第三章


「よお、相変わらず薔薇の手入れか?」
屋敷に戻れば学生時代からの友人であるヒューズが来ていた。
「お前の相手をするよりはずっと有意義だがな」
ロイがそう言えばヒューズが顔をしかめる。その表情にくすりと笑うロイにヒューズは言った。
「なあ、こんな屋敷に籠もって薔薇の手入ればかりしてないで外に出たらどうだ?来てほしいって企業ならいくらでもいるだろう?」
そう言ってもロイは笑みを浮かべるばかりだ。ロイはたった一人の身内だった祖父をなくして以来この屋敷に籠もりっぱなしになってしまった。若く才能に溢れる友人のまるで世捨て人のような生き方がヒューズは心配でならなかった。
「今度同期の連中で集まろうって話があるんだよ。お前も是非――
「私は遠慮しておくよ」
「ロイ」
咎めるように名を呼ぶヒューズにロイは言う。
「別に誰と付き合わなくても不便はないし、それに祖父が私一人生きていくくらいなら何とかなるくらいのものは残してくれたからね」
何と言おうとも結局は互いの利益、不利益を探りあうばかりの人間関係など煩わしいばかりだ。ロイはそんなことを考えながら見やった空の青さにさっき逢ったばかりの青年の事を思い出した。晴れ渡った空のような澄んだ空色の瞳。
(
彼は一体どういう人物なんだろう)
乞われるままに庭を見せる約束をしてしまった。普段なら初対面の相手に大切な庭に入ることなど赦しはしないのに。
「ロイ?」
黙り込んでしまったロイをヒューズが心配そうに呼んだが物思いに沈んだロイには聞こえはしなかった。

2008/07/31



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