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2022年06月08日の日記

2022年06月08日(水)
黒スグリ姫〜甘い時間

黒スグリ姫〜甘い時間
ロイハボ風味

「先輩のそれ、カッコいいっスよね」
「えっ?」
 パチンと懐中時計の蓋を閉めたロイは、感嘆したような声に傍らのハボックを見る。そうすればロイの手元を覗き込んでいたハボックが閉めた懐中時計の蓋を指さして言った。
「その蓋の模様もだし、そもそも懐中時計っていうのがカッコいいっス」
「そういうもんか?」
 自分ではカッコいいなどと思ったことは全くないロイとしては、そう言われてもピンとこない。ハボックに手渡せば大事そうに両手で受け取って、蓋に刻まれた火蜥蜴の紋様を指先で撫でた。
「これって……トカゲっスか?」
「火蜥蜴だな、サラマンダーだ。聞いたことないか?」
 そう聞かれてハボックは首を傾げる。
「んー、……ゲームとかでならあるかも?」 
 自信無げにそう言うのを聞いて、ロイはクスリと笑った。
「火蜥蜴は古代ギリシャや錬金術で火の象徴とされてるんだ。苦難に負けずに己の信念を貫き通す、そんな意味合いがあるんだよ」
「へぇ、そうなんスね」
 説明を聞いて、ハボックが感心したように頷く。パチンと蓋を開けて洒落た文字盤を見ながら言った。
「これ、誰かからの……プレゼント?」
 文字盤を見ていた視線をロイにチラリと向けて尋ねてくるハボックの、その空色の瞳に浮かぶ感情にロイは笑みを浮かべる。軽く肩を竦めて答えた。
「確かに貰ったものではあるが、くれたのは私の祖父だよ。学者でね、子供の頃はよく話を聞きにいってた。私が中学生の頃に亡くなってしまったが」
「えっ、じゃあ大事なものなんスね!」
 ロイの言葉にハボックが慌てて懐中時計を返してくる。ごめんなさい、ともごもごと謝罪の言葉を口にするハボックにロイは笑みを浮かべて言った。
「祖父との時間は確かに私に大きな影響を与えたし、この火蜥蜴の紋様もある意味私のしるべになっているのは確かだ。でも、所詮は時計だしな。気に入ったのならやろうか?」
 と、受け取ったばかりの懐中時計をもう一度差し出せば、ハボックが慌てた様子で両手を振った。
「そんな大事なもの貰えないっス!!それに、オレには似合わないっスもん!」
 ブンブンと首を振るハボックにロイは手にした懐中時計を見る。鎖をたぐるようにして持ち替えるロイにハボックが言った。
「やっぱり先輩が持ってた方が似合うっス」
「時計に似合うも似合わないもないだろう?」
「オレが持ったらおもちゃにしか見えないっスもん。それにおじいさんだって先輩に持ってて欲しいと思うっスよ」
 だから、先輩が持ってて、と懐中時計持った手ごと押し返されて、ロイはフムとため息を零すと時計を隠しにしまった。

 数日後。
「ハボック、これ」
「えっ?」
 と、リボンをかけた細長い箱を差し出されてハボックは目を見張る。尋ねるように見つめればロイが笑って言った。
「懐中時計は受け取れないというから」
「えっ、でも、貰う理由がないっス」
 誕生日でもクリスマスでもないこの時期にロイからプレゼントを貰う理由がない。そういって首を振るハボックにロイが苦笑して言った。
「恋人にプレゼントするのに理由がいるのか?」
「こっ、恋人ッ?!」
「違うのか?」
 仰天して声を張り上げればほんの少し寂しげな声が返ってきて、ハボックは顔を紅くして首を振る。差し出された箱をおずおずと受け取れば、ロイがホッとしたように笑った。
「開けてみてもいいっスか?」
「勿論」
 笑って頷くロイにハボックは金色がかったブラウンのリボンを解き、白い箱を開ける。そうすれば現れた腕時計に目を見張った。
「これ……」
 銀色の針が刻を刻む綺麗な空色の文字盤に白い線で火蜥蜴が描かれている。白いカーフレザーのバンドがついたボーイズサイズのそれをハボックは箱からそっと取り出した。
「前に見かけたことがあったんだが、火蜥蜴なんて珍しいと思って覚えてたんだ。形は違うが同じ火蜥蜴、ペアにならないか?」
「ペア……先輩とお揃い……」
 ロイの言葉にハボックは顔を紅くして呟く。手にした時計をそっと胸に抱き締め、ロイを見てにっこりと笑った。
「ありがとうございます!すっげぇ嬉しい……ッ」
 頬を染めて礼を言うハボックにロイはドキリとする。ハボックの手から腕時計を取り上げ左の手首に巻き付けて金具を留めた。
「わ……似合うっスか?」
 留めて貰った腕時計を翳してハボックが言う。嬉しそうに笑うハボックの腕時計を巻いた手首を掴んでそのしなやかな躯を引き寄せた。
「ああ、思った通りとても似合う……これからも一緒の時間を過ごしていこう」
「────ッ、はいッ!」
 言えば真っ赤な顔で頷くハボックを抱き締めて、ロイはその唇に深く口づけた。


遊びにきてくださった皆さまにはどうもありがとうございます!拍手ぽちぽちもとっても嬉しいですv
さて!ロイハボの日でございます。例の続きはどうしたと言われそうですが、やっぱりエロ続きで他のもの書きたいってなっちゃいました(苦笑)そんなわけでお久しぶりの姫ハボでーす!何かプレゼント……でも指輪でもネックレスでもピアスでもないよなぁってことで、こんなんになりました(笑)ちなみにロイがあげた腕時計はアニエスべーのレザールをデザインした時計です。実物は文字盤が空色というよりシルバーがかった水色なんですが、ここはほら、ハボックだから空色ってことで(笑)お値段も発売当初は30,000円位だったので、大学生のロイならプレゼントできるなぁと。厳密には火蜥蜴じゃなくてトカゲなんですが、まぁそこは妄想で修正ってことで(笑)ロイハボの日、幸せな二人でハッピー気分をお裾分けできたら嬉しいですv それにしても、また姫ハボに振り回されるロイを書きたくなってきましたよ(笑)

以下、拍手お返事です。

たねさま

いつもありがとうございますv えへへ、堪能して頂けたご様子、嬉しいですvv どちらの大佐も狡くてハボックに狂ってる……うふふ、やっぱりハボに対する大佐はそうでないとですよね!ふと気づいたのですが、自分がハボにめちゃラブだからうちの大佐どもはハボック激ラブなんだなぁと(←今更、笑)これからもうちのハボックとハボ狂いの大佐をよろしくお願いしますv
2022年06月08日(水)   No.529 (ロイハボ)

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