babble babble


2012年07月の日記

2012年07月29日(日)
髭騎士8
2012年07月26日(木)
11.掌
2012年07月23日(月)
髭騎士7
2012年07月21日(土)
10.肩
2012年07月17日(火)
金緑石11
2012年07月14日(土)
09. 鎖骨
2012年07月12日(木)
菫青石の恋 〜 second season 〜 遠い記憶
2012年07月10日(火)
08.首筋
2012年07月09日(月)
07. 顎のライン
2012年07月07日(土)
恋猫27
2012年07月06日(金)
名前

髭騎士8
ヒュハボ風味

 司令室を飛び出したハボックは階段を駆け上がり屋上へと出る。広い屋上をゆっくりと横切り歩み寄った手摺りに凭れかかるとハアと深いため息を零した。
「サイテー」
 八つ当たりなのはよく判っている。ヒューズとの行為は同意の上で強制されての事ではないのだ。勿論声を聞かれるのが恥ずかしいからと訴えるハボックを面白がったヒューズがわざと声を上げさせたりする事はあったが、それでも結局それを赦しているのはハボック自身だ。
「でも、あんな事……ッ」
 声を聞かれただけでも恥ずかしいのにオカズにされた上あまつさえ。
『ヤらしてくんない?一回でいいからさ。アンタだってそんなヤらしい躯してんだ。一人じゃ足りねぇだろ?』
 男の言葉が脳裏に蘇ってハボックは唇を噛む。恥ずかしくて悔しくて、ヒューズに当たりでもしなければやっていられなかった。
「ぶん殴っちまった……」
 力一杯男の顔を殴ってしまった。
「訴えられたら大佐の部下でいられなくなっちゃうかな」
 こんな理由で配置換えなどあまりに情けなさすぎる。ハボックはくしゃくしゃと顔を歪めると、手摺りを掴む手の甲に目元を擦り付けた。

「まったく一体なんだと言うんだ」
 山積みの書類を前にしたロイは、机に頬杖をついてぼやく。朝から様子がおかしかったハボックは飛び出したきり戻ってこないし、電話をかけてきたヒューズはロイの鼓膜が破けんばかりの勢いで電話をたたき切ったきり連絡がない。
「くそう、気になって集中出来ん。仕事が進まんのはアイツらのせいだな」
 己のサボリ癖を他人のせいにして、溜め込んだ菓子を食べようと引き出しを開けた時、ノックの音と共に扉が開いた。
「ハボック」
 開いた扉の側に佇む背の高い姿を認めてロイが呼びかける。キュッと唇を噛んで俯いていたハボックは顔を上げてロイを見た。
「その……さっきはすんませんでした」
 そう言って頭を下げるハボックをロイはじっと見つめる。引き出しの中からチョコの箱を取り出すとハボックに差し出した。
「食うか?」
「え?」
「疲れた時や頭が回転しない時は糖分をとるのが一番だ」
 ニッと笑って言うロイをハボックは目を見開いて見つめる。「ほら」とロイがチョコの箱を振るのを見て手を伸ばした。一瞬躊躇うように指先を引っ込めてからチョコを一粒取って口に放り込んだ。
「旨いだろう?この夏限定のチョコだ」
 そう言って笑うロイにハボックはもぐもぐと口を動かして頷く。何も言わないハボックを見つめてロイが言った。
「ヒューズに何か言われたか?」
「なんも言われてないっス!!」
 反射的に声を張り上げてしまって、ハボックは唇を噛む。ロイはそんなハボックを見つめていたが、やがて肩を竦めて言った。
「ならいいが、何かあったら言え。私が燃やしてやるから」
「…………はい」
 小さな声で答えて頭を下げ執務室を出て行こうとすれば呼び止めるロイの声がする。振り向いた途端飛んできたチョコの箱を受け止めたハボックにロイが言った。
「大サービスだ、持っていけ」
 ニヤリと笑うロイを目を見開いて見つめたハボックはもう一度頭を下げて執務室を出て行く。その背を見送ってロイはやれやれとため息をついた。
「最後の一箱だったのに……。ヒューズめ、後で請求してやるッ」
 ロイはそう呟くとキャンディを取り出し口に放り込んだ。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みですv

「髭騎士」です。ヒュハボ幾つか平行して書いてますが、これが一番書きやすい気がします。ロイを書くのが楽しい……って、何か間違っている気もしなくも(苦笑)

今週末はダンナと息子がナゴヤドームに野球観戦で出かけているので、思いっきり一人を満喫しました〜(笑)いいなぁ、一人って……(しみじみ)こんな時はガッツリポメラで書きたいところだったんですが、ハボロイの新連載が全然書けずにエライ時間がかかっちゃいましたよ。本文自体も悩んだけど何が決まらなかったってタイトルが(爆)半日ネットでさまよっても全然浮かばず、苦し紛れのタイトルになっちゃいました(苦)まあ、中身もかなり苦し紛れな感じなんですが、なんとか持ち直して頑張りたいと思いますー。

以下、拍手お返事です。

おぎわらはぎりさま

手作りでハムを作るなんて、凄い先輩ですね!ハムって燻製しなくても作れるんでしたっけ…?働きがない主婦なのでさっぱり判りません(苦笑)「掌」はロイハボで妄想して頂きましたか。遭遇率というより、あの話で豆は難しい気がします(苦笑)ついにオリンピック始まりましたね。競泳を見ていて、やはり高校生のオニイチャンは筋肉の付き方が足りんな〜とか思ってました。いや、見るべきところはそこじゃないっての(爆)

お題・掌では、がっつりヒュハボで妄想しました の方

うふふふ、確かにヒューズの方が手付きがヤラシイ気がしますね。つか、ハボックの気持ち判ってて素知らぬ顔してそうです(笑)本当、益々暑いですね……、お体お気をつけ下さいねv

ブラッドレイ…憎い(笑) の方

上の方と同じ方かなと思ったのですが、違ったら困るので別にお返事します(苦笑)うふふ、腐れ色ぼけジジイ!(爆)そう思って頂けたならオッケって感じです(笑)まだもう少しハボックが可哀想ですが、幸せになれるよう祈ってあげて下さいませv(笑)

RHの小説がアップされてません の方

ええと、アップされていないというのは土曜に更新された分の事でしょうか。アップ直後とコメント頂いてからも自分のパソ&携帯で確認しましたが、アップされていると思います。また、他の方に感想も頂いているので、間違いなくアップされている筈なのですが。コメントが「RHの小説がアップされてません」の一言だけなので、他の小説の事なのかどうにも判断がつきません。もしそうでしたらまた改めてご連絡お願い致します。
2012年07月29日(日)   No.217 (カプ色あり)

11.掌
身体の一部で20題 11. 掌(R15)

 彼の掌が触れる。からかうように髪をくしゃりと一混ぜして、離れていく。
 彼の掌が触れる。宥めるように背中を撫でて、離れていく。
 彼の掌が触れる。励ますように肩を叩いて、離れていく。
 彼の掌が触れる。気遣うように手を握って、離れていく。
 優しく、親しみを込めて、触れては離れていく彼の掌。本当はもっと別の場所に触れて欲しいと思ってるなんて、これっぽっちも気づきはしないから。
 強請るように、祈るように、願うように見つめても、彼は決して気づかないから。
 だから、今夜も自分で触れてみる。己の掌を彼の掌と思いこんで。ベッドの上、掌で己の躯を探る。首筋を辿り胸へと滑らせ。プクリと立ち上がった胸の頂を掌で押し潰せば唇から零れる熱い吐息。何度もさすって乳首がイヤラシく濃い色に染まりコリコリとした痼になるまで掌で潰して、そうまでしてから下へ下へ。腹を辿り叢から頭を擡げる楔を両の掌で包み込む。ゆっくりと扱けば掌の中で嵩を増して熱く息づいて。
「    」
 彼の名を呼びながら包み込んだ掌で己を高めていく。こうして、こうやって触ってとイヤラシく強請りながら。
 掌が。
 彼の掌が。
 強くきつく扱いて、己を高みへと誘って────。

 掌で熱く弾ける己の熱を受け止めて、今夜も一人涙を零した。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになります、嬉しいですv

身体お題です。いやあ、もう全然思いつきませんでしたー(苦笑)攻め←受けってことで、お好きなカプで妄想頂ければ〜。

以下、拍手お返事です。

髭、面白そうな展開に の方

ええ、やっぱりオカズにされてました(笑)ふふふ、まあ、デフォですからね。続きもお楽しみ頂けたら嬉しいですーv

おぎわらはぎりさま

そうそう仕事放棄で吹っ飛んでくると思われます(笑)ロイ、彼は良心の人ですから決して遊んでなどいませんよ?(ニヤニヤ)ええと、どれもかなりの急角度ですね(苦)あんまり角度が急だと手に余るので、なるべくフラットなものでよろしくお願いします(苦笑)

キリカさま

こんにちは、初めましてvわーい、仲間が増えて嬉しいですーvやたらと数だけはあるサイトですが、一つでも二つでも気に入って下さるといいなと思っています。うふふ、ロイハボもオッケーになりましたか?片カプだけでも嬉しいですがやはり両方読んで頂けると喜びも倍増ですvこちらこそ、うちのサイトを見つけて下さってありがとうございます。どうぞよろしくお付き合いお願いいたしますねv
2012年07月26日(木)   No.216 (カプ色あり)

髭騎士7
ヒュハボ風味

「あ」
 玄関の扉を開けて外へ出ようとしたハボックは、丁度同じように廊下に出てきた隣の男と目が合う。慌てて目を逸らしそそくさと行き過ぎようとして、背後からかかった声に仕方なしに足を止めた。
「こんちは」
「……ども」
 挨拶されれば返さない訳にはいかず、ハボックは首を竦めるようにして会釈する。そうすれば男はハボックの事を頭のてっぺんから爪先までジロジロと見た。
「俺さあ、男の喘ぎ声ってのがあんなに色っぽいって知らなかったよ」
「えっ?」
「時々来るあの髭の男が相手なんだろ?一体どんな事されてあんな下半身にクるような声出してんの?」
「ッッ!!」
 あからさまにそう尋ねられてハボックは絶句する。真っ赤に染まった顔を背けるように男に背を向け足早に階段に向かって歩けば、男が後からついてきた。
「なあ、どんなプレイしてんの?この間の夜はまたすっげぇ激しかったみたいだよな。俺、思わずアンタの声オカズにしちゃったよ」
 そんな風に言われれば羞恥のあまり息が止まりそうになる。「なあ」と肩を掴まれて、ハボックは男の手を思い切り振り払った。
「煩いッ!」
 そう怒鳴って羞恥に涙ぐんだ目で睨みつければ男が目を見開く。それからニヤリと笑って言った。
「ふぅん、そんな顔してヤられてるんだ。そりゃあ、あの男も煽られるってもんだよな」
 男はそう言ってズイと顔をハボックに寄せる。
「あのさぁ、イヤラシい声ばっか聞かされてこっちもいい加減堪んないんだよね。近所迷惑っての?だからさぁ責任とって欲しいんだけど」
「せ、責任っ?」
 近所迷惑などと言われれば反論のしようがなくハボックは男を見つめる。男はハボックの空色の瞳を間近に覗き込んで言った。
「ヤらしてくんない?一回でいいからさ。女じゃないから失敗してデキちまう心配もないし、アンタだってそんなヤらしい躯してんだ。一人じゃ足りねぇだろ?」
 男の言葉を聞く内にハボックの瞳が大きく見開いていく。男はハボックが何も答えないのをいいことに、手を伸ばしてハボックの頬を撫でた。
「なあ」
 間近に迫る男の顔が下卑た笑いを浮かべた瞬間、ハボックの拳が男の顔にめり込む。
「ッッ!!」
 渾身の力で殴り飛ばされた男の体がアパートの廊下を吹っ飛んでゴロゴロと転がっていったが、男がどうなったか、ハボックは確かめる事もせず階段を駆け下り司令部へと走っていった。

「ハボック、お前、本当に仕事する気ないだろう」
 ベッタリと机に懐いている部下の金色の頭に向かってロイが言う。だが、聞こえている筈なのに顔を上げようともしないハボックにロイは眉を顰めた。
「おい、ハボック、お前な、そう言う態度は――――」
「ほっといて下さい」
 ムッとして言いかけた言葉を遮られて、ロイは目を瞠る。どうやら何かあったらしいと、ロイが首を傾げて尋ねようとした時、開けっ放しの執務室の扉の向こうで電話のベルがなった。
「チッ」
 舌打ちしてロイは執務室に入る。机の上の電話に手を伸ばし、煩く鳴り響く受話器を取り上げた。
「はい」
『ああ、ロイ?俺だけど』
「俺なんて名前の知り合いはいないな」
 受話器を耳に押し当てた途端聞こえてきた陽気な声に、ロイは眉を顰めて答える。相変わらず机に突っ伏したままのハボックを見ながら続けた。
「くだらない話なら切るぞ。今立て込んでいる」
『なんだよ、テロリストからラブレターでも届いたか?』
 からかうように尋ねるヒューズにロイはため息混じりに答えた。
「それならよかったんだがな、ハボックの様子が変だ」
『――――少尉の?変って?』
 聞かれてロイは首を傾げる。
「よく判らんがかなり落ち込んでる。意中の相手に余程こっぴどくフラれでもしたかな」
 理由を聞こうとしたところの電話で本当の理由は判らないまま、ロイはこれまでの経験からそう推察して口にする。だが、受話器からは何も反応が返ってこず、ロイは不思議そうに相手の名を呼んだ。
「ヒューズ?」
『――――あ。ああ、すまん』
 さっきまでの陽気さが影を潜めたヒューズの声を訝しんでロイが口を開く前に、ヒューズが言った。
『ロイ、少尉と代わってくれないか?』
「ハボックと?どうして?」
『いや、こっぴどくフラれたってんなら今度セントラルの美女を紹介してやろうと思ってさ』
「なるほど」
 ロイは答えてハボックを見る。
「私からはこの間紹介してやったが上手くいかなかったし、どうもイーストシティの女性とは相性がよくないようだからな。それもいいかもしれん」
 ロイはヒューズの提案に頷くと「待ってろ」と言って受話器を机に置く。大部屋のハボックの側に歩み寄ると声を掛けた。
「ハボック、おい」
 そう呼んでもハボックは顔を上げない。仕方なしに肩を揺すればハボックがむずがるようにロイの手を払いのけた。
「ほっといてくれって言ったっしょ!」
「電話だ、ヒューズから」
 ロイが言えばハボックの肩が震える。
「中佐から……?」
「ああ、お前がフラれたらしいと言ったら代わってくれってな」
 そう聞いてハボックがむくりと起き上がる。泣きはらしたように目元を紅く染めたハボックの顔に、一瞬ドキリとしながらロイは言った。
「セントラルの美女を紹介してくれるそうだぞ」
 ニコニコと笑みを浮かべるロイをじっと見つめたハボックは無言のまま立ち上がる。執務室に入ると受話器を取り上げ耳に押し当てた。
「ハボックっス」
『少尉っ?どうした、ロイがお前の様子が変だと言ってたが、何かあったのか?』
 そう聞かれて、だがハボックは答えない。暫くの沈黙の後、ヒューズが心配そうにハボックを呼んだ。
『……ジャン?どうしたんだ、まさか本当に女にフラれた訳じゃ――――』
「中佐」
 話す声を遮ってハボックはヒューズを呼ぶ。『なんだ?』と返ってくる声を聞けばハボックの手がブルブルと震えた。
「――――嫌いっス」
『え?』
「中佐なんて大っ嫌いっス!!」
 ハボックは受話器に向かってそう怒鳴ると思い切り机に叩きつける。そのまま執務室を飛び出したハボックが大部屋を駆け抜けて部屋の外へと出ていけば、ロイがびっくりして目を見開いた。
「ハボックっ?おい、一体どうしたっ?!」
 何が何だか判らないままロイは執務室に戻り投げ出された受話器を取り上げる。
「ヒューズ?貴様、うちの部下になにを言ったんだっ?事と次第によっては――――うわッ!」
 怒鳴りかけたロイは、いきなり叩ききられた電話が立てた耳障りな音に顔を顰める。
「一体全体なんだって言うんだ」
 思いもしない展開に、ロイは耳を押さえて呟いたのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気の素です、ありがとうございますーvv

「髭騎士」です。本当は身体お題を書くつもりだったんですが、考える時間がなかったので、書き置いてあったコレで(苦笑)

以下、拍手お返事です。

「見毛相犬2」面白かった〜 の方

わーッ、ありがとうございますーッ!!そんな風に言って頂けると頑張って書いた甲斐があったというものですv飄々としながらも一本筋の通ったハボック、うふふ、嬉しい〜vよかったー、ここまで書いてきてv次回作も頑張りますので、引き続きお付き合いよろしくお願い致しますv

おぎわらはぎりさま

ハボの幸せを望みつつそこに至る過程で苛められているのが好き……同志ッ!!(ガシッ←熱い抱擁)歪んだ愛、大好きです(笑)わ〜、仕事の合間に…ありがとうございますー。でもどうぞお手柔らかに、黒ハボロイとか無理なんで(苦笑)「見毛相犬2」そうですねー、確かにハボック傷ついたかもしれないです(苦笑)でもハボなら例によって飄々と過ごしていくと思います。躾、絶対ギャグですよ〜。まあ、それは妄想で補完して頂くということで(笑)この土日は東京涼しくて楽だったんですが、また明日からは30度越え……本当にのんびりいきましょう。
2012年07月23日(月)   No.215 (カプ色あり)

10.肩
身体の一部で20題 10.肩

 弾けるような笑い声が聞こえて、公園を歩いていたロイは足を止めて振り返る。そうすれば父親に肩車されてはしゃぐ子供の姿が目に入った。
「肩車かぁ、子供の頃親父に強請りましたよ」
 ロイが足を止めたことに気づいたハボックが、同じように振り向いて言う。懐かしそうに目を細める横顔を見つめれば、ハボックがロイを見て言った。
「うちは兄弟が多かったから肩車して貰うのも競争で。誰が最初にして貰うかでいつもケンカしてたっスよ」
 そう言うのを聞けば金髪の男の子が父親の肩を取り合う姿が目に浮かぶ。クスリと笑ってロイは、肩車する父親の頭を抱え込むようにして話しかけている男の子を見て言った。
「私は肩車なんてして貰った記憶はないな。意外と怖がりだったんだ」
 肩の上に乗って立ち上がるというのがちょっとな、とロイは眉を顰める。それでも楽しげな親子の様子を見ていれば、ほんの少し羨ましそうに言った。
「でも、あんな風に楽しそうなのを見るとやって貰ったら楽しかったかもとも思うよ」
 楽しげな親子をそのままにロイはゆっくりと歩き出す。そうすればハボックが後からついてきながら言った。
「してあげましょうか?」
「はあっ?」
「肩車。今やっても結構楽しいと思うっスよ」
 ニコニコと笑って言う男をロイはまじまじと見つめる。それから呆れたようなため息をついて言った。
「何を言い出すかと思えば、お前、馬鹿だろう。いい年した大人が肩車して何が楽しいもんか」
「そんな事ないっスよ。やってみりゃ判ります」
 そう言って手を伸ばしてくるハボックからロイは後ずさって逃げる。
「大体お前、幾らお前より軽いとは言え大の大人を肩車なんて出来る訳ないだろうっ」
「でも演習でオレよりデカいヤツを担いで走ったりしてるっスから」
 要は持ち上げるコツとタイミングっスから、とハボックはニッコリと笑う。
「大丈夫ですって。絶対落としませんから」
「いや、だかな。持ち上げられる、られないと言う以前にだな」
 大人が肩車なんて恥ずかしいじゃないかと喚くロイに構わず、ハボックはロイの腕を引いた。
「いいからいいから」
 グイと引いて後ろを向かせるとロイの脚の間に首を突っ込む。
「わわわッ!」
 半ば強引に肩の上に座らさせられたと思うと、ふわりと浮かび上がる感触にロイは金色の頭にしがみついた。
「大佐ァ、大丈夫っスから顔上げて」
「え?」
 もみくちゃに頭を抱え込まれながらもハボックが頭上のロイに言う。その声に恐る恐る顔を上げたロイは見下ろす景色に目を見開いた。
「どうっスか?結構気持ちいいっしょ?」
 ハボックが言うとおり人の頭より高い位置にいれば何だか吹き抜ける風も違う気がする。背筋を伸ばして上を見れば近くなった梢に小さな花が咲いているのが見えた。
「確かに気持ちいいな」
「でしょ?」
 上から降ってきた声にハボックは笑って歩き出す。ぐらりと揺れて、慌てて金の髪を鷲掴んでバランスを取ったロイは、何だかワクワクして言った。
「ハボック、右だ、右。枝に鳥が止まってる」
「え?右っスか?」
「そっと近付けよ、そっとな……あっ、逃げた!ハボック、あっちだ!」
「えーッ、あっちってどっち?」
 身を乗り出すようにしてあっちだこっちだと指示を出すロイの声に従って、ハボックは公園を走り回る。すっかり子供に戻った二人が上げる笑い声が青空に吸い込まれていった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みです、ありがとうございます〜v

身体お題10個目「肩」です。馬一人騎馬戦状態(笑)一応ロイハボでもオッケかと思ってカプはつけませんでした。しかし、ハボの上に肩車したら相当高そうだなぁ、ちょっと怖いかも(笑)

ところで、今日でハボロイ拍手リクの「見毛相犬2」が最終回ですー。でもって、次回からは最後に残っていたリクに取り掛かってハボロイリクはとりあえず全部とっかかる事になりまーす、よし、ここまで来たぞ!んで、今年のハボロイの日ですが、今年は特に素敵企画にお邪魔する予定もないのでハボロイの日限定で拍手リク開けようかなぁと。まあ、最近のサイトに来られる方の傾向を見ているとハボロイリク開けてもリクこないんじゃないかと言う気がしなくもないんですが、しかも今年のハボロイの日は月曜だしな〜(苦笑)まあ一個もなかったら地味に一人でハボロイの日をお祝いすることにして、一応そんな予定しております。まだ先の話ですが、それまでにネタ思いついてリクしてやろうと言う方いらっしゃいましたら、お待ちしておりますのでよろしくお願い致します。

以下、拍手お返事です。

おぎわらはぎりさま

あはは、ダメなオトナ大好きですよ、でも履歴は消してきて下さいね〜(笑)おお、全社員でのアイスタイム!なかなか壮観な光景ですね、社長さん、素敵v昨日今日と凄く涼しくて楽ですが、まだまだ暑さは続くんですよね……。お互い無理せず頑張りましょう〜(苦笑)ふふ、おぎわらさまは髭イチオシな感じですね(笑)いやあ、そんなJリーガーいたらガン見しちゃいますv「商品目録」更に上を行く妄想……頑張りますッ(爆)「井筒」そうそう、ハボならやっぱりバスケかなぁって。でもルール全然知らないんですけどね(爆)まだ野球とかサッカーとかアメフトの方が判る気が。小さい時からしっかり躾ておけば大型犬になってからも大丈夫(笑)オリンピック、一味違う楽しみ方でエンジョイしましょうv

ヒューズの嫉妬がメラメラと燃えてますね〜 の方

考えてみれば勝手な思い込みで嫉妬されて酷い目にあわされるハボっていい迷惑かもですよね(笑)そうそう、気づいてもやっぱりヒュは鬼畜だと思います。デフォだから(爆)
2012年07月21日(土)   No.214 (カプなし)

金緑石11
ヒュハボ風味

「ハボック」
 呼べば明らかにギクリとした様子でハボックが振り向く。見開いた空色が困惑と怯えの色を浮かべているのを見つけて、ヒューズは唇を歪めた。
(ロイの側を離れるのが)
(俺のところに来るのが)
(そんなに嫌かよ)
 期限未定で出張と聞いて、泣きそうな顔でロイに食ってかかっていた。何度も理由を聞いてロイに翻意を促そうとするのをみれば、ロイの側を離れたくないと訴えているように思えて、ヒューズはギリと歯を食いしばった。
「すぐ出るぞ。さっさと用意しろ」
「無理言わないで下さいッ」
 言えば間髪をおかずに返ってくる答えにヒューズはムッと眉をしかめる。怒りを露わにしたその表情に、ハボックは一瞬怯みながらも言った。
「そんないきなり期限も判らず出張なんて行ける訳ねぇっしょ!護衛の仕事だってあるし、小隊預かってもいるんスよッ」
「だが、ロイは行けと言ったろう?」
 そう言われてハボックがグッと詰まるのを見て、ヒューズは畳みかけるように続けた。
「俺がすぐ出ると言っても何も言わなかった。つまりは護衛にも小隊にもお前は必要ないって事じゃないのか?」
 殊更意地悪く言えばハボックが顔を歪める。何も言えなくなって唇を噛むハボックをじっと見つめてヒューズはもう一度繰り返した。
「すぐ出るぞ。軍服の予備くらいロッカーにあるだろう?足りないものは向こうで調達したらいい。さっさと用意しろ、ハボック少尉」
「……アイ・サー」
 階級を強調すればピクリと震えたハボックが呟くように答える。のろのろと背を向け執務室から出て行こうとするハボックに、ヒューズは手を伸ばした。
「ッ?!」
 二の腕を掴んでグイと引けば、ハボックがギョッとして振り向く。大きく見開いた空色を見たヒューズの唇から本人すら思いもしない言葉が零れた。
「覚悟がないなら来るな。俺と来ればどうなるか、判ってんだろう?」
 そう言えばハボックの唇が何か言いたげに震える。だが、結局何も言わずに執務室を出て行った。
「……何を言ってるんだ、俺は。命令に背くなんてハボックに出来ないのは判ってんだろうが」
 ハボックがヒューズに同行するのはロイの命令だからだ。行きたくないと駄々をこねる事など軍人として赦されない。
「とんでもない下衆だな」
 ククッと低く自嘲して、ヒューズはハボックが出て行った扉を食い入るように見つめた。

 執務室を出たハボックは大部屋を通り抜け廊下へと出る。真っ直ぐ前を見据えて歩いてはいたものの、正直何処に向かって歩いているのか判っていなかった。
「そうだ、軍曹に話しなきゃ……」
 漸く何をしなければいけないのか思い至ってハボックは呟く。小隊の詰め所に行き扉を開ければ、中にいた部下達が一斉にハボックを見た。
「隊長?」
 中から小柄な軍曹が立ち上がって寄ってくる。ハボックは頭一つ半低い年上の部下をじっと見下ろしたが、ぼそりと低く言った。
「暫く空けるから」
「え?」
「セントラルに行ってくる。いつ戻んのかは判んねぇ」
 ハボックがそう言えば一瞬静まり返った詰め所が次の瞬間大騒ぎになる。当然の如く“何故?”だの“小隊はどうなるんだ”だのという声が飛び交う中、軍曹はハボックを詰め所の外に押し出した。
「隊長、一体どういうことです?」
「ヒューズ中佐んとこの助っ人だってさ」
「ヒューズ中佐の?マスタング大佐は了承されてるんで?」
 そう聞けばハボックの顔が泣きそうに歪む。
「軍曹、オレ、どうしたらいいのか判んないよ……」
「隊長?」
 ハボックの瞳に浮かぶ怯えが一体何に対してのものなのか、軍曹にはまるで判らずただ苦しげなその顔を見つめるしかなかった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございますv拍手も嬉しいですv

すみません、今日の更新お休みしますー(苦)三連休後の更新日だと朝からガツガツ書かないと間に合わないんですが、もー、暑くて湿度高いしグロッキーですorz 全然集中出来ないっスよ。そんなわけで申し訳ないです。あ、でも、玄関だけ模様替えしときますんで。しかし、夏本番前からこんなで乗り切れるんかな〜(苦笑)

以下、拍手お返事です。

おぎわらはぎりさま

コメント沢山ありがとうございますv「鎖骨」骨も色々あるけれど、やっぱり鎖骨って妙に色っぽいですよね。白い肌に陰影を刻む骨の形がかみつきたくなるほど色っぽいと思います(笑)「煙草」あー、昔過ぎて恥ずかしい(苦笑)こんな二人の風邪菌なんて誰もうつりたくないと思います(苦笑)「偏愛」この頃はやけに黒いのが書きたくて書いたような記憶があります。髭は黒くなければ子煩悩の常識人だと思いますよ(ニヤリ)「真・偏愛」やっぱり最後はハボが堕ちて行くのがデフォだと想うんで!(笑)「商品目録」ははは、きっと宅配の人、しげしげハボの事見てくと思います(笑)後篇……間空いたらどうするつもりか忘れてしまった(爆)お道具山ほど調べたんですけど、数あり過ぎてどうするつもりだったのか…頑張ります(苦笑)「金剛石」ふふふ、ハボロイにはああしてこうしてこうなったらハボロイになるんですよ(爆)でもまぁ、お好きなカプで妄想して頂けたらいいと思いますvえ?私なんてしょっちゅう「わあ、好みの身体vv触りた〜いvv」って騒いでますよ。今度のオリンピックでも好みのオニイサンのナイスボディを見るのが楽しみ……(爆)
2012年07月17日(火)   No.213 (カプ色あり)

09. 鎖骨
身体の一部で20題 09. 鎖骨

ハボロイ風味

「ん……」
 激しくも甘い時間が過ぎ去って、体に残る優しい余韻を味わいながらベッドに寄り添って横たわっていればハボックの逞しい腕がロイの体を抱き寄せる。その厚い胸に引き寄せられた拍子に目に入った鎖骨を見て、ロイが言った。
「知ってるか?ハボック。鎖骨がない動物は抱き締めるという行為が出来ないそうだよ」
「へ?そうなんスか?」
 鎖骨に指を滑らせながら言うロイに、ハボックは白い指先が辿る鎖骨を見る。自分でも鎖骨に触れてみてハボックは首を傾げた。
「こんなもんが大事なんスか?」
「その骨がないと、前脚を内側に曲げて保持することが出来ないらしい」
「前脚」
 自分の腕を前脚と言われてハボックは僅かに眉を顰める。そんなハボックの表情に気づいているのかいないのか、ロイは続けた。
「馬や牛は抱きついたりできんだろう?あれは鎖骨が退化しているからだ」
「ああ、確かに」
 言われて四つ脚で歩く動物の姿を思い浮かべてハボックは頷く。腕の中で蘊蓄を垂れる恋人を抱き締めて言った。
「鎖骨があってよかったっスよ。おかげでこうしてアンタを抱き締められる」
 ハボックはそう言うと己の腕がロイを抱き締められるのを確かめるように腕に力を込める。きつく抱き締められれば自然と鎖骨が目の前に迫って、ロイは浮かび上がる骨にカプリと噛みついた。
「ちょっと」
 悪戯に歯を立てるロイにハボックは大袈裟に顔を顰めて見せる。そうすればロイは歯を立てたところに舌を這わせて言った。
「こんなしっかりした骨だと穴を開けるのは大変そうだ」
「はぁ?なんスか、それ」
 歯で穴でも開けたいのかとハボックが言えば、ロイが眉を顰める。
「そんなことが出来るか、馬鹿」
「だってアンタが変なこと言うからっしょ」
 言い出したのはそっちだと唇を尖らせるハボックにロイは答えた。
「この骨がどうして鎖骨っていうか考えたことはあるか?」
「生憎そんなこと一度だって気にしたことねぇっス」
「人間、あらゆることに疑問を持たないと成長せんぞ」
「あのね、ベッドの中でそんなことに疑問持ちたかねぇんスけど」
 ちっとも色っぽい話じゃないとむくれるハボックに構わずロイは続ける。
「昔ある国でな、囚人が逃げないようにこの骨に穴を開けて鎖を通したんだ。だから鎖骨」
「えっ?骨に穴開けて鎖って、痛そう。つか、この骨に穴開けんの、大変じゃねぇ?鎖骨って折れやすい骨っしょ?」
 無理じゃねぇ?と言うハボックにロイは肩を竦めた。
「さあな。実際開けたのを見た訳じゃないし」
 文献だ、文献とロイは言って、ふぁぁと欠伸をする。ハボックの鎖骨に頭を預けて目を閉じるロイの白い肌に陰影を刻む骨を見つめて、ハボックは目を細めた。
「アンタの鎖骨になら鎖通してみたいかも。結構似合いそう」
「馬鹿か、お前。こんな細い骨に穴を開けようとしたらそれこそ折れる」
 骨の細いロイの鎖骨は、触れてくるハボックの指より細く見えるほどだ。悪戯に触れてくる男の指から身を捩って逃れようとするロイを腕の中に囲い込んで、ハボックは笑った。
「大丈夫、細い鎖にするから。こっちの骨からこっちの骨に細い銀の鎖つけんの。きっと似合うっスよ」
「……馬鹿め」
 クスクスと笑いながら右の鎖骨から左の鎖骨へと指を滑らせる男を、ロイは目尻を染めて睨む。囲い込むハボックの腕を強引に解けば、楽しそうに見つめてくる空色の瞳を見つめて言った。
「そんなことに使うよりこういう風に使う方がいい。違うか?」
 そう言って腕を伸ばして抱き締めてくる細い体を抱き返して。
「そうっスね。やっぱ有効に使わなくっちゃ」
「だろう?」
 見つめてクスクスと笑いあうと、二人は互いをきつく抱き締めて唇を重ねていった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みです、嬉しいですv

身体お題で9つ目、「鎖骨」です。ネタが全然思いつかなくて、思わず「鎖骨」を調べてしまいましたよ(苦笑)いやあ、調べてみると色々出てくるものです(笑)

そう言えば九州の方はなんだか凄い事になってますね。熊本やら福岡やらに親戚がいるんですが、とりあえずそっちは大丈夫らしい。皆さまのところは大丈夫でしょうか。どうか大変な事になっていませんように。どうぞ、お気をつけてお過ごし下さい。

以下、拍手お返事です。

おぎわらはぎりさま

日参ありがとうございますv「紫陽花」あー、なんか懐かしい〜(笑)そうそう、ロイを甘やかしたいハボの話みたいな?この頃はエロも可愛かったです(苦笑)「もみじ」ハボロイは結構バカップル系多いですね。いや、あの頃の私には“もみじ”が精一杯でした、“虫さされ”なんてとてもとても…(苦笑)最初は本当ほのぼの系ばかりでした。だって私、サイト立ち上げた当初はエチどころかキスシーンも書けなかったんですよ、恥ずかしくて(爆)それが今じゃねぇ……(遠い目)人間、変われば変わるもんですね(苦笑)髭はまた近いうちに〜(笑)
2012年07月14日(土)   No.212 (ハボロイ)

菫青石の恋 〜 second season 〜 遠い記憶
ロイハボ風味

「いい風」
 窓辺に寄せた椅子に腰掛けたハボックは吹き抜ける風に目を細めて呟く。暑かった一日が終わりオレンジ色の残照が徐々にその明るさを失うと、深い色合いへと変わっていく空に少しずつ星がその姿を現していくこの時間が、ハボックは殊の外好きだった。
「マスタングさんの空だ」
 暗い空がきらきらと光る幾つもの星を抱えるその様が、ロイの瞳のようだとハボックは思う。窓に凭れるようにして空を見上げていれば、不意にずっと昔こうやって空を見上げていた事を思い出した。
「いつ……だったろう」
 ずっとずっと遠い昔、ロイと離れたその場所でもう二度と会うことは叶わないと空を見上げた。想うことだけが全てだった、そんな記憶がはっきりとあるのに、それがいつのことか思い出せない。己の中の曖昧な記憶にハボックが首を傾げた、丁度その時。
 バンッと乱暴に扉が開く音がしたと思うとドカドカと荒い足音がする。階段を一気に上った足音が近づいてきて、扉がぶち破られる勢いで開いた。
「ハボック」
「マスタングさん?一体どうし────、んんッッ!!」
 近づいてくるロイをびっくりして見上げたハボックは、突然噛みつくように唇を塞がれて目を見開く。
「マスタングさ……ッ、ちょっ……、どうしたん、ンンッ!んーっっ!!」
 まるで食いつくさんとするような勢いで口づけてくるロイを、ハボックは必死に押し返そうとする。だが、そんなハボックの抵抗を封じ込め、ロイはハボックをキツく抱き締め、その唇を貪るように荒々しい口づけを繰り返した。
「マスタ……ッ、待って!……んふ、ぅんッ、んふ…ぅッ」
 激しい口づけにハボックの体から力が抜け、縋るようにその手がロイのシャツを握り締める。長い全てを奪うようなキスが漸く終わりを告げる頃には、ハボックは半ば酸欠になって力なくロイの胸に縋りついていた。
「ハボック」
 ギュッと抱き締めたロイの声が耳元で聞こえて、ハボックは身を震わせる。抱き締めるロイの腕が微かに震えていることに気づいて、ハボックは目を見開いた。
「どうしたんスか?マスタングさん」
 様子がおかしいロイの腕の中に身を預けて、ハボックはロイを見上げる。苦しげに歪められる黒曜石に手を伸ばせば、ロイがその手を取ってギュッと握り締めた。
「お前が、いなくなってしまうような気がした」
「オレが?なんでそんな事────」
「私には、お前を失った記憶がある」
 いなくなるはずなどないのにと苦笑して言いかけたハボックの言葉をロイが遮る。その苦しげな様子にハボックが目を見開いてロイを見つめれば、ロイは握り締めた手に唇を押しつけながら言った。
「信じられないかもしれないが、私には確かにお前を失った記憶があるんだ。ずっとずっと遠い昔、今の生ではない時の流れの中で私はお前に会っている。お前に出逢ってお前を愛して……そしてっ」
 ロイは呻くように言ってハボックを掻き抱く。きつく抱き締めてハボックの耳元に囁いた。
「お前を失った記憶が私を苦しめるんだ。いつかまたあの時のように、お前がこの腕をすり抜けてどこかに行ってしまうんじゃないかと」
「マスタングさん」
 ロイの言葉を目を瞠って聞いていたハボックは、そっと目を閉じる。それからロイの体を優しく抱き返して言った。
「じゃあ、これもずっと昔アンタと出逢ったときの記憶なのかな」
「え?」
 そう言うハボックにロイは抱き締めていた腕を緩めて白い顔を見つめる。ハボックは幸せそうに目を細めて言った。
「空をね、見上げてるんス。星がいっぱい輝く空、マスタングさんの瞳みたいだって」
 ハボックはそう言って窓の外に広がる空を見上げる。
「今も見てた。あの時も、今も、マスタングさんのことが大好きで、それだけですげぇ幸せで」
「ハボック」
 そう言うハボックの幸せな横顔をロイがじっと見つめていれば、ハボックがロイを見て言った。
「オレはもうどこにも行かないっス。ずっとアンタの側にいる。いつかこの命が尽きるまでずっとずっと」
 ハボックはロイを見つめてにっこりと笑う。
「好きっス。ねぇ、マスタングさん、人は元々一つの魂だったのが二つに分かれて地上に降りた片割れなんですって。オレはアンタの半分っしょ?」
「────ああ」
 そうであると疑わない瞳にロイが泣きそうな顔で頷けばハボックが言った。
「だったらオレたちはずっとずっと一緒っスよ」
「ハボック」
「マスタングさん、大好き」
「私も────愛している」
 言えば幸せそうに笑う空色に、ロイの中の喪失の痛みも薄れていく。二人は何度も何度も飽きることなく口づけを交わすと、元の一つに戻ろうとするかのように体を重ねていった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになります、ありがとうですvv

これ、現在亀の更新中の「菫2」のハッピーエンド後になります。まだ終わってもないのにその後ってなんじゃい、って言われそうですが(苦笑)だって、ちょっと嬉しいメール頂いたんだもん!(笑)もともと不定期更新で始めた「菫2」ですが最初に書いてから既に3年、いい加減話をどんどん進めたいなぁ。なんとか頑張ってこまめに更新したいと思いますー。お付き合いのほど、どうぞよろしくお願いします(ぺこり)
って、気がつけば日記、ロイハボ続きですね、オンリー派の方、申し訳ないです(汗)

以下、拍手お返事です。

おぎわらはぎりさま

「気分転換」ホントだー、ここにありましたね(笑)円滑に仕事を進める為なら犠牲も厭わない中尉です(爆)「首筋」そりゃもう素肌に軍服ですよ!でもって固い布地で乳○が擦れてまた興奮しちゃうんですよ(爆)「aroma」あはは、確かにこんな主夫なダンナ欲しいですよね!一家に一人ハボックv「カクテル」苺味かぁ、これも相当甘そうです。桃の甘い香りもそそられますよね、腐腐腐v更新分も読んで下さっているのですね、ありがとうございます。では、感想を頂けるように頑張らないとですね、頑張ります!(笑)

阿修羅さま

なんだか色々大変そうですね。まだ本調子ではないでしょうし、どうぞお体大事になさって下さいね!見ましたよ、大根!これ、ホント??画像処理とかじゃなく??しかし、こんなの掘り出したらタマランですね(爆)どっちも腰つきが女らしくor男らしく(笑)笑えますv
2012年07月12日(木)   No.211 (ロイハボ)

08.首筋
身体の一部で20題 08.首筋

CP:ロイハボ(R15)

「飽きた」
 ロイはそう言って手にしたペンを放り投げる。朝からずっとかかりきりだった書類の山は昼を挟んで午後になっても一向に片づかず、もういい加減うんざりしてロイは窓の外を見上げた。
「退屈だ」
 有能な副官が聞けば目を吊り上げそうなことを呟いて、ロイはため息をつく。誰かこの退屈を何とかしてくれないかとロイが思っていると、ドカドカと足音が響いて乱暴に扉が開いた。
「あーっ、もーっ、ほんっと暑いっスねぇ」
 おざなりなノックと共に執務室に入ってきたハボックは、そう喚きながらドサリとソファーに腰を下ろす。喉を仰け反らせるように顔を仰向けてソファーに体を預けると、片手をひらひらさせて細やかな風を喉元に送った。
「外回りか、ご苦労だったな」
 窓に向けていた視線を戻してロイはハボックに言う。ハボックはそれに答える代わりに目を閉じてハアとため息をついた。
 ロイの執務室は空調がきいていて心地よい空気が部屋を満たしている。大部屋も勿論同じように空調がきいてはいたが、大人数がいる大きな部屋より執務室の方がずっと快適に感じられた。
「ここ、気持ちいい……」
 ハボックはそう言って首筋を掠めて過ぎる冷気を堪能する。目を閉じていれば暑い中体を動かしてきた疲れが睡魔を連れてきて、ハボックはスウスウと寝息を立てていた。
「おい」
 ストンと落ちるように眠ってしまった部下を、ロイは眉間に皺を寄せて見つめる。両手をソファーに投げ出し喉を晒して眠りこける姿をロイはじっと見つめていたが、ニヤリと笑うと抽斗から折り畳み式のナイフを取り出した。パチンと開いて銀色に光る刃に舌を這わせる。足音を忍ばせてハボックに近づくと無防備に眠る男を見下ろした。
「丁度書類仕事に飽きたところだったんだ。遊ばせて貰うぞ」
 ハボックが聞いたらとんでもないと怒りそうな事を平気な顔で呟いて、ロイは大きく開いたハボックの足の間に膝をつく。手にしたナイフの刃をハボックの喉元に押し当てて、晒された首筋に舌を這わせた。
「ん……」
 首筋を這い回る濡れた感触に、ハボックがゆっくりと目を開ける。己の首筋に顔を埋めるロイの黒髪に気づいたハボックは、慌てて身を起こそうとしてチクリと首筋に走った痛みにそのまま凍り付いた。
「な……っ、なにしてるんスかッ、大佐ッ?!」
「ん?退屈凌ぎ」
「なに馬鹿なこと言って────」
「動くとザックリいくぞ」
 ロイはそう言ってナイフを押し当てる手に軽く力を込める。そうすれば微かな痛みが首筋に走って、ハボックは身を強張らせたまま視線だけでロイを見た。
「大佐っ」
「じっとしてろ」
「でもっ」
 幾らなんでも本気で自分を傷つけるつもりはないだろうと思うものの、場所が場所だけに本能的な恐怖を抑えきれない。ハボックが言われるまま身動きせずにいれば、ロイが首筋にきつく吸いついた。
「アッ」
 チクリとした痛みにハボックが短い声を上げる。続けざまに感じる痛みにハボックは眉を顰めた。
「痕つけちゃヤダっ」
 もともと軍服をきっちりと着込む方ではない上に、こう暑ければ必要がない限り上はTシャツ一枚だ。普段から見えるところに痕はつけるなと言ってるのにとハボックが訴えれば、ロイが答えた。
「煩い奴だな。じゃあこうしようか?」
 ロイは言って喉元に当てていたナイフを立てて、その切っ先で首筋をなぞる。そうすれば晒された白い肌に薄く傷がついて血が滲んだ。
「旨そうだ」
 目を細めて滲む血を見つめたロイはねっとりと舌を這わせる。首筋につけられた浅い傷を舐められればピリとした痛みと共にゾクゾクとした何かが背筋を駆け上がって、ハボックは顔を歪めてロイを呼んだ。
「たいさっ」
「おい、勃ってきてるぞ?」
 ロイはそう言ってハボックの脚の間についた膝でハボックの股間を押す。厚い軍服の布地を押し上げている楔を指摘されて、ハボックはカアアッと顔を赤らめた。
「ふふ、可愛いな、ハボック」
 ロイは低く笑うと首筋にナイフを滑らせキツく唇を押し当てる。白い首筋に幾つも紅い筋と花びらを散らされて、ハボックは重い軍靴で床を蹴った。
「大佐っ、お願い、も、やめて……ッ」
 ビクビクと震えながらハボックが泣きそうな声で訴える。そうすれば、ロイがハボックに圧し掛かるようにしてその瞳を覗き込んだ。
「朝からずっと書類仕事で退屈で堪らなかったんだよ。…………退屈凌ぎ、付き合ってくれるだろう?ハボック」
「────イエッサ……」
 返る答えにロイはニンマリと笑って、見開いた瞳に涙を滲ませるハボックに深く口づけ、喉元にあてていたナイフでTシャツをピーッと切り裂く。そうして。
「隊長、このクソ暑いのによくそんなハイネック着ていられますね」
「えっ?!いや、そのっ」
 もごもごと口ごもって顔を赤らめるハボックに、またもいらぬ妄想を掻き立てられる部下たちだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気貰ってます、嬉しいです〜v

身体お題で「08.首筋」です。昨日ロイハボだったんだからハボロイじゃないのと言われそうですが、しかもなんかヘンタイチックだし(苦笑)相変わらず被害を被っている部下たちかもしれない(笑)

関係ないけど、久しぶりにハボしめじを画面に出しておいたらメチャクチャ増殖して作業するのに邪魔だわ、IEは投げるわで作業がはかどりません(苦笑)でも久々で可愛いっスv

以下、拍手お返事です。

ヒュハボ部屋とエドハボ部屋、あれから無事 の方

おお、見る事が出来てますか!よかったです〜!しかし、どういう現象なんですかね、それ……。傍迷惑な(苦)ともあれ、お楽しみ頂けましたら嬉しいですーv

Kさま

わーい、こんにちは!わはは、ハボが窶れる!(爆)確かにこれ、コトが済んだら二人とも痩せてはいても、ロイはツヤツヤ、ハボはゲッソリって言う気がします(笑)本当今年の梅雨は天候が物凄く偏った感じですね。Kさまもお体お気をつけくださいませv

おぎわらはぎりさま

学生時代、歴史を覚えるのに誰か歌にしてくれないかなぁってよく思ってましたよ(苦笑)「気分転換」…………この話、どこに?(爆)いやもう、全く記憶の彼方で申し訳ない。日記かな、でも何となく例のパターンな話の気がします(苦笑)「顎のライン」結構顎に出る方多いらしいですね。私はもう顎も腹も激ヤバですが(苦笑)部下にも黒いのやらそうでないのやらいるんですね(ニヤニヤ)「傍迷惑な恋」そこまで強調して傍迷惑と思って下さるなら大成功というところなのでしょうね(笑)ありがとうございますvこの日何の日的なサイトがそう言えばあったなぁと思いだしました。しかし、「髭の日」なんて誰が作ったんだろうって思いますよ(笑)

2012年07月10日(火)   No.210 (ロイハボ)

07. 顎のライン
身体の一部で20題 07.顎のライン

ロイハボ風味

「うーん」
 朝起きて、洗面所で髭をあたっていたロイは、鏡を覗き込んで唸る。顎のラインを何度も指先で撫でて、眉間に寄せた皺を更に深めた。
「…………」
 なんとなく丸くなった気がする。ここ一週間の生活を振り返ってあまりに多い心当たりにロイが益々眉間の縦皺をくっきりとさせた時、背後から声が聞こえた。
「大佐、なんか太っ────」
 その瞬間ロイがバッと振り向いて、ハボックは言いかけた言葉を飲み込む。睨むように見つめられて、目をまん丸に見開いたままハボックがゴクリと唾を飲み込めば、ロイが目を細めて言った。
「私がなんだって?」
「いや、別になにも言ってな────」
「正直に言え。でなければ燃やす」
 いつの間につけたのか発火布を填めた手をあげるロイに、ハボックは目を逸らし小さな声でぼそぼそと言う。
「ふ、太ったかなぁって」
「むっ」
 言われてロイが両手で顎を押さえるのを見て、ハボックが言った。
「大佐、体重の増減が顎に出るんスよ。体より先に」
「一番嫌なパターンじゃないか」
 多少腹周りに肉がついたと思ったら、気づかれる前に努力すればいい。だが顎のラインでは自分が気づいた時が周りも気づく時だ。
「くそう、忌々しい体質だッ」
 ギューッと両手で顎を締め付けるロイにハボックがクスリと笑う。その途端ギロリと睨まれて慌てて目逸らすハボックに、ロイはゆっくりと近づいた。
「やはりここは恋人のお前に協力して貰って一気にダイエットを────」
「ヤダ」
 ニヤリと笑っていいかけた言葉を遮られてロイは目を丸くする。そうすればうっすらと赤く染まった眦を吊り上げてハボックが言った。
「おかげでこの間は散々だったんスからねッ!みんなに恥ずかしい声は聞かれるわ、中尉に銃で撃たれるわ、あんなのもうゴメンです。ダイエットしたいなら朝早く起きて走りゃいいじゃないっスか」
 至極もっともな意見を口にするハボックが言うところの“この間”とは、やはり太ったとハボックに指摘されたロイが『セックスダイエット』と称して執務室で強引にコトに及んだ事だ。業務時間中、扉一枚隔てた向こうでは仲間たちが仕事に励む場所でのセックスを思い出せば、ハボックは今でも羞恥のあまり死ねる気がするほどで、なにがあろうと二度とゴメンだった。
「そうか、それは残念だ」
 目元を染めた瞳で睨んでくるハボックにロイは残念そうに肩を竦めて顎を撫でる。
「お前や中尉がサボらず会食に出ろというから真面目に業務に励んだ結果がこれなのに、冷たいな、お前は」
「ッ、そ、そんなこと言ったって」
 ちょっぴり痛いところを突かれてハボックは口ごもる。だが、やはりダイエットの方法としてあのやり方はいただけないと自分の正当性を主張すればロイが言った。
「判った、もう無理は言わん」
「大佐」
 ロイの答えに判ってくれたかとホッとしたハボックは続く言葉を聞いて飛び上がった。
「お前が協力してくれんと言うならエルミナ嬢にお願いするとしよう」
「えっ?!」
「ああ、いや、アルティナの方がいいかな。彼女なら喜んで私のダイエットに協力してくれそうだ」
「ちょっと、大佐ッ?!」
「それともローゼリンデにするか。彼女は情熱的な女性だからベッドでもきっと────」
「やだッッ!!」
 次々と女性の名をあげるロイにハボックが飛びつく。ロイの腕をギュッと掴んでハボックは怒鳴った。
「女の子達にそんなこと頼まなくていいっス!!オレがちゃんと大佐がダイエット出来るよう相手するからッ!!」
「そうか?それは助かる」
 その途端ニィッと笑うロイにハボックはハッとする。しまったと思ったハボックが今のは無しと言う前に、ロイはハボックの手首を掴むと部屋の外へと歩きだした。
「お前が協力してくれるなら私も好き好んで恋人でもない女性とセックスする必要もないからな。どこでする?せっかくだから高カロリーが消費出来るシチュエーションがいいな。執務室はこの間シたから今度は小隊の詰め所辺りにするか?」
「大佐っ、大……ッ、ちょっ……待って!!待っ……、ワーーーッッ!!嫌だーーーッッ!!」
 必死に足を突っ張って抵抗するハボックをロイは車に押し込むと司令部に向かう。そして数時間後。
「うん、すっきりした。やはり、こうでなくては」
 鏡を前に満足げに笑うロイの姿があったとさ。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気の素です、嬉しいですーv

この間「dump renew」を整理してすっかり放置していたお題を見つけたもんで(苦笑)七つ目「顎のライン」です。ハボロイでもロイハボでもどっちでもオッケーだったのですが、この前の日記がハボロイだったので今日はロイハボで。ハボロイバージョンで浮かんだのはエロだったんだけど、ロイハボはギャグっぽいノリになりました。ハボが言う「この間」ってのは「pearl」の「Sダイエット」の事です。小隊の部下たちが聞き耳立ててる所でエッチしたら消費カロリーはどれくらいでしょう(笑)

以下、拍手お返事です。

ヒュハボ部屋とエドハボ部屋設置おめでとうございます の方

ありがとうございます!勢い余って設置してしまいました(笑)ふふふ、やはりうちは鬼畜がデフォのようで(爆)エドの願いならどんな無茶なのでもハボックがバッチリ叶えてくれそうですvこれからも楽しんで頂けるよう頑張りますv

何故か見れていたのに の方

それって、携帯で今まで他の部屋は見られていたのにヒュハボ部屋とエドハボ部屋が見られないって事でしょうか……。うーん、どうしてだろう。ページの作りとしては他の部屋と変わらないし、容量は小さいくらいなんですが。一応一度上げたのを削除してもう一度アップし直してみましたがやはり見られませんかね?私に技術がないもんで、どうにも理由が判らない……。もしどうしても見られないようであればヒュハボ部屋、エドハボ部屋とは別に「dump renew」ページに今まで通り作品タイトルごとのリンク貼るしかないかなぁという感じです。技術不足ですみません(苦)

おぎわらはぎりさま

ありがとうございますvそうそう、リザの方がロイが所長の時よりよっぽど事務所の売り上げが伸びそうです(笑)「名前」世界史だけじゃなくて日本史も大変ですよぅ。徳川家とかややこしすぎる(苦)うわぁ、そんな先生だったら物凄く授業楽しそうです!私も教わりたかったですよ(笑)「MEMORY」読んで頂けましたか?素敵なお話だったでしょう?うふふvメールで頂いた分にはそちらの方からお返事差し上げますね。
2012年07月09日(月)   No.209 (ロイハボ)

恋猫27
ハボロイ風味

「あ、ロイ!一緒にやらない?」
 そろそろ終業時間という時分、総務におつかいで書類を届けて戻ってきたロイは、司令室の扉を開けた途端かかった声に目を丸くする。いつの間に持ち込んだのか、司令室の片隅に置かれた鮮やかな緑色の笹の周りで、司令室の面々が折り紙で飾りを作ったり、短冊に願いを書き込んだりしていた。
「なにしてるんだ?まだ仕事中だろう?」
 確かにあと十五分もすれば定刻だ。それでも拙いんじゃないかとロイが言えば、ハボックが笑って答えた。
「いいのいいの、これ持ってきたの中佐だし。それに中佐ならもう帰ったしな」
「帰った?」
 会食でも入っていてそのまま直帰の予定だったかと首を傾げるロイに、ブレダが苦笑した。
「違う違う、“エリシアちゃんと一緒に星にお願いするんだ〜”だってさ」
 例によって親馬鹿を発揮したらしいのを聞いて、ロイはなあんだという顔をする。そんなロイにハボックがペンを差し出した。
「ロイも願い事かけば?短冊たくさんあるっスよ」
 ハボックはそう言いながら赤や黄色の色鮮やかな折り紙を手に取る。ハボックが差し出す短冊をじっと見つめたまま手を出そうとしないロイに、ハボックが首を傾げた。
「どうかした?」
「黒い短冊、ないか?」
「黒?黒じゃなに書いたか見えないじゃん」
 不思議そうにハボックが言えば、輪飾りを作っていたファルマンが言う。
「紫じゃだめですか?五色は元々青・赤・黄・白・黒ですが、青を緑、黒を紫で表すことが多いですから」
 それなら読めると紫の折り紙を差し出されたものの、ロイはふるふると首を振った。
「黒がいい」
 あくまでそう言い張るロイに、ハボックとファルマンは顔を見合わせる。ハボックは折り紙をガサガサと掻き回して黒い折り紙を探し出すとロイに差し出した。
「はい」
「ありがとう」
 ホッとしたように折り紙を受け取るとロイは紙を長方形に切る。黒いペンで黒い紙になにやら認めるとロイは出来上がった短冊を下の方に結びつけた。叶うようにと手を合わせれば、寄ってきたハボックがロイの頭をくしゃりと掻き混ぜる。
「明日は晴れるといいっスね」
「……うん」
 言って笑うハボックに、ロイは小さく頷いた。

 だが。
「せっかくエリシアちゃんとお願い事書いたのにっ、なんで雨なんだーッ!!」
 雨のバカーッ!とヒューズが喚く窓の外では雨がシトシトと降っていた。朝から降り出した雨はまもなく夜という時間になっても降り続き、空は厚い雲に覆われて星は全く見えない。ひとしきり喚いたヒューズは、エリシアちゃんを慰めなくっちゃと早々に帰っていった。他のメンバーも残念そうに空を見上げ、仕方ないなと笑いあって引き上げていく。ロイが飾り付けた短冊を見てそっとため息をついた時、元気なく伏せた猫耳が生えた頭を大きな手がポンポンと叩いた。
「ハボック」
 見上げればハボックがロイを見下ろしている。その空色の瞳を見上げたロイは、視線を落として言った。
「いいんだ、どうせ叶う筈のない願いなんだから」
 そうため息混じりに呟くロイの耳にハボックの声が聞こえる。
「あの雨雲の上には星が輝いてるんスよ、ロイ。だから大丈夫」
「え?」
 そう言われてロイは驚いたように顔を上げた。
「大丈夫。ちゃんと願いは星にまで届いてるから。だって一生懸命願って書いたんしょ?」
 ハボックはそう言ってロイの横にしゃがみ込む。ロイが書いた黒い短冊をつついてハボックはロイを見た。
「それなら願いは厚い雲なんて突き抜けちゃって、星まで届くっスよ」
 ね?とハボックが言って笑う。
「────うん」
 泣きそうな顔で頷いてギュッと抱きついてくるロイを抱き締めたハボックの手が、小さな背をポンポンと優しく叩いた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新励みです、ありがとうですv

お久しぶりの「恋猫」ですー。ロイが何を短冊に書いたかはナイショってことで(笑)

ところで、昨日の日記に書いた「alexandrite」「citrine」ですが、アップは本日夜の更新時になりますー。最後に一言書いたけど、あれだとアップがいつなんだか、髭話だけがアップなのか判りにくいですよね(汗)判りにくい書き方で申し訳ありません、もうちょっとお待ち下さいね。あと、豆部屋にも独立記念で豆騎士一本書き下ろしておきました。ご興味ありましたらこちらもどうぞー。って、夜ですが(苦笑)

以下、拍手お返事です。

alexandriteとcitrineのリンクを探したのですが の方

お手数おかけしてしまって申し訳ありません!上にも書きました通り、本日夜にpearlなどがあるページにアップ致します。判りづらい書き方でお時間取らせてしまってすみません。今少しお待ち下さいませ。
2012年07月07日(土)   No.208 (ハボロイ)

名前
「あーッ!!もう無理ッ!!ぜんっぜん覚えらんねぇッ!!」
 机に座ってブツブツと言っていたハボックが、頭を抱えて大声を上げる。椅子の背凭れに背を預けてぐったりとするハボックに、ブレダが苦笑した。
「おい、諦めるなよ、ハボック」
「んなこと言ったって」
 椅子に寄りかかったままハボックはブレダをチラリと見る。ハアとため息をついて言った。
「無理。これ、人間の名前じゃねぇだろ」
「お前、それ相手の前で絶対に言うなよ」
 失礼な事を口にするハボックをブレダが眉を顰めて諫める。今ハボックたちは警護を担当することになった来週イーストシティを訪れる要人たちの名前を頭に叩き込んでいるところだった。
「大して難しくもないだろうが、こんな名前」
「えーっ?そうか?すっげぇ覚えにくいじゃん!」
 ハボックはガバリと体を起こして喚く。
「なんだ、このアブ……アブドゥルゥ……ハムおばさん?」
「アブドゥルサラミ・オバサンジョ」
「覚えらんねぇーッ!!」
 ブレダがサラリと名前を口にするのを聞いてハボックはバタッと机に突っ伏した。
「大体名前が長すぎんだよ。マーウイヤ・ウルド・モハメド・シディ・ハイダラって、幾つ名前使いたいんだ。そうかと思うと「ン」から始まる名前とかあるし!」
 有り得ないとハボックが喚いていると、執務室から出てきたロイが丸めた書類で金色の頭をポカリと叩く。大袈裟に痛がって頭を押さえるハボックにロイは言った。
「そういう失礼な事を言うんじゃない。ちゃんと覚えてきっちり警護しろ、いいな」
「覚えなくたってミスターA、ミスターBでいいじゃん」
「お前、そう言って相手のことを呼ぶ気か?」
 向こうにゃ通じんと睨まれてくしゃんと顔を顰めるハボックを見てブレダが笑う。
「大佐、コイツ学生時代、歴史はからきしダメでしたから」
 ハードル高いと思いますよ、とブレダが二十名からの名前が連ねられた書類をヒラヒラとさせて言えば、ロイがフムと腕を組んで考えた。
「判った、来週までにその書類にある名前を全部覚えたら私の家の戸棚から好きな酒を持っていっていい」
「マジっスかッ!!」
 ロイの言葉にハボックが飛び上がるようにして立ち上がる。
「ほんとッ?どれでもいいんスかッ?!」
「ああ、どれでも好きなものを持ってけ」
「ウオオッッ!!」
 頷くロイにハボックが雄叫びを上げてブレダの手から書類を引っ手繰った。
「後になってやっぱなしはダメっスからねッ、大佐!」
「そんなことは言わんが」
 ハボックの駄目押しに答えたロイがニヤリと笑う。
「そうだな、お前だけじゃ不公平だ。この中で一番早く名前を覚えた奴に好きな酒を進呈しよう」
「ええッ?!」
「お、じゃあ俺がハボより先に覚えたら俺が酒貰っていいんですか?」
「そう言うことだ」
「わあ、じゃあ僕も頑張ろう」
「私も大佐の酒なら欲しいです」
 ロイの言葉にフュリーもファルマンもやる気を見せて書類に手を伸ばす。
「言っておくがやるのは一人だけだからな」
「そんなッ!!オレが絶対不利じゃんッッ!!」
 喜んだのも束の間酒を貰えないという危機に、必死に救済策を訴えるハボックをそのままに、ロイはハハハと笑って司令室を出ていってしまったのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みです、嬉しいですv

今息子は7月考査の真っ只中で「世界史、カタカナばっかで覚えられん」と唸ってるんですが、「三頭政治ってなんで二回もあるわけ?五賢帝時代ってなんだよ、一人で治めろってのッ!」と喚いているのを聞いた時には思わず笑ってしまいました(苦笑)ゲームの武器やらキャラクター名とかなら幾らでも覚えてんじゃん、その勢いで覚えたら?って思うんですがね。ハボも名前覚えんの苦手そうだなぁって(笑)

それにしても気分が更新に向かないというか、いやまあ、もう明日の分は書き上げたので問題はないのですが、なんとういうか作業系がしたいなぁと。ぶっちゃけサイトの改装がしたいわけなんですが、そんな余裕は流石にないので仕方ないから「dump renew」ページを整理しました。髭と豆関係のをそれぞれ独立させ、「人工知能」とか「暗獣」とか、完結・継続中とも日記連載は上の方に持ってきました。いや、そうしないともう「吸血鬼」とか下の方に埋没しちゃってるから。それだけ放置しているともいいますが(苦笑)んで、髭関連は「alexandrite」豆関連は「citrine」に格納してtextページにリンク貼りました。ハボロイとロイハボが「diamond」「pearl」なので宝石名にしようと思いまして。緑なら「emerald」を使いたいところなんですが、以前出した無配本の「babble babble」のカプなし版を「emerald」にしちゃったので混乱を避ける為に「alexandrite」で。色が変わるのがかえってヒュっぽいかなと。「citrine」は黄色い石の中から選びました。まあ、もしかして変えるかもですがとりあえずこれで。中身はそんなに増えないと思いますがね。他も改装したいなぁ。でもそれ始めたら更新出来ない……。いつも変わり映えのないサイトでスミマセン。あ、そうそう髭部屋に独立記念で書き下ろし一本入れときました。ご興味おありでしたらどうぞーvちなみにアップは明日の更新に合わせてです(笑)

以下、拍手お返事です。

おぎわらはぎりさま

お返事おそくなりました。「金緑石」髭、黒いのがうちのデフォっスかね(笑)マッキー極太、思わずどんくらい太いのかHPで調べちゃいました(笑)「菫青石」両方のバージョン読んで下さってありがとうございますv確かにこれのハボは一番ピュアかもしれませんね。是非「treasure」に格納されてます亮水瀬さんの「MEMORY」もご一読下さい。「Another ending」の続きでとても素敵なお話です。「チョコっとバレンタイン」ロイのホットチョコでハボのザッハトルテ食べたらすんごい甘々な気分を味わえると思います(笑)「凌霄花」いやあ、あて馬って、ロイハボなりハボロイなりで他の男が絡んだらみんなある意味あて馬ですよ(苦笑)あとリザたちは無職になってないと思いますよ。所長いなくても多分探偵事務所は継続していくと思うので。お父様=ブラッドレイ!それは思ってもみませんでした(笑)
2012年07月06日(金)   No.207 (カプなし)

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