カプなし

=ハボロイ  =ロイハボ
=カプ色あり  =カプなし

2014年11月13日(木)
橙色の秋に10のお題5
2014年11月10日(月)
橙色の秋に10のお題4
2014年11月07日(金)
橙色の秋に10のお題3
2014年11月06日(木)
橙色の秋に10のお題2
2014年11月01日(土)
新・暗獣54
2014年10月29日(水)
橙色の秋に10のお題1
2014年09月20日(土)
弟子入り
2014年08月30日(土)
獣16
2014年08月09日(土)
八月九日 in 平行世界
2014年08月04日(月)
新・暗獣53

カテゴリー一覧
カプなし(303)
ハボロイ(32)
ロイハボ(101)
カプ色あり(61)
その他(16)

橙色の秋に10のお題5
5.秋の雨降り

 シトシトシト。
 窓の外に目をやれば灰色の空から雨が降ってくる。秋の長雨とはいえ、もう三日も降り続いている雨によく降るなぁと思っていると、ソファーにだらしなく寝そべって本を読む人がウンザリしたようなため息を零した。
「――――なんだ?」
 零れたため息に“ウンザリ”と書いてありそうな程気持ちのこもったそれに思わずクスリと笑えば、途端に黒曜石の瞳が睨んでくる。オレは咥えていた煙草を指で挟んで答えた。
「いやだって本当に嫌そうなため息だったから」
「本当に嫌なんだから当たり前だろう?もう何日降ってると思ってるんだ」
「今日で三日っスね」
「真面目に数えるんじゃない」
 聞かれたから答えたのにそんな事を言うなんて理不尽だ。そう思いながら見つめるオレに、彼は決まり悪そうに目を逸らした。
「バケツの底が抜けちまったみたいっスね」
 空のバケツの底が抜けたせいで雨がやまないのかもと冗談めかして言えば、彼が思い切り顔をしかめる。
「空のバケツは誰が修理するんだ、誰が」
「――――神さま?」
「一番信用ならん奴だな」
 少し考えて口にした答えに無神論者の彼がピシャリと言って空を睨んだ。
「そんな奴に任せるくらいなら私が修繕してやる」
「えっ?ちょっと?」
 言うなりソファーから立ち上がり彼は窓辺に歩み寄る。長雨でここのところ開けていなかった窓を開けると、懐から取り出した発火布をシュッと嵌めた。
 ――――ああ、こういうちょっとした仕草がカッコいいんだよ、この人。
 錬成陣が描かれた白い手袋を嵌めた手を胸元に寄せて空を睨む彼の姿に思わずオレはうっとりしてしまう。……って、いやいや、そんな場合じゃない。幾ら彼が名だたる錬金術師でも天候までは操れないだろうと止めようとするより一瞬早く、彼は腕を伸ばすとパチンと指を擦り合わせた。
 バチッと見慣れた錬成光が雨を煌めかせて空へと駆け上る。そんな事は起こり得ないと判っていてもつい空を見上げたが、やはり雨が止むことはなかった。それどころか。
「雨、強くなってないっスか?」
 さっきまではシトシトと降っていた雨が俄かに激しさを増して降ってくる。オレは雨が降り込んでこないように慌てて窓を閉めた。
「バケツの底直すどころかバケツそのものを壊したんじゃねぇの?」
「知るか」
 彼は不機嫌にそっぽを向くと手袋を外して懐に突っ込み、ソファーにドサリと腰を下ろす。
「フン」
 と、悔しそうに鼻を鳴らしてゴロリと寝そべり背もたれの方を向いてしまった。
「コーヒー淹れるっスね」
 不貞腐れた彼の様子に思わず零れそうになる笑いを噛み殺してオレはキッチンに向かう。コーヒーを落とし彼の為にはミルクと砂糖を多めに入れるとリビングに戻った。
「どうぞ」
 言ってカップをテーブルに置く。ほんの少し無視を決め込もうとして、それでもやはりコーヒーのいい香りには抗えないと言うように起きあがると、表情だけはムッとしたままカップに手を伸ばした。
「――――旨い」
「どうも」
 礼代わりの褒め言葉にオレは笑って答える。彼は窓の向こうを見やって言った。
「折角の休みが雨のせいで台無しだ。散歩にも行けやしない」
「晴れてたって散歩になんか行きやしないっしょ、アンタ」
「そんな事はない。雨だから仕方なしに本を読んでるんだ」
 絶対本心じゃないと思ったのが伝わったのか、彼がムッと鼻に皺を寄せて尚も言おうとした、その時。
 サーッと部屋の中に陽射しが射し込んでくる。驚いて窓に目をやれば、さっきまで降っていた雨がやんで陽が射していた。
「晴れてる……」
 呟いて俺は立ち上がると窓に寄る。窓を開ければ雲の切れ間から青空が覗いていた。
「バケツの底、直ったみたいっスね」
 オレは開けた窓から顔を出して空を見上げる。まったくバケツを直したとしか思えない程雨は見事にやんでいた。
「神さまとやらよりよっぽど頼りになるだろう?」
 ニヤリと笑って彼は自慢げに言う。雨上がりの空気は柔らかくてオレは陽射しが零れる空を見上げて言った。
「折角バケツを直して貰った事だし、散歩に行きましょうか」
「えッ?!」
 ギョッとしたような声に振り向けば本に手を伸ばしかけたまま固まる彼と目が合う。オレはニヤリと笑って言った。
「晴れてたら散歩に行くって言いましたよね?」
「ウ……ッ」
 流石に言い逃れ出来ずに口ごもる彼にクスリと笑って窓の外を見る。
「もう本はたっぷり読んだっしょ?外は気持ち良さそうだし――――あ」
 彼を散歩に誘い出そうと言葉を重ねようとしたオレは庭に敷き詰めたように降り積もった落ち葉に目を瞠った。
「すげぇ、真っ赤な絨毯みたいっスよ」
 オレは言って彼を手招く。面倒くさそうにしながらも窓辺にやってきた彼も窓から見える光景に目を見開いた。
「雨で散ったのか。見事だな」
「きっと公園はもっと凄いっスよ。ねぇ、散歩行きましょう、散歩」
 きっと公園は降り積もった落ち葉が綺麗な絨毯を描いているだろう。オレは窓辺に立つ人に散歩に行こうと強請る。
「仕方のない犬だな」
 そんなオレにため息を零しながらも嫌とは言わずに。
「コートを取ってこい」
「イェッサー!」
 笑う黒曜石に答えてオレは部屋を飛び出した。


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お題五つ目「秋の雨降り」です。秋の……って割にあまり季節感がない気がする(苦笑)お題を書いていていつも思うのですが、お題を考える方って何をイメージしてお題を考えてるのかなぁ……。きっと私が書いたのは全然イメージ違うだろうなって思います(苦笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

おお、蒸し焼き芋vvすっごい美味しそうです!ああ、食べたくなってきちゃった(笑)ザクロ、うわ、そんなドラマあるんですか?滅茶苦茶怖そうです……(苦)確かにロイとかハボとか筋肉凄くて噛みごたえありそう(爆)
2014年11月13日(木)   No.423 (カプなし)

橙色の秋に10のお題4
4.ザクロ

「ザクロというのは人肉の味がするそうだよ」
「はあ?なんスか、それ」
 私はテーブルに置かれたあまり口にしたことのない果物を見て言う。ご近所さんからその果物を貰ったのだと言う男は、顔をしかめて向かいの椅子に腰を下ろした。
「そんなの、聞いたことないっスよ。大体果物なのに肉の味がするわけねぇっしょ」
「つまらない男だな」
 至極全うな事を返されて私は眉間の皺を深める。裂けた黄紅色の果実から覗く種を包み込んだルビーのような実を指でつついて私は言った。
「ほら、この鮮やかな朱。人肉のような気がしないか?」
「気色悪い事言わんでください。食べづらくなるでしょうが」
「そんな繊細なタマじゃないだろう?」
 どちらかといえばワイヤー並みの図太い神経を持っている男だ。クスリと笑って言う私に彼はムッと鼻に皺を寄せて見せた。
「そもそもねぇ、アンタ人肉なんて食ったことねぇっしょ。ザクロ食ったってこれが人肉の味がするかなんてどうして判るんスか」
 ここまで、何一つ悪いことなどしていませんなどという清らかな人生は送っていないが、それでも流石に人肉を口にするような場面には出会っていない。確かにザクロを食べたところでこれが人肉の味なのか、判断などする事は出来ないだろう。ならば。
「だったら先に人肉を食ってみるか?」
 ザクロを食べて判断つかないなら先に人肉を食ってみればいい。そう提案する私を彼が空色の瞳を丸くして見つめる。空の色を映す瞳をじっと見つめて、私は言った。
「お前の肉はどんな味がするかな?よく鍛えられていて、歯を立てたらとてもジューシーだろうな」
 低く囁いて薄く開いた唇から舌を覗かせる。チロチロと唇を舌でなぞりながらも目を離さず見つめていれば彼の喉がゴクリと鳴った。
「────オレのこと、喰うんスか?」
「ああ、喰わせてくれるか?」
 軍人としての能力には定評のある彼だ。抵抗されれば私でもそう簡単には喰えないだろう。薄く笑みを浮かべて強請るように尋ねてみる。すると、大きく見開いて私を見つめていた空色が笑みに解けた。
「いいっスよ。アンタになら喰われてあげても」
 と、彼は私を甘やかすように言う。笑みを浮かべる空色の瞳をスッと細めて、彼は言った。
「その代わりって言っちゃなんスけど、アンタに喰われたらオレ、喰らい返しますよ?アンタの中から内蔵を喰いちぎって血肉を啜って────オレもアンタを喰らいます」
 それでもいいなら、と彼は私を真っ直ぐに見つめて言う。その提案に私はゾクゾクと背筋を震わせた。私に喰われた彼に躯の中から喰われ返す。なんと(おぞま)しくも甘い誘惑だろう。
「いいな、そうすれば私もお前も人肉の味を味わえるわけだ。それも極上の」
「悪趣味っスね」
 楽しげにクスクスと笑えば彼が呆れたように言う。
「好きだろう、そういうの?人肉の味を確かめたくなったら、その時はつき合え」
「仕方ない人だなぁ」
 それでも嫌とは言わずに。
「まあ、とりあえずはこれで我慢してください」
 そう言って彼が差し出すザクロの実を、私は受け取りルビー色に輝くそれに齧りついた。


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お題四つ目「ザクロ」です。随分昔にマンガか何かで「ザクロは人肉の味がする」っていうのを読んだことがありましてね。「人肉の味がするって、人肉食べた事がなければそれが同じ味かなんて判らないんじゃないのかなぁ」って思ったもので(苦笑)その後ザクロを食べた時は「別にフツウ?」って(笑)やっぱりあの赤い実が妖しげな想像を掻き立てるんでしょうかね?
2014年11月10日(月)   No.422 (カプなし)

橙色の秋に10のお題3
3.落ち葉

「――――?」
 書類を書いていたロイは呼ばれたような気がして顔を上げる。執務室を見渡したが部屋の中には己以外誰もおらず扉も閉まったままだった。
「気のせいか……?」
 確かめるように呟いてみても答える者はいない。やはり気のせいだったのだろうと再び書類に目を落としたロイの耳に、今度はもう少しはっきりと声が聞こえた。
「大佐ァ!」
「ハボック?」
 ロイは腰を上げてキョロキョロと部屋の中を見回す。扉越し、司令室の大部屋から呼んでいるのかと思ったが、その時風で窓がガタガタと揺れてロイは呼び声が外から聞こえているのだと気づいた。
「ハボック?」
 ガラリと窓を開けてロイは身を乗り出す。そうすれば窓の下、中庭で箒を持ったハボックが手を振っていた。
「大佐ァ」
 ヒラヒラと手を振って笑みを浮かべるハボックにロイは眉を顰める。
「何をしてるんだ、お前は」
 と問えば。
「落ち葉掃きィ」
 と間の抜けた声が返ってきて、ロイは益々眉をしかめた。よく見れば中庭のあちこちに箒を手にした男達がウロウロしている。それがハボック小隊の部下達だと気づいてロイは言った。
「訓練はどうした?」
「早く終わったんで奉仕活動っス」
 ハボックはそう言ったがあまり真面目に掃除をしている様子は見られない。おそらくは気分転換の息抜きなのだろう、ロイは「散らかすなよ」と一言言って窓を閉めた。ロイは机に戻ると書類を手に取る。窓越し微かに聞こえる声を聞きながら書類を片付けていると、少ししてまた呼ぶ声が聞こえた。
「今度はなんだっ?!」
 しつこく呼ばれて無視も出来ずにロイは窓を開けて怒鳴る。見下ろせばいつの間にか大きな落ち葉の山が出来ていてハボックがその横で両手を振っていた。
「大佐ァ、火、頂戴!火!」
「焚き火する気か?ライターがあるだろう、ライターが」
 ヘビースモーカーのハボックならライターの一つや二つポケットに入っているだろう。そう言えばハボックが両手でバッテンを作って言った。
「上手くつかないんスよ。発火布でボンッてやって!」
「上官をライター代わりに使うな」
 小さなライターでは上手く落ち葉に火が移らないのだろう。顔をしかめるロイに部下達も口々に声を上げた。
「マスタング大佐、お願いします!」
「頼みます、マスタング大佐!」
「大佐ァ!」
 最後に甘えるようにハボックに呼ばれてロイは小さく舌打ちする。渋々懐から発火布を取り出し手に嵌めた。窓から腕を伸ばしてパチンと指を鳴らせば、山と積まれた落ち葉に向かって焔が走り出た。
「おお〜ッ!」
 ボンッと音を立てて落ち葉の山に火がついたのを見て男達が感嘆の声を上げる。
「ありがと、大佐ァ!」
「フン」
 ハボックが満面の笑みを浮かべて礼を言うのにロイは鼻を鳴らして窓を閉める。これでやっと邪魔されずにすむと、ロイはやれやれと椅子に腰を下ろした。
 カリカリとロイがペンを走らせる音だけが執務室を支配する。そうしてどれ位時間が経っただろう、俄かに扉の向こうが騒がしくなったと思うとゴンゴンと扉を叩く音がした。
「大佐、開けて〜」
 音の位置から察するにどうやら扉を蹴っているらしい。ロイはウンザリとしたため息をつくとガタンと椅子を蹴立てて立ち上がり乱暴に扉を開けた。
「ハボック!お前なぁッ!」
 何度邪魔をすればすむのだと目を吊り上げるロイの前にハボックが手にしたものを差し出した。
「大佐、焼き芋どうぞ」
「――――芋?」
 目を丸くしたロイは反射的に差し出された芋を受け取る。「アツッ」と手の上で芋を弾ませるロイの横を通ってハボックは執務室の中に入ると応接セットのテーブルの上に抱えた焼き芋を下ろした。
「さっきの落ち葉で焼いたんスよ」
「焼き芋なんてやってたのか」
 火をつけろと言われたが単に燃やす為だけと思った。そう言うロイにハボックが焼き芋を一本取り上げて答えた。
「春に畑起こし手伝った幼稚園から豊作だったってサツマイモ山ほど貰ったんスよ」
 ボランティアでハボック小隊の何人かでそんな事をしていた事をロイは思い出す。そうであればこれはハボック達が貰うべき報酬だろうと言うロイにハボックが言った。
「大佐が火ィつけてくれたから」
 お礼っスとハボックが笑う。手にした芋を半分に折って言った。
「小隊の連中でも食べきれない位沢山あるんスよ。どうぞ食べて」
「そうか?それなら遠慮なく」
 ロイは言って漸く持てる位になってきた焼き芋を折った。ホカホカと湯気を上げる金色の実にロイは目を細める。
「旨そうだ」
 フウフウと息を吹きかけてカプリと噛みつき、フーフーと熱い湯気を吐き出す口の中に広がる自然の甘みにロイは笑みを浮かべた。
「甘いな。しっとりしてホクホクだ、旨い」
「でしょ?落ち葉の焚き火で焼くとじんわり焼けて旨いんスよ」
「いいな、これ。落ち葉がなくなるまで毎日やってくれ」
「訓練は?」
「秋の間はしなくていい。私が許可する」
「マジっスか?」
 とんでもない事を言い出す上官にハボックがクスクスと笑う。
 窓の向こう落ち葉が風に舞い踊るのを眺めながら、ロイとハボックは秋の味覚を堪能したのだった。


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お題の三つめ「落ち葉」です。決して「焼き芋」とか「焚火」とかじゃありません!(爆)いやあ、最初ハボックが落ち葉掃きする話を書いていたのですが、なんだがグダグダになってしまったので芋を焼かせてみたら、どうにも「焼き芋」がお題じゃないかって話になってしまいました(苦笑)まあネタから逸れるのはいつもの事だし!(コラ)今日は風が強かったので落ち葉が青空に舞ってなかなか綺麗でしたよ。……って話を書けばお題に沿ったのか!でも、近所のスーパーで秋になると売り出す焼き芋がいい匂いだなぁと思いながら側を通った時点で、もう頭が焼き芋に侵蝕されててダメですね(苦笑)
2014年11月07日(金)   No.421 (カプなし)

橙色の秋に10のお題2
2.長い影

「ロイお兄ちゃーん!」
 家に向かって通りを歩いていたロイは、背後から聞こえた声に足を止める。振り向けば金色の頭をした小さな姿が駆けてくるのが見えた。
「ハボック」
「やっと追いついたぁ」
 ロイの腰にぱふんと抱きついてハボックが言う。
「お兄ちゃん、足速い〜」
 ハアハアと息を弾ませてそう言うハボックに、ロイは目を細めた。
「今帰りか?」
「うん。お兄ちゃんはまた図書館?」
 バンドで括った本を小脇に抱えているのを見てハボックが問いかける。ああ、と頷くロイにハボックが言った。
「そんな難しい本ばっかり読んでたら頭がグルグルしちゃうよ?」
 そう言って眉間に皺を寄せる幼い顔にロイはクスリと笑う。
「ハボックはどんな本が好きなんだ?」
「オレはねぇ、おっきなドラゴンがでてくるやつ!」
 そう言って空色の瞳をキラキラと輝かせるハボックにロイは小さい頃自分も読んでいたファンタジーを思い出した。
「その本なら私も読んでたよ」
「ホントっ?お兄ちゃんも読んだ事あるのっ?」
 大好きなロイが自分の大好きな本と同じ本を読んでいたと知ってハボックが嬉しそうに顔を輝かせる。ロイはそんなハボックの手を取り帰ろうと促した。
「わーっしょい!わっしょい!わっしょい!ゆうやけわっしょいしょい!」
 二人並んで歩けばハボックが楽しそうに歌い出す。繋いだ手を大きく振って歩いていたハボックがピタリと足を止めたと思うと、ロイの手を離して走り出した。
「ハボック?」
「動いちゃダメ!」
 突然の事に追いかけようと足を踏み出したロイにハボックが言う。何事かと見ていると、ハボックが少し走ったところで足を止めた。
「オレの方が高い〜!」
 夕陽に照らされて地面に伸びる長い影を見下ろしてハボックが言うのにロイはクスリと笑う。ゆっくりと歩き出せばハボックが足を踏み鳴らした。
「あーッ、お兄ちゃん、動いちゃダメっ!」
 頬を膨らませて走り出すハボックにロイはすぐ追いついて小さな手を取る。ムゥと不満げに見上げてくる空色を見つめてロイは言った。
「すぐお前の方が高くなるさ」
「――――ホントに?」
「ああ。だから今は一緒に帰ろう」
 大きくなったら手を繋いで歩く事も出来なくなるだろう。だから、と思うロイの気持ちなど気づかずハボックがニッコリと笑った。
「うんっ」
 繋いだ手を引っ張るようにハボックが歩き出す。
「「わーっしょい!わっしょい!わっしょい!ゆうやけわっしょいしょい!」」
 ハボックと一緒に歌いながらロイは切ない気持ちで長い影を見つめた。そして幾つもの季節が過ぎ――――。

「大佐ァ!」
 夕焼けに染まる通りを歩いていれば背後から聞こえた声にロイは足を止める。手を振って走ってきた長身がロイの側まで来るとフウと一息漏らして言った。
「相変わらず足速いっスね」
「そうか?」
 言われてロイは首を傾げる。ロイが手にした本の袋を取り上げてハボックが言った。
「図書館の用事は終わったんスか?」
「ああ」
「じゃあ一緒に帰りましょ」
 ハボックはそう言うと袋を持った手と反対の手でロイの手を取る。手を繋いで歩き出したロイは足元に長く伸びる影を見下ろして笑みを浮かべた。
「なんスか?」
「いや……いつの間にかお前の影の方が高くなったなと思って」
「そういやそうっスね」
 気がつかなかったとハボックは言って思い出したように笑った。
「オレ、ガキの頃こうしてアンタと手を繋いで帰るの大好きだったんスよね。だからいっつもアンタが帰る頃狙ってあの道に行ってたんスよ」
「そうなのか?」
 言われてみれば図書館からの帰り道、必ずといっていいほどハボックと手を繋いで帰っていたような気がする。
「今も好きっスけどね。これからもずっと手ぇ繋いで帰りましょうね」
 そんな風に言うハボックの横顔をロイは驚いたように見上げた。
「――――そうだな」
 ゆっくりと視線を正面に戻せば長く伸びた影が見えてロイは答える。いつの間にか追い越された背の高い影を見つめて歩きながら、ロイは幸せそうに笑った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、頑張る素です、嬉しいですv

お題二つ目「長い影」です。もう11月も6日だと言うのにまだ二つ目ですよー。そして明日は立冬だってさ!(爆)まあ11月は秋って事で、せめて半分くらいは書きたいなぁ(苦笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

暗獣、うふふ、はぼっく来たら山ほどあげちゃいそうですよねvここでの髭はいいパパってことで!(笑)風、そうなんですよね、諦めろとか言っておきながら本当にハボが自分の事好きでなくなったら嫌っていう、とんでもない男です(笑)書けば書くほど嫌なヤツになるなぁ……ハボに嫌われたらどうしよう(爆)

暗獣ハボが来てくれるなら  の方

うふふ、暗獣ハボの為なら頑張っちゃいますよね!とーってもキュートと言って下さって嬉しいですvありがとうございます!
2014年11月06日(木)   No.420 (カプなし)

新・暗獣54
(一日遅れですがハロウィン話(苦笑)


「出来たぞーっ、どうだッ!」
 ハボックと二人こもっていた部屋から出てきたヒューズが得意げに声を張り上げる。タタタと走ってきたハボックがポスンとロイに抱きついて空色の瞳で見上げた。
「ろーいっ」
 ハボックは嬉しそうに自分の格好をロイに見せる。だが、ロイは眉を顰めて言った。
「なんだ、これは」
「なんだって見りゃ判るだろう?狼男だよ。似合ってるだろッ」
 満面の笑みを浮かべて片膝をついたヒューズがハボックの肩を抱いて言う。金色の髪の中からひょこっと生えた耳とフサフサの尻尾を見てロイは言った。
「これのどこが仮装だ?まんまじゃないか」
 手には肉球のついたフェイクファーの手袋、足にも同じようなファーのブーツを履いているとはいえ、耳と尻尾は自前だ。正直仮装と言うにはあまりに普段のハボックと変わらず、ロイは思い切り顔をしかめた。
「この格好で外を歩かせる気か?バレたらどうするんだ」
 ハボックをキメラと思い込んだ軍の連中が家に押しかけた事が切欠でロイとハボックが辛い別れをしなければならなくなったことは、忘れたくとも忘れられない悲しい記憶だ。あれ以来ロイはハボックの事が誰かにバレたりしないよう細心の注意を払い、ハボックにも耳や尻尾はしまっておくよう口を酸っぱくして言ってきたのだ。そんな日々の努力を蔑ろにするつもりかと目を吊り上げるロイにヒューズは言った。
「逆だよ、ロイ。こんなにあからさまに耳や尻尾を出してたら誰も本物だとは思わないだろう?興奮して飛び出たりなんて事になったらそれこそ目も当てられないし、ハボックちゃんにピッタリのいい仮装だと思うぜ?」
「それはまあ、確かに……」
 ヒューズが言うことはもっともだ。確かに外でうっかり尻尾や耳が飛び出る事を考えたら、最初から出しておくというのはいいかもしれない。何よりハボックが自慢の尻尾を抱えてキラキラした目で見つめてくるのをみれば、とても駄目とは言えなかった。
「判った、確かに何でも仮装で通るハロウィンだしな」
「だろ?」
 漸く同意の言葉を口にするロイにヒューズがニヤリと笑う。ロイはハボックの前にしゃがむと尻尾を抱き締めるハボックの手に己のそれを重ねて言った。
「いいか、ハボック。今日は特別だからな。今日が過ぎたら絶対外で尻尾や耳を出したら駄目だ。私と離れ離れにはなりたくないだろう?」
「ろいっ」
 そんなのは絶対嫌だとハボックが泣きそうな顔で首を振る。そんなハボックをそっと抱き締めてロイは言った。
「判ってるならそれでいい。それじゃあ可愛い狼男を街のみんなに見せに行こう」
「ろーいっ」
 そう言われてハボックがにっこりと笑う。立ち上がってハボックと手を繋ぐロイにヒューズが紙袋を差し出した。
「街は混んでるだろうからな。迷子にならないようにこれを使えよ」
 そう言うヒューズから受け取った紙袋から出てきたのはカボチャにコウモリの羽が生えたリュックだった。
「この紐の先をお前のズボンのベルトにつけておくんだ。そうしたらハボックちゃんが一人でどっかに行っちゃったりしないだろ?」
 リュックについた紐を指してヒューズが言う。なるほどと頷いたロイはハボックにカボチャのリュックを背負わせて、紐の先をベルトに取り付けた。
「ありがとう、ヒューズ。お前もたまには気の利いた事をするな」
「一言多いんだよ、お前は」
 素直に礼だけを言わないロイにヒューズが眉を寄せる。それでもハボックを見て言った。
「それじゃあハボックちゃん、楽しんでおいで。一杯お菓子を貰ってくるんだよ」
「ろいっ」
 ニッコリ笑って頷いたハボックは、ヒューズに向かって手を伸ばす。ありがとうと言うようにキュッと抱きつかれて、ヒューズは髭面を緩めた。
「うーん、ハボックちゃんっ、どうせならキスもしてくれると嬉しいなぁ」
「何を言ってるんだ、お前はっ!調子に乗るなッ、離れろッ!」
 髭面を指差して「ここ、ここ」と主張するヒューズをロイが目を吊り上げて引き剥がす。ハボックに「キスする必要なんてないからな」と言い聞かせるロイに苦笑して、ヒューズが言った。
「ま、とにかく楽しんでこいよ」
「ああ――――ありがとう、ヒューズ」
 今度は素直に礼を言われてヒューズが擽ったそうに笑う。これから急いでセントラルに戻るというヒューズを見送ると、ロイはハボックを連れて家を出た。
 ハロウィン一色の街はあちこちにカボチャやコウモリやオバケの飾り付けがされて賑やかだ。キラキラと目を輝かせたハボックが早速ロイの手を離して走り出した。
「なるほど、これは便利だ」
 普段より人通りの多い中、小さなハボックを見失う心配がない。ロイは足を早めると、ジャック・オ・ランタンの前に座り込んでいるハボックに歩み寄った。
「ろーいっ」
「ふふ、変わったランタンだな」
 カボチャをくり抜いた顔にはヒゲと牙があって、頭に乗せられた帽子からは耳が覗いている。猫好きな誰かが作ったらしいカボチャと暫くの間見つめ合って、漸く満足したらしいハボックが立ち上がってロイの手を取った。手を繋いで歩き出してすぐ、ハボックは再び走り出すとお菓子を配っているドラキュラの近くで足を止める。じっと見つめるハボックに気づいたドラキュラが、ニッコリと笑って言った。
「可愛い狼男だね!凄い尻尾だ」
「ろーいっ」
 自慢の尻尾を褒められて、ハボックは嬉しそうに尻尾を振る。
「凄い!動くんだ!」
 フサフサと揺れる尻尾に目を瞠ったドラキュラがハボックの尻尾に手を伸ばすのを見て、ロイはギクリとして一歩踏み出した。
「ろい〜」
「凄いな、どんな仕組みなんだい?」
 そんなロイの気持ちなど気づきもせず、ドラキュラに尻尾を触らせたハボックはお菓子を貰ってロイの所に戻ってくる。嬉しそうにお菓子を見せられれば怒る訳にもいかず、ロイはそっとため息をついた。
「よかったな」
「ろいっ」
 ハボックはニコッと笑って頷く。カボチャのリュックにお菓子をしまうと、ロイとは手を繋がず走り出した。
「こらこら」
 紐で繋がった可愛い狼男を追いかけて、ロイも小走りに走る。ハボックは自分よりずっと大きい狼男に駆け寄ると尻尾を探して狼男の周りを回った。
「おっ?仲間じゃん!」
 ハボックを見て男が楽しそうに言う。ハボックは金色の尻尾を抱えるようにして男に見せた。
「ろーいっ」
「ん?ああ、尻尾か。実は他の狼男とケンカしたら千切られちゃったんだよ」
「ろいッ!」
 そう聞いてハボックは飛び上がる。泣きそうになって尻尾を抱き締めるのを見て、男は「しまった」と言う顔をした。
「あー、大丈夫、大丈夫。ソイツとは仲直りして尻尾も返してもらったから!明日には元通りくっつく予定!」
「ろぉい……?」
「うん、ビックリさせてゴメンな。お詫びにこれ」
 男は言ってハボックにカボチャの形をした棒がついたキャンデーを差し出す。ハボックの金髪をクシャリとかき混ぜ、ロイにすまなそうに頭を下げて行ってしまった。
「ろーいー」
「大丈夫、明日にはくっつくってさ」
 心配そうに見上げてくるハボックにロイは笑って言う。貰ったカボチャのロリポップを指差して言った。
「よかったな、可愛いキャンディ貰えて」
「ろいっ」
 言えば漸くハボックが笑みを浮かべる。そのキャンディもリュックにしまって、二人は再び歩き出した。
 店のディスプレイを覗きお菓子を貰って、二人はハロウィンの街を楽しむ。小さな狼男はどこに行っても人気者で、気がつけばリュックにはお菓子が一杯入っていた。
「よかったな、ハボック」
「ろぉい!」
 ニコニコと頷くハボックの手を引いてロイは家に帰る。やれやれとリビングのソファーに腰を下ろしたロイに、リュックの中から取り出したものを手にハボックが駆け寄ってきた。
「ろいっ」
「――――くれるのか?」
「ろい!」
 ニコニコと笑いながらハボックが差し出したのは黒猫のロリポップだ。頷くハボックの手からロリポップを受け取ってロイはハボックを抱き締めた。
「ろーい」
「楽しかったか、そうか」
「ろぉいっ」
「うん、来年もまた行こうな」
 来年もそのまた来年もずっとずっと。
 その夜二人はジャック・オ・ランタンに火を灯して、トリック・オア・トリートに訪れた子供達にお菓子を渡して過ごしたのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになります、嬉しいですv

「暗獣」です。ハロウィンに間に合いませんでした(爆)でも折角書いたので(苦笑)カボチャにコウモリの羽根のリュックはМさんのアイディアです(笑)迷子防止のひも付きリュックなんて、ロイには全く思いつかないだろうなぁ。髭、伊達にパパしてない(笑)
2014年11月01日(土)   No.419 (カプなし)

橙色の秋に10のお題1
1.秋の夕日とキミのくちびる

「どこに行ったんだ?ハボックの奴……」
 ロイはハボックの姿を探して通りを歩いていく。さしかかった角で足を止めたロイは、目を閉じてさっき聞いたはずのハボックの声を思い起こそうとした。

「ねぇ、大佐。散歩行きましょうよ、散歩」
 窓辺の椅子に腰をかけて本を読んでいると部屋に入ってきたハボックが言う。文字を目で追いながら生返事を返せば、ハボックがロイの顔を覗き込むようにして言った。
「大佐ぁ、今日は絶好の散歩日和っスよ。行きましょうってば」
「う、ん……そうだな」
 間近から見つめる視線を感じながらもロイの意識は本に向かったままだ。そんなロイにハボックは最後の足掻きとでもいうようにもう一度だけ言った。
「土手んとこ、コスモス通りって今年はいっぱい咲いてるんですって。ねぇ、一緒に行きましょう」
「────」
 精一杯強請ったハボックの言葉は、だが文字の海に揺蕩うロイの意識には届かない。結局ハボックはがっかりと一つため息をついて部屋を出ていった。

「まったく、少し位待ってくれたっていいだろう?」
 何とか記憶の端に引っかかっていたハボックの言葉を思い出して土手への道を歩きながらロイは呟く。折角の二人そろっての休みを本に夢中でハボックに淋しい思いをさせてしまった罪悪感を心の底に必死に押し込めて、ロイはハボックの瞳と同じ色の空を見上げた。
 気がつけば季節は過ぎて高い空には魚に似た雲が浮かんでいる。確かにハボックの言うとおり散歩にはうってつけの陽気で、本にしがみついて一日の大半を過ごしてしまったことをロイは今更ながらに後悔した。
「あ」
 ひょいと角を曲がれば土手沿いにコスモスが長く長く連なっている。風に揺れる背の高い白やピンクの花の群は確かに見事で、ロイは傍らにハボックがいないという状況を作り出した自分に猛烈に腹がたった。
「くそ……、どこにいるんだ?うちの犬は」
 それでも素直には自分の非を認められないまま、ロイは土手沿いの道を歩いていく。ゆらゆらと揺れる花の間に目指す金色は見つからず、ロイは眉間の皺を深めた。
 秋の陽は急速に傾き、風が冷たくなっていく。上着を着てくればよかったとロイが後悔した時、土手の上に腰掛けて煙草を咥えるハボックの姿が見えた。
「おい」
 ロイは咲き誇るコスモスの向こう、土手に腰掛けるハボックに向かって声をかける。そうすれば空に上っていく煙草の煙を目で追っていたハボックが、その空色の視線をロイに向けた。
「大佐」
 自分を見たものの腰を上げようとしないハボックに、ロイはムッと眉をしかめる。小さく舌打ちしながらもロイはコスモスをかき分けるようにして土手を上ってハボックのところまで来た。
「どうして待てが出来ないんだ」
「待てって言われなかったっスもん」
 ジロリと睨んで言えば、膝を抱えてハボックが答える。オレンジ色の夕日を弾いていつもより濃い色に染まった金髪に手を伸ばしてくしゃりとかき混ぜると、コスモスを見下ろしていたハボックがロイを見上げた。
「飼い主の言いたいことくらい察しろ」
「うわあ、飼い主勝手!」
 見上げてくる空色を見返して言うロイにハボックが思い切り眉を下げる。情けなく唇の端に引っかかった煙草を取り上げると、ロイは一口吸ってコスモスを見渡した。
「────綺麗だな」
「でしょ?」
 ポツリと零した呟きにハボックがまるで自分の手柄のように言う。その唇が夕陽を受けて艶やかに輝くのを見たロイは、引き寄せられるように腰を屈めてハボックに顔を寄せた。
「悪かったな」
 小さく詫びた唇がチュッと軽く重なれば、オレンジ色の夕陽の中ハボックが嬉しそうに笑った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになります、嬉しですーv

最近どうも日記ネタが見つからないので、久しぶりにお題に挑戦してみました。「Heaven's」さまからお借りしました「橙色の秋に10のお題」です。秋とか言ってもう10月も末だったりするんですが、11月一杯は秋だよね?(苦笑)まあ、10個全部書けるかは微妙ですが、まったり頑張ってみようと思いますのでどうぞお付き合い下さいませv

以下、拍手お返事です。

なおさま

ナンバー、あはは、確かにロイから出る→の方が断然多そうですよね(笑)あ、そうか。「I」だから盗んで自分の車につけても全然オッケーですもんね!ハボック小隊の部下たちに狙われそうです(笑)セレスタ、デヴィット・ラムゼイさん……残念ながらみた事なかったのでネットでお顔を拝見……なるほどー。でももうちょっと若ければ!(コラ)ふふふ、どうしても一歩が踏み出せないハボック。今度こそロイ頑張りますよ、きっと!風、まったくもってふざけた心情ですよね!どうしてこんな男がモテるんだか(爆)

阿修羅さま

ナンバープレート、お楽しみ頂けて嬉しいですv風の行く先、そうですねぇ、襲っちゃうとそれこそ躯だけになっちゃいそうなので、ここはもう少しロイに辛抱して貰おうかなぁと(苦笑)オリジナル、すみません、私も小説はSFとかファンタジー、ミステリー辺りばかりで恋愛ものは読まないのでよく判らないです(汗)でも、敢えて言うならどういう年齢の方に読んで欲しいかと言う事と、どの程度のエロ描写が必要かって事じゃないのかなと思いますー。
2014年10月29日(水)   No.418 (カプなし)

弟子入り
「オレを錬金術師にしてくださいッ!お願いしますッ!」
 家の門を開けようとした時いきなり飛び出してきた男にその言葉と共に頭を下げられて、ロイは思い切り顔をしかめる。胡散臭そうに見つめれば、男は慌てて顔の前で手を振った。
「怪しいもんじゃないっス!オレはただ焔の錬金術師に教えを乞いたくて――――」
「お前が怪しい者ではないとどうして判る?」
 ロイは男の言葉を遮ってピシリと言う。
「そもそもこんなところにいきなりやってくるなんて、消し炭にされても文句は言えんぞ」
 実際発火布を填めていたら迷うことなく指を鳴らしていた。銃を抜かなかったのは一緒にいたヒューズがダガーを掌に落とすのが判ったからだ。ロイに言われて金髪の男は背の高い体を小さく縮めて上目遣いにロイを見た。
「いきなりやってきたのは謝ります。でも他に方法を思いつかなくて……」
「そんなのはお前の勝手な事情だな。私には関係ない。とっとと帰れ」
「そんなっ!お願いしますッ、オレ、錬金術師になりたいんス!」
 男はロイの冷たい態度に声を張り上げて一歩出る。縋るように見つめてくる空色にほんの少し罪悪感を覚えながらロイは言った。
「教えを乞いたいならちゃんとその筋を通してこい。なんの身元の保証もない奴をホイホイと弟子に出来るか」
 ロイはきっぱりと言って門を開けて中に入ろうとする。だが、ついてくると思ったヒューズの声が背後に聞こえて、ロイは足を止めた。
「お前さん、なんで錬金術師になんてなろうと思ったんだ?」
「えっ?それはその……オレが住んでる所はすげぇ田舎で、禄なもんないし壊れた物を直すにしてもすぐには部品も手に入らないし大変なんスよ。ところがこの間旅の錬金術師が来て、パンッて拍手一つで何でも直したり作り替えたり……。だからオレも錬金術師になったらみんなの役にたてるかなぁって思って……。だからっ!」
 と男はロイを見る。
「オレを錬金術師にしてくださいッ!お願いしますッ!」
 男はそう言ってもう一度ロイに深々と頭を下げる。ロイはそんな男を見てため息をついた。
「幾ら頼まれても無理なものは無理だ。諦めて帰れ」
 何度頭を下げても頷いてはくれないロイに男は顔を歪める。ロイはこれ以上罪悪感を感じていたくなくて、今度こそと背を向けて歩き出す。するとヒューズが立ち去ろうとするロイの背に向かって言った。
「いいじゃないか、弟子にしてやれよ。オレが後見人になってやるから」
「は?何を言い出すんだ、ヒューズ」
「故郷のみんなの為なんて今時健気じゃねぇか。なぁに、コイツが何か悪さしようとしたらオレがコイツで始末してやるから」
 と、ヒューズは目にも留まらぬ速さでダガーをハボックの喉元に押し当てる。ギョッとして見開く空色の目元にチュッとキスを落として言った。
「それともなにか?お前、コイツを錬金術師にしてやれるほどの腕はないってか?焔の錬金術師も大したことねぇな」
 ヒューズは肩を竦めると紅くなってキスされた目元をゴシゴシとこすっている男に言った。
「残念だったな、お前を錬金術師にしてやるほどの腕はないってさ。悪いが田舎に帰りな」
「そんな……」
 すまなそうにヒューズに言われて男はがっくりと肩を落とす。
「……そっか、腕がないなら仕方ないっスね……」
 そう呟くとしょんぼりと項垂れて二人に背を向け歩き出そうとする男にロイが声を張り上げた。
「ちょっと待てッ!私に錬金術を教える腕がないだと?聞き捨てならんな」
「え?だってこの人が――」
「いいだろう、教えてやる。そんなに錬金術師になりたいと言うならな」
「本当っスかッ?」
 ロイの言葉に男がパッと顔を輝かせる。ロイはフンと鼻を鳴らして答えた。
「ああ、その代わり私の修行は厳しいぞ。途中で泣き言言っても聞かんからな」
「泣き言なんて言わないっス!」
 男は満面の笑みを浮かべて叫ぶ。
「頑張ります!よろしくお願いしますッ!」
 叫んで深々と頭を下げる男にヒューズが言った。
「よかったなぁ。で?お前、名前なんて言うんだ?」
「ハボックっス、ジャン・ハボック!どうぞよろしくお願いしますッ、マスタング大佐!」
「――――あ、ああ。しっかり気張れよ」
「はいっ」
 空色の瞳をキラキラと輝かせて答えるハボックに、ロイはドキリと跳ねた心臓を誤魔化すようにぶっきらぼうに答えた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、二年半ぶりに更新しましたーッ!ポチっとして下さった方、ありがとうございます、嬉しいですv

「舞妓はレディ」を見てきました。予想に違わず楽しい映画でした。しかし、方言って全然判りませんね(苦笑)私の母は両親が長崎の出なのでリズムは覚えがあるけれど名詞が全然違うのでやっぱり判らないと言ってました(笑)
そんなわけで「舞妓になりたい」ならぬ「錬金術師になりたい」ハボックでしたー。いや、舞妓でもよかったんですけどね(笑)
でもって、今日は「蜩の記」の試写会に行ってきました。これはこれでいい映画でしたよ。ちょっと寝ちゃったけど(爆)んで、遊んでばっかりいたら更新がね……。先週もサボったので今週は書くつもりだったんですけど、すみません、またハボロイお休みですー(苦)来週こそは何とかー(汗)

以下、拍手お返事です。

なおさま

黒スグリ、ええ、きっと効果ないと思います(笑)ふふふ、妄想大暴走大歓迎ですよ!前屈みのロイ、イイ男なだけに痛いですね(笑)セレスタ、なかなかすぐに手を取り合ってとはいかないようです…。肌をツヤツヤさせたブラッドレイ!想像すると笑えます(苦笑)風、うわ、ブラッドレイと仲よしこよしのロイ!い〜や〜〜ッ(爆)秋の、確かにハボックなら幾らでも食べられそうですv

阿修羅さま

風の行く先、うふふ、楽しんで下さって嬉しいですvドS大歓迎ですよッvvおお、避難勧告!本当に最近の天候不順は怖いですね。大きな災害にならない事を祈るばかりです。

ちいさーい声で言わせてください  の方

あはは、いやあ、確かに言われてみるとその通りかも!(笑)いい加減にしないとハボックに見捨てられちゃうのでその辺にしておけと言ってやろうと思います(笑)
2014年09月20日(土)   No.414 (カプなし)

獣16
『わっ』
 リビングの扉を開けて入ろうとすれば、床にべしゃあと寝そべったハボックを踏みつけそうになる。私はハボックを踏みかけた足の先で床に横たわる金色の体をちょんちょんとつついた。
『そんなところで何をしてるんだ。踏むぞっ』
 そう言ってつついた足を持ち上げて踏みつける真似をする。だが、いつもならそこで慌てて逃げ出すハボックが、顔も上げずに視線だけ私に寄越した。
『だって暑いんスもん……床の上なら少しは冷たいかなぁって……』
 普段のハボックには考えられないほど疲れきった声で言う。ハアとため息をついたハボックはゴロンと転がってだらしなく腹を晒した。
『暑い……暑すぎ……』
『お前な』
 仮にも獣たる身、そう簡単に腹を晒していいのかと顔をしかめてハボックを見下ろす。だが、ハボックは少しでも涼しさを得ようとするように金色の体を床にこすりつけた。
 今年の夏はいつにも増して猛暑が続いている。短毛種である私でもこの暑さはきついものがあるが、ふかふかの毛を生やしたハボックにしてみたら相当暑いに違いなかった。
『大佐ァ、どうしたら涼しくなるっスかねぇ……』
 普段は鬱陶しいほどに元気なハボックがぐったりした声で言う。私は夏用の清涼感のあるラグに身を横たえて答えた。
『毛を剃ったらいいんじゃないか?そうだ、ヒューズにバリカンで剃って貰え。そうしたら私がそれを貰って冬用のコートにしてやる』
 ふさふさの毛が暑いなら剃ればいい。実に簡単明瞭な答えを言えば空色の瞳が睨んでくる。恨めしげに私を見て、ハボックが言った。
『大佐ってば他人事だと思って全然まじめに考えてねぇっしょ。自分が毛が短いからって』
『なんだと?折角人が真剣に答えてやったのに』
 正直至極まじめに答えたつもりだ。毛を剃ってそれでコートを作ればハボックは涼しく、私は冬に暖かい。実に合理的でいい考えなのにハボックは大きなため息をついてゴロンと転がり腹ばいになった。
『暑い……もう煮えちゃう……』
 ハボックは私の意見に賛同する気はないらしい。それならそれで勝手にしろと私はラグの上で目を閉じた。そうすれば。
『暑い……』
『暑いよう……』
 十数秒おきにハボックが呟く声が聞こえてくる。寝ようにもその声が気になって、私はムッと口を歪めてガバリと立ち上がった。
『おい!』
 ムッとした私の声にもハボックは反応しない。目を瞑ったまま時折寝言のように「暑い」と繰り返すハボックを私はじっと見下ろした。
『おい』
 言って足先でちょんちょんとつついてもハボックは顔も上げようとしない。ぐったりとしたハボックの様子を私は暫く見つめていたが、ふと思いついてハボックをそのままにリビングを出た。中庭に続く扉をくぐって庭に出る。夏の陽射しが照りつける庭は目眩がするほど暑かったが、私は庭の隅にある散水用の水道に歩いていくと、つないであるホースの先を咥えて庭の真ん中まで引っ張っていった。それからもう一度水道まで戻り、蛇口に歯をひっかけて回す。水が出たのを確認すると、長いホースを通って水が出るより早くホースの先まで戻るとその先端を足先で押し潰した。
『ハボック!』
 そうしおいてから私は大声でハボックを呼ぶ。
『ハボック!!今すぐ出てこい!!来ないと二度と遊んでやらんぞッ!!』
 何度も名前を呼び脅し文句を怒鳴れば、少ししてハボックが扉から出てきた。
『なんスか……?オレ、マジヤバいんスけど……』
 暑くて死にそう、と呟きながら近づいてきたハボックがすぐ側まで来た時、私は押さえていたホースの先端から少しだけ足をあげる。そうすれば。
 シャアアアッッ!!
 水が飛沫をあげて近づいてきたハボックの顔に命中した。
『うきゃあッッ?!』
 顔を水で直撃されてハボックが飛び上がる。ハボックは慌てて水の攻撃から身をかわして私を見た。
『なん……ッ、なにッ?!』
『冷たくて気持ちいいだろう?』
 ブルブルと頭を振って叫ぶハボックに私は言う。そうすればパッと顔を上げたハボックが次の瞬間パアッと顔を輝かせた。
『気持ちいいっス!水!すっげぇ気持ちいい!!』
 ハボックはそう言うと今度は自分からホースから飛び散る水の下に入る。全身に水を浴びて、金色の毛をきらきらと輝かせてハボックが言った。
『気持ちいい〜〜ッ!水浴び最高ッ!!』
『あっ、こら!そんなに暴れるなっ!』
 冷たい水に喜んでハボックが跳ね回るせいで水が私の方へもビシャビシャと飛んでくる。
『だって気持ちいいんスもん!』
 水を浴びて瞬く間にいつもの元気を取り戻したハボックが言って大きく跳ねた。
『ありがとう、大佐!大好きっ!!』
『……フン』
 空色の瞳を輝かせてハボックが言う。夏の陽射しを金色の毛にキラキラと弾かせて、ハボックは長いこと水を浴びて遊んだ。そうして。
『ちゃんと乾いてから入って来いよ』
『えーッ!そんなぁっ!折角涼しくなったんスからこのままラグで昼寝したいっス!』
『貴様』
 長い毛の根元までずっくりと濡れた体で私の大事なラグに寝そべりたいなどととんでもない事を言うハボックを私は睨む。
『そのなりで私のラグに寝そべったら噛み殺すからな』
『大佐ァ……んー、じゃあラグには寝そべんないから家に入るのはいいっしょ?』
『────勝手にしろ』
『わぁい、ありがとうございます』
 家の中をびしょびしょに濡らしてヒューズに怒られたとしても私の知った事じゃない。
『やっぱり夏は水浴びに限るっスね!大佐、またやってくださいねっ』
 嬉しそうに言いながらハボックはラグのすぐ側に身を横たえる。
 それから少しして帰ってきたヒューズにハボックがこっぴどく叱られるのを遠くに聞きながら、私は夏の午睡を貪った。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになります、嬉しいですv

お久しぶりの「獣」です。この一週間はやたら涼しくて一ヶ月先の気温だったりしたんですが、まだもう少しは暑い日もあるようで。ゴールデンレトリバーハボックはさぞ暑いだろうなぁと。でも毛を刈ったら相当スリムになっちゃいますよねー(笑)親戚のとこにいるトイプーは夏場は毛を刈りこんじゃうので本当にスリムです。あの子がスリムになると夏が来たな〜って(笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

黒スグリ、絶対年上女性に可愛がられるタイプですよね!ほぼ裸(笑)ロイだけでなく他の客にも目に毒な気がします。うわ、ヒューズいそうで怖い(爆)セレスタ、in何秒前って(爆)挿れる展開と挿れない展開どっちにしようか考え中です。どっちがより楽しいかなぁ(ニヤリ)でも、いい加減にしとかないとハボック、幸せになれなくなりそう(殴)風、ははは、もうホントサイテー男ですよねぇ。ハボック、とっても可愛いのに男を見る目のない女の子な感じかも。どうしてこんな男がいいんだ(爆)まあ、サイテー男にはこの先色々苦労して貰おうと思います(笑)

阿修羅さま

うわわわっ、見える話はなしでッ!(滝汗)苦手なんですよぅ(苦)お母様、具合よくなられましたか?色々大変かと思いますが、ご無理なさいませんよう。

FLARE BLUEのハボがかっこよすぎて  の方

わわ、本当ですか?いや〜ん、嬉しいです!そう言って頂けるとモリっとやる気が湧いてきます!これからもカッコいいと言って頂けるよう頑張りますねv
2014年08月30日(土)   No.411 (カプなし)

八月九日 in 平行世界
「ジャン!こっちこっち!」
 待ち合わせの駅前広場でキョロキョロと見回していれば、聞こえた声に振り向いたジャンは時計台の下で手を振る姿を見つけて笑みを浮かべる。小走りに駆け寄って、ジャンはハボックに言った。
「ごめん、待った?」
「いや、オレも今来たとこ」
「ホント?よかった」
 ハボックの答えにジャンがホッとしたように笑う。その笑みが可愛いなぁと思いながらハボックは言った。
「ちゃんとあのオヤジに見つからないように出てこられたか?」
「オヤジって」
 マスタングのことをそんな風に言うハボックにジャンが眉を寄せる。それでも「大丈夫」と頷くジャンにハボックが「よし」と拳を握り締めた。
「マスタングが来るとゆっくり楽しめないからな」
「どうせならロイも呼んで四人で過ごしてもよかったのに」
 ハボックの様子にジャンが苦笑して言う。それを聞いてハボックはムッと唇を突き出した。
「なんだよ、ジャンはオレと二人じゃ気に入らないってのか?」
「そんなことないよ。ハボと二人で遊びに行くの、楽しみにしてたんだから」
 そう言ってジャンはハボックの腕にしがみつく。ふわふわと靡く金髪にハボックはキスを落として言った。
「そうか?オレもだよ。じゃあ、出かけようか」
「うん!」
 にっこりと笑うジャンの手を取ってハボックは歩き出す。繋いだ手を勢いよく振れば、ジャンがクスクスと笑った。

 平行世界に住むもう一人の自分。ひょんなことからその存在を知って、ごちゃごちゃと色々あって、そうして今はこうやって時折行き来しては一緒に過ごすようになっている。もう一人の自分が同じようにロイと巡り会って愛し合っている事を知った時、ハボックは純粋にとても嬉しかった。だが。
「ジャンさあ、もう少しアイツに厳しくしろよ。ジャンが優しいからつけあがるんだぜ?あのクソオヤジ、いっつもジャンに好き勝手しやがって」
 愛し合っているとはいえジャンに対してわがままが過ぎるマスタングにハボックが文句を言う。だが、言えば返る答えにハボックは益々顔をしかめた。
「大佐は優しいよ」
「はあ?あのオヤジのどこが優しいんだよ!この間だって────」
「ハボ」
 言い募るハボックの言葉をジャンが遮る。静かに見つめてくる空色に、ハボックは俄に後悔が沸き上がって言った。
「ごめん」
「ううん。ハボがオレのこと心配してくれてるのはよく判ってるから」
 顔を赤らめて謝罪の言葉を口にするハボックにジャンがにっこりと笑う。
「でもさぁ、ハボもロイもオレのこと甘やかしすぎ!」
「仕方ないだろう。ジャンはオレとロイの子供みたいなものなんだから」
「なにそれ」
 ハボックの言葉にジャンがプッと吹き出す。クスクスと笑ったジャンがハボックを見て言った。
「オレ、ハボと会えてよかった。ハボとロイと一緒にいる時間がすげぇ好き」
「ジャン」
 そんな風に言って笑うジャンにハボックは胸がキュッと締め付けられる。繋いでいた手を引き寄せ、ハボックはジャンをギュッと抱き締めた。
「ハボ、大好き」
 抱き締める腕に身を預けてジャンが言う。込み上がる愛しさに「オレも」と囁いて、ハボックは己と瓜二つの顔を見つめた。
「ジャン」
 低く囁いてハボックはジャンに唇を寄せる。唇が相手のそれに触れようとした正にその瞬間、襲いかかってきた焔にハボックはジャンを抱き締めたまま身を伏せた。
「貴様ッ、私のジャンになにをするッ!」
「マスタング!」
 叫ぶ声に振り向けば発火布をはめたマスタングが目を吊り上げて立っている。ドカドカと靴音も荒く近づいてくるマスタングをハボックは立ち上がって睨みつけた。
「この野郎ッ!オレ達を殺す気かッ?!」
「殺すのはお前だけだッ!ちゃんとお前だけ燃やすように放ったわッ!」
「嘘つけッ!オレが庇わなかったらジャンだって燃えてたぞッ!」
「私がそんなミスをするかッ!」
 ギャアギャアと言い合う二人をジャンがオロオロとしながら見る。グイと腕を引っ張られて振り向けばロイの黒い瞳がジャンを見上げていた。
「ロイ」
「マスタングが向こうから来てしまってな。止めたんだけど聞かなくって。ごめん、折角二人で出かけてたのに」
 そう言うロイの言葉にジャンは空色の瞳を見開く。言い争うマスタングとハボックを見、ロイを見てジャンは言った。
「いいっスよ。四人で出かけましょう」
「でも」
「ハボが言うにはね、オレはハボとロイの子供なんだって。それならオレ、パパとママと一緒に出かけたいもの」
「なんだそれは」
 ハボックの奴、なにを言ってるんだとロイが呆れた顔をする。
「大佐を仲間外れにすると拗ねるから、四人一緒にでかけましょう。ね?ロイ」
「……仕方ないな。お前がそうしたいならそうしよう」
「やった!」
 甘えるように小首を傾げて言うジャンに、ロイがやれやれと苦笑して言った。ロイが言うのを聞いてジャンがパッと顔を輝かせてロイに抱きつく。その背をロイが優しく撫でれば、ギャアギャアと言い合う声がやんでマスタングとハボックがドタバタと駆け寄ってきた。
「私のジャンに気安く触れるなッ!」
「ずるいぞ、ロイ!ジャンを独り占めすんなよ!」
「うるさいッ!あっちいってろッ!」
 わめく二人にロイがキッと目を吊り上げて返す。騒ぐ声が三人になり益々大音量になったのを聞いて、目を丸くしたジャンがクスリと笑った。
「喧嘩してんならオレ一人で行くっスよ!」
「「「えっ?!」」」
 言えば途端に言い合いがピタリとやむ。その呼吸の素晴らしさにジャンはこみ上げた笑いが止まらなかった。
「まったくもう!はい、パパ、ママ」
 ジャンは言って右手でハボックの左手を、左手でロイの右手を握った。
「さ、行くっスよ」
「────ああ、そうだな」
「行こうか、ジャン」
 キュッと手を握って見つめてくる空色にハボックもロイも笑みを浮かべて頷く。一人取り残されたマスタングが目を吊り上げて叫んだ。
「ジャン!私はっ?」
「大佐は帰ったら一杯手ぇ繋いであげます」
「そんなッ」
 肩越し振り向いて言うジャンにマスタングが悲鳴を上げる。
「煩いっスよ」
「文句を言うなら一緒に連れて行かんからな」
 だが、二人にそう言われて、マスタングは渋々口を噤んだ。
「ジャン、パパとママが持ち上げてやろうか」
「えーっ、ロイママには無理じゃねぇ?」
「失礼な。私だってそれなりに力はある。それに」
 ジャンの言葉に反論したロイがニッと笑う。
「パパとママに手を繋いでもらったら“ジャーンプ!”ってするのがお約束だろう?」
「そうそう。ジャン、ほら」
「「ジャーンプ!!」」
 ハボックとロイに両手を引っ張り上げられて。
「パパもママも大好き!」
 フワリと飛んだジャンの声が夏の空に響いた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気貰ってます、嬉しいですvv

なつかしや〜の「平行世界」でございます。本当は昨日「ハボハボの日」でハボとジャンでラブラブを書くつもりだったのですが、例によってどうも方向が違っちゃったのと間に合わなかったので(おい)「ハボックの日」にスライドしました。どこが「ハボックの日」なんだと言われそうですが、ジャン総受けってことで。え?意味判んない?(笑)

それから今日の「FLARE BLUE」はお休みですー。明日の予定が今日にずれこんできたので書く時間なくなっちゃった(苦)次回は頑張りますーっ

以下、拍手お返事です。

なおさま

風、へへへ、やっぱりハボに花束と言ったら向日葵ですよね!うわ、講師マース・ヒューズ!なんか色んな意味で大変な事になりそうです(笑)暗獣、そうそう、すぐ水が温くなるんですよねぇ!氷って、相当な量いれないとじゃ?大きな氷の塊と一緒にぷかぷか浮かんでるハボックが浮かんでしまいました(笑)

おぎわらはぎりさま

ハボロイ記念日、逆だとプレゼントを突っ込まれ……げふげふ(爆)でも書いていて思ったのですが、ロイハボだったらあの後のエッチも書く(というよりそっちがメイン(爆)だろうけど、ハボロイだとあそこどまりっていうのは何故なんだろう(苦笑)も、もうすぐお盆ですね……来週が勝負ですっ(苦)鬼灯、懐かしいですね!ロイハボだったらロイが「お前の鬼灯も揉んでやろうな」ってハボの袋をもみもみ(爆)暑くて脳味噌腐ってますが、お互い頑張りましょうねv
2014年08月09日(土)   No.408 (カプなし)

新・暗獣53
「まったく……私の焔だってこれほど暑くないと思うぞ……」
 炎天下を歩いていたロイは汗を拭きながら呟く。夏の空は真っ青に晴れて雲一つなく、地面からの照り返しも相まって猛烈に暑かった。
「やれやれ……やっと着いた」
 我が家の門が見えてきてロイはホッとする。最後の数十メートルを何とか歩ききって、ロイは鍵を開けると家の中に飛び込んだ。
「ふう……幾らかマシだな」
 家の中も暑くない訳ではないが、陽射しがないだけで全然違う。やれやれと息を吐き出して、ロイは中に入っていきながら声をかけた。
「ハボック、ただいま!」
 呼んでみたが返事がない。二階かなと思いつつリビングの扉を開ければ、ハボックが床にべしゃあと伸びていた。
「ろーい……」
 ハボックは視線だけ上げてロイを見る。俯せに寝ていたのをころんと転がって仰向けに大の字になるのを見て、ロイはクスリと笑った。
「少しは冷たいか?」
「……ろい」
 不満そうに答えてころんころんとハボックは床を転がる。家の中で少しでも涼しい場所を探しているらしいハボックの様子に笑ってロイは言った。
「いいものを貰ってきたぞ」
 ロイは言ってソファーに座ると持っていた紙袋の中身をあける。なんだろうと床を這って近づいてきたハボックがロイの脚に掴まるようにして立ち上がるとロイの手元を覗き込んだ。
「ろーい?」
「本屋で買い物をしたらくじ引き券を貰ってな。引いたらこれが当たった」
 そう言いながらロイは手にしたカラフルなビニール製の物を広げる。なに?と首を傾げるハボックにロイが言った。
「子供用のプールだよ。膨らませて水を入れて遊ぼう。涼しいぞ」
「ろーい!」
 ロイの言葉にハボックが目を輝かせる。早く早くと急かされて、ロイは吹き込み口に口を当ててフーッと息を吹き込んだ。
「ろいっ」
 ほんの少しプールが膨らんだのを見てハボックが目を丸くする。フーッフーッとロイが息を吹き込む度少しずつプールが膨らんでいくのを見て、ハボックが嬉しそうにむにむにとプールを指で揉んだ。
「こらこら押すな」
 折角入れた空気が押し出されるようでロイはハボックの手をポンポンと叩く。ハボックが押すのをやめるのを見て、ロイは再び吹き込み口に口をつけた。フーッフーッとロイが息を吹き込む音が部屋の中に響く。ハボックはリビングの中をうろうろと歩き回っていたが、待ちきれなくなってロイの腕を引っ張った。
「ろーいっ」
「待て待て!大変なんだ、膨らませるのは」
「ろーい〜」
「ちゃんと空気を入れないと水が入らないから」
 もう十分とプールを引っ張るハボックにロイが言う。むぅと頬を膨らませながらも引っ張るのをやめて、ハボックはロイの隣に腰掛けて足をブラブラと揺すった。それを見てロイはもう一度フーッフーッと息を吹き込み始める。汗をかきかき頑張って、漸くパンパンにプールが膨らむとロイは大きなため息をついた。
「出来たぞ」
「ろーい〜っ」
 見事に膨らんだプールを見てハボックがキラキラと目を輝かせる。ちょっぴり疲れた様子のロイにハボックがギューッと抱きついた。
「ろいっ」
「喜ぶのはまだ早いぞ」
 ロイはありがとうと抱きつくハボックの背を叩いて言う。紙袋の中から水着を取り出してハボックに見せた。
「まずはこれに着替えだ」
「ろいっ」
 スチャッと気をつけしてハボックが答える。いそいそと服を脱ぎ捨てロイが持つ水着に脚を突っ込んだ。
「ろーい〜」
 水色に黄色のラインが入った水着を見下ろし、ハボックが嬉しそうに笑う。プールを持ち上げたロイがリビングから出て行こうとするのを追い越して、ハボックは庭に出る扉から飛び出した。
「ろーい!」
「さて、どこに置くかな」
 あまりに直射日光が当たるところではよくないだろう。ロイは木の枝が張り出した木陰にプールを置くと、庭の片隅にある蛇口にホースを繋ぎ、ズルズルと引っ張ってきた。
「ハボック、水を出してくれるか?」
「ろいっ」
 言われてハボックは走って庭を横切り水道を捻る。ホースの中を水が走り抜け、ロイが持つ先から水が迸った。
「ろーいッ」
 ホースの中の水を追うようにしてハボックが戻ってくる。最初の温い水を外に捨てて、ロイは冷たくなった水をプールの中に注いだ。ドボドボとたまっていく水を、ハボックはプールの縁に掴まって覗き込む。たまるのを待ちきれないように、ハボックは手を出してプールの水を掻き回した。
「ハボック、水に入る前は準備体操だぞ」
「ろい?」
 そう言うロイをハボックがキョトンとして見る。ロイはホースの先をプールに突っ込んでハボックに向き直った。
「気をつけ!足を肩幅に開いて」
「ろいっ」
「腕を大きく回してー」
 ロイが体の前で大きく手を回すのを見てハボックが真似をする。屈伸しアキレス腱を伸ばして、手首をブラブラし首を回してハボックは一生懸命準備を整えた。
「おっと、溢れそうだ。ついでにその辺に水を撒くか」
 ロイが慌ててホースを取り上げ、暑い陽射しにグッタリとなった庭木に水を撒き始めれば、ハボックがロイのシャツを引っ張った。
「ろーい〜っ」
「ああ、済んだか?じゃあ入っていいぞ」
「ろーいっ」
 漸くお許しが出て、ハボックはプールの縁に手をかける。そっと跨いで恐る恐る足先を水につけて、その冷たさにヒャッとつけた足を上げた。
「はは、冷たいか?」
「ろいッ」
 うんうんと頷いてハボックは今度は一気に足を入れる。冷たい水の中に立ってふわーと満足そうに笑うハボックに、ロイは水を掬ってかけた。
「ろいっ」
 キャッキャッと笑ってハボックが身を捩る。そーっと腰まで浸かって、それから水にパシャンと身を投げ出した。
「ろーいッ」
 バシャバシャと手足を動かしてハボックが泳ぐ。楽しそうに水と戯れるハボックをロイが羨ましそうに見た。
「気持ちよさそうだな」
「ろーい!」
 一緒に入ろうと誘うハボックにロイが首を傾げる。
「そうだな、足だけでも浸けるか」
 冷たい水の誘惑に負けて、ロイはホースの水を止めてくると靴と靴下を脱いだ。
「うおッ、結構冷たいな」
「ろーい!」
 プールにズボンをまくった足を浸けてロイが言う。縁に腰掛けてロイはふぅと息を吐き出した。
「やっぱり夏はプールが一番だな」
「ろーい〜」
 ロイの言葉にハボックが頷く。吹き抜ける風に目を閉じたロイは、いきなり足を引っ張られグラリとバランスを崩した。
「うわッ!わわッ!」
 ビニールのプールの縁に乗せていた尻がズルリと滑って、ロイはバシャンとプールの中に尻餅を着いてしまう。服のままプールに浸かってしまって呆然とするロイを見て、ハボックがキャッキャッと笑った。
「ハボック!」
「ろーい〜」
 ジロリと睨むロイをものともせず、ハボックはロイに水をかけてくる。遊ぼうと誘う空色に、ロイはやれやれと苦笑した。
「そうだな、一緒に遊ぶか」
「ろいっ」
 言えばハボックが嬉しそうに笑う。
「待ってろ、とりあえず服は脱がんと」
 このままでは動きにくいとロイはパンツ一つになる。
 木漏れ日が降り注ぐ庭の中、時折ホースで冷たい水を足しては、二人はプールで楽しい夏の午後を過ごした。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになってます、嬉しいですvv

日記、すっかりサボりまくりですみません(汗)なんか最近暑いせいかさっぱりネタが浮かばないと言うか「暑い」という言葉しか浮かびませんよ(苦笑)もうすぐハボロイの日だけど、ネタ全然出てこないんですけどッ!なにかありませんかね?(コラ)

と言う訳で、「暗獣」も暑い夏の日のお話です。はぼっくと一緒に水遊びしたらきっと暑さも吹っ飛ぶだろうなぁ(笑)

それから!61万打、いつもながらにありがとうございます!最近はすっかりまったりペースになりつつありますが、それでもこうして続けていける元気を頂けて本当に感謝しています。これからもハボックラブを叫びたい!どうぞどうぞご一緒に楽しんで頂きたく、今後もハボック共々よろしくお願い致しますvv

以下、拍手お返事です。

なおさま

暗獣、念願かなってやっとダッコ出来ました(笑)本当はお土産にぬいぐるみを買うシーンとかも書きたいなーと思わないではなかったのですが、結局入れきれずに宝物は齧られた半券とシールだけになりました(苦笑)「アサシンクリード」かぁ。ファミ通とかで「カッコいいゲームだなぁ」と思いつつとにかく鈍い私にはハードル高くて手が出せないってヤツですよ!(笑)いいなぁ、こういうゲーム出来るなおさま、是非背後に貼りついてゲームするの見たいです(爆)風、遊びの恋はお手の物だけど本気の恋はからっきし、確かにこのロイはそんな感じかも!(笑)前向きというか、男の自分ではロイとデートなんて夢のまた夢と思っていたでしょうから(苦笑)花束、いやあ、私もどんな花束なんだろうって気になって(爆)セレスタ、傷に塩すり込んだら余計辛くなるだけなんですがねぇ(苦笑)でも、ブラッドレイ右側は絶対嫌!(爆)あはは、※マーク、私もリンクを貼りながらそういや付かなかったな〜と思っていました(笑)ふふふ、今後も安堵出来るか(コラ)守る君!そんな名前の防犯ブザーあるんですね。なんと安易なネーミング(笑)守る君ぶら下げたブラッドレイ……いやだなぁ(爆)

ハボロイ待ってます!  の方

うわあ、ハボロイサボりまくっててすみません!そして待っていると言って下さってありがとうございますvv漸く何とかまたハボロイ連載再開致しました〜!正直またサボりそうにもなったのですが、「待っている」という言葉を思い出して頑張ってます(苦笑)これからもまったり頑張りますので、どうぞ今後も時々「しっかり書け」とお尻を叩いてやってくださりつつお付き合いお願い出来たら嬉しいですv

阿修羅さま

セレスタ、ありがとうございます、そんな風に感じて頂けて嬉しいですv暗獣、ハボ、可愛いですか?嬉しい〜v思わずムギューしたくなるハボック目指して書いてます(笑)やっぱり山羊はパンフやら食べちゃうんですね!お母さま、ご苦労も多いですね。どうするのが一番いいのか、きっと正解というのはないのでしょうし、色々と難しいですね…。どうぞくれぐれもお体には気をつけて下さいね。ニアピン…じゃないキリバン、いつもチャレンジありがとうございます(笑)ええと、3回重ねのニアピン賞、いいんですけど、リクばかり溜まって全然お答え出来てないのが心苦しいというか……。い、いいんですか……(汗)

610000打おめでとうございます♪  の方

ありがとうございます!一言お祝い言って頂けるのが密かな喜びになっていたりします(笑)これからも少しずつ積み重ねていきますので、お付き合いよろしくお願い致しますvv
2014年08月04日(月)   No.406 (カプなし)

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  Photo by 空色地図

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