パワー! その9


「はああ…」
 ロイは机に顎をつけてのっぺりと突っ伏しながらため息をつく。すっかりその気になりまくっていたところに突きつけられた結果は、世界は自分を中心に回っているロイにとってあまりにショックなものだった。
「いっそのこと既成事実から入るか…」
 驚いてまん丸に見開いた瞳に薄っすらと涙を浮かべたハボックを思い出した途端、へらりと頬が緩む。だがそんなことをしたら間違いなく少尉の射撃の的にされることは間違いないとロイは再びため息をついた。その時、執務室の扉をノックする音がして続いて聞こえてきた声にロイはガバリと体を起こす。
「入りたまえ」
 と言えばそれに答えて扉が開いてハボックが入ってきた。
「あの、コーヒーをお持ちしたんスけど…」
 上目遣いにロイの様子を伺うハボックの表情にさっきまでの落ち込みなどなんのその、思わず緩みそうになる頬を引き締めてロイはにっこりと笑う。
「ちょうど喉が渇いたと思っていたところだよ」
 そう言えばハボックの顔がぱあっと明るくなった。
(かっ、かわいいっっ!!)
 抱き締めたい衝動を必死に押さえ込めばハボックが言う。
「あのっ、この間の手紙の事は説明不足でスミマセンでした。それでっ、実はオレの友達が趣味でバンドやってるんスけど、今度見に来ないかって誘われてて、それであのっ」
 必死に言う様子にロイの頭をもしやと言う思いがよぎった。
「ハボック、それはもしかして私を誘ってくれているのかな?」
 そう言ってみればハボックが顔を紅くする。
「あ、でも中佐はそんな趣味でやってるようなバンド、聞きに行くのは――」
「大好きだともっ!趣味のバンド、大歓迎だっ!!」
「ほんとっスか?よかった」
 嬉しそうに笑うハボックにロイの心が再び舞い上がっていく。一緒にライブを見に行く約束を取り付けて、満面の笑みを浮かべるロイに嬉しそうに敬礼を返すとハボックは執務室を出ていった。
(今度こそ間違いなくデートだっっ!!)
 喜びに拳を握り締めて小踊りするロイの執務室からは怪しげなオーラがにじみ出ていたのだった。


2007/12/1



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