パラレル もう1つのその後のその後
「たいさっ!!たいさっっ!!」
「えっ?あ、ハボックっ?」
眠っているところにいきなり抱きつかれてぐりぐりと頭を押し付けられて大佐が目を丸くしている。オレはようやく自分
だけの大佐を抱きしめることが出来て、嬉しくてうれしくて仕方がなかった。
「え…あ、そんな…“ハボック”?」
大佐がようやく自分を抱きしめているのがオレだと気づいて信じられないとばかりに聞いてくる。恐る恐るオレの頬を
両手で包むとオレの顔を覗き込んだ。
「ハボック?本当にハボックなのか…?」
目をまん丸に見開いて見つめてくる大佐はすっごく可愛くて。
「そっスよ。やっと戻ってこられた…。」
そう囁けば大佐の瞳に涙が盛り上がって。1つ瞬きをするのと同時にぽろんと黒曜石の瞳から銀色の宝石が零れ
落ちる。
「ハボック…っ」
ぽろぽろと涙を零す大佐をオレはギュッと抱きしめてその甘い唇を塞いだ。
本当はその場で押し倒してしまいたかったけど、タイミング悪くヒューズ中佐が来たってフュリーが呼びに来て、大佐は
そそくさとオレを残して行ってしまった。10日ぶりの再会にしてはちょっと冷たいんじゃないの、って思ったけど仕方ない。
オレは煙草に火を点けるとゆっくりと歩いて司令室に戻る。廊下を歩きながら「ここは東方司令部なんだな」って、
慣れた空気に頬が緩むのを止められなかった。司令室の扉を開けるとブレダやファルマンが仕事をしていて、そんな事
すらやけに愛おしくてオレは思わずブレダを抱きしめたくなる気持ちを必死にこらえなくてはいけなかった。
「ハボ、大佐がコーヒー持って来てくれって言ってたぜ。」
ブレダに言われて給湯室へ行くと大佐とついでに中佐の分のコーヒーを入れて執務室へと持っていく。ノックもそこそこ
に扉をあければ中佐と話をしていた大佐がにっこり微笑んだ。
「お、少尉。元気してたか?」
振り向いた中佐がオレの顔を覗き込むようにして聞く。何なんだ、と思わず顔に出たのだろう、中佐が苦笑して言った。
「いや、この間電話でなんだか様子が変だったからさ。なんかあったのかと思ってな。」
様子が変だったっていうのは多分、あっちの世界のオレのことだろう。オレが向こうで死ぬ程居心地が悪かったように、
あっちの世界のオレもきっとこちらでは苦労してたんだろうなって思ったらほんの少し同情した。それでもソイツの趣味
が悪いことだけは同じハボックとして赦せないけど。よりによって“あの”大佐だ。
「そうだ、少尉。今夜ロイと一緒に飲みに行こうって言ってんのよ。お前さんも一緒にどう?」
今夜?なんだって今夜?だって10日ぶりに会えたんだぜ?中佐と酒なんて飲みに行ってる場合じゃないだろう?
そう思って大佐を見れば困ったように目を逸らす。まあ、中佐のことだ、何だかんだとごり押ししたんだろう。オレは仕方
ないとため息をついて答えた。
「いいっスよ。ご一緒させてください。」
大佐を中佐と二人きりで飲みに行かせるよりなんぼかマシだ。オレは中佐の誘いに頷くと、とっとと仕事を片付けて
しまうべく執務室を後にした。
「そんでさぁ、エリシアちゃんが言うわけよ。パパ、そんな事しちゃダメよって。こーんな眉寄せちゃって、もう、可愛くって
なああっっ!!」
酔っ払ってグダグタと喚きたてる中佐ははっきり言って鬱陶しい。そんなにエリシアちゃんが可愛いならこんなところで
男相手に酒なんて飲んでないでさっさとセントラルに帰れ。
「あんだよ、少尉。なんかノリわりいなぁ。」
こっちの気もしらないで中佐がそんなことを言うから思わず顔を顰めて言ってやった。
「飲みすぎっスよ、中佐。そろそろホテルに帰ったほうがいいんじゃないっスか?」
「えー、ジャン君冷たいっ!もっとおしゃべりしようよ〜っ」
悪いけど、今日は中佐とおしゃべりなんかしてないでさっさと家に帰りたいんだ。大佐と喋りたいんだよ、二人で。
「ほら、もう終わりにしましょう。明日に差し支えますよ、大佐もそう思うでしょ?」
大佐だって早く二人きりになりたいに決まってるんだ。そう思って大佐に言えば大佐はビックリしたように目を瞠った。
「ロイもそう思うのか?」
オレの言葉に不満そうに言う中佐に大佐が答える。
「えっ、あ、いや、私は別に…。」
「だよなぁっ、もっとおしゃべりしたいよなぁっ!!」
大佐の返事に中佐が勢いづいて喚いた。ちょっと、大佐。なんだよ、早く帰りたくないの?オレ達10日ぶりに会ったん
だよ?もしかしたら帰ってこられないかもって思ったところから10日ぶりに。
「中佐。今夜はもうおしまいっス。」
オレは内心ムッとしながら席を立つと中佐を無理矢理立たせる。大佐に目配せすれば慌てて立ち上がった大佐が
支払いを済ませた。
「送らなくても帰れますねっ?」
「えーっ、送ってくれないのっ?」
「ハボック、送ってやった方がよくないか?」
あんなに酔ってるんだし、という大佐をジロリと睨んで中佐に言う。
「大して酔ってないでしょ。一人で帰ってくださいね。」
オレは冷たく言い捨てると、酷いだのなんだのと喚きたてる中佐を置いて、大佐の手をグイグイと引きながら歩き出した
のだった。
「冷たいヤツだな、せめて送ってやればよかったのに。」
暫くして大佐がポツリとそんなことを言うからオレは思わずムッとして立ち止まった。
「オレ、本当は今夜、飲みになんて行きたくなかったっスよ。」
一刻も早く家に帰って大佐を抱きしめたいのに。大佐だってそう思ってくれたんじゃないのかとそう思って大佐を見れば
困ったように目を逸らした。オレはそんな大佐の態度になんだかムカムカして大佐の腕を乱暴に引きながら家へと歩く。
途中、「痛い」とか「離せ」とか言ったみたいだったけど、そんなの気に留めてなんていられなかった。
ようやく懐かしい家が見えて、オレはホッと息をつくと小走りに扉に近づく。鍵を開けて灯りを灯せば懐かしい空間に
思わず笑みが浮んだ。ここに来てやっと大佐の腕を離すとオレ達はリビングへと入っていく。オレはそこに足を踏み
入れた途端、思わず立ち止まった。居心地よく整えられた空間。綺麗に片付けられたキッチン。オレがいなくて大佐
一人きりならきっと散らかっているだろう、そんな光景を無意識に描いていたのに、オレの目の前に広がるのはそれ
とはまるで違った空間だった。
「ハボック?」
突然立ち止まってしまったオレを大佐が不思議そうに呼ぶ。オレは傍らの大佐を見下ろすと聞いた。
「ここにオレ以外のヤツ、入れました?」
「えっ?」
一瞬何のことかわからないと見開かれた瞳は、ある事に思い当たるとほんの少し懐かしそうな色を浮かべる。
「向こうの世界のハボックがいたんだ。」
「なんでっ?」
考える間もなく言葉が口を突いて出た。なんでオレ以外のヤツを家に入れるんだよ。
「なんでって…ここはアイツの家でもあるわけだし。」
「はぁっ?何言ってるんスか?ここはアンタとオレの家でしょう?」
「でも、向こうの世界ではアイツもここに住んでるんだから。」
「だけど、ここはアイツの世界じゃないんだから、なんで家に入れるんスかっ?!そんなワケの判らないヤツ――」
「アイツのことを悪く言うなっ!」
オレの言葉を遮るように怒鳴る大佐をびっくりして見つめる。大佐は眉を寄せて辛そうに顔を顰めると叫んだ。
「アイツを悪く言うなっ!アイツがいなかったら私は…っ、アイツがいてくれたから…っ!」
アイツがいてくれたから、ってなに?どういう意味だよ、それ。オレはハッとするとリビングを飛び出して2階へと駆け
上がる。
「ハボック?!」
驚いた大佐の声がしたけど構わず4つある寝室の扉を次々と開けた。それぞれの部屋にあるベッドの中で使われた
形跡があるのは主寝室の1つだけで。
「ハボック、一体どうし――。」
「アイツと寝たんスか?」
追ってきた大佐に振り向きもせずそう聞けば息を飲む気配がする。振り向いて大佐を見れば見開いた黒い瞳と視線
が合った。
「アイツと寝たの?」
低い声でそう言うと大佐が小さく首を振る。後ずさるその腕を掴んでベッドに引き倒した。
「ハボ…っっ!」
「なんでっスかっ!なんで、アイツと…っ!!」
オレが向こうであの憎ったらしい大佐と顔つき合わせて嫌な思いをしている間、大佐はアイツとよろしくヤってたって
ことなのか。そんなの、あんまりだろう。オレは大佐をベッドに押さえつけるとシャツに手をかけた。勢いよく引っ張れば
ビリビリと音を立てて裂ける。
「やっ、ハボっっ!!」
「く、そっ!!なんでっ、なんでなんスかっ!!」
「ハボっ、私の話をきいて…っ」
大佐が何か言ったけど、オレの耳には入ってこなかった。何とか逃れようと暴れる大佐の手が、偶然オレの頬をはた
いて。
「あ…っ」
「この…っ」
驚いて見上げる黒曜石の瞳にかああっと頭に血が上る。オレは手を上げると大佐の頬を思いっきり張った。
バシンッッ!!
と、物凄い音がして、大佐の抵抗が弱まる。オレはシャツを毟り取るとズボンに手をかけ下着ごと引き摺り下ろした。
「あ…いやっ!」
力なくもがく大佐の頬をもう1つ張ってオレは大佐の胸にむしゃぶりつく。舌先と指を使ってくりくりとこねれば、たちまち
ぷくりと立ち上がって色を増した。
「こうやって弄ってもらったんスか?」
「ちが…っ」
ふるふると首を振る大佐に構わず散々にそこを嬲る。刺激で立ち上がった中心をちょっと扱いてやればあっという間に
熱を放った。オレは手のひらに吐き出された熱を塗りこめるようにして後ろに指を突き入れる。強張る体に構わずぐり
ぐりとかき回せば、大佐がぽろぽろと涙を零した。
「いや…っ、やめ…ハボっ」
「何回ここに突っ込ませたんスか?教えてくださいよ。」
「嫌だ、ハボック…っ、やめて…っ」
逃げようともがく体を引き戻して、オレは自身を取り出すとそこにヒタと押し当てる。ぎくりと強張る体に構わず、ろくに
解してもいない蕾に一気に突き入れた。
「ヒアアアアアッッッ!!!」
大佐の唇から悲鳴が迸り錆びた鉄の匂いがする。ぐったりと力の抜けた細い体を、オレはメチャクチャに犯し続けた。
「う…ひっく…」
力なくベッドに体を投げ出してすすり泣く大佐の体をオレはそっと抱き締める。零れる涙を唇で拭って耳元に囁いた。
「ごめん…ごめんなさい、たいさ…」
こんなつもりじゃなかった。久しぶりに抱きしめた体をオレは思い切り優しく抱きたいと思っていたのに。大佐がアイツと、
向こうのオレと寝たんだと思った瞬間、頭の中がぶち切れてしまって。オレは大佐を抱く腕に力を込めるともう一度
言った。
「ごめんなさい…でも、オレ…アンタが向こうのオレと寝たって思ったら、すげぇ悔しくて。」
オレは向こうの大佐と全然仲良くなんてなれなかった。顔を見るたびムカついて、一刻も早くこっちに帰りたいとそれ
ばかり思っていたのに、大佐はその間もう一人のオレに体を許すまでになっていたのかと思うととにかく悔しくて。
オレがそんなことをポツポツと言えば、大佐がスンと鼻を鳴らして言った。
「私とアイツはそんなんじゃない…確かに一度だけアイツと寝たけど…。」
大佐は涙で濡れた瞳でオレを見つめると言葉を続ける。
「私たちはただ、互いを抱きしめることで本当に自分が欲しい相手を抱きしめていただけだ。」
そうしなければもう、壊れてしまいそうだったのだ、と大佐は言って目を伏せた。殴って腫らせてしまった頬にオレは
そっと自分のそれを寄せる。オレは大佐を抱きしめたまま尋ねた。
「向こうのオレってどんなヤツでした?」
そう聞けば優しく微笑む気配がする。
「とても優しくて、柔らかい雰囲気のヤツだったよ。すごく可愛くて、この私が抱きしめてやりたくなるくらい。」
「でも、見かけはオレとおんなじなんスよね?」
「そう、そのギャップがまた可愛いんだ。」
そういえば、向こうの大佐もやたらと可愛いとか言ってたな。可愛いオレ…あんまり想像したくない。
「向こうの私はどんなヤツだった?」
そう聞かれてオレは思わず眉を顰めた。
「ものっすげぇ嫌なヤツでしたよ。」
呻くように言えば、大佐が静かに言う。
「でも、アイツは向こうの私をとても大切に想ってた。」
静かに、でもきっぱりと。
「私がお前を大切に想うように。」
そう言う大佐の黒い瞳をオレは息を飲んで見つめた。大佐はオレの頬に手を伸ばすとそっと指を這わせながら言う。
「ずっと会いたかったんだ…ずっと。」
囁く声に、オレは堪らず大佐をギュッと抱きしめた。
「オレも…っ、オレもずっと会いたかった…っ!」
チュッと唇にキスを落とすと囁く。
「ごめんなさい、酷いことして…。でも、オレ…っ!」
言葉に詰まるオレを大佐がそっと抱きしめてくれる。
「会いたいと思っていてくれたなら、いい。」
そう言う大佐にオレは噛み付くように口付けた。
「あっ…あっ…ハボ…」
酷くしてしまった分、オレは思い切り優しく大佐を抱く。さっき傷つけてしまったから体を繋げるのはやめようと言うオレに
大佐は「大丈夫だから」と譲らなかった。たっぷりと濡らして優しく解したソコにゆっくりと体を沈めていく。辛そうだった
呼吸に次第に甘いものが混ざってオレは大佐の奥を突いた。
「ああんっ…ハボぉ…っ」
大佐が甘く啼いてオレにしがみ付いてくる。それにそっと抱き返してやりながら、オレは繋がる下肢を小刻みに揺すった。
「あっ…や、…ダメッ」
ビクビクと体を震わせるところを抉るように突き上げると、大佐があっけなく熱を放つ。達した余韻に震える体を容赦なく
攻め立てると大佐がいい声で啼いた。
「好き…たいさ…ダイスキ…」
耳元でそう囁けば、涙に濡れた瞳をあげて大佐がオレを見る。
「私も…好きだ…」
そんな一言だけで心も体も幸せに満ち溢れて。オレは大佐の体をギュッと抱きしめると深く口付けていった。
2007/10/22
「パラレル」その後のその後、ハボロイ版でございます。攻めはどっちもものすごーくヤキモチ焼きだってことが判りました。でもって独占欲の塊…。
そんな攻めに愛されて受けは幸せだけど苦労も耐えないよねって思います(苦笑)