パラレルその後のその後


「ちょっ…たいさっ、苦しいっス!」
ぎゅうぎゅうと力任せに抱きしめてくる大佐をなんとか押し返そうとする。少し体が離れたかと思った瞬間、噛み付く
ように口付けられた。
「んっ…んんっ」
千切れるほど強く舌を吸われ口内を弄られる。苦しくて押し返そうとすればする程深く口付けられて、ようやく唇が
解放されたと思ったときにはもう、酸欠で目の前がチカチカしていた。
「た、いさ…」
くたりともたれかかるオレの頬を大佐の両手が包む。
「ハボック…!本当にハボックなんだな…!」
嬉しそうに、泣き出しそうに顔を歪めながら、それでも心底嬉しそうに言う大佐にオレは笑った。
「そうっスよ。やっと帰ってこられた…。」
そう言えばまた折れそうなほど強く抱きしめられる。もう二度と大佐には会えないのかと、そんな風に感じ始めていた
から、こうしてまた大佐の顔が見られて死にそうなほど嬉しかった。嬉しくてうっとりと大佐の胸に顔を寄せていると、
オレの背を抱いていた大佐の手がゆっくりと下りてくる。尻をギュッと掴まれて、オレはギョッとして大佐を押し返した。
「なにしてるんスかっ!」
「いいだろう?10日も会えなかったんだぞ。いや、会えないどころじゃない、あのクソ可愛げのないヤツと10日も顔を
 つき合わせていたんだ。私には潤いが必要なんだっ!」
「だからって、ここ、どこだと思ってるんスかっ!司令部の庭っっ!!」
「別に抱き合うのに問題なかろう。」
そんなことを言って、大佐の手が不穏な動きをみせようとするから、オレは思い切り大佐の足を踏みつける。悲鳴を
あげて飛び上がる大佐の腕から逃げ出すとオレは距離を取った。
「とにかくっ、家につく前にオレに触ったら今後1ヶ月、触らせませんからっ!」
オレはそれだけ言うと大佐に背を向け司令部の中へと走りこむ。だからその時、大佐がどんな顔をしていたか、全く
見てなどいなかった。

向こうの世界での10日間、オレは毎日司令部に通ってたけどでもここに来るのは10日ぶりで。だから何もかもが
新鮮で珍しく見える。オレの机の上の灰皿もペンも電話も、触れるのは10日ぶりだ。ブレダと会うのも10日ぶり。
やけにウキウキとしている様子のオレをブレダは明らかに怪しいものを見る目つきで見ていたけれど、そんなのどうでも
よかった。いつもはあんまりやりたくない書類作成だって、物凄く楽しくてしょうがない。総務からかかってくる書類の
決済が遅いっていう嫌味の電話ですら聞いてて楽しくなる。いくら嫌味をいってもヘラヘラしているオレに、電話の相手
が気味悪がっても一向に構わなかった。どこかネジが1つ飛んでしまったような、そんなハイテンションな気分のまま
仕事を終えて、オレはゆっくりと立ち上がる。ちょうどその時執務室の扉が開いて大佐が顔を出した。
「ハボック、車を回してくれ。」
「Yes, sir!」
オレは元気溌剌答えると、車を用意すべく司令室を飛び出していった。

オレンジ色に染まる街並みを大佐を乗せた車を走らせる。これから帰るのはよく知ってるけど知らないそんな場所では
なく、オレが心の底からゆっくりと過ごせる場所。大好きな大佐が住んでる、オレが帰るたった一つの場所。オレは
そこに向けて車を走らせながら考えた。ホントにもう、帰ってこられないと思ってた。よく知っているのにまるで知らない
もう1つのアメストリス。その中のイーストシティで暮らしている、オレのものでない大佐。今彼は、彼のハボックに抱き
しめられているのだろうか、そんなことを思ったら、帰ってこられたことが2倍に嬉しく感じる。よかったね、大佐。本当に
よかった。そんなことを考えているうちに目の前に懐かしい場所が見えてきた。本当に帰ってきたんだと実感して、自然
と顔が綻んだとき、ちょうど家の前についた。オレは車を止めると後部座席の扉を開けて大佐を下ろす。車を降りて、
スッと背筋を伸ばした大佐の姿を見たら、凄く嬉しくてオレは思わず大佐の腕を掴んでいた。
「ハボック。」
驚いたような声にハッとして慌てて手を離す。
「す、すみませんっ」
そう言うオレに大佐がフッと笑って、心臓が跳びはねた。ああ、オレの知ってる大佐だ。オレの大好きな大佐が今目の
前にいる。
「さっさと車を裏に回して来い。」
大佐は顔を赤らめるオレの頬をスッと撫でるとそう言って先に家に入った。
「アイ、サー。」
オレは触れられたところから湧き上がる熱を必死に抑えてそう呟くと、急いで車を家の裏へと動かしたのだった。

家の中に入れば大佐がソファーで本を広げていた。そんな当たり前の光景ですらなんだかとても愛おしい。
「すぐメシの支度しますね。あ、その前に何か飲みます?」
そう聞けば大佐は本を閉じてオレをじっと見る。その強い視線が苦しくて、とても正面から見返せない。大佐ってこんな
にきつい目つきしてたっけ。そんな風に見つめられたら心臓がバクバク言って凄く苦しい。
「ハボック、ここへ。」
オレをまっすぐに見つめたまま大佐がそう言う。まるで操られるように側に近づいたオレの手首を掴んで、大佐がオレを
見上げて言った。
「向こうではあっちの世界の私と一緒にいたのか?」
「え?あ、はい。」
いきなりそんなことを聞くから素直に頷く。そういえば大佐は向こうの世界のオレと一緒に暮らしてたのかな。オレが
あの大佐と一緒に食事をしたりおしゃべりしたりしている間、大佐も同じようにして過ごしてたのかな。そんな風に考え
たら、ほんの少し胸が苦しくなった。
「向こうの私はどんな感じだった?そっくりだったか?」
そう聞かれてオレは10日間一緒に暮らした人を思い浮かべる。確かに大佐と同じ顔をしてはいたけれど。
「大佐とおんなじ顔、してましたよ。でも、なんかずっと雰囲気可愛らしいっていうか、抱きしめて甘やかしたくなる、
 そんな人でしたけど。」
大佐のことを大佐に話す、それがなんだか凄くおかしくて思わずくすくすと笑ったとき。
「だから抱きしめたってワケか。ソイツとヤったのか。」
低い大佐の声にギクリとして大佐の顔を見る。嫉妬と怒りを湛えた黒い双眸を見たとき、オレは思わず後ずさったが
ガッシリと手首を掴まれていて離れることはかなわなかった。
「た、いさ?」
大佐が物凄く怒っていることだけははっきりと判って。でもどうしてそこまで怒っているのかはオレにはさっぱり判らな
かった。大佐はオレの手首を掴んだままゆらりと立ち上がるとオレの顔を覗き込む。
「答えろ。ソイツと寝たんだな。」
「あ…。」
確かに一度だけ、向こうの世界の大佐と抱き合った。でもあの時のオレ達はフツウじゃなかった。お互い誰よりも大切
な人とそっくりな人を目の前にして、同じなのにでもそれは決して自分が求めてる人ではなくて。慰めあわなければ
心を保ってはいけなかったから。でもそれは決して裏切り行為なんかじゃなくて。
「やはりそうか。」
答えないオレに大佐の目が苦しげに細められる。
「10日も放っておかれて私に触れられて、平気でいられる筈などないからな。」
吐き捨てるように言った大佐の体から立ちのぼる怒気にオレは大佐の手から逃れようと身を捩った。だが、大佐は
オレの手首をグッと握り締めたまま、グイグイと引いてリビングを出て行く。
「たいさっっ」
「煩いっ!」
引き摺られるようにして階段を上り寝室へと入ると、大佐はオレの体をベッドへと突き飛ばした。慌てて起こそうとした
体をベッドの上に押さえつけられる。
「たいさっ、話を聞いてくださいっ!」
「黙れっ、この、淫乱め!」
憎々しげに吐かれる言葉にオレは息を飲んだ。酷い。オレは向こうにいる間、ほんの一時ですら大佐のこと考えない
時はなかったのに。
「どうやって抱かれた、言え。」
大佐はオレをベッドに押さえつけると嫉妬に燃える瞳で睨みつける。
「何回抱かれた?3回か、5回か?抱いてくれと強請ったのか?」
「やめろっ!!」
オレを組み敷く大佐に向かってオレは怒鳴った。酷い。やっと戻ってこられたのに。ようやく会えたのに。なんでそんな
酷い事言うの?
「そんなんじゃないっ!オレとあの人は――」
「あの人!そんな風に言うほど心を赦したっていうことか。」
地を這うような低い声。違うのに。どう言ったら判ってもらえるんだろう。
「私がお前の顔をしたあの小憎らしいヤツの相手をしている間、お前はソイツとよろしくヤってたわけだ。」
「違うって言ってるじゃないっスか!」
「違わないだろうっ!実際お前はソイツと寝たんだろうがっ!!」
「だから、それは――」
続く言葉を言う前に噛み付くように口付けられた。強引に入ってきた舌がオレの舌をきつく絡めとる。口中を嬲る間にも
大佐の手が引きちぎるようにオレの軍服を剥ぎ取りズボンをくつろげた。
「や、だっ…!」
こんなの嫌だ。ずっと大佐に抱かれたかったけど、こんなのは違う。オレも大佐もお互いのことが好きなのに、気持ちが
すれ違って。
「たい、さっ…オレの話、きいて…っ」
必死に大佐に言ったけど、大佐はオレの言葉に耳を貸してくれない。下着ごとズボンを引き摺り下ろされたかと思うと
まだ堅く閉ざされた場所に大佐の指が捻じ込まれた。
「ひっ…」
「ここに突っ込まれたのか?悦かったか?答えろ…っ」
「いっ…あっ…ひあっ…!」
全く濡らされていないそこは引きつるように痛くて、オレは見動くことが出来ない。ぐちぐちと乱暴にかき回されて、息も
絶え絶えに大佐のことを見上げた。怒りに燃えた瞳が悲しくてオレの瞳に涙が溢れてくる。かき回されるそこよりも
心が痛くて、オレはボロボロと泣きじゃくった。大佐の指が抜かれて、熱い塊りが押し当てられる。グッと押し入ってくる
熱に唇から悲鳴が零れた。
「ヒ、ヒアアアア―――――ッッ!!」
一気に奥まで突き入れられて激痛が走る。錆びた匂いがして強引な行為に傷つけられたのだとわかった。脚を胸に
つくまで折り曲げられてガツガツと突き上げられる。大佐の熱がオレの感じる部分を突いて、痛みに震える体を快感が
侵略し始めてそれが何より悲しかった。体が勝手に快感を拾い上げて熱を迸らせる。もう、何か言う気力も抵抗する力
もなくて、オレは大佐のなすがままだった。

「ハボック…。」
ぐったりとベッドに沈み込むオレの頬を大佐が撫でる。大佐の好きにされた体はもうズタボロでオレは指1本動かすこと
が出来なかった。
「悪かった、ハボック。」
大佐がオレをそっと抱きしめてそう呟く。
「お前がいなくなって気が狂いそうだった。お前の顔をしたアイツはろくでもないことばかり言うし、もしこのままお前が
 帰ってこないなら、イーストシティを、アメストリスを燃やしてやろうかと思うほどだったんだ。それなのにお前は向こう
 の世界の私と…!」
オレを抱きしめる大佐の体が震えている事に気づいて、オレは動かない腕を必死に上げて大佐の背に回す。ハッと
したようにオレの顔を見た大佐にオレは囁くように言った。
「確かにオレはあの人と寝ましたけど、でも大佐が思ってるような、そんなんじゃないっスよ。」
オレの言葉を大佐は辛そうに、でも何も言わずにじっと聞いている。
「オレもあの人も、自分だけの相手を取り戻したくて、でもどうしていいかわからなくて、不安に押しつぶされそうだった。
 抱きしめあわなかったらきっと狂ってた。オレはあの人と抱き合うことでアンタに抱かれてたんスよ。」
オレの言葉に大佐の目が見開かれる。オレは大佐の頬をそっと撫でると言った。
「あっちの世界に行ったのは凄く辛いことだったけど、でもね、たった一つ嬉しかったのは、例えどこの世界でもオレは
 アンタを好きになるんだって判ったことっスよ。向こうの世界のオレは向こうの世界のアンタを心底愛してた。どこに
 いてもオレはアンタを好きになるんだ。」
「ハボック…!」
大佐の腕がオレをそっと抱きしめて。
「すまなかった、ハボック。」
大佐の手がオレの頬を包んで黒曜石の瞳がオレをまっすぐに見る。
「愛している、ハボック。私を赦してくれるか?」
そう言う大佐にオレは小さく笑った。
「ずっと会いたかった。ねぇ、たいさ。もう一度ちゃんと、オレのこと抱いて?」
大佐の目が大きく見開かれて。
噛み付くように口付けられた。

大佐の手がオレの肌を滑る。ようやく触れ合うことが出来て、オレの体が喜びに震えた。
「んっ…あっ」
きつく肌に押し当てられる唇が紅い印を刻む。痛むそこから広がる快感がオレの体に火を灯していった。
「あっ…ああっ」
乳首にたどり着いた唇がぷくりと立ち上がったソレを甘く噛む。舌先と指でこね回されてオレの唇から熱い吐息が零れた。
「ん…ふぅ…」
大佐に抱かれるようになって感じるように仕込まれた。女みたいだと思ったこともあったけど、でも、熱く蕩かされて
しまえばもう、そんなことなど考えている暇もない。
「ああん…たいさぁ…っ」
身を捩ってそう呼べば大佐が笑う気配がする。ねぇ、もっとアンタを感じさせてよ。
「お前な…っ」
悔しそうな大佐の声。ああ、なんだか帰ってきたんだなぁって実感する。思わずくすくすと笑えば大佐がムッと唇を
歪めた。
「随分余裕があるじゃないか。」
悔しそうに言うから大佐に向かって手を伸ばす。
「だってまだ、全部くれてないでしょ?」
そう言って腰を押し付ければ大佐が困ったような顔をした。
「駄目だ。さっき無茶をしたから。」
傷つけてしまったと、申し訳なさそうに言う大佐の体を引き寄せる。
「いい。アンタになら何されてもいいっス。」
そう言えば大佐が目を見開いて、それからくしゃりと顔を歪めた。
「そんなことを言って…!手加減できなくなるぞ…っ」
「いいっスよ…望むところ――」
噛み付くようなキス。貪るようなそれに心が震える。長い長い口付けの後、やっと唇を離すと大佐はオレの脚を押し
開いた。折りたたむように脚を持ち上げられて、奥まったそこに大佐の舌が触れる。ピリッとした痛みに無意識に震えた
体に大佐が顔を上げた。
「へいき…っスから…やめないで…」
大佐が欲しくて仕方ない。こんなところでやめられたらきっと気が狂ってしまう。オレは自分の腿を抱えるように下から
手を回すと、指で自分のソコを押し広げた。そんなオレの姿に大佐は息を飲んで、でもすぐに舌を差し入れてきた。
生暖かいそれが這い回るその感触だけで、オレ自身はもう高々とそそり立ちとろとろと蜜を零している。もういいから。
早く大佐をちょうだい。
「まったく、お前は…っ」
大佐が悔しそうに呟いたかと思うと、大佐がオレの脚を高く抱えあげる。熱く脈打つものが押し当てられたかと思うと
一気に大佐が入ってきた。
「アッアアア――――ッッ!!」
無意識に逃げる体を大佐が引き寄せて深く穿つ。痛みは瞬く間に快感に変わってオレは大佐の背に腕を回して
縋りついた。
「た、いさっ…たいさぁぁっっ」
そう呼べば力強い腕がオレを抱き返してくれる。涙に霞む目を上げると大佐の漆黒の瞳がオレを見下ろしていた。
「すき…たいさ…スキっ…」
うわ言みたいに何度も呟く。激しく突き上げる大佐自身がオレの感じるところを容赦なく突き上げて、オレは白濁を
迸らせた。
「ああっ…ああんっ…やあ、んっ」
蕩けてしまいそうだ。全身がぐずぐずに溶けて流れてしまいそう。もっともっともっと。大佐が欲しくてほしくて。
「ハボック…っ」
「あっ、ああっ…た、いさ…っ」
続けざまに熱を吐き出すオレの奥深くを大佐が犯す。このまま1つになれたらいいのに。
「ハボック…っ、私のものだっ」
そう呟いた大佐の熱がオレの最奥を濡らして。大好きな大佐。やっと帰ってこられたんだ。オレはうっとりと微笑んで
意識を手放した。


2007/10/18


パラレルその後の続きです。アッと今にハボの変化に気づくロイ。嫉妬に駆られたロイにメチャクチャされながらも赦しちゃうのがうちのハボのぬるいところ
だよなぁ、と(苦笑)何だかんだでベタ惚れな二人。