| 幼愛 第二十四章 |
| 「よし、今日はここまで!」 ハボックがそう声を上げればホッとした空気が場を支配する。30分後のミーティングを告げてハボックが司令部の建物へと歩き出すと後から走ってくる足音が聞こえた。 「隊長ッ」 呼ぶ声に振り向けばゴルツがハボックを見つめている。その必死の形相にハボックは顔を顰めると嫌そうに言った。 「なに?」 「あ、あのっ、この間のことなんですがっ」 「この間?って、なにかあったっけ?」 ゴルツの言うことが判らずキョトンとするハボックにゴルツは目を瞠る。噛み付くように言葉を口にしようとした時、副官の軍曹の声が割って入った。 「隊長、今日の訓練のことなんですがね」 「ああ、なに?」 ゴルツに「すまんな」と目配せしてハボックに話しかける軍曹に、ハボックはあからさまにホッとした表情を浮かべる。拒絶するように背を向けるハボックを見つめてゴルツは悔しそうに顔を歪めたのだった。 「おう、そうだな。そんな感じでいこうか」 廊下の片隅で部下の一人と話し込んでいたブレダはふとめぐらせた視線の先に捕らえた人物の表情に眉を寄せる。その思いつめたようなあまりに昏い顔つきに益々眉間の皺を深くした。 「あれは確かハボックんとこの……」 ボソリとそう呟けば一緒にいた部下がブレダの視線の先を見る。 「ああ、ウィルヘルム・ゴルツですね、ハボック隊の」 「……なんか顔つきへんじゃないか?」 「え?あ、そう、ですね。言われてみれば何となく」 頷く部下の言葉にブレダはゴルツの後を追おうとした。だが、偶然すれ違った総務の人間に提出した書類のことで話しかけられ仕方なしに足を止める。 (まさか、な。ハボ、大佐と暮らし始めてから大人しくしてるみたいだし) ブレダはそう自分に言い聞かせると、ゴルツから視線を戻し書類の話に意識を集中したのだった。 ミーティングを終えたハボックは司令室へ戻ろうと廊下を歩いていた。 「あれ?」 胸ポケットを探ってそう声を上げる。いつもはそこに入れてあるはずのライターが見当たらなかった。 「着替える時に落としたかな」 机の引き出しに予備のライターが入っていたかどうか思い出そうとして、司令室に行ってみてなかったというよりも、ここでUターンした方が確実で早いと思ったハボックは踵を返すとロッカールームへと取って返す。ロッカールームの扉を開けると自分に宛がわれたロッカーの扉の前にキラリと光るものを見つけてにっこりと笑った。 「あった、あった」 よかったと屈み込んで拾うとしたハボックの視界に黒い影が射す。何だろうと肩越しに振り返ろうとして、ハボックはいきなり背後から圧し掛かられるようにして床へと押さえつけられた。 「なっ…」 驚いて振り解こうとした腕を後ろ手に捻り上げられてハボックは苦痛に呻く。それでも何とか後ろを振り返ろうとしながら言った。 「誰だッ?!離せッ、このっ!!」 必死にもがくハボックは、だが俯せに押さえつけられては相手を振り解くことが出来ない。ハアハアと荒い息が首筋を掠めてハボックはゾッとして暴れた。 「ヤッ、クソッ、離せよッ!!」 ハボックは相手を振り解こうと身を捩る。だがウェイトのある相手は体重を乗せて押さえ込んだまま、ハボックが逃れようと身を捩って出来た隙間から手を前へと滑り込ませた。 「アッ……ッ」 ボトムの上から急所を握りこまれてハボックは身を竦ませる。揉み込むように握られてハボックはカアアッと顔を赤らめた。 「嫌だッ、やめろよッ!!」 明らかに性的な意味を込めて触れてくる手にハボックはふるふると首を振る。必死に逃れようとするハボックに圧し掛かった相手はハボックのベルトを緩めると中へと手を潜り込ませた。 「アッ、ヤダッ!!」 キュッと握られてハボックは悲鳴を上げる。セックスは好きだがこんな風に強要されるのは真っ平ゴメンだった。だが、絡みついてくる指がハボックを快楽の波へと落としこむ。快楽に慣れた体は瞬く間に熱を帯び、ハボックは甘い吐息を吐くと体を震わせた。 「う……アアッ……ヤ、アッ…ぅんっ、くぅっ」 かつて溺れて乱れたようにハボックは快楽にその身を任せてしまいそうになる。背後から押さえ込む相手がハボックのボトムを下着ごと引き摺り下ろした。ヒヤリと肌に触れる空気にハッとしたハボックが身を捩れば、急所を握りこむ手に力が篭る。 「ヒッ…!」 握りつぶされる恐怖にハボックが目を見開いて凍り付けば、背後から圧し掛かる相手が耳元を舐りながら言った。 「隊長…たいちょうッ」 「…ウィル?!」 聞こえた声に自分に圧し掛かる相手が誰かを察してハボックは驚きの声を上げる。その途端キュッと中心を握られてハボックは悲鳴をあげて背を仰け反らせた。 「離せよッ!何のつもりだっ、ウィル!!」 「今度って、一体いつまで待たせんですっ?!もう、待てねぇっ!!」 ゴルツはそう叫ぶとハボックの腰をグイと引き寄せる。まだ硬く閉ざしたままの蕾に滾る己を押し当てた。 「やめろッ、オレはしたくない相手とすんのは真っ平なんだよッ!!」 「隊長の中、熱くて忘れられねぇッ!気持ちよくさせますから、俺ッ!!」 押し入ろうとぐにぐにと押し付けてくる熱に貫かれまいとハボックは必死に身を捩る。だが、ゴルツはハボックの腰を抱え直すとピタリと牡を押し付けた。 「たいちょおッッ!!」 メリッと音を立てて押し入ってこようとする感触にハボックの顔から血の気が引く。その瞬間頭に浮かんだ黒い瞳にハボックは助けを求めた。 「大佐ッ!!助けてッッ!!」 慣らしもしていない蕾に押し込まれて激痛がハボックを襲う。まだ幼かった頃、初めて伯父の熱を埋め込まれた時の恐怖が蘇えってハボックは泣きじゃくった。 「痛ぁっ!助けてッ、たいさぁッ!!」 このまま死んでしまうのかと思ったその時、半ば埋め込まれた牡がズルリと抜ける。ハボックを押さえ込んでいた体が引き剥がされるように離れたかと思うと、大柄な体が壁に叩きつけられた。 「グハッ!!」 ゴルツは壁に背を預けたままズルズルと倒れ込む。そちらには目もくれずロイはハボックに手を伸ばすとその体を抱き寄せる。ビクッと震えて逃げようとするハボックにロイは言った。 「私だ、ハボック。落ち着け。もう大丈夫だから」 ロイの声にハボックはもがくのをやめるとその顔を見上げる。見つめてくる幼い光を湛える空色の瞳にロイは優しく頷いた。 「平気か?もう大丈夫だ」 ロイはそう囁くとハボックの髪をそっと撫でる。暖かいその手の感触にハボックの瞳に涙が盛り上がった。 「たいさ…たいさぁ…」 ハボックは顔をクシャクシャと歪めるとポロポロと涙を零す。子供のように泣きじゃくるハボックの体を優しく抱きしめて、宥めるようにその背をさすりながらロイは唇を噛み締めた。 (クソ、よくも……ッ) ブレダから「気にし過ぎかも」と前置きつきで聞いた話に、どうにも落ち着かなくなったロイは演習後のミーティングから戻らないハボックを探しに司令室を出た。なかなか見つからない姿に焦りを感じ始めた時、微かに聞こえた悲鳴に飛び込んだロッカールームで目にした光景にロイは考えるより先にハボックに圧し掛かる相手を殴りつけていた。もし発火布をつけていたら確実に相手を燃やしていたであろう程の嫉妬にロイはハボックを抱く腕に力を込めたのだった。 |
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