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2022年03月10日の日記

2022年03月22日(火)
続・春爛漫
2022年03月15日(火)
春爛漫
2022年03月10日(木)
暗獣 さくらさくら

暗獣 さくらさくら
 春の陽射しが照らす庭の片隅で、黒い毛糸玉の姿に戻ったハボックはうつらうつらと微睡む。柔らかな春の風に黒い毛をさわさわと揺すられて、ハボックは形のない目をそっと開けた。そうすれば目の前を風が運んできた桜の花びらがひらひらと舞って落ちる。かわいい薄桃色の花びらがどこから来たのだろうと、ハボックはうにょんと伸びて庭の外を見ようとした。だが、小さな毛糸玉には外の様子は判らず、ハボックは仕方なしにポンポンと跳ねて庭木の枝に上った。
 春になって緑の葉が芽吹き始めた枝の上から外の様子を見れば、街のあちこちに春の花が咲いている。きょろきょろと街の様子を見回したハボックは、数軒先の家の庭に薄桃色の花を満開につけた木を見つけた。その可愛い姿に黒い毛糸玉は枝の上でポンと飛び跳ねる。庭木の枝をポンポンと飛び跳ねて渡って庭の端まで来た毛糸玉は、うーんと力をためると隣の家の庭木に向かってポーンと飛び跳ねた。ふわりと浮いた体はうまいこと隣の家の庭木の枝に落ちる。毛糸玉はポンポンと跳ねながら庭木や塀や屋根を渡り歩いて、なんとか目当ての桜の木までやってきた。
 満開の桜を見上げて、毛糸玉は形のない目を嬉しそうに輝かせる。大きく跳ねた毛糸玉は桜の花の間にポトンと着地した。
 見渡す限り淡い薄桃色に囲まれて、毛糸玉は嬉しそうに柔らかな毛を震わせる。すりすりと花びらに体をすり付け、ころころと枝の上を転がって遊んでいれば、ふと自分もこんな可愛い色になってみたいという気持ちがわき起こった。
 毛糸玉は薄桃色の桜の花をじっと見つめる。その色を胸に焼き付けた毛糸玉は、目をぎゅっと瞑るとうーんと体に力を込めた。うーんとうーんと願いを込めて、毛糸玉は力を込める。そうすれば黒い毛がキラキラと光をため始めた。キラキラとした光はやがて毛糸玉の体を包み込み、パアアと大きな光を放つ。その光が次第に小さくなって毛糸玉はホッと息を吐き出すと、そっと目を開けて自分の体を見た。だが。
 胸に焼き付けた色になるように一生懸命力を込めて念じたものの、柔らかな毛は変わらず黒いままだった。しおしおと項垂れて毛糸玉は桜の木を滑り落ちる。すすすと暗い陰を選んで家まで帰った毛糸玉は門の隙間をすり抜けて庭に戻ると、黄色いチューリップの鉢に身を寄せて小さくちいさく丸まった。

「ハボック?庭にいるのか?」
 そうして小さく丸まっていると中庭に面した扉が開いて声がする。足音が近づいてきたと思うと、そっとすくい上げられて毛糸玉はうっすらと目を開けた。
「こんなところにいたのか────って、お前、毛が一筋桜色になってるぞ」
 そう言って黒い目を見開いて見つめてくるロイの言葉に、毛糸玉は慌てて自分の体を見ようとする。手のひらの上でくるくると回る毛糸玉にロイはクスリと笑って言った。
「子供の姿になってごらん、ハボック」
 そう言われて、毛糸玉はロイの手からポンと飛び降りる。空中でクルンと回って子供の姿になったハボックに、ロイが言った。
「尻尾が桜色になってる」
 その言葉にハボックが自慢の尻尾を見れば、いつもは金色のそれがかわいらしい桜色に染まっていた、
「春色だな、ハボック」
 パアッと顔を輝かせたハボックにロイが言う。
「似合ってるよ」
 と笑うロイに。
「ろーいっ」
 ハボックは自慢げに桜色の尻尾を振ってギュッと抱きついた。


最近には珍しくあまり間をおかずに日記更新です〜。のぞきに来てくださっている皆さまには本当にありがとうございますv
一昨日は真冬の寒さの東京でしたが、昨日今日と暖かくなり週末は二十度くらいになるらしい。四月下旬並みって、やめて、体ついて行かないから(苦)服もなに来ていいのか悩むからやめてほしいわ〜(苦笑)
そんなわけで、ちょっと早いですが久々暗獣で桜話です。可愛いものきれいなもの大好きな小さなハボックには、これからの季節は楽しみで仕方ないだろうなぁ。そういや暗獣で春の話って書いたことあったかな?桜の枝を持って帰る話は覚えてるんだが……。なにかネタ、ないかな〜。昔は日々ネタ探ししてたんですが(笑)ないですか、ネタ?(笑)

めっちゃ久々の拍手お返事です。嬉しい、ありがとうございますv
(スマホだと反転メンドクサいかなと思ったのでオープンにさせて頂いています)

猫の日SSありがとうございます!  の方

こちらこそありがとうございます!感想いただけて嬉しいですv 楽しく振り回されて……、うふふ、そうですよね。絶対振り回されるのを楽しんでますよねv かわいらしくて好きと言っていただけてありがとうございます!たまにこうして浮上してきますので、お暇なときにまた遊びにいらしてくださいねv
2022年03月10日(木)   No.525 (カプなし)

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