その手を取りたい  〜 2 〜
 by 古賀恭也     


   = 交互 =

「じゃあ、行ってくるからね。お留守番はお願いね」
 ウキウキとした母親と大荷物を持った父とを玄関から見送る。両親ともジャンの従姉の結婚式に出席する為に  今日は家には居ない。
 だからその日にロイと初めて結ばれようと、表情の硬かった先生に約束させた。
 母親と違う意味でジャンはウキウキとした気分でいる。
 やっと、ロイが手に入る。
 学校の紹介の家庭教師と会う為に、指導室で待たされていたジャンの前に現れた青年。理知的で穏やかそうな、しかし芯ががっちりと入っている感じで独特の雰囲気がある黒髪の二枚目。
 ジャンにはタイプで苦手という人間はあまりいないのだが、学業優先の優等生タイプは頭の構造の問題で話が合わないので中等部の友達にもあまり持っていない。
 「頭が悪い」とヒステリーを起こしそうな先輩だったら遠慮なく断ろうと身構えていたジャンに、教師の横に立って自分を見つめていたロイはジャンに何かの衝撃を与えたというのでなく、すうっと心に染み入るように存在を認識させてしまった。
 その後しばらくは、一時間と顔を合わせただけのロイの事ばかりジャンは思い返していた。
 初めて会ったその時に、もしかしたら一目ぼれという奴をロイにしたのかも知れない。
 誰もいない家で落ち着かない気持ちでジャンはいた。
 時間の流れというのは常に一定であるはずなのに、ロイと約束した時間までとても長く感じる。
 昨日一日かけてジャンは部屋を綺麗に掃除をした。ロイが来る時はいつも掃除をしていたけど、さすがに一線を越える今日という日にハプニングとかは嫌だったから、気にかかるところは徹底的に片付けた。
 ベッドも起きた後ちゃんと綺麗に整えなおした。
 ロイと結ばれるはずの場所だから。
「彼女を家に連れてきた時にだってドキドキしなかったのにな……ああ、そういや、先生が最初に来てくれる日もドキドキしたっけ」
 同じ中学生なら彼女といっても友達よりちょっと大事な感じっていうぐらいで、そう身構える事はなかったのだ。
「家庭教師が来るからドキドキしてたと思ったけど、たぶん……好きな人が来るからドキドキしたんだろうな」
 今日ジャンに会いに来るのは、ジャンの大好きな人だ。
 けど朝からのウキウキした気分はその反面、もう二度とロイはジャンの元に現われないのではという不安と同居していた。約束してくれたロイは、快く約束してくれたのではなかったからだ。
 そしてロイが来るはずの時間にインターフォンは鳴らず。
 そわそわと玄関を行ったりきたりするのがジャンに出来た事だった。
「来ない……ロイ先生が……」
 約束の時間は30分を過ぎた。電車が遅れたか、他に何か所用が出来たかでキャンセルなのか。
 でも、彼からの連絡が無いのがおかしい。
 ジャンには部屋の中でただ不安に苛まれて約束の主を待つしかなかった。

 駅を降りたすぐ近くの公園でロイはまだどういう行動をとるのか決めかねていた。
 学業でも友人関係でも即決できない事などなかった。ガールフレンドとの関係だってそうだ。来る者と去る者にそれほど執着した事も無い。向こうは強く執着する事があってもだ。
「よりにもよって、中学生のガキにこんなに振り回される事になるとはな」
 だがその中学生のガキがとても愛しいのだ。これまで付き合ってきたガールフレンド達に勝って。
 目の前では子供達がボール遊びをしている。のどかな光景だ。その中でただ一人、暗い表情でロイは居る。
 ジャケットのポケットから懐中時計を出した。腕時計は実験の時に邪魔になるから基本的に身につけない。
 装飾を一切纏っていない簡素な時計が指し示す時刻はジャンと約束した時刻を僅かに過ぎていた。
「待たせているな…ジャンを」
(確かに彼とは約束をした……、しかし相手はまだ子供だ。それを抱くのか?)
 背徳の道のような気がする。
 本物の学校の教師では無いのだから、職責を利用して云々では無いのだが、それでも諸手をあげてジャンに胸に飛び込んでおいでと浮かれた気持ちを持てない。
(あの子があんなに求めてくれるのは純粋にうれしい。私だって純粋にあの子が欲しい……)
 こんな事なら、軽い気持ちで少年を抱け飽きたらポイッと捨てられるような軽薄な男であれば悩まずに済んだのに。
 だがジャンがそんな軽薄な男を好きになるような馬鹿な人間で無いのも知っている。

 シャワーの水が冷たかった。頭を冷やすのには丁度いい。
 静まり返った浴室でただじっとジャンはシャワーに打たれていた。
 バシャバシャとタイルを打つ水音が、頭の中のノイズと打ち合って少年に静寂をもたらしてくれる。
 約束は破られる為にある、というし。
 人間が必ず約束を守るわけでもないし。
 ロイがいなくなるというのは、彼が家庭教師になった時から考えていた事だ。元々ジャンとは、ロイがバイトをする意味がなくなったら、その日から切れてしまうような頼りない関係だ。
 やっぱりロイは気持ち悪かったんだろうかとさえ思う。男の子に恋人になって欲しいなどと言われて。
 自分の身に置き換えたらどうだろうか。
 仲のいい同性の“好き”な友達が「恋人になって欲しい。あんたのものにしてくれ」と言ったら、自分なら血の気が引くしかないとかもしれない。
(やっぱり言ったらいけなかったのかな。でも、ロイ先生の「好き」が友達の「好き」と違うのはわかっているんだから……)
 二人は両思いだと思ったからこそ自分の方から手を伸ばしたのだ。

 流れる水音の中、かすかにインターフォンが鳴ったような気がして、浴室から飛び出すとジャンは慌てて玄関に走り出す。訪問者の応対はバスタオルを腰に巻きつけながらだ。
 扉のすりガラス向こうの姿は待ち焦がれた人のように思える。インターフォンからも、扉前からもその人影は一言も声を発しなかった。
「……誰?」
 恐る恐るジャンは人影に声をかけた。長い沈黙の後、望んだ返事がやっと返ってきた。
「……私だ。遅れてすまない」
「……先生! 来てくれた……っ」
 ロイが来てくれたうれしさに、ジャンは自分の格好など構わず扉の鍵を開けた。
「ジャン……なんて格好で出てくる」
 僅かに開いた扉の隙間から、ロイの目には教え子の半裸の姿が飛び込んだ。
 シャワーを浴びていたらしく頭からびしょぬれで、淡い金髪も水を含んで重く顔に張り付いていた。バスタオルは腰にかろうじて巻きつけただけで、青いそれはついと引っ張ればすぐさま肌蹴てしまいそうだ。
 そうすれば果実のように、おそらく何もつけて無い身が現れる。
 決心がつかずに今現在も揺れているロイの心を一気にそちらに振ってしまいそうな罪作りな格好だった。
 元々ジャンはロイよりも色白だ。今は授業の水泳やクラブで日焼けしてしまっているが、しばらくすればまた白い肌に戻るだろう。
 健康な柔肌を見せられてはどうしてもロイは手を伸ばしたいと思ってしまう。
「遅いよ……っ」
 待っている間は不安で不安でしょうがなかったのだろう。そしてジャンの表情はゆっくりと安堵に代わって行く。
 笑顔が今にも泣き出しそうだった。
 素早く扉の隙間から滑り込むようにロイは家の中に入る。何かあった時に無用心なので内鍵をしっかりとかけた。
 ジャンはロイが何か喋るのをじっと待っていた。
「……来ない方がいいのか、来るべきなのか迷ってた。実際、今も迷っているよ」
「俺、ロイ先生との約束守ったよね」
 それはきっと、こなせない条件だと思っての約束。
 ジャン本人ですらテストの点数を見るまで、無理だと思っていたくらいの。
 それこそ死ぬくらいに勉強した。ロイを手に入れる為にそれくらいしようと思った。高等部への昇学の勉強をするよりも中学生のジャンには重要だった。
「ああ、そうだな。でも約束はしてはいけない事だったんだよ」
 馬鹿だった、とロイはその時の事を後悔するしかない。本当に、先にはたたないものだ。
「ジャンも私も年相応の恋人を持った方がいいと思うんだがな」
「俺がロイ先生を他の奴に渡したくないんだ!」
 少年の足元にはらりと青いバスタオルが落ちた。

 勢い良く浴室のタイルをたたく水の音に混じって、互いを求め合う音がする。激しく啄ばむ恋しい相手の唇。
 全裸の二人は抱き合っていた。
「こんなに体を冷やして、秋先だけど体を壊してしまう……」
 体を濡らす水は今度は温かかった。
「だって、ロイ先生が来ないじゃないかっ」
 一時間待っても来ない恋しい人は、もう二度と来ないのではないかという考えに頭が傾いてジャンは真っ白になった。ついでに、恋人になる前に振られたとワーストタイム更新にショックを受けた。
 部屋で大泣きしそうになって、とにかく頭を冷やそうと浴室に飛び込んだのだ。
 今まで、女の子にも色々振られたけど、こんなに好きでたまらなかった相手に袖にされたのは初めてだったから、ショックもひとしおのジャンだった。
 でも、今は先生がここに居て抱きしめてくれる。信じられない思いで一杯だ。
 玄関でロイの前に自分を晒した。勇気も何も要らなかった。ただ素直に知りたかっただけだった。
 ロイはジャンが欲しいのか欲しくないかを。
 恋人が引く手あまたな彼に欲しがってもらえると思うような、これといって自慢のある体じゃないけれども。
 呆然とした表情でロイはジャンを見て、すっぱりと晒された全裸に目をやって、それから苦笑する。
「全く……小悪魔だよ、ジャンは」
 そうして一糸まとわぬ体を抱きしめてくれた。
 これだけしてすらも、玄関を開けてロイが帰ってしまったなら、親に叱られたってたぶん一週間ぐらい部屋で泣いて過ごしたような気がする。
 抱きしめた少年の冷たい体に気付いたロイが浴室にジャンを戻そうとするのに、一緒に入って欲しいと強請ったのもジャンだった。
 浴室で体を温めている間にロイが居なくなりそうで怖かったからだ。
 それに何より、早くロイの裸も見たかった。
 彼が脱衣所で服を脱ぐシルエットを浴室からすりガラス越しに眺めているだけで心臓がドキドキする。
 中学生からすれば大きな体に思えるものの、ロイは成人男子としては小さめでスマートな体で、それをコンプレックスに思っているみたいなのをうすうすジャンも知っていた。
「やっと先生の全部が見られた……」
 初めて見たロイの体を綺麗だと思った。男の体をそう感じて見た覚えが無いから、この感想は自分の“好きな人”だからこそだ。
 オマケにロイの裸を見てすぐにジャンの我慢が利かないそれは勃ってしまって、ロイの視線が下に向くのにそれを隠せばいいのか顔を隠した方がいいのかわからなくて戸惑ってしまう。
 それでそのまま抱きついて、ずっと抱きしめてもらっていた。
 ジャンの方もロイの背中に手を回してそっと撫でた。そうやってロイの肌を触りたいとずっと思っていたのだ。
 背骨の筋を辿るようにロイの背中に手を沿わして行くのがとても楽しかった。触られている方はくすぐったいようで、身をよじる事もあったが。
「先生……俺はずっとこうしたかったんだよ」
 ロイの耳元でジャンは囁く。
「とんだエロ小僧だ」
 囁いたジャンの首筋にロイは唇を落とした。

「初めてのエッチをするにしても、その前にちゃんと体のコミュニケーションはとらないといけないから」
「……コミュニケーション?」
 ロイは優しく説明する。相手はまだ少年で、異性とすら経験が無いのだ。
「そう。この人は自分の体に優しくあるかとか、この人の触っていい箇所はどこで、触って欲しくない箇所ってどこかとか、裸での信頼関係を作るんだ」
 エッチは割合難しい事をするのだとジャンは身構える。
「……段階を踏むって事すか……?」
「女の子にしたらいきなりオッパイをわしづかみにされたり、男の子が大事な所に突っ込むだけなんて……愛されてる気はしないし……ジャンだってそんな事を相手にされたら怖いだろう?」
 ジャンはコクンと頷いた。それはたとえロイにされたとしてもだ。もちろんロイはそんな無茶をしたいとは思わないし、セックスなんて二人でいい具合にならなければ、男女の関係なくただの排泄行為だと思う。
「ベッドの上での仕方もあるけど、ここはお風呂だから……私がジャンの体を洗ってあげる」
「自分で洗うんじゃなくて、先生に洗ってもらうの? 子供みたいに?」
「私が触ったらどういう風に感じるか興味は無いかな」
 その言葉に半立ちのジャンの欲望のシンボルはきたようで、ジャンは気にして押さえてしまう。そのままにしていても十分可愛いと思うのだが、初体験の仕草は一々が可愛い。
 石鹸を泡立てて、ロイはそのままシャボンをジャンの体に擦り付けていく。タオルを使わずに、ロイの手が直にジャンの体を撫でるのだ。もちろんジャンの敏感な所にも。
「慣れない最初はくすぐったいかもしれないけど……」
「俺も先生の体を洗いたいなー」
「それは今度ね。楽しみにしているよ、ジャン」
 腕に背中に白い彩を施していく。ついでに脇の下をくすぐれば、けらけらとジャンは笑った。

「先生、ダメだって。そこはふつーにくすぐったいー」
 恋しい手が肌を擦るのにくすぐったさと甘い興奮がジャンの心の中に広がっていく。成長すればたとえ親にだろうが『体を洗ってもらう』なんていう事は考えないけど、好きな人にされるのは随分と感覚が違うのにビックリしていた。
 ドキドキとワクワクが混在して、とても楽しい気分になれるのだ。
 円を描くようにロイの手はシャボンをジャンの白い胸に広げた。手が描くのは始めは大きな円だったのが徐々に小さくなり、ついには胸の突起の上に集中して両方の人差し指が廻るようになった。
「ふ……ぁ、ん、せんせ……へん、ムズムズする」
 その指の動きはくすぐったいだけのはずなのに、だんだんジャンの胸の突起が硬く大きくなっていく。
「せんせ……それ、痛い……」
 淡い桃色が徐々にシャボンの白に映える赤味を帯びた。ロイに指でくりくりと摘みあげられれば、その場所からジワリと痺れが体に広がっていくのにジャンの息は弾む。
「敏感になってきたからね。でも慣れたら、この程度なんでもなくなるよ」
「女の子のオッパイじゃないのに……何でそれするのさ?」
「ここで気持ちよくなっているのがわかるからだよ。触っていてジャンが反応してくれるととてもうれしいんだ」
 前の彼女の胸にジャンもこうした事はある。もちろん摘んだ事はなかったが、突起部分に触れて、ジャンが触っていくうちに変化していくのに興奮したものだった。
(ロイ先生も俺のなんかで興奮するのかな?)
 目線を下に向ければ、ロイの興奮具合を表す中心が自分に向いている。
 しばらく胸の突起の弾力を楽しむように弄っていた手が脇腹を撫でて腰へ下りていく。それからゆっくり尻の双丘を撫でられた。ロイの手が這うたびにゾクゾクとジャンの背筋に走る感覚がある。
 ロイの手は半ば尻肉を掴むように揉んでいた。ジャンの腹に当たる彼の硬くなった中心が、ジャンの体を触ってちゃんと興奮してくれてるのが分かる。……ものの自分が今の状況をどう感じていいかわからなかった。
 するりとロイの手が谷間に潜り込み、他人に触られるなど予想していなかった場所に触れる。
「お尻っ……せんせ、俺そこは自分で……洗うって…」
「洗うだけじゃないぞ。ここは慣らさなきゃいけないんだ」
「慣…らす?」
 背後から回されたロイの指が、ジャンの排泄口の刺激に集中しだした。
「あ……やだ、変な感じ……」
 むず痒いし恥ずかしいしでどうしていいかわからない。指は窄みをクルクルととめどなく撫でてくる。
 時折、ヒダの部分を広げるような指の動きもある。
 落ち着かなくって逃げようとジャンが腰を揺らすと、途端に強く窄みを押された。刺激する指が中にまで入ってきそうで怖かった。
「先生……座りた……」
 ロイとの間に挟まれている前の方まで、後ろの直接の刺激のせいでか一層元気が良くなってくる。洗われているだけなのに、ジャンは立つ事が辛くなった。腰と脚がしびれて膝が抜けそうになるのだ。
「一人エッチで出来ない事をしたいんだろう? もう少し我慢だ」
 見上げたロイの眼はとても優しかった。濡れたジャンの頬にキスを落としてくれる。そして座り込もうするのを宥めたロイの方が立たせたままにしたジャンの前に身をかがめた。
「ジャン。私の肩に手をついていいから」
 勃ったジャンの中心がロイの視線の間近に晒されるその位置に、少年の体の熱はさらに上がった。
「お尻が気持ちよかったなら、こっちも気持ちよくしような」
「気持ち……いいの? くすぐったいだけだよ」
 ジャンの硬く大きくなった中心部をロイの四指の腹がそっと撫で上げる。
「……は…っ、あぁ」
 下腹部の中を襲う強烈な快楽の波にジャンの声が上がった。
「ふふ……それと同じ物が後ろでも来たはずだよ」
「イジ…ワル…ッ」
 ロイがシャボンでジャンの中心を洗い出す。それはジャンが自慰で自分で興奮させる時と違った動きだ。
 他人の手で洗ってもらうなんて小さい時以来だから本当にくすぐったくてしょうがない。けれどその頃と違って、ロイの指がそこに触れれば成長した体の芯から熱くなってきてしまう。
 必死に洗っているだけ、洗っているだけと思ってもだ。
「ずっと、ジャンにこうしてあげたかった……」
 ロイは慈しむように勃起して硬くなったジャンの一所を見詰めている。もちろん変化したそこを他人に見られるのはジャンにはこれが初めてだった。

「やっだ、先生……そんな所、広げちゃ……」
 ロイはジャンの前の排出口を輪っかにした指できゅうっと押し広げた。きっとそんな事はまだ自分でもした事が無いのだろう。ジャンの狼狽振りと赤面具合では。
 まだちょっと皮が余っているのも綺麗に剥いてしまった。いままでの刺激で十分充血した実がロイの性欲をそそる。早くもぎってしまいたい衝動だ。
「せんせ……あん、やだって……そんなとこ弄ったら俺…」
 先端を丁寧に指でなぞってシャボンを塗りつけられるそれだけでジャンから可愛い声が漏れる。
 もっともっと啼かせてみたいと思った。
「我慢。これから、ジャンが望んだ事をするのだから……綺麗にしておかなきゃ」
「でも……でちゃう……し」
 身の内から漏れ出てしまう感覚に襲われるのか、脚がもじもじと忙しなく動く。窪みをロイの白い指がくじるのに、もう震えて裏返った声しかジャンの口からは出なかった。
「我慢……無理だよっ!」
 我慢しようとしても、どうしても開かれた小さな排出口から透明な液体がとろとろと流れ出してくる。その欲の雫をロイの人差し指が掬った。
「これは気持ちがいい証拠だから出してもいいんだ。まだ擦ってみなくても、いつもよりいいみたいだね」
 真っ赤になりながら、ロイの問いかけにコクリと頷いた。
「もっと気持ちよくしてあげるさ」
「もっと……? 今でも気持ち……いいよ?」
 ロイはシャワーで白い肌からさらに白い泡を流し落としていく。
「ジャン、こんなものじゃないよ。楽しみにしておいで」
 これからどんな事があるのか良くわかっていないのか、ジャンはキョロキョロと泡を流すのに動くロイの顔をうかがうのに終始していた。
 今のジャンの姿はロイには、前技を施された未開の若い体が開かれるために待っているおいしい光景だ。
 頬にキスして唇にキスして、徐々に首筋胸の両方の突起、形の現れている腹筋にヘソの周辺にロイは唇を滑らせていく。まだ幼い感じの茂みの周辺を指で撫でて、そしてジャンの淡い桃色の肉を握った。
 チュッと音を立ててその先端にキスをする。何度もキスの刺激を受けると、またたらりとジャンの雫が排泄口から湧き出してきた。その雫を舌で掬い上げると、窪地も舌で丹念に舐めていく。
「そんなとこ、舐めちゃ……、あ……あ」
(やだ……なんだよ、この感じ。いままでこんなに痺れた事無い……先生の舌…気持ちいい)
 硬くなって高度を保ったジャンの性器がロイの手の中でビクビクと震える。唇で雫の出口を吸い上げると、尻の肉もビクビク震えだした。前は自分の出した物でロイの手ごと濡れている。
「雫がたくさん出てくるな。ふふふ、気持ちが良くってたまらないんだね、ジャン」
「あ、あ……はぁん、せんせ……俺、どうしたらいいか……」
「素直に感じていたらいい。ジャンが喜んでる所を見ていたい」
「こんなの初めて……どうしていいか…あん、あ、ああ……」
 ロイの口が少年の性器を口の中に収めると、ジャンにはもう声を言葉にする事は出来なくなった。
 下半身に走る予想以上の快感に抵抗もできず少年の体は翻弄されていく。初めての体験なのだからそれは当然だ。そしてそんな熱に溶かされている間に、ロイの指は肝心な入口の攻略を難なく始めるのだった。


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