょ?!」
「どうだかなぁ……もう夜が明けちまったし――――無理じゃねぇ?」
「ええっ?!」
 小首を傾げて言うヒューズに、ハボックが驚いて声を上げる。そんなハボックにヒューズはニヤリと笑って言った。
「まあ、帰れないものは仕方ねぇ。世話になるぜ、少尉」
「……そんな簡単に言っていいんスか?」
「いいじゃねぇか、一晩じゃ教えらんなかった事、色々教えてやるから」
「――――別にそれはいらないっス」
 眉を寄せて言うハボックをヒューズは笑って抱き締める。
「一緒にいられて俺は嬉しいぜ?――――お前はそうじゃないのか?」
 言って見つめてくる瞳に。
「オレも……オレも嬉しいっス」
 答えれば降ってくる唇をハボックは目を閉じて受け止めた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになります、嬉しいですーvv

ええと、今日まで、ですよね?お盆……。ヒュハボでお盆ネタを貰っていたのですが、7月のお盆には間に合わず、そして今回も間に合わないかと思っちゃいましたー。一度殆ど書き上げていたのですが、全部書き直したのでメチャクチャ時間かかりましたよ(苦笑)絶対一発で書いた方が早い……書きなおすと単純に書き直した時間以上に時間がかかるんですよねぇ。ともあれ!ゴースト・ヒューズ、ハボックんとこに居座るようです(笑)少しでもお楽しみ頂ければ嬉しいですー。

でもって、お盆ネタにかまけていたら今日の更新分がさっぱりだって言うね(爆)頑張ってみる……けど、書けなかったらごめんなさいー(苦)

以下、拍手お返事です。

なおさま

平行世界、えへへ、ジャン可愛いですか?嬉しいですーvじいじマスタング!(笑)ジジイになっても枯れませんね(爆)ぷかぷかハボックとタッパの氷、書きたいなと思いつつ(苦笑)セレスタ、ふふふ、※マークつきですよ!(笑)ロイ、頑張って走ってます(笑)inしてないって(笑)間に合うか、ロイ!(おい)風、うっふっふvワクワクしますか?嬉しいですーvなにするのか……乞うご期待!(笑)うお、耳の病気で目眩ですか?目眩、辛いですよね(苦)早く良くなりますように!

おぎわらはぎりさま

改めましてネタ投下ありがとうございます!何とか、ギリギリ、滑り込みましたーッ(爆)お楽しみ頂ければいいのですが…(汗)ひまわり見ると妄想膨らみまくりますよねッ!うふふ、脳味噌腐食具合、同じくらいで嬉しいっスvv

わー、平行世界だああ  の方

おお、ありがとうございます!私自身四人の微妙な関係が楽しくて書いているので、それが大好きと言って頂けて嬉しいですvv頂いたコメントでジャンのジャンプが目の前にキラキラと浮かびました(笑)こちらこそ嬉しいコメントをありがとうございましたvv
2014年08月16日(土)   No.409 (カプ色あり)

八月九日 in 平行世界
「ジャン!こっちこっち!」
 待ち合わせの駅前広場でキョロキョロと見回していれば、聞こえた声に振り向いたジャンは時計台の下で手を振る姿を見つけて笑みを浮かべる。小走りに駆け寄って、ジャンはハボックに言った。
「ごめん、待った?」
「いや、オレも今来たとこ」
「ホント?よかった」
 ハボックの答えにジャンがホッとしたように笑う。その笑みが可愛いなぁと思いながらハボックは言った。
「ちゃんとあのオヤジに見つからないように出てこられたか?」
「オヤジって」
 マスタングのことをそんな風に言うハボックにジャンが眉を寄せる。それでも「大丈夫」と頷くジャンにハボックが「よし」と拳を握り締めた。
「マスタングが来るとゆっくり楽しめないからな」
「どうせならロイも呼んで四人で過ごしてもよかったのに」
 ハボックの様子にジャンが苦笑して言う。それを聞いてハボックはムッと唇を突き出した。
「なんだよ、ジャンはオレと二人じゃ気に入らないってのか?」
「そんなことないよ。ハボと二人で遊びに行くの、楽しみにしてたんだから」
 そう言ってジャンはハボックの腕にしがみつく。ふわふわと靡く金髪にハボックはキスを落として言った。
「そうか?オレもだよ。じゃあ、出かけようか」
「うん!」
 にっこりと笑うジャンの手を取ってハボックは歩き出す。繋いだ手を勢いよく振れば、ジャンがクスクスと笑った。

 平行世界に住むもう一人の自分。ひょんなことからその存在を知って、ごちゃごちゃと色々あって、そうして今はこうやって時折行き来しては一緒に過ごすようになっている。もう一人の自分が同じようにロイと巡り会って愛し合っている事を知った時、ハボックは純粋にとても嬉しかった。だが。
「ジャンさあ、もう少しアイツに厳しくしろよ。ジャンが優しいからつけあがるんだぜ?あのクソオヤジ、いっつもジャンに好き勝手しやがって」
 愛し合っているとはいえジャンに対してわがままが過ぎるマスタングにハボックが文句を言う。だが、言えば返る答えにハボックは益々顔をしかめた。
「大佐は優しいよ」
「はあ?あのオヤジのどこが優しいんだよ!この間だって────」
「ハボ」
 言い募るハボックの言葉をジャンが遮る。静かに見つめてくる空色に、ハボックは俄に後悔が沸き上がって言った。
「ごめん」
「ううん。ハボがオレのこと心配してくれてるのはよく判ってるから」
 顔を赤らめて謝罪の言葉を口にするハボックにジャンがにっこりと笑う。
「でもさぁ、ハボもロイもオレのこと甘やかしすぎ!」
「仕方ないだろう。ジャンはオレとロイの子供みたいなものなんだから」
「なにそれ」
 ハボックの言葉にジャンがプッと吹き出す。クスクスと笑ったジャンがハボックを見て言った。
「オレ、ハボと会えてよかった。ハボとロイと一緒にいる時間がすげぇ好き」
「ジャン」
 そんな風に言って笑うジャンにハボックは胸がキュッと締め付けられる。繋いでいた手を引き寄せ、ハボックはジャンをギュッと抱き締めた。
「ハボ、大好き」
 抱き締める腕に身を預けてジャンが言う。込み上がる愛しさに「オレも」と囁いて、ハボックは己と瓜二つの顔を見つめた。
「ジャン」
 低く囁いてハボックはジャンに唇を寄せる。唇が相手のそれに触れようとした正にその瞬間、襲いかかってきた焔にハボックはジャンを抱き締めたまま身を伏せた。
「貴様ッ、私のジャンになにをするッ!」
「マスタング!」
 叫ぶ声に振り向けば発火布をはめたマスタングが目を吊り上げて立っている。ドカドカと靴音も荒く近づいてくるマスタングをハボックは立ち上がって睨みつけた。
「この野郎ッ!オレ達を殺す気かッ?!」
「殺すのはお前だけだッ!ちゃんとお前だけ燃やすように放ったわッ!」
「嘘つけッ!オレが庇わなかったらジャンだって燃えてたぞッ!」
「私がそんなミスをするかッ!」
 ギャアギャアと言い合う二人をジャンがオロオロとしながら見る。グイと腕を引っ張られて振り向けばロイの黒い瞳がジャンを見上げていた。
「ロイ」
「マスタングが向こうから来てしまってな。止めたんだけど聞かなくって。ごめん、折角二人で出かけてたのに」
 そう言うロイの言葉にジャンは空色の瞳を見開く。言い争うマスタングとハボックを見、ロイを見てジャンは言った。
「いいっスよ。四人で出かけましょう」
「でも」
「ハボが言うにはね、オレはハボとロイの子供なんだって。それならオレ、パパとママと一緒に出かけたいもの」
「なんだそれは」
 ハボックの奴、なにを言ってるんだとロイが呆れた顔をする。
「大佐を仲間外れにすると拗ねるから、四人一緒にでかけましょう。ね?ロイ」
「……仕方ないな。お前がそうしたいならそうしよう」
「やった!」
 甘えるように小首を傾げて言うジャンに、ロイがやれやれと苦笑して言った。ロイが言うのを聞いてジャンがパッと顔を輝かせてロイに抱きつく。その背をロイが優しく撫でれば、ギャアギャアと言い合う声がやんでマスタングとハボックがドタバタと駆け寄ってきた。
「私のジャンに気安く触れるなッ!」
「ずるいぞ、ロイ!ジャンを独り占めすんなよ!」
「うるさいッ!あっちいってろッ!」
 わめく二人にロイがキッと目を吊り上げて返す。騒ぐ声が三人になり益々大音量になったのを聞いて、目を丸くしたジャンがクスリと笑った。
「喧嘩してんならオレ一人で行くっスよ!」
「「「えっ?!」」」
 言えば途端に言い合いがピタリとやむ。その呼吸の素晴らしさにジャンはこみ上げた笑いが止まらなかった。
「まったくもう!はい、パパ、ママ」
 ジャンは言って右手でハボックの左手を、左手でロイの右手を握った。
「さ、行くっスよ」
「────ああ、そうだな」
「行こうか、ジャン」
 キュッと手を握って見つめてくる空色にハボックもロイも笑みを浮かべて頷く。一人取り残されたマスタングが目を吊り上げて叫んだ。
「ジャン!私はっ?」
「大佐は帰ったら一杯手ぇ繋いであげます」
「そんなッ」
 肩越し振り向いて言うジャンにマスタングが悲鳴を上げる。
「煩いっスよ」
「文句を言うなら一緒に連れて行かんからな」
 だが、二人にそう言われて、マスタングは渋々口を噤んだ。
「ジャン、パパとママが持ち上げてやろうか」
「えーっ、ロイママには無理じゃねぇ?」
「失礼な。私だってそれなりに力はある。それに」
 ジャンの言葉に反論したロイがニッと笑う。
「パパとママに手を繋いでもらったら“ジャーンプ!”ってするのがお約束だろう?」
「そうそう。ジャン、ほら」
「「ジャーンプ!!」」
 ハボックとロイに両手を引っ張り上げられて。
「パパもママも大好き!」
 フワリと飛んだジャンの声が夏の空に響いた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気貰ってます、嬉しいですvv

なつかしや〜の「平行世界」でございます。本当は昨日「ハボハボの日」でハボとジャンでラブラブを書くつもりだったのですが、例によってどうも方向が違っちゃったのと間に合わなかったので(おい)「ハボックの日」にスライドしました。どこが「ハボックの日」なんだと言われそうですが、ジャン総受けってことで。え?意味判んない?(笑)

それから今日の「FLARE BLUE」はお休みですー。明日の予定が今日にずれこんできたので書く時間なくなっちゃった(苦)次回は頑張りますーっ

以下、拍手お返事です。

なおさま

風、へへへ、やっぱりハボに花束と言ったら向日葵ですよね!うわ、講師マース・ヒューズ!なんか色んな意味で大変な事になりそうです(笑)暗獣、そうそう、すぐ水が温くなるんですよねぇ!氷って、相当な量いれないとじゃ?大きな氷の塊と一緒にぷかぷか浮かんでるハボックが浮かんでしまいました(笑)

おぎわらはぎりさま

ハボロイ記念日、逆だとプレゼントを突っ込まれ……げふげふ(爆)でも書いていて思ったのですが、ロイハボだったらあの後のエッチも書く(というよりそっちがメイン(爆)だろうけど、ハボロイだとあそこどまりっていうのは何故なんだろう(苦笑)も、もうすぐお盆ですね……来週が勝負ですっ(苦)鬼灯、懐かしいですね!ロイハボだったらロイが「お前の鬼灯も揉んでやろうな」ってハボの袋をもみもみ(爆)暑くて脳味噌腐ってますが、お互い頑張りましょうねv
2014年08月09日(土)   No.408 (カプなし)

記念日
ハボロイ風味

「ふぅ……」
 外から吹き込む風がカーテンを揺らす窓辺の椅子に腰掛けたロイは、読んでいた本から目を上げてため息をつく。夏の午後、真っ青に晴れた空を見上げれば今ここにはいない相手の顔が浮かんで、ロイは慌てて視線を本に戻した。
 八月六日の今日、語呂合わせで二人の記念日だと騒ぐハボックと休みを取って一緒に過ごす約束をしていた。記念日だなんて馬鹿馬鹿しいと言いつつ、それでも仕事をやりくりして休みを取ってみれば当のハボックが急な仕事で出勤しなくてはならなくなってしまったのだった。
『すんません、一緒に休みとるはずだったのに……。でも、ソッコー終わらせて帰ってくるんで待っててくださいね!』
 そんな風に言って飛び出していったハボックの声が蘇ってロイは緩く頭を振る。青い空に背を向けてロイはボソリと呟いた。
「記念日だなんて、馬鹿じゃないのか?そもそもこんな関係、いつまで続くかだって判らないじゃないか」
 気がつけばいつの間にか好きになっていた。それでもハボックの好みは可愛いらしい女の子だとよく知っていたから、絶対に叶うはずのない恋だと思っていたのに。
『好きですッ、オレとつきあって下さいッ!』
 真っ直ぐに気持ちをぶつけられ、とても誤魔化す事など出来なかった。信じられない気持ちで差し出された手を取って、好きで好きで堪らないと思うと同時にこの関係がいつまでも続くとは思えなくて。
「記念日だなんて今年は騒いでも、来年になったらもう私の事なんてどうでもよくなってるかもしれないんだから」
 ハボックを失うのを恐れるあまり、ハボックがいなくなったときの事をロイは今から考える。もう要らないと言われるその時を思って、ツキンと痛む胸をロイがそっと押さえた時。
 ガチャガチャと鍵を開ける音に続いて乱暴に扉が開く。バタバタと階段を駆け上がる足音が部屋の前で止まって、ハボックが飛び込んできた。
「ただいまッ!お待たせしました、大佐!」
「────おかえり」
 ハアハアと息を弾ませるハボックにロイは目を丸くして答える。大きく息を吐いて呼吸を整えると、ハボックはロイに近づいてきた。
「午前中で終わらせるつもりだったんスけど、すんません、遅くなっちゃって」
「構わないさ。別に記念日でもなんでもないんだから」
「あー、もうっ!すぐそう言うこと言う。拗ねてんスか?ロイってば」
 二人きりの時だけ使う呼び方で顔を覗き込んでくるハボックに、ロイは目尻を染めてハボックを押しやる。「別に拗ねてなんかない」とプイと顔を背けるロイにクスリと笑って、ハボックは懐から小さな包みを取り出した。
「はい、これ。二人の記念日に」
「え?」
 包みを差し出されて、ロイは不思議そうにハボックを見上げる。「ほらほら」と包みを振られてロイは仕方なしに受け取った。
「開けて開けて」
 ニコニコと笑って促すハボックに、ロイは包みを開ける。そうすれば中から意匠を凝らした万年筆が出てきた。
「……凄い、どうしたんだ?これ」
 その素晴らしさに目を瞠ってロイが言う。ハボックは自慢げに笑って言った。
「いいでしょ、それ。一本一本職人が手作りするんスよ。すっげぇ人気で出来るまで一年待ち」
「一年?」
「そ。去年の今頃知って、一年なら丁度いいなって」
 そんな風に言うハボックをロイは驚いて見つめる。
「丁度いいって……私たちが今年もこうしているかなんて、そんな保証どこにもないじゃないか。もしかしたら他の誰かと────」
「そんなことあるわけねぇっしょ」
 言いかけたロイの言葉をハボックはきっぱりと否定した。
「今年も来年もそのまた来年も、ずっとずっとオレは大佐が好きっスもん。だから毎年一緒に記念日過ごしましょう」
 ね?と笑う空色をロイは目を見開いて見つめる。ギュッと万年筆を握り締めて、ロイはプイと顔を背けた。
「馬鹿じゃないのかっ、記念日なんてっ」
「馬鹿でもいいっスよ。だって、オレの大好きな大佐との記念日、素敵っしょ?」
 ハボックは言ってロイに手を伸ばす。背けたロイの顎を掬ってその顔を見つめた。
「好きっスよ、大佐。ずっとずっと大好き。なにがあってもオレは大佐の側にいますから」
 そんな風に言って笑うハボックにロイは胸が締め付けられる。
「来年の記念日にはなにを用意しようかなぁ。ねぇ、なにがいいっスか?ロイ」
「知るかっ、自分で考えろ」
「そっスね。じゃあ一年じっくり考えます。でも、その前に」
 と、ハボックはロイを真っ直ぐに見つめる。
「愛してます、これからもずっと一緒にいてくださいね」
「────馬鹿っ」
 本当はそう言いたいのは自分の方なのに、素直に言葉に出来なくて。
「ふふ……ロイの“馬鹿”は“大好き”って意味っスよね」
「ッ、馬鹿ッ」
「はいはい、判ってますって」
 くしゃくしゃに顔をしかめて「馬鹿」と繰り返す唇に優しく降ってくる口づけを受け止めて、ロイはハボックをギュッと抱き締めた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、本当に励みになります、嬉しいですーv

ハボロイの日ですね!なんとか振り絞って書いてみましたが、なにやらよく判んない話ですみません(汗)ハボが好きだけど素直に言えないロイの話……のつもり(苦笑)昔よく書いてた気がしなくもない、所謂王道?(笑)

以下、拍手お返事です。

阿修羅さま

毎日本当に暑いですねぇ、頭煮溶けちゃいますよ(苦)年配の方には本当にしんどいと思います。お母様も阿修羅さまもお体大切になさってくださいね。ニアピン、それでは受けさせて頂きますー。なんかもうお待たせしっぱなしでホントごめんなさい(汗)早くお届け出来るよう頑張ります!
2014年08月06日(水)   No.407 (ハボロイ)

新・暗獣53
「まったく……私の焔だってこれほど暑くないと思うぞ……」
 炎天下を歩いていたロイは汗を拭きながら呟く。夏の空は真っ青に晴れて雲一つなく、地面からの照り返しも相まって猛烈に暑かった。
「やれやれ……やっと着いた」
 我が家の門が見えてきてロイはホッとする。最後の数十メートルを何とか歩ききって、ロイは鍵を開けると家の中に飛び込んだ。
「ふう……幾らかマシだな」
 家の中も暑くない訳ではないが、陽射しがないだけで全然違う。やれやれと息を吐き出して、ロイは中に入っていきながら声をかけた。
「ハボック、ただいま!」
 呼んでみたが返事がない。二階かなと思いつつリビングの扉を開ければ、ハボックが床にべしゃあと伸びていた。
「ろーい……」
 ハボックは視線だけ上げてロイを見る。俯せに寝ていたのをころんと転がって仰向けに大の字になるのを見て、ロイはクスリと笑った。
「少しは冷たいか?」
「……ろい」
 不満そうに答えてころんころんとハボックは床を転がる。家の中で少しでも涼しい場所を探しているらしいハボックの様子に笑ってロイは言った。
「いいものを貰ってきたぞ」
 ロイは言ってソファーに座ると持っていた紙袋の中身をあける。なんだろうと床を這って近づいてきたハボックがロイの脚に掴まるようにして立ち上がるとロイの手元を覗き込んだ。
「ろーい?」
「本屋で買い物をしたらくじ引き券を貰ってな。引いたらこれが当たった」
 そう言いながらロイは手にしたカラフルなビニール製の物を広げる。なに?と首を傾げるハボックにロイが言った。
「子供用のプールだよ。膨らませて水を入れて遊ぼう。涼しいぞ」
「ろーい!」
 ロイの言葉にハボックが目を輝かせる。早く早くと急かされて、ロイは吹き込み口に口を当ててフーッと息を吹き込んだ。
「ろいっ」
 ほんの少しプールが膨らんだのを見てハボックが目を丸くする。フーッフーッとロイが息を吹き込む度少しずつプールが膨らんでいくのを見て、ハボックが嬉しそうにむにむにとプールを指で揉んだ。
「こらこら押すな」
 折角入れた空気が押し出されるようでロイはハボックの手をポンポンと叩く。ハボックが押すのをやめるのを見て、ロイは再び吹き込み口に口をつけた。フーッフーッとロイが息を吹き込む音が部屋の中に響く。ハボックはリビングの中をうろうろと歩き回っていたが、待ちきれなくなってロイの腕を引っ張った。
「ろーいっ」
「待て待て!大変なんだ、膨らませるのは」
「ろーい〜」
「ちゃんと空気を入れないと水が入らないから」
 もう十分とプールを引っ張るハボックにロイが言う。むぅと頬を膨らませながらも引っ張るのをやめて、ハボックはロイの隣に腰掛けて足をブラブラと揺すった。それを見てロイはもう一度フーッフーッと息を吹き込み始める。汗をかきかき頑張って、漸くパンパンにプールが膨らむとロイは大きなため息をついた。
「出来たぞ」
「ろーい〜っ」
 見事に膨らんだプールを見てハボックがキラキラと目を輝かせる。ちょっぴり疲れた様子のロイにハボックがギューッと抱きついた。
「ろいっ」
「喜ぶのはまだ早いぞ」
 ロイはありがとうと抱きつくハボックの背を叩いて言う。紙袋の中から水着を取り出してハボックに見せた。
「まずはこれに着替えだ」
「ろいっ」
 スチャッと気をつけしてハボックが答える。いそいそと服を脱ぎ捨てロイが持つ水着に脚を突っ込んだ。
「ろーい〜」
 水色に黄色のラインが入った水着を見下ろし、ハボックが嬉しそうに笑う。プールを持ち上げたロイがリビングから出て行こうとするのを追い越して、ハボックは庭に出る扉から飛び出した。
「ろーい!」
「さて、どこに置くかな」
 あまりに直射日光が当たるところではよくないだろう。ロイは木の枝が張り出した木陰にプールを置くと、庭の片隅にある蛇口にホースを繋ぎ、ズルズルと引っ張ってきた。
「ハボック、水を出してくれるか?」
「ろいっ」
 言われてハボックは走って庭を横切り水道を捻る。ホースの中を水が走り抜け、ロイが持つ先から水が迸った。
「ろーいッ」
 ホースの中の水を追うようにしてハボックが戻ってくる。最初の温い水を外に捨てて、ロイは冷たくなった水をプールの中に注いだ。ドボドボとたまっていく水を、ハボックはプールの縁に掴まって覗き込む。たまるのを待ちきれないように、ハボックは手を出してプールの水を掻き回した。
「ハボック、水に入る前は準備体操だぞ」
「ろい?」
 そう言うロイをハボックがキョトンとして見る。ロイはホースの先をプールに突っ込んでハボックに向き直った。
「気をつけ!足を肩幅に開いて」
「ろいっ」
「腕を大きく回してー」
 ロイが体の前で大きく手を回すのを見てハボックが真似をする。屈伸しアキレス腱を伸ばして、手首をブラブラし首を回してハボックは一生懸命準備を整えた。
「おっと、溢れそうだ。ついでにその辺に水を撒くか」
 ロイが慌ててホースを取り上げ、暑い陽射しにグッタリとなった庭木に水を撒き始めれば、ハボックがロイのシャツを引っ張った。
「ろーい〜っ」
「ああ、済んだか?じゃあ入っていいぞ」
「ろーいっ」
 漸くお許しが出て、ハボックはプールの縁に手をかける。そっと跨いで恐る恐る足先を水につけて、その冷たさにヒャッとつけた足を上げた。
「はは、冷たいか?」
「ろいッ」
 うんうんと頷いてハボックは今度は一気に足を入れる。冷たい水の中に立ってふわーと満足そうに笑うハボックに、ロイは水を掬ってかけた。
「ろいっ」
 キャッキャッと笑ってハボックが身を捩る。そーっと腰まで浸かって、それから水にパシャンと身を投げ出した。
「ろーいッ」
 バシャバシャと手足を動かしてハボックが泳ぐ。楽しそうに水と戯れるハボックをロイが羨ましそうに見た。
「気持ちよさそうだな」
「ろーい!」
 一緒に入ろうと誘うハボックにロイが首を傾げる。
「そうだな、足だけでも浸けるか」
 冷たい水の誘惑に負けて、ロイはホースの水を止めてくると靴と靴下を脱いだ。
「うおッ、結構冷たいな」
「ろーい!」
 プールにズボンをまくった足を浸けてロイが言う。縁に腰掛けてロイはふぅと息を吐き出した。
「やっぱり夏はプールが一番だな」
「ろーい〜」
 ロイの言葉にハボックが頷く。吹き抜ける風に目を閉じたロイは、いきなり足を引っ張られグラリとバランスを崩した。
「うわッ!わわッ!」
 ビニールのプールの縁に乗せていた尻がズルリと滑って、ロイはバシャンとプールの中に尻餅を着いてしまう。服のままプールに浸かってしまって呆然とするロイを見て、ハボックがキャッキャッと笑った。
「ハボック!」
「ろーい〜」
 ジロリと睨むロイをものともせず、ハボックはロイに水をかけてくる。遊ぼうと誘う空色に、ロイはやれやれと苦笑した。
「そうだな、一緒に遊ぶか」
「ろいっ」
 言えばハボックが嬉しそうに笑う。
「待ってろ、とりあえず服は脱がんと」
 このままでは動きにくいとロイはパンツ一つになる。
 木漏れ日が降り注ぐ庭の中、時折ホースで冷たい水を足しては、二人はプールで楽しい夏の午後を過ごした。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになってます、嬉しいですvv

日記、すっかりサボりまくりですみません(汗)なんか最近暑いせいかさっぱりネタが浮かばないと言うか「暑い」という言葉しか浮かびませんよ(苦笑)もうすぐハボロイの日だけど、ネタ全然出てこないんですけどッ!なにかありませんかね?(コラ)

と言う訳で、「暗獣」も暑い夏の日のお話です。はぼっくと一緒に水遊びしたらきっと暑さも吹っ飛ぶだろうなぁ(笑)

それから!61万打、いつもながらにありがとうございます!最近はすっかりまったりペースになりつつありますが、それでもこうして続けていける元気を頂けて本当に感謝しています。これからもハボックラブを叫びたい!どうぞどうぞご一緒に楽しんで頂きたく、今後もハボック共々よろしくお願い致しますvv

以下、拍手お返事です。

なおさま

暗獣、念願かなってやっとダッコ出来ました(笑)本当はお土産にぬいぐるみを買うシーンとかも書きたいなーと思わないではなかったのですが、結局入れきれずに宝物は齧られた半券とシールだけになりました(苦笑)「アサシンクリード」かぁ。ファミ通とかで「カッコいいゲームだなぁ」と思いつつとにかく鈍い私にはハードル高くて手が出せないってヤツですよ!(笑)いいなぁ、こういうゲーム出来るなおさま、是非背後に貼りついてゲームするの見たいです(爆)風、遊びの恋はお手の物だけど本気の恋はからっきし、確かにこのロイはそんな感じかも!(笑)前向きというか、男の自分ではロイとデートなんて夢のまた夢と思っていたでしょうから(苦笑)花束、いやあ、私もどんな花束なんだろうって気になって(爆)セレスタ、傷に塩すり込んだら余計辛くなるだけなんですがねぇ(苦笑)でも、ブラッドレイ右側は絶対嫌!(爆)あはは、※マーク、私もリンクを貼りながらそういや付かなかったな〜と思っていました(笑)ふふふ、今後も安堵出来るか(コラ)守る君!そんな名前の防犯ブザーあるんですね。なんと安易なネーミング(笑)守る君ぶら下げたブラッドレイ……いやだなぁ(爆)

ハボロイ待ってます!  の方

うわあ、ハボロイサボりまくっててすみません!そして待っていると言って下さってありがとうございますvv漸く何とかまたハボロイ連載再開致しました〜!正直またサボりそうにもなったのですが、「待っている」という言葉を思い出して頑張ってます(苦笑)これからもまったり頑張りますので、どうぞ今後も時々「しっかり書け」とお尻を叩いてやってくださりつつお付き合いお願い出来たら嬉しいですv

阿修羅さま

セレスタ、ありがとうございます、そんな風に感じて頂けて嬉しいですv暗獣、ハボ、可愛いですか?嬉しい〜v思わずムギューしたくなるハボック目指して書いてます(笑)やっぱり山羊はパンフやら食べちゃうんですね!お母さま、ご苦労も多いですね。どうするのが一番いいのか、きっと正解というのはないのでしょうし、色々と難しいですね…。どうぞくれぐれもお体には気をつけて下さいね。ニアピン…じゃないキリバン、いつもチャレンジありがとうございます(笑)ええと、3回重ねのニアピン賞、いいんですけど、リクばかり溜まって全然お答え出来てないのが心苦しいというか……。い、いいんですか……(汗)

610000打おめでとうございます♪  の方

ありがとうございます!一言お祝い言って頂けるのが密かな喜びになっていたりします(笑)これからも少しずつ積み重ねていきますので、お付き合いよろしくお願い致しますvv
2014年08月04日(月)   No.406 (カプなし)

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