カプなし

=ハボロイ  =ロイハボ
=カプ色あり  =カプなし

2012年09月20日(木)
新・暗獣24
2012年09月19日(水)
新・暗獣23
2012年09月15日(土)
新・暗獣22
2012年09月13日(木)
新・暗獣21
2012年09月11日(火)
新・暗獣20
2012年09月08日(土)
金魚
2012年09月05日(水)
新・暗獣19
2012年08月31日(金)
新・暗獣18
2012年08月29日(水)
新・暗獣17
2012年08月27日(月)
新・暗獣16

カテゴリー一覧
カプなし(303)
ハボロイ(32)
ロイハボ(101)
カプ色あり(61)
その他(16)

新・暗獣24
 ろーいと叫んで抱き付いてきた小さな体をロイはしっかりと抱き締める。こうしてハボックの無事を確かめれば、全身から力が抜けるような気がした。
「まったく……っ、心配かけて」
「ろーいー」
 なみだでぐしょぐしょになったハボックの顔をロイは手のひらで拭ってやる。濡れた頬を擦り寄せてくるハボックの背を優しく撫でてやっていれば、不意に声が聞こえてロイは顔を上げた。
「ローイさん?」
 そう声をかけてくる相手をロイは見上げる。さっきハボックの事を抱きかかえていたのが目の前の少年だと気づいたロイは、その少年を以前見かけた事を思い出した。
「ロイだよ、確か駅で会ったな。そうか、君が連れてきてくれたのか」
 ロイはハボックを片手に抱いて立ち上がるともう一方の手を差し出す。
「ジョーイです。林の中で泣いてたから」
「散歩に出たんだがはぐれてしまってね。よかったよ、君が見つけてくれて。ありがとう、ジョーイ」
 ロイは差し出されたジョーイの手を感謝の気持ちを込めてギュッと握る。照れくさそうに笑ったジョーイはロイにしがみついているハボックを見て言った。
「その子、ハボックって言うんですね。名前聞いてもローイとしか答えないから」
 勝手に名前つけちゃったと笑うジョーイにロイは苦笑する。
「この子は人と接するのが苦手でね。私としか口をきかないんだ」
「そうなんですか」
 ロイが言うのを聞いて、ジョーイはあからさまにがっかりした顔をする。ロイにしがみついたきり自分の事は見向きもしないハボックをじっと見つめたが、一つため息をついて言った。
「それじゃあ俺、帰ります」
「大したものはないが、朝飯一緒に食っていくか?」
「いえ、母さんが待ってるから」
 ジョーイはそう言うとロイにぺこりとお辞儀をして背を向ける。ちょっぴり悲しいような淋しいような気持ちがしながら歩き出せばタタタと軽い足音がして、背後からシャツが引っ張られた。
「ラビ――じゃなかった、ハボック」
 振り向けばハボックが立っていて泣いてまだ少し潤んだ瞳でジョーイを見つめる。なに?と小首を傾げるジョーイに、ハボックは持っていた花を一輪ジョーイに差し出した。
「くれるの?」
 尋ねればにっこりと笑うハボックにジョーイの顔にも笑みが浮かぶ。ありがとうと花を受け取ってジョーイは言った。
「今度はゆっくり遊ぼうな、ハボック」
 ジョーイはハボックの金髪を撫でると今度こそ帰ろうと歩き出す。チラリと振り向けばロイと並んだハボックが薄の穂を振っているのが見えて、なんだか嬉しくなって大きく手を振り返したジョーイは今来た道を駆け戻っていった。

「やれやれ」
 ジョーイの姿が見えなくなるとロイは大きなため息をつく。ロイのシャツの裾を握り締めて見上げてくるハボックを見下ろして言った。
「まったく、ちょっと散歩のつもりがやけに疲れたぞ」
 ロイはハボックの側にしゃがみ込んで金髪をかき上げる。じっと見つめればすまなそうな表情を浮かべたハボックが、ごめんなさいと言うようにロイにしがみついた。
「ろーい〜」
「判ったならいい。もう一人でどっかに行くんじゃないぞ。あと、これもな」
 そう言うロイにウサギの耳を引っ張られてハボックが首を竦める。うにょんと伸びていたウサギの耳が震えたと思うと、スススと縮んでいつもの犬耳になった。ハボックの金髪をくしゃりと掻き混ぜたロイは立ち上がり玄関に向かう。脚にしがみついてくるハボックを抱き上げて玄関の鍵を開け中に入ると、ロイは言った。
「風呂に入って汗を流したら寝ないか?ホッとしたら眠たくなってきた」
「ろーい……」
 欠伸混じりにそう言えばハボックが答えて眠そうに目をこする。二人は朝の光が射す露天風呂で汗を流すと二階に上がり、シェードを下ろした寝室の巣の中で寄り添って眠ったのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになります、嬉しいですv

「暗獣」です。やっとジョーイくん退場です(笑)自分で書いてるのに早くハボックをロイのところに戻したくて堪りませんでしたよ(苦笑)本当はジョーイくん絡みで話を考えてたんですが、暫くは二人でまったりさせてあげたいです。

以下、拍手お返事です。

菜ノ花さま

うおおッ、うちのオリキャラを魅力的だなんて、嬉しいお言葉をありがとうございますッ!!こんなにオリキャラが出てくるサイトってないんじゃね?って感じですし、オリキャラ嫌いな方もいらっしゃるだろうなと思いつつ、どうにも話を展開させるのにオリキャラ出したくなってしまいます。そんな自分の都合で出してるオリキャラに勿体ないお言葉、う、嬉しい〜〜〜ッ(涙)これからもそう言って頂けるよう、頑張りますッ!どうぞよろしくお願いしますvv

なおさま

ふー、やっとハボック、ロイと会えました〜(笑)あはは、確かにロイのズボンもシャツも凄いことになってそうですよね。大きいハボにいつか兎尻尾付けてやろうと思いますvしかし、なおさまとは気が合うなぁというか、私も軍服の下につけててもバレないよなとか思ってましたよ〜(笑)
2012年09月20日(木)   No.252 (カプなし)

新・暗獣23
「ハボック!聞こえたら返事をしろ!」
 ロイは大声で呼びながらハボックの姿を探す。湖の畔を駆けていけば湖岸にボートが何艘も繋いであるのが見えて、ロイはボートに近づいた。
「まさか乗ろうとして湖に落ちたりしてないだろうな」
 もう一度乗りたがっていたハボックが、見つけたボートに喜んで一人で乗ろうとする姿が脳裏に浮かぶ。足を滑らせ湖に落ちたハボックが湖底に向かって沈んでいくというとんでもない想像を頭の中から締め出して、ロイは必死にボートの中を見て回った。
「くそ……ッ」
 暫く探してここにはいないようだと判ると、ロイは湖岸を離れ元来た道を戻っていく。林の中を辺りを見回して歩きながら声を張り上げた。
「ハボック!どこだ、ハボック!!」
 大声で呼んでも返る答えはない。ガサリと音がして慌てて振り向けば、野ウサギがヒクヒクと鼻を動かしながらロイを見て、叢にピョンと飛び込んで行ってしまった。
「ウサギが嫌いになりそうだ」
 大人気ない八つ当たりだと判っていてもロイはウサギが消えた方を睨みつけてそう呟く。ロイは少し迷ってからウサギの後を追うようにして、道から外れて木々の間に分け入った。
「天使の飾りを渡さない方がよかったか……?」
 今のハボックの依代である小さな天使の飾り。ハボック自身が持っていた方が自由に動けるかと持たせてしまったが、ロイが持っていれば一定の距離以上離れる事はなかったかもしれない。
「今言っても始まらん」
 ロイはため息をつくとハボックの小さい体を草や木々の間に探す。だが、幾ら探してもハボックは見つからず、時間がたつにつれてロイの中に焦りと不安が膨れ上がっていった。
「まさかまたキメラと誤解されて」
 そんな考えがふと浮かべばかつての記憶が蘇る。ハボックをロイが生み出したキメラと思い込んだ連中にもみくちゃにされて泣き叫ぶハボックの姿。屋敷の外へ連れ去られそうになった時は、小さく萎んで消えてしまいそうになった。そんな事が重なってロイはハボックを守ろうと、ハボックを一人おいて屋敷を去ることになったのだ。そして。
「あんな思いは二度とごめんだ」
 食いしばった歯の間から呻くようにロイは呟く。ロイは激しく首を振って嫌な考えを全て追い出すと、ハボックを探して駆けていった。

「あそこだ!」
 繋いだ手を握り締めて走っていたジョーイは、木々の間に見え隠れする別荘を見つけて声を上げる。間もなくして別荘の前に出れば、ラビがジョーイの手を振り払うようにして別荘の玄関に向かって走っていった。
「ろーいッ」
 ラビは玄関の扉を小さい手でドンドンと叩く。後から駆けてきたジョーイがノブを回して扉を開けようとしたが、ガチッと鍵が音を立てて扉は開かなかった。
「まだ戻ってないんだ」
 ジョーイがそう言うのを聞いているのかいないのか、ラビは別荘の周りを駆け回る。一生懸命探しても求める姿がないと判ると、ラビはゆっくりと足を止めた。
「ろーい……」
 ポロポロと泣き出すラビの側に駆け寄ってジョーイはその顔を覗き込む。
「まだ帰ってきてないんだ。きっとラビの事探してるんだよ。大丈夫、待ってれば帰ってくるから」
 ジョーイがそう言ってもラビは泣きやむ気配がない。どうしたらいいのかとジョーイは途方に暮れて、小さいラビをギュッと抱き締めた。

「クソッ!」
 はぐれた場所を中心にハボックの姿を必死に探していたロイは、いい加減疲れきって肩を落とす。林の中の道に戻ってどうするかと考えていれば、向こうから親子連れが歩いてきた。
「あのカチューシャいいなぁ。本物のウサギみたい!ねぇ、ママ。私にもあれ買って!」
 母親に手を引かれながら興奮気味に話す女の子の声が聞こえて、ロイは目を見開く。向こうが近づいてくるのが待ちきれずに駆け寄って尋ねた。
「ウサギの耳のカチューシャをつけた男の子なら少し前にすれ違いましたよ」
「ありがとうございます」
 礼を言ってロイは親子連れと離れて歩き出す。この方向なら別荘だと足を早めながらロイは眉を顰めた。
「ウサギ耳?まさかハボックのヤツ」
 ウサギを追って犬耳をうさみみに変えたのだろうと察してロイは唇を噛んだ。
「まさかその瞬間を見られて誰かに」
 捕まったりしていないだろうかと思えば不安がいや増す。別荘に向かうロイの歩みはどんどんと早まり、ついには走り出していた。木々の間に別荘が見える。全速力で最後の十数メートルを駆け抜けたロイは、別荘の前で誰かに抱え込まれている小さい姿を見つけて声を張り上げた。
「ハボックっ!」
 駆け寄りながら懐に手を入れ発火布を取り出す。それを手に嵌めたロイが指を擦り合わせる前に、ハボックが抱え込む相手の腕を振り解いてロイに向かって駆けてきた。
「ろーいッ!!」
 駆け寄るロイの胸に地面を蹴ってピョンと飛んだハボックが飛び込む。ギュッと抱き締められて、ハボックは泣きながらロイにしがみついた。
「ろーいっ、ろーい〜ッ!!」
「ハボックっ、よかった……ッ」
 両腕両脚を使って全身でしがみついてくるハボックを抱き締めて、膝をついたロイは詰めていた息をホッと吐き出した。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても嬉しいですv

昨日は更新間に合いませんでした〜ッ。覗きに来て下さった方には大変申し訳ありません(汗)家人がガッツリいる三連休明けで、息子が文化祭明けの休みで流石に書けませんでしたよ〜(苦)
日記の方は「暗獣」です。「兎」の続きを書こうかとも思ったのですが(←まだ書く気か!)いい加減ハボをロイのところに戻さないとバカンスが進まないので(苦笑)バカンス終わらないと季節を追えなくなってしまう〜。「暗獣」は季節とともに進めたいです(笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

そうそう、思う壺です(笑)実は尻尾ネタも書きたかったんですが、上手く織り込めなかったのでした(笑)あ、発情期の件は大丈夫ですよ。ネタ頂いた時は更に枝葉が増えないか、ネットで調べてみたりするんですが、バッチリ情報通りでした、ありがとうございますvコメントをネタにするのはいいものか、お気を悪くしたりしていないか時々心配になるので、嬉しいと言って頂けてこちらも嬉しいです!また何かありましたらよろしくお願い致します(笑)

ハボと楽しむためには の方

わ〜い、大佐が好きと言って頂けて嬉しいです!確かに「ハボ“と”楽しむ」というより「ハボ“で”楽しむ」かもv(笑)応援にお答えしてまたやらかすと思いますので、ご一緒にハボで楽しんで頂けたら嬉しいですv
2012年09月19日(水)   No.251 (カプなし)

新・暗獣22
 漸くちゃんとした道に出て、ジョーイはホッと息を吐く。なかなか道が見えず自分まで迷子になるかもと、一瞬不安になったことは内緒でジョーイはラビと名付けた男の子を見た。
「ほら、ちゃんと道に出ただろ?」
 別に自慢するほどの事ではないのだが、ジョーイは偉そうに言う。そうすればじっとラビに見つめられて、ジョーイは嬉しそうに鼻を鳴らした。
(でも、これからどうしょう)
 ローイを探すと言っても当てもなく歩き回るには広すぎる。どうしようかと考えていれば向こうから話し声が聞こえてきて、ジョーイは胸を撫で下ろした。
(あの人に聞いてみよう)
 この子の親を見ているかもしれない。見ていなくても何かいい方法を聞けるかもと、ジョーイは向こうから歩いてくる親子連れに近づいていった。
「おはようございます」
 自分からそう声をかければ女の子の手を引いていた女性が笑みを浮かべる。朝の挨拶を返して女性はジョーイとラビを見て言った。
「弟を連れてお散歩?お兄ちゃん、偉いのね」
「えっ?」
 そんな風に言われてジョーイは目を丸くする。女性はラビの頭を撫でて言った。
「お兄ちゃんにお散歩連れてきて貰ってよかったわね」
 女性は笑うと気をつけてねと言って行ってしまう。女の子が「あのカチューシャ欲しい!」と、興奮して言うのに答えながら歩き去る女性の背を見送って、ジョーイはだらしなく笑った。
「お兄ちゃんだって」
 弟を連れたしっかり者の兄と見られたのが嬉しくて堪らない。フフフと笑えばクイと手を引かれて、ジョーイは傍らに立つラビを見た。
「ろーい……」
「えっ、あっ……と」
 つい嬉しくて、聞くのを忘れてしまった。ジーッと見つめてくる空色に、ジョーイは誤魔化すように笑った。
「だっ、大丈夫だって!ちゃんと俺がローイのところに連れて行ってやるからッ」
 半ば自分に言い聞かせるように声を張り上げると、ラビが俯いてハアとため息をつく。そのため息が酷く胸にこたえて、ジョーイはキュッと唇を噛んだ。
「行くぞ」
 ジョーイは言って歩き出す。心配そうに見上げてくるラビの視線を感じて、ジョーイは繋いだ手をギュッと握り締めた。
(お兄ちゃん、偉いわねって言われたんだ。しっかりしなきゃ)
 さっき女性に言われた言葉に励まされるようにジョーイはどんどんと道を歩いていく。流石にこれ以上宛もなく歩いても仕方ないかもと思い始めた時、この辺りの貸別荘の案内板が立っているのが見えた。
「あれだ!あれを見ればローイがいるところが判るかも!」
 ジョーイはそう叫んで案内板に駆け寄る。地図上に書いてある別荘の番号を見て、ジョーイは言った。
「現在地がここだろ。俺の別荘が8だから、これ。ラビの別荘は何番?」
 ジョーイは地図の番号を指差しながら尋ねる。これでローイの居場所が判ると思ったジョーイは、ラビが困ったように首を傾げるのを見て肩を落とした。
「判んないか」
「ろーいー」
「大丈夫、何とかする」
 ジョーイよりもっとがっかりするラビに、ジョーイはきっぱりと言う。もう一度案内板をじっと見つめて考えた。
「現在地がここだろ?だったらラビの別荘は7か6じゃないかな」
 自分より小さいラビが幾ら道に迷ったとしてそんなに遠くから来たとは思えない。ここから近い別荘はジョーイの別荘を除けば2つだけだからどちらかにローイがいると考えるのが妥当だろう。
「どっちかなぁ」
 ジョーイは案内板を見つめて呟く。これ以上決め手になるものはなく、ジョーイが考え込んでいるとラビの小さな手が伸びてきて案内板に触れた。
「ろーいっ」
 そう言ってラビが触れたのは湖だ。見上げてくる空色にジョーイはピンときて言った。
「湖で遊んだのか?だったら6の別荘の方が湖に近いよ。こっちに行ってみよう」
 ジョーイは「よしっ」と握り拳を作ると、ラビの手を引いて駆け出した。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手もありがとうございます。

ここ数日テンションが物凄い低空飛行です。なんとか更新分は書き終えましたが相変わらずの低空飛行(苦)誰か萌えツボ、押して貰えませんか?(苦笑)

日記の方は相も変わらず「暗獣」です。いい加減ハボをロイに会わせたい(苦笑)次回には会えるといいなと思います。
2012年09月15日(土)   No.248 (カプなし)

新・暗獣21
「まずはちゃんとした道に戻ろう」
 ろーいと叫んで道から逸れていってしまった男の子を追いかけて林の中に分け入ってしまったから、今二人は木々の間に立っている。確かこっちから来た筈と、ジョーイは男の子の手を引いて歩いた。
(それにしてもすっごいリアルなカチューシャだなぁ)
 ジョーイは傍らで揺れるウサギの耳を見ながら思う。空色の生地で出来たカチューシャに生えた耳は彼の金髪とそっくりの質感で作り物には見えず、とても可愛かった。じっと見つめる視線を感じたのか、顔を上げた男の子に見つめ返されて、ジョーイは紅くなって言った。
「あっ、あのさっ、そのカチューシャ、可愛いなっ!すっごいリアルだし!」
 ジョーイがそう言うと男の子が空色の目を見開く。その瞳がニコォと笑うのを見れば、ジョーイの心臓が飛び上がった。
(かっ、可愛いッ)
 顔を真っ赤にしてジョーイは俯く。チラリと見れば見上げてくる男の子が笑いかけてきて、ジョーイは熟れたトマトのように真っ赤っかになった。
「……なあ、お前、名前なんて言うの?」
 無性に名前が知りたくなってジョーイは尋ねる。
「俺はジョーイ。お前は?」
 さっきも名乗ったがもしかして忘れてしまってるかもと、ジョーイは自分の名を繰り返して男の子を見た。名前を呼んで欲しくて名前を呼びたくて、ジョーイは足を止めて男の子からの返事を待つ。だが、男の子は困ったように俯くと手にした薄をふりふりと振った。
「……ろーい」
「ッ、だからっ、それはお前のお父さんの名前だろッ!」
 何度聞いても「ろーい」としか言わない男の子に、ジョーイはカッとなって声を張り上げてしまう。そうすれば空色の瞳に涙が盛り上がって、男の子はまた泣き出してしまった。
「あっ、ご、ごめんッ!」
 ジョーイは慌てて手を振り回す。どうしようと焦りまくったジョーイは振り回していた手で男の子をギュッと抱き締めた。
「ごめん、ローイに早く会いたいんだもんなッ!お父さんとはぐれちゃったら……不安だよな」
 ローイと言うのが父親なのか、はっきり聞いてはいないが恐らくはそうなのだろう。まだ小さくて「パパ」と呼べずに「ろーい」と呼んでいるのだと思えば、ジョーイは迷子の男の子が可哀想になって抱き締める手に力を込めた。
「ろぉいッ」
「あ、ごめん」
 力を入れすぎて苦しそうにもがく男の子にジョーイは慌てて手を緩める。ホッと息をつく男の子のウサギ耳を見てジョーイは言った。
「あのさぁ、お前のことラビって呼んでいい?」
 そう言えば男の子がキョトンとしてジョーイを見る。
「名前ないと呼びづらいしさっ、ほら、カチューシャがウサギだしっ」
 と、ジョーイは必死に言い募ったが男の子はどこか不満そうだ。
「とにかく、お前の名前はラビ!いいなっ、ラビ!」
 名前で呼ぶと何だか急に仲良くなった気がしてくる。
「よし、じゃあローイを探しに行くぞ、ラビ!」
 ジョーイは上機嫌でそう言うと、勝手にラビと名付けた男の子の手を引いて再び歩き出した。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気貰ってます、ありがとうございますv

「暗獣」です。ハボック、勝手に名前つけられてます。迷子の仔犬を拾った人が好きな名前で呼んでるパターン(苦笑)ちゃんとロイのところまで連れて行って貰えるんだろうか……なんかちょっぴり不安になってきましたよ(をい)

以下、拍手お返事です。

なおさま

ふふふ、詰めが甘いロイ、まあ、ここからはガッツリ詰めてディアスをとっちめてくれるかなと(笑)「暗獣」のヒュ、愛されてるなぁ、ラブコール?ありがとうございます(笑)しかし、ロイより先にヒューズがハボを確保したら、ロイのところに連れて行くより先に一緒に遊び倒しそうです。ハボック、尻尾も耳も出し放題で大変かも(苦笑)
2012年09月13日(木)   No.247 (カプなし)

新・暗獣20
「母さん、ちょっと散歩してくるね!」
「ジョーイ…?随分早起きね」
「まあね。じゃあちょっと行ってくる」
 ジョーイはまだベッドの中にいる母親にそう声をかけるとコテージを飛び出す。朝まだ早いこの時間、空気は冷たく澄んで気持ちよかった。
 つい最近九才になったばかりのジョーイは、夏休みを利用して母親と一緒に湖の畔のコテージに泊まりにきていた。普段は寝坊のジョーイだったがここへ来てからはすっかり早起きが習慣になっている。漸く明けたばかりの空の下、朝露の残る草を踏みしめて林の中を歩いたり鳥の囀りを聞いたりするのは、街中で暮らすジョーイにとって新鮮でとても楽しかった。
 今日も目覚まし代わりの朝の陽射しがシェードを縮めた天窓から射し込むのとほぼ同時に目を覚まして、ジョーイは朝の散歩に出た。途中まだ市中では見かけない開き始めた薄の穂を見つけて折り取ると、それを手に軽い足取りで歩いていく。昨日の朝はこの辺りにウサギがいたなと下生えの中を覗き込んだ時、ザザザと草が鳴る音がした。
「またウサギ?」
 今日も会えるなんてツイテる。ジョーイがそう思った時、ピョンと飛び出してきたものがジョーイに飛びついた。
「ろーいっ!」
「うわッ?」
 いきなり抱きつかれてジョーイはびっくりして尻餅をつく。目の前の長い耳がピクリと動いたと思うと、抱きついてきた相手が顔を上げた。
「お前……」
 金髪に空色の瞳の男の子はどこかで見た気がする。ジョーイがそう思った時、まん丸に見開いた空色の瞳に涙が盛り上がったと思うと、男の子はポロポロと泣き出してしまった。
「えっ?あ、あのっ」
「ろーい〜っ」
 ぺたんと地面に座り込んで泣き出す男の子にジョーイは慌ててしまう。オロオロと辺りを見回して、自分が持っている物を見ると手にした薄を男の子の目の前に差し出した。
「ほら、綺麗だろう?金色でお前の頭にちょっと似てるなっ」
 そう言って薄をふさふさと揺すれば男の子は目を丸くしてジョーイを見る。泣き止んだかなと思ったのも束の間、男の子はまた泣き出した。
「ろーい〜……」
 ヒクッとしゃくりあげながら泣くの男の子を困り果てて見ていたジョーイは、彼をどこで見たかを思い出して目を見開いた。
「そっか、お前、来る時駅で会った……」
 汽車に乗ろうとして鉢合わせた男の子。確か男と一緒だったと思い出して、ジョーイは男の子に言った。
「もしかして迷子になったのか?ローイってのはあの時一緒にいた男の人?」
 そう尋ねたが男の子は答えない。代わりに涙に濡れた瞳でじっと見つめられて、ジョーイはなんだか恥ずかしくなって目を逸らした。
「あ〜、えっと……」
 ジョーイはうろうろとあちこち見回してから視線を男の子に戻す。また泣きそうに口を歪めている男の子にジョーイは慌てて言った。
「あのさっ、俺、ジョーイって言うんだ。お前は?」
「……ろーい」
「いや、ローイじゃなくてジョーイ。お前の名前は――――」
「ろーいっ」
 名前を尋ねている最中に男の子は立ち上がると、また下生えを掻き分けて行ってしまう。ジョーイは慌ててその子の後を追いかけた。
「ろーいっ!」
 泣きながら駆ける男の子の腕を追いついたジョーイが掴む。びっくりしたように振り向く男の子にジョーイは言った。
「あのっ、あのさ!俺が探してやるから!そのローイって人、探してやる!」
 そう言えば男の子はびっくりしたようにジョーイを見る。尋ねるように男の子が首を傾げるのに合わせて揺れるウサギの耳のカチューシャを見つめて、ジョーイはニッと笑った。
「ローイを見つけてやる。ほら、これやるから、もう泣くな」
 そう言って手にした薄を差し出すと、男の子は花束を持っていない方の手で受け取る。
「……ろーい」
「だからー、ローイじゃなくて俺はジョーイ――――ま、いっか」
 ジョーイは苦笑すると男の子の涙を手のひらで拭いてやった。
「よし、じゃあローイを探しに行くぞ!」
 そう言って手を差し出せば、男の子は少し考えて花束と薄を一つに纏めて持つと空いた方の手を差し出した。ニコッと笑う男の子の手を取ってジョーイは元気よく歩き出した。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになります、嬉しいですv

誰だ、ジョーイって、と思われた方、すみません。一応「暗獣」です〜。やっと迷子の仔犬を探しに(苦笑)と言っても、見つけたのはロイじゃありませんでしたが(笑)「暗獣」は一人称ではありませんが、基本ハボック以外の誰かの視点で書いているので今回はジョーイ視点での話になります。なのでハボックはまだ名前が判んないっていうね。しかも仔犬じゃなくて仔ウサギになってるし(ふふふ、囁いて下さった方、ありがとうv)しかし、ハボックの場合、名前を聞いてもお家を聞いても返ってくる答えは「ろーい」だもんなぁ。絶対判んない(苦笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

えへへ、喜んで下さって嬉しいです〜vきっとこの日は司令部でやたらとカメラを手にコソコソしているのがいたのではないかと…。さぞ念入りに焼かれたことだろうなぁ(笑)でも、確かに一層どころか増えていそうな気もします(苦笑)フンに気づかないハボック、ロイもブレダも心労絶えません(笑)

おぎわらはぎりさま

金魚、続きました(笑)確かにセントラルでやったら益々混乱に拍車がかかりそうですね。髭、理性薄いのか!(笑)「よいではないか」「あれ〜」は一度やってみたい気もします。でも、帯はそのままで乱れた裾から脚が覗いたり、肌蹴た襟もとから胸が覗くのもオツですよ(爆)
2012年09月11日(火)   No.246 (カプなし)

金魚
「ジャーン」
 玄関の方から聞こえた声に腰に巻かれるふわふわの青い帯を見つめていたハボックはパッと顔を上げる。肩越しに振り向き、背後で帯をチョウチョの形に結んでいる母親に言った。
「ロイお兄ちゃん来たっ、ママ、早くッ」
 今すぐにも飛び出したいのに流石に動く事が出来ず、ハボックはドンドンと足踏みした。
「じっとしてないと結べないわよ」
「う〜っ」
 母親に苦笑混じりに言われて、ハボックは足を止めてじっとする。それでもそわそわと体を揺らす息子に母親はクスクスと笑って帯をポンと叩いた。
「はい、おしまい」
 その声にハボックは弾かれたように部屋を飛び出る。階段を駆け下り玄関の扉をバンッと開ければ、外で待っていたロイが振り向いた。
「用意できたか?」
 そう言うロイをハボックはまじまじと見つめる。唇をムゥと尖らせたと思うと大声を張り上げた。
「ずるいッ、俺も赤い帯が良かったッ!」
「え?」
 顔を見るなりそんな事を言われ、ロイは目を丸くして自分が締めているふわふわの赤い帯を見下ろした。
 今日は年に一度の秋祭りだ。いつもは大人達に連れて行って貰う二人だったが、ロイが十になった今年は二人だけで出かける事になっていた。
「赤い帯、金魚みたいでカワイイ。オレも赤い帯がいい!」
 ロイは紺地に幾つもの花火が花開いた浴衣に赤い帯を締めている。羨ましそうに地団駄を踏んで涙ぐむハボックを見て、ロイは言った。
「でも、ジャンの帯だってふわふわの雲みたいだ。それにお前の瞳と同じ色でとっても似合ってる」
 そう言われてハボックは自分の姿を見下ろす。白地に沢山のトンボが飛んでいる浴衣に締められた青い帯に触れてハボックは言った。
「ふわふわの雲みたい?」
「うん」
「オレの目と同じ色?」
「うん。よく似合ってるよ」
 大好きなロイお兄ちゃんにニコッと笑って言われれば、ハボックの顔にも笑みが浮かぶ。小さな手でゴシゴシと目をこすってにっこりと笑った。
「それならいいや」
 ハボックは言いながらクルクルと回って見せる。そうすれば結んだ帯がハボックの動きを追いかけて、青い雲のようふわふわとなびいた。
「ジャン、忘れ物よ。これを持っていかないと」
 その時、母親が小さなポシェットを手に出てくる。ハボックの側に跪いてポシェットを斜めにかけてやると、今一度帯を整えて言った。
「中にハンカチとティッシュとお財布が入ってるから。無駄遣いするんじゃないのよ?ロイくんの言うことちゃんと聞いてね」
「大丈夫だよ!オレ、もう五才だもんっ」
 つい最近五才になったハボックは自慢げに片手を広げて見せる。そんな息子の金髪を笑って撫でてやると、母親はロイを見て言った。
「それじゃあロイくん、よろしくお願いね」
「はい、行ってきます。ジャン、行こうか」
 ロイは母親に頷いてハボックを促す。元気よく頷くハボックに手を差し出してロイは言った。
「手を繋いで行こう。迷子になったら困る」
「えーっ」
「私の言うことを聞く約束だろう?」
 不服そうに頬を膨らませるハボックにロイが言う。ほら、と差し出した手を振られればハボックは仕方なしにその手を取った。
「いってらっしゃい。気をつけてね」
「はーい」
 笑って見送る母親に、二人は手を振って答える。手を繋いだロイとハボックは、ふわふわの金魚の尻尾をなびかせてお祭りへと出かけていった。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、励みになります、嬉しいです〜v


今日は迷子の迷子の仔犬ちゃんの「暗獣」をお届けするつもりでしたが、予定を変更してふわふわ金魚のチビたち二人です。いや、ね「ふわふわ帯のこと、金魚帯と呼んでるんですが、子ハボ子ロイで金魚帯だとタマらんです」ってコメントを頂きまして。金魚帯ってなんて可愛い表現だろうって思ったら堪らなく書きたくなってしまって(笑)どうということのない話ですが、ふわふわ金魚帯のおチビ二人を想像して頂けたらなと思いますvしかし、こんなのが二人手を繋いで歩いてたらほんとタマランですよね!屋台のオッチャン達がオマケしまくってくれそうです。商売あがったり(笑)射的の景品やら綿飴やらやたらと持ち帰って親に心配されたりね(苦笑)いいなぁ、ふわふわ金魚帯v


以下、拍手お返事です。

阿修羅さま

いえいえ、着物着る方からしたら気になりますよね。一応知らないことはチェックしてから書くようにはしてるのですが、やはり色々漏れが(苦笑)おお、阿修羅さまの正装!妖艶美女なイメージです!(をい)

香深さま

お名前ありませんでしたが香深ですよね?(笑)うふふ、犬耳カチューシャ、しっかり使わせて頂きましたvこの後ギャラリーも登場する予定ですので(笑)迷子のハボック、どうなるかお楽しみにv意外と参加要望のあるヒュです、髭、人気者(苦笑)ロイならそんな風に言いそうです(笑)セレスタ、ハボック、そういう風に見えているのなら嬉しいです。まだ暫く香深さまにはご心配おかけする展開かと思いますが、どうぞ見守ってやってください。それから迷惑だなんてとんでもない!是非妄想話お聞かせ下さい!ネタにしちゃってもよければですが(爆)でもって、金魚帯、さっさとネタにしてしまいました、ごめんなさい(汗)でも、とっても可愛い表現だったんですもの!金魚帯の二人が頭に浮かんだらもう我慢出来ませんでした(苦笑)こちらこそいつもコメントありがとうございます!香深さまのコメントって物凄く私の萌えツボというか、「あ、そこそこ、気持ちイイ〜っ」って言うくらいツボなんですよ。これからもお声を聞かせて下さるととっても嬉しいですv

やーんハボックが迷子になっちゃうw の方

うふふ、ハボック迷子ですよv 是非ドキドキハラハラしながら続きをお待ちいただけたらと思います(笑)
2012年09月08日(土)   No.243 (カプなし)

新・暗獣19
「しまった……」
 ロイは夜明けに少し遅れて明るくなった部屋の寝床の中で呟く。傍らのハボックが枕に顔を埋めて不満の声を上げた。
「ろーい〜」
「そう言えばお前も朝は苦手だったな」
 視線だけ向けてロイが言えばハボックがふぁさりと尻尾を振った。
「星空を見上げて寝るのもいいが、やはり寝坊したいしな」
 ロイはそう言って斜めの屋根に取り付けられた天窓を見上げる。シェードを縮めたままの窓からは、朝の陽射しが燦々と降り注いでいた。
「今夜からはシェードは降ろして寝よう」
 星空を見上げていてもどうせすぐ眠ってしまうのだ。ロマンチックな夜よりもだらだらと二度寝、三度寝する朝がいい。ロイがそう言えばハボックが同意するように尻尾を振った。とはいえ、こう明るくてはとてももう一度眠る気にはなれない。ロイは体を起こすとウーンと伸びをした。
「ハボック、折角早く目が覚めたんだ。散歩に行かないか?」
 ロイはそう言うと立ち上がり寝床から出る。顔を洗って着替えて戻ってくると、ハボックが漸くもそもそと起き上がったところだった。ふああと大きな欠伸をするハボックの髪が寝癖でピンピンと跳ねているのを見て、ロイはクスリと笑う。ロイが戻ってきた事に気づいたハボックが這うようにしてロイに寄ってきた。
「ろーいー」
「凄い髪だな」
 ロイは言って金色の髪を撫でつけてやる。眠そうに小さな手で目をこするハボックを笑いながら抱き上げてロイが言った。
「顔を洗っておいで。目が覚める」
「ろーい……」
 ぽすんとハボックは眠そうにロイの胸に顔を埋める。ロイはクスクスと笑ってハボックを洗面所に連れて行った。
「さっさと洗わないとおいていくぞ」
「ろーいっ」
 その言葉にハボックがパッと顔を上げる。ロイに体を支えられてパシャパシャと顔を洗ったハボックは、プルプルと首を振った。
「こら、タオルで拭け」
 水を跳ねかけられてロイが顔をしかめる。ハボックはロイの腕からピョンと飛び降りると階段に向かって走った。
「ろーい!」
 早く行こうとばかりにロイを呼んでハボックは先に降りていってしまう。やれやれとため息をついて着替えを手に階段を降りれば、ハボックがロイが来るのを待ってウロウロしていた。
「ろーいっ」
「ハボック、尻尾と耳!」
 ロイが降りてきたのを見てすぐにも飛び出していきそうなハボックにロイの声が飛ぶ。足を止め目を見開いて見上げてくるハボックに、ロイは繰り返した。
「尻尾と耳。隠しておくようにと言っているだろう?」
 手を腰に当てて言うロイをハボックが上目遣いに見る。ハァとため息をついたハボックのふさふさの尻尾がポンッと音をたてて消えた。だが、犬耳はそのままでハボックは困ったように視線を上に向ける。
「ろーいー」
「どうした?前はちゃんと隠せただろう?」
 ロイが首を傾げて言えばハボックがウーンと唸る。なかなか引っ込まない犬耳に、早く外に行きたいハボックは唸りながらウロウロと走り回った。
「ろーいっ」
「落ち着け。慌てるから上手くいかないんじゃないか?」
 ロイがそう言ったが犬耳を引っ込められないハボックは、遂には不貞腐れたように床に座り込んでしまった。
「ハボック」
 しょんぼりと小さな背中を丸めるハボックにロイがため息をつく。部屋の隅に置いておいたトランクを開けると荷物の中から取り出した物を手にハボックを呼んだ。
「おいで、ハボック」
 呼ぶ声にハボックは顔を上げる。四つん這いでロイのところまで寄ってくるとロイの顔を見上げた。
「仕方ないからこれをつけておきなさい」
 ロイは言って手にしたものをハボックの頭につける。それはワンピースとお揃いのカチューシャだった。
「ろーい!!」
 お気に入りのカチューシャをつけて貰ってハボックは大喜びだ。カチューシャを嬉しそうに触るハボックにロイは言った。
「言っておくがハボック、その格好はここでだけだ。いいな?」
 それを聞いたハボックがショックを受けたように目を見開く。うるうると目を潤ませるのを見れば物凄く意地悪を言っている気になったが、ロイはなんとかそんな考えを頭から押し出して言った。
「それが約束出来ないならカチューシャは外して耳は引っ込めろ。どうする?」
 厳しい顔でじっと見つめるロイを、見つめ返していたハボックがコクンと頷く。そうすればロイが笑みを浮かべた。
「よし。じゃあ行こうか」
 そう言ってロイはハボックのパジャマを脱がせ着替えさせる。
「そうだ、これはお前がつけておいた方がいいな」
 ロイは子供の服のポケットに天使の飾りを入れてやるとポケットの上からポンポンと叩いた。立ち上がって手を差し出せば笑ってロイの手を取るハボックと二人、連れ立ってコテージの外へと出た。
 日中は暑いこの辺りも陽が出て間もない今の時分は随分と涼しい。鳥の囀りが聞こえる林の中を歩いていけばあちこちに花が咲いているのを見て、ハボックが繋いだロイの手を引っ張った。
「ろーいっ」
 ハボックはロイの手を引いて花に近づくと近くにしゃがみ込む。朝露を載せた花弁を指先でツンツンとつついてロイを見た。
「ああ、綺麗だな」
 ロイが頷けばハボックはロイの手を離し花を摘み始める。小さな花束を作ると再びロイの手を取り歩き出した。並んで歩く二人の前に何やら茶色の塊がピョンと飛び出してくる。びっくりしたハボックがロイにしがみつくようにして足を止めれば、飛び出してきたそれが長い耳をピンと立てた。
「ウサギだ、ハボック」
 笑いを含んだロイの声にハボックは、視線を茶色の塊に向ける。ウサギとハボックはまん丸の瞳で暫し互いを見つめ合っていたが、つぎの瞬間ウサギはピョンと跳ねて近くの木々の間に飛び込んだ。
「ろーい!」
 逃げたウサギを追ってハボックが走り出す。
「ハボック!」
 ウサギについて道を外れて駆けていくハボックをロイが慌てて追った。
「ろーいーっ」
「待て、ハボック!迷子になるぞ!」
 小さな姿を追いかけてロイは叫ぶ。木々の間に見え隠れする金髪を追って下生えを飛び越えたロイは、不意に開けた視界に目を見開いた。
 唐突に林が途切れた先に広がるのは朝日を受けてキラキラと輝く湖。その眩しさに腕を翳して目を細めたロイは、ハッとして辺りを見回した。
「ハボックっ?」
 名を叫んで辺りを見回したがハボックの姿はない。
「ハボック!!」
 朝日に輝く湖の上をハボックを呼ぶロイの声が流れていった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、モチベーションあがります、嬉しいですv

日記ではお久しぶりです(苦笑)ポチポチ携帯で打っていたんですが、なかなか集中して書けませんでした。更新の方は書き溜めていたので問題なかったんですがね。そういや昔は随分書き溜めてたんだよなぁ、更新も週三回だったし日記は結構あちこちから拾ったネタで毎日書いてたし……。ふ。
ともあれ「暗獣」です。あれれ?ハボック、迷子になっちゃったよ!本当は二人で朝日に輝く湖見て終わる筈だったんですが(汗)ウサギめ〜!(苦笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

ボートリベンジ、考えてみたらハボの小さい身体で一人で漕ぐのは無理ですよねぇ(苦笑)でも、何とかリベンジさせてあげられたらいいなと思います(笑)ハボックがぷかぷかしてても多分腰から下は湯の中じゃないかと思われます、薄暗いから見えてないかなぁと。ロイがやったら……確かにちょっと危険ですね(爆)「セレスタ」ふふふ、腐れ外道エロオヤジは褒め言葉と思ってますよ(爆)ブラハボが長かったのでハッピーエンドなロイハボまではおそらくまだ暫くかかると思いますが、どうぞよろしくお付き合いくださいねv

JOEさま

えへへ、楽しく通って頂けてますか?嬉しいです〜vちょっとお久しぶりの「暗獣」も楽しんでくださると嬉しいですv

おぎわらはぎりさま

はぼっくが泳げるか……それはおそらくもう少し先で判るかと思います。犬かきなのかどうかも(笑)いきなり「髭」が現れたらビックリするだろうなぁ(苦笑)拍手リク、いやいや焦ってるわけではないですが、やはり折角なら夏にお届けしたいなぁと思いまして。冬場に浴衣じゃねぇ(苦笑)やたらほのぼのな話になってしまいましたが後篇もお楽しみ頂けてましたら嬉しいですvパソ不調、大丈夫ですか??コメントは全然構いませんが、パソの不調は嫌ですよね……。早く復活しますように。

阿修羅さま

「君のいる夏」ほんわか、ありがとうございます。浴衣、チェック厳しいですね(苦笑)ロイが着ているのは女物です。というか「ロイは女物」という思い込みで書いていたもので、読み返してみるとちょっと判り辛いかもとはっきり女物と書き直しておきました。ハボックのは勿論男物ですよ。ハボックは恐らくちゃんと帯を結んだと思われ……。要はイチャイチャ着付けしてるのが書きたかっただけなのであまり細かく帯をどうしたと書いても仕方ないので書いてませんが(というより、ハボック、帯結んだっていう描写もないよ(苦笑)柄はああいう柄の女物と男物を通販サイトで売ってたのを着せてます。流石に子供もののふわふわ帯だとアレかなぁと(苦笑)まあ、色々ツッコミどころはあるかと思いますが、ぬるく見守ってやって下さい〜(笑)
2012年09月05日(水)   No.242 (カプなし)

新・暗獣18
 湖の向こうにオレンジ色の夕陽が沈むのを見送った後、ロイとハボックはコテージに帰ってくる。さっきは荷物を置いただけですぐ出かけてしまった為、二人は改めてゆっくりとコテージの中を見て回った。
 広々としたリビングには暖炉が備え付けられている。カウンター式のキッチンは対面になっていて、ロイが料理をしていてもリビングにいるハボックの様子がよく見えそうだった。一階には浴室もあるが、更にその奥の扉を開けると小さな露天風呂がある。木に囲まれた風呂を見て、ハボックが顔を輝かせた。
「ろーいっ」
「まあ、待て。まだ全部見終わってないだろう」
 そう言ってロイが中に戻ってしまうとハボックが残念そうな顔で風呂の入口でうろうろする。ロイはリビングの隅にある急な階段を上がり二階に上がった。
「ハボック!」
 ロイが呼ぶ声にハボックはリビングに戻ってキョロキョロと見回す。
「こっちだ、ハボック」
 もう一度聞こえた声を探してハボックが視線を上げれば、吹き抜けになったリビングを囲むようにぐるりと張り巡らされた廊下に立ったロイが手を振っていた。
「ろーいっ」
 家では見られない光景にハボックが喜んでピョンピョンと飛び跳ねる。ジャンプに合わせてポンッ、ポンッと尻尾と犬耳が出るのを見て、ロイはやれやれと肩を落とした。どうやら感情が高ぶると隠しておけなくなるようだ。
「家の中だし、まあいいか」
 あまり甘やかしてはいけないが、とりあえず今はいいだろう。ロイは笑みを浮かべて階下のハボックに言った。
「上がっておいで。そこに階段があるだろう?」
 ロイは言ってリビングの隅を指差す。ハボックは階段を上がってロイの側にやってきた。
「ろーい」
 廊下に巡らされた落下防止の柵の隙間からハボックは面白そうに階下を見下ろす。ふさふさと尻尾を振るハボックを見ながらロイは言った。
「おいで、こっちも面白いぞ」
 そう言って歩き出すロイをハボックが追ってロイのシャツの裾を掴む。ロイが開けた部屋の中に入るのに続いたハボックが目を瞠った。
 二階のその部屋は屋根の形そのままに天井が斜めになっている。斜めの天井にはシェードのついた窓がついていて、ロイが紐を引くとシェードが縮んで、淡く太陽のオレンジの光を残した空が現れた。部屋の半分以上を占領するベッドは所謂普通のベッドではなく巨大な箱に布団やクッションが敷き詰められているようなものだ。以前ビロード張りのトランクを寝床にしていたハボックの為に、綺麗な箱にフカフカのクッションを敷き詰めて寝床を作ってやったロイが、そのベッドを見てクスクスと笑った。
「お前の寝床そっくりだな。今夜はここで一緒に寝るんだぞ」
「ろーいっ」
 そう聞いてハボックが嬉しそうに尻尾を振る。ベッドの縁に掴まって中のクッションの様子を確かめるハボックにロイが言った。
「それじゃあ、まず風呂に入ろう」
「ろーい!ろーい!」
「うん、私も露天は初めてだよ、楽しみだな」
 脚に纏わりついてピョンピョンと飛び跳ねるハボックにロイが言う。二人は下に降りて風呂の準備を整えると浴室に向かった。まずは内湯で体の汚れを落とす。それから二人は奥の扉を開けて外に出た。
「ろーい……」
「大丈夫、暗いから足元に気をつけろ」
 建物の中から零れる光だけが頼りの薄暗い場所で、ハボックが不安そうにロイを呼ぶ。ロイはハボックの小さな手をしっかりと握り締めて大小様々な石で作られた風呂に足を入れた。
「熱めだな」
 肌を包む湯温の感想を呟けばハボックがロイにくっつくようにして湯に身を沈める。脇の下辺りまで湯に入って二人はほぼ同時に「ふぅぅ」と息を吐いた。互いに顔を見合わせクスリと笑う。チャパチャパと伸ばした脚で湯を蹴って遊びだすハボックを見つめていた視線を頭上に向けたロイは、僅かに目を見開いた。
「ハボック、星だ」
 その言葉に視線を上げたハボックが目をまん丸にして息を飲む。二人の頭上では梢の向こうに満天の星空が広がっていた。暫く黙ったまま空を見上げていたが、やがてハボックがホゥと息を吐き出した。
「ろーいー」
「うん、綺麗だな。星がこんなにたくさんあるなんて、知らなかったよ」
 そう言うロイの横でチャプンと湯が跳ねる音がする。クイクイと腕を引っ張られて視線を下に向ければ、ハボックが仰向けに浮かんで空を見ていた。
「狡いぞ」
 とても気持ち良さそうなその格好は、小さなハボックには出来ても大人のロイには出来るだけの広さがない。ロイは残念そうにため息をつくと縁の岩に頭を載せた。
「これでもいいか」
 そう呟いてロイは目を細めて星を見上げた。

 星空の下での風呂をゆったりと満喫して、二人はホコホコになって中に戻る。ロイが手早くパスタを茹でる間、リビングで集めた小石や貝殻を並べていたハボックがクシャンとくしゃみをした。
「ハボック、ここの夜は冷える。これを着てなさい」
 ロイは荷物の中からナイルブルーの薄地のパーカーを取り出しハボックを手招く。着せてやればハボックがにっこりと笑って、パタパタと尻尾を振った。
 簡単な夕食を済ませてのんびりとコーヒーを飲みながら寛いでいると何だか眠たくなってくる。家にいる時はかなり夜更かしなのにと傍らのハボックを見れば、ふああと大きな欠伸をしているのを見てロイはクスリと笑った。
「少し早いが今日はもう寝ようか」
「ろーい〜」
 そう言えば手を伸ばしてくるハボックを抱き上げ、ロイは寝支度を整えて階段を上がった。さっき見て回った二階の部屋の扉を開ければハボックがロイの腕からピョンと飛び降りる。枕を抱き締めてロイを見上げるハボックの金髪をロイはくしゃりと掻き混ぜた。





 二人してぽすんと巣のようなベッドに倒れ込む。クスクスと笑ってロイが言った。
「お前になったみたいだ。いつもこんな感じで寝てるんだな」
 クッションとブランケットに埋もれて笑うロイにハボックが枕を抱えたまま擦りよった。
「ろーい」
「ん、明日もいっぱい遊ぼうな」
「ろーいっ」
「ボートか?リベンジもいいが釣りなんかも楽しいぞ」
 ロイは言いながら天窓を見上げる。
「星が綺麗だな」
「ろーい」
 すりすりと擦り寄ってくるハボックの小さな体を抱き締めて、ロイは眠りに落ちていった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになります、嬉しですv

「暗獣」です。そして、腐腐腐腐腐腐……「刹那の夢」の水瀬さんから子ハボ強奪して参りましたーッ!!でへへへへ、うーれーしーい〜〜vオネダリしてみるもんだなぁ、こんな可愛い子ハボを貰えるなんてッ!水瀬さんの絵、絵柄は勿論大好きなのですが色合いがまたすっごく好きなんですよぅvうふふ、とっても嬉しかったので宝部屋に飾る前に日記でお披露目してしまいました。水瀬さん、本当にありがとうッvv

というところで、改めましてバカンスな二人です。コテージの中がよく判んなかったので思わず検索してしまいました(笑)露天風呂なんてアメストリスにあるとは思えないけど、まあその辺は気分で(苦笑)まだまだのんびり続きますv

あ、そうだ。明日更新のハボロイですが、ちょっと順番前後しますがリク85をお届けする予定です。というのもリクの内容が思いっきり夏なので、今書かないと冬に順番回ってきたりしたら書けないんで←季節に物凄く左右されるヤツ(苦笑)それに内容的に読み切りか前後編くらいの長さでいけそうなのでこちらを先にさせて頂こうと思います。お楽しみ頂けたら嬉しいです〜。

以下、拍手お返事です。

いつも楽しく通わせて貰ってます。 の方

ありがとうございます!うふふ、「ハボックちゃ〜ぁんw」言って頂いてますか?嬉しいですーvまだまだまったり続きますが、引き続き言って頂けると嬉しいですv
2012年08月31日(金)   No.241 (カプなし)

新・暗獣17
 のんびりとボートを楽しんだ後、二人は岸辺へと帰ってくる。不貞腐れたようにボートの縁に掴まるハボックにロイが言った。
「降りるぞ、ハボック」
 ロイの声にハボックはチラリとロイを見たが、すぐにフイと顔を背ける。そんなハボックにロイは苦笑して立ち上がるとハボックを抱え上げてボートを降りた。
「仕方ないだろう?あのままじゃ岸に着くまでに日が暮れてしまう」
 ボートに揺られてのんびりと過ごした後、岸に帰ろうとすればどうしても漕ぐと言い張るハボックに暫くは任せていたロイだったが、流石に湖を吹き抜ける風が冷たくなってきたのを感じて、ハボックからオールを取り返して自分で漕いで帰ってきてしまった。
「また今度やらせてやるから」
 そう言うロイをハボックは恨めしげに見ると、ロイの腕からピョンと飛び降りてしまう。駆け出したハボックのズボンとシャツの間からポンと尻尾が飛び出すのを見て、ロイは目を瞠った。
「ハボック!」
 ロイがキツい声で名を呼べばハボックが足を止める。尻尾の上辺りで手を組んで俯いたハボックがチラリと寄越した視線が涙に滲んでいるのを見て、ロイはため息をついた。
「いいところに連れて行ってやるから機嫌直せ」
 そう言って手を伸ばせば飛びついてきたハボックをロイは抱き上げる。ふさふさの尻尾をポンポンと叩いて空色の瞳をじっと見つめれば、ハボックの残念そうなため息と共に尻尾が消えた。
 湖沿いの道をロイはゆっくりとハボックを抱いて歩いていく。途中湖に向かうように枝分かれした階段を下れば、そこは小さな浜辺になっていた。
「案内所で聞いたんだ。どうだ、いいところだろう?」
 ロイがそう言うのにハボックは答える代わりに腕から飛び降り水際に駆けていく。チャプチャプと打ち寄せる波を追い、波から逃げてハボックがロイを見た。
「ろーい!」
 嬉しそうに笑うハボックにロイも笑みを浮かべる。波にギリギリ濡れないところでしゃがみ込んだハボックが、なにやら拾ってロイのところに戻ってきた。
「ろーい」
 そう言いながらハボックが差し出してきたものをロイは手を出して受け取る。手のひらに置かれたのは小さな石の欠片だった。
「綺麗だな」
 ロイはそれを指先で摘んで空に翳す。そうすれば縁が淡く光を孕んで虹色に輝いた。
「大事に持って帰って宝箱に入れないとな」
 そう言ってロイが返そうとしたが、ハボックは返そうとした手ごとロイの方に押しやる。
「くれるのか?」
 と尋ねれば、ハボックがロイにギュッとしがみついた。
「……ろーい」
「判ってるよ、ハボック」
 さっきはごめんなさいと言うように顔をこすりつけるハボックの金髪を、ロイはくしゃりと掻き混ぜる。そんなロイを見上げてくる空色にロイは言った。
「もっと探そうか。宝箱に入れる分も見つけないとだろう?」
「ろーいっ」
 その言葉にハボックが嬉しそうにロイの手を引っ張る。小さな波が打ち寄せる浜辺でしゃがみ込んだ二人は、辺りがオレンジ色に染まるまで綺麗な石や貝殻を探して遊んだ。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、嬉しいですv

昨日は更新日でしたのに、結局更新出来ず日記も書けずで申し訳ありませんでしたー(汗)実家にいる間、多少ポメラも弄ってたんですがやっぱり思ったようには書けませんでしたよ、日記優先しちゃったせいもありますが(苦)とりあえず昨日実家から戻って、今日から通常運転です。土曜日はちゃんと更新したいな〜。頑張ろうー。

そんなわけで「暗獣」です。ちょっぴりご機嫌斜めなハボック(笑)たまにはこんなのもいいかな、と。

以下、拍手お返事です。

なおさま

和んでくださってありがとうございますvボート、やっぱり難しいですよね!なおさまのコメント読んで、思わずなかなか帰ってこられなかった事にしてしまいました、へへへ(笑)
2012年08月29日(水)   No.240 (カプなし)

新・暗獣16
「さあ、着いたぞ」
 汽車を降りて改札を抜けたところでロイが言えば、ロイの手をしっかりと握り締めたハボックが物珍しそうに辺りを見回す。ロイが歩き出すのに引っ張られるように歩き出したハボックは、少し走ってロイに並んだ。くっついて歩くハボックをロイはチラリと見下ろしたが何も言わずに駅前の観光案内所に入る。カウンターに近づくと中の女性に湖の(ほとり)のコテージを借りたいと告げた。
「お子さんとバカンスですか?」
「ああ、そんなところかな」
 用紙に書き込みながら言う女性に曖昧に頷いてロイはハボックの髪をくしゃりと掻き混ぜる。レンタカーの手続きもしてコテージと車の鍵を受け取ると、ロイはハボックの手を引いて外に出た。
「コテージに行く前に食料品やら必要なものを買っていこう」
 ロイがそう言えばハボックがコクンと頷く。案内所で聞いてきた食料品店に寄り、ロイは一週間分の食料やらなにやらを買い込んでレンタカーのトランクに載せた。
「よし、出発だ」
 ロイがそう言って開いた助手席にハボックが乗り込む。ロイは扉を閉めると運転席側に回り車に乗り込んだ。
「行くぞ」
 短く告げた言葉に続いてロイがアクセルを踏み込めば車がゆっくりと走り出す。軽くシートに押し付けられる感触にハボックが軽く目を見張った。
 駅前の賑やかな通りを抜けるとそこはもう田舎の風景だ。林の中の道からは時折木々の間から湖の煌めきが見えて、ハボックは窓に貼りついて外を見た。二十分程も走ると車はコテージが点在する地区へと出る。ロイは番号表示を確認して目的の場所へと向かった。
「着いたぞ」
 クンと軽い揺れと同時に車が停まる。ロイが運転席側のドアを開ければ待ちきれないハボックがロイの後について車を降りてきた。
「ろーいっ」
「待て、ハボック。まずは荷物を運び込んでからだ」
 すぐにも飛び出していきそうなハボックにロイが苦笑して言う。ロイはトランクから荷物を取り出すとコテージの玄関先に荷物を運び、玄関の鍵を開けた。
「ふうん、結構いいじゃないか」
 ロイは梁が剥き出しになった天井を見上げて呟く。買ってきた物を運び込むロイの側をハボックが落ち着かなげにチョロチョロと走り回った。
「ろーい〜っ」
「はいはい、待たせたな。行こうか」
 待ちきれずに足踏みして呼ぶハボックにロイが笑う。玄関で待ち構えていたハボックはロイの言葉を聞くと同時に外に飛び出した。
「あんまり急ぐと転ぶぞ」
 パタパタと前を走っていくハボックにロイはゆっくりと歩きながら声をかける。すぐに林は途切れて二人は湖の畔に出た。
「  」
 足を止めたハボックが目を大きく見開いて湖を見つめる。追いついたロイがその金髪をポンポンと叩けば、空色の瞳がロイを見上げた。
「向こうにボートがある。乗りにいこう」
 そう言って歩き出すロイの手を握ってハボックも歩き始める。その目が湖から片時も離れないのを見て、ロイはクスリと笑った。
 ボート乗り場で手漕ぎのボートを借りる。ロイに抱かれてボートに乗り込んだハボックは、中に下ろされると恐々縁に掴まって湖の中を覗き込んだ。ロイはボートの中程に腰を下ろしてオールを握る。ゆっくりと岸を離れてボートは湖へと漕ぎ出した。
 ハボックは小さな手を湖に浸してみる。思いがけない冷たさに驚いたように引っ込めた手をもう一度湖に浸して、ハボックが嬉しそうに笑った。
「ろーいっ」
「ん?冷たいか?」
 ロイはゆっくりとオールを動かしながら尋ねる。それに答えるように頷いて、ハボックはパチャパチャと湖の水を跳ね上げた。
「ろーい!」
 キラキラと水が太陽の光を反射して舞い落ちる。ハボックは楽しそうに何度も水を跳ね上げたり手を浸したりした。それからボートを漕ぐロイの手を握って伺うようにロイを見る。それにロイはニコリと笑って答えた。
「やってみるか?」
「ろーいっ」
 聞かれてハボックは顔を輝かせて頷く。ロイは脚の間にハボックを座らせ、一緒にオールを握らせた。
「こうやって水に入れてグッと漕ぐ。やってみるぞ」
 ロイはそう言ってハボックが握ったオールをゆっくりと動かす。二回、三回オールを漕いでボートを進めればハボックがロイを見上げた。
「ろーいっ」
「ん?一人でやってみるか?」
 そう言えばコクコクと頷くハボックに笑ってロイはオールから手を離す。ハボックは真剣な面持ちでオールを握り直すと、オールをグイと引いた。だが、深く差しすぎたオールは水の重みでビクともしない。うーん、うーんと顔を紅くして力を込めるハボックにロイはクスクスと笑った。
「深く入れすぎだ、ハボック。もう少し浅く入れてごらん」
 ロイはそう言いながらオールの角度を調整してやる。改めてオールを握ったハボックが水をかけば、今度は湖の表面をかいたオールがパシャンと高く水を跳ね上げた。
「うわっ」
 冷たい水が二人に降り注いでロイが声を上げる。湖の水に頭を濡らされて、ハボックはぷうと頬を膨らませた。
「ろーい〜っ」
「ははは、じゃあ二人で手分けするか?」
 むくれるハボックにロイは提案してみる。一本ずつオールを握ってせーので一緒にオールを動かした。だが。
 微妙に力加減が違えばボートは真っ直ぐに進まず右へ右へと曲がってしまう。一生懸命になればなるほど曲がっていくボートにロイが耐えきれずにゲラゲラと笑い出せば、ハボックがプウと膨れてロイに飛びついた。
「ろーいっ!」
「あはは、悪かった、怒るな」
 笑いながらロイは言ってハボックを受け止める。そのまま背後に倒れ込んだロイは、頭上に広がる空を見上げて目を細めた。
「ハボック、空が綺麗だ」
 ロイがそう言うのを聞いて、ハボックはロイの上で仰向けになる。己の瞳と同じ色の空を見上げて、ハボックは笑みを浮かべた。
「ろーい」
「ああ、気持ちいいな」
 湖面を吹き抜ける風にそっと目を閉じて、ロイとハボックはのんびりとボートに揺られていたのだった。


いつも遊びにきて下さってありがとうございます。拍手、励みになってます、嬉しいですv

「暗獣」です。やっと目的地に着きました〜。しかし、この調子で書いてたらなかなか終わらない気がする…(汗)まあ、まったりバカンスって事でお付き合い下さい(苦笑)

以下、拍手お返事です。

JOEさま

ふふふ、キラキラした目のハボック、想像して頂けてますか?どんなハボック描かれたのか興味津々ですv

おぎわらはぎりさま

おお、いい男鑑賞でお疲れはとれましたか?(笑)お宝写真ゲット、おめでとうございますv髭、先回り!それ、粘着質凄いです(笑)それこそ職権乱用で行き先捜し当ててる感じですね(苦笑)ハボック、虫は苦手な気がします。少なくとも可愛いとは思わないだろうしなぁ(笑)本当にいつまでも暑くて嫌になりますね(苦)
2012年08月27日(月)   No.239 (カプなし)

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