カプなし

=ハボロイ  =ロイハボ
=カプ色あり  =カプなし

2015年02月16日(月)
獣17
2015年02月13日(金)
匂い?臭い?
2015年02月05日(木)
獣16
2015年01月24日(土)
新・暗獣56
2014年12月14日(日)
橙色の秋に10のお題9
2014年11月29日(土)
橙色の秋に10のお題8
2014年11月26日(水)
橙色の秋に10のお題7
2014年11月19日(水)
新・暗獣55
2014年11月18日(火)
睡魔に負けたので
2014年11月16日(日)
橙色の秋に10のお題6

カテゴリー一覧
カプなし(303)
ハボロイ(32)
ロイハボ(101)
カプ色あり(61)
その他(16)

獣17
 お気に入りのラグの上に寝そべってぬくぬくとそのぬくもりを楽しんでいれば乱暴に玄関が開く音がする。何事かと思いつつ、隣でだらしなく眠りこけているハボックを蹴飛ばして起こした。
『おい、玄関を見てこい』
『えー、どうせヒューズさんっスよ。待ってればこっち来ますって』
 そう言ってべちゃあと私の大事なラグの上に伸びるハボックを私はゲシゲシと蹴飛ばす。渋々と起きあがったハボックがフワァと大欠伸をした時、リビングの扉が開いてヒューズが入ってきた。
『ほら、やっぱヒューズさんじゃん」
 ほらみろ、と言う顔をするハボックを睨みつければ、ハボックはそそくさと私から離れてヒューズの足下にまとわりつく。ヒューズはハボックの頭をわしわしと掻き混ぜて言った。
「ロイ、ヒューズ、お前ら悪いけど、今夜から一週間くらいペットホテルに泊まりに行ってくれ」
『なんだとッ』
 突然のことに驚いて私は寝ていたラグから飛び起きる。ペットホテルは私の大嫌いなものの一つだ。冗談じゃないとバウバウと喚く私とヒューズとを見比べて、ハボックが言った。
『ペットホテルってなんスか?お泊まり?お泊まりなの?面白そうッ』
『面白くなんかないッ!あそこは最悪のところだッ!』
 嬉しそうに顔を輝かせるハボックに私はきっぱりと言う。以前ヒューズの仕事の都合でペットホテルに預けられた事があったが、はっきり言ってギャンギャンバウバウやかましくて、正直気が狂いそうになったのだ。
「リザちゃんに泊まりに来て貰うことも考えたんだけど、何せあまりに急だからな。悪いけど、お前らホテルに……って、ロイ、怒るなよ」
 グルグルと低く唸る私にヒューズが眉を下げる。
『冗談じゃない、絶対に行かないからなッ』
『えー、大佐、そんなこと言わずに行きましょうよぅ』
 フンと鼻を鳴らしてラグに寝そべる私にハボックが言う。ねぇねぇと甘えるように鼻面を押しつけてくるハボックとラグに寝そべる私を見てヒューズが言った。
「行きたい行きたくないに関わらず預けるからな。でないとお前ら飢え死にしちまう」
『ええッ!それは絶対嫌っス!大佐、ホテル行きましょう、ホテル!』
『嫌だ、行くならお前一人でいけ。寝てれば腹も空かん、私はここで待つ』
『大佐ァ』
「俺も出張の準備してくるから。用意できたらすぐ行くぞ」
 そう言ってリビングから足早に出ていくヒューズの背に。
『私は絶対に行かんからなッ!!』
 私は大声で怒鳴った。

 そんな私の主張も空しく、今私とハボックはペットホテルのプレイルームにいる。ヒューズは私たちを預けると慌ただしく出張へと出かけてしまった。
『すげぇ面白いとこっスね!他の奴がこんなにいるなんて、ドッグランみてぇ』
 他にも私たちと同じように預けられた犬がいるのを見て、ハボックが興奮して言う。ニカッとハボックが笑顔を向けたもののデカイ図体の私たちに、小型犬達は怯えたように壁際に貼り付いていた。
『やめとけ。怖がられてるだろう』
『えーっ、なんでーっ?一緒に遊びたいのに!』
 ハボックは場の空気など全く気にもとめずに言う。他の犬が寄ってこないならそれに越したことはないと、私が居心地のよい場所を探して辺りを見回した時。
『危ないッ、よけろッ!』
『え?──いてッ!』
 ドカッと、飛んできたボールが私の後頭部を直撃する。弾みで前のめりに突っ伏してしまった私の耳に、呆れたような声が飛び込んできた。
『鈍いなぁ、よけろって言ったじゃん』
『────んだとぅッ』
 その声にムッとして背後を振り向けば小型犬が二匹、私たちを見ていた。
『貴様、他犬(ひと)にボールをぶつけておいてその言い種はなんだッ』
 無礼な物言いにズイと背を伸ばして上から見下ろして言う。そうすれば最初に口をきいた一匹より一回り大きいもう一匹が言った。
『兄さん、失礼だよ。ボールをぶつけたのはこっちなのに────すみません、怪我しませんでしたか?僕はアルフォンスって言います。こっちは兄のエドワード。兄さんが失礼な事言ってごめんなさい』
 そう言って頭を下げつつ兄の頭を前脚でグイグイと押し下げるアルフォンスと、頭を下げまいと脚を突っ張るエドワードを、私はジロリと見た。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気の素です、本当にありがとうございますvv

「獣」です。ペットホテルってどういう風になっているのかよく知らないので、細かいところはどうぞ目を瞑ってやって下さい(苦笑)そして、ワンコのエドとアル出たよ(笑)飼い主はやっぱり師匠でしょうかね。んでもって、エドとアルの犬種、募集しまーす!(爆)小型犬、チワワくらいしか思い浮かばないんだもん(苦笑)小型犬で二人に合いそうなのいたら教えてやって下さいませvちなみにハボックはゴールデンレトリバー、ロイはグレイハウンドです。

でもってもう一つ募集(え?)バレンタインネタに引き続きホワイトデーネタも募集しまーす!一応2月25日まで……。バレンタインはギリギリになってちょっと死にそうだったんで、今回は少し余裕もってみました(苦笑)宜しければネタ投下どうぞよろしくお願いしますv

以下、拍手お返事です。

なおさま

黒スグリ、そうですね、ハボにしてみればロイはもう本当に憧れの人なので、そんなロイが自分を選んでくれたというのが未だに信じられなくて、理由が判ってないんだと思います。まだ子供だしね(笑)奪って逃げる!(爆)可愛いなぁvハボもきっとそんな感じな気がします(笑)バレンタインネタ、楽しんで頂けてよかった〜vvあ、確かに部屋の掃除は絶対ロイがやらされてますよね!(笑)

はたかぜさま

バレンタインネタ、楽しんで頂けて良かったですvv私もこっそり親指立てますよ!いいなぁ、それ(笑)ハボロイネタも楽しんで頂けて嬉しいv一生懸命捻り出したので、読んで貰えなかったら悲しいなーと思っていたので、そう言って頂けて嬉しいですvいっぱいネタを頂けた時点でバレンタインの神さまに幸せ貰った気がします。その上楽しんで頂けて、本当に幸せvvこちらこそありがとうございましたv

姫ハボ大好きだよぉ〜〜  の方

うわあ、本当ですか?滅茶苦茶嬉しいですvvえへへ、モチベーション上がりまくりですよvv姫ハボ、もっといちゃいちゃして貰いますねvこれからもどうぞよろしくお願い致しますv
2015年02月16日(月)   No.440 (カプなし)

匂い?臭い?
「あ、カレイシュウがする」
「えっ?!」
 リビングに入ってくるなりハボックが言った言葉に、ソファーに座って本を読んでいたロイはギョッとして顔を上げる。ハボックが何か言うかとその動きをロイは目で追ったが、ハボックはそれ以上は何も言わず、リビングを抜けるとその奥に続くキッチンへと行ってしまった。
「加齢臭、だと?私が臭うということか……?」
 思いもしなかった言葉にショックを受けながらも、ロイはクンクンと自分の匂いを嗅いでみる。何か変な匂いがするだろうかと鼻をひくつかせて必死に嗅いでみたが、愛用のコロンの匂いしかしなかった。
「自分じゃ判らないって事か?」
 自分の匂いは自分では判らない可能性もある。ロイは立ち上がるとパタパタと服をはたいてもう一度匂いを嗅いでみた。
「────判らん」
 もし本当に臭いとしたら──。そう考えただけでロイはゾッとして体を震わせる。このロイ・マスタング、加齢臭がすると言われるくらいなら死んだ方がましだ。口が臭うだろうかと口元を手で覆ってハーッと息を吐いて嗅いでみたり、脇の下が臭わないかと嗅いでみたり、流石に靴下の臭いまでは確認する気はしなかったものの、ロイは自分が本当に臭っているのかと必死に確認してみた。だが。
「やっぱり判らん。私は本当に臭っているのかッ?」
 確かにハボックは「加齢臭」と言っていた。もしかしてもしかすると聞き間違いかと僅かな希望を抱いてみたが、それも単なる希望的観測としか言えなかった。
「やはりここはもう一度ハボックに確認するか……?」
 言ったのはハボックだ。ハボックに確認するのが一番手っとり早い。それに。
「加齢臭がする男とはつき合いたくないと思われたら」
 同性同士というだけで既にハードルが高いのだ。その上臭いとなったらつき合うのにも益々抵抗が出るに違いない。ロイとしてはハボックを手放す気など毛頭なかったし、それに今ならまだ臭いもなんとか出来て無様な理由での別れも回避出来るかもしれないと思えた。
「く……ッ、恥ずかしいがここは致し方あるまい……ッ」
 恥を忍んでハボックに確認しようとロイが思った時、ハボックがコーヒーのカップを手にリビングに戻ってくる。立ち尽くすロイの前に「どうぞ」とコーヒーを置くと、向かいのソファーに腰を下ろして雑誌を広げた。
(こ、これは私の臭いをコーヒーの香りで誤魔化そうということか……ッ?)
 コーヒーのいい香りがリビングに広がる中、ロイはそう思ってハボックを見つめる。どうにも尋ねる言葉が出てこず、じっと見つめていればハボックが顔を上げた。
「どうかしたんスか?大佐」
 ソファーに座らず立ち尽くしているロイをハボックが不思議そうに見上げる。小首を傾げるハボックに、ロイは恐る恐る尋ねた。
「ハボック、その……私は臭うか?」
「は?」
「いやだからその、……私は臭いかと聞いたんだッ!どうなんだッ!」
「なんスか、突然」
 声を張り上げて尋ねるロイに、ハボックが目を丸くする。そんなハボックにロイは苛々として言った。
「さっきお前が言ったんだろう!加齢臭がするって!それは私が臭いってことじゃないのかッ?もしそうならはっきり言ってくれ!」
「加齢臭……」
 声を張り上げるロイの言葉をハボックが繰り返す。ロイがギクリと震えた時、ハボックがプッと吹き出すとゲラゲラと笑いだした。
「あっはっはっ、かっ、加齢臭って!」
「な、なんだ、なにがおかしいッ?私は真剣に悩んでだなッ!」
 ゲラゲラと腹を抱えて笑うハボックにロイは目を吊り上げる。笑いが収まらないままに「違う違う」と手を振って、ハボックは涙の滲む目元を指でこすった。
「違うっスよ、加齢臭じゃなくてカレー臭。アンタ、どっかでカレー食べて来なかったっスか?」
「……は?カレー臭……?」
 クックッと笑いながら言うハボックにロイは目を丸くする。少し考えてからロイは言った。
「さっき出かけた時、近道で市場を抜けたらカレーの販売やってたから試食してきた……」
「ああ、じゃあそれっスよ。アンタ、カレーの匂いがするの」
 リビングに入った途端カレーの匂いがしたので思わずカレー臭がすると言ったのだと言うハボックの言葉を、ポカンとして聞いていたロイは次の瞬間目をキッと吊り上げた。
「それならちゃんとカレーの匂いがすると言えッ!カレー臭なんて……私が加齢臭がするのかと思ったじゃないかッ!」
「それでアンタ、焦ってたの?あはは、すっげぇおかしい……ッ」
「おかしくないッ!」
 再びクスクスと笑い出すハボックにロイは怒鳴る。「まったくこの紛らわしい事をッ」とブツブツ言いながらロイは乱暴に腰を下ろした。
「心配しなくていいっスよ。もし大佐がヨボヨボのおじいちゃんになってちょっとばかり臭っても、オレ、大佐のことずっと好きっスから」
 ニコニコと笑ってそんなことを言うハボックをロイは睨む。
「ホントっスよ。大佐の匂いはいつだってオレにはいい匂いっスもん」
「────馬鹿っ」
 うっとりと笑ってそんな事を言うハボックに、ロイは紅くなった顔を誤魔化すようにゴクゴクとコーヒーを飲んだ。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、本当に励みになります、嬉しいですーvv

カレーライスとかカレーを使った料理をして部屋の中でカレーの匂いがしていると、息子がすぐ「カレー臭がする」って言うんですよね。カレーのいい匂いがすると言う意味で言ってるんですが、カレー臭って、オイ(苦笑)なんかちっとも美味しそうな感じがしないと思うのは私だけ?(笑)海苔の匂いがすると「のり臭」って言うし、臭ってそもそもいい匂いじゃないですよねぇ。やめてよ、それ(苦笑)

とりあえず昨日までにバレンタインネタ三本、書き終わりました〜!この十日あまりで企画三本書いて、更新二回して、日記も書いて……なんかもの凄い働いた気がする〜(ヘロヘロ)でもまだ週末の更新は手つかずだし「黒スグリ姫」ネタも書いてない……。なによりまだ三本ともタイトルついてないんだよ!(爆)あーもう、ホントタイトル考えるの苦手(苦)そのまま「2015バレンタインRH1」とかだったらすみません(汗)でもって週末更新バレンタインだけだったらすみませんー(オイ)

以下、拍手お返事です。

なおさま

指、なるほど、ロイハボもヒュハボも好きだから薬指が長いんですね!ヒュハボどころか私、エドハボもブラハボも好きだしな!(笑)「えっ?なんで?」と返すと浮気してるのか……。でも意外にそう返してしまいそうですよね(苦笑)

阿修羅さま

そちらでは薬指が長いと「頑固者」なんですか。諸説ありそうですよね(笑)小指かぁ……私は全体的に指が短いです。手袋買うと大抵指先が余ります(笑)

更新、とっても楽しみにしてます(^-^)  の方

わあ、本当ですか?ありがとうございます、嬉しいですーvvやはり更新待っていて頂けると思うとめちゃくちゃモチベーションが上がります!これからも頑張りますのでどうぞ読んでやってくださいねv
2015年02月13日(金)   No.438 (カプなし)

獣16
 パチパチと小さな音を立てる暖炉の前、定位置のラグの上に寝そべって目を閉じる。程良い熱を感じながらうつらうつらと夢と現の間をたゆたっていると、カチカチと床に爪が当たる音を立ててハボックが近づいてきた。
「大佐ぁ、外行きましょう、外」
 冬になっても相変わらずの調子でハボックは私を遊びに誘う。私は顎を前脚に乗せたまま片目だけ開けてハボックを見上げた。
「何故こんなクソ寒い時に外に行かねばならんのだ」
「だって凄くいい天気っスよ」
「だからといって寒いのは変わらんだろう」
 幾ら陽射しがあっても、この寒さに対抗し得る筈もない。折角気持ちよく暖まっているのにお断りだと冷たく言えば、ハボックは不服そうに鼻を膨らませた。
「お日さまがポカポカの中、空気が冷たいのがいいんじゃないっスか」
「そんなのがいいなんて変態だな、お前は」
「えーっ、なんスか、それ」
 変態と決めつけられてハボックがバウバウと抗議の声を上げる。それを無視して目を閉じれば、ハボックは前脚を私の体に乗せて揺すった。
「ねぇ、大佐ってばぁ」
「嫌だ、絶対にお断りだ」
 ユサユサと揺すられても私はそう言ってラグの上に寝そべり続ける。どうしても外で遊びたいらしいハボックは私の尻尾を引っ張ったり耳に噛みついたりした。
「ああ鬱陶しいッ!」
 しつこくちょっかいを出されて、流石に無視しきれず私は大声を上げて立ち上がる。期待に空色の瞳を輝かせるハボックにフンと鼻を鳴らして、私はリビングを出た。
「外行くのっ?大佐っ」
 嬉しそうにデカい図体を擦り付けてハボックがついてくる。チラリとハボックを見た私は次の瞬間猛ダッシュで階段を駆け上がった。
「あっ!大佐ッ?」
「私を捕まえられたら遊んでやる!」
 ダダダと駆け上がり二階の部屋を片っ端から開ける。不意を突かれたハボックが上がってくる寸前、ヒューズの部屋に飛び込むとベッドの下に潜り込んだ。
「大佐ァ、どこー?」
 ハボックが二階の部屋をウロウロ探す間に隙を見て今度は一階に下りる。リビングのソファーの下に潜り込み、ソファーカバーを少し引っ張って体を隠した。そのままじっとしているとハボックが二階から降りてくる。普段から自由に歩き回っているせいであちこちに残された匂いに惑わされて、ハボックは私を探しあぐねているようだった。
「どこ行っちゃったのかなぁ……」
 ハボックは呟いてウロウロと歩き回る。リビングをうろつきダイニングをうろついたハボックは、やがて廊下に出て行ってしまった。それでも私は隠れ場所から出ずにじっとしている。耳を澄ましてみたが家の中はシンと静まり返ってハボックの気配は感じられなかった。
「なにしてるんだ、アイツ……」
 私と遊びたいならさっさと見つけに来いと、隠れているのとは裏腹な考えが頭に浮かんで私は鼻に皺を寄せる。だが、ハボックは待てど暮らせど私を探しにこなかった。
「まさかヒューズが帰ってきたとか?」
 帰ってきたヒューズと遊びに出たのだろうか。
「遊びたいとか言ったくせに、ちょっと見つからなければもう諦めるなんて、なんて根性のないヤツなんだっ」
 もしかしてヒューズと遊んでいるのかもと思えば落ち着かなくなっていく。ものの五分もたたないうちに、私は我慢しきれなくなってソファーの下から出た。その時。
「大佐みっーけ!」
「な……っ?!」
 声に振り向けばいつの間にかハボックがソファーの上に立っている。ハボックはにぱぁと満面の笑みを浮かべて言った。
「大佐の事だから絶対我慢しきれなくなって出てくると思ったっスよ」
 うふふと笑うハボックに私はカーッと頭に血が上る。もう一度ソファーの下に潜ろうとすればハボックがドスンと飛び乗ってきて、私は不覚にも情けない声を上げてしまった。
「くそッ!どけッ!デブッ!重いッ!」
「運動不足で太った大佐に言われたくないっス」
 口汚く罵る私にハボックが言う。ジロリと睨んだもののまるで動じた様子のないハボックに、私は大きく息を吐き出して床に伸びた。
「いつ私がここにいると判った?」
「うーん、わりとすぐ?寒がりの大佐なら暖炉から離れないだろうと思ったし、ほっといたら探さなくてもしびれ切らして出てくるだろうなぁって」
 長く一緒に暮らすうちに行動を読まれていたらしい。悔しげに呻く私にハボックが言った。
「勝負はオレの勝ちっスよね。だったら」
 外に出て遊びましょと言うハボックに。
「……仕方ないな」
 私は答えて陽射しが降り注ぐ寒い庭へと出たのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手とっても励みになりますvモチベーション上がります〜、嬉しいですvv

お久しぶりの「獣」です。ロイ、寒いと行動パターンが限られるらしいです(笑)とか言う私も暖房のきいた部屋から出られませんが(苦笑)
東京は雪の予報ですが、ちょっとだけ雪混じりの雨が降ったものの今のところはまだ雨です。でも、夜になって気温が下がってきたら雪になるのかなぁ。夜じゅう積もったら朝になって大変じゃん……。夜になる前にやまないかしら。

以下、拍手お返事です。

なおさま

黒スグリ姫、暑くなるまで動くなんて、やっぱり風の子ですね(笑)確かに猫にマタタビ状態かもvvセレスタ、やっとヒマワリ咲きましたっ!確かにリンチが止めてくれなかったら今頃まだグダグダしてそうですよね(苦笑)大ラスに向けて頑張りますよ!おお、バレンタインネタ、ありがとうございます!大乱闘、上手く書けるか判りませんが頑張りますねvv

阿修羅さま

おおう、お体大丈夫ですか?寒さも厳しい折、どうぞご無理なさらず大事になさってくださいね。バレンタインネタ、ありがとうございますvv可愛いハボック頑張って食って貰いますね!(笑)

FLARE BLUEのハボックがかっこよすぎますv  の方

うわあ、ありがとうございます!!えへへ、照れくさいけど嬉しいですvv続きも楽しんで頂けるよう頑張りますvv

はたかぜさま

わーい、バレンタインネタ、ありがとうございますーv去年に引き続き楽しいネタ、嬉しいですvあ、カプの指定がなかったのですが、勝手にロイハボで脳内妄想繰り広げてしまいました……ロイハボでオッケですか…?(汗)セレスタ、本当に長い長い辛い時期でしたー(苦笑)やっと掴みかけた幸せにずどーん!と爆弾が落ちる事は……うん、多分大丈夫……かな(コラ)こちらこそいつも遊びに来て下さってありがとうございますv妄想燃やして寒さを乗り越えようと思いますので、どうぞお付き合い下さいねv
2015年02月05日(木)   No.436 (カプなし)

新・暗獣56
「ろーいっ、ろーい!」
「んー……なんだ、ハボック……?」
 眠っていたロイはブランケット越しパンパンと叩く小さな手に起こされてウーンと唸る。モゴモゴと答えながらブランケットに潜り込めば一層激しく叩かれて、ロイは渋々と起き上がった。
「なんだ、ハボック。夕べは遅かったんだ、もう少し寝かせてくれ」
「ろーいっ」
 ふぁぁと欠伸混じりに言うロイのシャツを握ってハボックが引っ張る。しつこく呼ばれて根負けしたロイは、ベッドから降りるとハボックにせがまれるまま鎧戸を開けた。
「すごい積もったな」
 夕べ降り出した雪が一晩中降り積もって辺りは一面の銀世界になっている。陽の光を受けて煌めく庭を見て、ハボックがキラキラと目を輝かせた。
「ろーいっ」
 外に行こうと袖を引くハボックに、ロイは眉をしかめた。
「勘弁してくれ」
 元々寒いのは苦手だ。とてもじゃないが雪が積もる庭に出る気にはなれなくて、ロイは窓を閉めるとベッドに上がった。
「ろーい〜っ」
「こんな寒い中外に出たら風邪ひくぞ。窓から見るので我慢しなさい」
 ロイはそう言うと再びブランケットに潜り込んでしまう。
「ろいッ!」
 そうすればハボックはむくれたような声を上げて寝室を出て行ってしまった。
シンと静まり返った部屋の中、コチコチと時計の音だけが響いている。暖かいブランケットの中ぬくぬくとその温もりを貪っていたロイは、窓が風でガタガタと揺れる音に眠りを遮られた。
「んー……ハボック?」
 ロイはもぞもぞとブランケットから目を覗かせてハボックを呼ぶ。少し待って、それからもう一回呼んだ。
「ハボック?」
 そしてもう一度同じように待ったものの、返事が返ってこない事に、ロイはゆっくりと起き上がった。
「いないのか?」
 ベッドから降りハボックが普段寝ているクッションの山の中を覗く。静かだからてっきりふて寝してるのかと思っていたが、姿が見えない事にロイは階下に下りた。リビングにもダイニングにもいないのを確認して、ロイは眉をしかめた。
「まさか庭に出たのか?」
 雪が積もる寒い庭に出たのだろうか。ロイは急いで着替えて庭に出た。
「ううっ、寒い!」
 ロイは首を竦めて顔をしかめる。辺りを見回しながら雪の上に残る小さな足跡を辿ったロイだったが、不意にその足跡が途切れているのに気づいて目を瞠った。
「どこに行ったんだ?」
 雪の上には微かな模様のような痕があるだけで、足跡はない。
「ハボック?!」
 キョロキョロと見回しながらロイはザクザクと雪を乱してハボックの姿を探す。返事がないだろうかと耳を澄ませたロイは、大振りな枝の下に雪がこんもり積もっていることに気づいた。
「まさか」
 ロイは慌てて雪の山に近づくと、両手で雪の山を掻き分ける。すると雪の中に黒い毛糸玉が見えて、ロイは急いで雪塗れのそれを掘り出した。
「ハボック!おい、しっかりしろ!」
 普段は柔らかい毛がカチカチに凍っている。ロイは家の中に飛び込むと風呂場に駆け込んだ。熱いシャワーを出し凍りついた毛糸玉にかける。暫くかければ凍っていた毛が溶けてしんなりと垂れ下がり、毛糸玉がむくむくと動いた。
「ハボック!」
 ロイの呼びかけに毛糸玉が淡い光を放って見慣れた子供の姿になった。
「ろーい〜……」
「ハボック、よかった!」
 くたんと腕に凭れてくるハボックの体にロイはもう少しシャワーをかけてやる。温まったところで浴室を出ると濡れた服を着替えさせ、髪を乾かしてやった。
「まったくもう、びっくりさせるな」
「ろーい……」
 ハァとため息をついて言えばハボックがすまなそうに上目遣いでロイを見る。淡く光った体が毛糸玉になるとコロコロと転がって見せた。
「雪の上を転がって遊んでたら枝の雪が落ちてきたのか」
 雪の上の足跡が途切れていたのはそこから毛糸玉に姿を変えたせいで殆ど跡が残らなかったからだった。
「雪が積もっている間は一人で遊びに出たら駄目だぞ。いいな、ハボック」
 言い聞かせるように言うロイをハボックがじっと見つめる。ソファーに座って本を手に取ったロイだったが、瞬きもせずジーッと見つめられて数分もたたない内にため息をついて本を閉じた。
「判った、解ったからそんなに見るな」
 そう言って立ち上がるロイを見てハボックがパッと顔を輝かせる。
「ろーいっ」
「少しで勘弁してくれよ?」
 ニコニコと笑うハボックに手を引かれて庭に出たロイは寒さに情けなく眉を下げたが、冷たい空気を吸い込むと言った。
「よし、雪だるまを作るぞ!私は胴体を作るからお前は頭を作ってくれ」
「ろいっ」
 ロイの言葉にハボックがスチャッと敬礼する。二人は小さな雪玉を庭中転がして育てると、大きな雪だるまを作ったのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手沢山パチパチ下さった方もコメント下さった方も本当に嬉しいです!モチベーションあがりますv

今年はまだ大雪降ってませんが、受験生がいる現況では今年は積もんなくていいよって感じです(笑)雪には激弱な地域だからなぁ。家にこもってればいいのなら雪も風情があっていいのだけど。

久しぶりに玄関を模様替えしたのですが、日記でも素材お借りしてる「空色地図」さんがなくなってる事に気づきました。ガーン!好きだったのに!色んな空の素材もあったし、なにより花の素材が季節ごとに分けられてるのが使いやすくてよかったのになぁ。同人サイトさまでも思うけど、更新なくてもいいから閉鎖だけはやめて欲しい……。はー。

以下、拍手お返事です。

なおさま

風、青いロイっスよ(笑)でもきっと恋にも青いのかもしれません。早くなおさまに「仕方ないなぁ」くらい言って貰えるようにならないと(笑)頑張れ、ロイ!って、お前が頑張れよって感じですね(苦笑)セレスタ、うふふ、ノックアウトされましたか?って、アームストロング少佐(少佐ですよ!(笑)の穴開き板って、それこそ破壊力抜群過ぎだから!(爆)

とにかく大好きです!  の方

うわああ、ありがとうございます!そんな風に言って頂けて本当に嬉しいですvv正直なところ、サイトさまもどんどん数が少なくなって、残ってるサイトさまも更新されてる所は少なくて、そろそろ潮時なのかなぁと思ったりする事もあるので、そう言って頂けるとまだ続けてていいんだなぁと思えます。これからも頑張りますので是非是非お付き合いのほどお願いいたしますvv
2015年01月24日(土)   No.434 (カプなし)

橙色の秋に10のお題9
9.読書の秋には図書館で

「ヒマだ……」
 ハボックは机に頬杖をついて呟く。四人掛けの机の斜め向かいの席では、ロイが厚い本を何冊も積み上げて調べものに没頭していた。

「図書館?折角の休みなのに?」
「休みだから行くんだろう」
 二人揃って休みの朝食の席、食事が済んだら図書館に行くと言うロイにハボックは思い切り不満そうに口を尖らせる。子供っぽい表情にロイはクスリと笑って言った。
「読書の秋なんだ。お前も一緒にどうだ?」
「えー」
 誘われたもののあまり興味が湧かない。だがどうせ出掛ければロイは一日帰ってこないだろうし、家で一人待っているのも淋しくてハボックはロイについて図書館に来たのだった。

(やっぱ家で待ってた方がよかったかなぁ……)
 ラックから何冊か選んで持ってきた雑誌もあっという間に読んでしまって、ハボックは暇を持て余してため息をつく。ロイに話しかける訳にもいかず、いっそのこと寝てしまおうかと考えて、ハボックはだらしなく机に頬を乗せた。そうすればシンと静まり返った図書館の中、ロイが時折ページを捲る音とペンを走らせる音が聞こえてくる。その音を聞くともなしに聞きながらハボックは考えた。
(オレも小さい頃はお袋に連れられて図書館に来てたよなぁ)
 幼い頃、母親に手を引かれて図書館に通っていた。田舎の図書館はこんな街中の図書館に比べれば随分と小さかったが、それでも子供のハボックから見れば沢山の本に溢れていて図書館に行くのが楽しみで仕方なかったのだ。
(本を借りちゃお袋に読んでってせがんでたっけ)
 ベッドの中、母親が読んでくれる物語をワクワクしながら聞いていた。挿し絵を見ながら眠ってしまえば、小さなハボックは夢の中、その物語の世界を駆け回ったものだった。
(そういやあの本、ここにあるかな)
 ふと絵本に出てくる二匹のネズミの姿が脳裏に浮かんで、ハボックは立ち上がる。子供の本が並んでいる書架に向かうと、ハボックは高さの低い書架の間をゆっくりと歩いた。
(タイトル……なんだったっけな)
 ネズミの姿は思い出したが肝心のタイトルが判らない。片っ端から本を出してみる訳にもいかず、ハボックは腕組みしてウーンと考えた。
「えーっと……内容は覚えてるんだよ。確か森に住んでる仲良しのネズミがでっかい卵を見つけて」
 と、ハボックは小さい頃の記憶を辿って呟く。
「そうだ、でっかいボウルにでっかい卵を割り入れてかき回すんだよ」
 子供心に小さなネズミがボウルの中に落ちてしまわないかハラハラしたものだ。上手に掻き混ぜた卵をフライパンに流し入れた時にはジュッと焼ける音が聞こえたようで、美味しく焼ける匂いまでしたように思ったのだ。
「でっかいフライパンででっかい卵焼き焼くんだよなぁ。あれは旨そうだった」
 ハボックが黄色い卵焼きを思い描いてゴクリと喉を鳴らす。だがそこまで思い出しても肝心のタイトルだけは思い出せずハボックはウンウンと唸った。
「森のみんなで出来上がったでっかい卵焼きを分けて食べるんだ。オレもあんなでっかいの食べてみたいってせがんでお袋を困らせたっけ」
 大きな卵焼きは本当に美味しそうで母親に作ってくれとせがんだ。母親はハボックの為にその時冷蔵庫に入っていた卵全部使って卵焼きを作ってくれたのだが、ハボックはこんな小さいのは嫌だと泣いて、結局折角作ってくれた卵焼きを食べなかった。
「あれは勿体ない事をした」
 今考えればあの卵焼きはいつも作ってくれる卵焼きの五倍はあった。きっと作るのも大変だったろう。
「卵焼きを作った後の卵の殻で作った車も羨ましかったよなぁ……。ああくそッ、なんてタイトルだっけ、あの本!」
 どうしてもタイトルが思い出せず、ハボックが頭を掻き毟った時。
「はい!」
「えっ?」
 いきなり声がしてハボックは驚いて辺りを見回す。声の主を探してキョロキョロすれば、クイクイと袖を引かれてハボックは視線を落とした。
「あ」
 落とした視線が見上げてくる空色の視線と交差する。金の髪をした男の子はその空色の瞳でハボックをじっと見つめて言った。
「お兄ちゃんが探してるの、この本でしょ?」
「あっ!これ!そうだよ、この本!」
 男の子が差し出した絵本の表紙を見てハボックが大声を上げる。表紙に描かれた手を繋いだ二匹のネズミは幼い頃の記憶のままで、ハボックは差し出された絵本を受け取ってニッコリと笑った。
「そうだよ、この本だ。うわぁ、懐かしいなぁ」
 懐かしそうに呟いてハボックは絵本を捲る。記憶のままに広がる世界にハボックは嬉しそうに目を細めた。
「ありがとう、タイトルが思い出せなくて困ってたんだ――――って、あれッ?」
 礼を言おうと絵本から視線を上げたハボックは男の子の姿がなくなっている事に気づいて目を丸くする。背の低い書架の間の通路には誰の姿も見つからず、ハボックが首を傾げた時背後からロイの声がした。
「何を一人で大きな声を出してるんだ?」
「大佐」
 眉を寄せて尋ねてくるロイにハボックは手にした本を差し出す。
「大佐、これ。オレがガキの頃好きだったヤツ」
「ああ、これか」
 ロイは差し出された絵本の表紙を見て笑みを浮かべた。
「私も小さい頃好きだったよ」
「大佐も?ホントっスか?」
 ロイも自分と同じ本が好きだったと聞いてハボックは嬉しくなって顔を輝かせる。
「この大きな卵焼きが食べたくてなぁ」
「あ、やっぱり?食べたくなりますよね!これ」
「強請って作ってもらったけど全然小さくて」
「そうそう!」
 同じ絵本に同じ思い出を重ねてロイとハボックは顔を見合わせてにっこりと笑った。
「今夜のメシは卵焼きだな」
「特大の?」
「特大の」
「じゃあ卵買って帰らなきゃ」
 ハボックが言えばロイが絵本をハボックに返して言う。
「借りといてくれ。後で一緒に読もう。急いで調べもの済ませるから」
「アイ、サー!」
 その後ロイが急いで調べものを片付けると、二人は沢山卵を買って帰り大きな卵焼きを食べながら一緒に絵本を読んだのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、本当にやる気の素です、ありがとうございますvv

先週はダンナがリハビリ休暇でガッツリ家にいたもので、流石に更新がままなりませんでした(苦笑)しかし、更新が出来ないって事はアメフトの録画も溜まってるって事(更新書きながらアメフト見てるので)気がつけば二週分も溜まってるよ!急いで見ないとシーズン終わっちゃうじゃん!プレイオフ進出チームが決まってから見るのは嫌だぞ。と言う訳で、今週は更新頑張りながらアメフト見たいと思います(笑)
と言うところで。
12月も半ばになって秋お題でもないんですが、途中まで書いていたので書き上げてみましたー。ネタの絵本はきっと皆さまもご存知のアレですが、流石にちょっと記憶が怪しい(苦笑)後で調べてみたら卵焼きじゃなくてカステラだったし……。「えー、違うじゃん」と思われましてもその辺は大目に見て頂ければと(笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

62万打ありがとうございますvなおさまのコメントには本当にいつもやる気を頂いてますvサイトさま減りまくりでなかなか萌えの補給が出来なくて辛い時もありますが、コメントに元気を頂いて頑張ってますvあの木が折れたら(爆)半シャーベットのすりおろしリンゴ、食べた〜い!おかげさまでダンナは明日から出勤です。やっと昼間静かになります(コラ)風、性格矯正セミナー(苦笑)おかしいなぁ、ハボックが惚れるんだからイイ男な筈なんですが(爆)ちょっとはイイところを見せてあげようと思います(笑)そしていつでもホークアイは最強ですvセレスタ、うふふ、予感的中となるでしょうか(笑)これまで大変だったのでそろそろラブラブさせてあげたいところですが。ハボックからも一杯ラブコールするはず……多分(笑)え?ハボックのお尻の絵を描いた穴開き板なら私も欲し……(爆)でもそれ、使用したら相当痛そうです(爆)

阿修羅さま

お疲れのところキリバン狙って下さってありがとうございます。ご家族もご自身も体調悪かったりと大変なご様子、寒さも厳しい折、本当にお体大切にお過ごし下さいね。
2014年12月14日(日)   No.431 (カプなし)

橙色の秋に10のお題8
8.sentimental

「はあ……」
 と、ハボックは窓の外に張り出した枝を見てため息をつく。枝の先にはたった一枚取り残された赤い葉が、今にも散りそうになりながらも必死に枝にしがみついていた。
「あの葉っぱが散ったらオレの命も散っちゃうんだ……」
 そう呟いて、ベッドに横たわったままそっと目を閉じる。その途端ベッドサイドでプッと吹き出す声がした。
「そこは笑う所じゃねぇっしょ」
 ハボックはベッドの側に引き寄せた椅子に座るロイを睨む。そうすればロイはまるで悪びれた様子もなくクスクスと笑いながら答えた。
「いや、笑うだろう?普通。ただの風邪だぞ」
 大袈裟な、とロイは読んでいた本のページを捲る。答えは返すものの本から視線を上げようとしないロイの横顔を見ながらハボックは言った。
「だって熱があるし」
「たかが三十八度の熱だろう?」
「喉だって唾飲む度ズキズキするし」
「ちょっとばかり腫れてるだけだ」
「体の節々が痛いし」
「熱が下がりゃすぐ治る」
 一つ一つずつ辛いところを主張してみたが悉く切り捨てられてハボックはムゥと口を噤む。窓の外に視線を戻して言った。
「やっぱあの葉っぱが散ったらオレも死んじゃうんだ」
「だからどうしてそうなるんだ」
 呟く悲しげな声にロイが漸く本から顔を上げる。拗ねたように向けられた背中にロイが言った。
「そもそもそんなセンチメンタルな事を言う柄じゃないだろう?」
 そう言うロイを空色の瞳が肩越しに見る。恨めしげに見上げてくるそれにロイは手を伸ばして金髪をくしゃりと掻き混ぜた。
「錬金術で葉っぱを増やしてやろうか?」
「大事な一枚をうっかり焔で燃やされそうっスからやめて」
 そんな事を言われて眉をしかめるロイにハボックが言った。
「本ばっか読んでかまってくんないし」
「あのなぁ」
 デカイ図体で唇を尖らせて言うハボックにロイはため息をつく。ロイとしてはこうして側にいるだけで十分構っているつもりなのだが病人の基準ではそうはならないらしい。
「仕方ない奴だな、ちょっと待ってろ」
「大佐?」
 ロイは言って部屋を出て行ってしまう。一つため息をついてハボックが窓の外の葉っぱを眺めていれば、少ししてロイが戻ってきた。
「リンゴすりおろしてきたぞ」
「えっ、リンゴ?」
 パッと弾かれたように振り向くハボックに手を貸して体を起こしてやる。座りやすいよう背中にクッションを当てると、ロイは椅子に座ってすりおろしリンゴの器を手に取った。
「ほら、あーん」
「うわあ」
 子供のようにスプーンで掬ったリンゴを口元に差し出されてハボックが顔を赤らめる。
「食うのか?食わんのか?」
「――――いただきます」
 それでも黒曜石の瞳に軽く睨まれて、ハボックはおずおずと口を開けた。
「おいしい……もっと」
 口内に広がる爽やかな甘みと腫れた喉をひんやりと冷やす喉ごしにハボックは甘えるように口を開く。次々と差し出されるまま口にすれば器はあっと言う間に空になった。
「もっと食いたいっス」
「リンゴ一個分だぞ。余ったら食べようと思ったのに」
 余るどころかペロリと全部食べられて、ロイは残念そうに空になった器を見る。それでも満足そんな笑みを浮かべるハボックを見れば、まあいいかと肩を竦めた。その時。
「あっ!」
 窓の外に目をやったハボックが声を上げる。空色の視線を追えばさっきまでしがみついていた筈の葉がなくなってすっかり丸坊主になった枝が見えた。
「散ったな」
「――――っスね」
「で?お前も散りそうか?」
 意地悪くニヤリと笑ってそう聞いてくる黒曜石をハボックは睨む。ブランケットを引き上げ目だけ覗かせて言った。
「リンゴの肥料貰ったから」
 平気とモゴモゴ言うハボックの金髪をロイは掻き混ぜる。
「それならせっせと肥料をやることにしよう」
「次の肥料は煙草がいいなぁ」
「お前なぁ」
 そんな事を言うハボックにやれやれとため息をつくと。
「これで我慢しておけ」
 顔を寄せてそっと口づけるロイだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになってます。そして、62万打ありがとうございます〜!鋼も最近はサイトさまがすっかり減った中で変わらず続けて行けますのもこうして皆さまが遊びに来て下さるからと、本当に感謝しております。もっとハボックを書きたいなぁと思っておりますので、どうぞこれからもお付き合いのほどよろしくお願い致します!!

秋お題八つめ「Sentimental」です。風邪でちょっぴり気弱なハボックでセンチメンタルしようと思ったのですが、ただのラブラブになりました(苦笑)すりおろしリンゴ食べたい(笑)しかし、明日で11月も終わり、とてもあと2個書けると思えない……12月入ってからでもいいかなぁ(爆)

ところで、今ダンナがちょっとばかり入院しておりましてね。手術も済んで多分来週には退院。そんなわけでちょっと今週来週とばたついてますー。日記は病院への往復の電車でチマチマ書いてたんですが、更新はどうなるかなぁ。とりあえず今セレスタは書いてるんですが、FBまで手が回らなそう(苦)11月、全然更新してませんね……申し訳ないです。

以下、拍手お返事です。

620000打おめでとうございます♪ の方

いつも本当にありがとうございます!!いやもう、62万だって!自分でもよくここまで来られてるなぁと感動しています。これからも是非是非お付き合い下さいねvv
2014年11月29日(土)   No.430 (カプなし)

橙色の秋に10のお題7
7.寒い?

「まったく、なんだってこんな時に限って」
 ロイは口の中でブツブツと文句を呟きながら足早に歩いていく。灰色に垂れ込めた空からはしとしとと冷たい雨が降り続いて、空気は初冬の様相を見せていた。
『明日は昼前に雨がやんだらその後は秋晴れですって。大佐の用事が済んだらちょっと出かけましょうよ』
 夕べ、ラジオから流れる天気予報を聞いたハボックがロイを誘った。ここのところ働きづめで二人でゆっくりする時間もとれなかったから、それもいいかとロイの用事が済む時間にあわせて待ち合わせをしたのだが。
 昼にはあがるはずだった雨はやむ気配を全く見せないまま降り続いている。その上ロイの用事は思いの外時間がかかって、余裕を持って決めたはずの約束の時間を一時間も過ぎてしまっていた。待ち合わせた公園の花時計は屋外で連絡の取りようもない。
 ロイは駅前で買った傘を差して歩いていく。どれほど冷たい雨が降っていようとハボックが約束の場所から動かずに待っている確信がロイにはあった。そして。
「やっぱり」
 公園の入口をくぐり花時計が見えるところまで来たロイは足を止めて呟く。花時計の前では背の高い男が両手をポケットに突っ込んで寒そうに首を窄めて立っている姿があった。
 ロイは足早に近づくとハボックの前に立つ。ロイが近づいてくるのに気づいたハボックが、その場から動かずに顔を歪めた。
「大佐ァ」
 どうやら笑みを浮かべようとして寒さに強張った顔の筋肉が上手く動かなかったらしい。ロイはそんなハボックを睨みつけて口を開いた。
「この馬鹿犬ッ!!」
「うわあ、フツー待たせた相手を罵ります?」
 ひでぇとハボックが情けなく眉を下げる。ロイはハボックの濡れそぼって額に貼り付いた金髪を掻き上げて言った。
「傘を買いに行くなりどこか雨宿りが出来る場所で待てばいいだろうッ?」
「でも大佐、オレがここにいなかったら帰ったっしょ?」
「うっ」
 確かにここに来てハボックがいなかったら大人しく待つなんてことはしないだろう。そんな己の身勝手さの自覚がロイにはあった。
「どうせ雨なんだ。待ち合わせたところで出かけずに家に帰るしかないだろう?」
「いいんスよ、雨でも。大佐と一緒に過ごすことが目的なんスから」
 そんな風に返されてロイは目を見開く。ハボックはにっこりと笑って言った。
「でも、来てくれてよかったっス。流石にそろそろきつくなってきたから」
 そう言うハボックの体が小刻みに震えていることにロイは気づく。傘を持っていない方の腕を伸ばしてハボックの体を引き寄せた。
「寒いか?」
「さっきまでは。でも今は寒くないっス」
 大佐が来てくれたからと笑うハボックにロイは目眩がする。抱き締めたハボックの唇に己のそれを重ねてロイは言った。
「行くぞ」
「帰るんスか?」
「待たせた詫びに服を一式買ってやる。着替えて茶店で熱いココアでも飲んで、あったまりながらどこへ行くか考えよう」
「わあ、大佐、太っ腹!」
 言って笑う空色に笑みを返してロイはハボックを促して歩き出す。ハボックの上に傘を半分差し出せば、ハボックがロイを見て言った。
「いいっスよ、どうせもう濡れてるんだし」
「煩い、いいから入っておけ」
「大佐、くっついたら寒くね?」
「お前の側は暑いくらいだ」
 フンと正面を見つめたまま答えるロイにハボックが嬉しそうに笑う。
「大佐、大好きっスよ」
「くっつくな、馬鹿犬!濡れる!」
 ハボックがギュッと腕を絡めればロイがギャアと悲鳴を上げて。
 冷たい雨の中、そこだけは暖かい空気に包まれながらロイとハボックは一つ傘に身を寄せあって歩いていった。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、とっても励みになります、嬉しいですv

お題七つめ「寒い?」です。こういうセリフ系のお題って書きにくい……。東京は昨日今日と冷たい雨なもんでこんな話になりました(苦笑)ハボは約束の時間過ぎても待っていそうだけど、ロイは待ってくれないだろうなぁって(笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

暗獣、やっぱりはぼっくは小さくないとはぼっくじゃないですよね(笑)風、ロイのいいところは顔オンリー?き、きっと他にもいいところがあるんですよ――多分(爆)セレスタ、やーっとここまで来ましたよ!長かった……。あー、暇暇じいさん、どうしますかね(苦笑)やはりロイに特製ダッチワイフでも錬成してもらうしか(爆)
2014年11月26日(水)   No.429 (カプなし)

新・暗獣55
「おい、ハボック?」
 ロイは大きな声でハボックを呼びながら寝室の扉を開け部屋の中を見回す。今朝起きた時にはいた筈の小さな姿が見えず、ロイはベッドに近づくとその下を覗き込んだ。
「いない……下にいるのか?」
 リビングにはいないと思ったから上がってきたのだが、どうやら勘違いだったらしい。ロイは階段を降りてリビングに戻った。
「ハボック、いるのか?」
 ロイは言いながらリビングを見回す。カーテンの陰を覗きローテーブルの下も見たがやはりハボックの姿はなかった。キッチンにもダイニングにも洗面所にもトイレにも見あたらず、ロイは最後に残った庭に出る。吹き抜ける冷たい風に身を縮こまらせながら、ロイはハボックの姿を探した。
「ハボック、どこだ?」
 まさか外には出ていないだろうと思うものの、俄かに不安になりながらロイはハボックの姿を探す。こんなに探しても見つからないのはもしかして誰かに連れ去られてしまったのかもと、慌てて門に向かおうとしたロイは、植木の根元の落ち葉に混じってちょこんと鎮座する黒い毛糸玉を見つけた。
「ハボック!こんな所にいたのか」
 ホッと息を漏らしてロイは言う。漸く見つけたハボックにロイは言った。
「珍しいな、そんな格好でいるなんて」
 偶には元々の毛糸玉の姿になることはあるが、ロイの前では小さな子供の姿でいるのが殆どのハボックだ。珍しく毛糸玉になったハボックをロイが手を伸ばして拾い上げた時、カサリと音がして植え込みの間から毛糸玉が姿を現した。
「えっ?」
 てっきりこれがハボックだと思ったがただの毛糸玉だったのかとロイは手の上の毛糸玉と現れた毛糸玉を見比べる。毛糸玉を持ったまま出てきた毛糸玉に手を伸ばした時、カサリと落ち葉を揺らしてもう一匹毛糸玉が現れた。
「ええッ?」
 ギョッとして手を引っ込めたロイの視線の先、更にもう一匹毛糸玉が現れる。それに続いてもう一匹、更に一匹と出てきて毛糸玉は全部で十匹になった。
「仲間がいたのか?……って、どれがハボックなんだっ?」
 正直どれがハボックなのかさっぱり判らない。ムム……と唸ったロイは浮かんだ考えにパチンと指を鳴らした。
「そうか、呼べばいいんだ」
 そっくりではあるが“ハボック”は一匹の筈だ。我ながらいい考えだとロイはにっこりと笑った。
「ハボック!」
 これで返事をしたのがハボックだと答えが返るのを待っていれば。
 ポーンと毛糸玉達が一斉に跳ねる。パァッと輝きを放ったと思うと、くるんと回って子供の姿になった。
「「「ろーいっ」」」
「うわあッ!」
 十人のハボックが一斉に返事をする。寸分違わぬ空色の瞳に、ロイは目を見開いた。
「な……っ?全部ハボックだとッ?」
 多少の事では動じない自信があるロイもこの事態には流石に狼狽えてしまう。どれが自分の知っているハボックかと一人一人顔を見比べるロイにハボック達が飛びついてきた。
「ろーいっ」
「ろいッ」
「ろぉい!」
「ろーい〜ッ」
「待て待てッ!そんな一遍に来られてもッ」
 体は一つしかないのだ。幾らハボックが軽いと言っても十人ものハボックに一斉に飛びかかられてはたまったもんじゃない。ロイはわらわらと群がってくるハボックから後ずさりながら大声で叫んだ。
「ハボックは一人でいい!一体誰が本物なんだッ?」
「「「ろい」」」
 叫ぶロイにハボック達が声を合わせて答える。互いに顔を見合わせたハボック達が突然手を繋いで輪になったと思うと、繋いだ手を高く上げた。
「「「ろーいッ!!」」」
 声を合わせて叫んだハボック達の体が眩い光に包まれる。あまりの目映さに腕で顔を隠したロイは、ゆっくりと薄れていく光に掲げた腕を下ろした。
「ハボッ……ク?」
 いつもハボックと向かい合う時は下を向いているロイの視線が自身の頭よりもずっと高い所を向いている。十人いたはずのハボックは今一人になって、ロイの遥か頭上から見下ろしていた。
「嘘だろう……?」
 確かにハボックは一人でいいと言いはしたがまさか合体するなんて。それもどう見ても身長が三メートルはありそうだ。いつもはフワフワと可愛い尻尾もこの巨体に見合うものともなれば、一振りするたび巻き上がる風がロイの髪を大きく掻き乱した。
「ろぉい」
 大きなハボックに呼ばれてロイはギクリと身を震わせる。巨体に見合うだけの大声が空気をビリビリと震わせて、ロイは顔をひきつらせた。
「おいおい、冗談にしても(たち)が悪すぎだろう」
 ハボックの事は大切で可愛いが、こんな巨大なハボックをどうしろと言うのだ。このままでは家にすら入れないではないか。何とか元のサイズに戻せないかとロイが腕組みして考えていると。
「え?」
 ふと射した影にロイは思考を遮られる。ハッとして顔を上げればハボックがすぐそこに立っていた。
「ろぉい」
「えっ?ちょ……ちょっと待て、ハボック!」
 ニコォとハボックが笑みを浮かべる。両手を伸ばしたハボックが抱きついてこようとしている事に気づいて、ロイは慌てて手を横に振った。
「ダメだッ、ハボック!その巨体で抱きつかれたら……ッ!」
 幾らロイでもこの巨大ハボックを受け止められるとは思えない。ロイは必死に腕を振ってハボックを押し留めようとした。だが。
「ろぉい〜〜ッ」
「待てッ、待つんだ、ハボック!今抱っこは無理……ッ、うわわ……わぁぁぁッ!!」
 抱きついてきた巨大ハボックに圧し掛かられて、ロイはハボック諸共ズゥンッと地面に倒れ込んだ。

「くっ、苦しいッ!!」
 ロイは顔に覆い被さる小さな体をベリッと引き剥がして身を起こす。ハアハアと息を弾ませて見回せば、そこは薄闇に沈んだ寝室のベッドの上だった。
「ゆ、夢かぁ……」
 ハアアと大きく息を吐き出して、ロイはバタリとベッドに倒れ込む。やれやれとため息をつけば、ゴソゴソと動く気配がしてハボックがロイの顔を覗き込んだ。
「ろーい?」
「ハボック……」
 ロイはベッドに横たわったままハボックを引き寄せる。いつも通り小さな姿にホッと息を吐いた。
「ははは……よかった……」
「ろい?」
 力なく笑って脱力するロイをハボックが不思議そうに見る。小首を傾げるハボックの金髪を撫でてロイは言った。
「やっぱりお前は小さい方がいいな」
「ろぉい?」
「――――なあ……、まさかお前が何匹もいるって事はないよな?」
「ろい?」
 不意に浮かんだ考えにロイはガバッと身を起こしてハボックに顔を寄せる。唐突な質問にハボックは訳が判らないとロイを見た。
「まさか本当に何匹もいて合体するなんて事はッ」
「ろいッ?」
「この辺りにもう一匹隠れたりしてないだろうなッ」
「ろい〜〜ッ」
 金色の尻尾を持ち上げたり金髪から覗く犬耳を調べたりしだすロイから、這々の体で逃げ出すハボックだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになります、嬉しいですv

「暗獣」です。本当はお題を進めたいところだったんですが、電車に乗って携帯開いたら浮かんだ話がコレだったっていう(笑)毛糸玉わらわら一杯いたら楽しいだろうなぁ。って、それだと某アニメに出てくるヤツになっちゃいますね(笑)小さいはぼっく沢山いたら……幸せすぎて死にそう(笑)

それにしても最近眠くて堪りません。昼も夜もやたらと眠いよ(苦)一体どうしたらこの眠気のループから抜け出せるんだろう……というそばから眠たいっていうね(苦笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

マロン、甘栗は止まらないですよねぇ。幾らでも食べてしまう(苦笑)おお、栗きんとん!美味しそう〜〜vv栗ってホントあの皮さえなければ料理もらくですのにねぇ。でも、皮剥いて売ってる栗は美味しくない……やはり美味しいものを食べる為にはしょうがないってことなんでしょうか。ロイの焔で焼き栗するのを書きながら、浮かんだのは「さるかに合戦」でしたよ(笑)
2014年11月19日(水)   No.428 (カプなし)

睡魔に負けたので
「――――ハボック?おい!」
 二人してシャワーを浴びてベッドになだれ込み、熱いキスを交わしているとハボックの反応が緩慢になってくる。なんだ?とその顔を覗き込めばスゥスゥと気持ちよさそうな寝息を立てているのを見て、ロイは思い切り顔を顰めた。
「ハボック!寝るなッ!」
 耳元で怒鳴って肩を乱暴にゆすっても、眠りの淵から真っ逆さまに落ちていった男は全く帰ってくる気配がない。暫くの間頬を叩いたり脇の下を擽ったりしてみたが、どうにも反応のないハボックにロイは結局諦めざるを得なかった。
「一ヶ月ぶりの恋人を放っておくとは」
 激務に次ぐ激務で全く恋人らしい接触を持てず、漸く一ヶ月ぶりの逢瀬だというのに、ハボックはその激務のせいで早々に眠りの彼方だ。がっかりと溜息をついたロイだったが、その気持ちよさそうな寝息を聞いていればだんだんと眠たくなってくる。
「まあいい……明日になったら……この分返して貰うか、ら……」
 そう宣言する言葉も途切れ途切れになって。
 いつしか寄りそうようにして幸せな眠りを貪るロイとハボックだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございますー。拍手もとっても嬉しいですー。

そんな訳で睡魔に負けましたー。明日ロイハボ更新します……日記は多分暗獣で拍手のお返事もその時に……ぐー。
2014年11月18日(火)   No.425 (カプなし)

橙色の秋に10のお題6
6.マロン・マロン・モンブラン

「栗が食べたいっス!」
「────は?」
 突然ソファーから立ち上がったと思うとハボックが拳を握り締めて叫ぶ。向かいに座って本を読んでいたロイは、一瞬遅れてハボックの顔を気味悪そうに見上げた。
「いきなりなんだ?栗?」
 季節は秋。確かに栗のシーズンではあるが大声で叫ぶほどのものでもないだろうと、眉をしかめて言うロイをハボックは見る。テーブルを回ってロイに近づくとその腕をむんずと掴んだ。
「そう、栗っス。今から栗拾い行きましょうッ!」
「えっ?お、おいっ、ハボックッ?!」
 掴まれた腕を引っ張られ、ロイは前のめりになりながらもソファーから立ち上がる。グイグイと引っ張られるままにリビングから連れ出され玄関へと連れて行かれて、ロイは慌ててハボックの腕を掴んだ。
「栗が食べたいのは判ったがどうしていきなり栗拾いなんだッ?栗が食べたいなら店で栗の入ったおかずなり菓子なり買えばいいだろうッ?」
 栗が食べたいというならそれがもっとも妥当な判断だ。だが、ハボックはそれには答えず玄関から出ると、ロイを車の助手席に押し込んで車を発進させた。
「おい、こらッ、ハボック!」
「車で小一時間ほど行ったところに栗林持ってる人がいるんスよ。前に近所の幼稚園の子たち連れていったの、覚えてません?」
「ああ、バスの運転手が骨折して代わりに運転してやった時か」
 栗拾いの当日、園児たちを乗せるバスの運転手が骨折してしまい困った幼稚園の職員が知り合いだったハボックに誰か運転出来る人を知らないかと尋ねてきたことがあった。結局非番だったハボックがバスを運転して栗拾いに行き、お土産に栗を沢山貰ってきたのだ。
「約束もなくいきなり行って拾えるもんなのか?」
「平気っしょ。すっげぇ広いとこだったし」
「だがな、幾ら栗が食べたいからって栗拾いから始めなくても────」
「いいの!心おきなく栗が食いたいのッ!」
「どわッ!」
 大声で叫ぶと同時に加速する車に、ロイは体をシートに押しつけられる。もの凄い勢いで車を走らせるハボックに、ロイは下手に話しかけて事故でも起こされてはかなわないと口を噤んだ。
 猛スピードで走った甲斐あって五十分程で目的地に着く。栗林のオーナーに許可を貰ってハボックとロイは林の中に入っていった。
「栗ーッ!」
 ハボックはあちこちに落ちた毬栗を見て両手を突き上げて叫ぶ。ドカドカと歩いて中に進むと口の開いた毬の端を踏みつけ、長いトングで中の栗を拾い上げた。
「大佐も早く!沢山栗拾ったら家に帰って料理するんスから!」
 トングとバケツを手に突っ立っているロイをハボックが急かす。思い切り眉をしかめてロイが言った。
「この靴、結構いい値段するんだが」
 そう言うロイの足元を見れば、綺麗に磨き上げた革靴を履いている。
「なんでそんな靴履いてくるんスかっ?」
「いきなり連れてこられたんだっ、仕方ないだろうッ!」
「栗拾いに行くって言ったじゃないっスか!」
「行くと言った覚えはないぞッ」
 有無を言わさず車に押し込まれたのだ。そう言われてムッと唇を突き出したハボックは、持っていたトングとバケツを置くと栗林の外に向かって走っていった。
「おじさーんッ!長靴貸してーッ!」
「おいッ?」
 ギョッとしたロイが止める間もあらばこそハボックは走っていってしまう。少しして戻ってきたハボックに長靴を差し出されて、ロイは思い切り顔をしかめた。
「どうして私がッ」
「いいから履いて!さっさと栗拾わないと今日の晩飯抜きっスよ」
「なんでそうなるッ?」
 だが、苦情は一切受け入れられず、ロイは仕方なしに長靴に履き替えて栗を拾う。ブツブツと文句を言いながらもバケツいっぱい栗を拾うと料金を払って栗林を後にした。
「さあ、料理するっスよッ!」
 行きと同じく車を飛ばして家に戻るとハボックが叫ぶ。ロイはバケツいっぱいの栗を見て、恐る恐る言った。
「おい、まさかこの山盛りの栗の皮を剥けとか言わんだろうな……?」
「大佐は鬼皮ごと栗食うんスか?」
「いや、そんな食い方はしないが」
「じゃあ剥くに決まってるっしょ」
「マジか?」
 なんでもないように返されてロイは呻く。栗剥き用の鋏を渡されて一つずつ剥き始めたものの、十個も剥かないうちにロイは鋏を投げ出した。
「イヤだ、どうして私がこんな事をしなくてはならんのだ」
「栗を食べる為っしょ」
「栗を食べたいのはお前だろうッ!」
 決して自分が食べたいと言ったわけではないとロイは乱暴な仕草で立ち上がる。だが、空色の瞳でじっと見つめられて、ロイは「うう」と低く呻いた。
「くそッ!こんなもの一つずつ剥いてなんていられるかッ!」
「あっ、ちょっとッ、大佐ッ!」
 ロイは言うなり発火布を取り出す。シュッと手に填めるとパチンと指をすり合わせた。
「うわッ?」
 指先から迸った焔が栗を包む。パチパチと弾ける音がしたと思うと次のパチンと指を鳴らす音と同時に焔が消えた。
「────すっげぇ!焼き栗になってる!」
 弾けた鬼皮の間から覗く実がホカホカと湯気を上げているのを見てハボックが目を丸くする。フンと鼻を鳴らしたロイに、ハボックは目を輝かせて言った。
「大佐、凄いっス!」
「私にかかれば栗なんて一発だ」
「じゃあ、残りもお願いしますね!」
「えっ?!」
 自慢げに言えばズズッとバケツごと栗を差し出されてロイはギョッとする。
「待て!火加減が難しいんだぞッ!弾けて飛んだり消し炭になったりしないよう加減をだな────」
「大佐にかかれば一発なんでしょ!便利だなぁ、茹で栗作る手間省けて。じゃあ、残りもちゃっちゃとお願いしますね。オレは料理始めるんで」
「ちょっと待て!ハボック!」
 慌てるロイの前に山ほどの栗を残して、ハボックは焼けた栗をボウルに入れてキッチンへ行ってしまう。袖捲りをして「よし」と腰に手を当てた。
「まずは栗ペーストかな」
 そう呟いて焼けた栗を牛乳とグラニュー糖と一緒に鍋に放り込む。木べらで混ぜながら煮込んであら熱をとるとミキサーに移し、途中温めた牛乳を足しながらペースト状にした。
「一丁上がり!」
 出来上がった栗ペーストをボウルに移して脇によけ、オーブンを余熱する。温まるのを待つ間にモンブランケーキ用のスポンジ生地を作って型に流し入れ、温まったオーブンに突っ込んだ。サラダ用のキャベツと人参を千切りし塩を振っておき、ドレッシング用のマヨネーズや酢と牛乳を混ぜあわせ、炒めてガーリックパウダーを振ったベーコンと焼き栗にしんなりしたキャベツと人参の水気を絞って加えてドレッシングを和えてサラダを作り冷蔵庫に突っ込んだ。
「大佐ぁ、栗、まだっスか?」
「お前なぁッ!」
 ダイニングに向かって声を張り上げればロイがバケツの栗を抱えてキッチンに入ってくる。ドカッと置かれた山盛りの焼き栗にハボックはにっこりと笑って礼を言った。
「じゃあ、米洗ってください。栗ご飯作んなきゃ。中に入れる栗、焼き栗でもいいかなぁ」
「お前が全部焼けと言ったんだろうっ?生はないッ!」
「ああ、はいはい。急がないとご飯炊けないっスよ。時間ないからお湯使って手早く洗って、塩と酒と栗入れてセットして!」
「人をなんだと思ってるんだ、お前は」
 人使いが荒いと文句を言うロイを適当に宥めて、ハボックは焼き上がったスポンジをオーブンから出す。カスタードクリームとシロップを作りくり貫いたスポンジに挟むと、生クリームを泡立てさっき作った栗のペーストとあわせて絞り袋に入れてスポンジの上に絞り出した。
「はい、大佐!ご飯セット終わったら休んでないでピーマン切ってください」
「ピーマンは嫌いだ」
「子供みたいなこと言わねぇの」
 ピーマンを前に眉を寄せて言うロイにそう返して、ハボックは鶏肉を一口大に切る。鶏肉と栗とロイに切らせた野菜で炒め物を作った。
「ハボック。揚げ栗のメイプルバターが食べたい」
「えっ?でも全部焼き栗にしちゃったっしょ?」
「いいじゃないか、さっと揚げれば」
 手伝ってるんだから食わせろと騒ぐロイに負けて、ハボックは揚げ油を用意するとその中に栗を入れる。揚げた栗にバターと塩を絡めて最後にメイプルシロップを和えた。
「栗ご飯も出来たぞ」
 出来たものを次々とテーブルに運んでいれば、ロイがキッチンで言う。炊飯器ごとテーブルに運んで、冷蔵庫からサラダを出してハボックはロイをテーブルに促した。
「待て待て。ご馳走には酒がなければ駄目だろう?」
 ロイはニヤリと笑ってワインとグラスを持ってくる。向かい合ってテーブルにつくとワインを注いだグラスを掲げた。
「ありがとうございます、大佐!おかげで栗三昧っス!」
「全く大変な一日だった……」
 ハアとため息をついたが、テーブルに並べられたご馳走を見れば疲れも吹き飛んでロイは笑みを浮かべる。
「デザートはモンブランっスから」
「それは楽しみだ」
 チンとグラスをあわせたのを皮切りに、二人は栗三昧の夕食を堪能したのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになります、嬉しいですーv

お題六つ目「マロン・マロン・モンブラン」です。色々ツッコミどころ満載ですが、その辺は目を瞑って頂いて(苦笑)いやだって、お題見て「一体なにを書けば……?」って(苦笑)レシピは色々調べましたが途中でめんどくさくなっていい加減になりました(コラ)まあ、こちらのお題サイトさまは規約が緩めなので10個全部書かなくてもいいんですが、やるなら上から順に書きたくなるというか(笑)あと四つ、書けるかな……。

んで、更新はどうしたと言われそうですよね、いい加減。サボりまくり……というか、実はロイハボの方、「セレスタ」は二話「風の行く先」は一話書いてるので私的にはあんまりサボった気にはなってないんですがね。ハボロイがさっぱりなのでアップどうしようかなーって思っているうちに過ぎていくっていう(苦笑)「ハイム」も「FB」もあと少しで終わりそうなんだがなぁ。つい日記のお題の方に気が行っちゃってたりします。玄関もハロウィンのままだしな(苦笑)
2014年11月16日(日)   No.424 (カプなし)

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31]
 OR AND
スペースで区切って複数指定可能
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2022年 /
02月 / 03月 / 05月 / 06月 / 08月
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2021年 / 05月 / 06月 / 08月
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2020年 / 05月 / 06月 / 08月
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2019年 / 05月 / 06月
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2018年 / 05月 / 06月 / 07月 / 08月 / 09月 / 10月
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2017年 / 02月 / 03月 / 05月 / 06月 / 08月
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2016年 / 01月 / 02月 / 03月 / 04月 / 05月 / 06月 / 07月
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2015年 / 01月 / 02月 / 03月 / 04月 / 05月 / 06月 / 07月 / 08月 / 09月 / 10月 / 11月 / 12月
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2014年 / 01月 / 02月 / 03月 / 04月 / 05月 / 06月 / 07月 / 08月 / 09月 / 10月 / 11月 / 12月
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2013年 / 01月 / 02月 / 03月 / 04月 / 05月 / 06月 / 07月 / 08月 / 09月 / 10月 / 11月 / 12月
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2012年 / 01月 / 02月 / 03月 / 04月 / 05月 / 06月 / 07月 / 08月 / 09月 / 10月 / 11月 / 12月
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2011年 / 01月 / 02月 / 03月 / 04月 / 05月 / 06月 / 07月 / 08月 / 09月 / 10月 / 11月 / 12月
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
  Photo by 空色地図

[Admin] [TOP]
shiromuku(fs4)DIARY version 3.50