パワー! その7


 ロイは執務室の扉を細く透かすとそっと覗き見る。ホークアイの姿がないのを確認すると執務室を出て司令室を足早に通り過ぎた。司令室の扉を開けて左右を確認すると小走りに廊下を駆けていく。
「あら?」
 資料室から持ち帰った資料を腕いっぱいに抱えたホークアイは廊下の角を曲がる上司の姿を見て眉を跳ね上げた。その背に漲るピンク色のオーラにホークアイはたちまち表情を険しくする。
「あの人はまた…っ」
 士官学校で見初めた青年を卒業と同時にちゃっかり自分の手元に引き取り、あの手この手で自分のものにしようと画策する上司からその貞操を守ってやらねばと手をつくして数ヶ月。これまで色々あったもののなんとか上司の魔の手をはねのけてきたが、今回もまたなにやら企んでいるようだ。
「拙いわ、早く追いかけないと」
 そうは思うものの抱えた資料を何とかしないことには追いかけることもままならない。焦ったホークアイがきっちり閉じた司令室の扉を蹴破ってやろうかと思った時、後ろからのんびりした声がかかった。
「半分持ちましょうか、少尉」
 驚いて振り向けばハボックがにっこり笑いながら立っている。
「准尉…!」
 珍しくも呆然とした表情で自分を見つめてくるホークアイに首を傾げるとハボックは扉に手を伸ばした。通れるように開いた上でホークアイが抱えた資料の半分を手に取る。
「どこに置けばいいっスか?」
「えっ、あ、こっちに…」
 ホークアイはハボックの質問に慌てて答えながら内心首を捻った。
(絶対准尉絡みだと思ったのに…)
 ロイのあの浮かれたどピンクのオーラがそれ以外で見られたことなどここ最近なかっただけに、ホークアイは自分の勘が外れた事にほんの少しショックを覚える。
「それにしても凄い量っスね。言ってくれればオレが持ってきたのに」
 だが、資料を並べながら笑いかけてくるハボックに、とりあえずこの笑顔が無事だったのだからいいかと自分に言い聞かせるホークアイだった。


2007/7/29


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