カプなし

=ハボロイ  =ロイハボ
=カプ色あり  =カプなし

2012年04月07日(土)
暗獣48
2012年03月20日(火)
姿勢
2012年03月19日(月)
暗獣47
2012年03月01日(木)
働く軍人さん
2012年02月29日(水)
暗獣46
2012年02月27日(月)
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2012年02月18日(土)
蒼空
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2012年01月28日(土)
内職

カテゴリー一覧
カプなし(303)
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暗獣48
「随分暖かくなったなぁ」
 図書館からの帰り道、吹き抜ける穏やかな風にロイは目を細めて呟く。ついこの間までは首を竦めたくなるほど冷たかった風が、気がつけば春の香りをロイの下に届けるようになっていた。
 もう随分前から住んでいるように思える古い屋敷の門扉を開けてロイは中に入る。雑多な木々が植えられた庭もあちこちに花が開き始め、春の訪れを告げていた。
「ハボック?」
 その庭の片隅でハボックがしゃがみ込んでいる事に気づいてロイは玄関に向かおうとしていた足を庭に向ける。小さなハボックの後ろに立てば空色の瞳が肩越しにロイを見上げた。
「ろーい」
 ハボックが指差す先を見ると茶色い筆のようなものが何本も何本も地面から顔を出していた。
「土筆じゃないか」
 ロイはそう言って手を伸ばすとプチンと一本、根元から折り取る。それを差し出せばハボックが目を輝かせて受け取った。
「食べると旨いんだ……って、お前は食えないか」
 ハボックが口にするのは井戸の水だけだ。ちょっぴり残念そうに言うロイを首を傾げて見つめていたハボックは、ロイに背を向けると土筆を一本一本、丁寧に摘み始めた。
「ハボック?」
「ろーい」
 ハボックが摘んだ土筆を手のひらに載せて差し出す。にっこりと笑う顔を見て、ロイも笑みを浮かべた。
「よし、折角だ。春の味を楽しむ事にするか」
 ロイがそう言えばハボックが嬉しそうに肩を窄める。二人は庭にしゃがみ込んで庭のあちこちに生えている土筆を摘み始めた。
「ハボック、そっちの方にもあるぞ。あっちにも」
 ロイに言われてハボックが庭のあちこちから土筆を集めてくる。暫くすればロイの両手にいっぱいの土筆が取れた。
「ろーい!」
 嬉しそうにぴょんぴょんとハボックが飛び跳ねる。
「ありがとう、いっぱい採れたな」
 ロイは笑って言うと土筆を手に家に入る。真っ直ぐダイニングに行くと手の中の土筆をテーブルに置いた。
「ハボック、もう少し手伝ってくれ」
 そう言われてハボックが尋ねるように首を傾げる。ロイは土筆を一本手に取ると袴を毟り取った。
「これを毟って欲しいんだ」
 ロイはそう言ってハボックに土筆を渡す。ハボックは渡された土筆の袴をプチリと毟ってロイを見た。
「ろーい?」
「そうそう、その調子で毟ってくれ」
 にっこり笑って言えばハボックが張り切って毟りだす。二人して無言でプチプチと毟れば、土筆はあっという間に袴を全て毟り取られてすんなりとした姿になった。
「ろーい〜っ」
 袴を毟った自分の手を見たハボックが泣きそうな声を上げる。小さな手の指が黒くなっているのを見て、ロイは苦笑した。
「灰汁があるからな、大丈夫、洗えば落ちるよ」
 そう言って立ち上がるロイにハボックがついてくる。洗面所に行くとロイはハボックが手を洗えるように抱えてやった。
「ろーいっ」
 ブクブクと泡立てた石鹸で汚れを落としてピカピカになった手をハボックが嬉しそうに翳す。タオルで手を拭いたハボックを床に下ろして自分も手を洗うと、ロイはダイニングに戻った。綺麗に袴を取った土筆をキッチンに持って行き、水で洗って汚れを落とす。それをサッと茹でる間にベーコンを切りニンニクを刻んだ。パスタ用の湯を沸かしているとハボックがロイの周りをチョロチョロする。
「ハボック、足下をチョロチョロすると危ない」
 思わずそう言ってしまえば不服そうに頬を膨らませるハボックにロイは苦笑した。
「怒るな、悪かった。そうだな、リビングの棚から白ワインのボトルを持ってきてくれるか?一番下に入ってるやつ」
 手伝いを頼まれてハボックがパッと顔を輝かせる。パタパタと小走りに出て行く姿に笑みを浮かべて、ロイはフライパンにオリーブオイルを敷きニンニクと鷹の爪を入れた。沸騰した湯にパスタを放り込み、ニンニクの香りが出てきたところでベーコン、土筆の順にフライパンで炒める。その時パタパタと音がしてハボックが戻ってきた。
「ろーい」
「いいタイミングだぞ、ハボック。それをこっちに寄越してここからショーユを出してくれ」
 ロイはフライパンを揺すりながら足元の扉を蹴飛ばす。差し出されたボトルを受け取りハボックが取り出しやすいように少しよけた。
「ろーい」
「ん、蓋を開けられるか?」
 ワインをフライパンに振り入れながらロイが言う。そうすればハボックがンーッと蓋を引っ張った。
「ろーいっ」
 パチンと蓋の外れたボトルをハボックが差し出す。ありがとうと受け取ってロイはショーユを回し入れた。
「東の国の調味料なんだ、これが結構土筆にあってな」
 ロイがそう言うのを聞いて、ハボックが落ち着かなげにウロウロとする。キッチンの隅に置いてあった足継ぎ用の台に駆け寄ると「ウーン」と引っ張ろうとするのを見て、ロイは火を止めて台を寄せてやった。
「顔を出すなよ、危ないからな」
 台によじ登るハボックにそう釘をさしておいてからロイはフライパンに火をつける。ハボックが興味津々見つめる中、茹で上がったパスタを加え茹で汁で塩加減を調節した。火を止め最後にオリーブオイルとショーユにブラックペッパーを回し入れればいい匂いがキッチンに立ち込めた。
「ろーい」
「いい香りだろう?」
 クンクンと鼻を鳴らすハボックにロイが言う。ハボックはポンと台から飛び降りると棚に駆け寄り大きな皿を持ってきた。
「気が利くな」
 ロイは皿を受け取り出来上がったパスタをよそう。ハボックの前に差し出しにっこりと笑った。
「どうだ、春の土筆パスタの出来上がりだ。旨そうだろう?」
「ろーいっ」
 皿の上に顔を突き出して、パスタのいい香りをいっぱいに吸い込んでハボックが笑う。皿を手にダイニングに行くロイの周りをチョロチョロと嬉しそうに駆け回った。
「お前に食べさせてやれないのがちょっと残念だな」
 テーブルにつきながらロイが言う。そのロイを首を傾げて見上げたハボックが突然部屋から出て行ってしまい、ロイは驚いて腰を浮かした。
「ハボック?おい!」
 そう声をかけたがハボックは戻ってこない。少し待っても帰ってくる様子がないと判れば、ロイは浮かした腰を椅子に戻した。
「まぁ、食べられる訳じゃないしな」
 仕方ない事とはいえ少し淋しい。ロイが折角作ったパスタをモソモソと食べ始めた時、パタパタと足音がしてハボックが戻ってきた。
「ろーい」
「ハボック」
 ダイニングに戻ってきたハボックが椅子にンションショとよじ登る。手を使わないようにしてよじ登ろうとする襟首を掴んで引っ張り上げてやれば、ホッと息を吐いたハボックが両手を差し出した。
「ろーい」
 握っていた手を開けば小さな手のひらに沈丁花の花が載っている。その花をロイと自分の前に並べてハボックが笑った。
「ハボック……」
 ロイが手を伸ばして金色の頭をわしわしと掻き混ぜればハボックが擽ったそうに首を竦める。
「いい香りだな」
「ろーい」
 言われてハボックが花を手に取り香りをいっぱいに吸い込んだ。
「よし、食うか」
「ろーい!」
 そうして二人は春の香りと味をたっぷりと堪能したのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございますv拍手、沢山嬉しいですーvv

「暗獣」です。今日は更新できないのでカプ色のないものに(笑)やっと春になったと言うのにまだ全然ハボックにお花見させてないやー(汗)早くしないと桜が終わってしまうー(滝汗)
でもって、今日また一つオババになりましたー(苦笑)最近自分の年を忘れてるというか、年齢書く欄があると「ええと、私は○年生まれだからー」と計算している始末(苦笑)だってもー、ここまで来ると幾つだろうが変わんないんだもん!(爆)

以下、6日拍手お返事です。

阿修羅さま

えへへ、ヒュハボ喜んで頂けて嬉しいですーvヒュハボはやっぱりS心に火をつけなくちゃって思って書いてます(笑)確かに既婚臭ぷんぷんなヒュは嫌かなぁ(苦笑)一応ロイハボ・ハボロイサイトです、と言いつつ、ヒュハボも好物なのでご一緒に萌え萌えしてくだされば嬉しいですv

悪い、危険な香りのするヒューズ の方

うふふふ、やっぱりヒューズは悪いのがいいですよねッv楽しくて仕方ないなんて、とってもとっても嬉しいですv続きも楽しんで頂けるよう、頑張ります!
2012年04月07日(土)   No.173 (カプなし)

姿勢
「大佐、そろそろ時間っス」
 例のごとくノックと同時に執務室の扉が開いて、ロイは眉を顰めて扉を開けた人物を見る。一言言ってやろうと開かれた唇は、だが言葉を発する事なくポカンとと開かれた。
 今日ロイはイーストシティの市庁舎落成式典に来賓として出席する予定だ。ロイは勿論、護衛として同席予定のハボックも祝いの席と言う事で礼服を着用しているのだが。
 普段青い軍服を着ているときは、折角の長身を勿体無いほど猫背に丸め上着のボタンを外してどこかだらしない印象のハボックが、今日は別人のように礼服をピシッと着て背筋をピンと伸ばしている。それだけで見た者に与える印象は180度変わって、物凄くカッコ良かった。
「なんだか随分印象が違うな」
「へ?そうっスか?」
 ロイが素直に感じた事を口にすれば、ハボックがキョトンとして自分を見下ろす。礼服の裾を引っ張り前を見て背中を見て、最後にロイを見て言った。
「どうせ馬子にも衣装とか言いたいんでしょ?」
 唇を尖らせて不貞腐れたようにハボックがロイを睨む。どうせオレなんかとブツブツ言うのを聞いて、ロイが苦笑した。
「そんな事言ってないだろう?」
「言ってなくても聞こえます」
 そういうのを聞いてどこまで被害妄想なんだとロイは吹き出す。クツクツと笑えば益々むくれるハボックにすまんと謝ってロイは笑いを引っ込めた。
「やけに姿勢がいいな。折角背が高いんだ、いつもそうして背筋を伸ばして立っていれば随分印象も違うのに」
 カッコいいぞと笑って言うロイにハボックが顔を赤らめる。ボリボリと頭を掻いて答えた。
「なんかこれ着ると自然と背筋が伸びるんスよね。流石にボタン外しては着らんないし」
「普段着とよそゆきみたいなもんか」
「まあ、そうっスね」
 首を傾げて答えたハボックは壁の時計を見て慌ててロイを急かす。仕方なしにのんびりと立ち上がりながら、ロイは普段より背が高く感じるハボックを見て言った。
「やはり勿体無いな。普段からそうやって立ちたまえよ。いっそ毎日礼服を着たらどうだ?」
「えー、肩凝るからヤダ」
 なんだかしょうもない理由を口にするハボックを連れてロイは廊下に出る。ほんの数歩歩いただけで、ロイは向けられる視線が三割増しで多いことに気づいて眉を顰めた。その視線が向かう先へと目を向ければ斜め後ろに立つハボックと目が合う。眉間に皺を寄せて見つめられて、ハボックは不思議そうに首を傾げた。
「なんスか?」
 黒曜石の瞳でジーッと見つめられてハボックが困ったように笑う。「あの」だの「大佐?」だの言ったハボックが、いい加減反応のないロイに叫び出しそうになった時。
「それを脱げ、ハボック」
「は?」
 やっと口を開いたと思えば訳の判らない命令にハボックはポカンとする。そんなハボックの襟元に手を伸ばすと、ロイは凄い勢いでボタンを外し始めた。
「なっ……?!なにするんスかッ!!」
 いきなり服を脱がされかかってハボックが飛び上がる。身を捩って逃れようとするハボックの襟を掴んでロイが言った。
「脱げと言ってるんだ」
「なんでッ?今から式典行くんスよッ?」
「お前がそれを脱いだら行く」
「はあっ?脱いだら行けねぇっしょ!」
「煩い、ぐちゃぐちゃ言わずに脱げ。みんながお前を見るだろうが」
「いや、みんなが見てるのは大佐が変な事するからッ」
 叫びながら周囲に目をやれば、廊下の真ん中で服を脱げだのなんだの言いながらもみ合う二人に行き交う軍人達が奇異なものを見る目を向けている事にハボックは気づく。妙な注目を浴びてしまって、ハボックは顔を赤らめてロイを振り払おうとした。
「大佐、止めてくださいってば!」
 気がつけばボタンは全部外され上着が肩から落ちそうだ。グイと服を引っ張られて思わずハボックが悲鳴を上げた時、背後から氷点下の声が聞こえた。
「何をなさってるんですか、あなた方は」
「中尉」
 振り向けば冷気を纏ったホークアイがもみ合う二人に氷点下の視線を向けている。普段なら怖いその冷たい表情も今のハボックには女神の微笑みのように見えた。
「中尉〜ッ!大佐がオレの礼服脱がそうとするんですッ!」
 助けてッ、と叫ぶハボックにホークアイがピクリと眉を跳ね上げる。ジロリとロイを見ると更に温度の下がった声で言った。
「大佐、あなたという人は……」
「誤解だっ、中尉!私はただ他の連中にカッコいいハボックを見せたくないだけで――――」
「恥を知りなさいッ、恥をッ!!」
 そう言うのと同時にホークアイの銃が火を噴く。悲鳴を上げて逃げ回るロイを見ながら、もう二度と礼服は着るまいと思うハボックだった。


いつも遊びにきて下さってありがとうございます。拍手も嬉しいです。

先日、久しぶりにストッキングにパンプスはく機会がありましてね。こういうのを履くと自然と背筋が伸びるなぁと思ったもので。自然と胸を張って腹を引っ込め、お尻をキュッと引き締めて立ちますもんね。ダイエットにもいいかもしれない(笑)

ところで今日の更新ですが、なんか定期の更新の方にスイッチが切り替わらずしょうもない日記ばかり書いていたら、もう3時を回ったというのに一文字も書いていない体たらくです。とても更新は無理そうかと(苦笑)ついでに今後の予定を少し。
火曜更新分(空色のカノン、初回衝撃)
本日:休み、27日:旅行中の為休み、3日:帰省中の為休み
土曜更新分(見毛相犬2、セレスタの涙)
24日:多分更新、31日:前日までに書けていればアップしてから帰省します、7日:帰省中に書けていればアップしますが微妙
こんな感じで通常営業になるのは遅ければ4月10日になります。日記はその時次第で……下手したら10日まで動きがないかもしれません(苦笑)まあ、あんまりサボるとサイトの存続自体がどうなるか怪しくなるので(サボり癖をつけると書かなくなる(爆)日記くらいは書きたいと思っています。そんな感じでよろしくお願いします。
2012年03月20日(火)   No.167 (カプなし)

暗獣47
 窓際の椅子で本を読むロイの足下で宝物を並べて楽しんでいたハボックが、何かに弾かれたように顔を上げる。
「ハボック?」
 金色の髪と同じ色をした犬耳をピクピクと動かして首を傾げるハボックをロイが訝しげに呼んだ時、ドンドンッと玄関を激しく叩く音がした。
「……誰だ、こんな時間に」
 チッと舌打ちしたロイが本をテーブルに置き天使の時計に目をやる。くるくると天使が回る時計の針は既に十時を回っており、人を訪ねるには不適当な時間と思えた。
「ぶん殴ってやる」
 物騒な事を呟きながら階段を下りるロイについてハボックも降りていく。ドンドンと扉を叩き続ける音にロイが眉間の皺を深めて扉を開ければ、玄関ポーチに立つ人物にロイは目を見開いた。
「ヒューズ」
 セントラルに住むヒューズが仕事の関係で一週間ほど前からイーストシティに来ているのは知っていた。だが、今回は仕事が立て込んでいると聞いていただけに、夜分の訪問に驚いてロイはヒューズを見た。
「どうした、こんな時間に?」
 そう尋ねたがヒューズはなにも答えない。視線をロイの脚にしがみついて覗いているハボックに向けたと思うと、ヒューズはドンッとロイを突き飛ばした。
「うわッ?」
「ハボックちゃんッ!!」
 ヒューズは大声で叫ぶとびっくりして硬直しているハボックをヒシと抱き締める。小さな体をギュウギュウと胸に抱き込んでその金髪に髭面を擦りつけた。
「ハボックちゃんっ、マース君はねっ、マース君はねっ」
 そう叫びながらヒューズはハボックを抱き締める腕に力を込める。そうすればヒューズの胸に顔面を押しつけられたハボックがジタバタともがいた。
「やめんかッ、ヒューズ!ハボックが窒息するッ!!」
「あ」
 突き飛ばされて尻餅をついたままロイが怒鳴る。そうすれば漸くヒューズは今の状態に気付いて抱き締める腕を弛めた。
「ろーいー」
 プハッとヒューズの胸から顔を上げたヒューズが助けを求めてロイを呼ぶ。腕を弛めたもののハボックに髭面をスリスリと擦りつけるヒューズの頭を、ロイは立ち上がるとゴンと殴った。
「いい加減にしろ、お前はッ!」
「いいだろッ、俺は疲れてんだよっ、癒して貰ってんだよっ、ハボックちゃんに!」
 ロイに向かってキーッと喚くと「ハボックちゃあん」とハボックをムギュムギュするヒューズに、ロイは眉を顰める。いつにない友人の疲れた顔にロイは一つため息をついて言った。
「とにかく力任せにハボックを抱き締めるのをやめろ。ハボックが苦しがってる」
「あー」
 言われてヒューズは腕の中のハボックを見る。苦しいのと滑らかな肌に髭面をこすりつけられて痛いのとで涙目になったハボックと目があって、ヒューズは申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめんね、ハボックちゃん」
「とにかくこっちに来い。こんなところじゃ話もできん」
 ロイはそう言うとリビングへと足を向ける。ヒューズはハボックを抱き上げ、ロイに続いてリビングに入った。
「どうした、一体」
 手早くハーブティーを淹れてロイが尋ねる。ソファーに腰を下ろしてハボックを膝に載せたヒューズはカップを受け取りながら答えた。
「今回仕事が激務でさぁ、まあそれはしょうがないんだけど俺、本当は今日でセントラルに帰る予定だったんだよ」
「帰れなかったのか」
 言われてヒューズは頷く。ズズッとハーブティーを啜ってヒューズは言った。
「帰ったら午後は休みを取れる筈だったんだ。エリシアちゃんを動物園に連れていってやる約束だったんだけどな」
「それは残念だったな」
 気の毒だとは思うが仕事なのだから仕方のないことだし、日を改めて連れていってやればいいだけの話ではないのだろうか。ロイがそう思った時、ヒューズが言った。
「電話してエリシアちゃんに仕事で帰れなくなったから動物園はまた今度って言ったらさあ、エリシアちゃんってば怒りもせずに『パパ、お仕事頑張ってね』だって!」
「父親と違ってよく出来た娘だな」
 サラリと酷いことをロイが言う。だが、反論する気力もないのかヒューズはため息をついて言った。
「それ聞いたらグチャグチャ勝手なことばっかり言って仕事の邪魔する奴らにスッゲー腹が立つわ、ムカつくわでなんかもー疲れちゃって」
 ヒューズはそう言ってゴクゴクとハーブティーを飲み干す。きっと昼間は何でもない顔で勝手な奴らを去なしながら仕事をこなしていたのであろう友人の苦労を思って、ロイは言った。
「大変だったな、ハーブティーもう一杯飲むか?」
「頼む」
 ロイは頷いて空のカップを受け取りハーブティーを注ぐ。カップを渡せば今度はゆっくりと飲みながらヒューズが言った。
「だからちょっとハボックちゃんに癒して貰いたくなってさ」
 そう言って苦笑するヒューズにロイはやれやれとため息をつく。ヒューズはカップをテーブルに置くとロイを見て言った。
「悪かったな。愚痴ったらすっきりしたわ」
 ヒューズはニヤリと笑って言うとフゥと一つ息を吐く。じゃあ帰ると立ち上がろうとして、ヒューズはキュッと腕を掴んできたハボックを不思議そうに見た。
「ハボックちゃん?」
 ハボックは空色の瞳でヒューズをジッと見ると小さな手を伸ばす。その手でヒューズの頭を宥めるようにポンポンと叩いた。
「ハボックちゃん……ッ、もしかして慰めてくれてるのっ?」
 そう言われてハボックはニコッと笑う。それからチュッとヒューズの頬にキスをした。
「ろーい」
「……そこはマース君って言って欲しかったなぁ」
 ニコニコと笑うハボックにヒューズが感動に目を潤ませて言う。ハボックの体をギュッと抱き締めてヒューズは囁いた。
「ありがとう、元気でた」
 そう言ってヒューズが笑うのを見たハボックは膝から降りてロイに駆け寄る。「ろーい」と言いながら手を伸ばしてくる小さな体を抱き上げて、ロイはヒューズを軽く睨んだ。
「まったく、破格の扱いだな」
「へへへ、羨ましいか」
「煩い、とっとと帰れ、馬鹿者」
 ヒューズはいつもの笑みを浮かべてソファーから立ち上がる。リビングを出て玄関に向かいながらヒューズは言った。
「邪魔したな」
「全くだ」
 期待などしていなかったが、やはり思った通りの返事が返ってきてヒューズは「あはは」と笑う。玄関を開けて外へと出ながらヒューズは振り向かずに言った。
「ありがとな」
 パタンと扉が閉まって靴音が遠ざかる。その音が完全に消え去ると、ロイは一つ息を吐いた。
「まったく、サービスし過ぎだぞ、ハボック」
 そう言って腕の中のハボックを睨めば。
「ろーい」
 にっこり笑ってハボックがロイの頬にチュッとキスをした。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、いっつも元気とやる気を貰ってます、嬉しいですv

「暗獣」です。暗獣ハボを抱いて癒されたいというコメント頂いたもので(笑)お疲れの全ての方に、ハボックのなでなでとチュウをv

ところで、昨日は春コミでしたね。参加された皆様にはお疲れ様でした。私もちょっくら遊びに行ってきました。ふふふ、例によってワガママ言ってセロリさんにラブいロイハボ描いて頂いちゃいましたッvもうシアワセ〜vvロイハボ本数冊とハボックのアンソロをゲットして参りましたよ。わーいv後は友達のお使いでタイバニ並んできました。いやあ、旬のジャンルは凄いですね!楽しそうだけどハマったら大変そうです(苦笑)ともあれ本買えて嬉しいーvこれからじっくり読みますv

以下拍手お返事です。

暗獣ハボを抱いて の方

ハボックは非売品ですが、なでなでとチュウをお届けします(笑)少しでも癒されて頂ければ嬉しいですv
2012年03月19日(月)   No.166 (カプなし)

働く軍人さん
「もうすぐ春だって言うのに、なんなんですかね、この雪」
 ザクザクとスコップで雪の混じった土を掘りながらチェンがぼやく。同じようにスコップで掘った土を土砂運搬用の一輪車に放り込みながらハボックが言った。
「仕方ないさ、お天道様はオレ達にゃどうしようもないんだから」
「どうしようもないものなら他にも色々ありますけどねっ」
 彼女とか金とか、とワイワイと言いながら作業する部下たちの声を聞いて、ハボックは苦笑する。体を起こした拍子にふと路地の方へ目をやれば、女性が一人で道の雪かきをしているのが目に入った。
「隊長?どうかしたんですか?」
 作業の手を止めてしまったハボックにチェンが不思議そうに聞く。
「いや、ちょっと」
 と、ハボックははっきりと答えぬままスコップ片手に路地へと入っていった。雪かきをする女性の側に行くと積もった雪にザクッとスコップを差し込みながら尋ねる。
「この雪、こっち積んじゃっていいんスか?」
「えっ?」
 突然のことに驚いて女性は雪かきの姿勢のままハボックを見た。
「なに言ってるんですか、隊長。こんな狭いとこに雪積んじゃったら狭いし危ないでしょうが」
「チェン」
 女性が答える前に背後から声がしたと思うとチェンがスコップを手に立っている。そのすぐ後ろからサンダースが一輪車を押して路地に入ってきながら言った。
「そうそう、ほらこれで外に出しちまいましょう」
「そうだな」
 そう言う部下たちにニッと笑って、ハボックはスコップで雪を掬っては一輪車に積み上げる。三人がかりでスコップで積んだ雪を一輪車で表の道に運べば、路地裏の雪はあっと言う間に片づいてしまった。
「じゃあ、オレ達はこれで」
「滑らないように気をつけてくださいね」
 ハボックたちは口々にそう言って表の通りに出ていく。その背に女性が感謝の言葉を投げかけてくるのに、三人は片手を上げて答えると通りに戻った。
「さあて、こっちもさっさと片づけるぞ!」
「はぁーい」
「よっしゃ、あそこまでどっちが先に片すか競争な!」
「おーし、勝ったら一杯奢れよ!」
「って、お前ら!泥飛ばすなっ!」
 そうして今日もアメストリスの人々のため汗水たらして働く陽気な軍人さんたちの声が、春がすぐそこまでやってきているイーストシティの街に響くのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、パチパチ嬉しいですv

昨日は昼から雨と言う予報に反して三時過ぎまで雪が降り続いて雨にならずにやんでしまったので、思ったより積もってしまったんですよね。このままほっといたら翌朝は凍って悲惨な事になるのは目に見えていたので仕方なしに雪かきに。丁度出たら隣の奥さんも雪かきに出てきたので、二人してガコガコ雪かきしてたんですよ。うちの前は一応公道なのですが、うちがどん詰まりの所謂デッドエンドで、雪かき始めると結局他のうちの前も全部雪かきすることになるんですよね(苦笑)隣の奥さんと「ここんち車使うよねー、だったら雪かきしといた方がいいよねー」って、他のうちも玄関前だけでなく雪かきしてたらたまたまこの日、表の通りで水道工事してたオニイチャンがやってきて、雪かきを手伝ってくれたのでしたー。少し後にはオジサンが一輪車押してやってきて積んでた雪も運び出してくれて、いやあ、滅茶苦茶助かりましたよ!それにやっぱりプロというか、とにかく速い!あっという間に片しちゃうんだもん。凄いわー。サーッとやってきてサーッと片付けてサーッと去っていって、滅茶苦茶カッコいい土建屋さんたちでしたー(笑)
2012年03月01日(木)   No.162 (カプなし)

暗獣46
「明日からもう三月だっていうのに」
 窓の向こう、綿のような雪が空から次々と降ってくるのを見て、ロイはため息混じりに呟く。見ていても寒いばかりだし少しでも冷気を防ごうと鎧戸を閉めようとしたロイは、ハボックが庭に出ているのを見つけて目を見開いた。
「ハボック?なにをしてるんだ?」
 この雪の中、なにをしているんだろう。上から見下ろしたのではただ白いばかりでよく判らない。ロイは急いで窓を閉めると階段を下りコートを羽織って庭へと出る。家の角を曲がって二階から見下ろした辺りに足を踏み入れたロイは、飛び込んできた風景に目を丸くした。
「……すごいな」
 一体いつから作っていたのだろう、庭の桃の木の前から始まってたくさんの小さな雪だるまが一列に並んでいる。まるで木の根本から出てきた雪だるまが行進しながら進んでいるようで、ハボックはその先頭に新しく作った雪だるまを置いているところだった。
「ずいぶん沢山作ったな、ハボック」
 歩み寄ってそう声をかけると、しゃがみ込んで次の団子を作っていたハボックが顔を上げる。ころころと雪の上を転がせば小さな雪の団子はすぐに大きな雪玉になった。ロイは手で掬った雪を丸めて小さな雪玉を作るとハボックが作った雪玉の上にのせる。そうすれば雪玉はたちまち可愛らしい雪だるまになった。
「ろーい」
 にっこりと笑ってハボックはできた雪だるまを先頭に並べる。ハボックが作った大きな雪玉の上にロイが小さな雪玉をのせればそれは瞬く間に雪だるまの命を吹き込まれて、次々と庭の中に並んだ。
「ハボック、お前の方が雪だるまになりそうだぞ」
 夢中で雪だるまを作っているハボックの金色の頭に降り積もった雪を手ではたいてロイが言う。見上げれば雪は灰色の空から次から次へと舞い落ちて、一向にやむ気配がなかった。
「そろそろ中に戻ろう。いい加減寒くなってきた」
 ハボックと一緒に雪だるまの行列を延ばしてきたロイは、体に染み入る寒さに流石に音を上げる。行こうと手を差し出せば、最後の一個を先頭に置いたハボックがその手を握った。
「冷えきってるじゃないか」
 小さな手は長いこと雪玉を作っていたせいで氷のようになっている。温もりを分け与えるように大きな手で包み込めば、ハボックがロイを見上げてにっこりと笑った。
 家の中に戻ってロイが雪のついたコートをはたいてかけている間に、ハボックは暖炉の前に座り込む。暖炉に背を向け雪で濡れた尻尾を乾かす姿にロイはクスリと笑った。
「気をつけないと焦げるぞ」
 暖かさにホウと脱力した様子で尻尾を炙るハボックにロイが言えば、ハボックが慌てて後ろを振り向く。焦がさないようパタパタと尻尾を揺らすハボックを、暖炉の前のラグに座り込んだロイが膝の上に抱き上げた。
「ろーい」
「ふふ、手がジンジンするな」
 冷えきった手を暖炉に翳せばジンジンとむず痒いような痛みが湧いてくる。ハボックと見つめる焔は、かつて己が生み出したものとは全く違って、とても暖かく優しくロイの目に映った。
「ろーい」
 膝の上でもぞもぞと身じろいでハボックがロイの顔を覗き込む。その空色に揺らめく焔を見て、ロイはにっこりと笑った。
「明日は晴れるかな、ハボック」
「ろーい」
「晴れたら今度は大きな雪だるまを作ろうな」
「ろーいっ」
 並んだ小さな雪だるまたちが最後の冬を連れ去って、明るい春を連れてくるのだろう。
 パチンと爆ぜる焔を見つめながら、ロイとハボックは過ぎゆく冬の一日を過ごしたのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気の素です、ありがとうございますv

東京、朝から雪ですよー。明日はもう三月だっていうのに。昼には雨に変わるらしいのでそんなに積もる事はないでしょうが、如何せん寒い!買い物行こうと思ってたけど今日はもそもそ家で過ごしますー。お勤めの方、学生さんごめんなさい(苦笑)
そんなわけで冬の「暗獣」がもう一個増えました。相変わらずまったりで変わり映えせずすみません(汗)春になったら花見三昧かなぁ。それが済んだらそろそろゴールも見えてくるかと。





2012年02月29日(水)   No.161 (カプなし)

暗獣45
「新聞……またあっちか」
 朝刊を取りに玄関の扉を細く開けたロイは、玄関ポーチに新聞が投げ込まれていないのに気づいて眉を顰める。最近配達員が変わったせいか、前はポーチに投げ込まれていた新聞がたびたび門扉に挟まれているようになった。
「まったく、一度言っておかないと」
 ロイはそう呟いて扉をグッと押す。大きく開いた扉から途端に冷たい空気が大量に入り込んでロイは「うっ」と首を竦めた。その時、クイと袖を引かれて下を向けば見上げてくるハボックと目が合う。ロイは丁度よいとばかりににっこりと笑ってハボックに言った。
「すまんが、ハボック。新聞を取ってきてくれないか?」
 さして距離はないとはいえ、防寒着も着ていない部屋着で新聞を取りに出るのは寒い。ニコニコと過剰なまでに笑みを浮かべて見つめるロイをハボックはじっと見ていたと思うと、玄関の外へと出た。タタタと走って黒い門扉のところまで行くと挟まれている新聞をとって戻ってくる。ホッとしてロイが感謝の言葉と共に迎えようとすれば、ハボックは気になることがあったのか、横に逸れて門のすぐ脇に植わっている大木の方へ行ってしまった。
「おい、ハボック!」
 せめて新聞を渡してからにして欲しいと呼んでみたがハボックは戻ってこない。薄くとはいえ扉を開けていれば開けているだけ冷たい空気が入り込んで、ロイはブルリと体を震わせた。閉めてしまえばいいのかもしれないが、流石にそれは気が引けてロイは何度もハボックを呼ぶ。だが、ハボックは木の下に佇んでじっと地面を見つめたきり動こうとしなかった。
「なにがあるんだ?」
 特別変わったものがあるとも思えずロイは眉を寄せる。いい加減待ちくたびれてロイは仕方なしに扉を押し開け外に出るとハボックの側に歩み寄った。
「おい、ハボック。どうして戻ってこないんだ」
 ちょっぴり責める口調で言うロイをハボックが見上げる。その視線が答えるように地面に向かうのを追いかけたロイは、黒い土にびっしりと霜柱が立っている事に気づいた。
「ああ、霜柱か」
 今日は格別冷え込んでいるからだろう。霜柱は見事なまでに立ち上がって土を持ち上げている。ロイがルームシューズを履いた足でグッと地面を踏めば、ザクッと音を立てて霜柱が潰れた。その音を聞いてハボックがパッと顔を輝かせる。ロイを真似て小さな足で踏んでみたが、軽くて小さなハボックの足では思ったような音は出なかった。
「軽いからな、お前は」
 ロイは言ってもう一度霜柱を踏む。そうすればハボックももう一度踏んだがやはり結果は変わらなかった。
「ろーいー」
 ムゥとハボックが不満げに頬を膨らませる。何度もゲシゲシと地面を踏んで泣きそうな顔で見上げられれば、流石にロイも可哀想になってきた。
「うーん、私が踏んだんじゃ駄目なんだよな」
 あくまで自分で音を立てたいのだ。首を捻って考えたロイは浮かんだ考えに笑みを浮かべてハボックの脇に手を差し込んだ。
「ろーい?」
 グイと持ち上げられてハボックは不思議そうにロイを見る。ロイは目の高さまで持ち上げたハボックを支える手をパッと離した。
「ッッ?!」
 突然支えをなくしてハボックの体が真下にストンと落ちる。びっくり眼で落ちたハボックの足下の霜柱が、ザクッと良い音と共に潰れた。
「ろーい!」
 目をまん丸にして自分の足下を見たハボックが、パアッと顔を輝かせてロイを見る。ハボックは差し出した両腕を急かすように振った。
「ろーいーっ」
「判った判った」
 思ったよりずっと上手くいって、ロイは内心「よしっ」と拳を握り締めながらハボックを抱き上げる。持ち上げてストンと落とせばザクッと霜柱が鳴って、ハボックは大喜びで笑った。ザクザクザクとそこいら中の霜柱を粗方潰してハボックが満足げにため息をつく。そろそろくたびれてきたロイがもういいだろうとハボックを中へと促した。だが。
「拙いぞ、ハボック。ルームシューズのままだった」
 そもそも外に出るつもりではなかったから靴に履き変えていなかった。ふと気づけばなんとなく湿って冷たくなったルームシューズはすっかりと泥塗れで、とても中に入れる状態ではなかった。
「仕方ない」
 普段は家の中では直接床のラグに座り込んだりすることも考えて、土足でなしにルームシューズを履いているのだが冷たい床を裸足で歩く気にはなれない。ハボックのルームシューズを脱がせて抱き上げると、ロイは自分は靴に履き変えて風呂場に向かった。足を洗って予備のシューズに履き変え泥だらけのシューズを洗う。
「やれやれ、新聞を取るだけのつもりがとんでもないことになった」
 これなら寒いなどと言っていないで自分で取りに出た方が余程手間にならなかった。それでも。
「ろーいー」
 洗ったシューズを持ってリビングに行けば先に戻っていたハボックが飛びついてくる。ロイの手に掴まって飛び跳ねては霜柱を踏む真似をするのを見れば、ロイの顔にも笑顔が浮かんだ。
「まあ、いいか」
 霜柱を踏んだのなんて一体いつ以来だったか。思いがけず童心に戻って楽しかったのもハボックが霜柱を見つけてくれたからに他ならない。
 その日は一日暖炉の前に、二人分のルームシューズが仲良く並んで湯気を上げていたのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みです、嬉しいです〜vv

「暗獣」です。冬ネタ、これでおしまいかなぁ。もっと書きたいものがあったと思うのですが、うっかりしてたら2月もそろそろ終わりです。もう今年も二ヶ月経っちゃった、早いな(汗)
2012年02月27日(月)   No.160 (カプなし)

蒼空
 ふと気がつけば轟音や悲鳴が響き渡っていた戦場は、シンと不気味に静まり返っている。動く者がいなくなった焼け野原を、乾ききった目を瞬かせてロイがゆっくりと見回した時、悲鳴のような鳥の声が聞こえた。その声に引かれるようにロイは空へと目を向ける。見上げた空には歪な夕日がロイを飲み込もうとするように大きく口を開き、空を、大地を、そしてロイ自身をも真っ赤に染め上げていた。幾万の小さな人間たちが流した血そのもののように、歪な夕日は全てを朱に染める。真っ赤に染まる両の手を握り締めたロイは、その日以来空を見上げるのをやめた。
 そうして数年が経ち。
「大佐ぁ、またこんなところで寝て。風邪ひくっスよ?」
 頭上から降ってくる声にロイはゆっくりと目を開ける。そうすれば真っ青な空を背負ったハボックが、空を映した瞳でロイを見下ろしていた。そのあまりに澄んだ色にロイは言葉をなくす。見開く黒曜石に一瞬首を傾げたハボックは、にっこりと笑って手を差し出した。
「ほら、行きますよ。中尉が角出して待ってるっスから」
 そう言って差し出された手をロイはじっと見つめる。その手を握れば己の手を染める赤で汚してしまいそうで、ロイには手を出すことは出来なかった。だが。
「もう、なにやってるんスか」
 ロイの胸の内など知らないハボックは、大きな暖かい手でロイの手を掴んで引っ張る。立ち上がらせたロイの、冷えきった手を両手で包み込んでハアと息を吹きかけた。
「こんな冷たくなっちゃって。戻ったらホットココア淹れたげますね」
 そう言って笑うハボックの背後に広がる綺麗な青。記憶の中の空を飲み込んで静かにロイの内を焼く焔を消していく。
「空はこんなに青かったんだな」
 無意識にロイの唇から零れた言葉にハボックは一瞬目を見開き、それから空の色の目を細めた。
「そっスよ。今日も明日も明後日も、どんなに分厚く雲がかかってたって、その向こうは青い空っス」
 そう言ってハボックは、行きましょうとロイの手を引く。見つめれば優しく笑う空色が、もう二度とロイに空の色を忘れさせる事はなかった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになります、嬉しいですv

見上げた空がハボ色だなぁと思った、ただそれだけ。

以下、拍手お返事です。

香深さま

わあ、ありがとうございます!本当にいつもタイトルを決める時は悩みに悩むので、そう言って頂けると恥ずかしいけど滅茶苦茶嬉しいです///いやもう、ひとつでも気に入って読んで頂けましたら、それだけで幸せですからv今回のロイは珍しく素直なのでそこが愛らしく映るのかもしれません。バイオリンを奏でるハボックを上手く書けるかどうかが最大の難関ではあるのですが、少しでも魅力的に書けるよう頑張ります!
2012年02月18日(土)   No.157 (カプなし)

チョコっとバレンタイン
「バター、と……。しまった、もう少し早く冷蔵庫から出しとくんだった」
 キッチンからそう声が聞こえて、ダイニングテーブルで新聞を読んでいたロイは顔を上げる。ダイニングから続きになっているキッチンでボウルに入れたバターを木べらで練っているハボックをロイはじっと見つめた。
 ハボックはバターをクリーム状になるまでよく練ると、数度に分けて砂糖を加えながら泡立て器ですり混ぜる。それに卵黄を入れて混ぜ、予め湯煎で溶かしてあったチョコレートと牛乳、バニラオイルを加えた。
「明日用のケーキか?」
「バレンタインっスからね」
 ロイが尋ねればそう答えが返ってくる。手際よくザッハトルテを作っていくハボックを見ていたロイは、一つため息をついて言った。
「お前、最近手、抜いてないか?」
「は?」
 ロイがなにに対して手を抜いていると言ってきたのか判らず、ハボックはキョトンとする。“なんスか、突然”と尋ねればロイが答えた。
「バレンタインだ。いっつもみんなまとめてチョコレートケーキじゃないか」
「ああ」
 以前は司令室の人数分、トリュフやらアマンドショコラやら様々なチョコレートを作っていたハボックだったが、ある時持っていったザッハトルテが好評で、それ以来バレンタインというと大きなザッハトルテを作って司令部のみんなで分けて食べるのが恒例となっていた。
「私の分も一緒だし」
 どうやらロイとしては友人、同僚と大本命であるところの恋人の自分とが一緒の扱いであることが気に入らないらしい。そう察してハボックはケーキを作る手を止めるとロイの顔が見えるところまで出てきた。
「でも、大佐の分は切り分けてからデコレーションしてあげてるじゃないっスか」
 大きなホールケーキ、司令部最強のホークアイに渡す分ですら切り分けたケーキはチョコレートコーティングしただけのツルンとした状態で渡している。だが、ロイの分だけは切り分けた後、司令部の給湯室で生クリームやフルーツでデコレーションしてから出しているのだ。
「それっぽっちじゃ気持ちが感じられないな。大体去年はブレダ少尉の分にも生クリームが載ってたぞ」
 去年は分量を間違って生クリームが余ってしまった。捨てるなら俺のに載せろと騒ぐブレダの分のケーキに、ササッと生クリームでデコレーションしたのがロイの気に障ったようだ。
「私への気持ちも昔ほどではないと言うことじゃないのか?」
「あのね」
 しょうがない事で絡んでくるロイにハボックはムッとする。
「大佐がそんなこと言うならオレも言わせて貰いますけど、大佐だってオレのことどう思ってるんです?」
「なんだと?」
「いっつもバレンタインでチョコあげるのはオレの方。でも、別にオレからあげなきゃいけないってこと、ないっスよね?オレたち男同士だし、どっちがバレンタインにチョコあげようが構わないのにいっつもオレがチョコあげて大佐がホワイトデーにお返ししてくる。それって、オレがあげるから仕方なしに返してくるんじゃねぇの?オレがあげなきゃ大佐から渡そうなんて気、ないんじゃねぇんスか?」
 一気にまくし立てられてロイは目を丸くする。なにも言い返してこないロイにハボックは大きなため息をついて続けた。
「別にチョコをくれるかくれないかで気持ち量る気はねぇっスけど、それってあんまりじゃねぇ?」
 ハボックはそう言うとエプロンを外し、ダイニングテーブルに叩きつけるように置いて出ていってしまう。その背を目を丸くして見送ったロイは、ムッと顔を歪めると読んでいた新聞を丸めてキッチンに放り込み、靴音も荒くダイニングから出ていった。

「別にあんなに怒らなくたっていいじゃないか」
 ロイは書斎の椅子にドサリと腰を下ろしてそう呟く。ロイとしてはハボックが作った手作りケーキを自分以外の誰かが食べるのが面白くなかっただけなのだ。大好きなハボックが作った大好きなチョコレートケーキを独り占めしたかっただけなのだが、素直にそうと言えずに言った言葉が妙な誤解を与えてハボックを怒らせてしまった。
 ロイは椅子の背に頭を預けて寄りかかるとグルリと椅子を回転させる。クルリクルと回転させて書斎の天井を見上げながらロイはハボックが言った言葉を思い出した。
『いっつもオレがチョコあげて大佐がホワイトデーにお返ししてくる』
「そんなこと言ったって私にチョコレートケーキは焼けないんだから仕方ないじゃないか」
 ホワイトデーに返すクッキーだって気に入りの洋菓子店で買っているのだから、バレンタインのチョコだって買ったものを渡したところで問題はないはずだ。だが、ずっとハボックが手作りの品をバレンタインに渡してくれるのが続いていることで、バレンタインデーに渡す菓子のハードルが高くなっている印象は否めなかった。
『別にチョコをくれるかくれないかで気持ち量る気はねぇっスけど、それってあんまりじゃねぇ?』
「……どうしろというんだ」
 手作りケーキは作れないが既製品を渡すのもイヤだ。妙な見栄と意地が先に立って、ロイはムゥと唇を歪めて天井を睨みつけた。

「おおお、愛しのザッハトルテちゃんっ」
「ブレダ、いつもありがとな」
 目の前に切り分けたケーキを置かれて喜ぶブレダにハボックが言う。司令室の面々に手作りのケーキを配ったハボックは、執務室の扉に目をやった。
「大佐は……会議中、か」
 バレンタインデーの今日、ロイはほぼ一日会議会議で今も執務室にその姿はなかった。
「旨いなぁ、やっぱりお前のザッハトルテがアメストリス一だ、ハボック」
「ホント、少尉のザッハトルテは最高ですね」
「はは、サンキュ」
 配られたケーキを頬張りながら口々に旨いを連発するブレダたちに答えながら、ハボックはそっとため息をついた。

「あんな事、言うんじゃなかったなぁ」
 皆が帰った後の司令室で、ハボックは椅子にふんぞり返ってそう呟く。結局ロイはあの後一度も戻ってこず、そのままホークアイと一緒に会議を兼ねた会食へと出ていってしまっていた。
 ロイに気持ちが足りないというようなことを言われて、思わずムッとして言い返してしまった。本当の事を言えば、別にロイからチョコが欲しいわけではなく自分があげたいからせっせと作ってあげているに過ぎないのだ。
「大佐がつまんないこと言うから」
 こんなにロイが好きなのに気持ちを疑うようなことを言われてカッとなってしまった。ハアアと大きなため息をついて目を閉じたハボックがズルズルと椅子に沈み込んだ時、コトリと言う音と共に甘い香りが鼻を擽った。
「悪かったな、つまらないことを言って」
「えっ?大佐っ?」
 聞こえた声にガバリと身を起こして目を開ければトレイを手にしたロイが立っている。てっきり会食に出かけたとばかり思っていたロイがいることに、ハボックは目を丸くして言った。
「なんでここに?会食は?」
「早めに切り上げてきた」
「よく中尉が許してくれましたね」
「まあな」
 あのホークアイがよく帰してくれたものだと意外に思いながら言えばロイが言葉を濁して答える。どうやら何かしら取引があったらしいと察したハボックにロイが言った。
「飲め」
「えっ?────あ」
 言われて机の上を見ればホットチョコレートが入ったカップが置かれている。さっきからしていた甘い香りはこれだったのかと漸く気づいたハボックが言った。
「ええと、もしかして大佐が淹れてくれたんスか?」
「ザッハトルテは作れんからな」
 フンと顔を背けて言うロイをじっと見つめていたハボックは、そっとカップに手を伸ばす。いただきますと呟いてカップに口を付け一口飲んだ。
「甘い……」
 フワリと口に広がる甘さにハボックの顔に自然と笑みが浮かぶ。もう一口とカップに口をつけたハボックの耳にロイの声が聞こえた。
「昨日はすまなかったな」
「え?」
「お前の気持ちを疑うような事を言って」
 そう言うロイをハボックはまじまじと見つめる。ハボックの視線を頬に感じながら、ロイはハボックを見ずに続けた。
「お前が作ったケーキをみんなも食べるのが悔しかったんだ」
 珍しく素直にそう気持ちを口にするロイにハボックは目を見開く。ロイはハボックに向き直ると見開く空色を見つめて笑った。
「おかげで今年はお前のケーキを食べ損ねた」
 独り占めするどころか食べられなかったと笑うロイをハボックは目を細めて見つめる。手にしていたカップを置くとガタンと乱暴に立ち上がった。
「ちょっと待ってて、大佐」
「ハボック?」
 そう言ってバタバタと司令室を出ていくハボックにロイは目を丸くする。待っていれば少ししてハボックが小さな箱を手に戻ってきた。
「よかった、無駄にならずに済んで」
 ハボックはそう言いながら手にした箱をロイに差し出す。反射的に受け取ってしまってから尋ねるように見れば頷くハボックに、ロイは箱を机に置いて蓋を外した。
「ハボック、これは……」
「ザッハトルテ。大佐専用っスよ」
 箱の中に入っていたのは直径12センチ程の小さなザッハトルテ。生クリームやフルーツで可愛らしくデコレーションされたそれは、どこも欠ける事なく綺麗な円を描いていた。
「丸ごと全部、独り占めして食ってください」
 オレの気持ち全部、と照れたように笑うハボックをロイはじっと見つめる。それからケーキを見つめて言った。
「幾ら何でも一人じゃ多過ぎるよ」
「大佐」
 ロイの言葉に一瞬がっかりと肩を落とすハボックを見てロイが言う。
「一緒に食べよう、ハボック」
 そう言って笑うロイにハボックもパッと顔を輝かせて笑った。
「じゃあ、ホットチョコレートも一緒に飲みましょう」
「チョコだらけだな」
「……ちょっと甘すぎるか」
 オレ、甘いの苦手だったと眉を下げるハボックにロイが言った。
「いいじゃないか、一年に一回だ」
「そっスね」
 そう言って笑いあうと二人はフォークを持ってきてケーキをつつく。絡んだ視線に引き寄せられてケーキ越しに交わしたキスは、ケーキよりもホットチョコレートよりもずっとずっと甘かった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手も嬉しいですv

日記ではご無沙汰しておりました。なんかちょっと日記までこなす気力がありませんで(苦)
そんなわけで久々の日記はバレンタインネタです。イベントネタはいい加減書くことが思いつかない(苦笑)しょうもない話でスミマセン。
そうそう、毎年バレンタインには母からダンナと息子に加えて私にもオマケでチョコを送ってくるんですが、今年のチョコはとっても可愛かった。食べるの可哀想〜とか思いつつ、既に一匹食べましたけども(笑)





以下、拍手お返事です。

柚木さま

「グラプスヴィズ」そんなご意見もあるかなぁとは思ってました(笑)いつもならもっと気持ちが寄り添うまで書いてると思うんですが、ただねぇ、今回のリク、恋愛要素はあんまりいらないのかなぁとも思えたんですよね。私自身はやはり「好き」な気持ちがあって欲しいのでロイがハボックを好きで誘惑した形にしましたけど、もしかしたらそう言う要素は全くなしで話を書いた方がよりリクに近かったのかも、と思ったりしたものでなんだか中途半端な結末になってしまいました(苦笑)また機会があればその後の二人なぞも書けたらいいかもと思っております。

ぬおっΣ(´Д`)なんとそんな… の方

えへへ、クラサメ隊長の時の気持ちが蘇ってきたなんて、嬉しいですー(笑)そうそう、ロイバージョンもあるのですよ。やはり書くならそれぞれのサイドがあっていいかなと。でもって、漸くクリアしましたよー。もう最後の方はティッシュ握り締めて泣きっぱなしでした。その後も家事しながら「うっ」ときたりして(苦笑)いやホント切なすぎます……。実はエミナのイベントをサボっていたおかげでカヅサのイベントが最後まで見られなかったので、しょうがないからもう一周やろうかなぁとノロノロと二週目に取り掛かってます(苦笑)おかげでエミナがもういなくなってしまったにも関わらずトキトがエミナの事を語ってたりで妙な事になってます(苦笑)

いつも素敵な話をありがとうございます。 の方

こちらこそいつも読んで下さってありがとうございます!わーん、ホットチョコレート嬉しいですvvあんまり嬉しかったので、最初はロイにヘタクソなトリュフでも作らせようかと思っていたのをホットチョコレートにしてしまいました(笑)ハボックと一緒に温まってくださったら嬉しいですv
2012年02月14日(火)   No.156 (カプなし)

暗獣44
 コトリと音を小さな音を立ててロイはカップを取り上げる。口を付けたカップの中が空になっているのを、飲もうとカップを傾けてから漸く気づいて、ロイは眉を寄せた。
「もう一杯……」
 淹れるかと呟いたロイはふと壁の時計を見る。針が既に翌日へと時を進めていることに気づいて、ロイはやれやれとため息をついた。
「ここまでにしておくか」
 ここでまたカップを満たしてしまったら、夜が更けるまで本を読み続けるのは目に見えている。丁度本も新章に入るところでキリもよく、ロイは広げていた本を閉じてテーブルに置いた。
「ハボック」
 傍らに座るハボックに声をかければ、返事の代わりに欠伸が返ってくる。ソファーに深く腰掛け座面に脚を投げ出して、口を目一杯開けて大欠伸するハボックの姿に、ロイはクスリと笑った。
「すまん、遅くまでつき合わせてしまったな」
「ろーいー」
 眠そうに目をこするハボックの体をロイは抱き上げソファーから立ち上がる。リビングから出ようと扉を開けて踏み出した廊下の冷たい空気に、ロイは思わずリビングに戻った。
「そう言えば二階のストーブに火を入れてなかった」
 夕飯が済んだら火を入れようと思っていたのだが、ダイニングからリビングに移りそのまま本を読み始めてしまったのですっかり忘れ去っていた。昼間の陽射しで暖まった空気などもうとっくに失せて、寝室は冷えきっていることだろう。
「……ベッドに潜り込めば何とかなるか」
 このままソファーで眠ることも考えたが、やはり手足を伸ばして眠りたい。そう思ったものの寒い廊下になかなか出られずにいれば、ハボックが腕の中でもぞもぞと動いた。
「ろーいー」
 立ち上がったにもかかわらず二階に上がろうとしないロイを、ハボックが焦れたように呼ぶ。それでもロイが動かないのを見て、ハボックはもぞもぞっともがいてロイの腕から抜け出た。
「ハボック」
 そのままリビングから出ていってしまうハボックを追いかけて、ロイも廊下に出る。途端に体がキュンと引き締まる空気の冷たさに、寒ッと呟きながらロイはハボックに続いて二階へと階段を上がった。
「……本当に寒いッ」
 判ってはいたが、シンシンと身に染みる空気の冷たさに、ロイは眉を寄せる。そんなロイを後目にビロード張りのトランクに潜り込み、まあるく丸まって目を閉じるハボックの体にブランケット代わりの膝掛けをかけてやると、ロイもベッドに潜り込んだ。
「う……冷たい」
 冷えた部屋の空気がブランケットの中まで入り込んでいるようで、ロイは冷たい寝具の感触に手足を縮めて丸くなる。体温が移って寝具が暖まり眠気を誘うかと思いきや、逆に冷たい寝具に熱を奪われてロイは寒さにガタガタと震えた。
「寒いッ!!」
 暫く待ってみたが、寒さは募るばかりだ。
「このまま寝たら凍死しそうだ」
 ストーブをつけて眠ることも考えたが、それだと結局部屋が暖まるまで眠れそうにない。うーん、と考えたロイはガバリとブランケットを跳ね上げるとベッドから降りた。
「ハボック!」
 そう声をかけながら壁際のトランクに歩み寄る。ロイをおいて早々に眠りの国の住人と化したハボックを見下ろすと、ロイは乱暴に膝掛けを剥ぎ取った。
「ハボック」
「……ろーい」
 迷惑そうに見上げて小さく身を丸めるハボックに悪いと思いながらも、ロイはハボックの脇に手を差し込み小さな体を持ち上げる。
「ろーいー」
 せっかく眠ったところを無理矢理起こされて、ハボックは恨めしそうにロイを見た。
「すまん、だが寒くてな。眠れないんだ」
 ロイは苦笑混じりにそう言うとハボックをベッドに下ろす。自分もベッドに上がってハボックごとブランケットにくるまると、小さな体を胸に抱き締めた。
「はあ、寒かった……」
「ろーい」
 金髪に頬をすり寄せてため息をつくと、ロイは目を閉じる。腕の中の体はほんのりと暖かく、ロイは満足そうに笑みを浮かべた。笑みを浮かべた唇から、瞬く間に規則正しい寝息が零れる。ロイに抱き締められたままじっとしていたハボックは、不思議そうに首を傾げた。
「ろーい?」
 そう呼んで小さな手でロイの頬をペチペチと叩いてみたがロイが起きる気配はない。じっとうっすらと笑みを浮かべたロイの寝顔を見つめていたハボックは、ロイの胸にグリグリと頭をこすりつけた。
「ろーい」
 呼べば返事のようにトクトクと優しい心音が返ってくる。ハボックは嬉しそうに笑うとロイの寝息を聞きながらそっと目を閉じた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます!拍手、更新の励みです〜、嬉しいですvv

「暗獣」です。なんかもういい加減まったり過ぎて飽きられている気がしなくもないですが(苦笑)とりあえず、ハボックで暖をとるロイってことで。ふさふさ尻尾があったかそうだなぁと。

以下、拍手お返事です。

だんだん鋼が減っていく中 の方

うわぁ、嬉しいお言葉、ありがとうございます!!そんな風に言って頂けると書く意欲が湧いてきますvまだまだ楽しんで書いていくつもりでおりますので、どうぞこれからもお付き合い下さいねvv
2012年01月31日(火)   No.155 (カプなし)

内職
「1530センズ……」
 休憩所のソファーに腰を下ろしたハボックは、ボトムのポケットを探って引っ張りだした金を見つめてそう呟く。一度ポケットに突っ込んだそれをもう一度引っ張りだしてみたが、やはり手の中にあるのはしわくちゃの千センズ札一枚と五百センズ硬貨が一枚、それと十センズ硬貨が三枚だけだった。
「給料日まであと一週間もあるってのに、これでどうやって乗り切るんだよ……」
 給料日前に財政が逼迫して苦しくなるのは毎度のことだったが、これは近年希にみる財政難だ。ハボックは別のポケットから出した煙草のパッケージの中に残る煙草の本数を数えた。
「1、2……5本。あと開けてないのが一箱あるから全部で25本。一日5本……じゃ五日でなくなるじゃん、つか、一日5本じゃ我慢できないって」
 自他共に認めるヘビースモーカーの自分だ。例え飯を食わずとも煙を吸うのをやめるわけにはいかない。
「煙草二箱買ったら残り650センズ。って事は一日あたり90センズそこそこで乗り切れってか?アンパン一個だな……、いや、賞味期限切れそうなのをあそこの店で半額で投げ売りするから」
 そんな事を考えてハボックはハアとため息をつく。
「悲しい……悲しすぎる」
 賞味期限ギリギリのアンパン二個で朝昼晩の食事を賄う軍人がどこにいるというのだろう。
「とはいえ、大佐に縋るのも嫌だしなぁ」
 給料日前で金がないから奢って下さいなんて言おうものならどれほど嫌みを言われることか。その上何を要求されるか判ったものではない。
「一週間だし、いざとなったら水がぶ飲みして腹を膨らませれば」
 情けない事を呟いてハボックはテーブルの上に置きっ放しになっていた雑誌を何気なく手に取る。パラパラとめくったページの中の文字が目に飛び込んで、ハボックは手を止めた。
「アルバイト募集、時給……えっ?!ウソっ、マジ?!」
 食い入るようにバイトの募集広告を見つめていたハボックは、そのページを破りとると休憩所を飛び出していった。

「今日は給料日か。まあ、バイトのおかげでさほど待ち遠しくもなかったな」
 両手をポケットに突っ込んで軽く背を丸めたハボックは、咥え煙草で鼻歌を歌いながら司令部の廊下を歩いていく。あの時偶然見つけたバイトはその内容に見合わぬほど高額で、おかげでハボックは痛みかけのアンパンで飢えを凌ぐ生活をせずに済んでいた。
「すっげラクチンだし、また金がなくなったらやろう」
 ルンルンとスキップしそうな調子で司令室の扉を開けたハボックは、吹き出してきたオーラにギクリとして足を止める。このまま中に入っては絶対に拙いとそのまま回れ右して出ていこうとするハボックの耳に、ロイの低い声が聞こえてきた。
「ハボック、これは何だ」
「……え?」
 明らかに不機嫌なロイの声にハボックは足を止めて恐る恐る振り向く。その途端、不機嫌全開のロイと目があって、ハボックは身動きが出来なくなった。
「これはなんだと聞いているんだ」
「こ、これって……?」
 本当に判らずそう尋ねれば、ロイが手にしていた雑誌を机の上に投げる。気が進まぬまでもロイに近づき雑誌を手にしたハボックは内心ギクリとした。
「えっと……これがなにか?」
 それでも持ち前の面の皮の厚さで動揺を押し隠して尋ねるハボックの手から、ロイは雑誌を取り上げ一つの写真を指でトントンと叩いた。
「これはお前だろう?」
 ロイが指した写真は下着の広告写真で男性の腹から腿の辺りまでを写したものだ。売り出しているのはサーモスタット繊維で作られた下着で、写真は時間の経過に従って下着をつけた皮膚がどれだけ暖かくなるかの温度変化をその場所の温度によって赤や黄色の色分け表示で写し出しているものだった。
「なっ、なんでこんなのがオレだって判るんスか?ただの赤やら黄色やら緑やらの色分け写真じゃん」
 腰から腿にかけての写真とはいえ、これでは下着の形や色どころか肌の色すら判らない。個人を判別出来るものなどないだろうと言うハボックをロイはジロリと睨んだ。
「私を誤魔化せると思うな、ハボック。これはお前だ、そうだろう?」
 そう言って黒曜石の瞳でじーっと見つめられればハボックの背中を嫌な汗が流れる。瞬きすらせずに見つめられる事一分間、ハボックはがっくりと雑誌の上に手をついた。
「すんません、オレっス……」
「やはりな」
 フンと鼻を鳴らしてロイは腕を組む。
「お前、こんな姿を写真に撮らせてあまつさえそれを雑誌に載せるとは」
「でもっ、大佐じゃなきゃオレだって判んねぇじゃないっスか!」
「判る判らないの問題じゃない、よくも私以外にこんな格好」
 低い声で言ってユラリと立ち上がるロイにハボックは思わず飛びすさった。
「だって!給料日前で金なかったんスもんっ!このバイト、一時間やってバイト代2万センズっスよ!」
「ハボック」
 地を這うような声で名を呼ばれてハボックはジリジリと後ずさる。そんなハボックを睨みながらロイは隠しから発火布を取り出し手にはめた。
「───赦さんッ!!」
「わーッ、ごめんなさーいッッ!!」
 ボンボンッッと続けざまに飛んでくる火球から逃げて、ハボックは一目散に司令室から飛び出したのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みです、嬉しいですv

昨日50万を回りました〜。嬉しいですー、本当にありがとうございます!!こんな辺境まで遊びに来て下さる皆様には、感謝の気持ちでいっぱいです!!またこれからも色んなハボックを書いて行けたらいいなぁと、その中の一つでも二つでもお気に召して楽しんで頂けたら幸いですvこれからもどうぞどうぞ末永くお付き合い、よろしくお願いいたしますvvv

改めまして。先日テレビで変わった高額バイトの番組やってたのを見てたんですよ。プラモデルを代わりに作るバイトとか一時間電話で愚痴を聞くだけのバイトとか、不思議なバイトが色々あるもんだなぁと思ったのですが、その中にサーモスタット機能の下着をつけて五分おきにサーモカメラで写真を撮るってバイトがありましてね。一時間やって2万ですって。凄ッ!!サーモカメラで撮った写真とはいえ恥ずかしい部分の写真を載せるってことで、その分を上乗せした金額設定だそうですが、それでも凄いわ〜。これからは雑誌でそんな写真見かけたら「おお、2万円!」って思いそうです(笑)

以下、拍手お返事です。

風汰さま

こちらこそ今年もよろしくお願い致します!ロイハボ、ふふふ、楽しんで下さって嬉しいですvvMっぷりに磨きかかってますか?ありがとうございますvやっぱり苛められて啼いてるハボックはいいですよねvvあれ?ところどこど見られないというのはリンク切れって事でしょうか??わーッ、どこでしょう??判りましたら是非教えてやって下さい(汗)そちらの方は雪、降らなかったんですね。関東は全域で降ったんだと思ってました。そういや、実家の方も殆ど積もらなかったって言ってたっけ……。それから499995、ありがとうございます!リクエストお待ちしてますねv

香深さま

お久しぶりです!お元気ですか?頂いたピアスは今も大事に飾ってありますよ、萌えの素ですv500008、ありがとうございます!うわ、菫2!!すみません、すっかり放置になってしまって(汗)なるべく早く再開させますので今少しお待ち下さいませ〜。

りんさま

ありがとうございますvわーい、「見毛相犬」楽しんで頂けて嬉しいですvうふふ、そうそう、「考えているのか考えてないのか」なハボ!正しくそういうハボを書きたいと思っているので、そんなハボに振り回されるロイを可愛いと言って下さって凄く嬉しいですvv「初回衝撃」やさぐれハボックをロイがどう手懐けていくのか、どうぞ楽しみにお付き合い下さいませv

500000打おめでとうございます♪ の方

いつもありがとうございます!!こうやって声をかけて頂けるのが本当に励みになってますvこれからもどうぞよろしくお願い致しますvv
2012年01月28日(土)   No.154 (カプなし)

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  Photo by 空色地図

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