| パワー! その3 |
| ロイは演習場の入口をくぐると少し先で部下達を前に話をするハボックを見やる。太陽の光に金色の髪を輝かせて一生懸命に話すその姿にロイはうっとりと目を細めた。が、次の瞬間、ハボックを取り巻く部下達の目も自分と同じようにうっとりと細められている事に気がついて眉間に皺を寄せる。 「ハボックっ!」 よく通る声で可愛い部下を呼べば、ハボックが訝しげに振り向く。呼んだのがロイだと判るとパッと顔を輝かせて走り寄ってくる様が、まるで主人に呼ばれた犬のようで愛らしかった。 「中佐っ、見に来てくれたんスか?」 嬉しそうに笑うハボックの後ろには大きな尻尾がブンブンと振れているような錯覚すら起きる。ロイは腰に手を当てて頭半分大きいハボックを見上げると言った。 「頑張っているようだな」 「はいっ、士官学校出たばっかりで隊を預けてもらって…。オレ、中佐のためにも頑張りますからっ」 そう言うハボックは訓練で汗をかいたのだろう、頬に金髪を纏わりつかせ、シャツは体の線を浮き立たせるようにぴったりと張り付いている。僅かに頬を上気させて瞳を輝かせるハボックにロイは頷いてみせると言った。 「期待している」 「はいっっ」 ハボックはにっこり笑って敬礼すると部下達の方へと走り去ろうとした。その拍子にふわりとハボックの匂いがロイの鼻腔を刺激して、ロイは思わずハボックの肩に手を伸ばす。と、その瞬間。 「え…?うわっ」 ロイはふわりと体が浮いたのを感じたのとほぼ同時にダンッッという凄まじい音と共に地面に叩きつけられていた。 「っっっ〜〜〜〜〜っっ!!」 咄嗟の事に受身も取れず、衝撃に声も出ない。 「わっ、すっ、すみませんっ、ちゅうさっっ」 ロイをぶん投げた当の本人、ハボックは大慌てでロイに駆け寄ってくる。 「だっ、大丈夫っスかっ?!」 「…なんで、いきなり…」 ハボックに背中を擦ってもらいながらそう呟けば、ハボックが困ったように言った。 「オレ、今少尉に護身術習ってて、正面から来るヤツも勿論だけど、特に背後から何も言わずに体に触れて こようとするヤツは手加減なしでぶん投げろって、口をすっぱくして言われてるもんだから…つい…」 ごめんなさい、と耳も尻尾も垂れたようなハボックにロイは手を振ると大丈夫だと告げる。 「いや、護衛官としては頼もしい限りだ」 ロイはそう言うと、ハボックに訓練に戻るよう言う。ロイを気にしながらも部下達の方へ戻っていくハボックを見ながらロイは思った。あの反射神経なら不埒な部下の一人や二人、さして心配はないだろう。だがしかし、自分にとってはどうかといえば。 「少尉…余計なことを」 腰をさすって立ち上がりながら、ロイはクールな副官がいつになく庇護欲をかき立てられているらしい事に頭を痛めるのだった。 2007/6/21 |
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