| 幼愛 第十八章 |
| 「とにかくこれ、外さないと…っ」 リンドレーは言ってハボックを拘束する忌々しいベルトに手をかける。だがベルトには小さな鍵穴がついており、それを外さない限りはベルトを取る事はできないようになっていた。 「テオが鍵持ってるんだ。それがないと」 ハボックはそう言うと熱の篭った息を吐いてリンドレーに寄りかかる。辛そうに何度か息を吐くと言った。 「ロブ、オレもう気が変になりそう…」 「…ジャン」 「お尻、ずっと挿れられてて…それにこれ、時々動く…アッ」 小さい悲鳴をあげてハボックはリンドレーの腕に縋りつく。ビクビクと体を震わせ眉を寄せながら喘ぐハボックの顔を見つめながらリンドレーはゴクリと唾を飲み込んだ。ハボックはリンドレーの腕に縋る手に力を込めてふるふると首を振る。 「ロブ…イきたくない…アッやんっ…ヤアッ……ッッ」 目をギュッと閉じてハボックは喉を仰け反らせるとビクビクと震える。縛められた中心がじわりと熱を滲ませるとハボックは低く呻いた。 「アッ……」 ガクリと崩れる体をリンドレーは慌てて支える。ハアハアと荒い息を吐きながら涙を滲ませるハボックをリンドレーはギュッと抱き締めた。 「ジャン、ジャン…ッ」 「痛い…も、たすけて、ロブ…ッ」 そう言ってすすり泣くハボックを抱き締めながらリンドレーは顔を歪める。ギリギリと歯を食いしばるとハボックの頬に自分の頬を擦り付けた。 「大丈夫だよ、俺がいるから。待ってて、すぐ外してやるから」 リンドレーはそう言ってハボックを床に座らせ、少しでも楽なように壁に寄りかからせてやる。ハボックの額にチュッとキスすると部屋を飛び出していった。 暫くして鋏を手に戻ってきたリンドレーは、だが部屋の中に誰もいない事に気付いてきょろきょろとあたりを見回す。 「ジャン?…ジャンッ?!」 そう呼んだものの答える声はなく、リンドレーはギュッと手を握り締めた。 「フォルベック…ッッ」 怒りと共に憎い相手の名を吐き出してリンドレーは手にした鋏を壁に突き立てる。ギラギラと目を輝かせたリンドレーは悪鬼のような表情を浮かべて部屋を後にしたのだった。 ガクンと跪いてハボックは目指す扉を見上げる。もう立ち上がる気力もなくてそのままドサリと扉に寄りかかった。目を閉じて息を整えていると、扉がガチャリと開く。内側に開いていく扉の動きに合わせてズルズルと床に伸びるハボックに、扉を開けたブレダが目を丸くした。 「あ、ブレダぁ…」 「何やってんだ、お前」 だらりと床に寝そべったまま見上げてくる空色の瞳にそう尋ねればハボックが苦笑する。 「オレ、ちょっとヤバイかも」 そ う言うハボックにブレダは顔を顰めるとその両脇に手を入れズルズルとハボックの体を部屋の中に引きずり込んだ。カチャリと鍵をかけるとハボックに聞く。 「おい、まさかまた妙なこと…」 ハボックに性的な悪戯をしていた伯父から引き離す為に士官学校に入学した。まだ子供にすぎなかった自分には友人を守る為に他に方法が思いつかなかったからだ。士官学校は思ったほどには安穏と過ごせる場所ではなかったがそれでも少なくともハボックに妙なちょっかいを出してくるヤツはいないと思っていたのだが、ブレダは自分の見込み違いだったかと不安になる。部屋に引き込んでも体を起こそうとしないハボックに心配したブレダが口を開こうとした時、ビクリと体を震わせたハボックが僅かに眉を寄せた。 「んっ…」 甘く震える息を吐くハボックの表情がいつか見た思い出したくもない光景と重なってブレダは僅かに目を見開く。ハボックのズボンに手をかけてその中にあるものを見たとき、ブレダは低く呻いた。 「……んだよっ、これっ!」 ブレダは吐き出すように言うと立ち上がり鋏を持ってくるとハボックのズボンを下げる。ベルトとの隙間に刃を滑り込ませバチンバチンと切り離していった。中心を縛めるベルトを外すと唇を噛み締めて後孔を犯すディルドに手をかける。ズッと引き出せばハボックが高い悲鳴をあげて果てた。 「ア…ハアッ…ッ」 荒い息を吐いて床に蹲るハボックを見ながらブレダは手にしたディルドを投げ捨てる。引き出しからタオルを取ってくるとハボックに投げつけた。 「シャワー浴びて来い。話はそれからだ」 険しい表情でそう言うブレダをいまだ息を整えられぬままに見つめると、ハボックはのろのろと立ち上がる。タオルを手にハボックがシャワールームの中に消えるとブレダはドサリとベッドに腰を下ろした。 「くそったれッ…これじゃここに連れてきた意味がないじゃねぇか…ッ」 ガシガシと髪をかき回してそう呻くとブレダは深い息を吐く。いつの間にか水音がやんで、ハボックが髪からポタポタと滴を零しながら出てきた。ブレダはそれを見ると立ち上がり代わりにハボックをベッドに座らせるとその手からタオルを取り上げ丁寧に拭いてやる。それからじっとハボックを見つめると聞いた。 「どいつだ。同期のヤツか?それとも先輩?」 そう尋ねるブレダにハボックは視線を落としたきり答えない。ブレダはまさかと目を見開くと言った。 「まさか教官とか言わねぇだろうな」 「…うん」 「嘘だろっ、誰だよっ」 そう聞くブレダにハボックはウロウロと視線を彷徨わせる。キツイ声で名を呼ばれて上目遣いにブレダを見ると言った。 「テオドール・フォルベック」 「はあっ?!アイツっ?!お前、すげぇ嫌ってたじゃん!何でそんな事になってんだよっ!」 そう聞かれてハボックは決まり悪げに目を逸らす。その様子に事情を察したブレダはハボックの襟首をグイと締め上げた。 「お前、ここに来た意味、わかってんだろうな」 「…わかってるよ、でも……退屈だったし」 そう言った途端、ブレダがハボックの頭を殴る。「ひでぇ」と涙目になってぼやいたハボックはブレダに睨まれて首を竦めた。 「馬鹿ばっかやってるともう知らねぇからなッ」 「ゴメンッ、ブレダ!も、しないから…ッ」 ハボックはそう言うとブレダの腕に縋る。ブレダは大きなため息をつくと言った。 「学校に訴えよう」 「えっ?!」 「お前が誘ったにしろ生徒に手、出したあっちに非があるだろ。そうだな、からかったつもりだったってことにしとけ。うまくすりゃ追い出せる」 そう言うブレダをハボックは目を丸くして見つめる。 「ブレダって結構ワルい奴だったんだ」 そう言えば途端に拳が飛んできてハボックは涙ぐみながらブレダを見上げた。ブレダはそんなハボックを見るともう一つため息をついてハボックの隣に腰を下ろす。脚の上に肘をついて顎を載せるとそっぽを向くブレダの顔を覗き込んでハボックが言った。 「ブレダァ…」 「もうお前なんて知らん」 その言葉にしょぼくれるハボックにブレダは思い切り舌を鳴らすとハボックを見る。自分を見てくれた事にパッと顔を輝かせるハボックにブレダはウンザリとした顔をすると言った。 「いいか、二度と教官にちょっかい出すなよ。今度同じ事したら見捨てるぞ」 「うん、わかった」 「……お前の“わかった”は今ひとつ信用できねぇな」 ブレダはそう呟くと床に散らばった拘束具の残骸を拾い集めると袋に詰める。 「それ、どうすんの?」 「物証だろ。持ってく」 「えーッ、見せんの、それ?」 ヤダなぁとぼやくハボックを睨むとブレダが言った。 「とにかく、一刻も早い方がいい。行くぞ」 「……オレも?」 と言えばみたび鉄拳が飛んできてハボックは頭を抱える。 「ひでぇ、そんなにポンポン殴ったら馬鹿になるじゃん…」 「それ以上馬鹿になりようがねぇよ」 言って部屋を出て行こうとするブレダの後をハボックは慌てて追いかけたのだった。 |
| → 第十九章 第十七章 ← |