カプなし

=ハボロイ  =ロイハボ
=カプ色あり  =カプなし

2013年02月14日(木)
正直者は救われる
2013年02月12日(火)
獣3
2013年02月06日(水)
獣2
2013年02月01日(金)

2013年01月24日(木)
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2013年01月14日(月)
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2012年12月20日(木)
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正直者は救われる
「ねぇ、大佐。オレからチョコレート欲しいっスか?」
「――は?」
 突然そんな事を聞かれて、私は書類を受け取ろうと手を差し出した姿勢のまま固まる。数度瞬いて、ハボックに尋ねた。
「チョコがなんだって?」
 ハボックが言っているチョコレートというのは恐らくバレンタインデーのチョコレートの事だろう。何故なら一週間後の今日が丁度バレンタインデーだからだ。とは言え、そんな事を聞かれる理由は全く判らず、私は困ったように首を傾げた。
「だから、オレからチョコレートが欲しいかって聞いてるんです」
 ハボックは初めに口にした言葉を繰り返す。私は差し出した手を下ろすのも忘れて考えた。
 正直なところを言えば私はハボックからのチョコレートが欲しい。何故ならこのちょっと不遜なところがあるこの部下に、私は部下に対する好意以上のものを抱いているからだ。有り体に言えば私はハボックが好きだ、女性に対する恋愛感情と同じ気持ちを抱いている。ハボックが私にバレンタインチョコレートをくれると言うなら喜んで貰うだろう。だが。
「突然何を言い出すんだ」
 いきなりハボックがそんな事を聞いてきた理由が判らない。探るように尋ねればハボックがもう一度同じ質問を繰り返した。
「だから、オレからチョコレート欲しいっスか?」
「欲しいと言ったらくれるのか?」
 正直に答えて呆れられたり気持ち悪がられたりしたら、私の繊細な心臓は耐えられない。なによりハボックと気まずくなる事を考えたらチョコレートが欲しいなどと言わずに済ませた方が良いように思えた。
「質問に質問で答えないで下さいよ」
 ハボックは苛立たしげに言って私を見つめる。何より惹かれた空色に見つめられて、私はどぎまぎしながら引きつった笑みを浮かべた。
「オレからチョコレート欲しいっスか?」
 ハボックは四度(よたび)同じ質問を繰り返す。正直に欲しいと言うべきか、それとも笑って誤魔化すか。どちらにするか決め倦ねている私の耳にハボックの声が聞こえた。
「ブブーッ!時間切れっス」
「え?」
 思いがけない言葉に私は目を丸くする。
「おい、ちょっと待て、答えないとは言ってな――――」
 慌てて言う私にハボックは急かすように言った。
「サイン、早く下さい。急ぎの書類なんです」
「え?あ、ああ」
 言われて私は慌てて書類にサインを認める。そうすればハボックが引ったくるように私の手元から書類を奪った。
「ありがとうございました、それじゃあ」
 ハボックはそれだけ言って執務室を出て行ってしまう。私はハボックが出て行ったまま開け放たれた扉を呆然として見つめた。

「大佐、顔にチョコレート欲しいって書いてありますぜ」
 不意にそう言う声が聞こえて、私はハッとして声がした方を見る。そうすればブレダ少尉が扉に凭れるようにして立っていた。
「聞いてたのか?」
 悪趣味だなと眉を顰めれば少尉が苦笑する。
「ドア、全開でしたからね。聞きたくなくても聞こえますよ」
 言われてみればハボックが入ってきた時から開けっ放しだったようだ。やれやれと背もたれに体を預けて、私はこの見かけによらず聡い部下を見上げて言った。
「どういう意味だと思う?」
 どうやらブレダ少尉には私の気持ちがバレているらしい。それなら貰える意見は貰った方が利口だ。そう思って尋ねれば、少尉はうーんと首を捻った。
「アイツ、普段は凄く判りやすいんですけど、こういう特はさっぱりなんですよねぇ」
 幼い時からハボックを知る男は困ったように言う。少し考えたブレダ少尉は私を見つめて言った。
「正直に欲しいって言ったらどうです?」
「言って、あれは深い意味はないと言われたらどうするんだ。“マジっスかぁ?大佐”とか言われたら立ち直れんぞ」
「見かけによらず繊細ですね」
 不敬罪に問えない事もない事を平気で口にする辺り流石ハボックの友人だ。普通の人間なら竦み上がるような視線で睨んだが、ブレダ少尉はまるで気にした風もなかった。
「俺が言うのもなんですけど、正直が一番だと思いますよ」
 少尉はそれだけ言うと行ってしまう。
「正直ね……」
 長年こんな生活をしていたお陰で、正直になるにはどうすればいいのか忘れてしまった。私は深いため息をつくと窓の外の青空を見上げた。

 正直になる方法を忘れてしまったからと言って正直になりたくない訳じゃない。なによりハボックの言葉の真意が気になって気になって、私は仕事が手に着かなくなってしまった。
「大佐、こちらの書類は今日までにとお願いしたはずですが」
「あー……そうだったかな」
 ははは、と笑って頭を掻く私を鳶色の瞳が冷たく見下ろす。私は冷や汗を掻きながら書類に手を伸ばすと捲りながら言った。
「明日君が来るまでに君の机に置いておくよ」
「――――よろしくお願いします」
 なんとかそれで手をうってくれたらしい。中尉はファイルを閉じると執務室から出て行った。その背中を見送った私は手にした書類を机に置く。さっさと取りかからなければならないのは判っていたが、私の頭の中はハボックが言った言葉で一杯だった。
『オレからチョコレート欲しいですか?』
 あれから何度もあの言葉の意味を考えたがどうしても判らなかった。仕方がないから何度も直接聞こうと思ったが、結局聞けずに今日まで来てしまった。そして今日はバレンタインデーだ。果たしてハボックは誰かにチョコレートをあげたのだろうか。それともどこかの可愛い女の子からチョコレートを貰ったろうか。
『オレからチョコレート欲しいですか?』
 もしも正直に「欲しい」と言ったなら。
「くそっ」
 堂々巡りの考えはなんと非生産的なのだろう。乱暴に椅子に背を預け書類が乗った机の上に脚を投げ出した時、ノックの音がしてブレダ少尉が入ってきた。
「中尉に見つかったら撃たれますぜ」
 そう言いながら差し出された書類を引ったくり、宙でサインを認める。皺の寄った書類を突き返せば少尉が呆れたように私を見た。
「まだ悩んでるんですか?」
「煩いな」
「素直じゃないっスね」
「悪かったな」
 ムスッとして睨めばブレダ少尉が苦笑する。書類の皺を伸ばしながら少尉は私を見ずに言った。
「もし俺がハボックにチョコレートくれって言ったらくれると思います?」
 突然そんな事を言い出す少尉を私は驚いて見上げる。
「結構くれそうな気もするんですけどね」
「――おい」
 強ちないとは言い切れず私は少尉を睨んだ。
「小隊の連中にも聞いてみろって言ってみますかね、チョコレートくれって」
「――君は私以上に性格がひねくれているな。知らなかったよ」
「長年大佐の部下やってますからね」
 そう言う部下を私は思い切り睨みつける。そうすれば少尉が苦笑して言った。
「いい言葉教えてあげましょうか?」
「聞いてやる」
「正直者は救われる」
「馬鹿を見るんじゃないのか?」
「見ませんよ。正直者の頭には神様が宿るともいうじゃないですか。神様が正直者を救わない筈はないんですから」
 少尉の口から出てきた言葉に私は軽く目を瞠る。それからクッと笑って少尉を見た。
「なるほど」
 そうしてゆっくりと立ち上がる。明朝までの書類はまだ手付かずだったが徹夜でやれば何とかなるだろう。なにより私は救われたかった。
「どんな形になるにせよ、とりあえず救われてくるよ」
「ご武運を」
 お節介な部下はそう言って敬礼を寄越す。私は書類とブレダ少尉を残してハボックを探しに部屋を出た。

 あちこち探して最後に屋上に上れば、手摺りに凭れて煙草をふかすハボックの姿があった。沈みゆく夕日に金髪を色濃く染めて空に上っていく煙を見送るハボックの隣に並ぶ。そうすればハボックが顔を動かさず視線だけ投げて寄越した。
「この間答え損ねた質問の返事だがな」
「時間切れだって言いませんでしたっけ?」
 私に終いまで言わせずハボックが口を挟む。そんな風に言うのを聞けば、どうしてあの言葉の意味が判らなかったのだろうと可笑しくて堪らない。私に負けず劣らず素直でない男にクスクスと笑えばハボックがムッとして私を睨む気配を感じた。
「お前のチョコレートが欲しいんだが。くれたら一割増しで返してやる」
「――――なんスか、一割増しって」
 私の言葉にハボックが訝しげに言う。私はニヤリと笑ってハボックを見ると言った。
「私の方がお前の事を好きだからな」
「――――なにソレ」
 きっぱりとそうつげればハボックが顔を赤らめる。プイと顔を背けたハボックの耳朶が真っ赤に染まっているのを見ながら言った。
「で?時間切れだからくれないのか?」
「まだ時間切れじゃないっしょ?」
 まだバレンタインデーなんだからとハボックは呟くように言う。それから上着の内ポケットに手を突っ込んで中から小さな包みを取り出した。
「オレからチョコレート欲しいっスか?」
「ああ、勿論」
 私がそう答えて手を差し出せばチョコレートの包みが置かれる。
「よかった、アンタが貰ってくれなきゃ自分で食わなきゃいけないとこでしたよ」
「他のヤツにやろうとは思わなかったのか?」
「なんでアンタ以外の奴なんかに」
 私の言葉にハボックが鼻に皺を寄せた。その子供っぽい表情にクスリと笑って私はハボックを引き寄せる。
「大佐?」
「チョコの返事だ」
 私はそう囁いてハボックに口づける。チュッと合わせた唇を離すとハボックが言った。
「普通返事はホワイトデーにくれるんじゃねぇ?」
「これは余分の割増分」
 だからいいんだと言えばハボックがクスクスと笑う。
「好きっス、大佐」
「ああ、私もお前が好きだよ、ハボック」
 鼻先をくっつけて囁きあうと、私たちは何度も口づけた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、やる気貰ってます、嬉しいですvv

バレンタインデーですね。もー、いい加減ネタがない(苦笑)一体何度目のバレンタイン?何度告れば気が済むんだ、お前ら……な気分です(笑)とりあえず間に合ったからオッケってことで〜v

以下、拍手お返事です。

なおさま

「獣」ふふふ、ゴールデンハボック可愛いと言って下さって嬉しいですvそりゃあもう、ロイ、離れられませんって(笑)「セレスタ」いやあ、なおさまに発狂して頂けるよう、頑張りますよッ(笑)

おぎわらはぎりさま

うおう、ストーブ前が定位置v可愛いなぁvv愛あるイジメ、お待たせしてすみません(苦笑)とりあえず鬼畜メガネを近いうちにお届けできればと思いますv
2013年02月14日(木)   No.294 (カプなし)

獣3
 いつものようにラグの上でのんびりと寝そべっていればパタパタと軽い足音がする。嫌な予感に眉を顰めれば思った通り頭上から声が降ってきた。
『ねぇ、大佐。オレもそこで寝かせてくれません?』
『嫌だ』
 ヤツのお願いに私は即答する。
『お前みたいなデカいのが来たら狭くなる』 
 顔も上げずに素っ気なく言えば「えーッ」と不満の声が聞こえた。
『そのラグ十分広いじゃないっスか。ちょっとそっち寄ってオレも入れてくださいよぅ』
『嫌だ。私は真ん中に寝たいんだ』
 ツンとそっぽを向いて私は答える。だが、ハボックは諦める事なく言った。
『オレもそこで寝たい。そのラグでもふもふあったまりたいっス』
 入れてとハボックが私の体を前脚でユサユサと揺さぶる。私は体を捻るとハボックの脚に噛みつこうとした。そうすれば慌てて脚を引っ込めるハボックに私はフンと鼻を鳴らす。恨めしげに見下ろしてくる空色を横目に見上げて言った。
『お前には自前の毛があるだろうが』
 ゴールデンレトリバーのハボックにはフサフサの長くていかにも暖かそうな毛が生えている。だが、グレイハウンドの私は短毛種だ。だからこの暖かいラグが不可欠なのだと言えばハボックが不満げに口を突き出した。
『毛が長くたってフカフカの寝床は欲しいっス。それに真ん中に寝ようが少し端に寄ろうが暖かさは変わんないっしょ?』
『あのな、私はお前が来る前からこのラグを使ってたんだ。新参者のお前にとやかく言われる筋合いはない』
 このラグは私のものだと宣言すると、私は目を閉じる。流石にもう諦めるだろうと思った私は、いきなり腹の下に押し込まれた鼻先で強引に体を押しやられた。
『おいっ』
『うお、柔らかッ』
 ハボックは私を押しやって出来た隙間に無理矢理大きな体を横たえる。嬉しそうに毛足の長いラグに鼻先をこすりつけるハボックを睨んで、私は言った。
『なに勝手に入ってきてるんだっ』
『いいじゃないっスか。仲良く寝ましょうよ』
『はあ?ふざけるなっ、とっとと出て――――』
 行けと言いかけて、私はフサフサの毛が近くにあると意外に暖かい事に気づく。気持ちよさそうに寝そべるハボックを暫く見おろしていたが、ハボックの体を脚でグイと少しだけ押しやった。
『大佐ァ?』
『狭い。もう少し向こうにいけ』
『オレの方が体が大きいのに』
『文句があるなら出ていって貰うぞ』
 そう言って睨めば、ハボックはブツブツ言いながらも一度体を起こし気持ち端に寄る。まだ多少不満はあったが近ければその分暖かく、だがその事は口には出さずにやれやれとため息をついてみせた。
『仕方ない、それで我慢してやる』
『ほんとっ?ありがとう、大佐!』
 わざとらしく言った言葉に素直に礼を返されて、私は反応に困って顔を背ける。だが、ハボックはそんな事にはまるで気づいていないように言った。
『ふふ、あったかいっスね』
 楽しげな声も聞こえぬふりで狸寝入りを決め込む。そうすればハボックは私の脚にフニッと肉球を押しつけてきた。
『あったかいなぁ』
 欠伸混じりにそう言ったと思うと、あっと言う間に眠りに落ちたハボックの寝息が聞こえてくる。私はハボックの肉球に自分のそれを押しつけると傍らの温もりを感じながら眠りに落ちていった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになりますv嬉しいです〜vv

ええと、今日の更新ですが、間に合いませんでしたー(汗)来客ありの三連休で今日も朝から用事があったもんで、ちょっとばかり無理でした。そんなわけでお休みですー、申し訳ない。

と言ったところで改めまして「獣」です。なんかワフワフづいている(苦笑)今日もネタは頂いたコメントから。ラグに横たわる二匹、美味しく頂きましたッvvこの後爆睡したロイは帰ってきたヒューズに起こされて散々からかわれると思われ(笑)二匹の間で寝たいなーと思いつつ、お楽しみ頂ければv

以下、拍手お返事です。

なおさま

「獣」グレイハウンド、いいでしょう?(笑)うお、60キロも出したツワモノがいるんですか?凄いなぁ。そうそう、決してジジ犬だからではありません(笑)ホークアイが飼い主!それいいなぁvちょっと考えてみようかな、うふふv「セレスタ」ええ、ブラッドレイと私がイキイキしてますよ!(笑)いーやーッ、もう、なおさまそれ言っちゃダメ!(笑)ってか、バレバレ?(笑)まだもう少しブラッドレイが生き生きする予定ですv

香深さま

うふふ、調子に乗って第三弾ですvそして今回もネタ頂きましたッ、いつもありがとうございますv(笑)もう、香深さまの妄想、美味しすぎて(笑)かまくらも書いているところです。今日はそっちにしようと思ってたのに、ラグで昼寝に負けました(苦笑)また何か妄想したら是非囁いて下さいねv
2013年02月12日(火)   No.293 (カプなし)

獣2
 いつものように毛足の長いラグの上でぬくぬくとしていれば、不意にハボックが喧しく吠える声がする。その声がやたらと興奮している時の声だと察すれば、私の眉間に深い皺が刻まれた。
『大佐っ大佐っ大佐っ』
 案の定少ししてハボックが物凄い勢いでリビングに駆け込んでくる。ハボックは私の周りをぐるぐると回りながら言った。
『空から白いフワフワしたものが降ってる!でもって一面真っ白っスよ!すっげぇ綺麗!!なんだろう、アレ』
 ハボックはぐるぐると周りながら一気にまくし立てる。不思議そうに小首を傾げるのを見て、私はラグに寝そべったまま言った。
『なんだ、お前。雪を知らんのか?』
『ゆき?』
 言えばハボックが空色の瞳をぱちくりとする。どうやら全く知らないらしい。私はふわぁと欠伸をしながら説明してやった。
『雨は知ってるだろう?簡単に言えば空の高い所で凍った雨が溶けずに降ってくるのが雪だ』
 詳しく説明したら色々あるが、コイツにはこれで十分だろう。私は持ち上げていた頭を下ろすと目を閉じたが、ハボックの不思議そうな声に閉じた目を開けた。
『これが雨の凍ったもの?こんなに白くてフワフワなのに』
 ハボックはそう言って前脚を窓の桟に乗せて外を覗く。フサフサの尻尾を振るハボックの背中からは外に出たいと訴えるオーラが滲み出ていて、私は慌ててハボックから顔を背けて目を瞑った。
『ねぇ、大佐』
『断る』
 呼びかけただけでピシリと断られてハボックが振り向く。
『まだ何も言ってないじゃないっスか』
『言うつもりじゃなかったのか?』
 言われてハボックは口を噤む。暫く私のことを見つめていたが、窓辺から離れて私の側にやって来た。
『ねぇ、外に行きましょうよ』
『嫌だ』
『雪ん中でもふもふしましょう。きっとフカフカで気持ちいいっスよ』
 そんな風に言うのを聞いて、私は呆れたようにハボックを見た。
『お前、さっき言ったのを聞いてなかったのか?雨が凍ったのが雪だと言ったろう?もふもふなどしたら寒くて凍えてしまうわ!』
『えーッ!あんなに柔らかくて気持ちよさそうなのにッ?』
 ハボックは残念そうに窓の外を見やる。少しして私を見て言った。
『冷たくてもいいや、一緒にもふもふしに行きましょう』
『一人で行け』
『そんな事言わずに、ねぇ、大佐』
 ハボックはそう言って私を起こそうとするように鼻面を私の腹の下に突っ込む。グイグイと腹の下をこすられる感触が擽ったくて、私はガバリと身を起こした。
『やめんかッ』
『はい、行きましょう、行きましょう』
 ハボックはそう言いながら体を使って私を部屋の外へと押し出す。廊下に出ただけでもヒヤリと冷たい空気に『寒い!』と叫べば、ハボックがやれやれとため息を零した。
『寒い寒いってジジ臭いっスね』
『なにっ?』
 聞き捨てならない言葉に私はジロリとハボックを睨む。何も言わず見返してくる空色に、私はフンと鼻を鳴らして玄関に向かった。
 外に出れば目の前は一面の銀世界だ。確かにハボックが騒ぎ立てるのも判る気がして雪景色を眺めていれば、ハボックがそろそろと雪の上に脚を下ろした。
『うおッ?』
 かなり積雪があったようで、ハボックの脚はズボズボと雪に埋もれてしまう。空色の瞳をまん丸にしていたハボックは、次の瞬間にぱぁと笑うと雪の中に飛び込んだ。
『すげぇ、フカフカだぁ!』
 そう叫びながらハボック雪の中を泳ぐように走り回る。見るからに寒そうな姿に呆れたため息をついた私の顔に、ビシャッと雪が飛んできた。
『ッ?!』
 ふるふると首を振って顔にかかった雪を跳ね退けて見れば、ニヤリと笑うハボックと目が合う。してやったりといったその表情に、私はムッと目を吊り上げて怒鳴った。
『よくもやったなッ!』
『ボケーッとして立ってるからっスよ』
『……言ってくれるじゃないか』
 その言葉に私の本能にカチリと音をたててスイッチが入った。
『私に喧嘩を売った事、後悔させてやるッ』
 そう怒鳴ると同時に雪の中に飛び込む。一瞬腹から脳天に冷気が突き抜けたが、雪の中追いつ追われつしなが庭を駆け回っていれば、寒さなどあっと言う間に気にならなくなった。そして。

「なぁ、もしかしてお前ら雪ん中で遊んだのか?」
 帰ってきたヒューズが足跡だらけの庭と雪塗れの私達を見て尋ねた。
『ヒューズさんっ、凄い面白かったんスよ!オレ、大佐に一杯雪かけちゃった!』
「おお、ハボック。楽しかったか、そうか、そうか」
 尻尾を振りながらヒューズを押し倒し、髭面をベロベロと舐めまくって訴えるハボックの頭を撫でながらヒューズが言う。
「お前も楽しかったか?ロイ」
 面白がるように私に問いかけるヒューズに、私はフンと鼻を鳴らすとすっかり冷え切ってしまった体をラグの上で暖めたのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても嬉しいですvテンション上がりまくりですvv

東京はまたもや雪です。でも、昼過ぎから雨になってきた事もあって、今回は積もらなそう。よかった〜v毎朝一時間、ウォーキングに行っているので、雪積もるとホント迷惑なんだもん(苦笑)

そんなわけで「獣」です。「妖」でも雪ネタを考えていたのでどっちにしようか迷ったのですが、結局こっちに。雪の中で駆け回る二匹ということで。
でもって、ロイの犬種、教えて下さった皆さま、ありがとうございますーvvネットで教えて頂いた犬の顔を見てきて「おお〜、こんな子vv」と一人はしゃいでました(笑)どの子もそれぞれに可愛くてどの子でも有り得そうで、ものすごーく悩んだのですが、グレイハウンドの黒い子がいいかなぁ……。“その速さは「閃光」、優雅さは「燕」、賢さは「ソロモン王」に例えられてきた犬で細身の筋肉質、無駄な肉がなくスピード感に溢れた犬種”なんだそうですよ。でね、「世界で最も足の速いカウチポテト」と呼ばれてるんですって!思わず「ロイじゃん!」って思っちゃった(笑)そんなわけでロイはグレイハウンドってことでv教えて下さった皆さま、本当にありがとうv

以下、拍手お返事です。

なおさま

うふふ、ゴールデンハボック飼いたいでしょ?(笑)犬ってなんか物凄く人間臭いところありますよね(苦笑)甲斐犬、おお、本当に虎模様!イケメン〜vでも、中型犬なんですね。うーん、やっぱりハボに負けない大きさが欲しいかなぁ……。「セレスタ」ふふふ、いつもいいところ突いて下さるなぁ、なおさまのコメントv読みながら私も思わずニヤついてしまいましたよ(笑)どうぞ続きをお楽しみにv

香深さま

えへへ、てしてし、楽しんで頂けて良かったですーv調子に乗ってまた書いてしまいました。尻尾もご了解頂いたので絶対書こうと思います(笑)今日は火鉢で2人inかまくらとどっちにしようかと迷ったんですよね。「獣」にしてしまいましたが「妖」の二人も好きなので結局書くと思います(苦笑)コメント頂くと本当に嬉しくて一つ一つ返さずにはいられません。鬱陶しいと思われるかなぁと思いつつ、だって嬉しいんだものv更新、きゅぅ〜としながら待って頂いていると思うと、「よっしゃ!」っていう気持ちになります。これからも頑張りますねv

わんこ話可愛かったですv の方

可愛かったですか?ありがとうございます〜v確かに大佐は猫のイメージの方が強いですよね。でも、ここはワンコ二匹で行きたかったので、敢えて犬で!(笑)狼犬の黒い子にも凄く心惹かれました!孤高なイメージがロイっぽいとも思ったのですが(汗)考えて下さってありがとうございますvまた何かありましたら是非教えて下さいねv

『獣』微笑ましくていいですねv の方

えへへ、微笑ましいなんて、なんかくすぐったいです、ありがとうございますv犬種も色々教えて下さってありがとうございます!結局悩みに悩んでグレイハウンドがいいかななんて思いましたvアイリッシュ・セターもよかったのですがやはり短毛種がよかったので…。また何かありましたら是非教えて下さいませv

おぎわらはぎりさま

シェルティー!小さい頃、近所で飼っているおうちがあって、いつも「可愛いなぁ」と眺めておりましたよ(笑)男性には噛みつくけど女性は噛まないって、いいなぁ、その子(笑)個人的には好きな子ですが、今回はやはり短毛種にこだわりがあったので……。また何かありましたらどうぞよろしくお願いしますv
2013年02月06日(水)   No.292 (カプなし)

 まだ窓越しの陽射しも弱い朝早い時分、少しでも温もりを得ようと毛足の長いラグの上に横たわっていれば、パタパタと足音がする。微かに爪が当たる音の混じるそれに眉間に皺を寄せれば、頭上から声がした。
『外に行きません?外』
 そう言われて片目を開けて見ると金色の毛並みのレトリバーが私を見下ろしている。フンと鼻を鳴らして目を閉じれば、ソイツは前脚を私の背に乗せてユサユサと揺すった。
『ねぇ、行きましょうよ。今日は寒いから霜柱がいっぱいできてるっスよ』
『霜柱ができる程寒い所にどうしてわざわざ出て行かねばならんのだ』
 冗談じゃないと顔を背ければソイツはガッカリとしたようにため息をつく。私の背に乗せていた足を下ろして言った。
『仕方ないっスね。アンタはオレより年寄りだから寒いとこは体に悪いっスもんね』
 一人で行ってきます、とため息混じりに出て行こうとするのに、私はガバッと起き上がって引き止める。振り向く空色に私は目を吊り上げて言った。
『誰が年寄りだッ!私は寒いのが苦手なだけだッ!』
『犬なのに?』
『私は繊細なんだッ』
 フンと鼻を鳴らして私はソイツの側をすり抜け玄関へと向かう。そうすれば『外行くの?行くの?』と、楽しそうにワフワフ言いながらソイツが纏わりついてきた。
 最近我が家に新参者がやって来た。何を思ってか人間(ヒューズ)が馬鹿デカいゴールデンレトリバーを連れてきたのだ。ハボックという名のソイツはやたら人懐こく、昼間は広い家に私一匹の気ままで優雅な生活は一変してしまったのだった。
『うっ』
 玄関を出た途端吹き付ける冷たい風に、私は思わず足を止める。だがハボックは私の横を走り抜けると、嬉しそうに冷たい空気を吸い込んだ。
『空気がキンとしてすっごい気持ちいいっスね!』
『クソ寒いだけだろう』
 尻尾を振って空を見上げるハボックにボソリと答えて私は一歩踏み出す。そうすれば腹の下を冷たい空気が通り抜けて、私は頭から尻尾へとぶるりと大きく震えた。
『あっ、ほら、霜柱っスよ、ロイ!』
 ハボックが庭の土を持ち上げている霜柱を見つけて言う。親しげに名を呼ばれて、私は思い切り眉間に皺を寄せた。
『私の事は大佐と呼べ』
『えーっ、ヒューズさんだってロイって呼ぶじゃん』
『私の名はロイ・マスタング大佐だ。大佐と呼べ、新参者の少尉め』
『ケチ』
 ブーブーと不満を言う鼻っ面に一発パンチを食らわせれば、ハボックが空色の瞳に涙を滲ませて私を見る。しょぼんと項垂れて私の側を離れたハボックは、だが足元でサクッと霜柱が音を立てると、顔を輝かせて私を見た。
『見て見て、大佐、霜柱っスよ!』
 ハボックはそう言うと前脚の肉球で霜柱をぺしぺしと叩く。そうすればハボックの肉球の下で霜柱がサクサクッと鳴った。
『おもしれぇ……、大佐っ、ほら、大佐もやってみて』
『嫌だ、肉球が冷たくなってしまう』
『そんな事言わずに、楽しいっスよ』
 ハボックはそう言いながら霜柱をてしてしと踏み潰す。そのたびハボックの肉球の下で霜柱が答えるように鳴った。
『楽しい〜っ』
 ハボックは空色の瞳をキラキラと輝かせて霜柱の上を歩く。その楽しげな様子を見ていれば、俄かに興味が湧いてきて私は肉球で霜柱を叩いてみた。
 てし。
 サク。
 てしてし。
 サクサク。
 …………面白い。
 てしてしてし。
 サクサクサク。
 てしサクてしサクてしサク。
 てしてしてしてし。
 サクサクサクサク。
 単純だが不思議と面白いそれに思わず我を忘れててしてししていれば、不意に背後から声が聞こえて私は持ち上げた脚をそのままに凍りついた。
「へぇ、珍しいな、ロイ。お前がそんな事するなんて」
 面白がるような声に上げた脚を下ろしゆっくりと振り向く。すると玄関の扉に寄りかかるようにしてヒューズが立っていた。
『あっ、ヒューズさんだ!ヒューズさん!』
 ヒューズがいることに気がついたハボックが、尻尾を千切れんばかりに振って駆け寄っていく。ワフワフと纏わりつくハボックの頭をガシガシと乱暴に撫でて、ヒューズは言った。
「おお、ハボック。お前はいつも懐こくて可愛いな」
『ヒューズさん、遊ぼっ』
 乱暴な可愛がり方にも、ハボックは嬉しそうに目を細めてヒューズに擦り寄る。そんな一人と一匹をジロリと睨めばヒューズが苦笑した。
「お前ももう少し愛想よくしろよ、ロイ」
『何故私が人間如きに愛想良くせねばならんのだ』
 私はイーッと牙を剥くと玄関に向かって歩き出す。途中、ヒューズの靴で汚れた肉球をゴシゴシと拭いた。
「俺はお前のそういうオレ様な所が好きだぜ?」
 そんな事を言うヒューズにフンと鼻を鳴らして私は家の中に戻る。背後ではハボックがヒューズに遊んで貰おうと、デカイ体で体当たりしていた。
 私はリビングに戻ってくるとラグの上に横たわる。まったく、朝からくだらない事をしてしまった。ハボックが来てからというもの、どうもペースを乱される事が多すぎる。少し反省しなければ。
 私はすっかり冷え切ってしまった肉球をラグの上で温めながら、ハボックのはしゃぎ声を耳にそっと目を閉じた。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手本当に嬉しいです。テンションあがります、ありがとうございますvv

完全に獣のロイとハボックです。拍手でそんな二人が気になるとコメント頂いたのですが、「肉球でてしてし。とかフワフワ毛並み。とか」って……もう頭がてしてしで一杯になっちゃいまして(苦笑)そんな訳でワンコな二人v ロイもこの話は猫でなくワンコです。ハボは毛並みもフワフワなゴールデンレトリバーなのですが、ロイの犬種は実はまだ決まってません。顔の尖った黒色短毛種でレトリバーと同じくらいの大型犬って……なに?(苦笑)それこそドーベルマン位しか浮かばない。どなたかこれはという犬種があれば教えてください(笑)ちなみに飼い主はヒューズ。自分が中佐なので飼い犬達に大佐だの少尉だのつけて楽しんでます。もっともロイは飼われてる気はないと思われ(笑)飼い主を中尉にする事も考えましたがそれだとロイが気ままに振る舞えないので(苦笑)そんな訳で「私が飼いたいよ」なワンコ達です。

以下、拍手お返事です。

なおさま

よかった、髭かぶってませんでしたか。どうも記憶力がなくて(苦笑)ふふふ、やはりハボは犬属性ですよね!続きも早めにお届けしますね。「久遠」好き勝手し放題のウルフです(笑)判って貰えず辛そうと思って頂けるなら話としては成功と言えるのかな(笑)そんなハボを楽しんで下さったら嬉しいですv

おぎわらはぎりさま

うふふ、髭でテンション上がって下さって嬉しいです。苛められるハボを楽しみにお待ちくださいませ(笑)

香深さま

頂いたコメントを読んでいたら妖の二人がかまくらの中で火鉢囲ってる姿が浮かんでしまいました(笑)一応日本の話じゃない筈なんですが、何故か和風なイメージですよね、何故かしら(笑)「初詣」ああ、そんなハボックも凄い可愛い!チラ見ハボック、想像すると顔がニヤけちゃいます(笑)はぼっく。になってくはぼっく…それが「新・暗獣」なのかなって思ってます。今回のシリーズではロイと一緒に色んな事見て、感じて欲しい。ロイにも一杯独占欲を発揮して欲しいです(笑)でもハボが出てきた経緯を考えれば独占欲なんて必要ないんですけどね(苦笑)一夜の夢は……ふふふ、お楽しみに!(笑)「セレスタ」は一杯心配して下さい。まだまだこれからなので!(笑)私も今日、本屋で背表紙のハボを眺めてきましたよ。うん、やっぱり大好き。何年経っても冷めないどころか益々好きになる気がします(笑)そして、獣化!てしてしにヤられて思わず書いてしまいました。いつも勝手にネタにしてしまってごめんなさい(汗)でも香深さまのコメントって物凄く私の萌えツボを刺激するんですもの!嬉しくてつい(苦笑)尻尾ネタも書きたいのだけどいいですか…?こちらこそ変わらず遊びにきて下さって本当にありがとうございます!今年もどうぞよろしくお願いしますv

『久遠の空』ハボ→ロイ←ウルフかと思いきや の方

うふふ、楽しんで下さってますか?嬉しいですーv この先も楽しんで頂けるよう頑張りますね!

紅さま

こんにちは、はじめまして!遊びに来てくださってありがとうございますv えへへ、ハボックに悶えて下さって嬉しいですーv デカいけど可愛いを目指しているので可愛いは最高の褒め言葉です、ありがとうございます!「初回衝撃」は私自身続きが書きたい話の一つなので、機会があればメロメロになるハボをお届け出来ればと思っています。これからも可愛いハボックを一杯書いていきますので、どうぞお付き合いの程よろしくお願いしますv
2013年02月01日(金)   No.291 (カプなし)

新・暗獣40
「ろーい」
 ロイが汚れ物を洗濯機に放り込んでいると、パタパタと軽い足音がしてハボックがやってくる。見上げてくる空色にロイは洗剤を入れながら言った。
「ちょっとためすぎてしまったからな。いい加減洗わないと乾く前に着るものがなくなってしまう」
「ろーい」
 そう言うロイにハボックは自分が着ている服を見下ろす。もぞもぞと服を脱ごうとするハボックをロイは慌てて止めた。
「いや、それはまだ着てて大丈夫だ」
 朝起きて着替えたばかりの服は特に汚れた所も見当たらない。止められてホッと息を吐いたハボックは、ゴオンゴオンと音を立てて回る洗濯機を見上げた。
「そろそろ書斎も何とかせんとだしなぁ」
 家事能力に関してはあまり褒められるような所がない男はそう呟く。その時ドンドンと玄関の扉を叩く音がして、ロイは顔をしかめた。
「誰だ?」
 正直この家に尋ねてくる人間など一人しか思い浮かばず、ロイはハボックをそのままに玄関に向かう。ガチャリと扉を開ければ案の定思った通りの髭面が立っていて、ロイはニヤリと笑った。
「やはりお前か」
「よお、ロイ。ハボックちゃんは?」
 ヒューズは挨拶もそこそこにロイを押しのけるようにして中に入る。洗濯機の音に引かれるようにして洗濯場に行けば、どこから引っ張り出してきたのか、踏み台の上で爪先立って洗濯機の中を覗き込むハボックがいた。
「ハボックちゃん!マースくんですよぉ」
 嬉々として近づいてくるヒューズをチラリと見やってハボックはすぐに視線を洗濯機に戻してしまう。「えーっ、なんでっ?」と騒ぐヒューズの後からやってきたロイは、ハボックの様子を見て言った。
「覗き込み過ぎて落ちるなよ、ハボック」
 ロイがハボックと一緒に暮らすようになった切欠は、まだ黒い毛糸玉だったハボックが洗濯機に落ちて石鹸かぶれで痒くてヒィヒィ泣いていたのを助けたことだ。気をつけろと言われてハボックは踏み台の上からロイに腕を伸ばした。
「ろーい」
「ううん、ハボックちゃんっ、どうしてマースくんじゃないのッ」
 自分の方が近くにいるのにもかかわらず見向きもしてくれない事に、ヒューズが体をくねらせて訴える。だがそんなヒューズには知らん顔でキュッとしがみついてくる小さな体に、ロイは優越感に浸りながらヒューズを見た。
「さて、ヒューズ。朝っぱらから人の家に押しかけてきたんだ。それ相応の働きはして貰うぞ」
「はあ?俺はハボックちゃんの顔を見にきただけで――――」
「ハボック、今日はこれから書斎の片付けをしようって言ってたんだよなぁ?」
「ろい」
 ロイに同意を求められて、首だけ捻って洗濯機を覗いていたハボックが振り向いて頷く。じっと空色の瞳で見つめられて、ヒューズはがっくりと肩を落とした。
「判ったよ、手伝えばいいんだろ、手伝えば。くそっ、今日は玄関で邪険にされなかったのはそういう魂胆があってか」
 また来たのかだの、帰れだの言われなかったのは端から手伝わせる気だったのだと遅ればせながらに気づいて、ヒューズは悔しそうに呻く。
「そう言うことだ」
 ロイは勝ち誇ったように言って洗濯機の蓋を閉めるとハボックを抱いたまま書斎に向かった。扉を開けて中に入れば後からついてきたヒューズがその惨状を見て呻く。
「どうやったらここまで散らかるんだ?」
「それが判ればこんなに散らかったりしない」
「そりゃまあそうだが、それにしたって」
 如何にもな事を言うロイの言葉に渋々ながら頷いたものの、やはりこの惨状は受け入れ難い。本の山の間の細い隙間を器用に抜けていくロイの後について行こうとしたヒューズの足元で、紙がクシャリと鳴った。
「おい、大事な資料なんだ、踏むなよ」
「だったら足元に落としておくなよ」
「落としたんじゃない、おいてあるんだ」
「ロイ」
 ヒューズはムッと顔をしかめて足を止める。それに構わず本棚に近寄るとハボックを下ろしてロイは言った。
「ヒューズ、床に落ちてる資料を集めて日付順に並べてくれ」
「やっぱり落としたんじゃねぇか」
 言葉尻を捉えてヒューズが言ったが、ロイは素知らぬ顔で棚の上の本を弄ろうとして降ってきた埃に顔をしかめた。
「くそッ」
「ザマァミロ」
 ロイはジロリとヒューズを睨むと何も言わずにはたきを手に取る。パタパタと埃を払っているとクイクイとシャツの裾を引っ張られて、ロイはハボックを見下ろした。
「ろーいっ」
 そうすればキラキラと目を輝かせたハボックと目が合う。どうやらはたきをかけたいのだと察して、ロイはハボックと棚の上とを見比べた。
「じゃあそこの下の方をかけてくれ」
 ロイはハボックにも手が届きそうな所を指差して言う。だが、その途端口をへの字に曲げるハボックを見て、ロイはやれやれとため息をついた。
「こっちをやりたいのか」
「ろーいっ」
 コクコクと頷くハボックにロイははたきを渡すと、ハボックに向こうを向かせ両脇の下に手を入れて持ち上げる。高く持ち上げられてハボックは喜び勇んではたきをかけ始めた。
 パタパタ。
 パタパタパタ。
「ろーい〜っ」
「上手いぞ、ハボック」
 パアッと顔を輝かせるハボックにロイが言う。ハボックは嬉しそうに笑うといつの間にか生やした尻尾をはたきに合わせて振りながら、パタパタとはたきをかけた。
「また時間のかかることを」
 ヒューズが苦笑して言ったがロイはフンと鼻を鳴らしただけだ。自分でやれば半分の時間ですむ事をハボックにやらせていれば、突然ヒューズが二人の前にズイと象の置物を突き出した。
「ハボックちゃんっ、これにもはたきかけて」
「ろーいっ」
 埃だらけの象を見て、ハボックが喜んではたきをかけ始める。顔をしかめてヒューズを睨んだロイが言った。
「お前、そんな物どこから」
「あっちの棚の上」
「余計な仕事を増やすなっ」
「余計なとはなんだよ。折角はたきかけるなら徹底的にやらんと。なぁ、ハボックちゃん」
「ろーいっ」
「だったら下に置いて――――」
「あっ、ハボックちゃんっ、ほら、下側にも埃が!」
 何も抱き上げたままやらなくてもとロイがハボックを下ろそうとすれば、ヒューズが象を高く掲げて下側の埃を示す。慌てて下側をはたいて埃を落とすハボックを見て、ロイが言った。
「ヒューズ、お前な」
「おお、ハボックちゃん、こっちの埃もはたかなくちゃ!」
「ろーいっ!」
 ヒューズの言葉にハボックがキッとロイを見てあっちだと言うように指差す。慌ててロイが本の山の間をすり抜けて別の棚に近づけばハボックが徐にパタパタとはたきを振るった。
「ハボックちゃん、あっちにも!」
「ろいっ」
「ハボックちゃん、そっちだ」
「ろーいっ」
 パタパタ。
 パタパタパタ。
「おい、二人ともいい加減に」
 しろ、と言いかけてロイは、ハボックにキッと睨まれて口を噤む。
 結局、面白がってあちこち指差すヒューズにハボックがパタパタと夢中ではたきをかけるのに、その後三時間も付き合わされたロイは、書斎の片付けを断念したのだった。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、本当に励みです、嬉しいですーvv

日記ではお久しぶりです〜。今月は本当に日記書けなくてすみませんorz 書きたいネタがない訳じゃないんだけどなぁ……。

でもってお久しぶりの日記は「暗獣」です。「抱っこではたき」はМさんとおしゃべりしてる時にvいつもネタをありがとう!置物の象は恐らくヒューズの土産と思われ(笑)

以下、拍手お返事です。

おぎわらはぎりさま

そうか、それが「萌え魂」ですね!ええと、実はもう間に合わんと思ったので書きあげてないんですよね〜(苦笑)でも読みたいと仰って下さったので季節外れになりますが書き上げたいと思いますー。暫しお待ち下さいませ。おお、400/10000!!おめでとうございますッ!!このご時世、流石おぎわらさまですね!!これでまたゆっくり遊びに来て頂けるのかな。ALL系(爆)は判りませんが頑張りますねv

阿修羅さま

お返事遅くなりました(汗)それではニアピン賞という事でリクお待ちしておりますvでも、キリリク頂いたのがまだ消化しきれていないので、とりかかるのはちょっと先になりそうですが、それで宜しければ……。あ、でも女体は書けませんので〜(苦笑)

菜ノ花さま

お久しぶりです!今年も頑張りますのでどうぞよろしくお願い致しますvえへへ、「暗獣」ほっこりして頂いてますか?いつもこんなまったりだけの話どうなんだろうと思いながら書いているので、そう言って頂けるととっても嬉しいですーvこの冬は本当に寒さが厳しいですね。菜ノ花さまもお体お気をつけてお過ごしくださいませv

なおさま

雪、見てるだけならいいんですけどねぇ。後が大変ですよ(苦笑)「暗獣」ふふふ、本当ハボックしっかりしてます(笑)笑って頂けて嬉しいv「久遠」あはは、確かに立ち位置としては兄ちゃんぽいかもしれませんね。ふたりワンコの戯れ!いつでも兄に圧し掛かられて潰れている弟ワンコが想像されます(苦笑)「セレスタ」タイトル、セクハラに変えた方がいいかも?(笑)ここのロイはどうにも感情的ですね。ふふふ、後で悔いるとよいよ、ロイ(笑)

いつも楽しく拝見させていただいてます の方

いつも遊びに来て下さってありがとうございます!楽しんで下さって嬉しいです〜vvこれからも少しでも楽しんで頂けるように張り切って書いていきますねvどうぞよろしくお願いしますv

ティワズキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! の方

わーい、嬉しいと言って頂けてとっても嬉しいですーv思い切りオリキャラなのに(笑)私もティワズはとても気に入って書いていたキャラなのでそう言って頂けると本当に幸せv若と一緒に頑張って貰おうと思いますので、どうぞ引き続きお楽しみくださいませv
2013年01月24日(木)   No.289 (カプなし)

新・暗獣39
「ハボック」
 ロイはソファーに座り込んでクリスマスプレゼントの手鏡をうっとりと見つめるハボックに声をかける。硝子玉やビーズで飾られた綺麗な手鏡から一時も目を離そうとしないハボックの様子にロイはやれやれと苦笑した。
 ハボックが手にしたそれは、去年のクリスマスの朝にハボックの枕元に置いてあったものだ。ロイがハボックが眠った後でこっそり置いておいたのだが、それを見つけた時のハボックの喜びようはロイが期待していた以上のものだった。まだ寝ていたロイを叩き起こし、手鏡を掲げて走り回り、ピョンピョンと跳ね回る、そのあまりのはしゃぎようにひっくり返って怪我をするのではないかと心配になった程だ。それでもサンタクロースからのプレゼントだと心から喜んでいるのを見れば、ロイもとても幸せな気持ちになってプレゼントしてよかったと思った。
 それ以来手鏡はハボックの一番のお気に入りで、始終手にして眺めている。今も話しかけたロイに見向きもせず手鏡ばかりながめているのを見ると、プレゼントしてよかったと思うと同時にちょっぴり淋しさも感じて、ロイはポリポリと頭を掻いた。
「やれやれ……」
 ロイは一つため息をつくとキッチンへと足を向ける。コーヒーを入れて戻ってきてもハボックはキラキラ輝く手鏡を見つめたままだった。
「ハボック」
 とロイはハボックにもう一度声をかけてみる。だがやはり振り向いてもくれないのを見れば、ロイはもしかしたらあの鏡にはなにか善くないものが憑いているのではと勘ぐりたくなってしまった。
「ハボック」
 ロイはコーヒーをテーブルに置くとハボックに近づく。小さな手からヒョイと手鏡を取り上げればハボックがビックリしてロイを見上げた。
「ろーい!」
「……特に怪しげなところはないか」
 ロイは表を見、裏を見てそう呟く。いきなり手鏡を取り上げられて、ハボックはピョンピョンと飛び跳ねてロイに手を伸ばした。
「ろーいっ、ろーいっ!」
 返してと言うようにハボックはロイの腕を引っ張って訴える。だがロイはもう一方の手に手鏡を持ち替えると、空いた手でハボックの頭を押さえた。
「ろーい〜〜ッ!」
 頭を押さえつけられて、ハボックは怒りで顔を真っ赤にする。ボカボカと両手でロイの腹を叩けば、流石にロイは痛そうに顔を歪めた。
「こら、痛いぞ、ハボック」
「ろーいッ!」
 見下ろしてくる黒曜石をハボックが目を吊り上げて睨む。ハボックのそんな表情は見たことがなくて、ロイはムッと眉をしかめて言った。
「やっぱりこの鏡は善くないもののようだな。私が預かっておこう」
 ロイはそう言うと手鏡を棚の上にしまってしまう。どうやっても手が届かない棚に大事な手鏡がしまわれてしまったのを見て、ハボックの目からポロポロと涙が零れた。
「ろーい〜っ」
 ボロボロと涙を零して泣きじゃくるハボックを見れば、ロイの心もチクリと痛む。暫くの間互いに何も言わずに立っていたが、えぐえぐと泣きじゃくったハボックはロイに背を向けるとテーブルに置いてあった数冊の本に手を伸ばした。小さな手でそれを掴むと床に放り投げる。大事な本が乱暴に投げつけられるのを見て、ロイは慌ててハボックの手を掴んだ。
「こらッ、なんてことするんだ!」
 そう声を張り上げればハボックが涙に濡れた空色の瞳でロイを睨む。
「ろいっ」
 口をへの字にして手にした本を押しつけてくるハボックに、ロイは目を見開いた。
「……私が本にのめり込むのと一緒か」
 ロイはハァとため息をつくとハボックの体を抱き上げる。棚に歩み寄ると手鏡を取り出しハボックに渡した。
「お前があんまりこれにばかり夢中になるからつい、な」
 手鏡にヤキモチなど自分でも情けないがどうやらそうなのだから仕方ない。情けなく眉を下げるロイを見たハボックは、ロイの腕から飛び降りると袖を引いた。
「ハボック?」
 なんだ?と尋ねるロイをハボックはソファーに連れて行く。トンと押してロイを座らせると、その膝によじ登った。
「ろーい」
「ハボック」
 ニコッと笑ってハボックはロイに手鏡を見せる。
「ろーい」
 甘えるように一緒に見ようと誘ってくるハボックにロイはハボックの髪をくしゃりと掻き混ぜた。
「そうだな、一緒に見れば淋しくないな」
「ろい」
「判った、本も一緒に読もうな」
 そう言えば嬉しそうに笑うハボックをロイはギュッと抱き締めると、手鏡のビーズや硝子玉を指差してああだこうだと話しながらのんびりと過ごした。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、更新の励みです!!

凄い雪なんですがッ!!

東京地方午後から雪が交じるかもなんて天気予報だったんですが、とんでもない!午前中から雪が降り出し、うちの方は既に15センチ以上積もってます。さっき一回雪かきに出たけど(あんまり積もると私の力ではスコップで持ち上げられなくなるんで)道路まで雪かきして振り向いたら既にうっすら雪が積もっているという……orz これで夜までにやまなかったら明日の朝は悲惨だよー。今日は成人式だけど、晴れ着のお嬢さん方はどうしたんだろう。もうお気の毒としか言いようがないですねぇ。今日のお昼は怠慢してピザのデリバリーをネットで注文してあったんですが、配達するんだろうかと電話してみたら最低でも一時間半以上は遅れるというのでキャンセルしました(苦笑)宅急便の車もノロノロ走ってたし、今日はあちこち大変そうです。皆さまもどうぞお気をつけてー。

と言ったところで「暗獣」です。鏡に嫉妬してどうする、ロイ!(苦笑)本当はもうちょっと違う話のつもりだったんですが、気がつけば大人気ないロイになってました(笑)あんまりハボックが鏡を愛で過ぎて中から鏡の精とか出てきたりして……(えっ?)

以下、拍手お返事です。

はたかぜさま

うーわーッ!読み返して下さってありがとうございます!恥ずかしい〜/// 昔の作品を読み返したいと思って頂けるのは本当に嬉しい事なのですが、その反面とっても恥ずかしくもあります(苦笑)恥ずかしい〜、でも嬉しい〜(どっちだ)しかし、細部も覚えていて下さって嬉しいですーv私は逆に花束渡すところだけは覚えてましたよ、と言うのも、書く切欠になったハガレンのカレンダーが未だにハボックの月のまま部屋にかかっているもんで(苦笑)ともあれハボロイも楽しんで下さって嬉しいですv次は「井筒」ですか?あああ、恥ずかしい〜///(苦笑)数ばっかりやたらあるサイトですが、今年も楽しんで下さったら嬉しいですv

なおさま

「111」うん、付き合い始めたら絶対ジャンはハボの言う事しかきかない気がします(笑)冷凍バナナ!久しく食べてませんが、あれ、口に入れて溶かしながら食べると何ともまったりして美味しいですよね!久しぶりに作ってみようかなぁ(笑)「セレスタ」ははは、堂々としたセクハラ!とんでもないな、ブラッドレイ(笑)まだまだハラハラドキドキして貰えるよう、頑張りますよvv

阿修羅さま

55万打ありがとうございます。おかげさまで何とか頑張っておりますvキリバン。狙ってもなかなかとれませんよねぇ、本当、なんでだろう(苦笑)ええと、今回もニアピンだったのでしょうか?ニアピン三回でキリバンってやつ、やります?(笑)
2013年01月14日(月)   No.288 (カプなし)

111
「ワンッ」
「ああ、メシの時間か」
 本を読んでいたロイは愛犬の声に本から顔を上げる。ロイが座る椅子の側に自分専用の餌入れをくわえてチョコンと座っているラブラドールの頭をわしわしと撫でて、ロイは椅子から立ち上がった。
「待ってろ、今出してやるからな」
 ロイは後をついてきた犬にそう言いながら戸棚から高級犬缶を取り出す。パカンと蓋を開けると犬が床に置いた餌入れに入れてやった。余程腹が減っていたのだろう、犬はロイの許可を待たずにジャンと名前が入った餌入れに鼻面を突っ込んではぐはぐと食べ始める。ロイは眉を寄せると餌入れから押し出すように犬の額を押した。
「待て、だろう?ジャン」
 だが、犬は首を振ってロイの手を振り払うと餌を食べ続けた。
「お前なぁ」
 言うことを聞かない愛犬にため息をついて、ロイは側に座り込む。淡く金色に輝く毛並みを撫でながらロイは言った。
「ハボックはちゃんと言うことを聞くぞ」
 そう言うロイをジャンはチラリと見る。それでも食べるのをやめずに全部腹に入れてしまうと満足そうに息を吐き出した。
「旨かったか?」
「ワン」
 尋ねればジャンは元気に答えてロイに体を擦り付ける。柔らかい毛並みを撫でて、ロイは笑みを浮かべた。
「ハボックは私の言うことは聞くがこんな風に触らせてはくれんな」
 密かに想いを寄せる部下の代わりに犬を飼い始めた。口に出来ない想いも犬を飼えば紛れるかもと思ったロイの考えに反して、犬に部下の名をつけ可愛がれば想いは一層募るばかりだ。ロイはハァとため息をついてジャンの毛に顔を埋めた。
「自分がこんなに女々しいとは思わなかったぞ」
 これまで随分色んな相手と付き合ってきたが、口説く事もままならず悶々と過ごすなどなかった。その上似ているからと犬を飼ってあまつさえ部下の名前をつけるなど、自分で自分が信じられない。ロイはジャンの背中に顎を乗せるようにして寄りかかりながら呟いた。
「せめて切欠があればなぁ……」
 普段上司と部下として接しているだけに、こんな話は切り出しにくい。いっそのこと酒の勢いでも借りて押し倒してしまった方が手っ取り早いのではないかとロイが思った時、ジャンがムクリと起き上がった。
「ジャン?」
 トコトコとリビングを出て行く背中にロイは呼びかける。少しして聞こえた鳴き声に玄関に行けば、ジャンがリードをくわえて待っていた。
「散歩か」
 尻尾を振りながら期待に満ちた目で見上げてくる犬に、ロイは笑みを浮かべる。ロイは寒くないようコートを着込みグルグルに巻きつけたマフラーに顔を埋めると、ジャンから受け取ったリードを首輪に繋げ外に出た。
「さむッ」
 途端に吹き付けた風にロイは首を竦める。それでも嬉しそうに飛び出すジャンに引かれるようにして歩き出した。
「寒いけどいい天気だな」
 ロイはそう言って空を見上げる。綺麗に晴れ渡った空を見上げれば好きな相手の瞳が思い浮かんで、ロイはマフラーの中にため息を零した。
 時に道端の草に顔を寄せ、時に枝から塀に飛び移る鳥を追いかけて、止まったり走ったりするジャンの後についてロイは歩いていく。その時、パッと顔を上げたジャンがいきなり走り出した。
「うわっ」
 咄嗟の事にロイは持っていたリードを離してしまう。ダーッと走ったジャンが角を曲がって行ってしまうのを見て、ロイは慌てて追いかけた。
「ジャンっ!おい、待たんか、ジャンッ!」
 ロイは大声で愛犬の名を呼びながら角を曲がる。そうすれば角を曲がったすぐ先に、片膝をついてジャンの頭を撫でるハボックの姿が目に飛び込んできた。
「ジャン!――――ッ、あっ」
「はい?……って、大佐?」
 名を呼ばれたと反射的に返事をしたハボックが驚いたようにロイを見る。まん丸に見開いて見つめてくる空色を見返して、ロイは引きつった笑みを浮かべた。
「あ……いや、犬の名前なんだ」
「えっ?」
 そう言われてハボックは驚いたように犬に視線を戻す。ブンブンと尻尾を振って見上げてくる犬を見て、それからロイを見てハボックは尋ねた。
「この犬、大佐のっスか?犬なんて飼ってたんだ」
「ああ、最近飼い始めたんだ」
 ロイはそう言いながら歩み寄るとリードを拾い上げる。身を起こして犬を捕まえてくれた礼を言おうとロイが口を開く前にハボックが言った。
「なんでジャンなんスか?」
「えっ?!」
 そう聞かれてロイはギクッと身を震わせる。恐る恐るハボックを見ればどこか照れたように目元を染めるハボックと目があった。
「それは」
 答える言葉を探してロイが口ごもればジャンがワンと一声鳴く。励ますようなその声にロイは視線を落としてギュッと手を握り締めた。
「ハボック、私は」
 そうしてハボックを真っ直ぐに見つめてロイは口を開く。見つめてくる空色に笑みを浮かべて、ロイはずっと伝えたかった言葉を口にした。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、とっても励みになってます、嬉しいですvvそして550000万打ありがとうございます!新年早々また一つ階段登れて嬉しいです。色々楽しいジャンルが増える中、変わらず遊びに来て下さるのには本当に感謝してもしきれません。どうぞこれからもお付き合い、よろしくお願いしますvv

と言いつつ、なんか全然日記書けずにすみません(汗)日記と更新とどっちを優先して書くかと思った時にやはり更新の方が優先順位上かしらと更新用の作文を先にしてました。とりあえず明日分の更新は何とかなりそうになったので、それじゃあ日記と(苦笑)そんなわけでお久しぶりの日記はワンワンワンの日でちょっとヘタレな大佐の話でした。多分両片想いだったんだと。今の関係を壊して次に進むのはなかなか難しいんだろうと思ったり。

以下、拍手お返事です。

なおさま

初夢、ロイハボではありませんでしたか〜。なかなか難しいですね(苦笑)りんご飴、凍らせて食べるのですか!おお、初めて聞きましたよ。最近はお祭りに行く機会もなかなかありませんが、今度やってみようかな(笑)寒い時にあったかいところで食べるアイスは美味しいですよね。でっかいアイスの箱にスプーン突っ込みながら「大佐、食べないの?」とか言ってるハボの姿が浮かびます(笑)「久遠」相変わらずシンデレラ人魚姫なハボックです(笑)あはは、ウルフとハボックが仲良しに!それはそれでロイはちゃっかり両手に花しそうな気もします(笑)

おぎわらはぎりさま

あけましておめでとうございますv今年も楽しんで頂けるよう頑張りますねv髭なら昼間でも色々といたしそうですよね、なにせ髭は鬼畜ですから!(爆)以前はしっかり年末年始ネタとかも書いてたんですが、すみません、最近すっかりサボり癖が(汗)実は豆騎士の新年ネタ、考えてはいたのですよ(笑)松の内も明けて今更だけど書いてもいいのかなぁ(苦笑)

550000打おめでとうございます♪ の方

うふふ、いつもありがとうございます!今年も頑張りますのでどうぞよろしくお願いしますねvまた次のおめでとうを言って頂けるのを励みに書いていこうと思いますv
2013年01月11日(金)   No.287 (カプなし)

初詣
「たーいーさーッ、ねぇ、初詣行きましょうよ」
 ハボックはベッドの上のブランケットの塊に向かってそう声をかける。ユサユサと手をかけて揺さぶれば中からくぐもった声が聞こえた。
「寒いから行きたくない」
「寒いのなんて外出た一瞬だけっスよ。コート着てマフラー巻いて手袋してりゃ大丈夫ですって。なんならホカロン貼り付けてあげますから」
 寒がりのロイの為に年末セールでホカロンを大量に買い込んでおいた。だが、幾らでも好きなだけ貼ってやると言ってもロイはブランケットから顔を出さなかった。
「ねぇ、大佐ってば。新年なんだから神様のご利益(りやく)をお願いしに行きましょうよ」
「私は無神論者だ。それにあんなに大量に人が押し寄せて願い事をしたら、神がいたとて全部は聞いてもらえるもんか」
 だから行かないとブランケットの中に潜り込んだままそう言うロイにハボックはため息をつく。幾ら言ってもロイから肯定の答えを引き出すのは無理そうだと判断して言った。
「判りました、いいっスよ、もう。中佐と行ってくるから」
 ため息に不満を乗せてそう言うとハボックはベッドに背を向けた。反応がなかったブランケットの塊が数拍後にガバッと起き上がる。その時にはもう殆ど寝室から出掛かっていたハボックにロイが怒鳴った。
「待て!ブレダでも中尉でも小隊の連中でもなくヒューズッ?なんでッ?!」
 どうしてセントラルにいるはずの男の名が出てくるんだと喚くロイにハボックは不愉快そうに唇を突き出した。
「別に大佐には関係ないっしょ!初詣行かない人はどうぞ寝ててください。オレは中佐にリンゴ飴買って貰うっスから」
「おいっ、待て!ハボック!」
 ロイが大声で呼び止めたがハボックは構わず出て行ってしまう。ベッドから飛び降りようとしたロイはブランケットに絡まってベッドから落ちてしまった。
「あいたッ!」
 悲鳴と共に大きな音を立てて床に落ちたロイは、一瞬ハボックが戻ってきてくれるのではと期待する。だが、寝室の扉は開かず、ロイは慌てて立ち上がるとパジャマを脱ぎ捨てた。
「くそッ、なんでヒューズのヤツっ!」
 最近ヒューズはイーストシティにやってくるたび何かとハボックにちょっかいを出してくる。ブレダや小隊の連中ならともかくヒューズとは絶対二人きりにさせたくなかった。
「ハボックもハボックだ!ヒューズと出かけるなんてなに考えてるんだッ!」
 急いでシャツに腕を通しボトムに足を突っ込む。ボトムを穿きながら歩き出そうとして足に絡まる布地にロイはひっくり返りそうになった。
「ああクソッ!ヒューズめッ!」
 脳裏に浮かぶヒューズのニヤつく顔に悪態をついて、ロイはコートを引っ掴むと寝室を飛び出す。階段を駆け下りて玄関に向かったロイは、玄関の壁に寄りかかって立つハボックの姿を見つけて目を丸くした。
「ハボック、お前出かけたんじゃなかったのか?」
「出かけてよかったんスか?」
 ロイの声に顔を上げたハボックが答える。勝ち誇ったようなその顔に、ロイはしてやられたとばかりにため息をついた。
「中佐がこっちに来てるのは本当っスよ。初詣に誘われたのも本当」
「なにっ?」
 いつの間にと目を吊り上げるロイにハボックが言う。
「でも、大佐が一緒に来てリンゴ飴買ってくれるって言うなら中佐とは行きません」
 にっこりと笑って言うハボックにロイは降参だと肩を竦めた。
「判った、リンゴ飴でも何でも買ってやる」
「ほんとっスか?だったらたこ焼きとじゃがバターと牛串焼き!あと焼きそばとイカ焼きも!」
「おい、目的は初詣だろう?神様のご利益をお願いしに行くんじゃないのか?」
「勿論お参りしてからっスよ」
 呆れたように言うロイにハボックが楽しそうに答える。ロイの腕に己の腕を絡めて言った。
「こうしたら寒さも感じないっしょ?さ、行きましょう!」
「まったくお前は」
 どうやら今年もハボックには敵わないらしい。
「リンゴ飴だったな。それとたこ焼きとじゃがバターと牛串焼き」
「焼きそばとイカ焼きもっスよ!」
「はいはい」
 ギュッと絡める腕に力を込めるハボックに笑いかけて、ロイはハボックを連れて初詣へと出かけていった。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手も嬉しいですvv

あけましておめでとうございます!今年もハボックやロイ共々どうぞよろしくお願い致します!
と言うところで今年も川崎大師に初詣に行ってきました〜。行くと必ず帰り道で酒まんじゅうとたこ焼きを食べてくるんですよ。他にもじゃがバターやらトウモロコシやらチヂミやら、旨そうでした。きっとハボックならモリモリ色んなもの食べそうだなぁと言うわけでこんな話。きっとロイを引っ張り回しながら食べまくってると思います(笑)

以下拍手お返事です。

セレスタの涙!!もどかしいです〜! の方

うふふ、そう思ってくださってとっても嬉しいですv今年こそロイにハボックを幸せにして欲しいものですが、どうなるものか…(コラ)今年もドキドキして貰えるように頑張りますのでよろしくお願いしますv

なおさま

ふふふ、口元緩んで頂けて嬉しいですー(笑)まだしけてないマッチ!(爆)まだまだ燃え盛って貰おうと思ってますよ(笑)初夢は如何でしたか?私はこんなに煩悩に塗れてると言うのに今年もオイシイ初夢は見られませんでしたよ、くそぅ!こんな私ではありますが、今年もどうぞよろしくお願いしますv
2013年01月03日(木)   No.286 (カプなし)

新・暗獣38
「ハボック」
 暖炉の前に座り込んだ尻の下に金色の尻尾を敷き込んでオルゴールの音色に耳を傾けていたハボックは、ロイの声に顔を上げる。黒の上質なスーツに身を包み、用意万端何処かへ出かけようという出で立ちのロイに、ハボックは目を見張って立ち上がった。
「ろーい」
 駆け寄ってきたハボックが、一人で何処かに出掛けるのか、自分は留守番かとムゥと唇の端を下げて見上げてくるのを見てロイは苦笑する。その金髪をくしゃりと掻き混ぜてロイは言った。
「心配するな、お前も一緒だよ」
 そう告げればハボックがホッと息を吐く。ロイは手にしていた紙袋をハボックに見せて言った。
「これに着替えたら出かけよう。今日はクリスマスイブだからな、お洒落して散歩に行けばきっと楽しいぞ」
「ろいっ」
 ロイの言葉にハボックが顔を輝かせて紙袋を覗き込む。小さな手を突っ込んで触れた布地をハボックは「んーっ」と引っ張り出した。袋から出てきた白いふわふわのセーターにハボックは目を見開く。物凄く柔らかいそれにハボックはすりすりと頬を擦り寄せた。
「ほら、着てごらん」
 ロイはハボックの前に跪くとハボックが着ているトレーナーを脱がせる。ハボックの手からセーターを受け取ると頭から被せてやった。腕を通し最後に襟元のリボンを結んでやる。リボンの先に真っ白の丸いボンボンがついているのを見て、ハボックが顔を輝かせた。
「ろーいっ」
「ふふ、気に入ったか?お前が好きそうだと思ったんだ」
 ロイは笑いながらそう言うと袋の中から黒のハーフパンツを取り出す。今着ている物と着せ替え、ルームシューズを脱がせるとブーツをはかせた。
「ろい」
ブーツの一番上の留め具の辺りについた共布のリボンを見下ろしてハボックが嬉しそうな声を上げる。クルンと一回りしたハボックが目を輝かせてロイを見上げた。
「ろーいッ」
 キュッとしがみついて喜びと感謝を示すハボックにロイが笑う。体を離して改めてハボックを見下ろしたロイは満足そうに頷いた。
「よかった、サイズもピッタリだな。喜んでくれて嬉しいよ、ハボック」
 可愛いものが大好きなハボックの為に、男の子が着られて尚且つ可愛いものを一生懸命選んできた。嬉しそうに真っ白なセーターを見下ろすハボックを見れば散々悩んで探した苦労が報われたようでホッと息を吐いたロイは、棚の時計を見て慌てて立ち上がった。
「いかん、これで満足してる場合じゃない。行くぞ、ハボック」
「ろーい」
 言ってハボックと一緒に玄関へと向かったロイがコートを着せてやろうとすると、ハボックが首を振って後ずさる。どうやらセーターがコートの下に隠れてしまうのが嫌なようで、両手を背後に回して嫌々と首を振るハボックにロイは眉を顰めた。
「ハボック、コートを着ないと寒いから」
「ろいっ」
 ロイの言葉にもハボックはツンと顔を背けてコートを着ようとしない。やれやれと肩を落としたロイは、ハボックをそのままに二階に上がるとTシャツを持って降りてきた。
「仕方ないな、せめて重ね着しておきなさい」
 ロイはため息混じりに言って一度ハボックのセーターを脱がせ、Tシャツを着せてから改めてセーターを着せる。空色のマフラーを首にしっかりと巻きつけ手袋を嵌めてやった。
「寒かったら我慢せずに言うんだぞ」
「ろい!」
 にっこりと満足そうに頷くハボックの頭を撫でて、ロイはコートを羽織りマフラーを巻き付ける。そうして、ハボックの手を取り玄関の扉を開けた。

 何日か前に出掛けた時と同じようにクリスマス一色の街はキラキラと輝いている。ただ前来たときと違うのは昨日降った雪で街が真っ白に雪化粧していることだった。
「ろーいっ」
 雪をブーツの足で踏みしめて、ハボックが顔を輝かせてロイの手を引っ張る。家々の前に飾られたサンタやトナカイの人形を覗き込み、雪を被ったツリーを見上げてハボックはピョンピョンと飛び跳ねた。
「気をつけないと滑るぞ」
 はしゃぎ回るハボックにロイが笑っていう。案の定何度も足を滑らせたハボックを繋いだ手で支えてやりながら、ロイはハボックの好きにさせていた。
「ろーいっ」
「判った、そんなに引っ張るな」
 急かすように引っ張るハボックに苦笑しながらロイはゆっくりと歩いていく。途中小さな教会から聞こえてきた歌声に、ハボックが驚いたように振り向いた。
「賛美歌だな。みんなで歌ってるんだよ」
 そう言うロイを見上げたハボックは小さな教会に視線を戻す。暫くの間賛美歌に耳を傾けていたが、歌が途切れたのを機会にまたゆっくりと歩き出した。

 先日歩いた商店が建ち並ぶ通りは今日は一層賑やかだ。クリスマスの雰囲気を味わいながら歩いていけば、前と同じにショーウィンドウを覗いて歩いていたハボックが途中、ガラスにベッタリと貼り付いて動かなくなってしまった。
「どうした、ハボック?」
 何があるのだろうとショーウィンドウを覗いたロイは、ハボックの視線が小さな手鏡に向いている事に気づく。硝子玉やビーズで飾り付けられたそれは、キラキラと輝いてとても綺麗だった。
(クリスマスプレゼントにするかな)
 目を輝かせているハボックの顔を見てロイは思う。その時シャンシャンと鳴る鐘の音に、漸くガラスから顔を離したハボックは大きなトナカイを連れたサンタクロースの姿を見て目をまん丸に見開いた。
「メリークリスマス!Ho!Ho!Ho!」
 陽気な笑い声を上げたサンタクロースが背負っていた袋を下ろすとお菓子が詰まったブーツを配り始める。
「貰っておいで」
 促すロイの言葉に頷いてサンタに駆け寄るハボックを見送って、ロイは素早く店に駆け込むと手鏡を買い求めた。そうしてハボックが帰ってくる前にさり気なく通りに戻る。
「ろーいっ」
「お、可愛いブーツだな」
「ろいっ」
 貰ったブーツを嬉しそうに掲げて見せるハボックに頷いて、ロイはハボックの手を引いて歩き出した。
「どうする?この間のスケートリンクに行くか?」
「ろい」
 尋ねれば頷くハボックに、ロイは大きなツリーがあるスケートリンクに足を向ける。滑って遊ぼうと思ったリンクは、だが丁度クリスマスのショーをやっているところだった。
「ろーいっ」
 白い衣装に身を包んだ雪の精や銀のドレスも美しい雪の女王、輝く甲冑をつけた冬将軍や赤い衣装のサンタクロース。リンクの上でクルクルと回ったり飛んだりする彼らの姿にハボックは顔を輝かせる。楽しい曲と共にショーを楽しんで、ハボックはうっとりとため息をついた。
「ろーい!」
「うん、楽しいショーだったな」
「ろいっ」
 ロイの言葉に頷いてハボックは雪の精を真似てクルクルと回る。パッとポーズを決めたハボックが次の瞬間クシャンとくしゃみをした。
「大分冷えてきたな」
 ロイは言ってハボックのマフラーを巻き直してやる。
「ケーキを買って帰ろう、ハボック」
「ろーいー」
 帰るという言葉に不服そうな顔をするハボックの頭をロイはポンポンと叩く。
「クリスマスケーキは凄く可愛いぞ、見てみたいだろう」
 片目を瞑ってそう言えばハボックが目を見開くのを見て、ロイはハボックの手を取った。
 路地を入った小さな洋菓子店にロイはハボックを連れて行く。お気に入りの洋菓子店のドアを開けながらロイが言った。
「好きなのを選んでいいぞ」
 そう言えばハボックが早速ショーケースを覗き込む。綺麗にデコレーションされたケーキの数々にハボックが目をまん丸にした。
「どれがいい?」
 そう聞かれても目移りしてしまうらしくハボックはなかなか決められない。それでも散々迷って二つまで絞り込んだハボックが、強請るようにロイを見上げた。
「ろーい?」
「勘弁してくれ」
 甘いものは好きだが、いくらなんでもホールケーキ二つを一人で食べるのはキツすぎる。眉を下げて言うロイにハボックは残念そうにため息をつくと、もう一度しげしげとケーキを見つめた。
「ろーい」
 悩みに悩んでハボックが指差したのはイチゴで囲んだ真ん中にチョコで出来た家や砂糖菓子のサンタが飾ってあるものだ。生クリームベースのそれは可愛らしいと同時に美味しそうで、ロイは頷くと店員に言った。
「これを頼む」
「ありがとうございます」
 にっこりと笑った店員がショーケースからケーキを取り出し箱に詰める。代金と引き換えにケーキを受け取って店を出ようとすれば、店員が呼び止める声がした。
「はい、これ。プレゼントよ」
 そう言って店員がハボックに差し出したのは飴細工のツリーだ。ハボックは嬉しそうに笑って受け取ると、飴細工を店の灯りに翳した。
「ありがとう、悪いね」
「いいえ。メリークリスマス」
 笑って言う店員に同じ言葉を返して、ロイは店を後にする。途中クリスマス用のチキンやサラダの詰め合わせを買うと、大分冷え込んできた通りを雪を踏みながら家に戻った。
「さあ、クリスマスパーティーするぞ」
 テーブルの上に買ってきたチキンやケーキを広げてロイが言う。とっておきのワインを開け、ハボックの為には綺麗なグラスに井戸の水を注いで二人はチンとグラスを合わせた。
「メリークリスマス!」
「ろーい!」
 言葉を交わしてグラスを飲み干すとにっこりと笑いあう。貰ったブーツや飴細工を嬉しそうに眺めるハボックを見ながらチキンやサラダを食べたロイは、最後に残ったケーキのロウソクに火をつけた。パチンと部屋の灯りを消せばロウソクの灯りが幻想的に浮かび上がる。ロウソクの焔を空色の瞳に映すハボックの頭をロイはそっと撫でた。
「ありがとう、ハボック。お前がいてくれてとても嬉しい」
 あの日古い屋敷に住みついていた黒い毛糸玉と出会わなかったら、今頃自分はどうしていたのだろう。
「ありがとう、ハボック」
 ハボックこそ自分に与えられた最高のプレゼントだとロイは思う。
「ろーい」
 撫でる手にハボックが嬉しそうに頬を擦り付けて笑うのを見れば、ロイの心にケーキの甘い香りと共に優しい焔が灯った。そうして。
 柔らかいクッションの寝床で白いセーターを抱き締めて眠るハボックの枕元にロイは手鏡の包みを置いてやる。翌朝、サンタが来たと大喜びするハボックの姿を思い描きながら、ロイは幸せな眠りについた。


いつも遊びに来て下さってありがとうございます。拍手、励みになってます、ありがとうございますvv

「暗獣」です。本当は昨日書きたかったんですが、もう三連休なんて書き物するなって言うようなもんですよ(苦)結局今日にずれこんでしまいました…。でもって同じ理由で更新もヤバいです。日記がやたら長くて時間かかってしまった事もあって間に合わないかもorz 来週は絶対お休みになるので今日は更新したかったんだなー(苦)せめて29日は更新したい。12月は更新少なくてすみません(汗)

以下、拍手お返事です。

なおさま

「暗獣」癒されて頂いてますか?嬉しいです〜v残念ながら赤鼻ヒューズは出てきませんでしたがこっそりサンタのロイはいたようです(笑)多分よいクリスマスだったはず〜。「セレスタ」うふふ、なかなか冷静になりきれないロイです。本当中尉は胃がキリキリしてそうだなぁ(笑)クリスマスプレゼントに胃薬、は哀しすぎる(笑)

はたかぜさま

返信不要という事でしたが、オランウータンにご賛同頂けて嬉しかったので(笑)ブレダの雄叫び、ありそうで笑えます!今日は更新間に合わない可能性大で申し訳ないのですが、これからも頑張りますので楽しんで頂けたら嬉しいですv
2012年12月25日(火)   No.284 (カプなし)

新・暗獣37
 二人で手を繋いで歩いていけばやがて商店が建ち並ぶ通りへと出る。クリスマスを間近に控えた街は、色とりどりの飾りに彩られ華やいでいた。
「…………」
 ロイの手を握ったままハボックは辺りを見回す。店先から流れるクリスマスソングや煌びやかな飾り付けに、ハボックが空色の瞳を見開き口を半開きにして魅入っているのを見て、ロイはクスリと笑った。
「綺麗だろう?ハボック。」
 そう言うロイの声も聞こえていないようで、ハボックはキラキラと輝く街を見つめる。ハボックはロイの手を離すと近くの店のショーウィンドウを覗き込んだ。そこには雪を被った街が作られ、行き交う人や車が再現されている。その街並みの一角、トナカイが曳くソリに乗ったサンタが空を翔ているのを、ハボックは目を丸くして見つめた。
「ろーい?」
「それはサンタクロースだよ、ハボック」
 不思議そうに見上げてくるハボックにロイが言う。尋ねるように小首を傾げるのを見て、ロイは続けた。
「クリスマスイブにイイコに過ごした子ども達のところへトナカイが曳くソリに乗ってプレゼントを届けにくるんだ」
 ロイはそう言ってガラス越しにソリに積まれた白い大きな袋を指す。
「ほら、大きな袋を持っているだろう?この中にプレゼントが詰まってるのさ」
 そう言われてハボックはサンタクロースのディスプレイを見つめた。
「何かお願いしてごらん、きっとサンタがプレゼントを持ってきてくれるよ」
 その言葉に顔を輝かせてロイを見上げたハボックは、もう一度ガラスに貼り付くようにしてディスプレイを眺める。楽しそうなその様子にハボックの金髪をくしゃりと掻き混ぜたロイは、ハボックを促して言った。
「ハボック、向こうに行こう。凄いものがあるんだ」
「ろーい」
 ロイの言葉に頷いてハボックはロイの手を握る。途中サンタに扮した男がおどけた調子で風船をくれるのを目をまん丸にして受け取って、ハボックはその空色の瞳に街の輝きを映して歩いていった。
「ハボック、ほら、着いたぞ」
 角を曲がりながら言うロイについて曲がったハボックは、視界に飛び込んできた大きなツリーに目をまん丸に見開いた。
 角を曲がった広場には特設のスケートリンクがあり、その真ん中にはそれは大きなツリーが据えられている。二階の屋根より高いツリーには電飾が無数に取り付けられ、夜の闇の中キラキラと輝いていた。
「ろーい……」
「綺麗だろう、お前に見せてやりたくてな」
 そう言うロイの言葉を聞きながら、ハボックはロイの手を離してツリーに近づいていく。リンクに足を下ろせば足元の氷にツリーの煌めきが映って、下からもハボックをキラキラとした煌めきが包んだ。
「ろーいっ!」
「はは、気に入ったか?」
 嬉しそうに振り向くハボックにロイはリンクを囲む柵に寄りかかって言う。ハボックは満面の笑みで頷くと氷の上でツリーを見上げながらクルクルと回った。
「ろーい〜」
 あんまり回って目も回って、ハボックはステンと尻餅をつく。尻餅をついたままで更にクルクルと回転して、ハボックは楽しそうに笑った。
「ろーいっ!」
 ハボックは氷の上に座ったままロイを呼ぶ。ロイは少し迷ってから風船を柵に括り付け、革靴のままリンクに降り立った。
「革靴だから滅茶苦茶滑るんだがな……」
 ロイはそう呟きながらおっかなびっくり歩いてハボックの所へやってくる。伸ばしてくる小さな手を掴んでハボックを引っ張り起こすと抱き上げた。
「ろーいっ」
 キュッとロイにしがみついたハボックは、周りを滑っていく人達を指差す。どうやら一緒に滑れと言っているらしいと察して、ロイは眉を下げた。
「生憎スケート靴は持っていないぞ」
「ろーいーっ」
 だが、それでも楽しそうに目を輝かせているハボックに強請られれば、ロイはゆっくりと歩き出した。
「ろーい!」
「無茶言うな、革靴なんだぞ、そう簡単にスピードを上げられるか」
 ロイはそう言いながらも氷の上で走る。その途端ツルンと滑って、ロイはハボックを抱いたまま尻餅をついた。
「うわっ!」
 悲鳴を上げるロイを面白がってハボックがきゃらきゃらと笑う。そんなハボックにゴツンと額をぶつけて顔をしかめて見せたロイは、氷に座り込んだまま頭上のツリーを見上げた。
「ハボック、真下から見ると凄いぞ」
 その言葉にツリーを振り仰いでハボックが目を見開く。緑の枝に無数に取り付けられた灯りがキラキラと輝いて、まるで空から星が降ってくるかのようだった。
「ろーい」
 暫くの間それを見ていたハボックが、ロイの頬にチュッとキスする。嬉しそうに笑う空色に、ロイもまた嬉しそうに笑った。
「お前と一緒に見られて嬉しいよ、ハボック」
「ろーいっ」
 答えてキュッとしがみついてくる小さな体をロイは抱き返す。
「よし、もう少し滑るか」
「ろいっ」
 ロイは笑ってそう言うとハボックを抱いて立ち上がった。そうして輝くツリーの下を二人でいつまでも滑って遊んだのだった。


いつも遊びに来てくださってありがとうございます。拍手、とっても励みです!

「暗獣」です。早く書かないとクリスマスになってしまうと言うわけで、大慌てで書いてみました。スケートリンクの真ん中にツリーが設置されてるのって、どっかアメリカにあったと思ったんですが。ショッピングモールかどこか……違ったかな(汗)まあ、いいや、二人がキラキラで楽しければそれで(笑)

以下、拍手お返事です。

なおさま

「恋闇」長らくお待たせしました(汗)ふふふ、恋闇ですからね、病んでますよ(笑)ハボ、すっかり開発されちゃって、この先どうするんだな感じです(笑)色々対決が待ってますね、ここでまた放置しないようにしなきゃって思ってます(コラ)「久遠」あはは、やはりどうしてもワンコのイメージですか(笑)同じワンコでもウルフはハスキー、ハボはレトリバーなイメージですよね。両手にワンコ…この話はひたすらロイがいい思いをする話になるんじゃないかと心配してます(苦笑)

おぎわらはぎりさま

「爆乳戦隊パイレンジャー」ですか!(笑)ロイはやってくれそうもないからなぁ。ファルマンあたり意外とやってくれるかもって気がします。ブレダとかフュリーは中佐命令で嫌々(苦笑)楽しそうです(笑)

はたかぜさま

こちらこそテンションの上がる楽しいコメントをありがとうございます!そうやって楽しんで頂けていると判ると「書くぜッ」って気持ちになります、人間って単純です(苦笑)「恋闇」一話が短いからっ、一応!多分次回も突っ込まれたまま…(げふんげふん)折角書き始めたので今度こそ間開けずに書きたいです(多分/コラ)フュリーがメガネザル!思いつかなかった、いいな、それ(笑)ブレダはなんでしょうね、オランウータンあたりもいいかなと思うのですがどうでしょう?
2012年12月20日(木)   No.283 (カプなし)

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 OR AND
スペースで区切って複数指定可能
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  Photo by 空色地図

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