胸ポケットの中でブーブーと言う振動音を立てて携帯が震えているのを感じてハボックは眉を顰める。ため息と共に書類を書いていた手を止めると、軍服の合わせから手を突っ込み内ポケットの携帯を取り出した。 「……」 待ち受け画面に表示されたメールの着信を知らせるアイコンを見つめたハボックは、嫌そうにしかめた眉の皺を深めながらアイコンをクリックする。開いたメール画面いっぱいに表示された幼女の写真を見てげんなりとため息をついた。 「……ったく」 無視したいのは山々だが無視しようものなら数分後にあの執務室の扉から鬱陶しい髭面の親馬鹿オヤジが飛び出てくるのは判りきっている。それだけは避けなければと、ハボックは返信画面を開くと素早く文字を打ち込んだ。 「エリシアちゃん、可愛いっスね……っと」 口に出して短い文章を打ち込み送信ボタンを押す。送信が完了した事を確認して携帯をポケットに戻した。 「はあ……」 ハボックは一つため息をついて今見たメールを頭の中から追い出すと書類に向き直る。だがものの数分もしない内に再び震えた携帯に、チッと舌を鳴らして携帯を取り出すとろくに画像を見ずに同じ文章を打ち込んで返した。しかし、その後も二分とおかずに次々と画像が送られてくる。メールが七通目を数えた時、流石にハボックが手にしたペンを投げ出して携帯を乱暴に開けば、今度の送信元はヒューズではなかった。 「あれ?大佐?」 思わず執務室の扉を見やりながらメールを開けば今度は画像ではなく文字が浮かび上がる。その文字を読んで、ハボックはガックリと机に突っ伏した。 『なぜわたしにめいるをよこさないのだ ばかひゅうずのあいてをしてたらのどがかわいたコーヒをもってこい』 「…………」 子供の言葉を文章にしたようなメールにハボックは深いため息をつくと乱暴な仕草で立ち上がる。靴音も荒く司令室を出ると給湯室でコーヒーを淹れて戻ってきた。 「大佐ッ、中佐もッ!!」 ノックもなしにハボックは乱暴に執務室の扉を開ける。扉が開く音に携帯から顔を上げた上官二人を睨みつけて言った。 「いい加減にして下さいッ!仕事にならないっしょッ!!」 ガチャンとコーヒーが載ったトレイをロイの机に置き二人の顔を見渡す。そうすればヒューズがシナを作って言った。 「なに言ってるんだ、少尉。殺伐とした空気の中エリシアちゃんは最高の清涼剤だろう?俺は少尉が気持ちよく仕事が出来るよう上官として気遣ってだなぁッ」 「ただ単にエリシアちゃんの着信ボイスが聞きたいだけのクセに」 「ウッ!」 ボソリと返された言葉にヒューズは一瞬言葉に詰まる。そのすきにハボックはロイの方を見て言った。 「大佐も!くだんないメール送ってこないで下さい。コーヒーが欲しけりゃ直接言えばいいっしょッ!!」 「何を言うっ、お前がヒューズにばかりメールを送って私にはちっとも送ってこないからだろうッ?せっかく携帯買ったのにッ!!」 真新しいブルーの携帯を握り締めて言うロイにハボックはウンザリとため息をつく。送信履歴を開いてロイに見せると言った。 「アンタがそう言うから昨日散々メールしてあげたっしょ?アンタそれに何回返事寄越しました?」 「う…っ、し、仕方ないじゃないかッ、打つのに時間かかるんだからッ!」 顔を赤らめてロイが言い訳の言葉を口にすれば、ヒューズが自慢げに言った。 「俺は少尉のメールにはすぐに返信してるぜッ!」 「中佐はエリシアちゃんの画像しか送ってこないじゃないっスか」 「そっ、それはだなぁッ、さっきも言ったように少尉の為を思って―――」 「とにかく!」 ヒューズの言葉を遮ってハボックが言う。 「仕事中の私事のメールは禁止。さっさと仕事して下さい、いいっスね?」 ピシリと言うハボックにロイとヒューズは一瞬押し黙る。だが、次の瞬間二人同時に口を開いた。 「ハボック!お前、私とメールのやり取りをするのが嫌なのかッ?恋人なんだから一日50通も100通もメールをするのが普通だろうッ?それを嫌がるような事を言うなんてッ!」 「エリシアちゃんの画像を送るのの何が問題だって言うんだッ、究極の癒やしだろうッ!あ、少尉、お前、エリシアちゃんの画像を削除したりしたら許さんからなッ!ちゃんと保存しておけよッ!」 ギャイギャイと喚きたてる二人にハボックのこめかみがピクピクと震える。息を吸い込んだハボックが二人を怒鳴りつけるより一瞬早く、三人の携帯が着信を告げた。 「え?誰から?」 くだらないメールを寄越して仕事の邪魔をする上官二人は目の前にいて携帯を弄っていない。誰だろうとメール画面を開いたハボックは目に飛び込んできた言葉に凍りついた。 『いい加減にしないと射撃の的にしますよ?』 ゆっくりと顔を上げて上官を見れば二人の所にも同じメールが来たと知れる。ハボックはトレイの上のカップを二人の前に置いて言った。 「とっ、とにかく、コーヒー飲んだら仕事して下さいッ」 「そ、そうだなッ、ありがとう、ハボックっ」 「コーヒー飲んだらちょっとその辺回ってくるわ、俺ッ」 言うなりカップに手を伸ばしてコーヒーを一気飲みする上官を残してハボックは執務室を出る。カリカリとペンを走らせているホークアイをチラリと見て言った。 「二人ともコーヒー飲んで一息入れたら仕事するようっスよ?」 「そう、それはよかったわ」 トン、と最後の点を書いてホークアイが顔を上げる。にっこりと笑みを浮かべてハボックを見ると言った。 「そろそろ演習の時間なのではなくて?少尉」 「はいッ、すぐ行きますッ!」 そこだけはちっとも笑っていない鳶色の瞳にビシッと敬礼を返して、ハボックは一目散に司令室を飛び出していったのだった。
いつも遊びにきて下さってありがとうございます。拍手、やる気頂いてます、嬉しいですv
火曜の更新時は一時dump renewページが表示出来なくなっていて、その時間に覗きにきて下さった方には申し訳ありませんでした。更新しようとしたら何故だかいきなりdump renewだけアップ出来なくなってしまいまして…。アクセス権限やらなにやら見てみたけどさっぱり判らず、仕方ないのでページを新しく作り直して元のページを削除し新規で保存しようとすると保存出来ないんですよー。悩んだ挙げ句dump renew2で保存かけたら出来たのでなんとかアップ出来たんですがやたら時間かかっちゃったorz 結局理由は判らず終いなんですが、なんでなんだろう……。またなったら嫌だなぁ(苦)
両親が携帯を買いました。以前から「春休みになったら買おうね」と言っていたのですが今回の震災でやはり携帯を持っていた方がいいと痛感したらしく(父は釣りで、母は観劇で互いに連絡の取りようがなかったから)結局春休み前に携帯買うのに付き合い、その日は時間がなかったので取りあえず電話のかけ方だけ教えたら二人でテーブル挟んで電話かけたりしてたらしく(苦笑)春休みでこっちに来てメルアド設定してあげたんですが、流石に父の方は日頃パソメールを弄ってる分飲み込みも早く最初に打ったメールもまともだったんですが、母が息子に打った初メールは「はつめいるだぜいいえい」って(苦笑)しかも文頭に息子の名前がひらがなでついてるから益々判りにくく、受け取った息子が暫く悩んでました(笑)伯母のアドレスを教えて貰ったので「打った?」と聞いても「メールまだ打てないから」って。私らが帰るまでに多少は打てるように仕込んでいかないと携帯買った意味がない。暫くは携帯で会話した方がいいかも?(笑)
以下、拍手お返事です。
摩依夢さま
お陰さまで体調回復致しました。ご心配頂いてありがとうございます。「バラード」漸く終わりましたー!何だかもうちっとも切ない感じにならなくて……orz 少しでもお楽しみ頂けていたら嬉しいのですが。また機会がありましたらこれに懲りずリクしてやってください。摩依夢さまもお体お気を付けてお過ごし下さいませ。
naoさま
うふふ、「剃刀2」楽しんで頂けましたか?やっぱりハボが泣いたり恥ずかしがったりするとワクワクしますよねッ(笑)ベビーの方は如何でしょう。小学校の時、同じ年の4月1日生まれの女の子が同じ学年でした。本来上の学年だと思うのですがあの頃は規定が緩やかだったのかなぁ。ちなみに姪っこは3月30日生まれで学年で一番年下、私は4月7日なので大抵学年で一番年上でした(笑)ベビー誕生のお知らせを楽しみにしてますねv
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