第六章


 ハボックは部屋に入ると手にした薔薇をグラスに放り込む。そのまま戸棚に歩み寄ると中から半ばまで減ったワインのボトルとグラスを取り出した。コルクをあけてワインをグラスに注ぐとそっと口をつける。そのまま静かにとろりとした液体を味わいながら、ハボックは白い薔薇の花を見つめた。
驚いたように見開いた黒曜石の瞳。薄紅に染まった頬。
 さっき見た青年の顔を思い出してハボックはうっそりと笑う。ほんの少し触れた肌から流れ込んできたエナジーは、とても甘くてハボックを陶然とさせた。そのまま抱き込んで貪ってしまいたい気持ちを押さえ込むのにどれ程精神力を必要とした事か。
「まだダメだ、まだ……
 たった一人の人を探して生き続けたこの果てもなく長い時間を思えば、あともう少し時間をかけることなど一瞬の事でしかないだろう。
 ハボックはワインのボトルを手に取ると薔薇を挿したグラスに近づきその中へワインを注ぎいれる。チンと軽い音を立てて手にしていたワイングラスと合わせると、ハボックは紅い液体を飲み干した。
「待っていて、ロイ
 ハボックは薄っすらと微笑んでそう囁くと、グラスを置いて部屋を出て行ったのだった。


2008/09/04



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