パラレル 受けside
「あっ?!」
司令部の建物を出た途端、目の前が眩しく光ってハボックは手を上げて顔を覆う。グラリと地面が揺れた気がして
思わず建物の壁に手をついた。
「…なんだ?」
何事か起こったのかと辺りを見回すが何も変わったことはない。ハボックは首を捻りながらも、仕事をサボって
抜け出した上司を探して中庭へと足を向けた。
「あ、いたいた。」
木陰でまどろむ姿を見つけてハボックは近づいていく。起こそうとして枝に手をかけたハボックは、見下ろした
ロイの姿に違和感を感じて思わず声を飲み込んだ。
(大佐、だよな。)
当たり前のことを思わず確認してしまうほどの違和感。何となく声をかけられずにそのまま見下ろしていると、
まどろんでいた人の瞼が震えてゆっくりと黒曜石の瞳が現れた。
「あ、ハボック…。」
ゆっくりと体を起こす人をじっと見つめていると、自分を見返してきた黒い瞳が僅かに見開かれる。
「ハボ、ック?」
確かめるように呼ばれる名に、ハボックは答えることが出来ずじっと見つめた。暫くそうして互いに見つめ合ったまま
でいたが、先に口を開いたのはハボックだった。
「ロイ・マスタング大佐…っスよね。」
「他の誰に見えるというんだ。」
ムッとして答えながらも拭えぬ違和感にロイも問い返す。
「お前はジャン・ハボック少尉だな。」
「そうっスけど。」
その時、ハボックの傾げた首から僅かに覗く紅い印に気がついたロイはバッと手を伸ばしてハボックの襟首を掴んだ。
「お前ッ!なんだっ、そのキスマークはっ!!」
「えっ?あっ!」
言われてハボックは慌ててキスマークを手のひらで隠す。それから恨みがましくロイを睨むと言った。
「“なんだ”って、アンタが夕べつけたんでしょ。やめてくれって言ったのに。」
「私が?」
ロイはハボックの答えに思わず聞き返す。何を言っているんだと思うと同時に言葉が唇から零れた。
「バカ言うな。夕べはシテないだろうが。」
「は?何言ってるんスか。離してくれって言っても離してくれなかったくせに。」
食い違う会話に二人は不信感を顔に表したまま見つめ合っていたが、咳払いするとハボックが聞いた。
「大佐。アンタコーヒーにキャラメルフレーバー落とすの好きっスよね。」
「何言ってるんだ。私はバニラフレーバーの方が好きだって知ってるだろう?」
即答で答えるロイにハボックは顎に手を当てて考える。
「じゃあ、ベイクドチーズケーキとレアチーズケーキだったらベイクドの方が――」
「レアの方が好きだって話をつい先日したばかりじゃないか。」
ロイの答えにハボックは一瞬口を噤んだが、ロイをじっと見つめると言った。
「大佐、もう1つ聞いてもいいっスか?」
「なんだ?」
「セックスする時、アンタがいつもオレを抱いてますよね?」
「何言ってるんだっ!いっつもお前が私を好き勝手にするんだろうがっ!!」
ハボックの言葉に思わず真っ赤になって怒鳴り返してしまったロイは、次の瞬間ハッとする。
「私がお前を抱いてるって?」
「オレがアンタを好き勝手してるんスか?」
二人は呆然と互いを見つめ合っていたが、ハボックがぼそりと呟いた。
「さっき、司令部の建物出たとき、周りが一瞬光ったんスよ。まさかあの時何かが…。」
「…パラレルワールドか。」
ハボックの言葉にロイが言う。問いかけるようなハボックの視線にロイが答えた。
「平行して世界が並んでるって言うアレだ。並行する世界には同じ人物が存在してる。」
「え、じゃあここはオレの世界じゃないってことっスか?」
「周りが光ったと言ってたな。その時並行する世界が何らかの原因で接触したんだろう。そしてお前とこの世界の
ハボックが入れ替わった。」
ロイの言葉にハボックはペタンとその場に座り込んだ。呆然とロイを見つめながら言う。
「オレ、どうしたらいいんでしょう。」
そう聞かれたところでロイにも答えなど判る筈もなく、二人はただ言葉もなく見つめ合うしかなかった。
2007/10/16
パラレル 攻めside
「うわっ?!」
突然カッと目が眩むような光が輝いてハボックは思わず目を覆う。ぐらりと揺れる地面に慌てて壁に手をつくと
きょろきょろとあたりを見回した。
「なんだ?」
司令部の建物を出たところでハボックは暫く立ち尽くしていたが、それ以上何も起こらないとわかると首を捻り
ながら歩き出す。とりあえずサボって逃げ出した上司を探し出すのが先決と目星をつけた場所へと足を向けた。
「いたいた。またあんなところで寝て…。」
ところ構わず可愛らしい寝顔を曝さないで欲しいとそう思いながら近づいていったハボックは、起こす為にかけよう
とした声を飲み込んだ。
(た、いさっ?)
ぞわぞわと背筋を駆け上る悪寒に声も出せずに見下ろしていると、眠っていた男がゆっくりと目を開ける。
その黒曜石の瞳がハボックを見た途端、男の目が剣呑に細められた。
「誰だ、貴様。」
ゆっくりと体を起こしてそう言う男をハボックも睨み返す。
「そういうアンタこそ誰だよ。」
そう言いながらも目の前の男が自分の大切な上司であり恋人でもあるロイ・マスタングであることを認識していた。
それでも体中で感じる違和感に心がそれを認められない。
「マスタング大佐、じゃないっスよね。」
「お前こそハボック少尉じゃないだろう?」
そう言ってにらみ合う二人の間を一陣の風が吹き抜けていった。
2007/10/17
その後シリーズ、カプ混在、イロモノ混在ですのでお気をつけてお進みくださいませ。
→ 「パラレルその後」 (受け×受け・R20)
→ 「パラレルその後のその後」 (ロイハボ・R20)
→ 「パラレル もう1つのその後」 (攻め×攻め・R15)
→ 「パラレル その後のその後のその後」 (ロイハボ)
→ 「パラレル もう1つのその後のその後」 (ハボロイ・R20)
→ 「パラレル その後いくつ? ハボハボ編」 (攻めハボ×受けハボ・R18)
→ 「パラレル その後いくつ? ロイロイ編」 (攻めロイ+受けロイ)
→ 「パラレルその後 いつか・こんな日が・きたらいい 4人でお茶を編」 (ハボロイ+ロイハボ)
→ 「パラレル その後いくつ? ハボハボ編その後」 (ロイハボ)