
パラレルその後 いつか・こんな日が・きたらいい 4人でお茶を編
焼き上がったスコーンを取り出したちょうどその時、客人の来訪を報せるベルが鳴る。
「あ、来た来た。」
ミトンを外すと玄関に出る途中、2階にむけて声をかけた。
「たいさ!来ましたよ!」
そう声をかけておいて玄関の扉をあければそこには花束を抱えたロイと紙袋を手にしたハボックが立っていた。
「こんにちは、ジャン。」
「お言葉に甘えて来ちゃったよ。」
笑いながらそう言う二人にジャンも笑みを浮かべる。
「いらっしゃい、お待ちしてたっス。」
そう言ってジャンは二人を招き入れる。そんなジャンにロイは持っていた花束を差し出した。
「ジャン、これを君に。」
「えっ、うわ、ありがとうございます。」
腕いっぱいのそれはオレンジ系をメインに紅葉をイメージしたもので、ジャンは照れ臭そうに目尻を染める。
((か、かわいい…))
そんなジャンの姿に二人同時に同じことを考えて、ロイがくすりと笑みを浮かべたのに対し、ハボックはジャンに手を
伸ばすと花束ごと抱き締めた。
「かっわいいなぁ、ジャンは!」
「なんスか、かわいいって!おんなじ顔でしょうが!」
「うん、でもなんかかわいいんだよな、ジャンは。ね?ロイ。」
同意を求められたロイが笑いながら頷いた時。
「ジャンから離れろっ!!」
階段の上から聞こえた声に振り仰げばマスタングが仁王立ちで立っていた。足音も荒く下りてくるとベリッと音が
しそうな勢いでジャンをハボックの腕から引き離す。
「ジャンに気やすく触るんじゃないっ!」
ジャンの肩を抱くように引き寄せてハボックを睨み付ければハボックがツンと顎を突き出して答えた。
「は、いいでしょ、別に。減るもんじゃなし。」
「減るっ!お前に触られたら確実に減るっ!」
「何が減るって言うんスか!」
「ジャンの純潔が減るっ!」
ぎゃあぎゃあと言い合いを始めた二人にジャンは目をまん丸にする。「あの…」と話し掛けようとしても気づいてもらえ
ないことに困り切ったジャンの腕をロイが引いた。
「バカは放っておけ。」
そう言ってさっさと中へと入っていくロイの背を、バカと断言された二人のことを気にしながらジャンが追う。
リビングに入った途端強くなった美味しそうな匂いにロイの顔が綻んだ。
「いい匂いだな。」
ロイがそう言えばジャンが花束をテーブルに置きながら答える。
「スコーン、今、焼き上がったんスよ。あったかいうちに食べましょう。」
ジャンはそう言うとキッチンからお茶の道具を持ってきた。
「どうぞお掛けになって下さい。」
勧められるままに腰を下ろすロイの前にジャンは温めたカップを置く。手際よく用意しているとバタバタと音がして勢い
よく扉が開いた。
「ひどいじゃないか、ジャンっ!私を置いていくなんてっ!」
「ロイっ、先に行くなんてあんまりっス!」
争うように部屋に飛び込んでくる二人をまあまあとジャンが宥める。
「早くしろ、せっかくのスコーンが冷める。」
ピシリとロイに言われてマスタングとハボックは慌てて席に着いた。
「あ、そうだ、これ、クッキー焼いてきたんだった。」
ハボックが差し出した紙袋を受け取ったジャンは礼を言うと皿をだし、クッキーを盛り付ける。スコーンの皿に並べて
置けばティータイムの始まりだった。
「この黒スグリのジャム、自家製なんスけどよかったら」
そう言われてスコーンにつけて食べれば程よい甘さが口いっぱいに広がる。
「旨い。」
「甘すぎなくていいな。」
そう言って次々と伸びる手をジャンが嬉しそうにみつめていると。
「ジャン。」
呼ばれて振り向いたジャンの頬をロイがペロリと舐めた。
「「な…っ?!」」
「ろいっ?」
舐められた頬を押さえて赤くなるジャンにロイがにっこりと微笑む。
「ジャムがついてた。」
「えっ、あ、ありがとうございます…。」
紅い顔で俯くジャンの髪を、伸ばした指で弄ぶロイに、固まっていた二人が叫んだ。
「「ロイーーッ!」」
「なんだ、煩いヤツらだな。」
平然と返すロイの前からマスタングがジャンを抱き寄せて奪い返し、ハボックがバンッとテーブルに手をつく。
「油断も隙もあったもんじゃないなっ、このタラシっ!」
「なにやってるんスかっ、アンタはっ!」
「喧しい。可愛いものは愛でるためにあるのだ。」
そう言って澄ましてティーカップに口をつけるロイにマスタングとハボックが喚きたてた。
「そ、そうだ、花、生けてきちゃいますねっ」
ジャンはそう言ってマスタングの腕の中からするりと抜け出す。花束を抱えてリビングの扉のところで振り返ったジャン
は、言い合いながらも楽しそうな三人の姿に、幸せそうに笑ったのだった。
楽しい時間は瞬く間に過ぎて、ハボックとロイは暇を告げて席を立つ。
「もっとゆっくりして行けばいいのに…。」
淋しそうに呟くジャンの髪をハボックがくしゃりとかき混ぜた。
「また来るよ。」
そう言って立ち去ろうとする二人にジャンが包みを差し出した。
「さっきのジャム。よかったら…。」
そう言うジャンの手から包みを受け取ってロイが笑う。
「じゃあまた。」
ゆっくりと歩きだした二人が曲がり角で振り向けば、マスタングに腰を抱かれたジャンがじっと見つめていた。二人が
振り返ったことに気付くと大きく手を振る。それに手を振り返したロイとハボックの姿が空気に溶けるように消えて
いった。
その夜。
ジャンの膝枕で本を読んでいたマスタングが本から視線を上げて言った。
「喧しい連中だったな。」
「そんなことないですよ。」
「やたらお前に触るし。」
マスタングがそう言えばくすくすと笑うジャンにマスタングは眉を寄せた。
「嬉しそうだったぞ、お前。」
「そんなことないっスよ!」
慌てるジャンの頭に手を伸ばし、マスタングはジャンを引き寄せる。
「私は心が狭いんだ。覚えておけよ。」
ちょっと不貞腐れたように言うロイに小さく笑って、ジャンは引き寄せられるまま口付けていった。
そしてもうひとつのアメストリスの夜。
ソファーに座るロイにコーヒーのカップを渡しながらハボックが言う。
「ジャンってかわいいっスよね、癒し系で。」
「そうだな、ついちょっかい出したくなる。」
そう言ってコーヒーを飲むロイをちろりと見てハボックが言った。
「言っときますけどオレ、心狭いんで。」
むぅと突き出されたハボックの唇にロイは笑ってそっと口付けた。
2007/10/27
「パラレルその後」ついに4人一堂に集まっちゃいました。Jさま、Iさまから頂いたコメントをネタにさせていただいてます。
ありがとうございます〜vしかし、ここまで来るとホントイロモノですね(苦笑)受けハボはどこに行ってもアイドルってことでv
