パワー! その6


「あ、それから、中佐」
 執務室でロイが書類に目を通してサインをしてくれるのを待っていたハボックは、軍服の胸ポケットの中を探りながら言う。
「ん、なんだ?」
 可愛い部下の呼ぶ声に書類を繰っていた手を止めると、ロイは視線を上げてハボックを見た。いつもは鋭い眼光を放っている黒い瞳がだらしなく目尻を下げている事に本人は全く気がついていない。
「中佐に渡したいものがあるんスけど…」
 ハボックはそう言うと、胸ポケットの中から小さな封筒を取り出した。それはハボックの瞳と同じ淡い水色をした封筒で、淵に綺麗な装飾が施されている。ハボックは手にしたそれをロイの方へ差し出すと言った。
「これ、中佐に…」
「私に?」
 ほのかに残るハボックの体温にドキドキしつつ、表を見て裏に返して、だが何もかかれていないそれに首を捻ったロイは、時計を見たハボックが書類を急かすのに、慌てて目を通すとサインをしてハボックに返す。
「ありがとうございました。あ、中佐、あとでそれ、ちゃんと読んで下さいね」
 ハボックはそう言うと敬礼をして執務室を出て行く。ロイは口元をだらしなく緩めながらその背を見送ると、ハボックから受け取った封筒に視線を落とした。
「なんだろう」
 ロイは暫くそれを見つめていたが、その大きさと可愛らしさにハッとするとペーパーナイフを取り出す。
「もっ、もしかしてっっ」
 期待と興奮に震える手で封を切るとロイは封筒の中に収められていた同じデザインの便箋を取り出す。そこにしたためられた内容を読んでいくうち、ロイの顔が喜びと感動に輝いていった。
「ハボックっっ!!」
 簡潔な、だがそれ故に正直な気持ちを伝えてくる愛の言葉にロイはジーンとなって便箋を抱きしめる。
「まさかこんなに早く夢が叶うとは…っ」
 ロイが感極まって手にした便箋に熱烈なキスを降らせていると、ノックと共にホークアイが執務室に入ってきた。
「…中佐?」
 訝しげな声を上げるホークアイに、ロイはさり気なく手紙を隠すとにっこりと笑う。
「なんだね、少尉」
(この手紙だけは少尉にバレないようにしなくてはっっ!!バレたら絶対邪魔されるっ!!!)
 心の中でそう叫びながら不自然なほどの笑みを浮かべるロイを、ホークアイは胡散臭げに見つめたのだった。


2007/7/5


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