その手を取りたい  〜 3 〜
 by 古賀恭也     


   = 結合 =

「先生ったら、お尻の中に指を入れるなんて。恥ずかしいじゃないか……」
「気持ちよかったろう? 男の子はお尻の穴の中にも気持ちよくなれる所があるんだ」
 ベッドの上でロイは機嫌が悪くなったジャンの背中を撫でて宥めている。
 ロイは風呂でフェラチュオをしている時に、またジャンのお尻の刺激を始めた。そしてあれよあれよという間に指をその中に食い込ませて、悲鳴をあげる事すら出来ないジャンは、指に尻の中をかき回されて翻弄された。
 ジャンは初めての経験に前も後ろも訳が分からなくなって、実際に自分がどういう事になったのか今でも分からなかった。
 ただロイの口の中に射精をしてしまったのだけは覚えている。
 温かくて気持ちよすぎて、好きな人の口の中に。
 その後ボンヤリとして動けなくなっている所を綺麗にされて、ロイに支えられて自分の部屋に戻された。
 ロイは浴室の始末に戻り、ジャンはボンヤリとしながらも体を拭いて、全裸のままベッドに身を預けてロイが戻ってくるのを待った。
 何故だか階下に降りたロイがそのまま帰ってしまうという恐怖はジャンの心からなくなっていた。
 ちゃんと手荷物と衣服とを持ってバスタオルを巻いた姿でロイは戻ってきたのだ。
「でもやっぱり恥ずかしい……。もう、触っちゃダメ」
「ふふふ、さあ、どうかなあ。ジャンはお尻の中も気持ち良さそうだったから、してあげる方が私の優しさだと思うけど」
 と意地悪く言ってやると、ふくれっつらが真っ赤になった。
「やっ……ダメダメダメダメ。俺、あんなふうになっちゃうなんて……すっげ、恥ずかしい」
 風呂で何も教えないままに男との触れ合い方を実践してみた。案の定、ジャンは初々しさを見せてくれた。
 興味深そうにされる事を受け入れて、でも未知に戸惑って怯えても見せる。
 ジャンは未だに信じられないらしい。一生懸命に腰を振ってロイの口を犯しつつも、後ろを攻める指に女の子のように甲高い声をあげて、快楽の波に溺れていった事を。
 普通の男の子なのだから、自分があんなふうになるのは予想外だったのはわかる。
 最後は泣いて「イかせて」とロイにお願いした。
 その光景にはロイの体の中を熱くてゾクッとする何かが走り抜けていった。
 まだはっきりと自分がされる事を理解していない少年が、徐々に色に染まっていく。虚ろでいやらしく、恍惚に彩られた青い瞳はロイの宝物になった。
 彼の身内だっておそらく見る事は無いものだ。
「私が怖くなった? ……もう嫌いかい?」
 枕と仲良くなってしまったジャンの首筋に背後から唇を寄せる。頭を撫でながら後ろ抱きで愛しい体を引き寄せた。
「先生の事は好きだよ。でも恥ずかしい物は恥ずかしい」
 性体験が初めてなら凄く当然の反応だ。こうやってすねるのすら可愛いと思うのだから、ロイはジャンに対して“ぞっこん”という度合いだろう。
「ジャンは私の事は気持ちよくしてくれないのかい?」
「俺もしてあげたい。……どうすればいいのかわからないけど」
 もごもごと枕に顔を埋めて返事をする。
「お風呂でお尻を弄られて、可愛く啼いてるジャンを見てたらゾクゾクした。もっとそうしたいし、もっとジャンの可愛い姿を見てみたいと思うんだけどな……」
「……うっ」
「でも、一人エッチ以上の気持ちいい事はしたから、今日はこれで終わりにするかい?」
 ロイにしたってそれは凄く残念だけど、やはり踏み越えたくはない所を越えずに済むのだから気が楽になる。
 こんな事は急がなくてもいいし、早く経験する事がいいというわけでもない。
 お互いに結ばれたいか否かの気持ちが基本で重要なのだ。
「どうして!? 俺はもっと先生に触りたいよっ」
 ジャンは驚いてガバッと身を起こした。
「お尻に触るのがダメなら、これ以上進むのはジャンにはきついし。かといって、手でも口でも気持ちよくしてあげてもいいんだけど、私だって辛いから……ぶっつづけてなんて無理だ」
 理性が切れて嫌がるジャンを無理矢理というのは絶対に避けたいのだ。
「俺、先生の恋人になりたいって言ったし!」
「私と恋人というなら、キスしてさわりっこするだけでもジャンと恋人だ。ただ、ジャンはまだ中学生だから、恋人と公言されると私は困った立場になるんだけどね」
 この先の、社会的信用というものは無くなってしまうだろう。
「誰にも言わない。だって、先生が女の人だったって絶対引き離される」
 ロイが子供に手を出す変態と指差されたり、自分の父母に罵られたりするのは絶対にさせたくない。
 好きで好きでしょうがなくて、むしろ手を出したのはジャンのほうだ。
 ベッド上に座り込むロイに全裸のままジャンは抱きつく。
「私はガールフレンドが沢山いるけどね。その子達は“彼女”というのでもないし。セックスをしたって、恋人とも言わない関係の子もいるんだよ。その点では随分と私は軽い男だ」
 見た事のないロイのガールフレンドの話に嫉妬の心がジャンの内にむくりと起こる。
「大人の事情なんて分からないけど、そいつらが先生といいことしてるんなら、恋人の俺だってしたい」
 ロイのバスタオルを肌蹴て二人で全裸で向き合い、ジャン自らロイの両手を臀部に誘う。
「怖いし恥ずかしいけど、先生がしてくれるんだから頑張る……、俺のお尻……してください」
 枕の替わりにジャンは今度はロイの肩口に懐いてしまった。
「ジャンのセリフに殺されっぱなしだな、私は」

 ロイは一旦ジャンの体を離れると、手荷物の中からハンドポーチを取り出して戻って来た。入れてあるのは身だしなみ用品だ。その中からさらに小さなポーチを取り出すと、中身をベッドヘッドに出した。
 コンドームが入れてある例のケースと小瓶とチューブだ。
「何、この小瓶?」
「ジェル。女の子用なんだけど」
 ロイのプライベートが見える生々しいセリフだ。
「……そういうの持ち歩いてるんだ」
「あった方がいいよ。女の子でもちゃんと濡れる子もいればなかなか濡れない子もいるし。何よりお互い負担をかけなくて済む。ジャンの場合は、これが無いとちょっとエッチはできないな」
「そんなに頻繁に女の子とエッチしているんだ、先生」
「ナンパ男と較べたら少ないだろうし、もてない男と較べたら多い」
 ロイは謎かけのような言葉で濁した。実際セックスの数なんて意識していない。女の子とのデートの方がロイには楽しくて、エッチはその後の流れでしかない。
「……男とは?」
 とジャンが聞いたら、ロイの表情は一変して苦虫を噛み潰したようになった。
「寄るな、触るな、立ち塞がるな」
 普段のロイの生活が集約されているようだ。男前ならではの色々と苦労があるんだろうなと子供心に察する。
「じゃあ、俺達……男同士は初めてなんだ。でも、先生慣れてるようだったけどな」
 ジェルの蓋を開けるとロイはジャンを太股の上に座らせた。がばっとジャンの脚を開かせて。
「わ……何でそんなに大股!?」
「こうした方が触りやすいんだ、それに私に見られてるって感覚だろ?」
 ジャンは真っ赤になって固まった。
 指に乗せられたジェルは透明で、さっき触れられてまだ違和感が消えないジャンの奥所に塗りつけられた。
「あ…」
 ロイの指は風呂でゆっくりと開かれたのとジェルの力で難なく進入を果たす。くるりと腸壁をなでられて、ジャンは身震いした。快感にだ。
「ふふ。力を抜いて。いい所を触ってあげるから」
 一度この場所での快楽を覚えれば、その後は覚えた体の方が多少の無茶でも快楽に変えてしまうものだ。
 ジャンに酷い事をする気が無くても、体のサイズや経験でロイの普通が受け入れられない場合が多いから、とりわけ気をつけた。
「さっき……すごい、ここに指が入って行くの怖かったんだ……」
「今はいい?」
「……なんで…? たった一回……」
 進入させた指は幸い、愛撫の具合が良いらしくジャンの瞳に恍惚の彩を与えている。彼が感じるポイントはロイも一度で覚えてしまった。
 狭いそこをジェルでたっぷり弛ませなければならない。指より大きい物を受け入れる事になるのだから。
「私の指がお気に入りになったようだ」
「……あ…、そこ、そこ触ったら熱くなる…よ」
 既に二本の指が含み込まされていて、ジャンの方もその指の動きに合わせて中を緩めたり締めたりしている。
 激しい性感を煽りたくなくて、時間をかけてゆったりと撫でさする。安心して体を預け、幸せそうに身の熱に蕩けている恋人を見ているのは一番の幸せだ。
 激しい情動のままに体を繋げるのだっていい。だがそれはそれで一瞬で終わってしまう。回を重ねられても一日にせいぜい3度ほど。
 大概は激しい性感と情動で支配されているその間の記憶は後に残らない。
 ジャンにとっての一生に一度のこの日を、そんな一瞬で終わらせるのはもったいない。
「ジャンのいやらしい顔を見てたらそれだけで私はイっちゃいそうだ」
「俺、いやらしくないったらっ。先生のがいやらしい……まだ触ってないのに…」
 硬化してジャンの太股に当たっている。
(そうだ……先生はまだ、一回もイってない)
「先生の大きくなっているのはどうやって良くするの? 俺が擦った方がいい? さっきみたいにフェラ…した方がいいなら俺、ちゃんとするし」
「ジャンが望んだとおり、私はジャンを私のものにする」
 喘ぐ少年の唇に濃厚なキスを施すと、ロイは指を引き抜いてジャンを背中越しに膝を両腕で抱えて上げた。

「先生……先生の固いの…っ、俺のお尻に当たって……」
 幼児がオシッコをさせられるような格好にされて、開かされた奥まった部分を背後からロイの性器が擦り付ける。
 激しい動きでは無いけれど、ロイが前後に腰を揺らめかせると、敏感な窄みを濡れた熱い塊に複雑に刺激されてジャンにはたまらなかった。
 谷間はロイの先走りとジャンのそそり勃ったものから漏れあふれる先走りに体内から流れるジェルとでグチャグチャになっている。
「せんせ……これ何!? 俺……もっと、指でして欲しいっ」
「ジャン……男同士でエッチして“誰かのものにする・なる”と言うのはね」
 腰を動かすのをやめたロイは片方の手をジャンの股に差し入れた。十分弛んだ箇所を二本の指で開かせ、そして猛った熱い塊を窄みに突き立てる。
「これをお尻の中に受け入れるって事なんだよ」
「え……っ!?」
 ロイのそれはジャンの物とは違ってちゃんと大人サイズだ。圧着して押し上げてくるそれに、生理的に恐怖感が湧き上がる。狭いこの場所に到底受け入れられるとは思わなかった。
「ウソッ、こんなの入んないよっ」
「入るよ。ちゃんと丁寧に段階を踏めばね。最初はさすがにきついけど。女の子でもこちらに入れるのが好きな子がいる」
 からかわれているのかとジャンは思ったが、横目で見たロイの顔は凄く真面目で……というより、熱っぽくジャンの方を見詰めている。
「ジャンの中に入っていいかな? ……ダメなら、今日はもう終わりにしよう。正直……」
「先生、辛い?」
 ロイは苦笑した。
「このまま、無理にでも奪ってしまいたい。限界だ。……でも、ジャンの嫌な事をしたくないのも本当だ」
 女の子に出来るのなら、ロイに本気の自分が出来ないはずは無いと、恐怖心がもたげるのを、体を抱くロイへの思慕で押さえつけようとするジャンだった。
 男がこれほど我慢するのはよほどの精神力がいる。それから愛情と。
「……頑張るって言った……先生、俺が欲しいなら奪って……」
「欲しい。たぶん初めて会ったその時から」
 それを聞いたジャンは「先生ってタラシだなあ」と笑った。
 ただ、やはりそうは言っても、さすがに自分のそこには男性の性器は入らないとジャンは思っている。ロイに指程度ならすんなり入るように施されたけれど。
 そしてもしそれが入るにしたなら、どんだけここって開くのだろうと怖々だ。
 このずっと後、“人間の限界とは計り知れない”のは、高校の悪友達との猥談の中で知る事になる。
 ロイは一旦ジャンを太股の上に座らせると、カードケースに手を伸ばした。
「コンドーム?」
「装けないとね」
 アルミの包装を口に咥えると片手で袋を器用に開けた。それだけで随分この行為に手馴れているのが分かる。
「でも俺は女の子じゃないよ?」
「女の子のいい所より、後ろの方がデリケートでね。ちょっとした事で傷になる。衛生的にも体に負担をかけない為にも必要なんだよ」
 特に男同士のそれは体力を減らすだけで、何も生み出す事は無い快楽の為の行為だ。愛情が生まれれば無難なくらいで。

 ゴムを装着しようとしたロイを遮ったのはジャンだった。
「俺は入れるんなら先生のをそのまま入れて欲しい」
 と。
 小さな恋人がそう言ってくれるのは純粋にうれしい。けど、たぶんジャンが受ける衝撃からすると中に射精するのはまずい。
「しかし、ジャン……」
 綺麗な体を汚すという、男としてよくある欲望はもちろんロイにもある。
「前に教えてもらった事、大丈夫なら俺の中でイってよ。俺だって、その方がうれしい……」
 病気の方は特にロイは気を使っているし、年上のガールフレンドには女医もいて良く窘められたのだ。
 ジャンと初めて会った時から、ガールフレンドとデートはするもののベッドで仲良くする事はなくなった。なんとなく気乗りがしなくなったから。
 今から思えば、欲しい子が見つかったのだからそれほど別物で楽しくやる事も必要なかったわけなのだろう。
 それ以来、欲を吐き出す為には自分の手と想像の中のジャンの肌を使った。
「ならそうする。やっぱり温かいお前の中を感じたい」
 実物の中でイけるというのは男には至福だった。
 ジャンの腔内にそうする為には、指は二本が入るようになっただけのまだまだ硬い入口を開けなければならない。
(凄く泣かせてしまうだろうなあ……でも、その泣き顔だって見たいと思うのだから)
 好きというこの感情は扱い損ねたら、相手にとっては牙になってしまう。それも実感できる。
 未開の穴にもう一度、ずっと我慢させている欲の塊を突入する為に押し当てる。少しずつ入り込ましていくと、穴が広がるのに比例して、ジャンの苦鳴が大きくなる。
 ジェルで濡れていてもやはり負担は減らせる程度だ。
 歯を食いしばってしまうのを宥める為に体をそらしてキスをする。青い瞳が潤んで眼から涙が零れていた。
「ジャン、好きだよ」
 竦んで泣き顔を見せていても、それに下腹が重くなるくらい。
 先端からの大きくなっている場所を通せば後は楽になる。幸いロイの性器の形はそう出っ張りはなくて、特に誰かに苦情をもらった事はない。
「あっ…あっ……ぁ、ひいっ」
 ロイの猛りがジャンの狭い入口を目一杯穿って行く。暴かれる圧力と襲ってくる痛みに、ボロボロと大粒の涙がジャンの頬を伝うのに唇を寄せた。気がつくとジャンは手のやり場に困ってか自分を抱いていた。
(向かい合わせて背中に腕を回せるようにしてやればよかったか……)
 少し後悔したロイは腰を回して突入口の意表をつき、すかさずトンと先端を押し込んで少年の自重でめり込ませた。
「ああー!! …あああっつ」
 泣きじゃくる悲鳴が共にあった。




 それが今まで排泄口でしかなかった場所がジャンの入口に変った瞬間。
 衝撃と痛みと、一挙に襲った苦しいそれ等に少年の体は震える事しか出来ない。
 普通は快楽で吹き出す白濁も、ただ痛さに我慢できずに漏らしてしまっただけだ。ビュクビュクと勢い良く散らせてしまったそれは床に派手に落ちている。
「あ……ぁあ、せんせ……俺、やっぱ……だめ…ぇ」
「どうした……。お前が望んだことだろう、泣かれたら私がいけない事をしているだけみたいじゃないか」
 音はしないがキチキチと結合口は限界近くに広がっている。それだけにロイを締め付ける力も強い。
 しかし、一番幅のある所が通ったのなら後は突き上げるのは可能だった。壊してしまっていいのなら、泣き叫ぼうと今ここで存分に欲望を満たしている。
「だって……、入らない」
 掠れた涙声でタドタドとジャンが訴える。もうジャンの何もかもが愛しくてたまらない。
 痛くて怖くてたまらないのと、ロイを受け入れきれずに悔しいのとでジャンは一杯一杯のようだ。
「これが当然なんだ。ここにいきなり私の物が入ったら、それこそ疑ってしまうぞ」
「……あぁ!」
 まだロイの欲を中ほどまでも飲み込めないでいる小さなお尻に指を這わせる。浅ましい熱で広がった入口をくるりと指でなぞって見れば、ジャンは甲高く啼いた。
「そこ…だ…め、だめ…せんせっ」
 単純に痛みに身を竦める。初めての痛みの感覚に逃げる事すら出来ないのだ。
「ジャンは私以外に知っているいけない子じゃないのか、とね」
 白い濁りに塗れた前の可愛いジャンの中心を弄ってやると、後ろの痛みと前の悦楽に素直に翻弄される愛しい恋人がいる。
「俺…先生だけ……ぁあん、こんな事…するなんて……知らなかっ」
 先端を食い込ませたまま、ジャンをゆっくりと座位からベッドに寝かせる。座った体位は協力できない相手を揺さぶるには不向きだ。
 組み敷いた体が痛みが一段落したらしい様子を見計らって、一気にジャンを突き刺した。
「ひっ……ゃっ……いっ、痛ぁーーーーっ!」
 ロイの体に割られた少年の脚がシーツの上をもがく。蹴り飛ばされないように、片膝の裏をロイは抱え込んだ。
「それでなくとも私を誘い込んだいけない体だから」
 これでもうジャンは自分のモノだと思うと、ロイの心のうちから歓喜の震えが起こった。
 しゃくりあげる少年の泣き声にゾクリと呼び起こされるものはなんだろうか。もっともっとと見たいこの先がある。
「ぅっ…く、だってっ、俺の事、好きなくせに……っ。せんせの意気地なし…で、全然、俺を見てくれない…っ」
 せめて高校生になるまでは、このままにしておこうと思ったのに、向こうから飛び込んできた。
 どれほど常識・保護欲・愛欲とに苛まれたと思うのか。全く罪な子だと思う。
 これからこの体は、快楽に暴かれていくのだ。それを望んだのは誰も知らないこの未成熟な体。
「……大人には理性がある……まあ、子供に負けっぱなしだがね」
 両脚を持ち上げられ、屈曲された体は局部をロイの眼前に曝け出している。小刻みに結合口を揺すると、ジャンはただ嗚咽した。
「やああっ、あっ……せんっせ、苦し……」
 まだ感覚を快楽に委ねるには、経験が拙すぎるのだ。繋いだ体での大きな前後運動は出来そうにない。
 締め付ける圧力はロイも痛いほど感じていて、中を傷つけないようにじっくりと狭道を分け入る。
「だからこちらのも、教えてあげよう。もちろん、授業料は無し。私は君が好きなだけだから」
 ようやくロイの熱い塊はずぶりと根元まで埋め込まれた。冷や汗が出るくらいに痛みを伴う作業だ。
「痛いよ、先生……痛い……っ」
 ジャンがロイの腕をきつく掴んでいる。何か掴んで耐えられる物がある方が体感する痛みは緩和できるのだそうだ。
「最初だけだよ、これから良くなる」
 ジャンの前の欲を無理矢理引きずり出してやる。こちらの快楽に勝るものはない。
 液体はどうしても流れて落ちてしまう。ロイは自分の欲肉の方にもジェルをたっぷりと塗りつける。ジェルの滑りを確かめるのを兼ねて小刻みに動かすと、ジャンが泣き出した。
「痛い痛いっ 動いたら嫌だー!」
「ふふふ、今から良い所を突いてあげるよ」
 泣き声より喘ぎ声を聞くのがいい。同じ涙を流させるにしても、苦痛より悦楽のそれを。
 ジャンが触れられたら飛び上がってしまう場所は覚えている。今度は硬くて大きい物で突いてあげるのだ。
「ひゃぁう! あっ…あっ…、あぐっ」
 ロイの突きにジャンが違う色合いの声をあげた。あきらかに性感を刺激されたそれ。
 そんなに動きのある動作ではなく前立腺をすこし強く撫でたぐらいだ。それでもジャンの腰はビクビクと痙攣したように飛び跳ね、腔内の壁は踊るように収縮する。
「良かった。ちゃんと感じてくれている」
 手の中で震える充血した塊も一番大きく膨れ上がっている。扱いてやればより高く啼き声を上げてくれた。そしてロイを包む肉の蠢きも快楽を貰うには十分だ。
「はあ…ああっは、やだもうわかんな……っ」
 綺麗に敷いてあったシーツは二人の動きで乱れ、部屋の中も乱れる恋人達の息遣いだけ。
「あ……イくっ ダメ……」
「ジャン……!」
 一つになるのに誰も邪魔をする者はいなかった。

「せんせー、今度の休み。デートに行こう?」
 さすがに男との初体験で動けなかったジャンだが、夕方には空腹を訴えるくらい口は元気だった。
「この間したばかりじゃないか。遊んでばかりは出来ないぞ。私は今はあくまで家庭教師が先に来るんだからな」
 ベッドの上に横たわるジャンは水色のスウェットを着ている。
 ジャンとの初体験は感情的には十分満足できたが体的には不十分だ。無茶をさせられないので仕方がないが、ロイからしてみたら全くの手付け程度だった。
 という事なので、肌を見たらまた催すかもしれないからジャンには服をかっちり着てもらいたい。
「ホラーハウスに行こうよっ」
 ロイは固まった。確かジャン少年はデートと言わなかったか。
 ベッドに寝そべるジャンの口にデリバリーのピザを咥えさせる。
「廃墟めぐりと言う奴か? 心霊スポットとかいうのは……大抵は不法侵入になるぞ」
 暴走族とかヤンキーという部類はそういう所が好きなのだそうで、その上カップル等の普通の人々も好きなのだという。薄暗くて汚らしい場所に行って何が楽しいのか。
 また、ロイはお化けとか霊魂とかオカルトとか言うのは信じない方だ。
 かといって分けの分からない事とグロテスクな物は苦手で、肝試しという行事も嫌いだった。
 だからデートする子もそういうのが好きな部類は避けている。相手をするのはメリットもなく疲れるだけだろうからだ。
「そんな所行くのは馬鹿か、サバゲーの人だよ。そじゃなくて、遊園地のお化け屋敷」
「あの張りぼてのか? ジャンはそういうのが好きだったのか…」
「へへへ、張りぼてなんかじゃなくって! 人間が特殊メイクやってぜつみょーのタイミングで飛び出てくるのがあるんだ! すっげー怖いんだって! 俺行って見たくてさ……でもさすがに父さんと母さんを連れては行けないだろ」
 そう言えばと、ジャンはシューティング・ゲームでモンスターをガンガン撃っていたのを思い出す。
(もしかしてああいうメイクをしたリアルなのが出てくるのか)
「だから、お願い。一緒に行ってー」
 とても無邪気な笑顔だったが。
 やはりジャンはロイには小悪魔らしい。
「いや……私はちょっと、そういうのは……」
「先生、もしかしてお化け怖いの!? うわ、へー、そうなんだ。大丈夫、俺が守ってやるからさ。一緒に行こう」
 意外な事を知ってジャンはうれしそうな顔をした。
「お化け屋敷! お化け屋敷! ……つか、ちょー怖ええ、ホラーハウスっ!!」
「ジャン、それは本当にお兄さんを許してくれないか……」
 可愛い恋人の無理なお願いはなおも続くようだった。









   ……恋愛物仕立てにしようとして、ごっつー失敗した感があります。書き手的に。


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先日「ファイアーズ・プラン」の古賀恭也さまに遊んでいただいた折、「ロイ×子ハボ。家庭教師のロイと中学生で教え子のハボがいたしてるトコロ」と言う絵をオネダリしました。出来上がったステキ絵に今度は「小説〜〜〜〜vvv」と喚きたてまして(苦笑)「ロイハボはなぁ…」と渋っておられた古賀さまに無理無理強請り倒して書いて頂いたのがこのお話ですーーっ!!キャ〜〜〜ッッ!!もう、小悪魔な子ハボがなんて可愛いのッッ!!それに授業料はタダって言って教え込むロイ先生が……ッ!正直悶えまくってしまいましたッ///あーもー死にそう…。ハボロイの古賀様にロイハボを強請る暴挙にも係わらず、こんな素敵なお話を書いてくださって、ホントにホントに有難うございますッ!!もう、幸せマックスです!!