賭禄  第二章

「せっかくだからよく考えてから決めますね」
 丁度昼休みが終わった事もあってハボックはそう言いながら席を立つ。隊員達がそれぞれに持ち場へと帰って行くのを見送ったロイはゆっくりと立ち上がり司令室へと向かった。
(この私が負けるなんて……ッ、しかもあのハボックに!!)
 ハボックが聞いたら思わずムッときそうな失礼な事を考えながら、ロイは司令室の扉を開け執務室へと入っていく。ドサリと椅子に腰を下ろして「はあああ」と全身の空気を吐き出してしまいそうなほど大きなため息をついた。
(ショックだ……)
 今までカード勝負で負けたことなどなかった。それなのに事もあろうにあのハボックに三連敗。
「なんて事だッ!!」
 ぺしょんと椅子に沈み込んでいた体を跳ね上げてロイが叫んだ時、おざなりなノックと共にがちゃりと執務室の扉が開いてハボックが顔を出した。
「………何騒いでるんスか」
 呆れたような口調で言うハボックをロイは恨めしそうに見る。その視線が物語る意味に気づいてハボックはニヤリと笑った。
「人のことナメてかかるから痛い目にあうんスよ」
「うるさいっ」
 顔を赤らめて睨んでくるロイにハボックはフフンと得意げに鼻を鳴らして持っていた書類を差し出す。ロイが怒りに任せてガリガリとサインをしたためるのを見ながら言った。
「まあ、罰ゲーム楽しみにしておいてくださいよ。ね、大佐」
 ニヤニヤと楽しそうに言う男を、ロイは悔しそうに睨んだのだった。

「ごちそうさま」
 出された食事を綺麗に平らげてロイが言う。それからいつものようにリビングへと移って本を読んでいると、後片付けを済ませたハボックがコーヒーのカップを手にやってきた。
「どうぞ」
「ありがとう」
 ハボックはロイの前にカップを置くと向かいの席に腰を下ろす。カップに口を付けて、本を読むロイをじっと見つめた。
「罰ゲーム、考えたっスよ、大佐」
 そう言われてロイは読んでいた本から顔を上げる。いったいどんな事をさせられるのかとドキドキしながら見つめるロイにハボックは言った。
「エッチしましょ、大佐」
「は?」
「エッチ。大佐が負けたのは三回だからエッチも三回」
「………それでいいのか?」
「はい」
 ハボックとは以前から肌を合わせる間柄だった。自分が受け入れる側なのはちょっぴり不満ではあったが、なんだかんだ言ってもハボックは好きな相手であり、概ねセックスの相性もいいと思っている。正直なにを今更、という感の拭えない罰ゲームにロイは首を傾げざるを得なかった。
「ホントにエッチするだけ?」
「ええ。その代わり大佐に拒否する権利はナシってことで」
 別に今までだってハボックに求められれば拒否したことなどない。ロイは腑に落ちないながらもハボックが提案した罰ゲームに同意した。

「うーん」
 ずっと同じ体勢で本を読んでいて凝り固まった体を、ロイは思い切り伸びをして解す。読んでいた本を閉じてテーブルに置くと立ち上がって言った。
「風呂に入ってくる」
 そう言ってリビングから出ていくロイをハボックは煙草を吸いながら見送ったが、少しして浴室の扉が閉まる音が聞こえたのを確かめると煙草を灰皿に押しつけて立ち上がった。

 脱ぎ捨てた服を籠に放り込んで、ロイは浴室へと入っていく。シャワーのコックを捻り湯温を調節すると体と髪を濡らした。早く湯船に浸かりたくて手早く洗っているロイの耳に扉が開く音が聞こえる。少ししてヒヤリとした風が浴室に入ってきたのに驚いて振り向けば、ハボックが入ってきた。
「ハボック」
 初めて見るわけではないのに明かりの中で見ると何となく気恥ずかしい。ロイは逞しいハボックの体から目を逸らすと、恥ずかしいのをごまかすようにガシガシと力を入れて体をこすった。
「そんなに力入れてこすったら皮が剥けちまいますよ」
 ハボックは赤い顔で体を洗っているロイにクスリと笑って言う。粗方洗い終わったのを見て取ると、シャワーに手を伸ばし湯を出してロイの体にかけた。
「そんなに急かさなくてももう出るから」
 ロイはそう言って湯船に浸からずに出ていこうとする。ハボックはシャワーをフックに戻すと出ていこうとするロイの体を引き留めた。
「出ていっちゃダメっしょ?」
「え?だってお前も入るんだろう?」
 広い風呂は二人で入っても十分にスペースがある。だが、明るい中、湯気に煙っているとはいえ目のやり場に困ってしまうと内心思いながらロイが言えばハボックがニヤリと笑った。
「なに言ってるんスか。これからエッチするんでしょ?」
「は?」
 キョトンするロイに笑ってハボックはロイの体を引き寄せる。腕の中に納めたロイの白い双丘をギュッと握れば、ロイがカアッと真っ赤になった。
「こっ、ここでっ?」
「そう、ここで」
「や、でもっ」
「拒否権はナシって言ったっしょ?」
 そう言われてロイは目を見開く。まん丸に見開いた黒い瞳を見つめてハボックは言った。
「罰ゲームの一回目ってことで」
 ハボックはそう言うとロイが何か言う前にその唇を塞ぐ。深く唇を合わせて舌をねじ込み、その甘い口内を貪った。
「んんっ!!ンーーーッッ!!」
 最初は逃れようともがいていたロイも、口内を蹂躙する舌に翻弄されてやがてくったりとその体をハボックに預ける。ハボックはロイの体を抱えて椅子に座ると、背後からロイを抱き込むようにして脚の上に座らせ、ロイの脚を自分の脚を跨ぐようにして開かせた。
「見て、大佐」
 くてんとハボックの胸に体を預けているロイの耳元にそう囁いてハボックはシャワーに手を伸ばす。ロイがトロンとした目を正面に向けるのを確認して、シャワーを出すとロイの視線の先へと湯をかけた。シャワーの湯が流れて曇りがとれた鏡が現れる。ロイはそこに映し出された己の姿にギクリとして身を強張らせた。
「な…っ?!」
 ハボックの膝の上で大きく脚を開いたあられもない姿にロイはカアアッと顔を染める。慌てて立ち上がろうとする体をハボックは背後から抱き締めて白い首筋に唇を寄せた。
「ダメ。ここでエッチするんスから」
「バカ言うなっ!こんなとこでできるわけ…ッ」
「拒否権はナシって言ったっしょ?」
「…ッ!!」
 ハボックは言ってロイの首筋にねっとりと舌を這わせる。それと同時に開いた脚の中心へと手を忍ばせた。まだ柔らかい茂みの中で息を潜めているロイ自身に指を絡めてゆっくりと扱き出す。ロイの体を抱き込んだ手で白い胸を彩る飾りを摘めば、ロイがビクリと震えた。
「いっ、イヤだっ、ハボっ!」
 そう言った途端、扱かれていた楔をギュッと握られてロイは息を飲む。ハボックは首筋に這わせていた舌をロイの耳に差し入れながら囁いた。
「拒否権はナシって何度言ったら判るんスか?今度言ったら握り潰しますよ?」
 そう言って鏡越しに自分を見る男の、いつもより色を増した瞳にロイは息を飲む。ロイが抵抗するのをやめたとみるや、ハボックは再びロイの中心を扱きだした。直接的な愛撫にロイの楔は瞬く間に硬度を増し、蜜を零し始める。ぬちぬちと濡れた音を響かせて扱きながらハボックが低く笑った。
「ああ、ほら、もうこんなトロトロになってきた。弄られるの見て興奮しちゃいました?」
「違っ…」
 ハボックの言葉をロイは慌てて否定するが、まだ触られてさほど時間がたっていないにもかかわらず、ロイの中心は腹に着くほどそそり立ち、とろとろと絶え間なく蜜を垂れ流している。摘まれたり押しつぶされたりしている乳首はジンジンとした痛みにも似た快感を生みだし、ロイの体は徐々に快楽に支配されていった。
「アッ……や、あっ…っ!」
 大きく開かされた脚の間で自身をそそり立たせ、男の愛撫に身を任せるしどけない姿を映し出す鏡から、ロイは目を離すことができない。死ぬほど恥ずかしいと思う反面、たまらなく興奮しているのも事実で、ロイは荒く息を弾ませながら身悶えた。
「ヤアっ……んっ、あっ、イヤっ!」
「イヤじゃないっしょ?こんなにしてるくせに……」
 ハボックはそう言って蜜を垂れ流す先端をくにくにとこねる。その途端、ロイは背を仰け反らせて喘いだ。
「ヒャッ、うんっ!……アッアッ、だめっ、ハボっ、出ちゃうっ」
 急激にこみ上げる射精感にロイはふるふると首を振る。それを聞いたハボックは扱く手を弱めるどころか一層きつく扱き出した。
「アアっ?!…イヤっ、ハボっ!!」
 ロイは濡れた髪を振り乱してもがく。開いた脚先を突っ張って何とか耐えようとしたが、白い喉を仰け反らせて高い悲鳴と共に熱を吐き出した。
「イヤアアアッッ!!」
 びゅくびゅくと勢いよく噴き出た白濁が鏡にかかり、映し出されたロイを汚す。大きく開いた股間を白く汚すロイの姿を見ながらハボックが笑った。
「すげぇ、鏡まで飛び散ってるっスよ。こんないっぱい出るなんて、よっぽど興奮してるんだ、大佐」
 くすくすと笑う声にロイは羞恥のあまり目をギュッと閉じて俯く。その時、蕾をぞろりと撫でられて、短い悲鳴を上げた。
「ヒャッ?!」
「ふふ……ここ、すげぇひくついてる」
 ハボックはロイの脚を軽く持ち上げると双丘の狭間で戦慄く蕾を鏡に映す。その余りにイヤらしい様に、ロイはぼろぼろと泣きながら首を振った。
「いやっ、ハボっ!!」
「そんなこと言って……欲しいんでしょ?」
 そう言ってハボックは入り口を嬲っていた指を中へと潜り込ませる。ぐちぐちとかき混ぜればロイの唇から熱い吐息が零れた。
「ああ、もう結構柔らかい………こんなに欲しがってるの、焦らしちゃ可哀想っスね」
 ハボックはそう言って指を引き抜きロイの体を抱え直す。猛る自身をロイの蕾にあてがうと、ゆっくりと押し入っていった。
「見て、大佐。すげぇ旨そうに食っていくっスよ…?」
「……ッッ!!」
 赤黒い牡が小さな蕾を押し開きゆっくりと潜り込んでいく。そのいやらしい様をつぶさに映し出す鏡を、ロイは食い入るように見つめていた。
「あ、あ、あ………」
「やらしいなぁ、アンタのここ……」
 クックッと耳元で笑う声にロイは羞恥のあまり泣きじゃくる。一度ゆっくりと埋めてしまうと、ハボックはロイの脚を抱えてガツガツと突き上げ始めた。
「ヒィッッ!!ヒィィッッ!!」
 激しい突き上げに嬌声を上げながらロイは鏡から目を逸らせない。白い尻の間を逞しい牡が出入りする様を食い入るように見つめながら、ロイは何度も追い上げられては熱を吐き出させられたのだった。


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